説明

糸巻取ユニット及び糸巻取機

【課題】糸巻取機のクレードル装置のメンテナンスを簡単にする糸巻取ユニット及び糸巻取機を提供することを目的とする。
【解決手段】紡績機1は、フレーム6と、紡績糸10が巻き取られるパッケージ45を回転可能に保持するクレードルアーム71と、クレードルアーム71を駆動するエアシリンダ60,160と、エアシリンダ60,160を制御する雄コネクタ部103の電磁弁63a,64a,68aと、を有し、フレームに対しモジュールとして着脱可能であるクレードル装置100と、を備えたことを特徴とする糸巻取ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取ユニット及び糸巻取機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の紡績機が知られている。この紡績機は、パッケージを保持するクレードル装置と、当該クレードル装置のクレードルアームを駆動するエアシリンダと、圧空源から上記エアシリンダに圧縮空気を供給する供給ラインと、エアシリンダへの圧縮空気の供給を制御する制御部を備えている。上記紡績機では、例えば、クレードル装置が紡績機のフレームに設置され、エアシリンダも別途紡績機のフレームに設置された構造が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−37608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クレードル装置のメンテナンス時には、クレードル装置、エアシリンダ、及び制御部をフレームからそれぞれ取り外したり、エアシリンダに関連するエア配管を取り外したりするなど、煩雑な作業が必要となる。この種の糸巻取機にあっては、クレードル装置のメンテナンス作業を簡単にすることが望まれていた。
【0005】
本発明は、糸巻取機のクレードル装置のメンテナンスを簡単にする糸巻取ユニット及び糸巻取機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸巻取ユニットは、フレームと、紡績糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持するクレードルアームと、クレードルアームを駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を有し、フレームに対しモジュールとして着脱可能であるクレードル装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この糸巻取ユニットによれば、クレードルアームと、駆動部と、制御部と、がクレードル装置のモジュールとして纏めてフレームから着脱可能である。よって、クレードル装置のメンテナンス時には、クレードル装置の構成部品全体を一度にフレームから着脱できる。従って、クレードル装置のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0008】
また、本発明の糸巻取ユニットは、駆動部が、エアシリンダであり、フレームに設けられ、圧縮空気をエアシリンダに案内する複数の空気配管と、を更に備え、複数の空気配管は、配管群として設けられていることとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、フレームに設けられた複数の空気配管が配管群として設けられているので、糸巻取ユニット全体の構成を簡素化することができる。
【0010】
また、クレードル装置は、エアシリンダを空気配管に接続させる第1接続部を更に有し、空気配管には、第1接続部に接続される第2接続部が設けられており、第2接続部は、第1接続部が接続されている場合には空気配管からの圧縮空気を第1接続部に通過させ、第1接続部が接続されていない場合には空気配管からの圧縮空気を遮断する弁を備えたこととしてもよい。
【0011】
この構成によれば、空気配管の圧縮空気をクレードル装置に供給する構成の糸巻取ユニットにおいても、第1及び第2接続部の接続によってエアシリンダ用の圧縮空気路を接続することができ、クレードル装置の着脱を容易に行うことができる。また、クレードル装置の第1接続部を第2接続部から取り外した場合に、空気配管からの圧縮空気の漏洩を防止することができる。
【0012】
また、クレードルアームは、パッケージを挟んで保持する2つの挟持アームと、挟持アームのパッケージ挟持位置に取り付けられパッケージを回転可能にして、挟持アームに挟持させるためのパッケージ保持部と、を有し、各クレードル装置は、クレードルアームを回動可能にする回動軸と、回動軸を支持すると共に駆動部を支持し、フレームに固定される支持部と、挟持アームの一方を、パッケージを保持する保持位置と、パッケージを解放する解放位置と、の間で移動させて、クレードルアームを開閉する開閉軸と、を有し、開閉軸は、回動軸に対して、パッケージ保持部とは反対側に位置することとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、パッケージ保持部と開閉軸とが離れたところに位置することになる。これにより、パッケージの幅が変更になったとしても、両方の挟持アームが平行に近い状態でパッケージを挟んで保持することができる。
