説明

糖尿病患者における神経因性疼痛の治療用医薬の調製のためのアセチルL−カルニチンの使用

アセチルL-カルニチン、またはその医薬上許容される塩の1つの、インスリンで治療されていない2型糖尿病患者における神経因性疼痛の治療のための使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する本発明は、インスリン治療されていない2型糖尿病患者における神経因性疼痛の治療用医薬の調製のためのアセチルL-カルニチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性神経障害は、欧米においてもっともよくみられる末梢神経障害であり、様々な形態の神経障害が含まれるが、そのなかでも糖尿病性多発性神経障害がもっとも一般的である。糖尿病性神経障害の解剖病理学的像は、限局性または散在性の非特異的な(aspecific) 線維の欠損にあり、結合組織または小血管の構造的異常または神経細胞内異常に関連する脱髄を伴う。
【0003】
糖尿病性神経障害の原因は知られていない。「神経栄養血管」の高血糖および虚血による代謝不均衡がもっともよく知られた病原機構である。
【0004】
様々な代謝異常および生化学的改変が糖尿病の実験モデルと糖尿病患者との両方において記録されており、例えば、グルコース代謝の上昇およびミオイノシトールの減少が含まれる。
【0005】
糖尿病性多発性神経障害の特徴的症状は、電撃痛または灼熱痛の存在であり、感受性、運動性の対称的機能障害および/または深部腱反射の臨床的徴候を伴う; かかる症状は下肢の遠位部分において顕著である。
【0006】
今日までに糖尿病患者における神経因性疼痛の治療のためのアセチルL-カルニチンの使用に対して研究者らにより採用されてきた治療的アプローチでは糖尿病のタイプおよび臨床試験に入るまでの時間に投与された抗糖尿病薬のタイプに基づく患者の選択を考慮することはできていなかった。
【0007】
実際、Journal of the American Diabetes Association June 2002、Vol. 51、Suppl.においては、1型および2型糖尿病の神経障害患者のアセチルL-カルニチンによる治療の効果を評価するための多施設臨床試験が記載されている。
【0008】
この治験において得られた結果は矛盾を含むものであり、1つの群では改善がみられたが、他の群ではみられなかった。この治験の最後には、著者らは欧州において募った患者群においては疼痛症状における改善がみられないのに対し、米国およびカナダの群においては改善が記録されたと報告している。
【0009】
著者らは、肥満の2型糖尿病患者群においてより大きい改善が得られたことを示唆している。
【0010】
この実験において、著者ら(そのなかの2人は本特許出願の発明者である)はまた、彼らが行った治験の最後において、募るべき患者の選択の違いにより相異なる、即ちより良好およびより価値のない結果に至るということを理解することが出来なかった。
【0011】
さらに、異なる患者の選択により、非応答者が治験に含められ、彼らにとって無用の、即ち有効でない化合物によって治療されること、そしてかかる患者がなんらの治療による利益も受けずに副作用のリスクに供されることを避けることが出来たであろう。
【0012】
この場合では、用いた被験化合物には重篤な副作用が無いことが周知であったため、非応答者は薬剤により害を受けることはなかったが、被験化合物がより重篤な副作用を有する別の薬剤であったならば同様のことはいえなかった。
【0013】
したがって、この治験においては、患者は彼らの高血糖の管理のために受けた治療のタイプに基づいて選択されなかったため、1つの群における改善および他の群における改善の欠如の原因が何に起因するかということは理解できなかった。
【0014】
「Giornale Italiano di Diabetologia、1998、Vol.18、pp. 30-31、abs」において公表されている報告には、感覚運動多発性神経障害を患うNIDDM 糖尿病患者に対するアセチルL-カルニチン治療の効果が記載されている。
【0015】
著者らは、この研究において得られた結果は症状の改善を示すことを報告している。
【0016】
この研究においても、患者は、該臨床試験に入る前の彼らの高血糖の管理のために受けた治療のタイプに基づいて選択されなかった。それゆえ、この場合でもまた、異なる患者の選択により異なる実験結果が得られるかどうかを確立することは不可能である。
【0017】
実際、著者らは、より持続時間の長い、さらなる臨床試験でしか、アセチルL-カルニチンの糖尿病性末梢神経障害に対する効果を示すことができないであろうことを示唆している。
【0018】
