説明

糸吸引装置を有する精紡機

【課題】精紡機のエネルギー消費量を節減するために、糸吸引装置を改善して、各精紡部において糸切れの発生した際に吸引管の開口部に吸引出力を生ぜしめるようにする。
【解決手段】糸吸引管の糸吸引開口部103に対応してそれぞれ1つの遮断機構を配置してあり、遮断機構は遮断装置101を備えており、遮断装置は、糸吸引開口部103に対して運動可能に配置されていて、かつ案内手段112を含んでおり、案内手段は、精紡運転中には精紡部に押圧力を生ぜしめるように形成されており、遮断装置は、押圧力により、吸引管102の吸引開口部の空気流過断面を減少させるために、遮断装置101に作用する戻し力に抗して糸吸引開口部103上に維持されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の精紡部を有する精紡機であって、前記精紡部はそれぞれドラフト装置及び加撚装置を含んでおり、さらに糸吸引装置を有しており、該糸吸引装置は複数の糸吸引管を有しており、該糸吸引管はそれぞれ、糸切れの後に繊維束の吸引のための少なくとも1つの糸吸引開口部を備えており、該吸引開口部は前記各精紡部に対応して配置されていて、所定の空気流過断面を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
精紡機、例えばリング紡績機においては精紡運転中に糸切れが繰り返し生じる。つまり、繊維束はドラフト装置の供給ローラ対とボビン又は引き取りローラとの間で切れて、精紡過程は中断されることになる。一般的に個別には駆動されないドラフト装置は、引き続き作動して、加撚装置に糸を供給している。ドラフト装置から連続的に供給される繊維束は、精紡部(精紡部位)の汚れや周囲又は隣接の精紡部の糸切れを生ぜしめないために連続的に排出されねばならない。
【0003】
繊維束の排出のために、精紡機には糸吸引装置を設けてあり、糸吸引装置は糸吸引管を含んでおり、糸吸引管は、ドラフト装置から送り出される繊維束流の近傍に配置されている。つまり、各糸吸引管はドラフト装置の供給ローラ対の出口側で該供給ローラ対の近傍に配置されている。
【0004】
前記装置は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3642820号明細書、及びイギリス国特許出願公開第954127号明細書に開示されている。これらの明細書によれば、糸吸引管の開口部は加撚装置からドラフト装置に向かって見て、出口側でドラフト装置の出口シリンダーの下側に、かつ繊維束の後側に配置されている。この場合に糸吸引管の開口部は、繊維束のできるだけ近くに配置したいものの、精紡過程が糸吸引管の存在によって損なわれてはならない。
【0005】
欧州特許出願公開第1425449号明細書には、圧縮装置を備えた精紡機の吸引管を開示してあり、該吸引管は出口側で出口シリンダーの領域に配置されており、この場合に吸引管の開口部は加撚装置からドラフト装置に向かって見て、繊維束の前に配置され、かつ供給ローラ対のローラ間ニップに向けられている。
【0006】
今日一般的な吸引システムにおいて欠点は、精紡運転若しくは紡糸運転中には、糸切れの発生に依存することなく全糸吸引管を介して空気を恒に吸引していることである。吸引は、供給ローラ対の領域の精紡部から飛散物や汚れを除去する目的で用いられるものの、1つの精紡部にはまれに生じる糸切れの処理のために設定されている吸引出力は、クリーニングのためには大きすぎるものである。
【0007】
1200乃至1600個の精紡部を有する長い精紡機において、高く設定される吸引出力のためのエネルギーコストは重要な問題である。さらに、高い全吸引出力は、吸引装置、例えば駆動部や送風機又はファンの寸法増大を意味し、ひいてはコスト増大を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3642820号明細書
【特許文献2】イギリス国特許出願公開第954127号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1425449号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、精紡機の運転の際の欠点を招くことなく、精紡機のエネルギー消費量を節減するために、糸吸引装置を改善して、各精紡部において糸切れの発生した際に吸引管の開口部に吸引出力を生ぜしめるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の構成によれば、吸引管の糸吸引開口部に対応してそれぞれ1つの遮断機構を配置してあり、つまり各吸引管は糸吸引開口部の開閉のための各遮断機構を有しており、該遮断機構は遮断装置を備えており、該遮断装置は、前記糸吸引開口部に対して運動可能に配置されていて、かつ案内手段を含んでおり、該案内手段は、精紡運転中には前記精紡部に押圧力を生ぜしめるように形成されており、前記遮断装置は、前記押圧力により、前記吸引管の前記吸引開口部の前記空気流過断面を減少させるために、該遮断装置に作用する戻し力に抗して前記糸吸引開口部上に維持されるようになっている。
【0011】
本明細書で、「糸」は、撚られていない繊維束だけではなく、撚られた繊維束、つまり紡績糸又はヤーンや仮撚り糸をも含むものである。精紡運転は、当該精紡部で紡績糸やヤーンを製造することを含むものであり、この場合には糸切れではなく、繊維束切れが生じる。糸切れ若しくは繊維切れは精紡機の別の精紡部の運転状態に無関係に生じる。糸切れが生じると、当該の精紡部では精紡運転は継続されない。
【0012】
前記案内手段は、前記押圧力が、該案内手段の種々の位置において、流体のベルヌーイの法則により生じ、つまり殊に該案内手段に沿って流れる空気流に基づく空気力式の駆動部(差圧力により作動する部分)の圧力により生じるように形成されている。遮断装置は有利にはカバーフラップを含んでおり、該カバーフラップにより、糸吸引開口部は完全に若しくは部分的に閉鎖されるようになっており、その結果糸吸引開口部の空気流過断面が変化させられるようになっている。カバーフラップ(フラップ式のカバー又は蓋)は有利には扁平なカバー部材であり、該カバー部材は精紡運転中は糸吸引開口部の上に位置して、該糸吸引開口部を完全に若しくは少なくとも部分的に覆って、つまり閉鎖するようになっている。カバーフラップ若しくは遮断装置は、空気流過断面を減少させるものの、完全には閉鎖しないように形成されている。
【0013】
前記案内手段は、吸引すべき繊維束に向いた案内面に切欠きへ延びる凹設部を有しており、凹設部は切欠きに向かって連続的に深くなっていてよい。例えば案内面に、切欠きに向かって開くV字形の凹設部を設けてある(図1及び図3、参照)。有利には凹設部は漏斗状に形成され、切欠きに向かって狭まっている(図11、参照)。
【0014】
前記案内手段は、精紡運転中に糸吸引管によって吸引されかつ又は回転する下側ローラ若しくは下側シリンダーによって連行される空気を案内するための流れ案内面を有しており、該流れ案内面は、前記遮断装置において該流れ案内面に沿って流れる前記空気の空気流に基づき、前記戻し力に抗して作用する前記空気力式の駆動部を形成するようになっている。本発明の実施態様によれば、遮断装置は、遮断装置のための戻し力が該遮断装置に作用する重力及び/又は追加的に設けられた戻し手段の戻し力によって生ぜしめられるように構成されて、精紡機に取り付けられ、有利には吸引管に取り付けられている。本明細書においてA及び/又はBの記載は、A及びBの少なくともいずれか一方を意味するものである。戻し手段は、戻し部材、例えばばね部材(例えば、らせんばね、コイルばね、或いは板ばね等)、若しくはゴム弾性の部材を含んでいてよく、戻し部材は、押圧力に抗して作用するようになっている。
【0015】