【0014】
また、クレードル装置は、クレードルアームを回動可能に支持しフレームに固定される支持部と、支持部に対してクレードルアームを回動させる駆動部と、を備え、駆動部は、支持部に対してクレードルアームの所定の力点を変位させクレードルアームを回動させる第1駆動装置と、支持部に対して第1駆動装置を移動させることにより力点を変位させてクレードルアームを回動させる第2駆動装置と、を有し、第2駆動装置による力点の変位量は、第1駆動装置による力点の変位量よりも大きいこととしてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1駆動装置によってクレードルアームの力点を変位させてクレードルアームを回動させることができる。また、第2駆動装置によってクレードルアームの力点をより大きく変位させクレードルアームを更に大きい角度で回動させることもできる。このように、第1駆動装置及び第2駆動装置を使い分けクレードルアームを異なる可動幅で回動させることができる。
【0016】
本発明の糸巻取機は、フレームと、紡績糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持するクレードルアームと、クレードルアームを駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、を有し、フレームに対し個別にモジュールとして着脱可能である複数のクレードル装置と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この糸巻取機によれば、クレードルアームと、駆動部と、制御部と、がクレードル装置のモジュールとして纏めてフレームから着脱可能である。よって、各クレードル装置のメンテナンス時には、クレードル装置の構成部品全体を一度にフレームから着脱できる。従って、クレードル装置のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0018】
また、本発明の糸巻取機は、駆動部が、エアシリンダであり、各クレードル装置のエアシリンダに圧縮空気を供給する圧空源と、フレームに設けられ、圧空源から供給される圧縮空気を各クレードル装置のエアシリンダに案内する複数の空気配管と、を更に備え、複数の空気配管は、配管群として設けられていることとしてもよい。
【0019】
この構成によれば、フレームに設けられた複数の空気配管が配管群として設けられているので、糸巻取機全体の構成を簡素化することができる。
【0020】
また、各クレードル装置は、エアシリンダを空気配管に接続させる第1接続部を更に有し、空気配管には、各クレードル装置の第1接続部に接続される複数の第2接続部が設けられており、第2接続部は、第1接続部が接続されている場合には空気配管からの圧縮空気を第1接続部に通過させ、第1接続部が接続されていない場合には空気配管からの圧縮空気を遮断する弁を備えたこととしてもよい。
【0021】
この構成によれば、空気配管の圧縮空気を各クレードル装置に供給する構成の糸巻取機においても、第1及び第2接続部の接続によってエアシリンダ用の圧縮空気路を接続することができ、クレードル装置の着脱を容易に行うことができる。また、複数のうち一部のクレードル装置で第1接続部を第2接続部から取り外した場合にも、当該第2接続部では空気配管からの圧縮空気が遮断されるので、他のクレードル装置への圧縮空気の供給には影響がない。よって、一部のクレードル装置のメンテナンス時においても、他のクレードル装置では糸巻取作業を継続することができる。
【0022】
また、クレードルアームは、クレードルアームは、パッケージを挟んで保持する2つの挟持アームと、挟持アームのパッケージ挟持位置に取り付けられパッケージを回転可能にして挟持アームに挟持させるためのパッケージ保持部と、を有し、各クレードル装置は、クレードルアームを回動可能にする回動軸と、回動軸を支持すると共に駆動部を支持し、フレームに固定される支持部と、挟持アームの一方を、パッケージを保持する保持位置と、パッケージを解放する解放位置と、の間で移動させて、クレードルアームを開閉する開閉軸と、を有し、開閉軸は、回動軸に対して、パッケージ保持部とは反対側に位置することとしてもよい。
【0023】
この構成によれば、パッケージ保持部と開閉軸とが離れたところに位置することになる。これにより、パッケージの幅が変更になったとしても、両方の挟持アームが平行に近い状態でパッケージを挟んで保持することができる。
【0024】