以下により詳細に説明するように、著者らは間違っていた:研究者らが糖尿病性末梢神経障害の治療において被験化合物が活性であるか否かを理解することを可能にしうるものは、臨床試験に含まれる患者の数を増やすことによるものではない; かかる目的は、臨床試験に含めるべき患者の異なる選択によってのみ達成しうるものである。
【0019】
Drugs in Research and Development 2002、Vol. 3 (4)、pp. 223-31、2002 に公表されている報告は対称的遠位多発性神経障害または多神経障害(multineuropathy)を伴う1型および2型糖尿病を含めた臨床試験について記載している。
【0020】
この臨床試験において得られた結果は、募られた333名のうちアセチルL-カルニチンで治療された患者の39%において疼痛症状が改善したことを示す。
【0021】
この研究においてもまた、患者は、その高血糖を管理するために患者が受けた治療のタイプに基づいて選択されたものではなかった。それゆえ、この場合でもまた、改善の原因は何であったのか、または、この化合物が活性であるのはどの特定の患者亜集団であり、不活性であるのはどの患者亜集団であるのかを理解するのは不可能であった。
【0022】
Diabetologia 1995、Vol/ISS/ p. 38/1 (123) において公表された報告は、インスリンまたは経口抗糖尿病薬で治療されている糖尿病性末梢神経障害を伴う糖尿病患者におけるアセチルL-カルニチンによる治療の効果を記載している。
【0023】
この治験において得られた結果は症状の改善を示す。
【0024】
この研究においてもまた、患者は糖尿病のタイプまたはその高血糖を管理するために患者が受けた治療のタイプに基づいて選択されたものではなかった。それゆえ、この場合でもまた、改善の原因は何であったのか、または、この化合物が活性であるのはどの特定の患者亜集団であり、不活性であるのはどの患者亜集団であるのかを理解するのは不可能であった。
【0025】
実際、著者らは、糖尿病性末梢神経障害におけるアセチルL-カルニチンの有効性はさらに長い持続時間の臨床試験を行わなくては示すことが出来ないことを示唆している。
【0026】
上記のように、著者らは間違っていた:研究者らが糖尿病性末梢神経障害の治療において被験化合物が活性であるか否かを理解することを可能にしうるものは、臨床試験に含まれる患者の数を増やすことによるものではない; かかる目的は、臨床試験に含めるべき患者の異なる選択によってのみ達成しうるものである。
【0027】
「Il giornale dei congressi medici、5、14-19,1993」における記事において、著者は、臨床試験において、120名の糖尿病性神経障害患者がアセチルL-カルニチンによる治療の後の症状の顕著な改善を示したと述べている。
【0028】
この記事の著者は本特許出願の発明者の一人であり、この臨床試験についての所見を得、それに気づくまで、試験に含める異なる患者の選択が得られた結果よりも良好な結果を導くことを理解していなかった。
【0029】
実際、この著者は患者が1型または2型糖尿病を患っていたか否かについてなんら言及していない。
【0030】
この場合もまた、よりよい患者の選択を行っていれば、非応答者を排除することができたのであり、それによって非応答者にとって無用であり、有効でなく、有害である可能性のある薬物を摂取することを避けることができたであろう。上記のように、被験化合物には重篤な副作用がないことが周知であったために、非応答者は薬害を受けることはなかったが、被験化合物が別のより重篤な副作用を伴う薬物であった場合には同様にはならなかったであろう。
【0031】
したがって、この研究においてもまた、患者は、自己が患う糖尿病のタイプに基づいて選択されたのではなく、それゆえ、アセチルL-カルニチンによる治療によりどの患者亜集団が改善を示すのか理解することは不可能であった。
【0032】
National Congress of the Italian Society of Nephrophysiology、Perugia 1-4 June、1994、p. 98のアブストラクトにおいて、1つの報告には、インスリンまたは経口抗糖尿病薬で治療されている、糖尿病性末梢神経障害を患う糖尿病患者の、アセチルL-カルニチンによる治療の効果が記載されている。
【0033】
この研究において得られた結果は、症状の改善を示すものであり、著者らは、特に疼痛改善は正確に「計測」することができないという事実のために、治療群における疼痛の成分の改善は非常に注意して考慮しなければならないということを示唆し、神経線維レベルでの活性の複雑な仮定を提唱するに至った。
【0034】
