説明

糞便の体積と糞便の臭気を低減するための組成物と方法

【課題】動物が摂取すると糞便の排泄量と糞便の臭気が減少する、高品質タンパク質と高消化性炭水化物とを含んだ動物用フード組成物、および前記フード組成物の使用法を提供する。
【解決手段】約15%〜約30%の高品質蛋白質および約25%〜約50%の高消化性炭水化物を含み、約88%より大きい乾物消化率を有する高消化性ペットフ−ド組成物であり、さらに、全食物繊維、脂肪、ミネラル、ビタミン、アミノ酸を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質タンパク質と高消化性炭水化物とを含む高消化性ペットフード組成物、および動物に本発明の組成物を与えることによって、ペットの糞便の体積と臭気を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットは糞便を排泄し、排便はいろいろな場所(たとえば、屋外で、ネコ用トイレにて、あるいは新聞紙上に)で行われる。ペットの糞便を片付けるのは不快である場合が多く、この作業をなるべく気持ちよく行えるよう多くの製品が販売されているけれども、これらの製品は、糞便の排泄、排泄される糞便の体積、および糞便に付きものの不快な臭気、という根底にある問題に対処できていない。一般的に知られているように、フード組成物は、動物によって排泄される糞便の量と特性に大きな影響を及ぼすことがある。したがって、動物によって排泄される糞便の重量または体積を低減するための、そして糞便の臭気を低減するための組成物と方法が開発されるのが望ましい。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、高品質タンパク質と高消化性炭水化物とを含んだ高消化性ペットフード組成物に関し、前記ペットフード組成物を摂取すると、より少ない量の高品質タンパク質とより消化性の低い炭水化物とを含有する組成物を与えられた動物によって排泄される糞便と比較して、体積がより少なくて、不快な臭気がより少ない動物の糞便が形成される。したがって1つの態様においては、本発明は、1種以上の高品質タンパク質と1種以上の高消化性炭水化物とを含んだペットフード組成物に関する。特定の実施態様においては、本発明の組成物は、約15%〜約30%の高品質タンパク質と約25%〜約50%の高消化性炭水化物を含んでよい。前記高品質タンパク質は、約90%、91%、92%、93%、94%、または95%より大きい真のタンパク質消化率を有してよく;前記高消化性炭水化物は、約90%、92%、94%、95%、または96%より大きい消化率を有してよい。本発明の組成物は、約88%、90%、または95%より大きい乾物消化率を有してよい。特定の実施態様においては、本発明の組成物は栄養的に完全なペットフードであり、さらに具体的にはドッグフードである。
【0004】
特定の実施態様においては、本発明は、36%の酒米、16%の卵、16%のコーンスターチ、14.5%のトウモロコシグルテンミール、2.5%のビートパルプ、2.5%の大豆油、2%の亜麻仁、カルニチン、1種以上のアミノ酸、1種以上のミネラル、および1種以上のビタミンを含んだ組成物に関する。前記組成物は特に、≧88.0%の乾物消化率、真のタンパク質消化率、脂肪消化率、炭水化物消化率、およびエネルギー消化率を示す。
【0005】
他の態様においては、本発明は、本発明の高消化性組成物のいずれかを動物に与えることを含む、動物によって排泄される糞便の体積を低減する方法に関する。
【0006】
さらに他の態様においては、本発明は、本発明の高消化性組成物のいずれかを動物に与えることを含む、動物によって排泄される糞便の臭気を低減する方法に関する。
【0007】
さらに他の態様においては、本発明は、動物によって排泄される糞便の体積を低減するために動物に与えるためのフード組成物の製造において高品質タンパク質と高消化性炭水化物を使用することに関する。
【0008】
さらに他の態様においては、本発明は、動物によって排泄される糞便の臭気を低減するために動物に与えるためのフード組成物の製造において高品質タンパク質と高消化性炭水化物を使用することに関する。
【0009】
本発明の他の実施態様は、当業者には明らかであろう。
【0010】
本発明の作用に関する任意の理論または特定のモードで拘束されるつもりはないが、本発明は、特定の組成物を動物が摂取すると、動物によって排泄される糞便の量がより少なくなり、排泄された糞便の臭気が少なくなる、という発見に基づいている。一般には、本発明の組成物は高消化性であり、1種以上の高品質タンパク質と高消化性炭水化物を含む。消化率が増大する結果、排泄される糞便の体積が少なくなる。さらに、糞便の臭気の低減は、消化率の増大、およびそれに関連して、本発明の組成物を摂取した動物によって排泄される糞便中のイオウ含有化合物の量の減少によるものと考えられる。
【0011】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている単数形“a”、“an”、および“the”は、文脈にて明確に述べられていない限り、複数についての言及も含む。