また、本発明の糸巻取機は、クレードル装置に対してパッケージの玉揚作業を行う玉揚装置を更に備え、玉揚装置は、クレードルアームの開閉を行うクレードル操作部を有していることとしてもよい。
【0025】
この構成によれば、玉揚装置のクレードル操作部により,クレードルアームの開閉が行われるので、玉揚作業の作業性が向上する。
【0026】
また、本発明の糸巻取機は、繊維束をドラフトするドラフト装置と、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を旋回気流で紡績する空気紡績装置と、を更に備えたこととしてもよい。
【0027】
本発明によれば、空気紡績装置を備えた糸巻取機において、クレードル装置のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0028】
また、各クレードル装置は、クレードルアームを回動可能に支持しフレームに固定される支持部と、支持部に対してクレードルアームを回動させる駆動部と、を備え、駆動部は、支持部に対してクレードルアームの所定の力点を変位させクレードルアームを回動させる第1駆動装置と、支持部に対して第1駆動装置を移動させることにより力点を変位させてクレードルアームを回動させる第2駆動装置と、を有し、第2駆動装置による力点の変位量は、第1駆動装置による力点の変位量よりも大きいこととしてもよい。
【0029】
この構成によれば、第1駆動装置によってクレードルアームの力点を変位させてクレードルアームを回動させることができる。また、第2駆動装置によってクレードルアームの力点をより大きく変位させクレードルアームを更に大きい角度で回動させることもできる。このように、第1駆動装置及び第2駆動装置を使い分けクレードルアームを異なる可動幅で回動させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、糸巻取機のクレードル装置のメンテナンスを簡単にする糸巻取ユニット及び糸巻取機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る紡績機の正面図である。
【図2】図1の紡績機の紡績ユニットの側面図である。
【図3】クレードルアームを駆動する圧縮空気の供給経路を示すブロック図である。
【図4】図1の紡績機の玉揚装置の側面図である。
【図5】紡績ユニットのクレードル装置及びフレームを示す斜視図である。
【図6】紡績ユニットのクレードル装置及びフレームを示す側面図である。
【図7】紡績ユニットのクレードル装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態に係る紡績機(糸巻取機)について、図1から図4を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は紡績機1の全体的な構成を示した正面図である。図2は紡績機1が備える紡績ユニット2の側面図である。図4は、紡績機1の玉揚台車4を示す側面図である。
【0033】
図1に示す紡績機1は、並べて配置された多数の紡績ユニット(糸巻取ユニット)2を備えている。また、この紡績機1は、糸継台車3と、玉揚台車4と、ブロアボックス93と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0034】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、空気紡績装置9と、糸貯留装置12と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は紡績機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を空気紡績装置9で紡績する。空気紡績装置9で生成された紡績糸10は、糸貯留ローラ21を経由して巻取装置13によって巻き取られ、これによりパッケージ45が形成される。以下では、ボビン48(後述)と、当該ボビン48に巻かれた紡績糸10の糸層と、を合わせたものをパッケージ45と呼ぶ。なお、図1等に示すとおり、本実施形態では、紡績ユニット2が、円筒形状のボビン48を用いて円筒形状のパッケージ(チーズパッケージ)45を形成しているが、円錐形状のボビンを用いて円錐形状のパッケージ(コーンパッケージ)を形成することもできる。
【0035】
ドラフト装置7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図2に示すように、バックローラ対16、サードローラ対17、エプロンベルト18を装架したミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。各ローラ対16,17,19,20のボトムローラは、原動機ボックス5からの動力、又はそれぞれの紡績ユニット2に配置された図示しない電動モータの動力により駆動される。各ローラ対16,17,19,20は、回転速度を異ならせて駆動され、この結果、上流側から供給されたスライバ15を延伸して繊維束8にし、下流側の空気紡績装置9に送ることができる。
