説明

精製緑茶抽出物の製造法

【課題】カフェイン等の夾雑物が除去され、苦味、酸味、とろみ及び窒素含有量が低減され、かつ色相の低減化した、高濃度の非重合体カテキン類を含有する精製緑茶抽出物の製造方法を提供すること。
【解決手段】緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させ、当該合成吸着剤に塩基性水溶液を接触させ、当該合成吸着剤を洗浄し、有機溶媒水溶液を接触させて、溶出させた非重合体カテキン類を回収させる、精製緑茶抽出物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製緑茶抽出物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキンの生理効果としてはαアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1参照)。このような生理効果を発現させるためには、より簡便に大量のカテキンを摂取することが必要であることから、飲料にカテキンを高濃度配合する方法が望まれていた。
【0003】
この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物(特許文献2)などの茶抽出物を利用して、カテキンを飲料に溶解状態で添加する方法が用いられている。しかしながら、この方法によりカテキンを高濃度に配合する対象となる飲料の種類によっては、例えば紅茶抽出液や炭酸飲料にカテキンを添加する場合など、カフェイン及び緑茶由来の苦渋みの残存が飲料の商品価値を大きく損ねることがわかっている。
【0004】
緑茶抽出物から、カフェイン等の夾雑物を取り除く方法としては、吸着法(特許文献2〜7)、抽出法(特許文献8,9)等が知られている。
上記方法において、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類含有率を上げる場合には、有機溶媒の使用が必要となるが、工業的に見た場合には、回収率が低いという課題があった。また、アルカリ性水溶液を使用する場合には、飲料に配合したときに、茶葉由来の水不溶性成分が残存するという課題があり、これに対する有効な手段が無かった。
【0005】
緑茶抽出物の色調を改善する方法としては、茶抽出液にサイクロデキストリンの存在下に活性炭を作用させ、着色成分等を活性炭に吸着させ除去してなる抗菌脱臭剤(特許文献10)が知られているが、飲料用のカテキン製剤への使用は、困難であった。
【特許文献1】特開平3−133928号公報
【特許文献2】特開平5−153910号公報
【特許文献3】特開平8―109178号公報
【特許文献4】特開2002−335911号公報
【特許文献5】特開2006−36645号公報
【特許文献6】特開平1−175978号公報
【特許文献7】特開2001−97968号公報
【特許文献8】特開平1−289447号公報
【特許文献9】特開昭59−219384号公報
【特許文献10】特開2001−299887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは従来から知られているカフェイン等の夾雑物や苦味、酸味の低減化に加えて、とろみ、窒素含有量の低減化が精製緑茶抽出物の呈味改善効果があることを見出した。
本発明の目的は、カフェイン等の夾雑物が除去され、苦味、酸味、とろみ、及び窒素含有量が低減され、かつ色相が良好である、高濃度の非重合体カテキンを含有する精製緑茶抽出物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類精製処理を検討した結果、緑茶抽出物を合成吸着剤に通液し、一旦、合成吸着剤に吸着させ、当該合成吸着剤に塩基性水溶液を接触させ、当該合成吸着剤を洗浄し、次いで有機溶媒水溶液を接触させて、溶出させた非重合体カテキン類を回収させることにより、カフェインを低減し、かつ苦味、酸味、とろみ、窒素含有量及び色相を低減させた、非重合体カテキン類濃度の高い精製緑茶抽出物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させ、当該合成吸着剤に塩基性水溶液を接触させ、当該合成吸着剤を洗浄し、有機溶媒水溶液を接触させて、溶出させた非重合体カテキン類を回収させる、精製緑茶抽出物の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カフェイン等の夾雑物が除去され、苦味、酸味、とろみ、及び窒素含有量が低減され、かつ色相が良好である高濃度の非重合体カテキン類を含有する精製緑茶抽出物が、工業的に有利に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキンをあわせての総称である。
【0011】
本発明で非重合体カテキンガレート体とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。
【0012】
本発明で用いる緑茶抽出物としては、緑茶葉から得られた抽出液が挙げられる。使用する茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。製茶された茶葉には、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等の緑茶類がある。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した茶葉を用いてもよい。
【0013】
緑茶葉からの抽出は、抽出溶媒として水又は水溶性有機溶媒又はそれらの混合物を使用し、攪拌抽出等により行われる。抽出の際、水又は水溶性有機溶媒又はそれらの混合物にあらかじめアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸塩類又は有機酸を添加してもよい。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。このようにして得られた抽出液は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に使用できる。緑茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
【0014】