【0012】
本明細書で使用している“〜するのに有効な量(an amount effective)”、“有効量(an effective amount)”、およびこれらに類似の用語は、特定の生物学的結果を達成するのに(たとえば、糞便の体積と臭気を低減するのに)有効な、本明細書に記載の化合物、物質、または組成物の量を表わしている。このような結果は、たとえば、本発明の組成物を動物に投与することによって達成することができる。有効量は、動物の種類、性別、年齢、体重、および/または組成物の代謝エネルギーを含めた、幾つかのファクターに基づいて決まる。本明細書おいて意図しているように、動物に与えようとするフード組成物の1日の量は、当業者にはよく知られている。
【0013】
本明細書で使用している“高消化性ダイエット”とは、88.0%以上の消化率を有するダイエットを表わしている。“栄養消化率”という用語は、乾物、タンパク質、脂肪、炭水化物、およびエネルギーの消化率を含む。
【0014】
本発明は、本明細書に開示の配合物が与えられることにより恩恵を受けることがある全ての動物(好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはコンパニオンアニマル)に関する。“コンパニオンアニマル”とは、ヒトと密接に繋がり合って生きているあらゆる動物を表わしており、あらゆる品種の飼っているイヌ科動物やネコ科動物などがあるが、これらに限定されない。たとえば、この用語は、そのダイエットをヒトが制御することができて、本明細書に開示の配合物が与えられることにより恩恵を受けることがあるいかなる動物も包含してよい。これらの動物は、たとえば、家畜(たとえば、牛、馬、および豚など)だけでなく、飼育されている状態の(たとえば動物園などにおける)家畜以外の動物も含んでよい。
【0015】
本発明は、授乳段階、離乳段階、成長段階、成体段階、高齢段階、および老齢段階を含めた、生涯の種々の段階における動物に対して使用するのに適している。動物は、成体動物、高齢動物、または老齢動物であるのが好ましく、成体動物であるのがさらに好ましい。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書において使用されているパーセントは全て、乾物基準による重量%である。“乾物基準(dry matter basis)”とは、組成物中の水分を取り除いた後の、組成物中の成分濃度を意味している。
【0017】
本明細書で言及している“高品質タンパク質”とは、約90%より大きい(好ましくは約95%より大きい、さらに好ましくは約98%より大きい)“真のタンパク質消化率”(“見かけのタンパク質消化率”とは対照的に)によって消化することができる全てのタンパク質または全てのタンパク質混合物を表わしている。
【0018】
タンパク質の消化率を測定するための方法は当業者に公知である。たとえば、組成物のタンパク質含量は、当業者に公知の多くの方法〔たとえば、the Association of Official Analytical Chemists in Official Methods of Analysis(“OMA”),メソッド988.05〕によって測定することができる。したがって“見かけのタンパク質消化率”を測定するために、当業者は、組成物のタンパク質含量と、動物に組成物を与えることによって排泄された糞便のタンパク質含量を測定する。見かけのタンパク質消化率は下記のように算出される。
【数1】

【0019】
周知のように、糞便は他の多くのタンパク質源(たとえば、細菌タンパク質、消化プロセスによって生成される酵素、および胆汁)を含有している。したがってタンパク質消化率は、糞便中に内因性タンパク質を存在させることによって幾らか変えることができる。したがって、真のタンパク質消化率を求めるには、見掛けのタンパク質消化率に、このような内因性タンパク質の存在を考慮に入れるためのある係数を乗じることが多い。存在する内因性タンパク質の量に応じて、係数は大きくなることも、あるいは小さくなることもある。本発明においては、真のタンパク質消化率は、タンパク質消化率に係数1.051を乗じることによって求められる。すなわち、真のタンパク質消化率と見かけのタンパク質消化率との間の差異は1.051程度ということである(たとえば、88.5%という見かけのタンパク質消化率は、93.0%という真のタンパク質消化率に等しい)。
【0020】
本発明において使用するための高品質タンパク質の供給源としては、植物源、動物源、またはこれら両方がある。動物源としては、たとえば、食肉、食肉副産物、海産食品、乳製品(粉ミルクを含む)、および卵などがある。植物源は、大豆タンパクアイソレートを含んでよい。高品質タンパク質は、損なわれていない状態であっても、ほぼ完全に加水分解されていても、部分加水分解されていても、あるいはアイソレートであってもよい。高品質タンパク質は卵(たとえば、実質的に卵殻を含まない鶏卵)であるのが好ましい。高品質タンパク質の他の供給源としては、卵白、カゼイン、加水分解植物性タンパク質、乳漿タンパク質、オバルブミン、およびラクトアルブミンなどがある。本明細書において意図しているように、本発明の組成物は高品質タンパク質の任意の混合物であってよい。本発明の組成物は、約15〜30%の高品質タンパク質を含んでよい。