【0036】
空気紡績装置9は、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する。空気紡績装置9は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置7から送られた繊維束8を、空気紡績装置9の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束8の経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束8の繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸10を紡績室から空気紡績装置9の外部へと案内する。この空気紡績装置9の駆動及び停止は不図示のユニットコントローラによって制御されている。
【0037】
空気紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、糸貯留ローラ21と、糸掛け部材22と、上流側ガイド23と、電動モータ25と、下流側ガイド26と、貯留量センサ27と、を備えている。
【0038】
糸掛け部材22は、紡績糸10に係合する(引っ掛ける)ことが可能に構成されており、紡績糸10に係合した状態で糸貯留ローラ21と一体的に回転することで、当該糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10を案内できるように構成されている。なお、糸掛け部材22は、糸貯留ローラ21に対して相対回転可能に支持されている。また、糸貯留装置12は、例えば磁気的手段等からなるトルク発生手段(不図示)により、糸掛け部材22が糸貯留ローラ21に対し相対回転するのに抗するトルクが発生するように構成されている。この抵抗トルクにより、糸掛け部材22は糸貯留ローラ21の回転に追従して回転し、結果として両者が一体的に回転できるように構成されている。一方、この抵抗トルクに打ち勝つような力が糸掛け部材22に加わった場合は、糸掛け部材22は糸貯留ローラ21に対して相対的に回転することができる。
【0039】
糸貯留ローラ21は、その外周面に紡績糸10を巻き付けて貯留できるように構成されている。また、糸貯留ローラ21は、ユニットコントローラによって制御されている電動モータ25によって一定の回転速度で回転駆動される。この構成で、糸掛け部材22によって糸貯留ローラ21の外周面に案内された紡績糸10は、糸貯留ローラ21が回転することにより当該糸貯留ローラ21を締め付けるようにして巻かれ、糸貯留装置12よりも上流側の紡績糸10を引っ張る。これにより、空気紡績装置9から紡績糸10を連続的に引き出すことができる。
【0040】
また、糸貯留ローラ21上の紡績糸10が一定量以上になれば、糸貯留ローラ21と紡績糸10との間の接触面積が大きくなり、スリップ等が殆ど発生しない。従って、前記一定量以上の紡績糸10が糸貯留ローラ21上に巻かれた状態で当該糸貯留ローラ21を回転駆動することにより、スリップ等を発生させることなく、空気紡績装置9から紡績糸10を安定した速度で引き出すことができる。
【0041】
貯留量センサ27は、糸貯留ローラ21に巻き付いている紡績糸10の貯留量を非接触式で検出し、ユニットコントローラに送信するように構成されている。
【0042】
上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21のやや上流側に配置されている。この上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21の外周面に対して紡績糸10を適切に案内する案内部材として構成されるとともに、空気紡績装置9から伝播してくる紡績糸10の撚りが当該上流側ガイド23よりも下流側に伝わることを防止する撚り止めの役割を兼ねている。
【0043】
下流側ガイド26は、糸貯留ローラ21のやや下流側に配置されている。この下流側ガイド26は、回転する糸掛け部材22によって振り回される紡績糸10の軌道を規制し、これより下流側の紡績糸10の走行経路を安定させて紡績糸10を案内する案内部材として構成されている。
【0044】
紡績機1のフレーム6の前面側であって空気紡績装置9と前記糸貯留装置12との間の位置には、ヤーンクリアラ(糸欠陥検出装置)52が設けられている。そして、空気紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するようになっている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さを監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニットコントローラへ送信する。なお、ヤーンクリアラ52は、紡績糸10の太さの糸欠点に加えて、紡績糸10に含まれる異物の有無を検出するように構成されていてもよい。
