説明

糖尿病治療におけるインターロイキン1βムテイン・コンジュゲートの使用

本発明は、2型糖尿病の治療、改善及び/又は予防のための組成物、医薬組成物とワクチンを提供する。本発明の組成物、医薬組成物及びワクチンはRNAバクテリオファージのウイルス様粒子と抗原とを含んでなり、前記抗原はインターロイキン−1β(IL−1β)ムテインを含む。動物に、好ましくはヒトに投与される場合、前記組成物、医薬組成物及びワクチンは有効な免疫反応、特に抗体応答を誘導し、一般的に、好ましくは前記抗体応答はIL−1βに向かうものである。したがって、本発明は、IL−1βに対する能動免疫化を介して2型糖尿病を治療、改善または予防する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2型糖尿病の治療、改善および/または予防のための組成物、医薬組成物及びワクチンを提供する。本発明の組成物、医薬組成物及びワクチンは、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子と抗原とを含んでなり、前記抗原はインターロイキン−1β(IL−1β)ムテインを含む。動物に、好ましくはヒトに投与される場合、前記組成物、医薬組成物及びワクチンは効率的な免疫反応、特に抗体応答を誘導し、通常は、好ましくは、前記抗体応答はIL−1βに向かうものである。したがって、本発明は、IL−1βに対する能動免疫化を介して2型糖尿病を治療、改善又は予防する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、インスリン分泌不全、インスリン作用不全または両方の組合せによる高血糖の存在により特徴づけられる慢性的代謝異常である。2型糖尿病の膵臓のβ細胞不全の機構が完全に解明されていないが、ストレスと炎症性経路が関係していることが示された。反復的なグルコース襲撃、脂質異常症及びアディポカインによって生じる代謝ストレスは局所的サイトカイン分泌、膵島免疫性β細胞浸潤、β−細胞アポトーシス、アミロイド沈着及び線維によって特徴づけられるすい臓の炎症性反応を誘導することがある。IL−1βはマスター・サイトカインとして現れて、膵島ケモカイン産生を調整し、インシュリン産生不全とβ−細胞死が生じる。組換えIL−1β受容体アンタゴニストまたは中和モノクローン抗体の投与によるIL−1β信号伝達の遮断は、2型糖尿病の動物モデルの血糖コントロールを改良することが示された(Sauter et al. 2008, Endocrinology, Vol. 149(5) pp. 2208-18; Osborn et al. 2008, Cytokine, Vol. 44(1) pp. 141-8)。さらにまた、組換えヒトIL−1β受容体アンタゴニスト(Anakinra)による2型糖尿病患者の治療は、糖化ヘモグロビン濃度(長期糖血症の確実な示度)の減少とβ細胞機能の改善に結果としてなった(Larsen et al. 2007, N Engl J Med, Vol. 356(15) pp. 1517-1526, 2007)。
【発明の概要】
【0003】
我々は、少なくとも一つのIL−1βムテインを含んで成る本発明の組成物がIL−1βに対して免疫反応、特にこれによる抗体応答を誘導することができるだけでなく、さらにインビボでIL−1βの炎症誘発活性を中和することができることも見いだした。これはマウスモデル(実施例3を参照)と、ヒトの状態と密接に類似していると考えられるサル・モデル(実施例11を参照)において示された。
【0004】
我々は、現在、驚くべきことに、本発明の組成物による能動免疫化が、糖尿病のマウスモデル(Surwit et al., DIABETES, Vol. 37, 1988, 1163-1167)の食事誘導性糖尿病性表現型の改善に結果としてなったことを見いだした(実施例5を参照)。さらにまた、驚くべきことに、受容体結合とそれによるヒトIL−1βの生物的活性が、そのN末端アミノ酸残基をアミノ酸配列MDI(実施例6)と交換することによって減少される可能性があることが見いだした。変異されたN末端が、ヒトIL−1βの生物的活性を減じることが知られている突然変異であるD145K突然変異と相乗作用的に相互作用することも見いだされた(実施例6)。両方の突然変異を含むIL−1βムテインは、非常に低い生物活性を示した。霊長類の研究において、D145K突然変異とN末端にアミノ酸配列MDIを含むヒトIL−1βムテインは、野生型ヒト及び霊長類IL−1βと比較した場合に、かなり有意に減少した反応性を示した(実施例7)。IL−1βムテインの低い生物活性はインビボでワクチンの反応性を減少させ(実施例10を参照)、したがって最終的にワクチンの安全に寄与する。
【0005】
したがって、本発明の一態様は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療方法に使用される組成物であって、該組成物が(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子;及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記突然変異されたアミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原;とを含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合される組成物である。
【0006】
下で開示されるように、本発明の更なる態様はワクチンの組成物、医薬組成物、方法及び使用である。
【0007】
(発明の詳細な説明)
アジュバント:ここで用いられる「アジュバント」なる用語は、ワクチン又は医薬組成物と組み合わせると、それぞれ、より亢進した免疫応答をもたらしうる貯蔵所の生成を宿主内において可能にする物質又は免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。好ましいアジュバントは、完全及び不完全フロイントアジュバント、アルミニウム含有アジュバント、好ましくは水酸化アルミニウム、最も好ましくはミョウバン、修飾ムラミルジペプチドである。更に好ましいアジュバントは、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホール リンペットヘモシニアン、ジニトロフェノールとBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム‐パルヴムのようなヒト・アジュバントである。本発明の組成物と共に投与することができる更なるアジュバントは、一リン酸化脂質免疫調節薬、AdjuVax100a、QS−21、QS−18、CRL1005、アルミニウム塩(ミョウバン)、MF−59、OM−174、OM−197、OM−294とビロソームアジュバント技術を含むが、これに限定されるものではない。アジュバントなる用語は、更にこれらの物質の混合物を含む。VLPは、一般にはアジュバントとして記載されている。しかしながら、本願の文脈内で使用される「アジュバント」なる用語は、本発明の組成物に使用されるVLPではないアジュバントを意味し、むしろ追加の別個の成分に関する。特に、アジュバントなる用語は、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子を意味するものではない。
【0008】
抗原:本明細書で用いる「抗原」という用語は、MHC分子により提示された場合、抗体又はT細胞受容体(TCR)により結合されることができる分子を指す。抗原は免疫系により認識されることができ、及び/又は、B及び/又はTリンパ球の活性化をもたらす体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、これは、少なくとも特定の場合に、抗原がTh細胞エピトープを含むか、又は結合していて、アジュバントで投与される必要がある場合がある。抗原は、一つ又は複数のエピトープ(BおよびTエピトープ)を有することができる。上に記載した特異的反応は、抗原が、好ましくは、一般的に、非常に選択的にその対応する抗体又はTCRと反応するが、他の抗原により誘起される他の多数の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意味する。抗原は、本明細書で用いる数種の抗原の混合物であってもよい。本願明細書において使用する「抗原」なる用語は、好ましくはポリペプチドであって、前記ポリペプチドがIL−1βムテインを含むかまたはそれから成るポリペプチドに関する。しかしながら、本願明細書において使用する「抗原」なる用語はウイルス様粒子を意味するものではなく、特にRNAバクテリオファージのウイルス様粒子を指すものではない。
【0009】
特異的結合(抗体/抗原):本出願において、抗体は、10−1以上、好ましくは10−1以上、より好ましくは10−1以上及び最も好ましくは10−1以上の結合親和性(Ka)で抗原に結合する場合、特異的に結合していると定義される。抗体の親和性は当業者によって容易に測定されうる(例えばスキャッチャード分析、ELISAまたはBiacore分析によって)。
【0010】
特異的結合(IL−1β/IL−1レセプター):レセプターとレセプターリガンドとの相互作用は、一般に当分野で公知の生物物理学的な方法、例えばELISA又はBiacore分析によって特徴付けされうる。IL−1βムテインを含むIL−1β分子がIL−1レセプターを特異的に結合することができるとみなすのは、IL−1レセプターへのIL−1β分子又はIL−の結合親和性(Ka)が少なくとも105M−1、好ましくは少なくとも10−1、より好ましくは少なくとも10−1、さらにより好ましくは少なくとも10−1、及び最も好ましくは少なくとも10−1である場合であり、好ましくは該IL−1レセプターがヒトのIL−1レセプターである。さらに好ましくは、前記IL−1レセプターは、配列番号1又は配列番号2のいずれか一つを含むか、より好ましくはそれから成り、更に好ましくは前記IL−1レセプターは配列番号1を含むか、好ましくはそれから成る。
【0011】
会合(associated):本願明細書において使用する「結合(associated)」または「結合(association)」なる用語は、2つの分子を結合する、全てのありうる方法であって、好ましくは化学相互作用を意味する。好ましくは、結合は共有結合を介するものであり、更に好ましくは前記共有結合的相互作用はエステル結合、エーテル結合、ホスホエステル結合、アミド結合、ペプチド結合、炭素−リン結合、炭素−硫黄結合(例えばチオエーテル)またはイミド結合から選択される。
【0012】
付着部位、第1:本明細書で用いる「第1の付着部位」という句は、RNA−バクテリオファージのVLPに天然に存在する要素、又はRNA−バクテリオファージのVLPに人工的に付加された要素であって、第2の付着部位に結合されうる要素をさす。第1の付着部位は好ましくはアミノ酸残基を含むか、更により好ましくはアミノ酸残基またはアミノ基のような化学反応基である。第1の付着部位はアミノ酸残基のアミノ基であることが好ましい。更なる好ましい実施態様において、第1の付着部位はリジン残基である。また更なる好ましい実施態様において、第1の付着部位はリジン残基のアミノ基である。好ましい実施態様において、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、好ましくは前記リジン残基はRNAバクテリオファージの前記VLPに天然に存在するリジン残基である。第1の付着部位は、通常、好ましくは表面に位置しており、更に好ましくはRNAバクテリオファージの、最も好ましくはRNAバクテリオファージQβのVLPの外面上に位置する。複数の第1の付着部位は、表面上に、好ましくはRNA−バクテリオファージのVLPの、最も好ましくはRNA−バクテリオファージQβのVLPの外表面上に、基本的に、好ましくは反復性の配置で存在する。好ましい実施態様において、第1の付着部位は、RNA−バクテリオファージのVLPに、少なくとも1つの共有結合により、好ましくは少なくとも1つのペプチド結合により結合する。更なる好ましい実施態様において、第1の付着部位は、RNA−バクテリオファージのVLPに、好ましくはRNA−バクテリオファージQβのVLPに天然に存在する。好ましい実施態様において、第1の付着部位は、RNA−バクテリオファージの前記VLPは、少なくとも1つの共有結合を介して、好ましくは少なくとも1つのペプチド結合により結合し、好ましくは前記RNA−バクテリオファージはQβである。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であって、前記リジン残基は、RNA−バクテリオファージ、最も好ましくはRNA−バクテリオファージQβのコートタンパク質のリジン残基である。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位は、RNA−バクテリオファージのコートタンパク質のリジン残基のアミノ基であって、好ましくは前記コートタンパク質は配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又は好ましくはそれから成る。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位はリジン残基であって、前記リジン残基は、RNA−バクテリオファージ、最も好ましくはRNA−バクテリオファージQβのコートタンパク質のリジン残基である。
【0013】
付着部位、第2:本明細書で用いる際、「第2の付着部位」という句は、抗原に、好ましくは抗原を含むIL−1βムテインに天然に存在するか又は人工的に付加される要素であって、第1の付着部位が連結される要素をさす。第2の付着部位は好ましくはアミノ酸残基である。より好ましくは、第2の付着部位は、化学反応基、好ましくはアミノ酸残基の化学反応基である。非常に好ましくは、前記第2の付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基である。従って、「少なくとも一つの第2の付着部位を有する抗原」なる用語は、抗原、好ましくはIL−1βムテインと少なくとも一つの第2の付着部位を含んで成るコンストラクトに関する。しかしながら、特に、第2の付着部位が抗原中に天然に存在しない場合、上記のコンストラクトは基本的に好ましくは「リンカー」を更に含む。好ましい実施態様において、第2の付着部位は、抗原、好ましくはIL−1βムテインに、少なくとも一つの共有結合を介して、少なくとも一つのペプチド結合を介して結合する。さらなる実施態様において、第2の付着部位は、抗原中に天然に存在し、好ましくはIL−1βムテインに存在する。別の更なる好ましい実施態様において、第2の付着部位はIL−1βムテインに人工的に、好ましくはリンカーを介して付加され、更に好ましくは前記リンカーはシステイン残基を含むか、またはそれから成る。非常に好ましくは、前記リンカーはペプチド結合を介してIL−1βムテインに融合される。
【0014】
連結した:「連結した」(またはその名詞:連結)なる用語は、本願明細書において使われる場合、少なくとも一つの第1の付着部位と少なくとも一つの第2の付着部位が連結される全てのありうる方法、好ましくは化学相互作用を指す。連結は、好ましくは共有結合である。共有結合的相互作用は、好ましくは、エステル結合、エーテ結合ル、リン酸エステル結合、アミド結合、ペプチド結合、炭素−リン結合、炭素−硫黄結合(例えばチオエーテル)またはイミド結合から選択される共有結合である。特定の好ましい実施形態において、第1の付着部位と第2の付着部位は、少なくとも一つの共有結合により、好ましくは少なくとも一つの非ペプチド結合により、更により好ましくは独占的に非ペプチド結合により連結される。しかしながら、本願明細書において使用される「連結される」なる用語は、少なくとも一つの第1の付着部位と少なくとも一つの第2の付着部位の直接的な連結を含むだけでなく、代わりに、好ましくは、中間体分子を介した少なくとも一つの第1の付着部位と少なくとも一つの第2の付着部位との間接的な連結であって、典型的に、好ましくは、少なくとも一つの、好ましくは一つのヘテロ二官能性架橋剤による連結をも含む。したがって、好ましい実施態様において、前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位は、少なくとも一つの、好ましくは正確に一つのヘテロ二官能性架橋剤を経て連結される共有結合であって、好ましくは前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であって、更に好ましくは前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基である。
【0015】
リンカー:本願明細書において使われる場合、「リンカー」は第2の付着部位をIL−1βムテインに結合させるか、又は第2の付着部位を含むか、又はそれから成る。好ましくは、本願明細書において使われる場合、「リンカー」は第2の付着部位を、基本的には、好ましくは、しかし必然的ではなく、一つのアミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として含む。好ましい実施態様において、前記リンカーは、アミノ酸リンカーである。好ましい実施態様において、前記リンカーは正確に一つのシステイン残基を含み、前記第2の付着部位は前記正確に一つのシステイン残基のスルフヒドリル基である。IL−1βムテインへのリンカーの結合は、少なくとも一つの共有結合を経由して、より好ましくは少なくとも一つのペプチド結合を経由する。