【0021】
本明細書で言及している“高消化性炭水化物”とは、動物(たとえばイヌ科動物)によって、約90%より多く、約93%より多く、好ましくは約95%より多く、あるいは約96%より多く消化させることのできる炭水化物である。高消化性炭水化物は、トウモロコシ、小麦、米(たとえば酒米)、澱粉(たとえば、米やコーンスターチ)、トウモロコシグルテンミール、およびディスティラーズ乾燥穀物を含めた、当業者に公知の種々の供給源のいずれによっても与えることができる。本明細書において意図しているように、本発明の組成物は、高消化性炭水化物のいかなる混合物も含む。本発明の組成物は、約25〜50%の高消化性炭水化物を含んでよい。
【0022】
炭水化物の消化率を求める方法は当業者に公知である。炭水化物のパーセントは、窒素非含有抽出物(“NFE”)として算出することができ、以下のように算出することができる:NFE=100%−水分%−タンパク質%−脂肪%−灰分%−粗繊維%。したがって炭水化物の消化率を求めるために、当業者は、組成物の炭水化物含量、および動物に組成物を与えることによって排泄される糞便の炭水化物含量を求める。次いで炭水化物の消化率を下記の式によって算出する。
【数2】

【0023】
乾物消化率(DMD)は、乾物の重量を基準としたときの、動物によって消化された乾物の量を表わしている。消化率は一般に、〔摂取した含量−糞便中の含量〕を〔摂取した含量〕で除すことによって求められる。DMDを求める方法は業界に公知である。たとえば、乾物基準にて消費されたフードの量を求め、フードの消費によって排泄される糞便の量(乾物基準にて)を求める。次いでDMDを次のように算出する。
【数3】

【0024】
脂肪とエネルギーの消化率も、上記と同様に求めることができる。
【数4】

フードと糞便中の脂肪含量とエネルギー含量の決定は、当業者によく知られている従来の方法にしたがって行うことができる。
【0025】
本発明の組成物は、糞便の体積を低減させるだけでなく、前記組成物を摂取した動物によって排泄される糞便の臭気も低減させる。糞便の臭気を検定する方法は当業者によく知られている。たとえば、人間パネリスト(human panelists)を使用する定量的な評価を使用して(たとえば、本明細書の実施例に記載のように)、糞便の臭気のランク付けを行うことができる。さらに、たとえばガスクロマトグラフィーや質量分析法を利用して、糞便臭気化合物(stool odor compounds)を定量的に測定することもできる。排泄物において定量的に検定される糞便臭気化合物としては、イオウ含有化合物、フェノール類、複素環式化合物とインドール、カルボン酸化合物、およびケトン化合物などがある。
【0026】
本明細書において意図しているように、本発明の組成物は、栄養的に完全なペットフードダイエットを包含する。“栄養的に完全なダイエット”とは、ダイエットに関して意図するレシピエント動物(たとえば、飼いならされたネコ科動物またはイヌ科動物)の正常な健康を保持する上で十分な栄養素を含んでいて、当業者によく知られているダイエットである。たとえば、栄養素と成分(たとえば、本明細書に開示の栄養素と成分、ならびに動物飼料組成物に適した栄養素と成分)およびそれらの推奨量は、たとえば、「Official Publication of the Associate of American Feed Control Officials Inc.,(“AAFCO”)」の「Nutrient Requirements of Dogs and Cats,2006」に記載されている。
【0027】
本明細書に開示の栄養的に完全なペットフード組成物は脂肪を含んでよい。本発明の組成物に対する脂肪源は、食肉、食肉副産物、魚油、および植物を含めた、当業者に公知の種々の供給源のいずれによっても供給することができる。植物による脂肪源としては、小麦、亜麻仁、ライ麦、大麦、米、モロコシ、トウモロコシ、オートムギ、雑穀、小麦麦芽、トウモロコシ胚芽、大豆、ラッカセイ、ならびにこれらの植物脂肪源や他の植物脂肪源から誘導されるオイルなどがある。本明細書において意図しているように、本発明の組成物は、約11%〜約16%の脂肪(好ましくは約14%の脂肪)を含んでよい。
【0028】