本発明の実施態様によれば、案内手段は、遮断装置に設けられた扁平な付加部(又は成形部)若しくは舌状部分(例えば遮断装置に一体成形された舌状の付加部又は延長部)を含んでいる。案内手段(扁平な付加部又は成形部)の大きさ及び向きは、精紡部の幾何学形状に依存している。付加部は、カバーフラップの上方の縁部からの延長部として形成されていいてよいものである。案内手段としての扁平な成形部は、相対する第1と第2の面を有し、つまり相対する両方の面を有しており、第1の面(一方の面)は、精紡運転中に空気を、殊に糸吸引管により吸引された空気を流れ案内(ガイド)するため流れ案内面を画成(画定)している。成形部の第1の面と精紡部の構成部分としての下側ローラ又はボトムローラ若しくは下側シリンダー(下側ドラム)又はボトムシリンダーとの間に画成される間隙状の通路は、糸又は繊維束の吸引のための空気を精紡運転中に糸吸引管に向けて通過(流過)させるようになっている。第2の面にはほとんど空気流は作用せず、したがって、扁平な付加部又は成形部は、空気流(流体)による駆動力にさらされる。両方の面は水平成分を有するように向けられている。案内手段は、カバーフラップ自体によって形成されていてよい。カバーフラップは、外側、つまり糸吸引管と逆の側の第1の面と吸引開口部に向いた内側の面とを有している。外側の面は、有利には水平成分を有するように向けられている。この場合には、カバーフラップにおける追加的な付加部又は成形部を省略することができる。本発明の有利な実施態様によれば、案内手段は繊維束案内縁部を有しており、該繊維束案内縁部は、有利には水平に形成されていて、精紡運転中に接触圧力を生ぜしめるために、繊維束と接触するようになっており、接触圧力は遮断装置のカバーフラップを糸吸引管の開口部上に保持するように作用している。本発明の別の実施態様によれば、案内手段は、繊維束案内縁部から延びる側方の傾斜縁部を有しており、該傾斜縁部は、繊維束案内縁部に対して次のように傾斜しており、つまり傾斜縁部に沿って繊維束を移動させて繊維束案内縁部上へ移すようになっている。繊維束案内領域、殊に繊維束案内縁部は、繊維束との接触による摩耗に対して高い強度を有する材料から成っていてよい。この種の材料は、吸引管の本体の材料と同一のものではない。本発明の実施態様によれば、繊維束案内領域は、金属部分、殊に金属線材によって形成されており、金属部分若しくは金属線材はプラスチックから成る遮断装置に組み込まれている。
【0016】
本発明の実施態様によれば、さらに別の手段、例えばスペーサーを設けてあり、スペーサーは、精紡運転中にカバーフラップを糸吸引開口部の所定の領域若しくは全周にわたって完全に接触させるのではなく、カバーフラップと糸吸引開口部との間に、最小の吸引作用のための隙間(空気流過開口部)を形成するようになっている。別の実施態様によれば、空気流過開口部は、糸吸引管自体に、例えば吸引開口部を画定する縁部に設けられていてよい。
【0017】
本発明の有利な実施態様によれば、シール手段を有しており、該シール手段は、吸引開口部の下側の領域を完全に気密に、若しくはほぼ気密に閉鎖(密閉)するようになっている。これにより、糸吸引管の下側からの空気吸引が避けられ、遮断装置の機能がさらに改善される。シール手段は、カバーフラップの、吸引開口部に向いている内側に、吸引管の輪郭に適合された縁取り部によって形成されていてよいものである。本発明の実施態様によれば、シール手段は、カバーフラップの内側(内面)に設けられた補強盛り状又はフランジ状の隆起部によって成形されている。縁取り部又は隆起部は、吸引開口部の外周輪郭若しくは内周輪郭に適合されていて、例えば彎曲形状又は円弧状に形成されており、有利な実施態様ではゴムシールを備えていてよく、或いはゴムシールによって構成されていてもよいものである。縁取り部又は隆起部は、a)吸引開口部の下方(下側)の領域のみを取り囲み、b)吸引開口部の下方及び側方の領域を取り囲み、或いはc)吸引開口部の下方及び側方の領域及び部分的に上方(上側)の領域を取り囲んでいる。a)の変化例では、空気は側方及び上方の領域からのみ吸引され、b)の変化例では、空気は上方の領域からのみ吸引され、c)の変化例では、空気は切欠きからのみ吸引される。ゴムシールは、糸吸引管自体に、例えば吸引開口部を画定する縁部に設けられていてよい。
【0018】
本発明の実施態様によれば、遮断装置は、カバーフラップ、旋回開閉式カバー部分を含んでいて、該カバーフラップでもって、吸引管の吸引開口部の空気流過断面を変化(閉鎖又は開放、つまり減少又は増大)させるようになっている。案内手段としての扁平な成形部は、カバーフラップに対して所定の角度を成して、例えば直角に該カバーフラップに配置されていて、しかも糸吸引管から繊維束の方向に向けられ、つまり糸吸引管から離間する方向に、すなわちカバーフラップから繊維束に向かって延びている。本発明の別の実施態様では、遮断装置は、吸引管の吸引開口部の空気流過断面を変化させるためのカバーフラップを含んでおり、該カバーフラップ自体によって、精紡運転中に精紡部の押圧力の形成のための空気流を案内する案内手段を形成してある。
【0019】
本発明の実施態様によれば、遮断装置及び/又は糸吸引管には、精紡運転中に遮断装置が糸吸引開口部上に位置している場合に、遮断装置と糸吸引管との間に空気通過開口部を画定するための手段を設けてあり、空気通過開口部の空気通過断面は、糸吸引管の空気流過断面よりも小さくなっている。空気通過開口部の空気通過断面は、有利には糸吸引管の空気流過断面の半分である。別の実施形態によれば、空気通過開口部の空気通過断面は、有利には糸吸引管の空気流過断面の三分の一、或いは四分の一、特に有利には八分の一であり、これに対応して糸吸引管の空気流過断面は大きくなっており、小さくすることもできる。吸引開口部は、糸切れに際して糸吸引管若しくはカバーフラップを移動させることなく繊維束を吸引できる大きさになっている。吸引管の吸引開口部の空気流過断面は、糸切れに際して繊維束が、遮断装置の運動(移動又は離間旋回運動)なしに、若しくは遮断装置のわずかな運動下で、つまり遮断装置のわずかな運動(移動又は離間旋回運動)を伴って空気通過開口部を介して吸い込まれ、かつ繊維束に太い部位の発生している場合には該太い部位(例えば縮み太り部)が空気通過開口部で止められる程度の大きさに形成されており、遮断装置は遮断機構と次のように接続されており、つまり、該遮断装置は、繊維束の、糸切れの後の太い部位の発生に際して、該太い部位により空気通過開口部の前に生じるせき止め圧及び、遮断装置に作用する戻し力に基づき(せき止め圧も戻し力も遮断装置の押圧力の方向と逆向きに作用する)、糸吸引開口部から離間する方向に運動させられるようになっている。糸切れ時に発生する太い部位は、縮み太り部のほかに、トーピード(torpedo)やスニーカー(sneaker)などとも称され、ドラフト装置のドラフト区域でのせき止め若しくは停滞によりものでもある。本発明の実施態様によれば遮断装置に、有利にはカバーフラップに若しくは前記扁平な付加部又は成形部とカバーフラップとの間の移行部領域に、殊にカバーフラップの上方の縁部に、切欠き、有利には切り込み又はノッチを設けてあり、該切欠きは糸吸引管への最小の空気通過開口部を成して、つまり画成して、即ち制限された空気流過を可能にしている、切欠きは例えばV字形に形成され、端面縁部に向かって拡大する開口部を成している。
【0020】
本発明の実施態様によれば、遮断装置は、枢着手段、つまり枢着結合部(ヒンジ継手)、殊に旋回枢着結合部(旋回式ヒンジ継手)を介して、精紡機に、有利には糸吸引管に回転可能又は旋回可能に支承(枢着)され、殊に糸吸引管に設けられた付加部又は成形部に回転可能又は旋回可能に支承(枢着)されている、本発明の有利な実施態様によれば、遮断装置のカバーフラップが、遮断装置の旋回可能な枢着のための枢着手段を備えた1つの支持アームを介して、糸吸引管に設けられた付加部又は成形部に、若しくは精紡機の別の部位に回転可能又は旋回可能に取り付けられている。付加部又は成形部は有利には糸吸引管に組み込まれた構成部分であり、例えば糸吸引管と一緒に射出成形により成形される。本発明の別の実施態様によれば、枢着手段は、環状の突起部若しくはジャーナル(ピボット又はほぞ又はピン)を含んでおり、該突起部若しくはジャーナルは、糸吸引管の支持アームの凹設部若しくは開口部に係合し、つまり入り込んでいる。逆に、凹設部若しくは開口部を糸吸引管の付加部に設けることも可能であり、この場合には支持アームの突起部が付加部の凹設部若しくは開口部に係合するようになっている。ジャーナルの代わりに一貫したピン(ロッド)、例えば金属製ピンを設け、該ピンが支持アームの耳片と糸吸引管の付加部とを結合するようにすることもできる。