本発明に使用する緑茶抽出物には、緑茶葉から抽出した抽出液を使用する代わりに、緑茶抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は水又は有機溶媒に希釈して用いても、緑茶葉からの抽出液と緑茶抽出物の濃縮物とを併用してもよい。
ここで、緑茶抽出物の濃縮物とは、緑茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。具体的には、市販の東京フードテクノ社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の粗カテキン製剤を固体の緑茶抽出物として用いることもできる。
【0015】
また、緑茶抽出物は、合成吸着剤に吸着させる前に加水分解処理しておくのが、非重合体カテキン類中のガレート体率を低下させ、苦味を低減する点から好ましい。加水分解による非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体の濃度減少は、呈味改善の点から5質量%以上、更に7質量%以上、特に10質量%以上が好ましい。加水分解の方法は、酵素類による処理、酸処理、アルカリ処理等により行なわれる。酵素類としては、タンナーゼ活性を有する酵素、菌体又は培養液、酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、アルカリとしては苛性ソーダなどが好ましい。その中でも反応制御の点から酵素類での加水分解が好ましい。ここでタンナーゼ活性を有するとは、タンニンを分解する活性を有することを意味し、本活性を有すれば任意の酵素、菌体、培養液が使用できる。
【0016】
具体的には、タンナーゼ活性を有する酵素として市販品では、ペクチナーゼPLアマノ(天野エンザイム社製)、ヘミセルラーゼアマノ90(天野エンザイム社製)、タンナーゼKTFH(キッコーマン社製)等が利用できる。その中でもタンナーゼが好ましい。例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが挙げられる。このうちアスペルギルス オリーゼ由来のものが好ましい。
タンナーゼ活性を有する菌体とは、タンナーゼ活性を有する酵素を産生することができる菌体であり、麹菌等があげられる。具体的には、アスペルギルス属、ペニシリウム属等が挙げられ、このうちアスペルギルス オリーゼが好ましい。
タンナーゼ活性を有する培養液とは、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られる培養液である。好ましくは、タンニン酸を唯一の炭素源として培養して得られる培養液を挙げることができ、精製品であっても未精製なものであっても用いることができる。
とろみ劣化の抑制及び生産性の点から加水分解を極力短時間で終了するのが好ましく、それには酵素又は培養液を利用することが好ましい。
本発明で使用するタンナーゼ活性を有する酵素又は培養液は、500〜100,000U/gの酵素活性を有することが好ましく、500U/g以上であると工業的に限られた時間内で処理することが可能であり、100,000U/g以下であると酵素反応速度を制御することができる。ここで1Unitは30℃の水中においてタンニン酸に含まれるエステル結合を1マイクロモル加水分解する酵素量を示す。
【0017】
タンナーゼ活性を有する酵素及び培養液による処理を行うときの非重合体カテキン濃度は、好ましくは0.1〜22質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%、殊更好ましくは0.5〜3質量%である。0.1質量%以上であるとこの後の合成吸着剤への吸着時に吸着量が増加し、22質量%以下であると、加水分解処理が短縮され、生産性及び緑茶抽出物の味の点から好ましい。
呈味を改善した非重合体カテキンガレート体率を得るため、緑茶抽出物中の非重合体カテキン類に対して酵素又は培養液を0.01〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。酵素失活の工程を含め、上記加水分解処理を工業的に最適な酵素反応時間である2時間以内で終了させるためには、酵素又は培養液濃度が0.01〜7質量%、更に0.03〜5質量%であることが好ましい。
緑茶抽出物中の非重合体カテキン類に対してタンナーゼ活性を有する酵素又は培養液を、好ましくは1〜300Unit/g−非重合体カテキン、更に好ましくは3〜200Unit/g−非重合体カテキン、特に好ましくは5〜150Unit/g−非重合体カテキンになるように添加する。
酵素又は培養液による処理の温度は、最適な酵素活性が得られる0〜70℃が好ましく、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは5〜50℃である。
【0018】
酵素又は培養液での加水分解反応を終了させるには、酵素を失活させる必要がある。酵素失活は、加熱することにより達成される。酵素失活温度は、70〜100℃が好ましい。70℃未満では酵素を短時間で充分に失活できないため加水分解反応が進行する。
酵素の失活方法は、バッチ式もしくはプレート型熱交換機のような連続式で加熱を行うことで停止することができる。又、タンナーゼの失活終了後、遠心分離などの操作により茶抽出物を清澄化することができる。
【0019】
菌体として例えば麹菌を利用する場合は、非重合体カテキン類の濃度が、好ましくは0.1〜22質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.5〜15質量%である茶抽出物に麹菌を入れ加水分解処理を行なう。麹菌は、その種類等により、茶抽出物中の非重合体カテキン類に対して0.5質量%〜10質量%の範囲内である。特に好ましくは、1.0質量%〜5質量%の範囲内で添加される。温度条件としては、45℃〜70℃、更に50〜60℃が好ましい。醗酵時間は12時間〜20日間、更に1日〜10日間で行われることが好ましい。麹菌の酵素活性の失活は、酵素又は培養液での加水分解反応を終了させる時と同様である。
【0020】
本発明においては、まず緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる。当該合成吸着剤処理により、カフェインや没食子酸が低減できる。
吸着後、塩基性水溶液を接触させる前に、合成吸着剤を洗浄し、合成吸着剤中の没食子酸や不純物を除去するのが好ましい。