欠乏を防いで健康を維持するために、本発明の組成物中にビタミンとミネラルを、当業者に公知の量にて組み込むことができる。たとえば米国学術研究会議(NRC)は、家畜に対するこのような成分の推奨量を明らかにしており、またAAFCO〔たとえば、「Official Publication of the Associate of American Feed Control Officials Inc.,(“AAFCO”)」の「Nutrient Requirements of Dogs and Cats,2006」〕は、イヌ科動物とネコ科動物に対するこのような成分の推奨量を明らかにしている。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンH(ビオチン)、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシン、およびパントテン酸などがある。ミネラルの例としては、たとえば、カルシウム、リン、リン酸二カルシウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム;またはナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、塩化物、銅、亜鉛、コリン、リン、ヨウ素、もしくはセレンの塩;などがある。
【0029】
本発明の組成物中に繊維(食物繊維があるが、これに限定されない)を組み込むことができる。食物繊維は、動物の消化酵素による消化に対して抵抗性のある、植物の成分を表わしている。フード中の食物繊維成分は、当業者に公知の種々の方法〔たとえば、OMA法991.43/32.1.17(1994)〕によって調べることができる。全食物繊維は、可溶性繊維と不溶性繊維を含む。可溶性繊維は、小腸における消化と吸収に対しては抵抗性があるが、大腸において完全もしくは部分的な発酵を受ける。本発明の組成物中に使用するための可溶性繊維の供給源としては、ビートパルプ、グアーガム、チコリーの根、オオバコ、ブルーベリー、クランベリー、カボチャ、リンゴ、オートムギ、豆、柑橘類、大麦、またはエンドウ豆などがある。不溶性繊維は、水に溶解せず、フードが消化管を通過する速度を高める傾向のある繊維である。不溶性繊維の例としては、たとえば、セルロース、全粒小麦製品、小麦、オートムギ、コーンブラン、亜麻仁、ブドウ、セロリ、グリーンビーンズ、カリフラワー、ジャガイモの皮、果皮、野菜の皮、ラッカセイの殻、および大豆繊維などがあるが、これらに限定されない。本明細書において意図しているように、本発明の組成物は約3%〜約6%の全食物繊維を含んでよい。
【0030】
本発明の組成物はさらに、欠乏を防いで健康を維持するために、アミノ酸を当業者に公知の量にて含んでよい。本発明の組成物は“必須アミノ酸”を含むのが好ましい。必須アミノ酸は、有機体によって新たに又は十分な量にて合成することのできない、したがってダイエット中に供給しなければならないアミノ酸である。必須アミノ酸は、有機体の代謝に応じて種々異なる。たとえば、一般的に認識されているように、イヌやネコ(およびヒト)に対する必須アミノ酸は、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リシン、イソロイシン、バリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、およびアルギニンである。さらに、タウリン(技術的にはアミノ酸ではなく、システインの誘導体である)もイヌやネコに対する必須栄養素である。
【0031】
本発明の組成物はさらに、欠乏を防いで健康を維持するために、たとえばカルニチンやω-3脂肪酸もしくはω-6脂肪酸を当業者に公知の量にて含んでよい。カルニチン、すなわちL-カルニチンは、体内においてリシンやメチオニンから合成されるビタミン様の化合物である。カルニチンは、本発明の成分(たとえば亜麻仁)中に天然に存在することもあるし、あるいはカルニチンを組成物に加えてもよい。
【0032】
本発明の組成物はさらに、添加剤、安定剤、充填剤、増粘剤、風味剤、嗜好性増進剤、および着色剤を、当業者によく知られている量と組み合わせにて含んでよい。安定化用物質は、組成物の保存寿命を向上させることがあり、当業者に公知である。
【0033】
本明細書において意図しているように、本発明の組成物は、約3500kcal/kg〜約4500kcal/kgの代謝可能なエネルギー含量を含んでよい。本明細書で言う“代謝可能エネルギー”とは、糞便、尿、および可燃性ガスにて排泄されるエネルギーを差し引いた後の、ダイエット(または組成物)を消費する際に動物にとって利用可能なエネルギーを表わしている。代謝可能エネルギー値は、当業者に公知の方法によって確立されているプロトコルにしたがって(たとえば、「Association of American Feed Control Officials(AAFCO)」から示されている公式ガイドラインにしたがって)求めることができる。
【0034】
糞便の体積と悪臭の低減をもたらす本発明の高消化性組成物は、たとえば(これに限定されないが)、36%の酒米、16%の卵、16%のコーンスターチ、14.5%のトウモロコシグルテンミール、2.5%のビートパルプ、2.5%の大豆油、2%の亜麻仁、カルニチン、1種以上のアミノ酸、1種以上のミネラル、1種以上のビタミン、および1種以上の嗜好性増進剤を含んでよい、と考えられる。前記組成物は特に、≧88.0%の乾物消化率、真のタンパク質消化率、脂肪消化率、炭水化物消化率、およびエネルギー消化率を示す。
【0035】
