説明

精製ポリアリーレンの製造方法

【課題】スルホン酸基又はその前駆基を有するポリアリーレンにおいて、抽出操作により金属不純物を除去して精製ポリアリーレンを製造する方法を提供する。
【解決手段】以下の工程(1)〜工程(3)を有する精製ポリアリーレンの製造方法の提供。
工程(1):スルホン酸前駆基と、脱離基と、を分子内に有する芳香族化合物を含む芳香族モノマーを、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより重合反応液を得る工程;
工程(2):前記重合反応液に、
芳香族系有機溶媒、酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、
該重合反応液に含まれている金属不純物を該混合物中の水層に、該金属不純物が除去された精製ポリアリーレンを、該混合物中の有機層に、それぞれ分配する工程;
工程(3):前記混合物を、有機層と水層とに層分離するまで静置した後、分液操作により該有機層と該水層とを分離する工程;

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製ポリアリーレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の芳香族基が単結合で連結された分子鎖を有するポリアリーレンは、化学的安定性及び熱安定性といった特性に優れ、当該特性を活かして、電池又は電子装置などの構成材料としての検討が広く行われている。また近年、固体高分子形燃料電池用高分子電解質(以下、場合により「燃料電池」という)の構成材料として、スルホン酸基又はその前駆基を有するポリアリーレンが検討されている(特許文献1参照)。該ポリアリーレンの製造方法としては、たとえば2個の脱離基が芳香環に結合している芳香族化合物を重合する方法が知られている。この重合方法としては、銅等の遷移金属を反応試剤とする方法、又は遷移金属化合物を触媒として使用する方法などが挙げられるが、これらの重合方法で得られるものは、該反応試剤又は該触媒に由来する金属不純物が含まれる粗ポリアリーレンである。前記構成材料として使用するには、この粗ポリアリーレンから金属不純物を除去することが望まれる。このような粗ポリアリーレンからの金属不純物除去に関し、特許文献2には、9,9−ビススルフォニロキシフルオレンを重合して得られた粗ポリアリーレンと、芳香族系有機溶媒及び水と、を混合し、金属不純物を水層に、該金属不純物を除去した精製ポリアリーレンを有機層に、それぞれ分配させるという抽出操作により精製ポリアリーレンを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−248143号公報
【特許文献2】特開2004−2627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料電池の構成材料に使用される、スルホン酸基又はその前駆基を有するポリアリーレンにおいては、抽出操作による金属不純物除去を開示する先行例は知られていない。スルホン酸基又はその前駆基を有するポリアリーレンにおいて、抽出操作により金属不純物を除去して精製ポリアリーレンを製造する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は前記課題を解決できる製造方法を見出すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、
以下の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する精製ポリアリーレンの製造方法を提供するものである。
工程(1):以下の式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより、ポリアリーレンを含む重合反応液を得る工程;
−SO2−A (1a)
(式中、Aは、下記のG1群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有するアミノ基、あるいは下記のG1群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。)
〔G1群〕
フッ素原子;アルコキシ基;アリール基;アリールオキシ基;アシル基;シアノ基
工程(2):前記重合反応液に、
芳香族系有機溶媒、前記非プロトン性極性有機溶媒とは異なる酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、該重合反応液に含まれていたポリアリーレンを、該混合物中の有機層に、該重合反応液に含まれていた不純物を水層に、それぞれ分配する工程;
工程(3):前記混合物を、有機層と水層とに分離するまで静置した後、該有機層と該水層とを分離する工程;
【0006】
また、本発明は前記の精製ポリアリーレンの製造方法における変形例として、
前記工程(1)を以下の工程(1’)に置き換え、前記工程(2)を以下の工程(2’)に置き換える、精製ポリアリーレンの製造方法を提供する。
工程(1’):少なくとも1つの前記式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中、遷移金属化合物の存在下に重合することにより、ポリアリーレンを含む重合反応液を得、該重合反応液から粗ポリアリーレンを分離する工程;
工程(2’):工程(1’)で得られた粗ポリアリーレンに、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、前記非プロトン性極性有機溶媒とは異なる酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、該粗ポリアリーレンに含まれていた不純物を、該混合物中の水層に、該不純物が除去された精製ポリアリーレンを、該混合物中の有機層に、それぞれ分配する工程;
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スルホン酸基又はその前駆基を有するポリアリーレンにおいて、抽出操作により金属不純物を除去して精製ポリアリーレンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、前記式(1a)で示される基と、2個の脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香族環に結合している芳香族化合物を、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより得られる粗ポリアリーレン(前記式(1a)で示される基を有する粗ポリアリーレン)から金属不純物を除去するに当たり、特許文献2に記載されている抽出操作による方法を試みた。この粗ポリアリーレンには、反応試剤又は触媒として用いた遷移金属又は遷移金属化合物に由来する金属不純物等が含まれている。当該粗ポリアリーレンを含む重合反応液に、トルエン等の芳香族系有機溶媒を添加し、さらに無機塩水溶液を加えて抽出を試みたが、析出物が発生したり、有機層/水層間に乳化層が発生したり、して有機層と水層とが層分離し難く、該有機層と該水層とを分液することが困難であることが判明した。また。該乳化層は、たとえ長時間静置しておいたとしても、消失することはないことも判明した。このような有機層と水層とが層分離し難いという結果は、粗ポリアリーレンからの金属不純物除去の効率を低くし、さらにポリアリーレンの一部が浪費することにつながる。また、この重合反応液から粗ポリアリーレンを固体状に分離し、この固体状の粗ポリアリーレン(固体状粗ポリアリーレン)にトルエン等の芳香族系有機溶媒を添加したが、固体状粗ポリアリーレンを溶解すること自体、困難であることも判明した。このような状況において、例えば特許文献1に記載されているポリアリーレンでは、金属不純物を含む粗ポリアリーレンを固体状で取り出し(固体状粗ポリアリーレン)、この固体状粗ポリアリーレンを酸や水(洗浄溶媒)で洗浄することで、金属不純物を除去しているが、かかる方法では金属不純物を十分除去するため、大量の洗浄溶媒を必要とするという問題がある。
そこで、本発明者らは、金属不純物を水層に、金属不純物が除去された精製ポリアリーレン(前記式(1a)で示される基を有する精製ポリアリーレン)を有機層に、それぞれ分配させるという抽出操作によるポリアリーレン精製において、有機層と水層とが十分、層分離できる程度の分液性を確保する方法について鋭意検討した結果、本発明に至った。以下、このような抽出操作によるポリアリーレン精製を含む本発明の製造方法に関して詳細を説明する。
【0009】
<工程(1)>
ポリアリーレン
本発明により得られる精製ポリアリーレンは、後述する重合方法により得られる粗ポリアリーレンから、抽出操作により金属不純物を除去して得られるものである。ここでいう「ポリアリーレン」は、複数個の芳香族基が単結合で連結された分子鎖を含むポリマーを意味する。
前記粗ポリアリーレンは、その製造用原料(芳香族モノマー)として、前記式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を少なくとも1種用い、該芳香族モノマーを、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下に重合することで得られる。このような芳香族化合物を含む芳香族モノマーを重合して得られることから、該粗ポリアリーレンは前記式(1a)で示される基を有している。
【0010】
前記式(1a)で示される基について説明する。Aは、1個又は2個の炭化水素基を有するアミノ基、あるいは炭素数1〜20のアルコキシ基を表し、該炭化水素基及び該アルコキシ基の炭素数は1〜20の範囲である。また、該炭化水素基及び該アルコキシ基は、前記G1群より選ばれる基を置換基として有していてもよいが、置換基を有する場合、この置換基の炭素数も含めて炭素数の合計が1〜20の範囲である。また、前記アミノ基が2つの炭化水素基を有する場合、該2つの炭化水素基が結合し、これらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0011】
前記アミノ基にある炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、フェニル基、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ビフェニル−2,2’−ジイル基及びo−キシリレン基等が挙げられ、かかる炭化水素基にある水素原子の一部又は全部が、前記G1群より選ばれる基で置換されたものであってもよいが、当該置換基を有しない炭化水素基であると好ましい。
【0012】
前記炭素数1〜20の炭化水素基を有するアミノ基を具体的に例示すると、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、2,2−ジメチルプロピルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、n−ウンデシルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、n−トリデシルアミノ基、n−テトラデシルアミノ基、n−ペンタデシルアミノ基、n−ヘキサデシルアミノ基、n−ヘプタデシルアミノ基、n−オクタデシルアミノ基、n−ノナデシルアミノ基、n−イコシルアミノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、カルバゾリル基、ジヒドロインドリル基及びジヒドロイソインドリル基等が挙げられ、ジエチルアミノ基及びn−ドデシルアミノ基が好ましい。
【0013】
前記炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基及びn−イコシルオキシ基等が挙げられ、かかるアルコキシ基にある水素原子の一部が前記G1群より選ばれる基で置換されたものであってもよいが、当該置換基を有しないアルコキシ基であると好ましい。これらの中でも、イソプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基及びシクロヘキシルオキシ基が好ましい。
【0014】
前記式(1a)で示される基は加水分解反応等により、スルホン酸基に変換可能な基である。具体的には、前記式(1a)で示される基を有するポリアリーレンを加水分解処理することにより、当該ポリアリーレンにある式(1a)で示される基の一部又は全部を、スルホン酸基(−SOH)又は当該スルホン酸基が塩を形成している基に変換することができる。したがって、前記式(1a)で示される基はスルホン酸基の前駆基といえる。なお、ここでいう「スルホン酸基が塩を形成している基」とは、スルホン酸基の水素イオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、金属イオン、アンモニウムイオン及び置換アンモニウムイオンからなる群より選ばれるイオンでイオン交換されている基を意味する。このようなスルホン酸基が塩を形成している基は、酸の作用によりスルホン酸基に変換することができる。
【0015】
芳香族化合物
前記芳香族モノマーの使用に好ましい芳香族化合物としては、以下の式(1)で示される芳香族化合物(以下、「芳香族化合物(1)」という)及び、以下の式(2)で示される芳香族化合物(以下、「芳香族化合物(2)」という)を挙げることができる。