合成吸着剤は、一般に不溶性の三次元架橋構造ポリマーでイオン交換基のような官能基を実質的に持たないものである。好ましくは、イオン交換基が1meq/g未満のものを用いることができる。本発明に用いる合成吸着剤としては、その母体がスチレン系、例えばアンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、(米国ローム&ハース社);ダイヤイオンHP20、HP21(三菱化学社製);セパビーズSP850、SP825、SP700、SP70(三菱化学社製);VPOC1062(Bayer社製)、臭素原子を核置換して吸着力を強めた修飾スチレン系、例えばセパビーズSP205、SP206、SP207(三菱化学社製)、メタクリル系、例えばダイヤイオンHP1MG、HP2MG(三菱化学社製)、フェノール系、例えばアンバーライトXAD761(ロームアンドハース社製)、アクリル系、例えばアンバーライトXAD7HP(ロームアンドハース社製)、ポリビニル系、例えばTOYOPEARL、HW-40C(東ソー社製)、デキストラン系、例えばSEPHADEX、LH-20(ファルマシア社製)等が使用できる。
合成吸着剤としては、その母体がスチレン系、メタクリル系、アクリル系、ポリビニル系が好ましく、特にスチレン系がカテキンとカフェインとの分離性の点から好ましい。
【0021】
緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる手段としては、緑茶抽出物に合成吸着剤を添加、撹拌し吸着後、ろ過操作により合成吸着剤を回収するバッチ方法又は合成吸着剤を充填したカラムを用いて連続処理により吸着処理を行うカラム方法が採用されるが、生産性の点からカラムによる連続処理方法が好ましい。
合成吸着剤が充填されたカラムは、予め水又は有機溶媒水溶液で洗浄するのが好ましい。水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノールなどが挙げられ、食品への使用の観点から、エタノールが好ましい。含有する有機溶媒の濃度は、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%がカテキンの回収率の点から好ましい。予めSV(空間速度)=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として2〜10[v/v]の通液条件で95vol%エタノール水溶液による洗浄を行い、合成吸着剤の原料モノマーや原料モノマー中の不純物等を除去するのが好ましい。そして、その後SV=0.5〜10[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜60[v/v]の通液条件により水洗を行い、エタノールを除去して合成吸着剤の含液を水系に置換する方法により非重合体カテキン類の吸着能が向上する。
【0022】
緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させる手段としては、合成吸着剤が充填されたカラムに当該茶抽出物を通液するのが好ましい。緑茶抽出物を合成吸着剤の充填したカラムに通液する条件としては、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜20[v/v]で通液するのが好ましい。10[h-1]以上の通液速度や20[v/v]以上の通液量であると非重合体カテキン類の吸着が不充分又は不安定となる場合がある。
【0023】
緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させた後、塩基性水溶液を接触させる。これにより、合成吸着剤に付着した没食子酸や不純物を除去することができる。場合により、夾雑物除去の観点から洗浄液は全量廃棄しても良く、又は、収率向上の観点から部分的に回収しても良い。使用する塩基性水溶液としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類のアルカリ水溶液、好ましくは、ナトリウム系のアルカリ性水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を好適に用いることができる。また、アルカリ性水溶液のpHは7〜11の範囲が好ましい。非重合体カテキン類回収率、とろみ成分除去の点から8〜10.5、特に8.5〜10が好ましい。pH7〜11のナトリウム系水溶液としては、4%以下の水酸化ナトリウム水溶液、4%以下の炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。塩基性水溶液に、水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。有機溶媒としては水溶性有機溶媒が使用できる。水溶性有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノールなどが挙げられ、食品への使用の観点から、エタノールが好ましい。含有する有機溶媒の濃度は、0〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%がカテキンの回収率の点から好ましい。
通液条件として、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v]で、合成吸着剤に付着した没食子酸や不純物を除去するのが好ましい。更にSV=1.0〜5[h-1] の通液速度で、通液倍数として1〜5[v/v] で接触させることが没食子酸や不純物の除去及び非重合体カテキン類の回収率の点から好ましい。
【0024】
塩基性水溶液接触後の合成吸着剤に、さらに有機溶媒水溶液を接触させて、合成吸着剤から非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液を回収する。ここで用いる有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール等が挙げられるが、食品への使用の観点から、エタノールが好ましい。有機溶媒水溶液の濃度は、5〜50%、さらに10〜45%、得に15〜40%であるのが非重合体カテキン類の回収率、苦味、酸味、とろみ、窒素含有量及び色相低減効果の点から好ましい。
【0025】
接触処理はカラムへの通液により行うのが好ましく、通液条件として、SV(空間速度)=0.5〜10[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v]で、合成吸着剤に付着した没食子酸や不純物を除去するのが好ましい。更にSV=1.0〜5[h-1] の通液速度で、通液倍数として1〜5[v/v] で洗浄することが没食子酸や不純物の除去及び非重合体カテキン類の回収率の点から好ましい。