【0016】
アミノ酸リンカー:「アミノ酸リンカー」なる用語は、少なくとも一つのアミノ酸残基を含むリンカーを指す。好ましい実施態様において、前記アミノ酸リンカーは、アミノ酸残基のみから成る。
【0017】
規則正しい反復性抗原アレイ:本願明細書で使用する「規則正しい反復性抗原アレイ」なる用語は、通常抗原の反復パターンまたは構造を指し、それぞれ典型的に、好ましくは、ウイルス様粒子に関して抗原の空間配置の非常に規則正しい均一性によって特徴づけられる。本発明の一実施形態において、反復パターンは幾何学模様であってもよい。本発明の特定の実施態様は、例えばRNA−バクテリオファージのVLPは、1から30ナノメーター、好ましくは2から15ナノメーター、より好ましくは2から10ナノメーター、さらにより好ましくは2から8ナノメーター、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する抗原の準結晶性の厳密に反復性の規則性を持つ、適切に規則正しい反復性抗原アレイの典型的及び好適な例である。
【0018】
IL−1β:ヒトIL−1βなる用語は、ヒトIL−1β116−269(配列番号4)に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、更により好ましくは少なくとも98%、更により好ましくは少なくとも99%、及び最も好ましくは100%同一であるアミノ酸配列からなる任意のポリペプチドを意味する。非常に好ましい実施態様において、ヒトIL−1βは、配列番号4からなるポリペプチドに関する。また、ヒトIL−1βは組換えにより発現されるヒトIL−1βを含む。大腸菌のような原核生物発現系において発現されるポリペプチドは、N末端メチオニン残基によって基本的には特徴づけられる。したがって、ヒトIL−1βなる用語は、好ましくは配列番号20、及び配列番号20と配列番号4の任意の混合物を意味する。
【0019】
IL−1βムテイン:「IL−1βムテイン」なる用語は、本願明細書において使用する際、突然変異アミノ酸配列からなるポリペプチドであって、突然変異されたアミノ酸配列がヒトIL−1βであるポリペプチドに関する。典型的に、好ましくは、IL−1βムテインは、前記突然変異アミノ酸配列から成るポリペプチドの生物活性の80%未満、より好ましくは60%未満、より好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の生物活性を含み、好ましくは前記生物活性はヒト細胞で、好ましくはPBMC又はHeLa細胞で、IL−6形成を誘導する前記ポリペプチドの能力により測定される。動物に導入された場合、好適なIL−1βムテインを含む本発明の組成物は、基本的に、好ましくは、突然変異された前記アミノ酸配列からなるポリペプチドに対する交差反応性を含む抗体を、誘導する。したがって、動物に導入された場合、好適なIL−1βムテインを含む本発明の組成物は、基本的に好ましくは、ヒトIL−1β、好ましくは配列番号4に特異的に結合することができる抗体を誘導する。本発明において、突然変異されたN末端を含んで成るIL−1βムテインが好ましい。非常に好ましくは、IL−1βムテインはN末端アミノ酸配列MDI(配列番号5)を含む。非常に好ましくは、IL−1βムテインは突然変異されたアミノ酸配列から成り、突然変異された前記アミノ酸配列のN末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)と置換される。更に好ましくは、IL−1βムテインは、突然変異された前記アミノ酸配列からなるポリペプチドと比較した場合、IL−1βムテインの減少した生物活性を生じる少なくとも一つの、好ましくは正確に一つの更なる突然変異を含む。非常に好ましくは、IL−1βムテインは、突然変異されたアミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、好ましくは配列番号4であり、突然変異される前記アミノ酸配列、好ましくは配列番号4の位置145のアミノ酸残基は、別のアミノ酸残基に置換される。また更に好ましくは、IL−1βムテインは、突然変異されたアミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、好ましくは配列番号4であり、突然変異される前記アミノ酸配列、好ましくは配列番号4の位置145のアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基であり、前記アスパラギン酸残基はリジン残基により置換される。また更に好ましくは、IL−1βムテインは、突然変異されたアミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、好ましくは配列番号4であり、突然変異される前記アミノ酸配列のN末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)により置換され、更に突然変異される前記アミノ酸配列、好ましくは配列番号4の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基により、好ましくはリジン残基により置換される。
【0020】
アミノ酸置換:アミノ酸置換なる表現は、他の任意のアミノ酸残基によるアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸残基の置換に関する。
【0021】
生物活性:本願明細書において使用する「生物活性」(biological activity又はbiologically active)なる用語は、ILー1βを含むILー1β分子に関して、動物、好ましくはヒトへの全身投与後、ILー6の産生を誘導するILー1β分子及び/又はILー1βムテインの能力を意味する。好ましくは、インビボでIL−6形成を誘導するためのIL−1β分子および/またはIL−1βムテインの能力は、実施例2A及び7に記載のように測定される。「生物活性」(biological activity又はbiologically active)なる用語は、胸腺細胞(Epps et al., Cytokine 9(3): 149-156 (1997),D10.G4.1ヘルパーT細胞(Orencole and Dinarello, Cytokine 1(1): 14-22 (1989)の増殖を誘導するIL−1β分子及び/又はIL−1βムテインの能力、又はMG64又はHaCaT細胞(Boraschi et al., J. Immunol. 155:4719-4725 (1995)又は繊維芽細胞(Dinarello et al., Current Protocols in Immunology 6.2.1-6-2-7 (2000))の産生を誘導する能力,又はEL−4胸腺種細胞からのILー2の産生(Simon et al., J. Immunol. Methods 84(1-2): 85-94 (1985)),又はヒトメラノーマ細胞株A375を阻害する能力(Nakai et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 154:1189-1196 (1988))を誘導するIL−1β分子及び/又はIL−1βムテインの能力を意味する。非常に好ましくは、IL−1β分子またはIL−1βムテインの生物活性は、ヒト細胞の、好ましくはPBMC細胞の又はHeLa細胞のIL−6形成を誘導するための能力に関連する。
【0022】
ポリペプチド:本願明細書において使用する際、「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(別名ペプチド結合)によって線形に連結されるモノマー(アミノ酸)から成る分子を意味する。それはアミノ酸の分子鎖を示し、生成物の特異的な長さに関連しない。
【0023】
ポリペプチドのアミノ酸配列同一性は、公知のコンピュータプログラム(例えばBestfitプログラム)を使用して、従来技術により決定されうる。対照標準アミノ酸配列に対して、例えば95%同一性を有するかを決定するために、Bestfit又は他の任意の配列配列プログラムも使用する場合、好ましくはBestfitを使用する場合、同一性のパーセンテージは対照標準アミノ酸配列の完全長に対して算出され、対照標準配列におけるアミノ酸残基の総数の多くとも5%の相同性におけるギャップが許可されるように、パラメータは設定される。
【0024】
コートタンパク質:「コートタンパク質」なる用語はウイルスキャプシド又はVLPに組み込まれることができる、ウイルスタンパク質、好ましくはウイルスの、好ましくはRNAバクテリオファージの天然のキャプシド集合体を指す。コートタンパク質なる用語は、キャプシドタンパク質としても知られている。
【0025】
組換えVLP:本願明細書において使われる「組換えVLP」なる用語は、組換えDNA技術の少なくとも一つの工程を含む方法によって得られるVLPを指す。
【0026】
本明細書で用いられる「ウイルス様粒子(VLP)」なる用語は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性又は非感染性のウイルス粒子、又は非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性又は非感染性のウイルス粒子に類似した構造、好ましくはウイルスのキャプシドを指す。本願明細書において使われる「非複製性」なる用語は、VLPによって含まれるゲノムを複製することができないことを指す。本願明細書において使われる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に入ることができないことを指す。好ましくは、ウイルスゲノム又はウイルスゲノム機能の全部または一部を欠いているので、本発明のウイルス様粒子は、非複製性及び非感染性である。一実施態様において、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、そこでウイルスゲノムは物理的に又は化学的に不活化されている。基本的に、より好ましくは、ウイルス様粒子は、ウイルスゲノムの複製性及び非感染性成分の全て又は一部を欠く。本発明に係るウイルス様粒子は、ゲノムとは別の核酸を含むことができる。本発明のウイルス様粒子の基本的及び好適な実施態様は、対応するウイルス、好ましくはバクテリオファージ、最も好ましくはRNA−バクテリオファージのウイルスカプシドのようなウイルスカプシドである。「ウイルスカプシド」または「カプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質サブユニットから成る巨大分子アセンブリをさす。通常は、60、120、180、240、300、360及び360以上のウィルスタンパク質サブユニットがある。基本的には、好ましくは、これらのサブユニットの相互作用は、本来の反復性の構成を有するウイルスカプシド又はウイルスカプシド様の構造の形成につながり、前記構造は、典型的には球状又は管状である。例えば、RNAバクテリオファージコートのカプシドは、正二十面体対称性の球面形状を有する。本明細書で使用する場合、「カプシド様構造」なる用語は、上記定義の意味でカプシド形態に類似するが、十分な次数と繰り返しを維持しながら典型的な対称組立体からは逸脱するウイルスタンパク質サブユニットからなる巨大分子組立体を意味する。従ってウイルス様粒子の典型的な特徴はそのサブユニットの非常に規則正しい繰り返し配置である。
【0027】
RNAバクテリオファージのウイルス様粒子:ここで使用される場合、「RNAバクテリオファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体又は断片を含むか、又は好ましくは本質的にそれからなるか、又はそれからなるウイルス様粒子を指す。また、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子はRNAバクテリオファージの構造に類似する。更に、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性である。基本的に、好ましくは、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージの複製機構をコードする少なくとも一つの遺伝子、好ましくは全ての遺伝子を欠損している。更に好ましくは、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子も欠損する。しかしながら、この定義は、上述の遺伝子又は遺伝子群がなお存在しているが不活性であり、よってまたRNAバクテリオファージの非複製性及び/又は非感染性ウイルス粒子を生じるRNAバクテリオファージのウイルス様粒子をさらに包含する。RNAバクテリオファージ由来の好ましいVLPは正二十面体対称を示し、180のサブユニットからなる。RNAバクテリオファージのウイルス粒子を非複製性及び/又は非感染性にするために好適な方法は物理的、化学的不活化、例えばUV照射、ホルムアルデヒド処理により、典型的かつ好ましくは遺伝子操作による。
【0028】
糖尿病:「糖尿病」なる用語は糖尿病の任意の種類に関する。好ましくは、糖尿病は1型糖尿病および/または2型糖尿病に関する。最も好ましくは、糖尿病は2型糖尿病に関する。
【0029】
用量:用量なる用語は、1日に、動物に、好ましくはヒトに投与される本発明の組成物、本発明のワクチン組成物、または本発明の医薬品組成物の総量に関する。基本的に、好ましくは、しかし必然的ではないが、一用量は、前記動物に、好ましくは前記ヒトに1回で、好ましくは単回注射によって投与される。
【0030】
本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善及び予防方法に用いられる組成物であって、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記アミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、突然変異される前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原を含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合される、組成物を提供する。
【0031】
好ましくは、前記IL−1βムテインは、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子に結合され、それにより規則正しい反復性抗原−VLPアレイを形成する。本発明の好ましい実施態様では、少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、またより好ましくは少なくとも120、更により好ましくは少なくとも180のIL−1βムテイン分子は、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子に結合される。好ましい一実施形態において、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、組換えウイルス様粒子である。
【0032】
好ましい一実施形態において、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質を含むか、本質的にそれから成るか、またはそれからなる。好ましくは、RNAバクテリオファージは以下からなるグループから選択される:(a)バクテリオファージQβ、(b)バクテリオファージR17、(c)バクテリオファージfr、(d)バクテリオファージGA 、(e)バクテリオファージSP、(f)バクテリオファージMS2、(g)バクテリオファージM11、(h)バクテリオファージMX1、(i)バクテリオファージNL95、(k)バクテリオファージf2、(l)バクテリオファージPP7、(m)バクテリオファージPRR1、及び(n)バクテリオファージAP205。
【0033】
更なる好ましい実施態様において、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージQβの組換えコートタンパク質を含むか、あるいは本質的にそれから成るか、あるいはそれからなる。RNAバクテリオファージのウイルス様粒子、特にRNAバクテリオファージQβは、WO02/056905に開示される。特に、WO02/056905の実施例18は、RNAバクテリオファージQβのVLPの調製の詳細な説明を提供する。
【0034】
更なる好ましい実施態様において、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は、組換えコートタンパク質を含むか、あるいは本質的にそれから成り、前記組換えコートタンパク質は配列番号3のアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれから成る。
【0035】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物及びワクチンは、0.5から4.0の抗原密度を有する。本願明細書において使われるように、「抗原密度」なる用語は、RNAバクテリオファージ、好ましくはRNAバクテリオファージQβのVLPのサブユニットごとに、好ましくはコートタンパク質ごとに結合されるIL−1βの平均数を表す。したがって、この値は、本発明の組成物またはワクチンにおいて、RNA−バクテリオファージのVLPの、全てのサブユニットにおける平均として算出される。
