説明

精製緑茶抽出物の製造方法

【課題】緑茶抽出物を簡便な方法で容易に且つ効率良く精製し、固形分中の非重合体カテキン類濃度が高くても、非重合体カテキン類由来の苦味と後味の異味が改善された精製緑茶抽出物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】固形分中の非重合体カテキン類濃度が20〜50質量%である緑茶抽出物を水溶液とし、分画分子量3000未満の濾過膜に通過させる、精製緑茶抽出物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製緑茶抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶抽出物の濃縮物などを利用して、非重合体カテキン類を飲料などの食品に添加する方法が知られている。しかしながら、緑茶抽出物の濃縮物を使用して非重合体カテキン類を高濃度で摂取しようとした場合、非重合体カテキン類由来の苦味が増強されてしまう。
【0003】
このような不快な苦味を抑制する方法として、例えば、糖アルコール類を一定量添加する方法(特許文献1、2)、サイクロデキストリンを一定量含有せしめる方法(特許文献3)等が知られている。また、苦味の主成分であるカテキンのガレート体を低減させるためにタンナーゼ処理する方法も知られている(特許文献4)。
一方、緑茶抽出物の濃縮物に含まれる夾雑物を除去することにより非重合体カテキン類を高濃度化する技術も提案されている。例えば、緑茶抽出物を合成吸着剤に接触させてポリフェノール類を脱着させる方法(特許文献5)や、茶葉を熱水等で抽出し、次いでクロロホルムで洗浄する方法(特許文献6)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−274829号公報
【特許文献2】特開平11−253102号公報
【特許文献3】特開平10−4919号公報
【特許文献4】特開2003−33157号公報
【特許文献5】特開2002−335911号公報
【特許文献6】特開昭59−219384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、苦味を低減させるために前記従来技術のような添加剤とともに茶抽出物を飲食品に使用すると、食感や風味に影響を与える場合があった。また、タンナーゼ処理によりガレート体を低減させる方法では、没食子酸が生成し、これが風味に影響を与えること、工程が煩雑である等の課題があった。一方、茶抽出物は、苦味だけでなく、後味に不快な異味が感じられ、これは前記従来技術では解決できないことが判明した。
そこで、本発明の課題は、緑茶抽出物を簡便な方法で容易に且つ効率良く精製し、苦味と後味の異味(以下、単に「風味」ともいう)の改善された精製緑茶抽出物を製造する方法を提供することにある。ここで、本明細書において「後味」とは、JIS Z 8144:2004に記載の「口内に残る感覚」をいう。また「異味」とは、舌の上に感じる刺激味をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み種々検討した結果、固形分中の非重合体カテキン類純度を特定範囲内に制御した緑茶抽出物を水溶液とし、特定性状を有する濾過膜に通過させることで、固形分中の非重合体カテキン類純度が高くても、苦味や後味の異味が改善された精製緑茶抽出物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、固形分中の非重合体カテキン類純度が20〜50質量%である緑茶抽出物を水溶液とし、分画分子量3000未満の濾過膜に通過させる、精製緑茶抽出物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固形分中の非重合体カテキン類純度が高くても、非重合体カテキン類由来の苦味や後味の異味が改善された精製緑茶抽出物を簡便な方法で容易に且つ効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる緑茶抽出物としては、緑茶葉から得られた抽出物が挙げられる。使用する茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類がある。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した茶葉を用いてもよい。
緑茶葉からの抽出は、抽出溶媒として水又は水溶性有機溶媒又はそれらの混合物を使用し、攪拌抽出等により行うことができる。抽出の際には、水又は水溶性有機溶媒又はそれらの混合物にあらかじめアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸を添加してもよい。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。このようにして得られた緑茶抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明の緑茶抽出物水溶液として使用できる。緑茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
【0010】