【0045】
上記ユニットコントローラは、糸欠点検出信号を受信すると、直ちに、空気紡績装置9の旋回気流発生ノズルからの圧空の噴出を停止させる。これにより、旋回気流が停止して繊維束8の加撚が停止すると共に空気紡績装置9への繊維束8の導入も停止する。そして、空気紡績装置9において繊維の連続状態が分断され、紡績糸10が切断される。その後、ユニットコントローラは、更にドラフト装置7等を停止させる。また、ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、当該紡績ユニット2の前まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、空気紡績装置9等を再び駆動し、前記糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させるようになっている。このとき、糸貯留装置12は、空気紡績装置9が紡績を再開してから巻取りが再開されるまでの間、空気紡績装置9から連続的に送出される紡績糸10を糸貯留ローラ21に滞留させて紡績糸10の弛みを取る。
【0046】
巻取装置13は、クレードルアーム71と、巻取ドラム72と、トラバース装置75とを備えている。
【0047】
巻取ドラム72は、ボビン48に紡績糸10を巻き付けて形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。また、トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。この構成で、巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつパッケージ45を巻き取るようになっている。
【0048】
図2に示すように、クレードルアーム71は、紡績糸10を巻き取るためのボビン48を回転可能に支持できるように構成されるとともに、支軸(回動軸)70のまわりに回動可能に支持されている。これにより、紡績糸10が巻かれることによりパッケージ45の糸層径が増大しても、クレードルアーム71が回動することにより当該糸層径の増大を吸収し、前記パッケージ45の表面を巻取ドラム72に対して適切に接触させ続けることができる。
【0049】
また、このクレードルアーム71には、エアシリンダ(駆動部、第1駆動装置)60が接続されている。このエアシリンダ60は複動形空気圧シリンダとして構成され、ピストンロッド61と、当該ピストンロッド61に固定されたピストン62と、接圧ポート63と、逆圧ポート64と、を主要な構成として備えている。エアシリンダ60は、当該エアシリンダ60が備えるシリンダケース内に、接圧ポート63及び逆圧ポート64から空気を供給できるように構成されている。そして、接圧ポート63側と逆圧ポート64側に供給する空気の空気圧に差があると、空気がピストン62を押してピストンロッド61を駆動するように構成されている。ピストンロッド61が上方に押されると、クレードルアーム71が支軸(回動軸)70を中心として紡績ユニット2の正面側(図2の左方向)に回動し、パッケージ45が巻取ドラム72から離間する方向に移動する。一方、ピストンロッド61が下方に押されると、クレードルアーム71が支軸70を中心として紡績ユニット2の背面側(図2の右方向)に回動し、パッケージ45が巻取ドラム72に押し当てられる。なお、図2は、紡績ユニット2の構成を説明するための側面図であり、クレードル装置100のフレーム6への取り付けに関しては、模式的に簡略して図示している。クレードル装置100の構成は、図5〜図7に示すとおりである。
【0050】
図3に示すように、接圧ポート63は、ブロアボックス93内に設けられた接圧用圧空源65に接続されており、逆圧ポート64は減圧弁67を介して接圧用圧空源65に接続されている。なお、接圧ポート63と接圧用圧空源65との間には電磁弁(制御部)63aが配置されており、ユニットコントローラの制御により、接圧ポート63に空気圧を供給するか否かを切り替えることができるように構成されている。また、逆圧ポート64と減圧弁67との間には電磁弁(制御部)64aが配置されており、ユニットコントローラの制御により、逆圧ポート64に空気圧を供給するか否かを切り替えることができるように構成されている。
【0051】
更に、エアシリンダ60には、ピストンロッド61を僅かに上方に駆動するために、圧縮空気を供給するリフタポート68が、逆圧ポート64とは別に設けられている。リフタポート68はリフタ用圧空源69に接続されている。リフタポート68からの圧縮空気がリフタポート68に供給されると、ピストンロッド61が僅かに上方に押され、パッケージ45を巻取ドラム72から僅かに離間させることができる。このようなパッケージ45の駆動は、紡績糸10の巻取速度を微調整して糸貯留装置12の紡績糸10の貯留量を調整することに用いられる。リフタポート68とリフタ用圧空源69との間には電磁弁(制御部)68aが配置されており、ユニットコントローラの制御により、リフタポート68に空気圧を供給するか否かを切り替えることができるように構成されている。