【0036】
Qβコートタンパク質のVLPまたはカプシドは、定まった数のリジン残基をそれらの表面に提示し、3つのリジン残基がカプシドの内部を向いてRNAと相互作用し、4つの別のリジン残基がカプシドの外側に曝らされる定まったトポロジーを有する。好ましくは、少なくとも一つの第1の付着部位は、VLPの外側を向いているか又はそこに存在するリジン残基である。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位は配列番号3のリジン残基のアミノ基である。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位は、配列番号3の位置2、13、16、46、60、63及び67のリジン残基のいずれか一つのアミノ基である。更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位は、カプシドの外側に曝される、好ましくは配列番号3の、コートタンパク質のリジン残基の任意の一つのアミノ基である。
【0037】
更なる実施態様において、前記IL−1βムテインは突然変異されたアミノ酸配列から成り、突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、好ましくは突然変異されたアミノ酸配列は配列番号4であり、突然変異された前記アミノ酸配列のN末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)と交換され、突然変異された前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基はリジン残基によって交換される。したがって、非常に好ましい実施態様では、前記IL−1βムテインは、配列番号6のアミノ酸配列から成る。
【0038】
典型的に、好ましくは、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は、組換え発現により、好ましくは細菌系、最も好ましくは大腸菌の組換え発現を経由して産生される。少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原はアミノ酸リンカーを含んでもよく、前記アミノ酸リンカーが前記第2の付着部位を含む。加えて又は代わりに、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は、精製を容易にするために、Hisタグ、Mycタグ、FcタグまたはHAタグのようなタグを含む場合がある。
【0039】
好ましい実施態様において、少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は、共有結合を経由して、好ましくは非ペプチド共有結合を経由して連結される。更に好ましい実施態様において、前記第1の付着部位と前記第2の付着部位は、共有結合を経由して、好ましくは非ペプチド共有結合を経由して連結される。
【0040】
更なる好ましい実施態様において、前記第2の付着部位の一つだけが、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して、前記第1の付着部位に結合し、それは前記抗原の、RNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子への単一で均一型結合を導き、前記第1の付着部位と結合する前記一つだけの第2の付着部位はスルフヒドリル基であり、RNAバクテリオファージの前記抗原と前記ウイルス様粒子は前記結合を介して相互作用して規則正しい反復的な抗原アレイを形成し、更に好ましくは前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基である。
【0041】
好ましい実施態様において、第1の付着部位はアミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそれである。別の好ましい実施態様において、第2の付着部位はスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそれである。
【0042】
別の好ましい実施態様では、前記第1の付着部位はアミノ基であり、前記第2の付着部位はスルフヒドリル基である。なお更なる好ましい実施態様において、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基である。
【0043】
好ましい実施態様において、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は、化学的架橋を経由して、典型的に、好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を用いてVLPに連結される。好ましい実施態様において、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基のアミノ基を有する好適な第1の付着部位と反応できる官能基と、好ましくはスルフヒドリル基、より好ましくはIL−1βムテインに本来備わっているか人工的に付加されたシステイン残基のスルフヒドリル基を有する好適な第2の付着部位と反応できる更なる官能基とを含み、場合により還元によって反応が可能となる。ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはSMPH(ピアス)、スルホ−MBS、スルホ−EMC、スルホ−GMBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMPB、スルホ−SMCC、SVSB及びSIAからなるグループから選択される。上記架橋剤は全て、アミノ基との反応後アミド結合の形成につながり、スルフヒドリル基との反応後チオエーテル結合につながる。最も好ましくは、前記ヘテロ二官能性架橋剤は、スクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート(SMPH)である。
【0044】
更なる好ましい実施態様において、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は更にリンカーを含み、前記リンカーは前記第2の付着部位を含み、そして前記リンカーはペプチド結合を介して前記抗原に結合する。好ましい実施態様において、前記リンカーは、少なくとも一つの共有結合を介して、好ましくは少なくとも一つの、好ましくは一つのペプチド結合を介して、IL−1βムテインに結合する。好ましくは、リンカーは、第2の付着部位を含むか、またはそれからなる。別の好ましい実施態様では、リンカーはスルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好ましい実施態様では、アミノ酸リンカーはシステイン残基である。
【0045】
更なる好ましい実施態様において、リンカーは、IL−1βムテインのC末端に付加される。この発明の好適なリンカーはグリシン・リンカー(G)nであって、更に第2の付着部位としてシステイン残基を含む。非常に好ましい実施態様において、前記リンカーはGGCG(配列番号7)またはGGC(配列番号8)、好ましくはGGCG(配列番号7)である。また更なる好ましい実施態様において、前記リンカーはGGCG(配列番号7)であり、前記リンカーは前記IL−1βムテインのC末端に加えられる。
【0046】
更なる好ましい実施態様において、前記リンカーはHis−タグを更に含み、好ましくは前記His−タグは前記IL−1βムテインとC末端のシステイン含有グリシン・リンカーとの間に位置する。したがって、非常に好ましい実施態様において、前記リンカーはLEHHHHHHGGCG(配列番号9)又はLEHHHHHHGGC(配列番号10)を含むか又は好ましくはそれから成るか、最も好ましくは前記リンカーはLEHHHHHHGGCG(配列番号9)から成る。更なる好ましい実施態様において、前記リンカーはLEHHHHHHGGCG(配列番号9)からなり、前記リンカーはIL−1βムテインのC末端に付与される。
【0047】
好ましい実施形態において、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は配列番号11から14または21の何れか1つを含む。非常に好ましい実施態様において、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は配列番号11から14のいずれか一つからなり、好ましくは少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は配列番号11または12の何れか一つから成る。もっとも好ましくは、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記抗原は配列番号11を含む。
【0048】
1又は複数の抗原分子、すなわちIL−1β分子は、VLPのサブユニットに、好ましくはRNAバクテリオファージコートタンパク質の1つのサブユニットに、立体配置的に許容可能であるならば、好ましくはRNAバクテリオファージのコートタンパク質の露出したリジン残基を介して結合される。したがって、RNAバクテリオファージのVLP、特にQβコートタンパク質VLPの特異的な特徴は、サブユニットにつき複数の抗原を結合させる可能性である。これは、高密度抗原アレイの生成を可能にする。
【0049】
本発明の組成物の安定性が塩の付加によって改良される可能性があることが分かった。したがって、好ましい実施態様では、本発明の組成物は、更に安定化剤を含み、好ましくは前記安定化剤は無機塩である。更なる好ましい実施態様において、前記安定化剤は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムであり、最も好ましくは塩化ナトリウムである。更なる好ましい実施態様において、前記組成物中の前記安定化剤の、好ましくは前記無機塩の、最も好ましくは塩化ナトリウムの濃度は、5から200mMであり、より好ましくは10から100mMであり、さらにより好ましくは25から75mMであり、最も好ましくは50mMである。非常に好ましい実施態様において、前記組成物中の塩化ナトリウムの濃度は5から200mMであり、より好ましくは前記組成物中の塩化ナトリウムの濃度は10から100mMであり、さらにより好ましくは前記組成物中の塩化ナトリウムの濃度は25から75mMであり、最も好ましくは前記組成物の塩化ナトリウムの濃度は50mMである。
【0050】
さらに水溶液中の本発明の組成物の溶解度は、非イオン性界面活性剤、好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80の添加によって改良される可能性があることが分かった。したがって、更なる好ましい実施態様では、本発明の組成物は非イオン性界面活性剤を更に含み、好ましくは前記非イオン性活性剤はポリソルベート20またはポリソルベート80であり、更に好ましくは前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。更なる好ましい実施態様において、本発明の組成物は、0.01から0.5mg/ml、好ましくは0.05から0.25mg/ml、更に好ましくは0.10mg/mlの濃度の前記非イオン性界面活性剤を含む。非常に好ましい実施態様において、本発明の組成物は非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、前記医薬品組成物中のポリソルベート 20の濃度は0.01から0.5mg/mlであり、更に好ましくは前記医薬品組成物中のポリソルベート20の濃度は0.05から0.25mg/mlであり、また更に好ましくは前記医薬品組成物中のポリソルベート20の濃度は0.10mg/mlである。
【0051】
一態様では、本発明は、本発明の組成物の何れか一つを含んで成るワクチン組成物を提供する。更なる態様において、本発明は2型糖尿病を治療するためのワクチン組成物を提供し、前記ワクチン組成物は、以下を含む組成物の有効量を含むかまたはそれから成る:(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記アミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、突然変異される前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原とを含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合される、組成物を提供する。
【0052】
本発明の組成物の有効量は、処理された被検体で、好ましくはヒトで、免疫反応を、好ましくはヒトILー1βに対する免疫反応を誘導することができる量であり、前記免疫反応は糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療又は予防効果に結果としてなる。
【0053】
一実施態様において、ワクチンの組成物は、少なくとも一つのアジュバント、好ましくはアルミニウム水酸化物から更に成る。しかしながら、本発明の有利な特徴は、アジュバントが存在しない場合でも、組成物の高い免疫抗原性である。従って、好ましい実施態様では、ワクチン組成物はアジュバントがない。アジュバントの欠如は、さらに、自己抗原に対するワクチン接種の安全性に関する懸念を代表する不必要な炎症性T細胞応答の発生を最小限に抑える。したがって、患者に対する本発明のワクチン組成物の投与は、好ましくはワクチンの組成物の投与前、同時又は後に、同じ患者に少なくとも一つのアジュバントを投与せずに実施される。しかしながら、アジュバントが投与される場合に、少なくとも1つのアジュバントの投与は、ワクチンの組成物の投与前、同時または後にあってもよい。
【0054】
組成物及び/又はワクチン組成物が個体に投与される場合、それは塩類、バッファー、アジュバントまたはコンジュゲートの効果を改良するために所望の他の物質を含む形態であってもよい。医薬組成物の調製ために使用する適切な物質の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Osol, A, ed., Mack Publishing Co., (1990))を含む数多くの出典に提供されている。これは、無菌水溶液(例えば、生理食塩水)か非水性溶液及び懸濁液とを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。担体または密封包帯は、皮膚透過性を増大して抗原吸収を高めるために用いることができる。
【0055】
本発明のワクチンは、その投与が受容者個体に、好ましくはヒトに許容されうる場合、「薬学的に許容可能である」と言われる。更に、本発明のワクチンは、「治療上有効量」(すなわち所望の生理作用を産生する量)において投与される。免疫反応の性質または種類は、この開示の限定要因でない。以下の機械的説明によって本発明を制限する意図はないが、本発明のワクチン組成物は、IL−1βに結合する抗体を誘導し、それによりその濃度を減少させ、および/またはその生理学的又は病的機能を妨げる。
【0056】
更なる態様において、本発明は、(a)本発明の組成物またはワクチン組成物の何れか1つ、及び(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬品組成物を提供する。
【0057】
更なる態様において、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病を治療する方法に使用するための医薬組成物であって、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記アミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、突然変異される前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されており、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合される、少なくとも一つの抗原、及び(c)薬学的に許容可能な担体を含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0058】
したがって、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病を治療、改善及び/又は予防方法であって、動物に、好ましくはヒトに、本発明の組成物、ワクチン組成物、又は医薬組成物の何れか一つを投与することを含む方法を提供する。特に、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善及び/又は予防方法であって、該組成物が:(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子;及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記突然変異されたアミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換された、少なくとも一つの抗原とを含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結された組成物を、動物に、好ましくはヒトに投与することを含んでなる方法を提供する。