本発明で使用する緑茶抽出物水溶液は、緑茶葉から抽出した抽出物を、必要により濃縮して使用する。また、緑茶抽出物水溶液として、緑茶抽出物の濃縮物を水に溶解又は希釈したものを用いても、緑茶葉からの抽出物と緑茶抽出物の濃縮物とを併用してもよい。ここで、緑茶抽出物の濃縮物とは、緑茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した抽出物から溶媒の一部を除去したり、酸性白土・活性炭などを用いて夾雑物を除いて、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類濃度を高めたものをいい、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法を採用することができる。緑茶抽出液の濃縮物としては市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等が挙げられる。
【0011】
緑茶葉から抽出した抽出物を濃縮する際、あるいは緑茶抽出物の濃縮物を水に溶解又は希釈する際には、緑茶抽出物水溶液中の固形分量が0.5〜7質量%、更に0.7〜6質量%、特に0.8〜5質量%、殊更0.8〜4質量%となるようにすることが、風味の改善、精製効率の観点から好ましい。ここで、本明細書において「固形分」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいい、また「固形分量」とは当該残分の質量をいう。
【0012】
本発明において使用する緑茶抽出物は、固形分中の非重合体カテキン類純度が20〜50質量%であるが、風味の改善、精製効率の観点から、25〜48質量%、更に30〜45質量%、特に35〜45質量%であることが好ましい。ここで、本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類の濃度又は固形分中の純度は上記8種の合計量に基づいて定義される。
また、緑茶抽出物を水溶液とした際に、水溶液中の非重合体カテキン類濃度は、風味の改善、精製効率の観点から、0.1〜3.5質量%、更に0.2〜3質量%、特に0.3〜2質量%、殊更0.3〜1質量%であることが好ましい。
【0013】
緑茶抽出物水溶液を準備した後、緑茶抽出物水溶液を分画分子量3000未満の濾過膜に通過させる。
緑茶抽出物水溶液を濾過膜に通過させる手段としては、風味の改善、精製効率の観点から、限外濾過膜又は逆浸透膜を用いることが好ましく、限外濾過膜を用いることが特に好ましい。
濾過膜としては分画分子量が3000未満の膜を用いるが、風味の改善、濾過速度の観点から、分画分子量が100〜2500、更に200〜2000、特に500〜1500である膜を用いることが好ましい。
【0014】
好ましい限外濾過膜としては、SEP−3013、ACP−3013、AHP−3013、ACP−0013、SEP−0013(旭化成製)、FE10−FUS−5082(ダイセン・メンブレン・システムズ製)、アミコンYC、ウルトラセル、バイオマックス(日本ミリポア社製)等が挙げられる。
また、好ましい逆浸透膜としては、NTR−7410HG、NTR−7430HG、NTR−7450HG等が挙げられる。
膜の材質としては、例えば、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、再生セルロース、セルロースアセテートが挙げられる。中でも、濾過性能の観点から、再生セルロースが好ましい。
また、膜の構造としては、スパイラル、中空糸型のような連続処理型の膜や、平膜が好ましい。中でも、精製効率の観点から、スパイラル膜、中空糸膜が特に好ましい。
【0015】
濾過方式としては、例えば、クロスフロー濾過、攪拌式加圧濾過、遠心濾過等が挙げられ、中でも、クロスフロー濾過又は攪拌式加圧濾過が好ましい。
濾過方式がクロスフロー濾過又は攪拌式加圧濾過である場合、圧力は、使用する限外濾過膜の耐圧範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば、ゲージ圧で10〜500kPa、更に30〜450kPa、特に50〜400kPaが好ましい。
一方、濾過方式が遠心濾過である場合、分離板型、円筒型、デカンター型等の遠心分離機の種類により条件を適宜設定することができるが、例えば、分離板型の場合、3000〜10000rpm/min、更に3500〜8000rpm/min、特に4000〜6000rpm/minで、1〜120分、更に20〜100分、特に40〜80分であることが好ましい。
【0016】
濾過温度としては、風味の改善の観点から、0〜40℃、更に3〜35℃、特に5〜30℃であることが好ましい。
【0017】
このようにして精製緑茶抽出物を得ることができるが、得られた精製緑茶抽出物は非重合体カテキン類由来の苦味や後味の不快な異味が改善されているため、幅広い用途展開が可能である。例えば、本発明の製造方法により得られた精製緑茶抽出物を、飲食品の原料としてそのまま使用しても、希釈して使用しても、あるいは濃縮又は乾燥により高濃度化して使用してもよい。高濃度化方法としては、例えば、減圧濃縮、逆浸透膜濃縮、噴霧乾燥、凍結乾燥が挙げられる。
【0018】
飲食品中の精製緑茶抽出物の含有量はその種類により適宜選択することが可能であるが、例えば、非重合体カテキン類として0.1〜20質量%、特に0.1〜10質量%含有することが好ましい。
【0019】
本発明の飲料は、茶飲料でも、非茶系飲料であってもよい。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、ニアウォーター、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。