(式中、mは1又は2を表す。Aは、前記式(1a)と同じ意味であり、mが2である場合、2つのAは同じあっても異なっていてもよい。
kは0〜3の整数を表す。Rは、前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、フッ素原子又はシアノ基を表す。なお、kが2又は3である場合、複数あるRはそれぞれ独立である。
また、互いに隣接する2つの炭素原子に結合する2つのRがある場合、該2つのRが結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。Xはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)


(式中、Aは前記式(1a)と同じ意味であり、R及びXは前記式(1)と同じ意味である。jは同一のベンゼン環に結合しているRの置換数であり、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。jが2又は3である場合、同一のベンゼン環に結合している複数のRはそれぞれ独立である。)
【0016】
式(1)及び式(2)において、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、これは後述する粗ポリアリーレンの製造において、脱離する脱離基である。
【0017】
式(1)及び式(2)における「−SO2−A」という基は前記式(1a)で示される基であり、mはその置換数を表している。mは1であると好ましい。
【0018】
のアルキル基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基等、あるいは、ここに例示するアルキル基にある水素原子の一部又は全部が前記G2群より選ばれる基で置換されたものを挙げることができる。置換基を有するアルキル基である場合には、当該アルキル基の炭素数は、該置換基の炭素数も含めた炭素数の合計で表して、1〜20の範囲である。
【0019】
の「前記G2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基」における「炭素数1〜20のアルコキシ基」の例示は、前記式(1a)のAで例示したもののうち、置換基を有さないものと同じである。Rとしては、上述したアルコキシ基にある水素原子の一部又は全部が、前記G2群より選ばれる基で置換されていてもよい。置換基を有するアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基の炭素数は、該置換基の炭素数も含めた炭素数の合計で表して、1〜20の範囲である。
【0020】
のアリール基を具体的に例示すると、フェニル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基及び2−アントリル基等、あるいは、ここに例示するアリール基にある水素原子の一部又は全部が、前記G2群より選ばれる基で置換されたものを挙げることができる。置換基を有するアリール基である場合には、当該アリール基の炭素数は、該置換基の炭素数も含めた炭素数の合計で表して、6〜20の範囲である。
【0021】
のアリールオキシ基の例示は、前記アリール基の例示で示したもののいずれかと、酸素原子と、を組み合わせた基を挙げることができる。
【0022】
のアシル基を具体的に例示すると、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基及び2−ナフトイル基等、あるいは、ここに例示するアシル基にある水素原子の一部又は全部が、前記G2群より選ばれる基で置換されたものを挙げることができる。置換基を有するアシル基である場合には、当該アシル基の炭素数は、該置換基の炭素数も含めた炭素数の合計で表して、2〜20の範囲である。
【0023】
kは、Rの置換数であり、0〜3の整数を表すが、好ましくは0又は1である。
【0024】
前記芳香族化合物(1)としては、例えば、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−3,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、
【0025】
2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−3,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−3,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−3,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−3,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−3,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、
【0026】
2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−2,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−2,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−2,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−2,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−2,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸n−イコシル、N,N−ジエチル−3,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−3,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−(2,2−ジメチルプロピル)−3,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−3,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、N−n−イコシル−3,5−ジヨードベンゼンスルホンアミド、
【0027】
2,4−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジヨードベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジクロロ−5−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジブロモ−5−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジブロモ−4−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジヨード−5−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジヨード−4−メチルベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジクロロ−5−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロ−4−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジブロモ−5−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジブロモ−4−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジヨード−5−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジヨード−4−メトキシベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、1−(2,5−ジクロロベンゼンスルホニル)ピロリジン等が挙げられる。
なかでも、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、N,N−ジエチル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド及びN−n−ドデシル−2,5−ジクロロベンゼンスルホンアミド、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、N,N−ジエチル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−n−ドデシル−2,5−ジブロモベンゼンスルホンアミドが好ましい。
このような芳香族化合物(1)としては、市場から容易に入手できる市販品を用いることもできるし、公知の製造方法により製造することもできる。
【0028】
次に、芳香族化合物(2)について説明する。
A、R及びXはすでに、芳香族化合物(1)の説明において示したものと具体例を含めて同じである。jは上述のとおり、同一のベンゼン環に結合している置換基Rの置換数であり、0〜3の整数を表すが、好ましくはjは0である。芳香族化合物(2)は、例えば、特開2007−270118号公報に記載された方法により製造することができる。
【0029】
前記芳香族化合物(2)としては、例えば、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジメチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジエチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−プロピル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ブチル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソブチル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジシクロヘキシル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−オクチル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ペンタデシル)、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−イコシル)、
【0030】
N,N−ジメチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジエチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−プロピル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−ブチル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソブチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(2,2−ジメチルプロピル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−オクチル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−ドデシル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−イコシル)−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジフェニル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、
【0031】
3,3’−ジメチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、5,5’−ジメチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、6,6’−ジメチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、5,5’−ジメトキシ−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、6,6’−ジメトキシ−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、3,3’−ジアセチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、5,5’−ジアセチル−4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、
【0032】
4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジメチル、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジエチル、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−プロピル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ブチル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソブチル、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジシクロヘキシル、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−オクチル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−ペンタデシル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(n−イコシル)、
【0033】
N,N−ジメチル−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジエチル−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−プロピル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソプロピル−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジ(n−ブチル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N,N−ジイソブチル−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(2,2−ジメチルプロピル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−オクチル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−ドデシル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド、N−ジ(n−イコシル)−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド及びN,N−ジフェニル−4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホンアミド等を挙げることができる。
【0034】
なかでも、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジイソプロピル及び4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)が好ましい。
【0035】
前記粗ポリアリーレンの製造用原料である芳香族モノマーは、式(1a)で示される基を有する芳香族化合物、好ましくは芳香族化合物(1)又は芳香族化合物(2)を含むものであるが、当該芳香族モノマーには、式(1a)で示される基を有さない芳香族化合物を含むこともできる。このような芳香族化合物として、以下の式(3)で示されるもの(以下、「芳香族化合物(3)」という)、式(4)で示されるもの(以下、「芳香族化合物(4)」という)を具体的に挙げることができる。


式(3)中、Arは2価の芳香族基を表す。ここで、該2価の芳香族基にある水素原子の一部は、フッ素原子;シアノ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアシル基;
で置換されていてもよい。Xは前記式(1)と同じ意味を表す。
ここでいうアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の具体例は、前記芳香族化合物(1)で説明したものと同じである。
【0036】