【0059】
本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善及び/又は予防方法であって、前記方法は、動物に、好ましくはヒトに、以下を含む医薬組成物を投与することを含んでなる:(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記アミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換された少なくとも一つの抗原とを含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合される医薬組成物を、動物に、好ましくはヒトに投与することを含んでなる方法を更に提供する。
【0060】
更なる好ましい実施態様において、前記方法は、動物に、好ましくはヒトに、医薬品組成物を投与することを含んでなり、前記医薬組成物の一回投与量は1から1500μgの総タンパク質を含み、好ましくは前記総タンパク質は(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含むか、それからなる。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量は5から1000μg、より好ましくは5から900μg、更により好ましくは5から600μg、更により好ましくは5から400μg、更により好ましくは10から300μg、更により好ましくは10から100μgの総タンパク質を含む。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量が10、30、100又は300μgの総タンパク質を含み、最も好ましくは前記一回投与量が総タンパク質の100μgを含み、前記総タンパク質は(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含む。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量は、0.1から5mg、好ましくは0.2から2mg、より好ましくは0.5から1.5mg、最も好ましくは1.0mgの水酸化アルミニウムを含む。
【0061】
本発明の方法に関して、前記組成物、前記ワクチンおよび/または前記医薬組成物は、免疫学的に有効量で、前記動物に、好ましくは前記ヒトに投与される。
【0062】
一実施態様において、組成物、ワクチン組成物および/または医薬組成物は、注射、注入、吸入、経口投与または他の適切な物理的方法によって、前記動物に、好ましくは前記ヒトに投与される。好ましい実施形態において、組成物、ワクチン組成物および/または医薬組成物は、前記動物に、好ましくは前記ヒトに、筋肉内に、静脈内に、経粘膜的に、経皮的に、鼻腔内に、腹膜内に、皮下にまたはリンパ節に直接、投与される。
【0063】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の組成物、ワクチン組成物及び/又は医薬組成物の、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善および/または予防のための使用である。
【0064】
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の組成物、ワクチン組成物及び/又は医薬組成物の、糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善および/または予防のための医薬の製造における使用である。より詳細には、本発明は糖尿病、好ましくは2型糖尿病の治療、改善および/または予防のための医薬の製造における、組成物の使用であって、当該組成物は、
(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び
(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、前記突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記突然変異されたアミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原を含んでなり、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結された組成物である、使用を提供する。
【0065】
更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量が総たんぱく質として1から1500μgを含んでなり、好ましくは前記総たんぱく質は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含むか、それから成る。更に好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量は、5から1000μg、より好ましくは5から900μg、更により好ましくは5から600μg、更により好ましくは5から400μg、更により好ましくは10から300μg、更により好ましくは10から100μgの総タンパク質を含む。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量が10、30、100又は300μgの総タンパク質を含み、最も好ましくは前記一回投与量が総タンパク質の100μgを含み、前記総タンパク質は(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含む。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量は、0.1から5mg、好ましくは0.2から2mg、より好ましくは、0.5から1.5mg、最も好ましくは1.0mgの水酸化アルミニウムから更に成る。
【0066】
実施態様が本願明細書に記載の全ての技術的特徴と実施態様、特に本発明の組成物に関するものは、本発明の全ての態様に、特にワクチン組成物、医薬組成物、方法及び使用に、何れかの可能な組合せ又は単独で、適用されてもよい。これに関連して、少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原の以下の実施態様が特に好ましいことは明白に強調される。
【0067】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージがバクテリオファージQβである、ウイルス様粒子、および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは配列番号6から成る、抗原であって、前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される(a)と(b)とを含む。
【0068】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチンの組成物または医薬組成物が、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子が配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子、および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは配列番号6から成る、抗原であって、前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される(a)と(b)とを含む。
【0069】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージがバクテリオファージQβである、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって;前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される(a)と(b)とを含む。
【0070】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって;前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される(a)と(b)とを含む。
【0071】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチンの組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージがバクテリオファージQβである、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは配列番号6から成る、抗原であって;(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含む。
【0072】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは配列番号6から成る、抗原であって;(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含む。
【0073】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージがバクテリオファージQβである、ウイルス様粒子、および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって、(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含む。
【0074】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって、(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含む。
【0075】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、安定化剤を更に含み、前記安定化剤は無機塩、好ましくは塩化ナトリウムであり、好ましくは前記組成物、ワクチン組成物又は医薬組成物中の前記安定化剤の濃度は5から200mM、より好ましくは10から100mM、更により好ましくは25から75mMであり、最も好ましくは50mMである。
【0076】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、安定化剤を更に含み、前記安定化剤は無機塩、好ましくは塩化ナトリウムであり、好ましくは前記組成物、ワクチン組成物又は医薬組成物中の塩化ナトリウムの濃度は5から200mM、より好ましくは10から100mM、更により好ましくは25から75mMであり、最も好ましくは50mMである。
【0077】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、非イオン性界面活性剤を更に含み、前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、更に好ましくは組成物、ワクチン組成物または医薬組成物中の非イオン性界面活性の濃度は、0.01から0.5mg/ml、好ましくは0.05から0.25mg/ml、更に好ましくは0.10 mg/mlである。
【0078】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、非イオン性界面活性剤を更に含み、前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、更に好ましくは組成物、ワクチン組成物または医薬組成物中のポリソルベート20の濃度は、0.01から0.5mg/ml、好ましくは0.05から0.25mg/ml、更に好ましくは0.10 mg/mlである。
【0079】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子;および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって、(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含み、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は安定化剤を更に含み、前記安定化剤は無機塩、好ましくは塩化ナトリウムであり、更に好ましくは前記組成物、ワクチン組成物又は医薬組成物中の塩化ナトリウムの濃度は5から200mM、より好ましくは10から100mM、更により好ましくは25から75mMであり、最も好ましくは50mMである。
【0080】
非常に好ましい実施態様において、前記組成物、ワクチンの組成物または医薬組成物は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子であって、前記RNAバクテリオファージのウイルス様粒子は配列番号3を含むか、基本的にそれから成るか、又はそれからなる、ウイルス様粒子、および(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原であって、前記少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原は配列番号11である、抗原であって、(a)と(b)は前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結され、前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基であり、前記第1の付着部位が前記第2の付着部位に、少なくとも一つの非ペプチド共有結合を介して連結される、(a)と(b)を含み、前記組成物、ワクチン組成物または医薬品組成物は、非イオン性界面活性剤を更に含み、前記非イオン性界面活性剤はポリソルベート20であり、更に好ましくは組成物、ワクチン組成物または医薬組成物中のポリソルベート20の濃度は、0.01から0.5mg/ml、好ましくは0.05から0.25mg/ml、更に好ましくは0.10 mg/mlである。
【0081】
更なる好ましい実施態様において、前記組成物、前記ワクチン組成物及び/又は医薬組成物は、動物に、好ましくはヒトに投与され、前記動物、好ましくはヒトへの一回投与量が総たんぱく質を1から1500μg含んでなり、好ましくは前記総たんぱく質は、(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含むか、それから成る。更に好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量は、5から1000μg、より好ましくは5から900μg、更により好ましくは5から600μg、更により好ましくは5から400μg、更により好ましくは10から300μg、更により好ましくは10から100μgの総タンパク質を含む。更なる好ましい実施態様において、前記医薬の一回投与量が10、30、100又は300μgの総タンパク質を含み、最も好ましくは前記一回投与量が総タンパク質の100μgを含み、前記総タンパク質は(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子と(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原を含む。更なる好ましい実施態様において、前記一回投与量は、0.1から5mg、好ましくは0.2から2mg、より好ましくは0.5から1.5mg、最も好ましくは1.0mgの水酸化アルミニウムを更に含む。
【実施例】
【0082】
実施例1
hIL−1β116−269及びhIL−1β116−269(D145K)のクローニング、発現及び精製
ヒトIL−1β116−269及びIL−1βムテインのhIL−1β116−269(D145K)は、WO2008/037504A1の実施例10A及び10Bに開示の手順に従って、クローニング、発現及び精製を行った。
【0083】
実施例2
A.マウスにおけるhIL−1β116−269及びhIL−1β116−269(D145K)の生物活性
3匹の雌のC3H/HeJマウスは、10μgの野生型ヒトIL−1β119−269タンパク質かhIL−1β116−269(D145K)ムテインを静脈内に注入された。注射前と注射後3時間に血清試料が採取され、炎症誘発性サイトカインIL−6の濃度の相対的増加について分析された。野生型ヒトIL−1β119−269タンパク質が注入されたマウスは、血清IL−6濃度について2.38±0.69ng/mlの増加を示したが、hIL−1β116−269(D145K)ムテインを注入されたマウスの血清IL−6濃度は1.39±0.26ng/mlの増加を示した。
【0084】
B.ヒトPBMCにおけるhIL−1β116−269及びhIL−1β116−269(D145K)の生物活性
末梢血単核細胞(PBMC)は、フィコール密度勾配遠心沈殿法によって健康な提供者のヘパリン添加血から分離された。ウェルにつき5x10細胞は、hIL−1β116−269またはhIL−1β116−269(D145K)の何れかの滴定量と共にインキュベートされた。結果を表1に示す。