この研究においても、患者は患っている糖尿病のタイプ、および高血糖の管理のために受けている治療のタイプに基づいて選択されたのではなく、それゆえこの場合においてもまた、どの患者亜集団が改善を示したか理解することが不可能であった。
【0035】
Clin. Drug. Invest、Vol. 10 (6)、pp. 317-22 1995における報告には、糖尿病性神経障害の56名の患者(全研究集団の13.1%)を含む様々な起源の末梢神経障害を患う426名の患者に対するアセチルL-カルニチン治療の効果が記載されている。糖尿病のタイプや高血糖の管理のために受けている患者の治療のタイプについての情報は提供されていない。
【0036】
この研究において得られた結果は疼痛症状の改善を示し、著者らは神経障害患者の個々のよく一致した(well-matched)亜集団におけるさらなる研究をしなければならないことを示唆している。なぜならばこの実験モデルでは、分析を行うためには群が十分に大きくなく、治療期間も十分に長くなかったからである。
【0037】
上記のように、この研究においても、著者らは間違っていた:臨床試験に含める患者数を増やすことによっては、糖尿病性末梢神経障害の治療において被験化合物が活性であるか否かを研究者が理解できるようにはならない。
【0038】
したがって、この研究においても、患者は、患っている糖尿病のタイプおよび高血糖を管理するために受けた治療のタイプに基づいて選択されておらず、それゆえこの場合においてもまた、改善の原因およびどの患者亜集団において改善がみられるのか理解することは不可能であった。
【0039】
Journal of the Neurological Sciences、1997、Supp. to Vol. 150における報告には、多発性神経障害患者に対するアセチルL-カルニチン治療の効果が記載されている。
【0040】
この研究においては、糖尿病のタイプおよび高血糖を管理するために患者が受けた治療のタイプに関する情報は提供されていない。
【0041】
この研究において得られた結果は末梢神経障害の客観的徴候および神経伝導速度における改善を示す。
【0042】
したがって、この研究においても、患者は罹患している糖尿病のタイプおよび高血糖を管理するために受けた治療のタイプに基づいて選択されておらず、それゆえこの場合においてもまた、どの特定の亜集団が応答群であるのか理解することは不可能であった。
【0043】
IX National Congress of the Italian Society of Clinical Pharmacology - II Congress of the Mediterranean Society of Clinical Pharmacology 「Therapeutic Advances and New Health Problems」、Venice、8-10/10/1991 ABS のアブストラクトにおける1つの報告には様々な起源の末梢神経障害の500名の患者に対するアセチルL-カルニチン治療の効果が記載されている。糖尿病患者の糖尿病のタイプまたは高血糖を管理するために受けた治療のタイプに関する情報は提供されていない。
【0044】
この研究において得られた結果は症状の改善を示す。
【0045】
この研究においても、患者は罹患している糖尿病のタイプおよび高血糖を管理するために受けた治療のタイプに基づいて選択されておらず、それゆえこの場合においてもまた、改善の原因およびどの患者亜集団に改善がみられるのかについての理解は不可能であった。
【0046】
著者らはより大きい患者群についてさらなる研究をすべきであることを示唆している。
【0047】
上記のように、この場合においてもまた、著者らは間違っていた:臨床試験に含める患者数を増やしたとしても、研究者らは被験化合物が糖尿病性末梢神経障害の治療に活性であるか否かを理解することはできなかったであろう;臨床試験に含める患者の種類の異なる選択によってのみかかる目的は達成できたであろう。
【0048】
上記臨床試験において得られた結果は、対照群と比較した治療群における改善の数を示しているが、時には矛盾し、時には明らかな矛盾が存在しないこともあった。かかる研究において、患者は糖尿病のタイプまたは臨床試験に入るまでに受けた治療のタイプに基づいて選択されていなかった。
【0049】
換言すると、これらの研究の著者らは含められた患者集団において応答群および非応答群があり得るかどうかについての問題を提起しなかった。というのは著者らは異なる患者の選択により、より良好な結果およびより価値の低い結果が起こりうるということに気づいていなかったからである。
【0050】