式(4)中、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に、2価の芳香族基を表す。ここで、該2価の芳香族基にある水素原子の一部は、フッ素原子;シアノ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリール基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;
前記G2群から選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアシル基;
で置換されていてもよい。Xは前記式(1)と同じ意味を表す。
ここでいうアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基及びアシル基の具体例は、前記芳香族化合物(1)で説明したものと同じである。
及びYはそれぞれ独立に、単結合、カルボニル基、スルホニル基、2,2−イソプロピリデン基、2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表す。Z及びZはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xは前記と同じ意味を表す。a、b及びcはそれぞれ独立に、0又は1を表すが、a、b及びcの合計(a+b+c)は1以上である。hは5以上、より好ましくは10以上の整数を表す。
【0037】
前記の式(3)及び式(4)における2価の芳香族基の具体例を示しておく。該2価の芳香族基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニル−1,1’−ジイル基等の2価の単環性芳香族基;ナフタレン−1,3−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−1,7−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、9H−フルオレン−2,7−ジイル基等の2価の縮環系芳香族基;ピリジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル基、ピロール−2,5−ジイル基、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、キノリン−5,8−ジイル基、キノリン−2,6−ジイル基、イソキノリン−1,4−ジイル基、イソキノリン−5,8−ジイル基、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾイミダゾール−4,7−ジイル基、キノキサリン−5,8−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基等の2価のヘテロ芳香族基;等が挙げられる。これらのなかでも、2価の単環性芳香族基及び2価の縮環系芳香族基が好ましく、1,4−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基及びナフタレン−2,7−ジイル基がより好ましい。また、上述のとおり、該2価の芳香族基は置換基を有していてもよいが、本発明により得られる精製ポリアリーレンを燃料電池用構成材料として使用する前提では、燃料電池作動中の発熱等に対する耐熱性をより良好にする点で、該置換基はアリール基、アリールオキシ基又は、ベンゾイル基等の芳香環を持ったアシル基が好ましい。
【0038】
前記粗ポリアリーレンの製造用原料である芳香族モノマーにおいて、芳香族化合物(1)又は芳香族化合物(2)と、芳香族化合物(3)又は芳香族化合物(4)と、を組み合わせて用いる場合、以下の組み合わせが好ましい。
前記芳香族化合物(1)と前記芳香族化合物(3)との組み合わせ;
前記芳香族化合物(2)と前記芳香族化合物(3)との組み合わせ;
前記芳香族化合物(1)と前記芳香族化合物(4)との組み合わせ;又は
前記芳香族化合物(2)と前記芳香族化合物(4)との組み合わせ
【0039】
芳香族化合物(3)としては、例えば、2,5−ジクロロ−4’−フェノキシベンゾフェノン、2,5−ジクロロベンゾフェノン、2’,5’-ジクロロアセトフェノン、1,3−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロアニソール、1,3−ジクロロベンゾトリフルオリド、1,4−ジブロモ−2−エチルベンゼン、1,4−ジブロモ−2−メトキシベンゼン、ジメチル 2,5−ジブロモテレフタレート、1,4−ジブロモナフタレン、1,1’−ジブロモ−4,4’−ビフェニル、1,4−ジブロモ−2,5−ジヘキシルオキシベンゼン、1−ブロモ−4−クロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1−ブロモ−4−クロロトルエン、1−ブロモ−4−クロロ−2−プロピルベンゼン、2,5−ジブロモ−4’−フェノキシベンゾフェノン、2,5−ジブロモチオフェン、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン、2,5−ジブロモ−3−ドデシルチオフェン、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン、2,5−ジブロモ−3−シクロヘキシルチオフェン、2,5−ジクロロ−3−オクチルチオフェン、2,5−ジクロロ−3−フェニルチオフェン、1−メチル−2,5−ジクロロピロール、1−ヘキシル−2,5−ジブロモピロール、1−オクチル−2,5−ジクロロピロール、2,5−ジクロロピリジン、3,5−ジクロロピリジン、2,5−ジブロモピリジン、3−メチル−2,5−ジクロロピリジン、3−ヘキシル−2,5−ジクロロピリジン、5,5’−ジクロロ−2,2’−ビピリジン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジクロロ−2,2’−ビピリジン、3,3’−ジオクチル−5,5’−ジブロモ−2,2’−ビピリジン、2,5−ジクロロピリミジン、2,5−ジブロモピリミジン、5,8−ジクロロキノリン、5,8−ジブロモキノリン、2,6−ジクロロキノリン、1,4−ジクロロイソキノリン、5,8−ジブロモイソキノリン、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、4,7−ジクロロベンゾイミダゾール、5,8−ジクロロキノキサリン、5,8−ジクロロ−2,3−ジフェニルキノキサリン、2,6−ジブロモキノキサリン、2,7−ジブロモ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2,7−ジブロモ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、2,7−ジクロロ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジヘキシル−9H−フルオレン、2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン及び2−ブロモ−7−クロロ−9,9−ジドデシル−9H−フルオレン等が挙げられる。
かかる芳香族化合物(3)としては、市場から容易に入手できる市販品を用いてもよいし、公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
【0040】
芳香族化合物(4)としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】
かかる芳香族化合物(4)には、例えば特許第2745727号等に記載されているような公知の方法に準じて製造したものを用いることもできるし、市販されているものを用いてもよい。市販されているものとしては、例えば、住友化学株式会社製スミカエクセルPES等が挙げられる。芳香族化合物(4)としては、そのポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000以上のものを用いることが好ましく、2,000以上であるものがより好ましい。
【0050】
芳香族モノマーの重合による粗ポリアリーレンの製造
工程(1)の粗ポリアリーレンの製造方法(以下、「粗ポリアリーレン製造方法」という)は、前記芳香族化合物を含む芳香族モノマー、好ましくは芳香族化合物(1)又は芳香族化合物(2)を含む芳香族モノマーを重合するものである。ここでは該粗ポリアリーレンを得るための重合方法、ならびに得られる好適な粗ポリアリーレンについて説明する。
【0051】
前記粗ポリアリーレン製造方法は、前記芳香族モノマーを遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合する方法である。ここでいう「非プロトン性極性有機溶媒中」とは、少なくとも用いる芳香族モノマーが溶解し得る非プロトン性極性有機溶媒を用いて重合を行うことを意味し、さらに該非プロトン性極性有機溶媒は、生成した粗ポリアリーレンも十分溶解し得るものであると好ましい。
このような非プロトン性極性有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン及びヘキサメチルホスホリックトリアミド等、もしくはこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が用いられる。また、前記粗ポリアリーレン製造方法には、芳香族モノマーが溶解し難くならない程度であれば、トルエン及びキシレン等の芳香族系有機溶媒;テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル及び1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒を、前記非プロトン性極性有機溶媒と合わせて用いてもよい。このような非プロトン性極性有機溶媒以外の溶媒(他の溶媒)を用いる場合には、非プロトン性極性有機溶媒100重量部に対し、他の溶媒が1〜50重量部であることが好ましい。前記粗ポリアリーレン製造方法における溶媒の使用量は、多すぎると低分子量の粗ポリアリーレンが得られ易く、少なすぎると芳香族モノマーが溶解し難くなったり、重合後の反応混合物(重合反応液)の性状が悪くなったり、することがある。したがって、非プロトン性極性有機溶媒の使用量は、用いる芳香族モノマーの総重量に対して、1〜200重量倍であることが好ましく、5〜100重量倍であることがさらに好ましい。
【0052】
前記粗ポリアリーレン製造方法においては、芳香族モノマーに加えて、反応試剤として銅等の遷移金属を用いるか、触媒として遷移金属化合物を用いるが、触媒として遷移金属化合物を用いることが好ましい。また、該遷移金属又は該遷移金属化合物から解離する金属原子に配位し得る化合物(配位子化合物)を混合することが好ましい。また、これらに加えて、さらに還元剤を用いることが好ましい。以下、このように、遷移金属化合物、配位子化合物及び還元剤を用いる好適な粗ポリアリーレン製造方法について詳細に説明する。
【0053】
前記遷移金属化合物としては、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)等のゼロ価ニッケル化合物;フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル及びヨウ化ニッケル等のハロゲン化ニッケル;ギ酸ニッケル及び酢酸ニッケル等のニッケルカルボン酸塩;硫酸ニッケル;炭酸ニッケル;硝酸ニッケル;ニッケルアセチルアセトナート、(ジメトキシエタン)塩化ニッケル;等のニッケル化合物、
塩化パラジウム、臭化パラジウム及びヨウ化パラジウム等のパラジウム化合物、
塩化鉄、臭化鉄及びヨウ化鉄等の鉄化合物、
塩化コバルト、臭化コバルト及びヨウ化コバルト等のコバルト化合物
が挙げられる。これらのうちニッケル化合物が好ましく、該ニッケル化合物の中でもハロゲン化ニッケルが特に好ましい。
遷移金属化合物の使用量は、少なすぎると低分子量の粗ポリアリーレンが得られやすく、多すぎると、重合反応後の後処理が煩雑になる傾向があるため、用いる芳香族モノマーの総物質量に対して、0.001〜5モル倍が好ましく、0.01〜3モル倍がさらに好ましい。
【0054】
前記配位子化合物としては、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン及び1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。これらの中でも、前記遷移金属原子に対して二座で配位し得る配位子化合物(二座配位子化合物)が好ましく、2,2’−ビピリジン及び1,10−フェナントロリンがさらに好ましい。なお、該配位子化合物は、2種以上を用いてもよい。配位子化合物として二座配位子化合物を用い、遷移金属化合物としてニッケル化合物を用いる場合には、使用したニッケル化合物にあるニッケル原子の総物質量に対して、該二座配位子化合物を0.2〜5モル倍用いると好ましく、1〜3モル倍用いるとさらに好ましい。
【0055】
前記粗ポリアリーレン製造方法においては、その反応系中で前記遷移金属化合物にある金属原子が酸化して、金属イオンになることがある。このようにして発生した金属イオンを還元するために還元剤を用いることが好ましく、かかる還元剤には金属還元剤が好ましい。該金属還元剤としては、例えば、亜鉛、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム及びカルシウム等を挙げることができるが、亜鉛、マンガン及びマグネシウムが好ましい。還元剤を用いる場合、その使用量は、芳香族モノマーの総物質量に対して、1モル倍以上であることが好ましい。還元剤の使用量の上限は特に制限されないが、多すぎると、経済的に不利であるため、10モル倍以下が好ましく、5モル倍以下がさらに好ましい。
遷移金属化合物として、ハロゲン化ニッケル等のニッケル化合物を用いる場合は、金属還元剤としては亜鉛が好ましい。この亜鉛は取扱いが容易である点で、粉末状のものが用いられる。また、金属還元剤として亜鉛を用いる場合、前記粗ポリアリーレン製造方法に用いる前に、必要に応じて、この亜鉛を活性化処理してもよい。なお、亜鉛の活性化処理は、例えば、J.Org.Chem.p.3833(1983)に記載されている。
【0056】
前記粗ポリアリーレン製造方法には、遷移金属化合物以外のハロゲン化塩を、遷移金属化合物と合わせて用いることができる。このようなハロゲン化塩の使用により、芳香族モノマーの重合速度をさらに上げることができる。かかるハロゲン化塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化カリウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等のハロゲン化アンモニウム等が挙げられ、ハロゲン化ナトリウムが好ましく、ヨウ化ナトリウムがより好ましい。その使用量は、用いる芳香族モノマーの総物質量に対して、0.001〜1モル倍が好ましく、0.05〜0.2モル倍がさらに好ましい。
【0057】
前記粗ポリアリーレン製造方法に係る反応温度は、用いる芳香族モノマーの種類や、用いる遷移金属化合物、配位子化合物及び還元剤の種類及びその量により、0〜250℃の範囲から調節できる。好ましい反応温度は15〜100℃の範囲である。重合時間は、たとえば液体クロマトグラフィー分析により、芳香族モノマーの消費の度合いを求めたり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、生成した粗ポリアリーレンが所望の分子量に到達したことを求めたり、することにより、0.1〜48時間の範囲から調節できる。また、前記粗ポリアリーレン製造方法において、芳香族モノマーから粗ポリアリーレンを生成する過程は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0058】
かくして得られる粗ポリアリーレンは、前記芳香族化合物(1)を芳香族モノマーとして用いた場合、かかる前記芳香族化合物(1)に由来する式(5)で示される繰り返し単位(繰り返し単位(5))を有している。