【0021】
カバーフラップと糸吸引管との結合のために、旋回枢着結合部の代わりに別の構造の継手を設けることもかのうである。遮断装置は、弾性的な部材、殊にばね弾性的な部材を介して精紡機に、若しくは糸吸引管の付加部に取り付けられていてよい。弾性的な部材は、戻し力を有しており、つまり、遮断装置は弾性的な部材の弾性変形に基づき運動若しくは旋回させられるようになっている。弾性的な部材は、糸吸引管に組み込まれた構成部分であってよい。本発明の実施態様によれば、遮断装置は可撓性の支持アームを備えていてよく、該支持アームはばね弾性特性を有していて、精紡機若しくは糸吸引管に取り付けられるようになっている。
【0022】
本発明の実施態様によれば、遮断装置は、保持手段を備えており、該保持手段は、遮断装置が吸引開口部からの離間旋回時に、吸引開口部に対する所定に間隔の達成に際して該保持手段によって保持され、つまり係止され、遮断装置の引き続く離間旋回を阻止するように作用している。本発明の別の実施態様によれば、保持手段は、糸吸引管に設けられたストッパーを含んでいてよく、ストッパーが遮断装置の引き続く離間旋回を阻止するようになっている。
【0023】
糸吸引管若しくは糸吸引開口部は、有利にはドラフト装置の出口側で供給ローラ対に隣接して配置され、若しくは圧縮式精紡機の場合に、ローラ間ニップの後で圧縮区域に接続して配置されている。糸吸引開口部は糸案内に応じてローラ間ニップに向けられ、若しくは下側ローラ側にわずかにずらして配置されていてい。糸吸引開口部は有利には斜めに形成されていてよく、この場合に上側の開口縁部は下側の開口縁部に対して繊維束から離間する方向にずらされ、つまり後退させられていてよい。
【0024】
本発明の実施態様によれば、案内手段は、該案内手段に作用する押圧力を精紡運転中に遮断装置に最適に作用させるように形成されている。案内手段は、空気案内手段とも称され、流れ案内面を形成していて、案内手段における空気力式の駆動部により、つまり案内手段に作用する空気力により押圧力を形成するようになっている。このような空気力式の駆動部は、ベルヌーイの法則により理解され、案内手段の各箇所に作用する流体の異なる圧力ポテンシャルにより作動するものである。
【0025】
本発明の別の実施態様によれば、繊維束は、精紡運転中には案内手段に接触していて、該案内手段に押圧力を生ぜしめており、該案内手段は遮断装置及び、該案内手段に沿って案内される繊維束と次のように協働しており、つまり、遮断装置は繊維束からの押圧力、つまり繊維束の接触力により、糸吸引開口部の空気流過断面を減少させ又は少なくとも部分的に遮断させるために糸吸引開口部上に保持又は維持されるようになっており、さらに遮断装置は案内手段と次のように結合又は接続されており、つまり、該遮断装置は、糸切れ及び繊維束張力の消滅に際して糸吸引開口部の空気流過断面を増大するために、該遮断装置に作用する戻し力によって糸吸引開口部から離間する方向に運動又は旋回させられるようになっている。空気流過断面の増大並びに遮断装置の離間運動により、案内手段の第1の面に沿って流れる空気流は減少し、ひいては空気力式の駆動力が減少し若しくは消滅する。本発明の別の実施態様によれば、遮断装置は繊維束接触領域及びカバーフラップを含んでおり、遮断装置と繊維束接触領域は次のように形成されており、つまり、遮断装置への糸の接触力はカバーフラップの運動方向若しくは旋回方向で糸吸引管の開口部に向けられている。
【0026】
本発明の実施態様によれば、遮断装置及び糸吸引管は、従来技術に比べて減少された空気流過断面で、糸切れの後に繊維束を確実に吸い出すことができるように形成されている。吸引開口部の完全な開口断面は、いわゆる縮み太り部を吸い出す場合に必要とされる。毛虫状の縮み太り部若しくはトーピードは、繊維束に比べて嵩張っていて、重く、高い吸引出力で大きな開口断面を介して精紡部から吸い出される。
【0027】
本発明の実施態様によれば、前述の押圧力は、案内手段に作用する負圧によって生ぜしめられる。このために案内手段は、精紡部の押圧力が該案内手段に作用する負圧によって生じるように形成されており、負圧は、吸引管内の圧力(低い圧力)と、吸引管の周囲の圧力(高い圧力)との間の圧力差に依存するものである。負圧は、遮断装置が吸引開口部に対する所定の間隔を下回った場合に、遮断装置を戻し力に抗して吸引開口部に向けて引っ張り、そこに維持するように作用しており、これにより、遮断装置は吸引開口部を少なくとも部分的に覆うようになっている。案内手段はカバーフラップ自体によって形成されていてよい。カバーフラップ若しくは遮断装置は、上方若しくは側方から糸吸引開口部上に案内されるように構成されていてよく、この場合に戻し部材が設けられるようになっており、重力は戻し力として用いられなくなる。
【0028】
糸切れの後の精紡再開若しくは精紡機の始動の際に遮断装置を作動させるためには、吸引作用の生じている状態で遮断装置を、手動で若しくは吸引補助装置によって吸引管の吸引開口部上へ旋回させるだけでよい。吸引管内に生じていて遮断装置に作用する負圧により、遮断装置は吸引開口部に保持される。
【0029】
本発明の実施態様によれば、遮断装置、或いは該遮断装置に設けられるカバーフラップは次のように可動に形成されており、つまり、繊維束、空気力式の駆動部及び/又は吸引管内の負圧のみが、遮断装置を糸吸引開口部の前に保持し、若しくはそこへ案内するために、比較的わずかな押圧力を遮断装置に生ぜしめるようになっている。さらに遮断装置においては、遮断装置の重心はその回転中心点若しくは旋回中心点に対して次のように配置されており、つまり、遮断装置はできるだけ小さい糸力、空気力による小さい駆動力及び/又は負圧で糸吸引管の開口部に向けて旋回されて、位置決めされ、かつ保持されるようになっている。
【0030】
原理的には、遮断装置を永続的に作用する戻し力に抗して吸引管の前に保持又は維持するために必要な力は、糸押圧力、流体に基づく駆動力並びに吸引管内の負圧を単独に若しくは組み合わせて用いることによって生ぜしめられるようになっている。糸吸引管並びに遮断装置は、有利にはプラスチック、殊に熱可塑性のプラスチックから成っている。構成部分は、例えば射出成形法により一体構造で若しくは複数構造で製造される。遮断装置は、別の材料、例えば金属、或いはアルミニウムから製造されていてもよい。
【0031】
本発明の実施に用いられる精紡機、例えばリング精紡機は、ドラフト装置及びこれに続く加撚装置を備えた慣用のリング精紡機であってよく、或いはドラフト装置及び加撚装置、並びにその間に配置された空気力式の圧縮装置を備えたリング精紡機であってもよい。さらに精紡機は、エア精紡機、ロート形精紡機、鐘形精紡機、若しくはポット形精紡機、或いはフライヤーであってよい。さらに精紡機は長繊維用精紡機若しくは短繊維用精紡機であってよい。
【0032】
本発明において利点として、精紡部における精紡運転中に糸吸引開口部の空気流過断面は減少され若しくは閉じられる。糸切れ若しくは縮み太り部の発生した場合にようやく、カバーフラップは、縮み太り部又はトーピードが遮断装置に対して一種の楔作用若しくはせき止め作用を生ぜしめることに基づき、糸吸引開口部から離間運動させられ、空気流過断面は目標値に拡大又は増大され、その結果、吸引出力は増大される。つまり、糸切れに生じている精紡部にのみ完全な吸引出力が生ぜしめられるのに対して、正常な精紡部では吸引出力は減少されたままである。全体的には精紡過程中にわずかな吸引出力しか必要とせず、それというのは全体的に見るとわずかな数の精紡部でしか糸切れ生じていないからである。これにより、吸引装置の寸法を相応に小さくすることができ、換言すれば、吸引装置を大きな出力で設計することなく、精紡機により多くの精紡部を設けることができる。さらに、吸引通路(吸引管路)、例えば主吸引通路の寸法を、吸引出力の減少に相応して小さくすることができる。吸引装置並びに吸引通路の寸法を減少できることにより、精紡機の開発の際の構成の自由度を高めている。