含められた患者から、異なる試験対象患者基準を有する患者の選択を行わなかった結果、著者らはある特定の場合には改善がみられ、別の特定の場合には改善がみられなかった理由を理解することが出来なかった。このため、たくさんの臨床知識を有する著者らは、患者数を多くし、試験時間を長くすることによってのみ、被験化合物が活性であるか否かを示すことが可能であっただろうという宣言を行ってしまった (しかも全く疑いなく)。本発明は、これら著者らが間違っていたことを示す。というのは、同じ試験対象患者基準を用いて、試験集団を大きくしたり治療期間を長くしたりすることによっては、含められ、治療される患者における糖尿病性神経障害の治療についてアセチルL-カルニチンが活性であるかは示すことはできないからである。これら目的は、異なる試験対象患者基準を用いることによってのみ達成されうる。
【0051】
アセチルL-カルニチンの使用については以前から知られている。
【0052】
例えば、米国特許第 4751242号には、糖尿病性神経障害を含む様々な起源の末梢神経障害の治療のためのアセチルL-カルニチンの使用が記載されている。
【0053】
この特許においては、糖尿病のタイプまたは高血糖を管理するために患者が受けた治療のタイプに関する情報は提供されていない。
【0054】
この特許においては、異なる試験対象患者基準がより良好な治療結果をもたらしうるという効果について何ら開示も示唆もされていない。実際、異なる患者の選択により、非応答者が、試験に含められ、そして有用でない、即ち無効である化合物によって治療されることを避けることが出来たであろう。非応答者へのかかる治療は患者をまったく治療効果による恩恵を受けずして副作用の発症のリスクに曝すことになりうる。
【0055】
上記のように、この場合、使用した被験化合物に重篤な副作用が無いことが周知であったおかげで、非応答者はかかる薬物により害を受けずに済んだが、被験化合物が別の、より重篤な副作用をもたらす薬物であった場合は同様のことはいえない。
【0056】
したがって、この研究においても、患者は高血糖を管理するために受けた治療のタイプに基づいて選択されておらず、それゆえどの治療を受けた患者群に改善が起こるのかを理解することは不可能であった。
【0057】
アセチルL-カルニチンのさらなる使用もまた周知である。
【0058】
米国特許第 5192805号は、昏睡の治療的処置におけるアセチルL-カルニチンの使用に関する。
【0059】
米国特許第 60373721128号は、筋萎縮性側索硬化症、視覚および嗅覚神経障害、三叉神経痛およびその他の疾患の治療のためにIGF-1 レベルを上昇させるためのアセチルL-カルニチン、イソバレリル L-カルニチンおよびプロピオニル L-カルニチンの使用に関する。
【0060】
米国特許第 6037372号は、アセチルL-カルニチンを含むアルカノイル L-カルニチンの、グルタミン酸に媒介される疾患、例えば、癲癇、統合失調症、慢性疲労症候群、筋萎縮性側索硬化症およびその他の疾患の治療のための使用に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0061】
このたび、アセチルL-カルニチンがインスリンで治療されていない2型糖尿病患者における神経因性疼痛の治療のための有効な薬剤として有用であることが見いだされた。
上記のように、神経障害の治療のためのアセチルL-カルニチンの使用は既に知られている。しかし今日、本出願に至るまで、アセチルL-カルニチンがインスリン治療を受けていない2型糖尿病患者における糖尿病性神経障害の治療に有用であることは知られていなかった。
【0062】
今日まで、アセチルL-カルニチンが糖尿病患者の末梢神経障害の治療に使用された臨床試験においては、様々なタイプの糖尿病および様々なタイプの糖尿病患者が受けた薬物治療の間での区別はなされたことはなかった。
【0063】
このように適切な患者の選択がなされていなかったため (本明細書において実施例にて示すように)、アセチルL-カルニチン治療に応答しない患者を治療することになってしまっており、非常にばらつきのある実験結果が得られていたため、被験化合物の完全な有効性を保証することが出来なかった。
【0064】
実際、Drugs 1997 Sept: 54 (3) 414-421において以下が報告されている:
1)アセチルL-カルニチンの有効性は非常に低い;
2)末梢神経障害の治療のために提案されていた薬物について、今日(1997年9月)まで、糖尿病患者におけるアセチルL-カルニチンの使用を正しいとするデータまたは臨床試験結果は存在しない;
3)イタリアで行われた最近の臨床試験では、およそ200名の糖尿病性神経障害患者はアセチルL-カルニチンとプラセボとの間で有意差をまったく示さなかった(Sigma-Tau Pharmaceuticals、非公表データプロトコール番号 DRN 2003289I/ALC-ST200);