【0026】
さらに、有意溶媒水溶液との接触の仕方として、前記有機溶媒水溶液(1)に続き高濃度の有機溶媒水溶液(2)を接触させることにより溶出させてもよい。このような濃度勾配による溶出を行う場合、有機溶媒水溶液(1)の濃度を5〜50%、より好ましくは10〜30%とし、有機溶媒水溶液(2)の濃度を30〜95%、さらに50〜80%とするのが好ましい。当該有機溶媒溶液(2)を接触させる際の通液速度及び通液倍数は、有機溶媒水溶液(1)の場合と同様である。
【0027】
有機溶媒水溶液を接触させた溶出液のうち、非重合体カテキン濃度が0.1質量%以上の画分を回収することが好ましい。
さらに、有機溶媒水溶液により合成吸着剤から非重合体カテキン類を溶出させる場合、溶出回収画分のリーディング部分(溶出ピークの最大値に対して前の画分)の非重合体カテキン類濃度が0.1質量%以上、さらに0.2質量%以上、特に0.4質量%以上の画分を回収するのが、収率、夾雑物除去の点から好ましい。当該溶出回収画分のテーリング部分(溶出ピークの最大値に対して後の画分)の回収画分は、リーディング部分の場合と同様である。
【0028】
本発明で使用される合成吸着剤は1回目の吸着-洗浄-溶出操作の実施後に再使用できる。再生処理としては、具体的には、エタノールのような有機溶媒水溶液を通液し合成吸着剤上に吸着したカフェイン等の不溶分を脱着させる。又は水酸化ナトリウムのようなアルカリ水溶液を通液・洗浄し、合成吸着剤上に残存する水溶性成分をすべて脱着させるなどの方法が挙げられる。更に水蒸気による洗浄を組み合わせても良い。再生処理で用いる有機溶媒水溶液の濃度は50〜95%、アルカリ水溶液の濃度は0.1〜10%であることが合成吸着剤中に残存した夾雑物除去の点から好ましい。
【0029】
有機溶媒水溶液により溶出した精製緑茶抽出物は、そのまま飲料の製造に用いることもできるが、さらに活性炭と接触させるのが、色調改善、とろみ改善の点で好ましい。
【0030】
用いる活性炭の原料としては、ヤシ殻、木質、石炭があげられるが、木質のものが好ましい。活性炭の賦活方法としては、水蒸気賦活法、ガス賦活法、薬品賦活法があげられるが、薬品賦活法が好ましい。例えば、ZN−50、Y−10S、GS-1、GS-B(味の素ファインテクノ製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D、クラレコールGW、クラレコールGA、クラレコールGA-D、クラレコールRP−15(クラレケミカル社製)、白鷺AW50、白鷺A、白鷺P、白鷺KL、白鷺M、白鷺C、カルボラフィン、WH2C(日本エンバイロケミカルズ製)、GM130A、CW130A、CW130AR、CW350AR、GL130A、SG、SGA、SGP(フタムラ化学製)、ヤシコール、MAS印、梅蜂印、梅蜂F印(太平化学産業製)、CPG、CAL、S80A(三菱化学カルゴン製)等の市販品を用いることができる。
製品の色調を改善する点、活性炭の使用量を低減する点、回収率を向上する点から、活性炭としては以下のものが好ましい。平均細孔径は0.5〜10nm(ナノメーター)、さらに1.0〜9.0nm、特に2.0〜8.0nmのものが好ましい。細孔容積は0.01〜2.5mL/g、さらに0.1〜2.0mL/g、特に0.5〜1.7mL/gのものが好ましい。また、比表面積は800〜2000m2/g、さらに900〜1600m2/g、特に1000〜1500m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
【0031】
活性炭は、有機溶媒水溶液による溶出液100質量部に対して0.3〜10質量部、特に0.5〜5質量部添加するのが好ましい。活性炭の添加量が少なすぎると、カフェインや、異臭の除去効率が悪くなり、好ましくない。
【0032】
溶出液と活性炭との接触処理は、バッチ式、カラムによる連続処理等のいずれの方法で行ってもよい。一般には、粉末状の活性炭等を添加、撹拌し、カフェイン等の不純物を選択的に吸着後、ろ過操作により不純物を除去した濾液を得る方法、又は顆粒状の活性炭等を充填したカラムを用いて連続処理により不純物を選択的に吸着する方法等が採用される。活性炭カラムによる連続処理等の方法で行うのがよい。
【0033】
これら吸着−洗浄−溶出操作は10〜60℃、さらに20〜40℃の温度で行うのが好ましい。
【0034】
本発明の方法により得られた、窒素含有量、苦味、酸味、とろみ、及び色相が低減化した精製緑茶抽出物は、スポーツドリンク、アイソトニック飲料等の飲料に用いる場合に特に好ましい。
【0035】
本発明によって得られる精製緑茶抽出物は、その固形分中に、非重合体カテキン類を25〜95質量%更に、40〜95質量%、更に50〜90質量%、特に55〜80質量%含有するのが好ましい。
【0036】
また、本発明により得られる精製緑茶抽出物中のカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなるガレート体の全非重合体カテキン類中での割合は、0〜70質量%、更に0〜50質量%であるのが好ましく、特に0〜40質量%であるのが、非重合体カテキン類の苦味低減の点で好ましい。
【0037】
本発明で得られる精製緑茶抽出物中のカフェイン濃度は、非重合体カテキン類に対して、カフェイン/非重合体カテキン類(質量比)=0〜0.15、更に0〜0.1、特に0〜0.05、殊更に0〜0.035であるのが呈味改善の点で好ましい。
【0038】
また、本発明で得られる精製緑茶抽出物中の没食子酸濃度は、酸味の低減の点から、非重合体カテキン類に対して、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)=0〜0.1、更に0〜0.05、特に0〜0.00028、殊更に0〜0.00025が好ましい。
【0039】
また、本発明で得られる精製緑茶抽出物のとろみ等の呈味の点から、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)=0〜0.26重量%、更に0.02〜0.25重量%、特に0.03〜0.24重量%が好ましい。
【0040】