【0033】
本発明のさらなる利点は、圧縮装置を備える精紡機において狭い領域に吸引装置を設けることができる。糸吸引過程中に吸引出力を減少させることができ、構成寸法を小さくすると共に、吸引作用を高めることができるようになっている。吸引装置の全出力の同じ場合には、高められた圧縮出力により、紡がれる糸の毛羽立ちをさらに減少させることができる。
【0034】
本発明は、前述の各構成を単独に用いて若しくは種々に組み合わせて実施できるものである。次に本発明を図示の実施形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の遮断機構の1つの実施形態の斜視図である。
【図2a】図1の実施形態の精紡運転中の側面図である。
【図2b】図1の実施形態の糸切れの後の側面図である。
【図2c】図1の実施形態の糸切れの後でかつ縮み太り部の発生する直前の側面図である。
【図2d】図1の実施形態の糸切れ及び縮み太り部の発生の後の側面図である。
【図3】本発明の遮断機構の別の実施形態の斜視図である。
【図4a】図3の実施形態の精紡運転中の側面図である。
【図4b】図3の実施形態の糸切れの後の側面図である。
【図5】本発明の遮断機構のさらに別の実施形態の斜視図である。
【図6】圧縮装置に設けられた本発明の遮断機構の別の実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の遮断機構のさらに別の実施形態の斜視図である。
【図8】本発明の遮断機構のさらに別の実施形態の斜視図である。
【図9】図8の実施形態の精紡運転中の側面図である。
【図10】遮断装置と糸吸引管との間の旋回枢着結合部の実施形態を示す図である。
【図11】遮断装置の別の実施形態を示す図である。
【図12】遮断装置の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1、図3及び図8に示す糸吸引管2,102,202は、舌片状の管付加部4,104,204を有しており、該管付加部(舌条片又は突起部、図示の実施形態で一体の成形部)に旋回枢着結合部5,105,205を介して遮断装置1,101,201を取り付けてある。旋回枢着結合部5,105,205は、舌片状の管付加部4,104,204に装着された2つのピンを含んでおり、該ピンは、遮断装置1,101,201に設けられかつ舌片状の管付加部4,104,204を側方から取り囲む2つの耳片6,106,206;7,107,207に形成された開口部若しくは凹設部に入り込むようになっている。ピンは、もちろん耳片6,106,206;7,107,207に設けられていてよく、この場合には、ピンの受容のための開口部若しくは凹設部を舌片状の管付加部4,104,204に設けることになる。舌片状の管付加部4,104,204は、糸吸引管2,102,202に統合された構成部分、或いは糸吸引管2,102,202に一体成形された構成部分である。
【0037】
遮断装置は、糸吸引開口部の前に位置決め可能なカバーフラップ16,116,216(図2、図4及び図9も参照)を有している。遮断装置1,101,201は、さらに案内アーム若しくは支持アーム8,108,208を含んでおり、該支持アームは、カバーフラップ16,116,216を旋回枢着結合部5,105,205に結合している。支持アーム8,108,208には、細長いばね弾性の保持部材9,109,209を取り付けてあり、該保持部材(引き留め部材又は戻り止め部材又は係止部材)はフック部10,110,210を備えている。保持部材9,109,209はそのフック部10,110,210でもって、舌片状の管付加部4,104,204の隆起した縁部20,120,220を介して該管付加部の平らな凹設部21,121,221内に入り込んで、フック係合され、つまり管付加部の隆起した縁部に引っ掛けられるようになっている。このようなフック留め装置は、遮断装置1,101,201がそのカバーフラップ16,116,216でもって糸吸引開口部3,103,203に向かって運動可能であり、かつ糸吸引開口部3,103,203から離間する方向に運動可能であるように形成されており、遮断装置1,101,201は、保持部材9,109,209の位置に依存して、糸吸引開口部3,103,203に対する所定の距離に達した場合に、ここではストッパーとして形成された隆起する縁部20,120,220に係合しているフック部10,110,210によって止められ、したがってもはや、糸吸引開口部3,103,203から重力によりさらに離されないように、つまり離間(離間旋回)されないようになっている。
【0038】
図1、図2、図4、図5、図8及び図9に示してある保持部材9,109,209及びこれと協働するストッパー20,120,220の代わりに、ストッパー及び保持部材は異なる部位に設けられていてよいものである。ストッパーは、図示を省略してあるものの、糸吸引開口部側から見て、管付加部に回動可能若しくは旋回可能に保持(枢着)された遮断装置の回動点(旋回点)の下側で、管付加部に設けられた延長部又は突出部によって形成されていてよい。つまり、管付加部を、遮断装置の回動点(旋回点)から下方へ、つまり糸吸引管から離れる方向に延在して、該延在部をストッパーとして形成し、該ストッパーに、遮断装置の離間旋回時に遮断装置の支持アームの下端部を当接させて、遮断装置の引き続く離間旋回を阻止するようになっていてよい。遮断装置は、該遮断装置が最大の旋回角度に達した際に管付加部のストッパーに接触して、もはや離間旋回させられないように、形成されかつ管付加部に取り付けられている。保持部材(保持部分)は、別の実施形態では、耳片6,106,206;7,107,207の領域で案内アーム若しくは支持アーム8,108,208自体によって形成され、若しくは耳片6,106,206;7,107,207の下側で案内アーム若しくは支持アーム8,108,208に設けられた付加部若しくは突起部によって形成されていてよい。
【0039】
カバーフラップ(フラップ状のカバー又は蓋)には、V字形の切り込み又はノッチの形で形成された空気通過開口部又は切欠き15,115,215,315(図1、図3、図8、図11)を設けてある。空気通過開口部又は切欠き15,115,215,315は、U字形に形成されていてもよい。空気通過開口部又は切欠き15,115,215,315は、カバーフラップの中央に配置してある。別の実施形態では、空気通過開口部又は切欠きは中央から外して配置されていてよい。空気通過開口部又は切欠きは、糸吸引開口部3,103,203が覆われた場合、つまり閉じられた場合でも最小の吸引作用を保証するものである。しかしながら、空気通過開口部又は切欠きは、必ずしも図示の形態の構成を有していなくてもよいものである。空気通過開口部は、例えばカバーフラップ16,116,216と糸吸引管2,102,202との間の1つのスリット開口部によって形成されていてよいものである。このような構成により、空気は側方からスリット開口部を介して吸い込まれるようになる。スリット開口部は、切欠き15,115,215,315に対して追加的に設けられていてもよいものである。
【0040】
図1及び図2に示す第1の発明の第1の実施形態では、カバーフラップ116の上方の端部に、該カバーフラップに対して所定の角度を成して舌状部分112を一体成形してあり、該舌状部分は、吸引管102から繊維束117aに向けられている。図2aは、精紡運転中の遮断装置101の位置を示している。舌状部分112は、上側の面113aと下側の面113bとを有していて、出口下側ローラ119と一緒に間隙状の通路123を画成している。遮断装置101若しくは舌状部分112は、精紡運転中に該遮断装置若しくは舌状部分と通過する繊維束117aとの接触が生じないように形成されている。
【0041】