幾らかのコンシステンシーまたは含水率を有する組成物が意図されているけれども、本発明の組成物は、たとえば、ウェットアニマルフード組成物であっても、セミモイストアニマルフード組成物であっても、あるいはドライアニマルフード組成物であってもよい。“ウェット”フードとは、約70〜90%の含水率を有するフードを表わしている。“セミモイスト”フードとは、約15〜40%の含水率を有するフードを表わしている。“ドライ”フードとは、約5〜15%の含水率を有する組成物を表わしており、小片またはキブルの形で製造されることが多い。さらに、本明細書において意図しているのは、種々のコンシステンシーを有する成分のほかに、1つより多いコンシステンシーを含む成分を含んでよい組成物である(たとえば、ソフトで腰の強いミート様粒子、および米国特許第6,517,877号に記載の、外側シリアル成分と内側クリーム成分を有するキブル)。キブルは、さらに乾燥処理してもよいし、必要に応じて、当業者に公知の1種以上の局所コーティング(たとえば、風味剤、脂肪、オイル、および粉末など)で被覆してもよい。本発明の組成物は、従来の製造法を使用して製造することができる。
【0036】
言うまでもなく、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、および試剤に限定されず、これらはいろいろ変わってよい。理解しておかなければならないことは、本明細書で使用している用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであって、決して本発明の範囲を限定するように意図されてはいない、という点である。さらに、実施態様の詳細な説明は、当業者がある特定の用途の要件に最も良く適合させることができるときに、当業者が本発明を多くの形で適合させて利用するよう、当業者に本発明、本発明の原理、および本発明の実際的な応用を知らせるようにのみ意図されている。したがって本発明は、本明細書に記載の実施態様に限定されず、いろいろと変更を施すことができる。
【0037】
特に明記しない限り、本明細書において使用されている技術用語と科学用語は全て、本発明が属している技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に引用されている全ての特許、特許出願、刊行物、および他の文献の全内容を参照により本明細書に含める。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
「the Association of American Feed Control Officials 2005 Nutrient Guide for Dogs」にしたがって表1のフードを配合し、キブルとして作製し、アダルトメンテナンス要件に適合するようバランスさせ、従来の方法にしたがってドライキブルとして押し出す。AAFCO栄養勧告に適合するよう、またはAAFCO栄養勧告を超えるよう、2つの組成物を配合する。代謝可能エネルギーを従来の方法にしたがって(たとえば、Atwaterの式を使用して)算出し、乾物の重量を基準としてパーセントで表示する。5種の高含量成分も(減少していく順序にて)記載してある。
【表1】

(実施例2)
【0039】
消化率の実験を行って、対照標準のフードと実施例1の試験フードの消化率を調べる。14日間にわたって1グループ5匹で2つのグループのイヌに実施例1の組成物を与える。7日間にわたって、1つのグループの5匹のイヌに対照標準Aを与え、もう1つのグループの5匹のイヌに試験組成物Bを与える。7日後に、動物に対するフードを交換する。1日目と2日目は、フードに対する適応を考慮し、3〜7日目に関して糞便を全て採集して分析する。8日目に、各グループに第2のフードを与え(初めの2日間は新たなフードに対する適応を考慮する)、そして糞便サンプルを毎日採集し、実験の残部に関して分析する。日数全体にわたって糞便を採集し、密閉可能なビニール袋中に入れる〔24時間、または翌朝ケージを洗浄するまで(24hr or before cage washing the following morning)〕。ビニール袋に、動物ID#、日付、および試験#のラベルを付ける。保存を必要とする糞便サンプルを5℃で冷蔵する。排除容積法(a displacement method)を使用して糞便の体積を測定する。糞便サンプルの重量を計量し、糞便デンシトメーターの上に加える。排除された水を捕集し、メスシリンダーにて体積を測定する。密度測定値(g/cc)は、サンプルの重量(g)を排除された水の体積(ml)で除することで得られる。SASの一般線形モデル法を使用してデータを分析して、処理平均値(treatment means)を求める。全ての消化率アッセイを従来の方法にしたがって行う。消化率の値と糞便の特性を表2に示す。
【表2】

【0040】
これらの結果から、試験組成物Bを与えられた動物は、対照標準Aを与えられたイヌと比較して糞便の量が少ない(糞便の重量と体積に関して)ことがわかる。
(実施例3)
【0041】