(式中、A、m、R及びkは前記式(1)と同じ意味である。)
また、前記芳香族化合物(2)を芳香族モノマーとして用いた場合、かかる前記芳香族化合物(2)に由来する式(6)で示される繰り返し単位(繰り返し単位(6))を有している。


(式中、A、R及びjは前記式(2)と同じ意味である。)
さらに、前記芳香族化合物(3)を芳香族モノマーとして用いた場合、かかる前記芳香族化合物(3)に由来する式(7)で示される繰り返し単位(繰り返し単位(7))を有している。



(式中、Arは前記式(3)と同じ意味である。)
【0059】
さらに、前記芳香族化合物(4)を芳香族モノマーとして用いた場合、かかる前記芳香族化合物(4)に由来する式(8)で示される繰り返し単位(繰り返し単位(8))を有している。

(式中、Ar、Ar、Ar、Ar、Y、Y、Z、Za、b、c及びhは前記式(4)と同じ意味である。)
【0060】
以下に、繰り返し単位(5)及び繰り返し単位(7)を含む粗ポリアリーレン、繰り返し単位(6)及び繰り返し単位(7)を含む粗ポリアリーレン、繰り返し単位(5)及び繰り返し単位(8)を含む粗ポリアリーレン、繰り返し単位(6)及び繰り返し単位(8)を含む粗ポリアリーレン、において、各繰り返し単位の好適なものを挙げておく。なお、この好適な繰り返し単位は、各々対応する芳香族化合物(1)、芳香族化合物(2)、芳香族化合物(3)又は芳香族化合物(4)に由来するものであり、ポリアリーレン中にある、各繰り返し単位の共重合比は芳香族モノマーとして使用する各芳香族化合物の使用量比によりコントロールすることができる。
【0061】
繰り返し単位(5)としては、例えば、以下の(5a)、(5b)、(5c)、(5d)及び(5e)で示されるものが挙げられる。