本発明で得られる精製緑茶抽出物としては、固形分中に非重合体カテキン類を25〜95質量%、非重合体カテキンガレート体率0〜70質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)0〜0.1であり、カフェイン/非重合体カテキン類(質量比)が0〜0.15であり、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)が0〜0.26質量%であるものが、呈味改善の点で好ましい。
【0041】
本発明で得られた精製緑茶抽出物はそのままで使用できる。また、減圧濃縮、薄膜濃縮などの方法により溶媒を除去してもよい。また緑茶抽出物の製品形態として粉体が望ましい場合は、噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法により粉体化できる。
【0042】
本発明で得られた精製緑茶抽出物は容器詰飲料(緑茶飲料、スポーツドリンク、アイソトニック飲料等)に配合できる。使用される容器は一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0043】
また上記の容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【0044】
(カテキン、カフェイン及び没食子酸の測定法)
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法で行った。カテキン類の標準品としては、三井農林製のものを使用し、検量線法で定量した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0045】
(タンナーゼ活性の測定法)
試薬A:pH5.5クエン酸緩衝溶液50mmol:蒸留水800mLにクエン酸10.5gを溶解し、1NのNaOH溶液でpH5.5に調整し、1000mLに希釈する。
試薬B:0.35質量%基質水溶液(タンニン酸):50mLクエン酸緩衝溶液(試薬A)にタンニン酸175mgを溶解する。
試薬C:90vol%エタノール溶液。
測定方法
1.試験管に基質溶液(試薬B)を1.0mL採取し、30℃で5分間保つ。
2.試料溶液0.25mL添加し、15分間30℃で培養する。ブランク溶液は、試料溶液の代わりにクエン酸緩衝溶液(試薬A)を加える。
3.酵素反応を停止するため試料溶液とブランク溶液に5.0mLのエタノール溶液(試薬C)を加える。
4.310nmの吸光度を測定する[試料:As、ブランク:A0]。
次の計算式により活性を計算する。
体積当たりの活性(U/mL)=(As−A0)×20.3×1.0(mL)×1.04×df/(0.71×0.25(mL)×15(min))=ΔA×7.93×df
質量当たりの活性(U/g)=(U/mL)×1/C
20.3:基質溶液(試薬B)の1.0mL中に含まれるタンニン酸のμmol。
0.71:分析条件下での20.3μmolのタンニン酸が完全に加水分解した後の吸光度の変化量、1.04:換算係数、df:希釈係数、C:サンプル(g/mL)中のタンナーゼ濃度。
【0046】
(色調の評価)
HITACHIの分光光度計(型式U−2001型)を用い、ガラスセルにサンプル中の非重合体カテキン類の濃度が0.180質量%の水溶液になるようにイオン交換水で希釈して測定した。分析時の分光光度計の測定波長は400nmに設定した。
【0047】
(窒素含有率)
微量全窒素分析装置(減圧法)(型式TN−100 三菱化学)を用い、バイアルビンにサンプル中の非重合体カテキン類の濃度が0.180質量%の水溶液になるようにイオン交換水で希釈して測定した。
【0048】
(精製物の評価)
各実施例で得られた精製茶抽出物を非重合体カテキン類含有率が0.175%[w/v]となるように脱イオン水で希釈し、その40mLを50mLの耐圧製ガラス容器に入れた。そこにアスコルビン酸Naを0.1質量%添加し、5%重炭酸Na水溶液でpHを6.4に調整し、窒素置換を行い、オートクレーブで121℃、10分間加熱滅菌した。その後、評価パネラー5名によって後味についての苦味、酸味、及びとろみの評価を行った。苦味の評価は硫酸キニーネ法にて行った。
ここでいうとろみとは、旨味に近い風味、及び口あたりの好ましくない複合感覚である。
【0049】
(硫酸キニーネ法(等価濃度試験法)による苦味評価)
硫酸キニーネ2水和物を表1に記載の苦味強度に対応した濃度に調整した。評価サンプルを試飲した後、標準苦味溶液のどのサンプルと苦味の強さが等しいか判断した。評価パネラー5名によって苦味強度の確認を行った。(参考文献:新版官能検査ハンドブック 日科技連官能検査委員会p448-449、Perception & Psychophysics,5,1696,347-351)
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1
タンナーゼ処理した緑茶抽出物153gを4591gのイオン交換水に溶解させ「吸着原料液1」を得る。「吸着原料液1」には非重合体カテキン類0.93質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は29.9質量%であった。又、カフェイン0.17質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.122であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類30.4質量%であった。
次いで、ステンレスカラム1(内径70mm×高さ480mm、容積1651mL)に合成吸着剤SP−70(三菱化学(株)製)を1186mL充填した。予め両方のカラム共にSV=5(h-1)で95(v/v)エタノールを2倍容積量(対充填樹脂)通液後、水を20倍容積量(対充填樹脂)通液して洗浄した。その後、得られた「吸着原料液1」4744g(4.0倍容積対合成吸着剤)をSV=1(h-1)でカラム1に通液し透過液は廃棄し、「吸着処理樹脂1」を得た。次いで、をSV=1(h-1)で1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)の0.01質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH9.6)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。その後、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)流してし、非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液中のリーディング画分のうち、非重合体カテキン類濃度が0.4重量%以上の画分を回収して3865gの「樹脂処理品1」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類0.98質量%(濁度57NTU)が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は31.0質量%であった。又、カフェイン0.16質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0003、400nmにおける色調は0.432であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類63.0質量%であった。