表1:ヒトPBMCにおけるヒトIL−1β116−269及びIL−1β116−269(D145K)ムテインの生物活性

【0085】
実施例3
A.ヒトIL−1β116−269及びヒトIL−1β116−269(D145K)ムテインのQβウイルス様粒子への結合
野生型ヒトIL−1β116−269タンパク質及びヒトIL−1β116−269(D145K)の化学的架橋は、基本的にはWO2008/037504A1の実施例2Aに開示されている手順に従って行われた。
【0086】
B.Qβカプシドに結合されたヒトIL−1β116−269及びIL−1β116−269(D145K)ムテインによる免疫化
グループに付き4匹の雌のbalb/cマウスは、野生型hIL−1β116−269タンパク質かIL−1β116−269(D145K)ムテインの何れかを結合したQβによって免疫化された。総タンパク質50gは200μlまでPBSにより希釈されて、日0、14及び28に皮下注入された(腹側の2箇所に100μl)。マウスは日35に眼窩後から採血され、血清はIL−1β116−269(D145K)ムテインか野生型ヒトIL−1β116−269タンパク質の何れかに特異的なELISAを使用して分析された。
【0087】
C.ELISA
ELISAプレートは、野生型hIL−1β116−269タンパク質かIL−1β116−269(D145K)ムテインの何れかの各々により、1μg/mlの濃度で被覆された。プレートはブロックされて、次に連続的に希釈された日35のマウス血清と共にインキュベートされた。結合した抗体は、酵素的に標識化された抗マウスIgG抗体によって検出された。マウス血清の抗体価は、450nmの光学密度の半値を導く希釈度の平均として算出して、表2に示す。

表2:Qβ−hIL−1β116−269またはQβ−hIL−1β116−269ムテインワクチンによる免疫化により生じた抗hIL−1β116−269(野生型及びムテイン)−特異的IgG力価