【0052】
詳細は後述するが、エアシリンダ60への各圧縮空気の供給路は、雄コネクタ部103と雌コネクタ部107とにより接続されている。雄コネクタ部103には、前述の電磁弁68a,63a,64aが設けられており、雌コネクタ部107には、後述する弁107bが設けられている。
【0053】
糸継台車3は、図2に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、ユニットコントローラからの制御信号により、フレーム6に固定されたレール41(図1参照)上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止して糸継ぎを行う。
【0054】
サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、空気紡績装置9から送り出される糸端(上糸)を吸い込みつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動可能であり、巻取装置13に支持されたパッケージ45から糸端(下糸)を吸引しつつ捕捉して、スプライサ43へ案内できるように構成されている。スプライサ43の詳細な構成については省略するが、旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせることにより、上糸と下糸とを糸継ぎするように構成されている。
【0055】
図4に示すように、玉揚台車4は、玉揚装置59を備える。この玉揚装置59は、クレードルアーム71にボビン48を供給して紡績糸10の巻取の準備を行うボビンセット作業と、満巻になったパッケージ45をクレードルアーム71から取り外す玉揚作業と、を行う。玉揚台車4は、その下部に走行輪92を備えており、ある紡績ユニット2に対してボビンセット作業又は玉揚作業を行う旨の指示を受けると、フレーム6に形成された走行路91上を当該紡績ユニット2まで走行する、そして、玉揚台車4は、指示を受けた紡績ユニット2の前で停止し、ボビンセット作業又は玉揚作業(又はその両方の作業)を行う。
【0056】
玉揚装置59は、上記ボビンセット作業を行うための構成として、ボビン供給部50と、サクションパイプ88と、クレードル操作アーム(クレードル操作部)89と、を備えている。サクションパイプ88は、回動可能かつ伸縮可能に構成されており、空気紡績装置9から排出される紡績糸10を吸引することで捕捉し、この捕捉した紡績糸10を巻取装置13まで案内するものである。
【0057】
ボビン供給部50は、回動軸50aを中心として回動可能に構成されるとともに、ボビン把持部51によってボビン48を把持可能に構成されている。この構成により、玉揚装置59は、ボビン48を把持させた状態でボビン供給部50を回動させて、クレードルアーム71が備える一対のボビンホルダ105の間の位置に当該ボビン48を供給することができる。ボビン供給部50は、バンチ巻きを行うためのバンチ巻きローラ53を備えている。バンチ巻きとは、紡績糸10をボビン48に固定するために、ボビン48の周囲に紡績糸10を棒巻きすることをいう。
【0058】
クレードル操作アーム89は、ボビンセット作業及び玉揚作業において、クレードルアーム71にボビン48又はパッケージ45を着脱するために、クレードルアーム71を開閉する操作を行う。クレードル操作アーム89が、クレードルアーム71の操作レバー71dを押すことで、クレードルアーム71が開いた状態となり、クレードルアーム71からボビン48又はパッケージ45を取り外すことができる。また、クレードル操作アーム89が、操作レバー71dを解放することでクレードルアーム71が閉じた状態に復帰する。クレードルアーム71が閉じた状態では、クレードルアーム71は、ボビン48又はパッケージ45を保持し、回転可能に支持する。
【0059】
なお、ボビンセット作業時と、玉揚作業時とでは、パッケージ45の巻き太り分に起因してクレードルアーム71の姿勢が異なる。これに対し、クレードル操作アーム89は、図略のカム機構等によりその位置をクレードルアーム71の位置に応じて変更することが可能に構成されている。
【0060】
更に、玉揚装置59は、案内部58を備えている。案内部58は支軸58aを中心として回動し、クレードルアーム71から受け取った満巻のパッケージ45をパッケージ受け部84に案内する。パッケージ受け部84は、パッケージ45を転がして移動させる傾斜部81と、転がされたパッケージ45が一時的に載置される載置部82と、で構成されている。載置部82は、コンベアとしての機能を有しており、紡績ユニット2の配列方向にパッケージ45を搬送し、次工程に引き渡す。