「the Association of American Feed Control Officials 2005 Nutrient Guide for Dogs」にしたがって試験組成物Cを配合し、アダルトメンテナンス要件に適合するようバランスさせ、従来の方法にしたがってドライキブルとして押し出す。Atwaterの式を使用して、代謝可能エネルギー含量を算出する。4種の高含量成分は、米、卵、コーンスターチ、およびトウモロコシグルテンミールである。試験組成物Cの含量を当業界に公知の方法によって分析し、下記の表に乾物基準にて示す。
【表3】

(実施例4)
【0042】
実施例3の試験組成物Cと市販のドッグフード〔ユーカヌバ(Eukanuba)(登録商標)アダルトメンテナンス小粒(“EU-SB”)〕とを比較するために消化率実験を行う。Atwaterの式を使用して代謝可能エネルギー含量を算出する。EU-SBの4種の高含量成分は、チキン、チキン副産物ミール、コーンミール、および挽いた全粒モロコシである。EU-SBの組成を当業界に公知の方法によって分析し、試験組成物Cの栄養素分析と共に表4に示す。消化率実験の結果を表5に示す。
【0043】
消化率実験を実施例2に記載のように行う。この場合には、14日間にわたって1グループ5匹で2つのグループのイヌに試験組成物CまたはEU-SBを与える。7日間にわたって、1つのグループの5匹のイヌに組成物Cを与え、もう1つのグループの5匹のイヌにEU-SBを与える。7日後に、動物に対するフードを交換する。1日目と2日目は、フードに対する適応を考慮し、3〜7日目に関して糞便を全て採集する。8日目に、各グループに第2のフードを与える(初めの2日間は新たなフードに対する適応を考慮する)。糞便サンプルを毎日採集し、実験の残部に関して実施例2に記載のように分析する。各7日の試験期間に関して、初めの3日に糞便採集物を使用して、糞便の体積、重量、および密度を測定する。これら3項目の糞便測定を毎日行い、3日分の平均を算出する。さらに本実験においては、糞便採集の最後の2日を使用して糞便の臭気を測定する。ツーデイコンポジット(a two day composite)を使用して糞便臭気の測定値を得る(下記の実施例5を参照)。実験スケジール(a study schedule)下記に示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0044】
上記の結果から、イヌに試験組成物Cを与えると、市販フードEU-SBを与えたイヌと比較して、排泄される糞便の重量と体積が少なくなることがわかる。
(実施例5)
【0045】
実施例4に記載の消化率実験から採集した糞便について糞便臭気の分析を行う。糞便サンプルは全て、分析の前に5℃にて冷蔵保持する。サンプルを冷蔵装置から取り出し、必要に応じて動物ごとにポリエチレン袋中にコンポジットする。次いで糞便サンプルを袋中にてもんで、糞便物質をバラバラにして混ぜ合わせる。糞便物質を10mlのポリエチレンシリンジ中に装入し、5g(+/-0.01g)を20mlのヘッドスペースバイアル中に絞り出し、分析のためにクリンプに蓋をかぶせる。シリンジからの絞り出しは、サンプルの表面積を増大させるのに役立つ。これは、糞便サンプル中の揮発性成分を十分に平衡化させるのに重要である。こうしたやり方でのサンプル調製はさらに、ヘッドスペースバイアル中のサンプルの形態を“標準化する(normalize)”のにも役立つ。
【0046】
糞便サンプルをリープ・テクノロジー・コンビ-PALサンプラー(Leap Technologies Combi-PAL sampler)に装入する。サンプラーに各サンプルを装入し、30℃でインキュベートし、固相マイクロエクストラクション(Solid Phase Microextraction)(SPME)ファイバー(Supelco,1cm×75μm Carboxen/PDMS)を使用してサンプリングする。ファイバーをバイアル中のヘッドスペースに30分さらしてから、Agilent6890ガスクロマトグラフ/5973Nマス・セレクティブ・デテクター(Mass Selective Detector)(GCMS)に注入する。AgilentDB-WAXETRカラム(60m×0.25mm×0.25μm)により分離を行う。分析が完了したら、データを処理して、各化合物に特異的なイオン〔Qイオン(QIon)〕に対するピーク面積を測定する。
【0047】
全ピーク面積の概略レポートをデータベースにエクスポートし、各化合物を、その主要な官能基によって類別する。各分類における全ての化合物のピーク面積を合計する。次いでこれらの合計値を、SASによる2つの一組の比較Proc mixed法を使用して分析する。
【0048】