【0062】
繰り返し単位(6)としては、例えば、以下の(6a)、(6b)、(6c)及び(6d)で示されるものが挙げられる。

【0063】
繰り返し単位(7)としては、例えば、以下の(7a)、(7b)、(7c)、(
7d)及び(7e)で示されるものが挙げられる。

【0064】

【0065】
繰り返し単位(8)としては、例えば、以下の(8a)〜(8x)で示されるものが挙げられる。


【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】
前記粗ポリアリーレン製造方法により得られた重合反応液には、生成した粗ポリアリーレン及び非プロトン性極性有機溶媒を含有しており、さらには遷移金属化合物及び配位子化合物が含有されている。先に例示した好ましい金属還元剤は非プロトン性極性有機溶媒に対して不溶であるものの、該金属還元剤の一部が酸化された金属イオンが重合反応液に含有されていることもある。また、前記ハロゲン化塩を用いた場合には、このハロゲン化塩も重合反応液には含有されていることもある。したがって、該重合反応液には、目的物であるポリアリーレン以外に金属不純物が含有されている。後述する抽出操作による精製は、このような金属不純物の除去に特に有効である。
【0078】
<工程(2)及び工程(3)>
抽出操作による精製操作
すでに述べたとおり、前記特許文献2に具体的に記載されている抽出操作により、式(1a)で示される基を有するポリアリーレンの精製を行おうとしても、有機層と水層との分液性が極めて悪いという問題やポリアリーレン自体が有機溶媒に溶解しないという問題がある。本発明者等は、前記粗ポリアリーレン製造方法で得られた前記重合反応液に、芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒を混合することにより、該分液性が著しく良好になることを見出した。なお、本発明でいう分液性が良好であるとは、有機層と水層との界面が、目視で明瞭に観察される程度に有機層と水層とが層分離し、該有機層と該水層との間に前記乳化層や、析出物の発生が、目視で明瞭に観察されないことをいう。
【0079】
本発明に用いる芳香族系有機溶媒とは、分子内に芳香環を有し、23℃程度の室温下及び大気圧下の条件で液状を示し、水と互いに混和しないものである。
該芳香族系有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びメシチレン等の芳香族炭化水素;ベンゾトリフルオリド及びクロロベンゼン等のハロ芳香族炭化水素;アニソール及びジベンジルエーテル等の芳香族エーテルが具体的に例示され、中でも、芳香族炭化水素が好ましい。なお、上述の芳香族エーテルは、後述する酸素含有有機溶媒にも該当するものであり、たとえばジベンジルエーテルを用いれば、このジベンジルエーテルのみで、芳香族系有機溶媒と酸素含有有機溶媒とを用いたことに相当することになるが、かかるジベンジルエーテルなどの芳香族エーテルを用いる場合には、ケトン溶媒又はアルコール溶媒を酸素含有有機溶媒として用いることが好ましく、ケトン溶媒を酸素含有有機溶媒として用いることがさらに好ましい。
該芳香族系有機溶媒の使用量は、前記重合反応液に含まれる非プロトン性極性有機溶媒の重量を基準にして、好ましくは0.1〜5重量倍、より好ましくは0.3〜3重量倍である。なお、前記ポリアリーレン製造方法において、非プロトン性極性有機溶媒に加えて、芳香族系有機溶媒を用いた場合、得られる重合反応液にはこの芳香族系有機溶媒を含んでいる。この場合において、芳香族系有機溶媒を決定するときには、重合反応液に含まれている芳香族系有機溶媒の重量を勘案して、重合反応液に混合する芳香族系有機溶媒の使用量を定めればよい。
【0080】
酸素含有有機溶媒とは分子内に酸素原子を有し、23℃程度の室温下及び大気圧下の条件で液状を示すものであり、かつ上述の非プロトン性極性有機溶媒とは異なる溶媒を意味する。具体的には、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒又はアルコール系溶媒を意味する。なお、これらの酸素含有有機溶媒は、その分子内に芳香環を有さず、前記芳香族系有機溶媒に該当しないものが好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル及び1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びエチレングリコール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。ここに例示する酸素含有有機溶媒はいずれも、非プロトン性極性有機溶媒の概念には包含されないものである。これらの中でも本発明に用いる酸素含有有機溶媒は、エーテル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。酸素含有有機溶媒の使用量としては、重合反応液に含まれる非プロトン性極性有機溶媒の重量を基準にして、0.3〜5重量倍が好ましく、0.5〜3重量倍がさらに好ましい。
【0081】
前記芳香族系有機溶媒及び前記酸素含有有機溶媒の合計重量は、前記重合反応液の重量を基準にして0.4〜8重量倍が好ましく、0.8〜6重量倍がさらに好ましい。
【0082】
以上、本発明の製造方法に用いる芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒について説明したが、前記重合反応液に含有される非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒の関係は、これらの総重量(非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒の総重量)に対して、芳香族系有機溶媒が5〜60重量%であると好ましく、15〜50重量%であるとさらに好ましい。一方、総重量(非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒及び酸素含有機溶媒の総重量)に対して、該酸素含有有機溶媒が10〜70重量%であると好ましく、20〜60重量%であるとさらに好ましい。
【0083】
前記重合反応液に、前記芳香族系有機溶媒及び前記酸素含有有機溶媒と、酸と、水と、を混合する。この混合順は特に限定されない。予め重合反応液に酸を加えることにより、当該重合反応液に含まれている金属不純物を十分溶解させてから、さらに、芳香族系有機溶媒、酸素含有有機溶媒及び水を加える形式でもよく、
重合反応液に酸を加えるに当たり、この酸を水とともに加え、次いで芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒を加える形式でもよく、
予め重合反応液に芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒を加え、粗ポリアリーレンを十分溶解しておいてから、酸及び水を加える形式でもよく、
2つの混合容器を準備し、第1の混合容器において、水と酸とを混合した酸水溶液を調製しておき、第2の混合容器に重合反応液を投入し、ここに第1の混合容器中で調製した酸水溶液を仕込む。重合反応液と酸水溶液とを十分に攪拌した後、これに前記芳香族系有機溶媒及び前記酸素含有有機溶媒を加えて攪拌する形式でもよい。
【0084】
使用する酸は、温度25℃における酸解離定数(pKa)が6以下の酸であり、前記ポリアリーレン製造方法で使用した遷移金属化合物や金属還元剤に由来する金属不純物を溶解するものがよい。なお、酸が多塩基酸である場合は1段目の酸解離定数が6以下のものである。このような酸としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及びメタンスルホン酸などが好ましく、塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸、及びメタンスルホン酸がさらに好ましい。酸の使用量は、多すぎると、分液後の排水を処理するうえでの負荷が大きくなるので、前記粗ポリアリーレン製造方法で使用した遷移金属化合物や還元剤等の使用量から、前記重合反応液に含まれている金属不純物の物質量を推算し、当該物質量に対して、0.1〜100モル倍の酸を用いることが好ましく、0.2〜30モル倍を用いることがさらに好ましい。さらに、酸の種類ならびにその使用量は、用いる混合容器において酸が接触する部分の材質を考慮して最適なものを選択することもできる。また、酸及び水の合計使用量は、非プロトン性極性有機溶媒100重量部を基準にして、5〜300重量部が好ましく、20〜200重量倍がさらに好ましい。
【0085】
本発明の抽出操作において、前記粗ポリアリーレン製造方法に係る非プロトン性極性有機溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド又はN−メチル−2−ピロリドンを用いた場合、前記芳香族系有機溶媒、前記酸素含有有機溶媒及び酸の特に好ましい組み合わせについて記しておく。この場合には、前記芳香族系有機溶媒としてはトルエン又はキシレンが、前記酸素含有有機溶媒としてはテトラヒドロフラン又はメチルエチルケトンが、酸としては塩酸、酢酸又は臭化水素酸が、特に好適な組み合わせとして挙げることができる。
【0086】
前記重合反応液に、前記芳香族系有機溶媒、前記酸素含有有機溶媒、酸及び水を混合して混合物を得た後、この混合物を十分に攪拌することにより、金属不純物を水層に、当該金属不純物を除去した精製ポリアリーレンを有機層に、各々分配させる。この攪拌に係る攪拌温度及び攪拌時間も適宜調節できるが、攪拌温度としては、室温(約23℃)以上であって、該混合物が緩やかに蒸発還流する温度以下の範囲であればよい。ここで、混合物を蒸発還流させる場合には、混合容器に適切な還流器を設けることが好ましい。また、攪拌時間は、攪拌温度等により調節できるが、0.1〜5時間が好ましく、0.2〜3時間がさらに好ましい。
【0087】
前記混合物を十分に攪拌した後、当該攪拌を停止し、有機層と、水層とが層分離するまで、混合物を静置する。攪拌を停止したときから、有機層と、水層とが層分離するまでの静置時間は、用いた混合容器に目視により層分離が観察できるような手段が設けられている場合には、目視により有機層と水層との界面が明瞭に観察される時点を求めればよい。そのような手段が設けられていない混合容器を用いる場合には、たとえばガラス製分液ロート等を用いた予備実験を実施し、静置時間を求めておくこともできる。
【0088】
工程(3)において、有機層と水層とが層分離するまで十分静置した後、分液操作により有機層と水層とを分離する。かかる分液操作には、混合容器中にある混合物を、サイトグラス付抜出口を備えた分液槽に移液してから行ってもよいし、混合容器に予めサイトグラス付抜出口が備えられている場合には、それを用いることもできる。また、当該混合容器に適切な界面検出手段(たとえば、導電率測定界面検出器等)を備えておいてもよい。かくして、水層と有機層とを分離(分液)した後、水層を分離した後の有機層は、金属不純物が除去された精製ポリアリーレンが含まれている。該有機層に残存している金属不純物をさらに除去するため、該有機層を水洗することもできる。この水洗には、水層を分離した後の有機層に、さらに水を加えた後、攪拌、静置、分液といった一連の操作を行えばよく、かかる攪拌、静置、分液に係る条件のそれぞれは、上述した重合反応液に芳香族系有機溶媒、酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合した混合液の場合と略同じである。また、この水洗において、有機層に水を加える代わりに、酸及び水から調製される酸水溶液を加え、該有機層を酸洗浄してもよい。このような水洗又は酸洗浄を行う場合、該有機層にある金属不純物の含有量を適当な分析手段により分析し、該含有量が所望の範囲になったことを確認して、水洗又は酸洗浄の条件等を定めることもできる。また、このような水洗又は酸洗浄を行うときの分液性をさらに良好にするために、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒又は酸素含有有機溶媒を有機層に追加してもよい。
【0089】
抽出操作による精製を行った有機層に含まれている精製ポリアリーレンは、当該有機層を、当該精製ポリアリーレンが難溶な有機溶媒(たとえば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)中に投入するといった操作により、精製ポリアリーレンを析出させ、析出物をろ過するといった操作により、該精製ポリアリーレンを固体状で取り出すこともできる。固体状で取り出された精製ポリアリーレンは必要に応じて乾燥等を行ってもよい。
また、該有機層は、精製ポリアリーレンが、芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒に溶解された精製ポリアリーレン溶液とみなすことができる。この精製ポリアリーレン溶液をそのまま次工程の反応に供することもできる。該精製ポリアリーレンは、上述のように式(1a)で示される基を有しているので、精製ポリアリーレンにある式(1a)で示される基の一部又は全部を、適切な変換処理(上述した加水分解処理等)によりスルホン酸基に変換させることもできる。なお、このような式(1a)で示される基からスルホン酸基への変換の条件については後述することにする。
【0090】
以上、前記工程(1)に示す前記粗ポリアリーレン製造方法により得られた重合反応液を用い、前記工程(2)及び前記工程(3)に係る抽出操作による精製ポリアリーレンの製造方法を説明したが、かかる抽出操作には、水の代わりに無機塩水溶液を用いることができる。水の代わりに無機塩水溶液を使用すると分液速度が速くなり、有機層と水層とが層分離までの時間をより短くすることができるため、抽出操作がより簡便になるという利点がある。この無機塩水溶液に用いる無機塩としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び亜硝酸ナトリウム等のナトリウム塩;塩化カリウム、臭化カリウム、硫酸カリウム及び酢酸カリウム等のカリウム塩;塩化リチウム、臭化リチウム、硫酸リチウム及び酢酸リチウム等のリチウム塩;塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩;塩化カルシウム等のカルシウム塩を用いることができ、これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が好ましい。無機塩水溶液の無機塩濃度は、当該無機塩水溶液から無機塩が析出しない程度であれば、より高濃度である方が、より分液速度を速める傾向がある。また、前記抽出操作に水を用いると、混合物中の水層に微量の芳香族系有機溶媒や酸素含有有機溶媒が溶解することがある。水の代わりに無機塩水溶液を用いると、このような芳香族系有機溶媒や酸素含有有機溶媒の水層への混入を抑制することもできる。ただし、無機塩水溶液の使用は抽出操作の過程で、ごく微量の無機塩が有機層に含有されることもあり、結果として前記金属不純物を除去した精製ポリアリーレンにごく微量の無機塩が混入することもある。したがって、得られる精製ポリアリーレンに許容できる無機塩の含有量と、分液速度向上により抽出操作の簡便さと、を考慮して、無機塩水溶液の使用は決定することが好ましい。なお、水の代わりに無機塩水溶液を用いる場合にも、酸及び当該無機塩水溶液の合計使用量は、すでに説明した酸及び水の合計使用量と略同じである。
【0091】
<工程(1’)及び工程(2’) 工程(1)及び工程(2)の変形例>
また、本発明の製造方法においては、前記ポリアリーレン製造方法により得られた重合反応液から、予めポリアリーレンを固体状(固体状粗ポリアリーレン)で取り出した後、かかる固体状粗ポリアリーレンに、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、該非プロトン性極性有機溶媒とは異なる酸素含有有機溶媒、酸及び水を混合し、該固体状粗ポリアリーレンに含まれる金属不純物を除去することもできる。すなわち、前記工程(1)を以下の工程(1’)に置き換え、前記工程(2)を以下の工程(2’)に置き換えることができる。
工程(1’):以下の式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を含む芳香族モノマーを、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより重合反応液を得、該重合反応液から金属不純物を含む粗ポリアリーレンを分離する工程;
工程(2’):工程(1’)で得られた粗ポリアリーレンに、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、前記非プロトン性極性有機溶媒とは異なる含酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、該粗ポリアリーレンに含まれていた不純物を、該混合物中の水層に、該不純物が除去された精製ポリアリーレンを、該混合物中の有機層に、それぞれ分配する工程;
前記工程(1’)において、重合反応液から固体状粗ポリアリーレンを取り出すには、該重合反応液を、かかる粗ポリアリーレンが難溶な有機溶媒(たとえば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)に投入する等により、固体状粗ポリアリーレンを析出させ、これをろ過するといった一連の操作によればよい。このような操作によって取り出された固体状粗ポリアリーレンには、重合反応液に含有されていた非プロトン性極性有機溶媒や、析出に使用した低級アルコール等が含まれている。これらの非プロトン性極性有機溶媒や低級アルコールは乾燥処理によって除去することもできるが、そのまま後述する抽出操作に用いることもできる。該固体状粗ポリアリーレンに、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、該酸素含有有機溶媒、酸及び水を混合する際、これらの混合順序は特に限定されるものではない。また、この非プロトン性極性有機溶媒の具体例は、前記重合方法で例示したものと同じであるが、固体状粗ポリアリーレンを取り出す前の重合反応液に含まれていたものと同じ溶媒が好ましい。また、該芳香族系有機溶媒の具体例は上述のとおりであり、トルエン又はキシレンが好ましく、該酸素含有有機溶媒の具体例も上述のとおりであり、エーテル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましく、水と混和しないものがさらに好ましく、テトラヒドロフラン又はメチルエチルケトンが特に好ましい。使用できる酸もすでに例示したものと同じであり、塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸又はメタンスルホン酸が好ましい。このように、固体状粗ポリアリーレン、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、酸素含有有機溶媒、酸及び水を混合する過程における、温度及び時間は、すでに重合反応液を用いる場合で説明した範囲と同じである。また、この固体状粗ポリアリーレンを用いる抽出操作においても、水の代わりにすでに例示した無機塩水溶液を用いてもよい。
【0092】
固体状粗ポリアリーレン、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、酸素含有有機溶媒、酸及び水を混合した後、攪拌を停止する等して、混合物を十分静置する。かかる固体状粗ポリアリーレンを用いた場合であったとしても、分液性に対する2種の溶媒(芳香族系有機溶媒及び酸素含有有機溶媒)の効果は十分享受され、乳化層を発生することなく、有機層と水層との界面が明瞭に観察される程度に、有機層と水層とは層分離する。そして、層分離した後、分液操作により有機層と水層とを分離し、有機層から精製ポリアリーレンを取り出せば、該精製ポリアリーレンは金属不純物が十分除去されているものとなる。
【0093】
<精製ポリアリーレン>
本発明の製造方法により得られた精製ポリアリーレンは、燃料電池の構成材料として特に好ましく用いることができる。該精製ポリアリーレンを燃料電池の構成材料として用いる場合は、該精製ポリアリーレンにある前記式(1a)で示される基を、スルホン酸基に変換しておくことが望まれる。前記式(1a)で示される基をスルホン酸基に変換するには、該精製ポリアリーレンを、酸又はアルカリの存在下で加水分解するか、もしくは、該精製ポリアリーレンを、アルカリ金属ハロゲン化物又はハロゲン化四級アンモニウム塩と反応させればよい。なお、アルカリ金属ハロゲン化物又はハロゲン化四級アンモニウム塩と反応させた場合、得られるスルホン酸基含有ポリアリーレンにあるスルホン酸基の一部又は全部は、アルカリ金属イオン又四級アンモニウムイオンにより塩を形成していることがある。この場合は適切な酸処理により、遊離のスルホン酸基にイオン交換することが可能である。
また本発明の製造方法において、前記重合反応液と、酸及び水(又は無機塩水溶液)と、を接触させる過程で、該重合反応液に含まれる粗ポリアリーレンにある式(1a)で示される基の一部はスルホン酸基に変換されていることもある。または、前記固体状粗ポリアリーレンと、酸及び水(又は無機塩水溶液)と、を接触させる過程で、該固体状粗ポリアリーレンにある式(1a)で示される基の一部はスルホン酸基に変換されていることもある。このように、本発明の製造方法において、抽出操作による精製の途中で、式(1a)で示される基の一部はスルホン酸基に変換されていることがあったとしても、有機層と水層との分液性は悪化することはない。なお、本発明で得られた精製ポリアリーレンにおいて、式(1)で示される基の一部がスルホン酸基に変換されている場合、スルホン酸基の存在は、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の公知の分析手段により求めることができる。また、本発明の製造方法において、重合反応液に含有される粗ポリアリーレン又は固体状粗ポリアリーレンの分子量と、得られる精製ポリアリーレンの分子量とは著しく変化することはない。かかる分子量は、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析等により求めることができる。
【0094】
かくして本発明の製造方法により得られる精製ポリアリーレンから、その式(1a)で示される基の一部又は全部をスルホン酸基に変換して得られるスルホン酸基含有ポリアリーレンは、粗ポリアリーレン製造方法で使用されていた遷移金属化合物等に由来する金属不純物が十分除去されているので、燃料電池用構成材料として極めて好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。得られたポリアリーレンを、ゲル浸透クロマトグラフィーにより分析(分析条件は下記のとおり)し、分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。
<分析条件>
測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK−GEL(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:臭化リチウム含有N,N−ジメチルホルムアミド(臭化リチウム濃度:10mmol/dm
流量:0.5mL/分
検出:UV検出(波長:300nm)
【0096】
金属含量(金属不純物の含有量)は、被測定試料を硫硝酸分解により分解させた後、分解物を塩酸に溶解させ、ICP発光分析を行い、硫硝酸分解前の被測定試料の重量を基準にして算出した。
【0097】
また、イオン交換容量は滴定法により求めた。
【0098】
[製造例1]
冷却装置を備えたガラス製反応容器内を窒素で十分置換した後、室温下で該ガラス製反応容器に、臭化ニッケル151mg、2,2’−ビピリジン162mg、下記式