V字形の切り込み又は切欠き115は、舌状部分112とカバーフラップ116との間の移行部領域に配置されている。さらに、舌状部分112の案内面にはV字形の凹設部126を形成してあり、該凹設部は切欠き115に向かって開いていて、かつ連続的に深くなっている。
【0042】
糸吸引開口部103をカバーフラップ116によって閉鎖若しくは覆った場合に、空気はまだ切欠き115を通して吸引されている(図2a)。このように吸い込まれる空気の一部分は、隙間状の通路123を経て切欠き115に向かって流れ(矢印111、参照)、この場合に舌状部分112の上側の面113aを擦過するようになっている。この場合に、一方で舌状部分112による側部(例えば図2aで下側)の画定、並びに他方で供給ローラ119による側部(図2aで上側)の画定に基づき、いわゆる吸引バルーン125を形成してあり、該吸引バルーンは吸引作用(吸引作用の生じる領域)を視覚的に示してものである。このような吸引バルーン(吸引作用の生じる領域)の形成により、吸引作用は、吸引空気流111を舌状部分112により追加的に画定することに基づき繊維束117a及びローラ間隙に向けて集中的に生ぜしめられるようになっている。
【0043】
舌状部分の上側の面113aと下側の面113bとの間の圧力差は駆動力を生ぜしめ、該駆動力は、遮断装置101を重力に抗して糸吸引管102に対する閉鎖位置に保つように作用している。さらに、糸吸引管102の内部の負圧と周囲圧力との間の圧力差も、糸吸引管102の保持力を生ぜしめることになる。
【0044】
図2bに示すように、糸切れの発生に際して、ドラフト装置から到来する繊維束117bの端部は、吸引空気流111により捕らえられ、切欠き(空気流過開口部)115に向けて導かれる。このような吸引過程に続いて、繊維束117bは切欠き115を通して吸引管102内に吸い込まれる。この場合に糸吸引開口部103は、遮断装置101若しくはカバーフラップ116によって実質的に閉じられたままである。
【0045】
図2c及び図2dに示してあるように、縮み太り部117Cの発生に際して、太い部位は、空気流過開口部115内への吸込に際して該空気流過開口部にせき止められ、それというのは空気流過開口部115は縮み太り部117Cに対して設計的に小さく形成されているからであり、つまり換言すれば、縮み太り部117Cは空気流過開口部115の寸法に比べて太い又は大きいからである。せき止め圧力の増大並びに重力の影響に基づき、遮断装置101は、そのカバーフラップ116と一緒に糸吸引開口部103から離れる方向に下方へ旋回(離間旋回)して、糸吸引開口部を開放するようになっている。このような旋回運動(離間旋回)は、保持部材109のフック部110が舌片状の管付加部104の隆起する縁部120と接触するまで生じるようになっている。このような構成により、縮み太り部117Cは、いまや最大の吸引出力(吸引作用)により糸吸引管102の糸吸引開口部103から吸い込まれるようになっている。図2b〜図2dには、図面の煩雑性を避けるため、つまり図面を見やすくするために、主要な構成部分のみに符号を付けてある。
【0046】
図3に示す本発明の第2の実施形態の第1の変化例によれば、V字形の切欠き15は、繊維束案内舌片(舌状部分)12とカバーフラップ16との間の移行領域に配置されている。さらに繊維束案内舌片12の案内面にV字形の凹設部26を形成してあり、該凹設部は切欠き15に向かって開いていて、かつ連続的に深くなっている。繊維束案内舌片12は、カバーフラップ16に対して所定の角度を成して該カバーフラップに配置されていて、繊維束案内縁部13を含んでいる。繊維束案内縁部13の両側に、それぞれ1つの傾斜縁部11を設けてあり、該傾斜縁部は、繊維束案内縁部13に対して斜めに、つまり所定の角度を成して延びている。糸切れの後の精紡開始に際して、繊維束17aは、側方から操作員によって、つまり手動で若しくは吸引補助装置によって傾斜縁部11を介して繊維束案内縁部13に移されて、精紡過程中には該繊維束案内縁部に沿って走行し、図4aに示してあるように、該繊維束案内縁部を介して、遮断装置1、ひいてはカバーフラップ16を糸吸引開口部3に向けて押圧している。傾斜縁部11を介して繊維束17aを案内する際に、遮断装置1は糸吸引開口部3に向けて運動させられる。
【0047】
図4aは、精紡運転中の遮断装置1の位置を示している。供給ローラ対(供給シリンダー対)18,19のローラ間ニップ(回転せき止め間隙又は作業ギャップ)を経て走行する繊維束17aは、該繊維束に生じている張力、製造する糸の紡績形状、並びに遮断装置の構成に基づき、遮断装置1の繊維束案内舌片12の繊維束案内縁部13に向けて押圧される。これにより、遮断装置1はそのカバーフラップ16と共に、旋回枢着結合部5を中心として糸吸引開口部3に向けて旋回させられて、該吸引開口部を少なくとも部分的に閉鎖するようになっている。遮断装置1の該位置は紡績過程の進行中は不変に維持される。遮断装置1は、リングレール又はリングフレームの昇降運動を伴って行われるほぼ変動のない繊維束供給に基づき往復の小さな旋回運動若しくは振動運動を生ぜしめる程度である。
【0048】
一方で繊維束案内舌片12による側部の画定、並びに他方で供給ローラ19による側部の画定に基づき、いわゆる吸引バルーン25を形成してあり、該吸引バルーンは吸引作用(吸引作用の生じる領域)を視覚的に示してものである。このような吸引バルーン(吸引作用の生じる領域)の形成により、吸引作用は、吸引空気流を繊維束案内舌片(舌状部分)12により追加的に画定することに基づき繊維束17a及びローラ間隙又はローラ間ニップに向けて集中的に生ぜしめられるようになっている。
【0049】
図4bに示すように、糸切れの発生に際して、糸張力は消滅し、遮断装置1はそのカバーフラップ16と共に重力に基づき糸吸引開口部3から離間して下方へ旋回することになる。該旋回運動は、保持部材9のフック部10が舌片状の管付加部4の隆起する縁部20と接触するまで生じるようになっている。いまや糸吸引開口部3は開放され、糸吸引管2は最大の吸引出力で、繊維束17bの生じている端部を吸い込むことができるようになっている。
【0050】
図1、図2、図3及び図4に示す実施形態は、空気力式の圧縮装置のない慣用のリング紡績機に適しており、空気力式の圧縮装置においてローラ間ニップはドラフト装置の案内ローラ対又は供給ローラ対18,19;118;119によって画定される。
【0051】
図5及び図6は、遮断機構の本発明の実施形態の第2の変化例を示している。該遮断機構は、空気力式の圧縮装置を有するリング紡績機又はリング精紡機に用いるために形成されており、圧縮装置において隣接する1つの精紡部にとって共有の1つの糸吸引管32を設けてあり、該糸吸引管は、繊維束47a,47bに向けられた区分で2つの糸吸引管部分51a,51bに分岐している。糸吸引管部分51a,51bは、それぞれ各精紡部に対応して配置されている。
【0052】
圧縮装置は、1つの下側ローラ55上に案内された穴空き(パーフォレーション付き)の圧縮ドラム54a,54bを含んでおり、該圧縮ドラムを介して圧縮すべき繊維束を案内するようになっている。圧縮ゾーンにおいて、繊維束47a,47bは、圧縮ドラム54a,54b間のドラムニップを経て走行するようになっている。ドラムニップ(回転せき止め間隙)は、圧縮ドラム54a,54bと、該各圧縮ドラムにそれぞれ接触する出口上側ローラ53a,53bとの間の締め付け線又はニップ線によって画定されている。ドラムニップは、繊維束の、精紡部から圧縮装置に向かって進行する引き込みがドラムニップで止められるように形成されている。
【0053】
各糸吸引管部分51a,51bは、それぞれ固有の糸吸引開口部33a,33bを形成しており、該糸吸引開口部は、各精紡部のローラ間ニップに向けられている。糸吸引管部分51a,51bは、斜め下方から繊維束47a,47bに向けられていてかつ該繊維束に側方から係合若しくは接触するように形成されており、糸吸引開口部33a,33bは、加撚装置からドラフト装置の方向で見て、図3及び図4の実施形態とは逆に繊維束47a,47bの前に位置している。空気力式の圧縮装置及びドラフト装置を備えるリング紡績機に設けられている糸吸引管32の前述の構成は、従来技術のものであり、例えば国際公開第03/023100号明細書に開示されており、該明細書には、ドラフト装置及びこれに続く空気圧式の圧縮装置、並びに本発明の構成部分でもある糸吸引管32の構造を詳細に説明してある。