糞便のにおいの評価を、下記の手順を使用して6日、7日、13日、および14日めに行う:新たな糞便サンプルを採集し、3桁数でランダムに符号化してあるプラスチック袋中に入れる。サンプルの評価を行うために、11人の動物コロニー職員を補充する。サンプルを、採集時から1時間以内に評価する。サンプルを、各当事者にランダムな順序にて1つずつ与える。当事者は、開放状態の袋を鼻から約1フィート離して保持し、数回の“バニー・スニッフ(bunny sniffs)”を行ってにおいを嗅ぐことによってサンプルを評価する。当事者は、5ポイントスケール(1=においが全くなし、5=極めて強いにおい)を使用してにおい強さの等級を各サンプルに割り当てる。におい強さの等級を、所定の形式にて記録する。実験が終了したら、各サンプルに対する平均を算出し、SASの一般線形モデル法を使用して比較する。糞便の分析結果を下記の表6〜14に示す。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【0049】
上記の表に示されているデータから、糞便のスコアは、試験組成物CとEU-SBとの間で差がないことがわかる(たとえば、試験1における2つのダイエットに対しては4.9;試験2におけるEU-SBと試験組成物Cに対してはそれぞれ4.3と4.4)。
【0050】
糞便の重量と体積は、試験組成物CとEU-SB物品との間で統計的に差がない。2つの実験(試験1と試験2)においては、試験ダイエットを与えられたイヌは、EU-SB物品を与えられたイヌと比較して、大幅に低い糞便重量(それぞれ57.4gと95.6g)と大幅に低い糞便体積(それぞれ54.7mlと90.1ml)を有する。糞便密度はほとんど差がない(0.99g/ccと1.05g/cc)。示されている数字は2つの実験からの平均である。
【0051】
糞便においのヘッドスペース分析を使用して糞便の臭気を評価する。組み合わせ実験からの結果から、試験ダイエットを与えたイヌは、EU-SB物品を与えたイヌと比較してイオウ含有化合物のレベルが63%低いことがわかる(P<0.05)。このことは重要な発見である。なぜなら、イオウ化合物は極めて低い臭気閾値(odor threshold)を有しているので、これら化合物が減少すれば、糞便臭気の問題が改良されるからである。試験ダイエットを与えたイヌはさらに、大幅に低いレベルの酸(たとえば49%減少;(P<0.05))を有する。EU-SBダイエットを与えたイヌ(示されている数字は組み合わせ実験からのもの)は、大幅に低いレベルのフェノール類(P<0.05)、インドール(P<0.05)、およびフラン(P<0.05)を有する。
【0052】
11人の当事者で構成される感覚パネル(a sensory panel)を使用して、実験2の糞便サンプルから採集した糞便サンプルにおける糞便臭気強さをランク付けする。これらの分析から、試験ダイエットを与えたイヌは、EU-SB物品を与えたイヌと比較してより低い糞便臭気スコアを有することがわかる(2.92と3.19;P<0.05)。したがって、これらの結果を全体として考察すると(たとえば、ヘッドスペース分析の結果を感覚分析からの結果と合わせて考察すると)、イオウおよびおそらくは酸化合物を減少させることが、他の化合物(たとえば、フラン、フェノール類、およびインドール)の幾らかを減少させることより重要である、ということがわかる。
【0053】
試験組成物Cのイヌ用ダイエットは、消化性が極めて高いことが示されている。乾物消化率、真のタンパク質消化率、およびエネルギー消化率は、それぞれ91.0%、98.2%、および92.7%である。消化率の増大により糞便の重量と体積が減少するだけでなく、糞便の臭気(分析試験と感覚試験の両方によって評価)も減少する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質タンパク質と高消化性炭水化物とを含み、約88%より大きい乾物消化率を有する高消化性ペットフード組成物。
【請求項2】
約15%〜約30%の高品質タンパク質源を含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項3】
約25%〜約50%の高消化性炭水化物を含む、請求項1に記載のペットフード組成物。
【請求項4】
イヌ科動物によれば約88%より大きい乾物消化率を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項5】
約3%〜約6%の全食物繊維を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項6】
約11%〜約16%の脂肪を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項7】
約3500〜4500kcal/kgの代謝エネルギー含量を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項8】
前記高品質タンパク質が約90%より大きい真のタンパク質消化率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項9】
前記高消化性炭水化物が約90%より大きい消化率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項10】