【0088】
Qβ−hIL−1β116−269−免疫化は、hIL−1β116−269に対してIgG抗体の高い力価を誘導した。さらに、Qβ−hIL−1β116−269ムテインワクチンによるワクチン接種は、イムノゲンとして使用されるQβ−hIL−1β116−269ムテインと野生型hIL−1β116−269タンパク質の両方に対して、高いIgG力価を誘導した。
【0089】
D.ヒトIL−1βのインビトロ中和
野生型hIL−1β116−269タンパク質又はQβ−hIL−1β116−269ムテインのどちらかに結合されたQβによって免疫化されたマウスの血清は、ヒトIL−1βタンパク質がその受容体に結合することを抑制する能力を試験された。ELISAプレートは、組換えヒトIL−1β受容体I−hFc融合タンパクで1μg/mlの濃度で被覆され、上述した血清の連続希釈物と100ng/mlのhIL−1β116−269タンパク質と共にインキュベートされた。固定されたヒトIL−1β受容体I−hFc融合タンパクへのhIL−1β116−269の結合は、ビオチン化された抗ヒトIL−1β抗体とワサビ・ペルオキシダーゼを接合したストレプトアビジンによって検出された。Qβ−hIL−1β116−269ムテインワクチンに対して生じる全ての血清は、血清濃度3.3%で、hIL−1RIへの100ng/mlの野生型hIL−1β116−269の結合を抑制した。
【0090】
また、同じ血清は、hIL−1β116−269誘導性のヒト細胞からのIL−6分泌を抑制する能力について試験された。従って、ヒトPBMCは実施例2Bに記載のとおりに調製されて、上記血清の滴定濃度と共に前もって混合された10ng/mlの野生型hIL−1β116−269と共にインキュベートされた。一晩のインキュベーション後、細胞培養上清は、IL−6の存在について分析された。血清の中和能は、IL−6分泌の最大阻害の半分値を導く希釈度として発現された。野生型hIL−1β116−269に対して生じた血清の中和能との直接比較を可能にするために、Q−hIL−1β116−269ムテインに対して生じた血清の中和力価は、野生型hIL−1β116−269に対して測定されたそれぞれのELISA力価について修正された(表2を参照)。表3に示すように、hIL−1β116−269ムテインに対して生じた血清は、野生型hIL−1β116−269によって誘導されるIL−6の分泌を抑制することが可能だった。

表3:IL−1βムテインによって免疫化されたマウスの血清において決定された中和力価

【0091】
E.IL−1βのインビボ中和
野生型hIL−1β116−269タンパク質またはhIL−1β116−269D145Kムテインの何れかに結合されたQβによる免疫化により生じた抗体のインビボ中和能は調査される。従って、グループにつき3匹の雌C3H/HeJマウスは、いずれかのワクチンの50μgにより日0、14及び28の3回免疫化される。日35に、全ての免疫化マウスは、1μgのフリーの野生型hIL−1β116−269を静脈内に注入される。対照として、3匹のナイーヴ・マウスは、同一量の野生型hIL−1β116−269を同じ時に注入される。注入されたhIL−1β116−269の炎症活性の情報として、注射直前及び3時間後に血清が取られ、炎症誘発性サイトカインIL−6の濃度の相対的増加を分析した。ナイーヴマウスは、hIL−1β116−269の注入3時間後に血清IL−6濃度の高い増大を示したが、その一方で野生型hIL−1β116−269タンパク質又はhIL−1β116−269ムテインの1つに結合されたQβにより免疫化された全てのマウスは血清IL−6の如何なる増加も示さず、これは注入されたhIL−1β116−269はワクチンにより誘導された抗体により効率的に中和されたことを示している。
【0092】
実施例4
雄C57BL/6マウスの食事誘導性2型糖尿病の改善(予防セット)
マウスIL−1α115−270は、WO2008/037504A1の実施例15に開示された手順に従ってクローンを作成されて、QβVLPに結合された。マウスIL−1β119−269は、WO2008/037504A1の実施例1に開示される手順に従ってクローンを作成されて、QβVLPに結合した。雄C57BL/6マウスは、日0、14及び28に、Qβ、Qβ−mIL−1α115−270、Qβ−mIL−1β119−269の何れかの50μg、または50μgのQβ−mIL−1α115−270と50μgのQβ−mIL−1βの混合物により免疫化された(グループにつきn=16)。全てのマウスは、免疫化期間に、齧歯目の通常食(Provimi Kliba no. 3436:18.5%のタンパク質、4.5%の脂肪、4.5%の繊維、6.5%の灰分、54%の炭水化物)を給餌された。各グループのマウスの半分(n=8)について、日35にこの食事が高脂肪食(Provimi Kliba no. 2127:23.9%のタンパク質、35%の脂肪、4.9%の繊維、5%の灰分、23.2%の炭水化物)と交換され、残り半分(n=8)については通常食を続けた。最後の免疫化の5ヵ月後に、高脂肪食を給餌されたマウスは太りすぎ(平均体重>45g)であり、高い空腹時血糖値を(表4、0’)を示した。
【0093】
これらのマウスの糖尿病表現型に調査するために、経口的ブドウ糖負荷試験は、胃内に用量2mg/体重gのD−グルコースを投与して実施され、アキュチェック(Accu−check)血糖メーター(ロシュ)を使用して通常の間隔で血糖値を測定することによって行われた。表4は、通常の餌のQβ免疫化マウスの血糖値は、15分後に291.5mg/dlの初期ピーク、続いて急激な降下、及び90分以内にチャレンジ前レベルに完全に復帰することが示された。この反応のピークのレベルと動態は、通常食でに維持された全てのマウス群において基本的に同一だった(表4)。一方で、高脂肪食Qβ−免疫化マウスは、より高いレベル(367.9mg/dl)でピークに達し、チャレンジ後60分まで有意な減少を示すことができなかった;やっとその後に血糖値は減少を開始したが、2時間の観察時間中にベースラインレベルに戻らなかった。グルコース・クリアランスにおけるこの高度の障害は、肥満Qβ−免疫化マウスが糖尿病表現型を発病したことを示す。肥満Qβ−mIL−1α−、Qβ−mIL−1β−、またはダブル免疫化マウスは〜350mg/dlまで血糖値の増加、その後直ちに持続した減少があり、肥満Qβ免疫化対照マウスよりも一貫して低い血糖値に結果としてなった。表4に示される反復したグルコース測定の結果から得られた濃度曲線下面積を計算により、肥満Qβ−mIL−1α−、Qβ−mIL−1β−、またはダブル免疫化マウスは、肥満Qβ免疫化対照マウスよりも改善したグルコース・クリアランスを示した(表5)。これらのデータを組合わせると、Qβ−mIL−1α−、Qβ−mIL−1β−、または両方の組合せによる免疫化は、食事誘導性糖尿病性表現型のはっきりした改善に結果としてなったことを示す。

表4:2mg/gのグルコースの胃内投与前及び投与後の様々な時点での血糖値(mg/dl;平均±SEM)(実験前5時間の間マウスは絶食させた)

表5:免疫マウスのグルコース・クリアランス。表10に示す連続的なグルコース測定の結果から濃度曲線下面積(AUC)を個々のマウスについて計算した。AUCのグループ平均はSEMと共に示す。

【0094】
実施例5
雄C57BL/6マウスの食事誘導性2型糖尿病の改善
マウスIL−1βのアミノ酸119−269を、TNFα活性化マウスのマクロファージのcDNAから、オリゴヌクレオチドIL1β−3(5’−ATATATGATATCCCCATTAGACAGCTGCACTACAGG−3;配列番号15)及びIL1β−2(5’−ATATATCTCGAGGGAAGACACAGATTCCATGGTGAAG−3’;配列番号16)を使用してPCRにより増幅されて、ベクターpET42T(WO2008/037504A1の実施例10)にクローニングされた。結果として生じたプラスミドpET42T−mIL−1β119−269は、C末端でシステイン含有リンカー及びヘキサヒスチジン・タグに融合した成熟マウスIL−1βタンパク質をコードする。EcoRV制限サイトの導入のために、マウスIL−1βのN末端のバリン残基は、3つのアミノ酸(MDI)からなる短いN末端伸長によって置換される。プラスミドpET42T−mIL−1β116−269の部位指定突然変異導入によって、配列番号10のC末端のタグを有するヒトIL−1βムテインhIL−1β116−269(D145K)(配列番号6)のマウスバージョン、すなわちmIL−1β116−269(D145K)(配列番号17)、をコードする発現ベクターが構築された。突然変異は、Quik−Change(登録商標)部位指定突然変異導入キット(ストラタジーン)及びオリゴヌクレオチドD143K−1(5’−CAGTGGTCAG GACATAATTA AATTCACCAT GGAATCTGTGTC−3’;配列番号18)及びD143K−2(5’−GACACAGATT CCATGGTGAA TTTAATTATG TCCTGACCACTG−3’;配列番号19)を使用して導入した。ムテインmIL−1β116−269(D145K)の発現と精製は、WO2008/037504A1に開示された手順に従って行われた。
【0095】
雄C57BL/6マウス(8週間目、n=8)のグループは、QβまたはQβ−mIL−1β119−269(D145K)のいずれかの50gにより、日0、14、28、42及び147に皮下に免疫化された。日0から始めて実験の全体にわたって、マウスの半数(n=16)は高脂肪食(Provimi Kliba no. 2127:23.9%のタンパク質、35%の脂肪、4.9%の繊維、5%の灰分、23.2%の炭水化物)で太らせ、残り半数(n=16)は普通食(Provimi Kliba no. 3436:18.5%のタンパク質、4.5%の脂肪、4.5%の繊維、6.5%の灰分、54%の炭水化物)で維持された。8ヵ月後、高脂肪食を給餌されたマウスは肥満であり(平均体重>45g)、高い空腹時血糖値を示した(表6)。
【0096】
高脂肪食を与えられたマウスの糖尿病表現型に調査するために、経口的ブドウ糖負荷試験は、胃内に用量2mg/体重gのD−グルコースを投与して実施され、アキュチェック(Accu−check)血糖メーター(ロシュ)を使用して通常の間隔で血糖値を測定することによって行われた。表7は、高脂肪食を与えられたQβ免疫化マウスは注射後30分に318.5mg/dlのピークとなり、投与後60分まで有意な減少を示すことができなかった。やっとその後に血糖値は減少を開始したが、2時間の観察時間中にベースラインレベルに戻らなかった。グルコース・クリアランスにおけるこの高度の障害は、肥満Qβ−免疫化マウスが糖尿病表現型を発病したことを示す。肥満Qβ−mIL−1β119−269(D145K)−免疫化マウスは318.6mg/dlの初期ピーク、続いてすぐに連続的な降下を示し、肥満Qβ−免疫化対照マウスに比べて一貫して低い血糖値となった。投与後2時間で、血糖値はこれらのマウスの投与前レベルに戻った。表7に示される反復したグルコース測定の結果から得られた濃度曲線下面積を計算により、肥満Qβ−mIL−1β119−269(D145K)−免疫化マウスは、肥満Qβ免疫化対照マウスよりも改善したグルコース・クリアランスを示した(表8)。これらのデータを組合わせると、肥満Qβ−mIL−1β119−269(D145K)による免疫化は、食事誘導性糖尿病性表現型のはっきりした改善に結果としてなったことを示す。