【0061】
続いて、前述の巻取装置13について図2及び図5〜図7を参照しながら詳細に説明する。以下では、図5〜図7に示すような状態のクレードル装置100の上下関係に基づいて、各部の位置関係の説明に「上」、「下」の概念を含む語を用いる場合がある。また、各部の位置関係の説明に「前」、「後」の概念を含む語を用いる場合には、紡績機1の正面側(図6の左側)を「前」とし、紡績機の背面側(図6の右側)を「後」とする。
【0062】
巻取装置13は、パッケージ45を保持するクレードル装置100を備えている。クレードル装置100は、フレーム6に固定される支脚部(支持部)101と、支脚部101に対して前後に回動可能な前述のクレードルアーム71と、クレードルアーム71を回動させる前述のエアシリンダ60と、他のリフトアップ用エアシリンダ(駆動部、第2駆動装置)160と、を備えている。更にクレードル装置100は、エアシリンダ60に供給される圧縮空気の流路と、エアシリンダ160に供給される圧縮空気の流路と、をフレーム6側の流路に接続する雄コネクタ部103を備えている。クレードル装置100は、支脚部101と、クレードルアーム71と、エアシリンダ60と、リフトアップ用エアシリンダ160と、雄コネクタ部103と、をモジュールとして一体に組み立てた組立体である。クレードル装置100は、フレーム6に対しモジュールとして一塊で着脱可能である。なお、クレードル装置100は、雄コネクタ部103とエアシリンダ60の各ポートとを接続する圧縮空気配管用チューブと、雄コネクタ部103とリフトアップ用エアシリンダ160のポートとを接続する圧縮空気配管用チューブとを有するが、これらの圧縮空気配管用チューブの図示は省略している。
【0063】
支脚部101は、巻取ドラム72の下方に位置するフレーム6の水平面6a及び鉛直面6bに固定される。支脚部101は水平面6aに設けられた係止部材6cに係合する係合溝101aを有している。係合溝101aを係止部材6cに係合させることにより、フレーム6に対するクレードル装置100の位置決めがなされる。更に、支脚部101に設けられたネジ止め部101bにおいてクレードル装置100が鉛直面6bにネジ止めされることで、クレードル装置100がフレーム6に対し着脱可能に取り付けられる。
【0064】
クレードルアーム71は、支軸70において支脚部101に取り付けられ、支脚部101に対して支軸70周りに回動可能に支持されている。支脚部101の下部プレート部102には、厚み方向(紡績ユニット2の配置方向)に貫通された回転軸161aをもつ回転リンク161が設けられている。回転軸161aから回転径方向に離れた位置において、回転リンク161とエアシリンダ60のシリンダケースの下端部60aとが連結されている。エアシリンダ60のピストンロッド61の先端61aは、クレードルアーム71から後方に延びるプレート71fの後端部に位置する力点71hに連結されている。エアシリンダ160は、下部プレート部102を挟んでエアシリンダ60の反対側に配置されている。回転軸161aから回転径方向に離れた位置において、回転リンク161とエアシリンダ160のピストンロッドの先端160aとが連結されている。エアシリンダ160のシリンダケースの上端160bは、下部プレート部102に連結される。
【0065】
この構成に基づき、エアシリンダ160に圧縮空気が供給されピストンロッドがシリンダケースに引き込まれると、回転リンク161が回転軸161a周りに、図6の反時計回りに回転する。それに伴い、回転リンク161によって、エアシリンダ60の下端部60aが押し上げられる。これにより、エアシリンダ60全体が比較的大きいスロトークで上方に押し上げられる。その結果、図7に二点鎖線で示すように、力点71hが斜め上方に変位し、クレードルアーム71が前方(図7の左方向)に回動する。そうすると、パッケージ45が、比較的大きい間隙で巻取ドラム72から離間する。
【0066】
図2の説明において既に述べた通り、エアシリンダ60の駆動によっても力点71hが押し上げられ、クレードルアーム71が前方に回動する。これに対し、上記のようにエアシリンダ160が駆動された場合には、エアシリンダ60の駆動時よりも更に大きく力点71hが変位し、更に大きい角度でクレードルアーム71が前方に回動するように設定されている。従って、エアシリンダ160によるクレードルアーム71の駆動は、例えば、玉揚作業時にパッケージ45を巻取ドラム72から大きく引き離すときに行われる。なお、エアシリンダ160のポートには、電磁弁63a,64a,68a何れかからの圧縮空気が供給される。以上のように、クレードルアーム71の駆動源として2つのエアシリンダ60とリフトアップ用エアシリンダ160とを使い分けることにより、目的に応じた2種類の可動幅でクレードルアーム71を回動させることができる。
【0067】