で示されるスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=40,000、Mn=24,000:上記分析条件で測定)1.09g、及びN,N−ジメチルアセトアミド50mLを仕込んだ。内温を65℃まで昇温した後、同温度を保持しつつ、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)1.9gを加え、さらに亜鉛粉末450mg加えた。温度を60℃とし、同温度で4時間重合反応を行い、下記

で示される繰り返し単位と下記


で示される繰り返し単位と、を含む粗ポリアリーレンを含む重合反応液を得た。当該粗ポリアリーレンのMwは164,000であり、Mnは65,000であった。
【0099】
[実施例1]
製造例1で得られた重合反応液100重量部に、トルエン50重量部、テトラヒドロフラン50重量部、酢酸4重量部及び15重量%塩化ナトリウム水溶液50重量部を加えて混合物を調製し、該混合物を80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し、30分静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)はやや粘性がある灰色懸濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。下層の水層を分離して、精製ポリアリーレンAを含む有機層133重量部を得た。この有機層の金属含量を分析したところ、ニッケル量(以下、「Ni」のように表記する)14重量ppm、亜鉛((以下、「Zn」のように表記する)600重量ppmであり、それぞれ、重合に用いた臭化ニッケル及び亜鉛の量から推算される金属不純物の量に対し、9割程度は除去されたことが判明した。
得られた有機層から減圧蒸留により溶媒を留去した後、残渣にN,N−ジメチルアセトアミドを加えて、精製ポリアリーレンAを含む溶液80重量部を得た。これに30重量%臭化リチウム水溶液11重量部を加え、さらに120℃まで昇温し、同温度で8時間加熱することで、スルホン酸基変換を行い、スルホン酸基含有ポリアリーレンBを得た。反応混合物を室温まで冷却した後、19重量%塩酸に注ぎ込み、スルホン酸基含有ポリアリーレンBを析出させた。析出したスルホン酸基含有ポリアリーレンBをろ過し、塩酸洗浄、水洗浄及びメタノール洗浄した後、減圧乾燥して、スルホン酸基含有ポリアリーレンA3.3重量部を得た。かかるスルホン酸基含有ポリアリーレンBは、下記