前記高品質タンパク質が、食肉、食肉副産物、海産食品、乳製品、卵、およびこれらの混合物から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項11】
前記高消化性炭水化物が、トウモロコシ、小麦、ディスティラーズ乾燥穀物、コーンスターチ、米、トウモロコシグルテンミール、およびこれらの混合物から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項12】
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウム、塩化物、銅、亜鉛、コリン、鉄、リン、ヨウ素、およびセレンから選択されるミネラルを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項13】
ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンH、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシン、およびパントテン酸から選択されるビタミンを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項14】
カルニチンを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項15】
フェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リシン、イソロイシン、バリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、およびアルギニンから選択されるアミノ酸を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項16】
前記ペットフード組成物がドライペットフード組成物である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項17】
前記ペットフード組成物がウェットペットフード組成物である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項18】
前記ペットフード組成物が栄養的に完全なペットフード組成物である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項19】
前記ペットフード組成物がドッグフードである、請求項1〜18のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項20】
(a) 酒米を約36%;
(b) 卵を約16%;
(c) コーンスターチを約16%;
(d) トウモロコシグルテンミールを約14.5%;
(e) ビートパルプを約2.5%;
(f) 大豆油を約2.5%;
(g) 亜麻仁を約2.0%;および
(h) カルニチン;
を含む高消化性ペットフード組成物。
【請求項21】
前記ペットフード組成物がドライペットフード組成物である、請求項20に記載のペットフード組成物。
【請求項22】
前記ペットフード組成物がウェットペットフード組成物である、請求項20に記載のペットフード組成物。
【請求項23】
前記ペットフード組成物が栄養的に完全なペットフード組成物である、請求項20〜22のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項24】
前記ペットフード組成物がドッグフード組成物である、請求項20〜23のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項25】
イヌ科動物によれば約88%より大きい乾物消化率を有する、請求項20〜24のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項26】
前記ペットフード組成物が約90%より大きい真のタンパク質消化率を有する、請求項20〜25のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項27】
前記ペットフード組成物が約90%より大きい炭水化物消化率を有する、請求項20〜26のいずれか一項に記載のペットフード組成物。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のペットフード組成物を動物に与えることを含む、動物が排泄する糞便の体積を低減する方法。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか一項に記載のペットフード組成物を動物に与えることを含む、糞便中のイオウ含有化合物の量を低減し、これにより動物が排泄する糞便の臭気を低減させる方法。
【請求項30】
動物が排泄する糞便の体積を低減するために動物に与えるためのフード組成物の製造における、高品質タンパク質と高消化性炭水化物の使用。
【請求項31】
動物が排泄する糞便の臭気を低減させるために動物に与えるためのフード組成物の製造における、高品質タンパク質と高消化性炭水化物の使用。