【0054】
糸吸引開口部33a,33bの上記配置に基づき、遮断機構の構成も変更する必要がある。糸吸引管32はここでも舌片状の管付加部34を有しており、該管付加部(管成形部)は、両方の糸吸引管部分51a,51bの分岐する部位に一体成形されている。舌片状の管付加部34は、糸吸引管32内に統合された構成部分であってよく、或いは糸吸引管32の一部分であってもよいものである。つまりこの場合に、舌片状の管付加部34と糸吸引管32若しくは糸吸引管32の一部分とは、1つの部材によって成形されている。
【0055】
舌片状の管付加部34は、その自由な端部区分に、遮断装置31の回転可能な枢着のための枢着手段52を有している。複数の枢着手段52はそれぞれ1つの側方の開口部を有しており、該開口部内に、遮断装置31に設けられたピン状の成形部若しくは付加部35を係合させてあり、これにより遮断装置31を回転可能に支承してある。ピン状の成形部若しくは付加部は、管付加部34に側面に配置されていてよいものであり、この場合には管付加部に配置されたピン状の成形部若しくは付加部が、遮断装置に設けられた切欠き又は凹設部に係合され、つまり切欠き又は凹設部内に挿入されることになる。ピン状の成形部若しくは付加部の代わりに、旋回ピン(枢着ピン)を設けることも可能であり、該旋回ピンは、舌片状の管付加部34の側方の開口部又は穴にも、支持アーム38の自由な端部区分の側方の開口部又は穴にも挿入されて、両方の構成部分、つまり管付加部34と支持アーム38とを互いに回転可能に結合することになる。図示の実施形態では、遮断装置31は1つの支持アーム38を含んでおり、該支持アームの、糸吸引開口部33bに向けられた端部区分に、カバーフラップ42を一体成形してある。
【0056】
カバーフラップ42は精紡運転中には、糸吸引開口部33bの上に位置するようになっていて、切り込み又はノッチの形で形成された切欠き45を有しており、該切欠きは、糸吸引開口部の閉じられた状態でも糸吸引開口部への最小量の空気通過部又は空気流過部を形成しており、これによって、糸飛散物や汚れの吸引のための最小の吸引出力(吸引作用)を保証している。しかしながら、切欠き45は該実施形態において必須の構成要素ではない。空気通過開口部は、すでに述べてあるように、カバーフラップ42と吸引管51a,51bとの間の間隙開口部又はスリット開口部によって形成されてよいものである。このような構成により、空気は、吸引管の長手方向に対してほぼ横方向(垂直方向)から、つまり側方から間隙開口部を介して吸い込まれるようになっている。間隙開口部は、切欠き45に加えて追加的に設けられてよいものである。
【0057】
さらに保持手段62,63を設けてあり、該保持手段は、遮断装置31が吸引開口部33a,33bからの離間旋回時に、吸引開口部33a,33bに対する所定に間隔の達成に際して該保持手段62,63によって保持され、つまり係止され、換言すれば止められて、遮断装置の引き続く離間旋回を阻止するように作用している。図5及び図6は保持手段62,63の互いに異なる2つの変化例を示している。図5の保持手段62は、吸引管51a,51bに設けられた突起部62を有しており、吸引開口部33a,33bから下方へ旋回する遮断装置31が、該離間旋回過程の所定の旋回角度の達成に際して、前記突起部62と接触し、その結果、遮断装置31の引き続く離間旋回は阻止されるようになっている。
【0058】
図6に示す保持手段63は、図示のように旋回枢着結合部自体に設けられていて、かつ支持アーム38及び舌片状の管付加部34の自由な端部区分の、相対する側方のそれぞれの端面(側面)に設けられた段部によって形成されている。両方の端面の段部63は、互いに係合するようになっていて、つまり嵌合しており、吸引開口部33a,33bから下方へ旋回する遮断装置31の所定の旋回角度の達成に際して、互いに接触して、遮断装置31の引き続く旋回を阻止するように配置されている。
【0059】
精紡運転中には、繊維束47bは、遮断装置31の繊維束案内縁部43に所定の張力で接触している。この場合に繊維束案内縁部43は、カバーフラップ42の下側の縁画定部である。繊維束から成る糸の糸張力(繊維束の上記張力)により、遮断装置31のカバーフラップ42は、旋回枢着結合部35を中心とした旋回運動(回転運動)に基づき糸吸引開口部33bに向けて旋回させられて、糸張力の生じているかぎりにおいて、糸吸引開口部上に止められる。この場合に、カバーフラップ42は糸吸引開口部を少なくとも部分的に覆っており、つまり閉鎖(遮断)している。
【0060】
糸切れが発生すると、繊維束案内縁部43に作用している糸張力は消滅して、遮断装置31、ひいてはそのカバーフラップ42は重力により旋回枢着結合部35を中心として下方へ旋回運動することになる。
【0061】
精紡開始のためには、遮断装置31のカバーフラップ42は手動で若しくは補助装置によって上方に糸吸引開口部33bの前へ旋回させられ、つまり上方旋回させられ、かつ繊維束47bは側方から傾斜縁部44に沿って繊維束案内縁部43上に移されて、そこに位置決めされる。次いで、正規の精紡プロセスが導入される。傾斜縁部44に沿った繊維束47aの案内に際して、遮断装置31は糸吸引開口部33bに向けて運動(旋回)させられる。
【0062】
図5及び図6には1つの遮断装置31のみを示してある。自明であるように、図示の第2の糸吸引開口部33aのために、第1の遮断装置31に対して鏡面対称的に第2の遮断装置(図示省略)を設けてあり、該第2の遮断装置は、第1の遮断装置31と同一構造で形成されていて、ヒンジ継手又は枢着手段52によって規定される平面内に旋回可能に支承されている。
【0063】
図7は、本発明の第1の実施形態の第2の変化例を示している。この場合に遮断機構は、隣接する2つの精紡部のために、繊維束147bに向けられた区分で隣接する2つの糸吸引管部分に分岐する共有の1つの吸引管を有する空気力式の圧縮装置から成るリング紡績機に適合するように形成されている。各精紡部に対応してそれぞれ1つの糸吸引管部分151bを配置してある。該変化例の構成は、図5及び図6に示す実施形態の構成にほぼ相当するものであり、したがって、カバーフラップ142を備える遮断機構の一方の部分(半分又は対称的な一方の構成部分)のみを示してあり、他方の部分(相対する他方の構成部分)は省略してある。このことは、保持部材にも当てはまる。
【0064】
遮断装置131は、精紡運転中に該遮断装置のカバーフラップでもって、吸引開口部の上に位置し、つまり吸引開口部を覆っており、繊維束147bが図5及び図6の実施形態とは異なり該遮断装置131に接触することなく走行できるように形成されている。
【0065】
カバーフラップ142には、舌状部分160を一体成形してあり、該舌状部分はカバーフラップ142に対して所定の角度を成している。カバーフラップ142は、舌状部分160への移行部領域に、V字形の切り込み又はノッチの形の切欠き145を有している。さらに、舌状部分160の空気案内面は、漏斗状の窪みの形の凹設部161を有しており、該凹設部は、切れ込み又は切欠き145に向かって狭まっていて、かつ連続的に深くなっている。切欠き145は、糸吸引開口部の閉じられた状態でも糸吸引開口部への最小量の空気通過部又は空気流過部を形成しており、これによって、糸飛散物や汚れ及び必要に応じて糸の吸引のための最小の吸引出力(吸引作用)を保証している。
【0066】
切欠き145はここでも必須の構成要素ではない。空気通過開口部は、すでに述べてあるように、カバーフラップ142と吸引管151bとの間の間隙開口部又はスリット開口部によって形成されてよいものである。このような構成により、空気は、吸引管の長手方向に対してほぼ横方向(垂直方向)から、つまり側方から間隙開口部を介して吸い込まれるようになっている。間隙開口部は、切欠き145に加えて追加的に設けられてよいものである。