で示される繰り返し単位と下記

で示される繰り返し単位を含むものであり、白色粉状固体であった。H−NMRスペクトルを測定し、式(1a)で示される基(2,2−ジメチルプロポキシスルホニル基)が略定量的にスルホン酸基に変換されていることが判明した。また、このスルホン酸基含有ポリアリーレンBのイオン交換容量は2.53meq/gであった。金属含量はNiが10重量ppm未満、Znが10重量ppm未満と、どちらもICP−発光分析の検出限界以下であった。
【0100】
[実施例2]
製造例1で得られた重合反応液100重量部に、トルエン50重量部、15重量%塩化ナトリウム水溶液75重量部、19重量%塩酸12重量部及びテトラヒドロフラン75重量部を加えて混合物を調製し、当該混合物を60℃で攪拌した。15分静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)はやや粘性がある白濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。下層の水層を分離して、精製ポリアリーレンCを含む上層(有機層)を140重量部得た。この有機層は室温まで冷却しても析出物はなく、また、ゼリー状にもならず、良好な性状であった。かくして得られた有機層には、重合に用いた遷移金属化合物等に由来する金属不純物が十分除去されており、該精製ポリアリーレンCから実施例1と同じ操作によりスルホン酸基変換を行って得られるスルホン酸基含有ポリアリーレンDは、スルホン酸基含有ポリアリーレンBと同じく、金属不純物が十分除去されたものとなる。
【0101】
[比較例1]
実施例2において、テトラヒドロフラン75重量部を用いない以外は実施例2と同じ抽出操作を試みた。しかし、60℃で攪拌した後、30分静置しても、有機層と水層との界面は明瞭に観察されず、有機層/水層の界面は不良であり、有機層には白色物の析出も観察され、分液操作を行うことは困難であった。
【0102】
[実施例3]
実施例2において、テトラヒドロフラン75重量部の代わりにメチルエチルケトン60重量部を、15重量%塩化ナトリウム水溶液75重量部の代わりに、15重量%塩化ナトリウム水溶液80重量部を、用いた以外は実施例2と同じ実験を行った。15分静置後には、有機層と水層とが層分離し、有機層(上層)はやや粘性がある白濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。この有機層は室温まで冷却しても析出物はなく、また、ゼリー状にもならず、良好な性状であった。かくして得られた有機層には、重合反応に用いた遷移金属化合物等に由来する金属不十分は十分除去されており、該有機層に含まれている精製ポリアリーレンEから実施例1と同じ操作によりスルホン酸基変換を行って得られるスルホン酸基含有ポリアリーレンFは、スルホン酸基含有ポリアリーレンBと同じく、金属不純物が十分除去されたものとなる。
【0103】
[比較例2]
製造例1で得られた重合反応液100重量部に、濃硫酸10重量部加え、さらに、メチルイソブチルケトン90重量部及び10重量%塩化ナトリウム水50重量部を加えて抽出操作を試みた。しかし、50℃で攪拌した後、30分静置しても、有機層と水層との界面は明瞭に観察されず、有機層/水層の界面は不良であり、有機層には白色物の析出も観察され、分液操作を行うことは困難であった。
【0104】
[比較例3]
実施例2において、トルエン50重量部及びテトラヒドロフラン75重量部の代わりに、メチルイソブチルケトン50重量部及びテトラヒドロフラン50重量部を用いた以外は実施例2と同じ抽出操作を試みた。しかし、60℃で攪拌した後、30分静置しても、有機層と水層との界面は明瞭に観察されず、有機層/水層の界面は不良であり、分液操作を行うことは困難であった。
【0105】
[実施例4]
製造例1で得られた重合反応液100重量部に、トルエン50重量部及び19重量%塩酸9重量部を加えて混合物を調製し、当該混合物を80℃まで昇温した。このとき、混合物の色目は黒色から緑色に変化した。続いて、メチルエチルケトン80重量部及び15重量%塩化ナトリウム水溶液70重量部を加えて、温度を60℃とし、同温度で1時間攪拌した。攪拌を停止し、30分静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)はやや粘性がある灰色懸濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。下層の水層を分離して、精製ポリアリーレンGを含む有機層132重量部を得た。この有機層の金属含量を分析したところ、Ni10重量ppm未満、Zn490重量ppmであり、それぞれ、重合に用いた臭化ニッケル及び亜鉛の量から推算される金属不純物の量に対し、9割程度は除去されたことが判明した。
得られた有機層から減圧蒸留により溶媒を留去した後、残渣にN,N−ジメチルアセトアミドを加えて、精製ポリアリーレンGを含む溶液を80重量部得た。これに30重量%臭化リチウム水溶液11重量部を加え、さらに120℃まで昇温し、同温度で8時間加熱することで、スルホン酸基変換を行い、スルホン酸基含有ポリアリーレンHを得た。反応混合物を室温まで冷却した後、19重量%塩酸に注ぎ込み、スルホン酸基含有ポリアリーレンHを析出させた。析出したスルホン酸基含有ポリアリーレンHをろ過し、塩酸洗浄、水洗浄及びメタノール洗浄した後、減圧乾燥して、スルホン酸基含有ポリアリーレンH3.2重量部を得た。得られたスルホン酸基含有ポリアリーレンHについて、H−NMRスペクトルを測定し、式(1a)で示される(2,2−ジメチルプロポキシスルホニル基)が略定量的にスルホン酸基に変換されていることが判明した。また、このスルホン酸基含有ポリアリーレンのイオン交換容量は2.47meq/gであった。金属含量はNiが10重量ppm未満、Znが10重量ppm未満と、どちらもICP−発光分析の検出限界以下であった。
【0106】
[比較例4]
製造例1で得られた重合反応液100重量部に、27重量%臭化リチウム水溶液13重量部加えて、さらに120℃まで昇温した。同温度で8時間攪拌した。反応混合物を塩酸に注ぎ込みスルホン酸基含有ポリアリーレンIを析出させた。該スルホン酸基含有ポリアリーレンIをろ過した後、塩酸洗浄、水洗浄及びメタノール洗浄を行って、減圧乾燥し、スルホン酸基含有ポリアリーレンI3.4重量部を得た。H−NMRスペクトルを測定し、式(1a)で示される(2,2−ジメチルプロポキシスルホニル基)が略定量的にスルホン酸基に変換されていることが判明した。また、このスルホン酸基含有ポリアリーレンIのイオン交換容量は、2.48meq/gであり、金属含量はNi200重量ppm、Zn560重量ppmであった。
【0107】
[実施例5]
製造例1で得られた重合反応液100重量部にジベンジルエーテル100重量部、19重量%塩酸50重量部、メチルエチルケトン200重量部を加えて混合物を調製し、当該混合物を攪拌しながら60℃まで昇温した。同温度に到達した後、攪拌を停止し、15分静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)はやや粘性がある白濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。次いで、有機層と水層とを分液し、375重量部の有機層を得た。当該有機層には金属不純物が除去された精製ポリアリーレンJを含むものである。
【0108】
[製造例2]
冷却装置を備えたガラス製反応容器内を窒素で十分置換した後、室温下で該ガラス製反応容器に、下記式