4)現在のところ、以下の理由により、糖尿病性神経障害の治療に有用な薬剤は存在しない(a)現在までに行われた試験のほとんどの方法論の質が非常に悪かった; (b) 試験期間が不十分であった; (c)試験対象患者基準と除外基準に関して方法的に困難性があった;
5)将来の臨床試験ではこれらの問題を考慮しなくてはならない。
【0065】
当業者であればDrugs 1997 Sept. 54 (3) 414-421の発行日から現在まで試験対象患者基準における変更はなされておらず、それゆえ結果の解釈において遭遇する困難性も同様に残っていることを知っているであろう。
【課題を解決するための手段】
【0066】
本発明によると、本発明者らはこのたび、臨床試験に含める、それゆえ治療されるべき患者の選択について異なる方法を見いだし、結果の解釈に関して生じるなんらの疑問も残すことなく被験化合物の有効性を示すことが出来た(以下の実施例を参照されたい)。
【0067】
本発明の対象はそれゆえ、インスリンで治療されていない2型糖尿病患者における神経因性疼痛の治療用医薬の調製のためのアセチルL-カルニチン、またはその医薬上許容される塩の1つの使用である。
【0068】
アセチルL-カルニチンの医薬上許容される塩とは、望ましくない毒性または副作用を引き起こさない酸とのアセチルL-カルニチンのあらゆる塩を意味する。
【0069】
かかる酸は薬学技術の当業者に周知である。
【0070】
かかる塩の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる: クロリド、ブロミド、オロチン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、マグネシウムクエン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、マグネシウムフマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、ムケート(mucate)、酸シュウ酸塩、パモ酸塩、酸パモ酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩、酸酒石酸塩、マグネシウム酒石酸塩、2-アミノ-エタンスルホン酸塩、マグネシウム 2-アミノ-エタンスルホン酸塩、コリン酒石酸塩およびトリクロロ酢酸塩。
【0071】
以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0072】
実施例 1
その実験計画が同一の2つの二重盲検プラセボ対照臨床試験を、San Antonio、Texas conference (Diabetes 37:1000-1004、1988)において確立された基準にしたがって選択された糖尿病性末梢神経障害と診断された患者に対して行った。
【0073】
アセチルL-カルニチンを1.5 g/日および3.0 g/日の用量で連続的に52 週間経口的に投与した。
【0074】
この研究の一つの目的は、疼痛症状の主観評価および主な感覚運動臨床パラメーターにおいて、Visual Aanalogue Sscale (VAS) (Scott J. Huskisson EC. Graphic representation of pain. Pain 1976;2:175-184)に対する可能性のある修正を行うことであった。
【0075】
治療した2型糖尿病患者の2つの集団のうち、一方はインスリンで治療されていない患者からなるものであり; この集団には、同じ試験対象患者基準を満たす、被験化合物を投与されない患者対照群(プラセボ、群 1) およびアセチルL-カルニチンで治療される患者 (インスリン治療を受けていない患者)を含めた。
【0076】
第2の集団はインスリンで治療されている2型糖尿病患者からなるものとした。この場合でも、この集団には同じ試験対象患者基準を満たすプラセボ 群 (群 4) およびアセチルL-カルニチンで治療される患者 (インスリン治療を受けている患者)を含めた。
【0077】
2つの研究の患者において得られた全体の結果を表1および2に示す。
【0078】
表1
インスリン治療を受けていない2型糖尿病患者
【表1】

【0079】
表2
インスリン治療を受けている2型糖尿病患者
【表2】

【0080】
表 1に報告する結果は、インスリン治療を受けていない2型糖尿病患者の処置の最後において、アセチルL-カルニチンは用量関連的に活性であることを示した。即ち、高用量(3 g/日)においてのみ、プラセボ群と比較して活性であった。
【0081】
一方、表 2に報告する結果はインスリン治療を受けている2型糖尿病患者に用いた同じ化合物は、高用量においても対照群と比較して活性における統計的有意差を示さなかったことを示す。