次いで、25%エタノール水溶液を接触させた合成吸着剤に95%エタノール水溶液SV=1(h-1)で2372mL(2倍容積対合成吸着剤)溶出した液を廃棄した。
次いで、「樹脂処理品1」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で非重合体カテキン類濃度6.39重量%(濁度187NTU)濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.64重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した343.0gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)9.5g(66.6mL)を充填したステンレスカラム2(内径22mm×高さ190mm、容積72.2mL)に通液し、さらに72.2mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物1」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は26.2質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸量/非重合体カテキン類(質量比)は0.0002、400nmにおける色調は0.57、pH4.7、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.238%であった。精製物の評価では、苦味・酸味が少なく、とろみがやや少なかった。
【0052】
実施例2
実施例1で得られた「吸着処理樹脂1」に、SV=1(h-1)で1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)の0.01質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH9.6)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。次いで、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液中のリーディング画分のうち、非重合体カテキン類濃度が0.4重量%以上の画分を回収して3747gの「樹脂処理品2」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類1.00質量%(濁度58NTU)が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は30.4質量%であった。又、カフェイン0.165質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0003、400nmにおける色調は0.444であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類62.8質量%であった。
次いで、「樹脂処理品2」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で非重合体カテキン類濃度4.95重量%(濁度464NTU)濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.65重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した342.0gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)9.5g(66.6mL)を充填したステンレスカラム2(内径22mm×高さ190mm、容積72.2mL)に通液し、さらに72.2mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物2」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は26.6質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0002、400nmにおける色調は0.53、pH4.6、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.240%であった。精製物の評価では、苦味・酸味が少なく、とろみがやや少なかった。
【0053】
実施例3
実施例1で得られた「吸着処理樹脂1」に、SV=1(h-1)で1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)の0.01質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH9.6)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。次いで、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液中のリーディング画分のうち、非重合体カテキン類濃度が0.4重量%以上の画分を回収して3622gの「樹脂処理品3」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類1.02質量%(濁度60NTU)が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は29.8質量%であった。又、カフェイン0.170質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0003、400nmにおける色調は0.457であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類62.7質量%であった。