また、食品としては、例えば、菓子(例えば、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット等の焼菓子、チューインガム、チョコレート、キャンデー)、デザート(例えば、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム)、レトルト食品、調味料(例えば、ソース、スープ、ドレッシング、マヨネーズ、クリーム)が例示される。なお、飲食品の形態は特に限定されず、摂取しやすい形態であれば、固形、粉末、液体、ゲル状、スラリー状等のいずれであってもよい。
【0020】
本発明の飲料には、例えば、酸化防止剤、香料、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独で又は併用して配合してもよい。
【0021】
本発明の飲料のpH(25℃)は、2〜7、好ましくは2〜6.5とすることが、風味及び非重合体カテキン類の安定性の点で好ましい。
【0022】
また、本発明の飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
さらに、容器に充填後、例えば、金属缶のように加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で殺菌処理してもよい。一方、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【0023】
1.非重合体カテキン類の測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法で分析した。非重合体カテキン類の標準品として、栗田工業製のものを使用し、検量線法で定量した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0024】
2.固形分量の測定
試料を、105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥し、残分の質量を測定した。
【0025】
3.官能評価
各実施例及び比較例で得られた精製緑茶抽出物を、非重合体カテキン類濃度が175mg/100mLとなるようにイオン交換水で希釈して風味評価を行った。風味評価は専門パネル5名により行い、協議によりスコアを決定した。風味評価は、「苦味」とその後に続いて感じる「異味」について下記の基準で行った。
【0026】
(苦味及び異味の評価基準)
4:かなり弱い
3:少し弱い
2:少し強い
1:かなり強い
【0027】
製造例1
緑茶抽出物Aの製造
緑茶葉0.3kgに88℃の熱水4.5kgを添加し、30分間攪拌バッチ抽出した後、200メッシュ金網で粗ろ過後、抽出液中の微粉を除去する為に遠心分離操作を行い、噴霧乾燥機を用いて粉体にして「緑茶抽出物A」0.1kgを得た。
【0028】
製造例2
緑茶抽出物Bの製造
緑茶抽出物A200gを常温、250r/min攪拌条件下の40質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土ミズカエース#600(水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。その後、2号ろ紙でろ過した。その後、活性炭8gを
添加し再び2号ろ紙でろ過した。次に0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過し、濁りの除去を行った。40℃、0.0272kg/cm2の減圧でエタノールを留去し、イオン交換水でカテキン類濃度を調整して「緑茶抽出物B」を得た。
【0029】
製造例3
緑茶抽出物Cの製造
緑茶抽出物A200gを常温、250r/min攪拌条件下の95質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土ミズカエース#600(水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。その後、2号ろ紙でろ過した。その後、活性炭16gを添加し再び2号ろ紙でろ過した。次に0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過し、濁りの除去を行った。40℃、0.0272kg/cm2の減圧でエタノールを留去し、イオン交換水でカテキン類濃度を調整して「緑茶抽出物C」を得た。
【0030】
実施例1
緑茶抽出物Aの1.0gをイオン交換水99.0gに溶解して「緑茶抽出物水溶液1」を得た。「緑茶抽出物水溶液1」には、非重合体カテキン類0.33質量%が含まれており、固形分中の非重合体カテキン類純度は32.4質量%であった。
次に、攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量1000の限外濾過膜であるウルトラセルPLAC(日本ミリポア社製、材質:再生セルロース、以下同じ)を装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、緑茶抽出物水溶液1を加圧濾過して「精製緑茶抽出物1」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
緑茶抽出物Aの4.9gをイオン交換水95.0gに溶解して「緑茶抽出物水溶液2」を得た。「緑茶抽出物水溶液2」には、非重合体カテキン類1.59質量%が含まれており、固形分中の非重合体カテキン類純度は32.5質量%であった。