【0067】
前述の実施形態においては特徴的な構成として、遮断装置若しくはカバーフラップ142は、次のように運動可能に形成されており、つまり、糸張力によってではなく、舌状部分に形成される空気力式の駆動部及び/又は吸引管内の負圧によって、押圧力を遮断装置に生ぜしめ、該押圧力を用いてカバーフラップ142は糸吸引開口部133bの上に維持され、つまり糸吸引開口部を覆う若しくは閉鎖するようになっている。この場合に遮断装置131は同じく有利には次のように構成されており、つまり、遮断装置131の重心点は該遮断装置の旋回点に対して次のように配置されており、すなわち、カバーフラップ142は、できるだけ小さい押圧力で糸吸引開口部133b上に保たれるようになっており、しかも、糸切れの後にかつ縮み太り部(太い部位)の発生に際してカバーフラップ142は、空気通過開口部145における縮み太り部によるせき止め圧又は押し退け圧並びに重力に基づきひとりでに、糸吸引管151bの開口部から下方へ離間運動又は離間旋回するようになっている。
【0068】
第3の実施形態の図8及び図9に示す変化例においては、舌状部分若しくは繊維束案内部は設けられていない。カバーフラップ216の上方(上側)の自由な縁部には、V字形の切り込み又はノッチの形の切欠き215を設けてあり、該切欠きは、糸吸引開口部203の閉じられた状態でも最小の吸引出力(吸引作用)を保証しており、つまり所定の大きさの空気通過開口部を成している。このような構成により、吸引開口部203をカバーフラップ216によって閉鎖している場合に、空気は切欠き215を介して引き続き吸い込まれる(図9)。この場合に吸い込まれる空気211の一部分は、カバーフラップ216の外側の面に沿って流れるようになっている。このようにカバーフラップの外側の面に沿って空気を流す構成は、空気力式の駆動部を形成するものであり、該駆動部は、遮断装置201を重力に抗して、吸引管202と接する閉鎖位置に保持するようになっている。さらに、吸引管202の内部の負圧と吸引管の周囲の圧力(周囲圧力)との間の差圧力も、遮断装置202に保持力を生ぜしめるようになっている。遮断装置202若しくはカバーフラップ116は、該遮断装置若しくはカバーフラップが精紡運転中には該カバーフラップの近くを通過する繊維束217aと接触しないように形成されている。
【0069】
図8及び図9に示す遮断装置は、糸切れ及び縮み太りの発生の際の吸引開口部の開放に関して、図1及び図2a〜図2dの遮断装置と同様に作動するものである。図8及び図9に示す実施形態は、ローラ間ニップをドラフト装置の供給ローラ対又はフィードローラ対によって画定する空気力式の圧縮装置を備えることのない慣用のリング紡績機に適している。
【0070】
図10は、遮断装置の支持アーム308と糸吸引管の管付加部304との間の旋回枢着結合部305の別の実施形態を示している。糸吸引管304は、互いに離間された2つの耳片306a,306bを有しており、該耳片はそれぞれ凹設部又は穴を備えている。凹設部又は穴内に支持アーム308の突起部305を係合させてあり、該突起部は耳片の凹設部又は穴と一緒に旋回枢着結合部(旋回式枢着継手又は旋回式ヒンジ継手)305を形成している。突起部の代わりに、支持アーム308に対して実質的に横方向に、つまりほぼ垂直に延びるピンを設けることも可能である。
【0071】
図11は、凹設部326の別の実施形態を示しており、該凹設部は、吸引管301のカバーフラップ316に一体成形された舌状部分312の上側の案内面313aに成形されている。カバーフラップ316は、舌状部分312への移行部領域に、V字形の切り込み又はノッチの形で形成された切欠き315を有している。凹設部326は、切欠き315に向かって狭まる漏斗状の窪みの形状を有している。漏斗状の凹設部326は、糸切れの後に糸の把持、案内及び吸引開口部303若しくは切欠き315への吸込の改善に役立つものである。このことは、繊維束が前領域で綾振りされる場合に特に重要である。吸引された糸は、漏斗開口部の中央に向けて、ひいては切欠き315に向けて引っ張られる。さらに漏斗形状は、吸引された空気の集合、ひいては吸引開口部303若しくは切欠き315に向けられた加速に役立っている。一方で舌状部分312による側部の画定、並びに他方で供給ローラ(図示省略)による側部の画定に基づき、吸引バルーン325を形成してあり、該吸引バルーンは吸引作用(吸引作用の生じる領域)を視覚的に示してものである。このような吸引バルーンの形成により、吸引作用は、吸引空気流111(図2a、参照)を舌状部分312並びに漏斗状の凹設部326により追加的に画定することに基づき繊維束若しくはローラ間ニップ(両者とも図示省略)に向けて集中的に生ぜしめられるようになっている。図11に示す実施形態は、本発明のすべての実施形態の遮断装置に適合するものである。
【0072】
図12には、カバーフラップ416を備える遮断装置401の別の実施形態を示してある。カバーフラップ416は、吸引開口部403に向いている内側に、吸引管402の輪郭に適合された縁取り部422を有している。この例では、縁取り部422は彎曲形状又は円弧状に形成されている。縁取り部は、カバーフラップの内側(内面)に設けられた補強盛り状又はフランジ状の隆起部によって成形されている。縁取り部は、ゴムシールを備えていてよく、或いはゴムシールによって構成されていてもよいものである。このような構成により、少なくとも吸引開口部の下方の領域、有利には下方及び側方の領域が完全に気密に、若しくはほぼ気密に閉鎖され、その結果、空気は切欠き(図示省略)の近傍の上方の領域でしか吸い込まれないようになっている。図示の縁取り部422は、本発明に基づく遮断装置のすべての実施形態に適合するものである。
【符号の説明】
【0073】
1 遮断装置、 2 糸吸引管、 3 糸吸引開口部、 4 管付加部、 5 旋回枢着結合部、 6 耳片、 8 支持アーム、 9 保持部材、 10 フック部、 34 管付加部、 38 支持アーム、 42 カバーフラップ、 43 繊維束案内縁部、 62,63 保持手段、 131 遮断装置、 133b 糸吸引開口部、 142 カバーフラップ、 145 切欠き、 151b 糸吸引管、 201 遮断装置、 211 空気、 215 切欠き、 216 カバーフラップ、 301 遮断装置、 304 糸吸引管、 305 旋回枢着結合部、 306a,306b 耳片、 308 支持アーム、 315 切欠き、 316 カバーフラップ、 326 凹設部、 401 遮断装置、 403 吸引開口部、 416 カバーフラップ、 422 縁取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の精紡部を有する精紡機であって、前記精紡部はそれぞれドラフト装置及び加撚装置を含んでおり、さらに糸吸引装置を有しており、該糸吸引装置は複数の糸吸引管(2,102)を有しており、該糸吸引管はそれぞれ、糸切れの後に繊維束(17,117)の吸引のための少なくとも1つの糸吸引開口部(3,103)を備えており、該吸引開口部(3,103)は前記各精紡部に対応して配置されていて、所定の空気流過断面を有している形式のものにおいて、前記糸吸引開口部(3,103)に対応してそれぞれ1つの遮断機構を配置してあり、該遮断機構は遮断装置(1,101)を備えており、該遮断装置は、前記糸吸引開口部(3,103)に対して運動可能に配置されていて、かつ案内手段(12,112)を含んでおり、該案内手段は、精紡運転中には前記精紡部に押圧力を生ぜしめるように形成されており、前記遮断装置は、前記押圧力により、前記吸引管(2,102)の前記吸引開口部の前記空気流過断面を減少させるために、該遮断装置(1,101)に作用する戻し力に抗して前記糸吸引開口部(3,103)上に維持されるようになっていることを特徴とする、精紡機。
【請求項2】
前記案内手段(112)は、前記押圧力が、該案内手段(112)の種々の位置において、流体のベルヌーイの法則に基づき求められる種々の圧力に依存して、殊に該案内手段(112)に沿って流れる空気流(111)に基づく空気力式の駆動部(114)の圧力に依存して生じるように形成されている請求項1に記載の精紡機。