次いで、「樹脂処理品3」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で非重合体カテキン類濃度4.11重量%(濁度473NTU)濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.68重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した337gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)9.4g(65.6mL)を充填したステンレスカラム2(内径22mm×高さ190mm、容積72.2mL)に通液し、さらに72.2mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物3」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は27.3質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0002、400nmにおける色調は0.51、pH4.6、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.213%であった。精製物の評価では、苦味・酸味が少なく、とろみが少なかった。
【0054】
比較例1
実施例1で得られた「吸着処理樹脂1」に、SV=1(h-1)で1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)のイオン交換水(pH6.0)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。次いで、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、3987gの「樹脂処理品4」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類0.96質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は31.8質量%であった。又、カフェイン0.167質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0003、400nmにおける色調は0.653であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類62.9質量%であった。
次いで、「樹脂処理品4」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.63重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した611gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)15.5g(108.2mL)を充填したステンレスカラム3(内径22mm×高さ300mm、容積114mL)に通液し、さらに114mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物4」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は26.1質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0004、400nmにおける色調は0.06、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.260%であった。精製物の評価では、苦味・酸味が少ないが、とろみは多かった。
【0055】
比較例2
実施例1で得られた「吸着処理樹脂1」に、SV=1(h-1)で1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)のイオン交換水(pH6.0)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。次いで、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液中のリーディング画分のうち、非重合体カテキン類濃度が0.3重量%以上の画分を回収して3850gの「樹脂処理品5」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類1.00質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は29.9質量%であった。又、カフェイン0.160質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0004、400nmにおける色調は0.306であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類64.3質量%であった。
次いで、「樹脂処理品5」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で濃縮処理を行い、非重合体カテキン類濃度4.11重量%(濁度473NTU)濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.74重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した347gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)9.7g(67.8mL)を充填したステンレスカラム4(内径22mm×高さ210mm、容積79.8mL)に通液し、さらに79.8mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物5」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は25.1質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0004、pH4.6、400nmにおける色調は0.04、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.245%であった。精製物の評価では、苦味・酸味が少ないが、とろみは若干多かった。