表6:平均体重及び絶食後5時間の空腹時血糖(平均値±SEM)

表7:2mg/gのグルコースの胃内投与前及び投与後の様々な時点での血糖値(mg/dl;平均値±SEM)。マウスは実験の5時間前に絶食させた。

表8:免疫マウスのグルコースクリアランス。表7に示した連続的グルコース測定の結果から濃度曲線下面積(AUC)は、個々のマウスについて計算した。AUCのグループ平均はSEMと共に示す。ベスラインの下のピークは分析から除いた。

【0097】
実施例6
hIL−1βムテイン・コンストラクにおける一次構造変異が生物機能に与える影響
配列番号11のヒトIL−1βムテインコンストラクトは、以下の構造的な要素でヒトIL−1β(配列番号6)とは異なる:(a)N末端アラニン残基のN末端伸長配列MDIによる置き換え、(b)突然変異D145K、及び(C)ヘキサヒスチジン−タグLEHHHHHHを含むC末端リンカー配列、及び(d)配列GGCGを含むシステイン。分子の機能的特性におけるこれらの配列要素の各々の影響を評価するために、コンストラクトの異なる変異体は生物的活性及びインビトロ受容体結合によって比較した。
【0098】
7つの異なるコンストラクトは表9に示されるように作成した。コンストラクト「MDI−D145K−His6」は、配列番号11に対応する。MA−wtは、N末端メチオニンを含むインターロイキン−1β野生型の配列に対応する(配列番号20)。N末端伸長の存在は、「MA」の代わりに「MDI」によって示され、「D145K突然変異」の存在は「wt」の代わりに「D145K」によって示され、C末端のリンカー配列LEHHHHHHGGCGの存在はHis6によって示される。コンストラクト「MDI−D145K−CG」とコンストラクト「MA−wt−CG」については、C末端のリンカー配列は配列CGと交換される。
【0099】
全てのタンパク質変異体の生物活性は、2つの独立の細胞ベースのインビトロ・アッセイにおいて決定された。突然変異D145Kは、IL1−受容体のI型への親和性に影響を及ぼすことなしに、IL−1β野生型の生物活性を減少することが知られている。生物活性が、インビボのIL−1βの反応性に少なくともある程度、相関することが期待されるので、医薬として使われた場合に、この突然変異は潜在的な毒性を減少することも期待される。HeLa細胞からのIL−1β−誘導性IL−6放出及びヒトA375メラノーマ細胞を用いた細胞毒性アッセイの両方の活性アッセイは対応する結果を示す。突然変異D145K及びN末端伸長MDIの導入は、両方ともコンストラクトの生理活性に高い減少効果を有する。両方の配列修飾の組合せは、およそ10倍の減少された生理活性を有するより活性が低いタンパク質変異体にさえ結果としてなる。ヘキサヒスチジン・タグの導入は、タンパク質の活性に対する著しい効果に結果としてならない。重要なことに、導入された修飾のいずれもタンパク質生理活性の増大を引き起こさない。
【0100】
さらにまた、全てのタンパク質変異体の受容体結合親和性の違いは均一時間分解蛍光(HTRF)によって測定され、N末端伸長MDIによって生じる活性減少がIL−1受容体に対する減少した結合親和性に関連することを明確に示した。C末端上の修飾は親和性に影響を及ぼさず、重要でない効果だけが突然変異D145Kについて観察される。生理活性について決定された減少指数と受容体結合研究において決定されたIC50値を、表9にまとめた。

表9:構造的な要素の異なる組合せを含んで成る構造物の生理活性測定とインビトロ受容体結合。IL−6放出アッセイに関する、生理活性の減少は、それぞれのタンパク質変異体の測定値EC50値と4−パラメータロジスティック適合に由来する測定値野生型タンパク質(MA−wt)のLC50値の比率として示される。同様に、A375細胞毒性アッセイによって測定された生理活性減少指数は、それぞれのタンパク質変異体について測定されたLC50値と野生型タンパク質(MAwt)のEC50値との比率として測定された。

【0101】
実施例7
アカゲザルにおけるMDI−D145K−His6(配列番号11)の反応性
インビボ研究は、wtIL−1βと比較してムテインIL−1βの反応性を評価するために、霊長類で実施された。ナイーブのアカゲザル(Macaca mulatta)は、ヒト野生型IL−1βまたはヒトMDI−D145K−His6(配列番号11)の何れかにより、さまざまな濃度で、静注された。IL−6濃度は、IL−1β活性のための示度として血清において測定された。数日にわたって、アカゲザル(グループにつき1匹の♂と1匹の♀)のグループは、0.1、0.3、1.0及び1.5μg/kgのヒトIL−1β又はアカザルIL−1βの何れか、0.3、1.0、10及び100μg/kgのMDI−D145K−His6を静注された。血清は、IL−1βのMDI−D145K−His6の投与後の3時間に、サイトカイン解析のために採血された。MDI−D145K−His6の生理活性は、野生型IL−1βに比較しておよそ7.5倍減少された。
【0102】
実施例8
塩濃度のワクチン安定性への影響
処理の間のワクチンの安定性におけるNaClの影響を評価するために、抗原に結合するQβVLPを含んで成るワクチンのバッチは、NaCl(0mM、25mM、50mM、75mM)のさまざまな濃度を含んで産生された。ワクチンの完全性は、SE−HPLC(TSKgel 5000PWXLカラムを有するDionex HPLCシステムにおける解析)によって評価された。粒子完全性についてのNaCl濃度依存性の影響が観察された(表10)。50mMのNaCl濃度は、1%未満の分解を達成することを必要とした。

表10:SE−HPLCによって測定されたワクチンの処理の間の安定性におけるNaCl濃度の影響。バッチ1の結果は2つの独立バッチの手段である(バッチ1a:97.2%の相対面積メインピーク、2.8%の相対面積分解、バッチ1b:97.4%の相対面積メインピーク、2.6%の相対面積分解)。

【0103】
実施例9
界面活性剤濃度のワクチン溶解性への影響
抗原に結合させた(ヒトIL−1βムテイン、配列番号11)QβVLPの1.9mg/mlを含有するワクチン調製物は、様々な濃度のポリソルベート20の異なる濃度によって作成され、強いピペット操作によってせん断力にさらされた。0.05mg/mlのポリソルベート20の存在下で、強いピペット操作は、ワクチン調製物中の粒子様の可視フィラメントの形成に結果としてなった。0.10mg/mlのポリソルベート20の存在下で、調製物は強いピペット操作後に透明溶液のままだった。0.10mg/mlのポリソルベート20が調製物に存在する場合に、粒子様の可視フィラメントの形成は観察されなかった。
【0104】
実施例10
Qβ−MDI−D145K−His6及びアカゲザルのQβ−rhesusMDI−D145K−His6の反応性
アカゲザルの3つのグループ(n=12、6匹の雄及び6匹の雌)は、Qβ単独、MDI−D145K−His6(配列番号11)に結合させたQβ、又はそのアカゲザル特異化バージョン、rhesusMDI−D145K−His6(配列番号21)に結合したQβ、アジュバントとしてアルハイドロゲル(1.0 mg/投与のAl(OH)3)とそれぞれ組合わせたもののいずれか300mgにより、6回の隔週の皮下注射を受けた。ワクチン反応性のための示度として、IL−6濃度は、それぞれ初回及び第3回目のワクチン注射の3時間後に血清において測定された。かろうじてアッセイ(20pg/ml)の検出限界より上になる低濃度のIL−6は、Qβ、Qβ−rhesusMDI−D145K−His6またはQβ−MDI−D145K−His6のそれぞれ最初の注射後に、1/12、5/12及び4/12の動物において測定された。Qβ−MDI−D145K−His6を受けた2匹の動物は、わずかにより高い濃度を有した。第3回目の免疫化後に顕著なIL−6応答はなかった。これに対して、IL−6血清濃度の大きな増加(〜2000pg/ml)は、1μg/kgのwtIL−1βの静脈内投与の3時間後のQβ免疫化対照動物において記録された。
【0105】
実施例11
Qβ−MDI−D145K−His6及びアカゲザルのQβ−rhesusMDI−D145K−His6の免疫原性
ヒトwtIL−1βに特異的なIgG ELISA力価は、実施例10に記載のようにQβ−MDI−D145K−His6またはQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって免疫化されたアカゲザルの血清中で、様々な時点で測定された。表11は、両方のワクチンによって誘導されたヒトIL−1β特異的IgG抗体の高い抗体価であって、第5回目の注射後にピークに達して、続く6週でおよそ5から7倍に減少したことを示す。

表11:アカゲザルのQβ−MDI−D145K−His6及びQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって生じた抗ヒトIL−1β特異的なIgG ELISA力価(GMT+/-SEM)。抗体価は、ELISAの450nmでODの半値につながる血清希釈度の逆数として表した。n.d.=測定なし。