次に、攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量1000の限外濾過膜であるウルトラセルPLACを装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、緑茶抽出物水溶液2を加圧濾過して「精製緑茶抽出物2」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
緑茶抽出物B2.0gをイオン交換水98.0gに溶解して「緑茶抽出物水溶液3」を得た。「緑茶抽出物水溶液3」には、非重合体カテキン類0.42質量%が含まれており、固形分中の非重合体カテキン類純度は41.5質量%であった。
次に、攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量1000の限外濾過膜であるウルトラセルPLACを装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、緑茶抽出物水溶液3を加圧濾過して「精製緑茶抽出物3」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0033】
比較例1
攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量3000の限外濾過膜であるウルトラセルPLBC(日本ミリポア社製、材質:再生セルロース、以下同じ)を装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、実施例1と同様の操作にて得た緑茶抽出物水溶液1を加圧濾過させ「精製緑茶抽出物4」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0034】
比較例2
攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量10000の限外濾過膜であるウルトラセルPLGC(日本ミリポア社製、材質:再生セルロース、以下同じ)を装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、実施例1と同様の操作にて得た緑茶抽出物水溶液1を加圧濾過して「精製緑茶抽出物5」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0035】
比較例3
緑茶抽出物C4.4gをイオン交換水95.6gに溶解して「緑茶抽出物水溶液4」を得た。「緑茶抽出物水溶液4」には、非重合体カテキン類0.63質量%が含まれており、固形分中の非重合体カテキン類純度は63.2質量%であった。
次に、攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量1000の限外濾過膜であるウルトラセルPLACを装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、緑茶抽出物水溶液4を加圧濾過して「精製緑茶抽出物6」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0036】
比較例4
攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量3000の限外濾過膜であるウルトラセルPLBCを装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、比較例3と同様の操作にて得た緑茶抽出物水溶液4を加圧濾過して「精製緑茶抽出物7」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0037】
比較例5
攪拌式加圧濾過セル(メンブレン直径44.5mm、有効濾過面積13.4cm2、最大処理容量50mL)に分画分子量3000の限外濾過膜であるウルトラセルPLBCを装着し、窒素ガスをゲージ圧300kPa、温度25℃にて、実施例3と同様の操作にて得た緑茶抽出物水溶液3を加圧濾過して「精製緑茶抽出物8」を得た。得られた精製緑茶抽出物の物性及び官能評価の結果を表1に示す。
【0038】
比較例6〜8
前記緑茶抽出物水溶液1、3及び4を、それぞれ膜濾過を行わずにそのまま官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から、固形分中の非重合体カテキン類純度が20〜50質量%である緑茶抽出物を水溶液とし、分画分子量3000未満の濾過膜に通過させることで、非重合体カテキン類由来の苦味と後味の異味が改善された精製茶抽出物を簡便な操作で且つ効率良く製造できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中の非重合体カテキン類純度が20〜50質量%である緑茶抽出物を水溶液とし、分画分子量3000未満の濾過膜に通過させる、精製緑茶抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記濾過膜が限外濾過膜である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記緑茶抽出物の水溶液中の固形分量が0.5〜7質量%である、請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−115231(P2012−115231A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270192(P2010−270192)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】