【請求項3】
前記案内手段(112)は、精紡運転中に糸吸引管(102)によって吸引されかつ又は回転する下側ローラ若しくは下側シリンダーによって連行される空気を案内するための流れ案内面(113a)を有しており、該流れ案内面は、前記遮断装置(1)において該流れ案内面に沿って流れる前記空気の空気流に基づき、前記戻し力に抗して作用する前記空気力式の駆動部(114)を形成するようになっている請求項1又は2に記載の精紡機。
【請求項4】
前記遮断装置(1,101)は、前記戻し力が該遮断装置(1,101)に作用する重力によって生ぜしめられ、若しくは戻し手段の戻し力によって生ぜしめられるように構成されて、精紡機に取り付けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項5】
前記案内手段(12,112)は、前記遮断装置(1,101)に設けられた扁平な付加部若しくは舌状部分を含んでいる請求項1から4のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項6】
前記扁平な付加部(112)は、相対する第1と第2の面(113a,113b)を有しており、前記第1の面(113a)は流れ案内面を画成しており、該流れ案内面に沿って精紡運転中には空気、殊に前記糸吸引管(102)により吸引された空気が流れるようになっている請求項5に記載の精紡機。
【請求項7】
前記付加部(112)の前記第1の面(113a)と前記精紡部の下側ローラ(119)若しくは下側シリンダーとの間に間隙状の通路(123)を画成してあり、該通路を通して前記空気が精紡運転中に前記糸吸引管(102)に向けて案内されるようになっている請求項6に記載の精紡機。
【請求項8】
前記遮断装置(1,101)は、カバーフラップ(16,116)を含んでおり、該カバーフラップによって、前記吸引管(2,102)の前記吸引開口部(3,103)の前記空気流過断面は変化されるようになっている請求項1から7のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項9】
前記扁平な付加部(12,112)は、前記カバーフラップ(16,116)に対して所定の角度を成して該カバーフラップに配置されていて、しかも前記糸吸引管から前記繊維束の方向に向けられている請求項1から8のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項10】
遮断装置(201)は、前記吸引管(202)の前記吸引開口部(203)の前記空気流過断面を変化させるためのカバーフラップ(216)を含んでおり、前記案内手段は、前記カバーフラップ(216)自体によって形成されている請求項1から4のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項11】
前記遮断装置(1,101,201)及び/又は前記糸吸引管には、精紡運転中に前記遮断装置(1,101,201)が前記糸吸引開口部(3,103,203)上に位置している場合に、前記遮断装置(1,101,201)と前記糸吸引管(2,102,202)との間に空気通過開口部(15,115,215)を画定するための手段を設けてあり、前記空気通過開口部の空気通過断面は、前記糸吸引管(2,102,202)の前記空気流過断面よりも小さくなっている請求項1から10のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項12】
前記空気流過断面は、糸切れに際して繊維束(117b)が、前記遮断装置(101)の運動なしに、若しくは該遮断装置のわずかな運動下で前記空気通過開口部(15,115,215)を介して吸い込まれ、かつ繊維束に太い部位の発生している場合には該太い部位(117C)が前記空気通過開口部(15,115,215)で止められる程度の大きさに形成されており、前記遮断装置(101)は前記遮断機構と次のように接続されており、つまり、該遮断装置(101)は、繊維束の、糸切れの後の太い部位(117C)の発生に際して、該太い部位(117C)により前記空気通過開口部(15,115,215)に生じるせき止め圧及び、前記遮断装置(101)に作用する戻し力に基づき、前記糸吸引開口部(103)から離間する方向に運動させられるようになっている請求項11に記載の精紡機。
【請求項13】
前記遮断装置(1,101,201)に、有利には前記カバーフラップ(16,116,216)に若しくは前記扁平な付加部(12,112)と前記カバーフラップ(16,116,216)との間の移行部領域に、殊に前記カバーフラップ(16,116,216)の上方の縁部に、切欠き(15,115,215)、有利には切り込み又はノッチを設けてあり、該切欠きは前記糸吸引管(2,102,202)への空気通過開口部を成している請求項11又は12に記載の精紡機。
【請求項14】
前記遮断装置(1)は、枢着結合部(5,105)、殊に旋回枢着結合部を介して、精紡機に回転可能に支承され、殊に前記糸吸引管(2,102)に設けられた付加部(4,104)に回転可能に支承されている請求項1から13のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項15】
前記遮断装置(1,101)は、カバーフラップ(16,116)を含んでおり、該カバーフラップ(16,116)は、前記遮断装置(1)の旋回可能な枢着のための枢着手段(5,105)を備えた1つの支持アーム(8,108)を介して、前記糸吸引管(2,102)に設けられた付加部(4,104)に回転可能に取り付けられ、若しくは精紡機の別の部位に回転可能に取り付けられている請求項1から14のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項16】
前記繊維束(17a)は、精紡運転中には前記案内手段(12,13)に接触していて、該案内手段に押圧力を生ぜしめており、前記案内手段(12,13)は前記遮断装置(1)及び、該案内手段(12,13)に沿って案内される前記繊維束(17a)と次のように協働しており、つまり、前記遮断装置(1)は前記繊維束(17a)からの押圧力により、前記空気流過断面を減少させるために前記糸吸引開口部(3)上に保持されるようになっており、前記遮断装置(1)は前記案内手段(12,13)と次のように結合されており、つまり、該遮断装置(1)は、糸切れ及び繊維束張力の消滅に際して前記空気流過断面を増大するために、該遮断装置(1)に作用する戻し力によって前記糸吸引開口部(3)から離間する方向に運動させられるようになっている請求項1から15のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項17】
前記案内手段(16,116)は、前記押圧力が該案内手段(16,116)に作用する負圧によって生じるように形成されており、前記負圧は、前記吸引管(2,102)内の圧力と周囲の圧力との間の圧力差に依存するものである請求項1から16のいずれか1項に記載の精紡機。
【請求項18】
前記遮断装置(1,101)は、前記吸引管(2,102)の前記吸引開口部(13,113)の空気流過断面を変化させるためのカバーフラップ(16,116)、及び精紡機に回転可能若しくは旋回可能に取り付けるための支持アーム(8,108)、並びに案内手段(12,112)、有利には精紡運転中に精紡部に押圧力を生ぜしめるための付加部を含んでいる請求項1から17のいずれか1項に記載の精紡機。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−222773(P2010−222773A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66547(P2010−66547)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】