【0106】
免疫化されたサルの血清は、また、インビトロ・ヒトwtIL−1βの生物活性を中和する能力を試験された。HeLa細胞は、6pMのwtIL−1βの一定量及びさまざまな時点の免疫血清の連続希釈と共にインキュベートした。IL−6は、ヒトwtIL−1βの生物活性の示度として、細胞培養上清中で測定された。ワクチンの第3回目の注射後、中和活性は血清中で始めて検出され、第6回目の注射後にピークに到達するまで時間と共に増大することができた。続く4週において、中和力価はおよそ2〜3倍を減少した(表12)。

表12:アカゲザルのQβ−MDI−D145K−His6とQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって誘導された中和力価(GMT+/-SEM)力価は、IL−1β誘導性IL−6放出の最大阻害の半値につながる血清希釈度の逆数として示した。定量下限(LLOQ)は35であった。

【0107】
インビボでQβ−MDI−D145K−His6またはQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって誘導される抗体の中和活性を測定するために、第6回目のワクチン注射の2週後に、各グループの動物とQβ免疫化対照群の動物の半分は、1μg/kgのwtIL−1βの静注を投与された。血清中のIL−6濃度は、wtIL−1βの生物活性の示度として投与3、6及び9時間後に測定された。表13に示すように、Qβ免疫化サルは、注射後3時間でピークに達して、次に9時間までバックグラウンドレベル近くまでに減少する、強いIL−6応答を備えた。対照的に、Qβ−MDI−D145K−His6及びQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって接種された動物の場合、IL−6はIL−1β注射後のすべての時点で検出限界以下のままであり、これらのワクチンによって誘導された抗体が、IL−1βの生物的活性を中和することを示した。

表13:アカゲザルのQβ−MDI−D145K−His6及びQβ−rhesusMDI−D145K−His6によって誘導される抗体によるインビボのIL−1βの生物活性の中和。血清IL−6は、マルチプレックス・サイトカイン・ビーズ・アレイ・キットによって定量化された。値は、pg/血清mlにおいて表される。定量の下限(LLOQ)は、20pg/mlであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病の治療方法に用いられる組成物であって、
(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び
(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されたアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記突然変異されたアミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原とを含んでなり、
(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される、組成物。
【請求項2】
突然変異された前記アミノ酸配列は配列番号4である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
突然変異された前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基がリジン残基により交換される、請求項1又は2の組成物。
【請求項4】
前記IL−1βムテインが配列番号6のアミノ酸配列から成る、請求項1から3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は、
(i)前記IL−1βムテイン、及び
(ii)リンカーであって、前記リンカーが前記第2の付着部位を含み、前記リンカーはGGCG(配列番号7)を含むか又は好ましくはそれから成っており、
好ましくは前記リンカーはペプチド結合を介して前記IL−1βムテインのC末端に共有結合している、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は配列番号11から14の何れか一つであって、好ましくは少なくとも一つの第2の付着部位を有する前記少なくとも一つの抗原は配列番号11である、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記RNAバクテリオファージが
(a)バクテリオファージQβ、
(b)バクテリオファージAP205、
(c)バクテリオファージfr、および
(d)バクテリオファージGAからなる群から選択され、
好ましくは前記RNAバクテリオファージはバクテリオファージQβである、請求項1から6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
RNAバクテリオファージの前記ウイルス様粒子がRNAバクテリオファージの組換えコートタンパク質を含むか、本質的にそれから成るか、あるいはそれから成り、好ましくは前記組換えコートタンパク質は配列番号3を含むか、好ましくはそれから成る、請求項1から7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の付着部位が、少なくとも一つの共有結合を経て前記第2の付着部位に連結され、好ましくは前記少なくとも一つの共有結合が非ペプチド結合である、請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそれからなる、請求項1から9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそれからである、請求項1から10の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の付着部位がアミノ基であり、前記第2の付着部位がスルフヒドリル基であり、好ましくは前記第1の付着部位はリジン残基のアミノ基であり、前記第2の付着部位はシステイン残基のスルフヒドリル基である、請求項1から11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の付着部位のただ1つが、少なくとも1つの非ペプチド共有結合を介して前記第1の付着部位に結合して、前記ウイルス様粒子への前記抗原の単一で均一型の結合となり、前記第1の付着部位に結合する前記ただ1つの第2の付着部位はスルフヒドリル基であり、前記抗原と前記ウイルス様粒子は前記結合を介して相互作用して、規則正しい反復性の抗原アレイを作成する、請求項1から12の何れか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1の付着部位と前記少なくとも1つの第2の付着部位はヘテロ二官能性架橋剤を経て共有結合され、好ましくは前記ヘテロ二官能性架橋剤はスクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート(SMPH)である、請求項1から13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
安定化剤を更に含む請求項1から14の何れか一項に記載の組成物であって、前記安定化剤は無機塩、好ましくは塩化ナトリウムであり、更に好ましくは前記組成物中の前記安定化剤の濃度は5〜200mMであり、より好ましくは前記組成物中の前記安定化剤の濃度は10〜100mMであり、更により好ましくは前記組成物中の前記安定化剤の濃度は25〜75mMであり、最も好ましくは前記組成物中の前記安定化剤の濃度は50mMである、組成物。
【請求項16】
非イオン性界面活性剤を更に含む請求項1から15の何れか一項に記載の組成物であって、好ましくは前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート20であり、更に好ましくは前記組成物中の前記非イオン性界面活性剤の濃度は0.01から0.5mg/mlであり、また更に好ましくは前記組成物中の前記非イオン性界面活性剤の濃度は0.05から0.25mg/mlであり、また更に好ましくは前記組成物中の前記非イオン性活性剤の濃度は0.10mg/mlある、組成物。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項に記載の組成物の有効量を含むか、あるいはそれから成っているワクチン組成物。
【請求項18】
2型糖尿病の治療用ワクチン組成物であって、
(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、及び
(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記突然変異されたアミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、前記突然変異されたアミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されている、少なくとも一つの抗原とを含んでなり、
(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して連結される、ワクチン組成物。
【請求項19】
請求項1から16の何れか一項に記載のように定義された、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記ワクチン組成物がアジュバント、好ましくはアルミニウム水酸化物を含む、請求項17から19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
(a)請求項1から16の何れか一項に記載の組成物又は請求項17から20の何れか一項に記載のワクチン組成物、及び
(b)薬学的に許容可能な担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項22】
2型糖尿病を治療する方法に使用するための医薬組成物であって、
(a)少なくとも一つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子、と
(b)少なくとも一つの第2の付着部位を有する少なくとも一つの抗原であって、前記少なくとも一つの抗原はIL−1βムテインから成り、前記IL−1βムテインは突然変異アミノ酸配列から成り、突然変異されるアミノ酸配列はヒトIL−1βであり、前記アミノ酸配列のN−末端アミノ酸残基はアミノ酸配列MDI(配列番号5)に置き換えられ、突然変異された前記アミノ酸配列の位置145のアミノ酸残基は別のアミノ酸残基と交換されており、(a)と(b)とが前記少なくとも一つの第1の付着部位と前記少なくとも一つの第2の付着部位を介して結合された、少なくとも一つの抗原、と
(c)薬学的に許容可能な担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から16の何れか一項に記載のとおりに定義された、請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
安定化剤を更に含む請求項21から23の何れか一項に記載の医薬組成物であって、前記安定化剤は無機塩、好ましくは塩化ナトリウムであり、更に好ましくは前記医薬組成物中の前記安定化剤の濃度は5から200mMであり、より好ましくは前記医薬組成物中の前記安定化剤の濃度は10から100mMであり、更により好ましくは前記医薬組成物中の前記安定化剤の濃度は25から75mMであり、最も好ましくは前記医薬組成物中の前記安定化剤の濃度は50mMである、医薬組成物。
【請求項25】
非イオン性界面活性剤を更に含む請求項21から24の何れか一項に記載の医薬組成物であって、好ましくは前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート20であり、更に好ましくは前記医薬組成物中の前記非イオン性界面活性剤の濃度は0.01から0.5mg/mlであり、また更に好ましくは前記医薬組成物中の前記非イオン性界面活性剤の濃度は0.05から0.25mg/mlであり、また更に好ましくは前記医薬組成物中の前記非イオン性活性剤の濃度は0.10mg/mlある、医薬組成物。
【請求項26】
免疫学的有効量の請求項1から16の何れか一項に記載の組成物、請求項17から20の何れか一項に記載のワクチン組成物、及び/又は請求項21から25の何れか一項に記載の医薬組成物を、動物、好ましくはヒトに投与することを含んでなる、2型糖尿病の治療方法。
【請求項27】
動物、好ましくはヒトの2型糖尿病を治療するための医薬の製造方法における、請求項1から16の何れか一項に記載の組成物、請求項17から20の何れか一項に記載のワクチン組成物、及び/又は請求項21から25の何れか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
請求項1から16の何れか一項に記載の組成物、請求項17から20の何れか一項に記載のワクチン組成物、請求項21から25の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項26に記載の方法又は請求項27に記載の使用であって、前記組成物、前記ワクチン組成物、又は前記医薬組成物は、動物、好ましくはヒトに投与され、前記動物、好ましくは前記ヒトに投与される一回投与量は総タンパク質として1から1500μg、好ましくは5から1000μg、より好ましくは5から900μg、更により好ましくは5から600μg、更により好ましくは5から400μg、更により好ましくは10から300μg、更により好ましくは10から100μg、最も好ましくは100μgを含み、好ましくは前記総タンパク質は(a)前記少なくとも1つの第1の付着部位を有するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子と(b)前記少なくとも1つの第2の付着部位を有する少なくとも1つの抗原からなる、請求項1から16の何れか一項に記載の組成物、請求項17から20の何れか一項に記載のワクチン組成物、請求項21から25の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項26に記載の方法又は請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記一回投与量が0.1から5mg、好ましくは0.2から2mg、より好ましくは0.5から1.5mg、最も好ましくは1.0mgの水酸化アルミニウムを更に含む、請求項28に記載の組成物、ワクチン組成物、医薬組成物、方法または使用。

【公表番号】特表2013−504539(P2013−504539A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528360(P2012−528360)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063237
【国際公開番号】WO2011/029870
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】