で示されるスミカエクセルPES 3600P(住友化学株式会社製;Mw=37,000、Mn=22,000:上記分析条件で測定)10.68g、亜鉛粉末2.60g及びN−メチル−2−ピロリドン124.3gを仕込んだ。内温を80℃まで昇温した後、同温度で2時間攪拌した。さらに、メタンスルホン酸72mg及びN−メチル−2−ピロリドン4.7gからなる溶液を加え、80℃を維持したまま、2時間撹拌した。20℃に冷却後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)17.35gを加えた(これを溶液α1とする。)。溶液α1の水分含量は573ppmであった。別に、臭化ニッケル1.45g、2,2’−ビピリジン1.55g及びN−メチル−2−ピロリドン129.2gを混合し、これを65℃で2時間撹拌して触媒溶液を調製した。20℃に冷却後、触媒溶液の水分含量が1519ppmとなるように水を添加した(これを溶液α2とする。)。溶液α2を、溶液α1に注ぎ込み、20℃で9時間撹拌し、粗ポリアリーレンを含む重合反応液を得た。該重合反応液に含まれている粗ポリアリーレンのMwは408,000、Mnは134,000であり、該粗ポリアリーレンを構成する各繰り返し単位は、製造例1で得られた重合反応液に含まれている粗ポリアリーレンと同種である。
【0109】
[実施例6]
製造例2で得られた重合反応液100重量部に、トルエン150重量部、19重量%塩酸40重量部及びメチルエチルケトン160重量部を加えて混合物を調製した。当該混合物を80℃まで昇温し、同温度で30分撹拌した。混合物の色目は黒色から緑色に変化した。攪拌を停止し、15分静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)は白色懸濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。下層の水層を分離して、精製ポリアリーレンKを含む上層(有機層)を133重量部得た。この有機層の金属含量を分析したところ、Ni15重量ppm、Zn500重量ppmであり、それぞれ、重合に用いた臭化ニッケル及び亜鉛の量の量から推算される金属不純物の量に対し、9割程度は除去されたことが判明した。かくして得られた有機層には、重合反応に用いた遷移金属化合物等に由来する金属不純物が十分除去されており、該精製ポリアリーレンKから実施例1と同じ操作によりスルホン酸基変換を行って得られるスルホン酸基含有ポリアリーレンLは、スルホン酸基含有ポリアリーレンBと同じく、金属不純物が十分除去されたものとなる。
【0110】
[製造例3]
冷却装置を備えたガラス製反応容器中の雰囲気を窒素で十分置換した後、室温下で該ガラス製反応容器に、臭化ニッケル3.7g、2,2’−ビピリジン2.9g、及びN−メチル−2−ピロリドン180mLを仕込んで混合し、混合物を65℃まで昇温することでニッケル含有溶液を調製した。内温を50℃まで冷却し、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)8.0g、2,5−ジクロロベンゾフェノン5.1g、N−メチル−2−ピロリドン70mLを混合物に加え攪拌し、さらに亜鉛粉末6.6g加えた。内温を50℃程度で維持したまま、4時間攪拌し、粗ポリアリーレンを含む重合反応液を得た。該重合反応液に含まれる粗ポリアリーレンのMwは175,000、Mnは57,000であった。
【0111】
[実施例7]
製造例3で得られた重合反応液100重量部に、19重量%塩酸16重量部を加えて混合し、さらにトルエン50重量部、メチルエチルケトン170重量部及び15%塩化ナトリウム水溶液71重量部を加えて混合物を調製し、該混合物を70℃まで攪拌しつつ昇温した。70℃に到達後、攪拌を停止して、15分間静置したところ、有機層と水層とに層分離した。有機層(上層)は白濁液、水層(下層)は薄青色透明液となり、有機層と水層とは目視で明瞭に層分離していることが観察され、有機層/水層界面は良好であり、乳化層の生成は認められなかった。有機層と水層とが層分離した。水層を分離し、精製ポリアリーレンMを含む有機層186重量部を得た。当該有機層には金属不純物が除去された精製ポリアリーレンMを含むものである。
【0112】
[比較例5]
実施例7において、メチルエチルケトンを用いないこと以外は実施例7と同じ実験を行った。70℃到達後、攪拌を停止して静置したが、有機層と水層との界面は明瞭には観察されず、さらに白色物が析出しており、分液性としては不良であることが判明した。
【0113】
[製造例4]
冷却装置を備えたガラス製反応容器中の雰囲気を窒素で十分置換した後、室温下で、亜鉛粉末8.3gとN−メチル−2−ピロリドン187gとを仕込み混合した。内温を80℃まで昇温させた後、メタンスルホン酸0.24g及びN−メチル−2−ピロリドン12gからなる溶液を仕込み、同温度を維持したまま2時間撹拌した。50℃まで冷却した後、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)14.0g、2,5−ジクロロベンゾフェノン7.5g、3,5−ジクロロアニソール1.7g及びN−メチル−2−ピロリドン5gを仕込んだ(これを溶液β1とする。)。
別のガラス製反応容器に、臭化ニッケル7.2g、2,2’−ビピリジン5.7g及びN−メチル−2−ピロリドン204gを仕込んで混合した。この混合液の内温を65℃まで上昇させ、同温度で2時間撹拌した後、50℃まで冷却した(これを溶液β2とする。)。かくして得られた溶液β2を、前記溶液β1に注ぎ込み、50℃で3時間撹拌し、粗ポリアリーレンを含む重合反応液を得た。
【0114】
[実施例8]
製造例4で得られた重合反応液100重量部に、トルエン54重量部、19重量%塩酸9重量部、メチルエチルケトン179重量部及び15%塩化ナトリウム水74重量部を加えて混合し混合物を調製した。該混合物の内温を70℃まで昇温し、同温度で30分間撹拌した。攪拌途中で内容物の色は黒色から緑色に変化した。その後、攪拌を停止し、15分間静置したところ、有機層と水層とが層分離した。両層の界面は明瞭に観察された。有機層は白色懸濁液、水層は薄青色透明液となった。なお、析出物は認められなかった。水層を分離した後、残った有機層に15%塩化ナトリウム水55重量部を加え、70℃で撹拌した。攪拌を停止し、15分間静置したところ、有機層と水層とは、その界面が明瞭に観察できる程度に層分離した。有機層はやや粘性がある白濁液、水層は薄青色透明液となった。水層を分離し、精製ポリアリーレンNを含む有機層281重量部を得た。当該有機層には金属不純物が除去された精製ポリアリーレンNを含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明で得られる精製ポリアリーレンはスルホン酸基又はその前駆基を有し、金属含有量が十分除去されているので、当該精製ポリアリーレンは燃料電池の構成材料に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する精製ポリアリーレンの製造方法。
工程(1):以下の式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を含む芳香族モノマーを、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより、ポリアリーレン及び金属不純物を含む重合反応液を得る工程;
−SO2−A (1a)
(式中、Aは、下記のG1群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有するアミノ基、あるいは下記のG1群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。)
〔G1群〕
フッ素原子;アルコキシ基;アリール基;アリールオキシ基;アシル基;シアノ基
工程(2):前記重合反応液に、
芳香族系有機溶媒、前記非プロトン性極性有機溶媒とは異なる酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、
該重合反応液に含まれている金属不純物を該混合物中の水層に、該金属不純物が除去された精製ポリアリーレンを該混合物中の有機層に、それぞれ分配する工程;
工程(3):前記混合物を、有機層と水層とに層分離するまで静置した後、分液操作により該有機層と該水層とを分離する工程;
【請求項2】
前記工程(2)において、前記重合反応液に含有される前記非プロトン性極性有機溶媒100重量部に対して、前記芳香族系有機溶媒10〜500重量部を加える請求項1記載の精製ポリアリーレンの製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、前記重合反応液に含有される前記非プロトン性極性有機溶媒100重量部に対して、前記酸素含有有機溶媒30〜500重量部を加える請求項1又は2記載の精製ポリアリーレンの製造方法。
【請求項4】
前記酸素含有有機溶媒が、エーテル系溶媒又はケトン系溶媒である請求項1〜3のいずれか記載の精製ポリアリーレンの製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、前記水に代えて無機塩水溶液を用いる、請求項1〜4のいずれか記載の精製ポリアリーレンの製造方法。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、以下の式(1)で表される芳香族化合物及び式(2)で表される芳香族化合物からなる郡より選ばれる少なくとも1つである請求項1〜5のいずれか記載の精製ポリアリーレンの製造方法。

(式中、mは1又は2を表す。Aは、前記式(1a)と同じ意味であり、mが2である場合、2つのAは同じあっても異なっていてもよい。
kは0〜3の整数を表す。Rは、以下のG2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、以下のG2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、以下のG2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、以下のG2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、以下のG2群より選ばれる基を置換基として有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、フッ素原子又はシアノ基を表し、kが2又は3である場合、複数あるRはそれぞれ独立である。また、互いに隣接する2つの炭素原子に結合する2つのRがある場合、該2つのRが結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。Xはそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)

(式中、Aは前記式(1a)と同じ意味であり、R及びXは前記式(1)と同じ意味である。jは同一のベンゼン環に結合しているRの置換数であり、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。jが2又は3である場合、同一のベンゼン環に結合している複数のRはそれぞれ独立である。)
〔G2群〕
フッ素原子;アルキル基;アルコキシ基;アリール基;アリールオキシ基;アシル基;シアノ基
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の精製ポリアリーレンの製造方法において、前記工程(1)を以下の工程(1’)に置き換え、前記工程(2)を以下の工程(2’)に置き換える、精製ポリアリーレンの製造方法。
工程(1’):以下の式(1a)で示される基と、2つの脱離基と、を分子内に有し、かつ該2つの脱離基がともに芳香環に直接結合している芳香族化合物を含む芳香族モノマーを、遷移金属又は遷移金属化合物の存在下、非プロトン性極性有機溶媒中で重合することにより重合反応液を得、該重合反応液から金属不純物を含む粗ポリアリーレンを分離する工程;
工程(2’):工程(1’)で得られた粗ポリアリーレンに、非プロトン性極性有機溶媒、芳香族系有機溶媒、前記非プロトン性極性有機溶媒とは異なる酸素含有有機溶媒、酸及び水を加えて混合物を調製し、該粗ポリアリーレンに含まれていた不純物を、該混合物中の水層に、該不純物が除去された精製ポリアリーレンを、該混合物中の有機層に、それぞれ分配する工程;
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の精製ポリアリーレンの製造方法により得られる精製ポリアリーレン。

【公開番号】特開2011−42745(P2011−42745A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191853(P2009−191853)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】