【0082】
表 2においてプラセボ群および低用量のアセチルL-カルニチン(1.5 g/日)で処置された患者群では、表 1の同等の群と比較して処置の最後において高いVASスコアを示したことは興味深い;この差は、高用量の被験化合物ではもはや検出されないインスリン治療の効果に起因するのであろうと考えられる。
【0083】
もし被験化合物がインスリン治療を受けている2型糖尿病患者においても活性であるとしたら、プラセボ 群 (群 4)と低用量のアセチルL-カルニチン投与群(群 5)との活性の差がこの集団で維持されているはずである。
【0084】
表1および2に示す結果は、本発明に説明した原理に従って患者の選択を行っていない以前に行われた臨床試験は、処置した集団全体の正しい活性を予測するとみなすことができず、単に偶然の陽性応答である活性の徴候を示すものであることを示す。以前の研究では研究者は結果の真の原因について理解することができない。かかる応答は部分的には、多数の患者において真の臨床的改善により起こっているが、部分的にはプラセボ効果により起こっていた。
【0085】
アセチルL-カルニチンは公知の化合物であり、その調製手順は米国特許第4439438号および4254053号に記載されている。
【0086】
アセチルL-カルニチンはヒト対象において経口または非経口投与に好適ないずれの形態であってもよい。
【0087】
様々な因子、例えば、活性成分の濃度や患者の症状に基づいて、本発明による化合物は食品サプリメントまたは栄養サプリメントまたは医者による義務的な処方箋を伴うかまたは伴わない治療用製品として上市することが出来る。
【0088】
上記活性成分を投与すべき一日用量は、専門家の経験に基づいて患者の年齢、体重および全体の健康状態に依存することが見いだされたが、単一用量であれ複数用量であれ、およそ1.5〜5 g/日のアセチルL-カルニチン、または等モル量のその医薬上許容される塩の一つを投与することが一般に推奨される。好ましい用量は1.5 g/日を超え、この活性成分の毒性は非常に低いために推奨される最大用量であってもよい。
【0089】
本発明による医薬は、活性成分 (アセチルL-カルニチン分子内塩またはその医薬上許容される塩の1つ)を、経腸投与 (特に経口投与)または非経口投与 (特に筋肉内または静脈内経路を介する)のための組成物の製剤に好適な賦形剤と混合することによって調製することが出来る。
【0090】
医薬分野の専門家であればこのような賦形剤に精通している。
【0091】
上記活性成分の医薬上許容される塩には、酸をアセチルL-カルニチン分子内塩に付加することによって調製され、望ましくない毒性作用や副作用を引き起こさないあらゆる医薬上許容される塩が含まれる。酸の付加による塩の形成は製薬分野で周知である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンで治療されていない2型糖尿病患者における神経因性疼痛の治療用医薬の調製のためのアセチルL-カルニチンまたはその医薬上許容される塩の1つの使用。
【請求項2】
アセチルL-カルニチンの医薬上許容される塩が、クロリド、ブロミド、オロチン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、マグネシウムクエン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、マグネシウム フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、ムケート、酸シュウ酸塩、パモ酸塩、酸パモ酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩、酸酒石酸塩、マグネシウム酒石酸塩、2-アミノ-エタンスルホン酸塩、マグネシウム 2-アミノ-エタンスルホン酸塩、コリン酒石酸塩およびトリクロロ酢酸塩からなる群から選択される、請求項 1の使用。
【請求項3】
アセチルL-カルニチンが1.5 g/日を超える用量で経口投与される、請求項 1の使用。
【請求項4】
アセチルL-カルニチンが3 g/日の用量で経口投与される、請求項 1の使用。

【公表番号】特表2008−505134(P2008−505134A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519628(P2007−519628)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003557
【国際公開番号】WO2006/002698
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】