【0056】
比較例3
実施例1で得られた「吸着処理樹脂1」に、SV=1(h-1)でイオン交換水にクエン酸を3.6g溶解させた1779mL(1.5倍容積対合成吸着剤)の酸性水溶液で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。次いで、25%エタノール水溶液をSV=1(h-1)で4151mL(3.5倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、溶出液は非重合体カテキン類濃度が溶出液中のリーディング画分のうち、非重合体カテキン類濃度が0.5重量%以上の画分を回収して3635gの「樹脂処理品6」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類0.98質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は32.5質量%であった。又、カフェイン0.198質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0006、400nmにおける色調は0.382であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類58.9質量%であった。
次いで、「樹脂処理品6」を減圧濃縮(2.6kPa、40℃)で濃縮処理を行い、次いで、カテキン1.71重量%、溶媒をエタノール38%に濃縮及び希釈調整した307gの液を、活性炭(フタムラ化学製 SGP)8.6g(59.8mL)を充填したステンレスカラム4(内径22mm×高さ210mm、容積79.8mL)に通液し、さらに79.8mL(1.0倍容積対カラム容積)のイオン交換水を通液した後、減圧濃縮(2.6kPa、40℃)によりエタノールを留去させ、「精製緑茶抽出物6」を得た。精製物の非重合体カテキン類組成物のガレート体率は28.9質量%であった。又、カフェイン0質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.0003、pH2.7、400nmにおける色調は0.02、窒素含有量/非重合体カテキン類(質量%)は0.263%であった。精製物の評価では、苦味は少ないが、酸味・とろみは多かった。
【0057】
比較例4
緑茶抽出物4.7gを140.9gのイオン交換水に溶解させ「吸着原料液2」を得る。「吸着原料液2」には非重合体カテキン類0.98質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は51.2質量%であった。又、カフェイン0.18質量%、没食子酸/非重合体カテキン類(質量比)は0.007であった。茶抽出物の固形分中の非重合体カテキン類31.8質量%であった。
次いで、ステンレスカラム5(内径22mm×高さ96mm、容積36.5mL)に合成吸着剤SP−70(三菱化学(株)製)を36mL充填した。予め両カラム共にSV=5(h-1)で95(v/v)エタノールを2倍容積量(対充填樹脂)通液後、水を20倍容積量(対充填樹脂)通液して洗浄した。その後、得られた「吸着原料液2」145.6g(4.0倍容積対合成吸着剤)をSV=1(h-1)でステンレスカラム5に通液し透過液は廃棄し、「吸着処理樹脂2」を得た。次いで、をSV=2(h-1)で36.5mL(1.0倍容積対ステンレスカラム)のイオン交換水(pH6.0)で合成吸着剤を洗浄し、その液を廃棄した。その後、0.1重量%NaOH水溶液をSV=5(h-1)で489.5mL(15倍容積対合成吸着剤)し、非重合体カテキン類を溶出させ、483gの「樹脂処理品7」を得た。この抽出物中には非重合体カテキン類0.16質量%が含まれており、非重合体カテキン類組成物のガレート体率は54.5質量%であった。又、カフェイン0質量%であったが、pH9.6、色調は悪く(黒色)でカテキンの分解が見られた。
【0058】
実施例1〜3、比較例1〜4記載の緑茶抽出物を食品衛生法に基づく殺菌処理をし、苦味、とろみを評価した。その結果も表2に示す。
【0059】
実施例1〜3ではカフェイン濃度が低減し、かつ色相、窒素含有量の低減し、苦味、酸味、とろみが低減した緑茶抽出物が得られ、比較例1、2では、樹脂洗浄液がイオン交換水であり、窒素含有量が多く、とろみがあり、比較例3では、樹脂洗浄液が酸性水溶液である点から、溶出回収液の画分除去を行っても、窒素含有量が多く、とろみがあり、酸味が多く、比較例4では、高濃度アルカリ溶液を多量に通液する点から、色調が悪く、非重合体カテキン類の分解が見られた。
【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶抽出物を合成吸着剤に吸着させ、当該合成吸着剤に塩基性水溶液を接触させ、当該合成吸着剤を洗浄した後に、当該合成樹脂吸着剤に有機溶媒水溶液を接触させて、非重合体カテキン類を溶出させる精製緑茶抽出物の製造法。
【請求項2】
当該合成吸着剤を洗浄する塩基性水溶液のpHが7〜11である請求項1又は2のいずれか1項記載の製造法。
【請求項3】
非重合体カテキン類を溶出させる有機溶媒水溶液の濃度が5〜50%である請求項1〜3記載のいずれか1項記載の製造法
【請求項4】
有機溶媒水溶液がエタノール水溶液である請求項1〜4のいずれか1項記載の製造法。
【請求項5】
有機溶媒水溶液を接触させた溶出液のうち、非重合体カテキン濃度が0.1質量%以上の画分を回収する請求項1〜5のいずれか1項記載の製造法。
【請求項6】
有機溶媒水溶液による溶出液を、さらに活性炭と接触させる請求項1〜6のいずれか1項記載の製造法。
【請求項7】
緑茶抽出物が、加水分解処理して得られるものである請求項1〜7のいずれか1項記載の製造法。

【公開番号】特開2009−60824(P2009−60824A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230464(P2007−230464)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】