クレードルアーム71は、互いに略平行に延在しパッケージ45を挟み込んで保持する2本の挟持アーム71aと挟持アーム71bとを有している。挟持アーム71aと挟持アーム71bとのパッケージ挟持位置には、それぞれ互いに対面する位置に、ボビンホルダ(パッケージ保持部)105が設けられている。一方のボビンホルダ105は、ベアリングを介して挟持アーム71aに回転可能に支持されている。他方のボビンホルダ105は、ベアリングを介して挟持アーム71bに回転可能に支持されている。対面する2つのボビンホルダ105は、それぞれ、パッケージ45のボビン48の両端部に接触し、パッケージ45を挟み込んで把持する。パッケージ45は、2つのボビンホルダ105と一体になって、巻取ドラム72の駆動力により、クレードルアーム71に対し回転する。
【0068】
挟持アーム71aは、他方の挟持アーム71bに対し開閉軸71cで軸支されており、挟持アーム71aは、挟持アーム71bに対して接近又は離間するように、開閉軸71c周りに回動可能である。挟持アーム71aは、図示しない内蔵バネによって挟持アーム71bに接近する方句に付勢されている。開閉軸71cは、支軸70から見てボビンホルダ105とは反対側の位置に設けられている。すなわち、開閉軸71cは支軸70よりも下方に位置し、ボビンホルダ105は支軸70よりも上方に位置する。
【0069】
挟持アーム71aの上端部には、ボビンホルダ105の位置から更に上方に延びる操作レバー71dが取り付けられている。操作レバー71dは、前述した玉揚装置59のクレードル操作アーム89(図4参照)によって操作される。
【0070】
玉揚作業においては、図7に示すように、操作レバー71dが、クレードル操作アーム89(図4参照)により挟持アーム71bから離れる方向に押されると、内蔵バネの付勢力に逆らって挟持アーム71aが開閉軸71cを中心に回動し、挟持アーム71aは解放位置P2に移動する。そうすると、ボビンホルダ105同士が離れることにより、パッケージ45が解放され、クレードルアーム71からパッケージ45が離脱する。ボビンセット作業では、操作レバー71dを挟持アーム71bから離れる方向に押した後、ボビン供給部50がボビン48を所定位置に供給し、クレードル操作アーム89が操作レバー71dを解放する。そうすると、挟持アーム71aは、上記内蔵バネの付勢力により保持位置P1に復帰し、ボビン48がボビンホルダ105同士の間に挟み込まれ保持される。
【0071】
雄コネクタ部103は、フレーム6の鉛直面6bに対面するように支脚部101の下部プレート部102に設けられている。雄コネクタ部103は、図示しない圧縮空気配管用チューブを介してエアシリンダ60の各ポート63,64,68に接続されている。雄コネクタ部103は、前述の電磁弁63a,64a,68a(図2参照)を有している。ユニットコントローラからの制御信号に従って各ポート63,64,68への圧縮空気の供給を制御することで、エアシリンダ60の動作が制御される。更に、雄コネクタ部103は、各電磁弁63a,64a,68aに対応して設けられ、フレーム6側に向けて突出する3つの接続口103aを有している。接続口103aは、フレーム6側に設けられた雌コネクタ部107(後述する)の接続口107aに挿入される。
【0072】
フレーム6の鉛直面6bには、上記雄コネクタ部103に対応する位置に雌コネクタ部107が設けられている。雌コネクタ部107は、3つの各接続口103aがそれぞれ挿入される3つの接続口107aを有している。雌コネクタ部107は、3つの接続口107aを有する一部品として形成されている。
【0073】
更にフレーム6内には、リフタ用圧空源69と1つの接続口107aとを接続する圧空配管L69と、接圧用圧空源65と他の接続口107aとを接続する圧空配管L65と、減圧弁67と更に他の接続口107aとを接続する圧空配管L67と、が敷設されている。具体的には、フレーム6の内壁には、紡績ユニット2の配列方向に延在する配管ユニット109が取り付けられている。上記の圧空配管L65,L67,L69は、配管ユニット109内で当該配管ユニット109の延在方向に延びる平行な3本の中空孔として構成されている。この構成により、3本の圧空配管L65,L67,L69が配管群として設けられている。
【0074】
1つの配管ユニット109は複数の紡績ユニット2に亘って延在しており、紡績機1全体では数箇所の連結部分において配管ユニット109同士が連結されている。上記連結部分において隣接する圧空配管L65,L67,L69同士は、それぞれ、伸縮可能な伸縮パイプ(図示せず)で接続される。この伸縮パイプの両端には差込口が設けられており、当該差込口は、圧空配管L65,L67,L69の端部の開口に工具を用いずに着脱可能に構成されている。この伸縮パイプを介して隣接する圧空配管L65,L67,L69同士が連続して連結され、圧空配管L65,L67,L69は、複数の紡績ユニット2に対する圧縮空気供給に用いられる。上記の伸縮パイプを用いることで、工具なしで各配管ユニット109の圧空配管L65,L67,L69同士を接続することができ、狭い場所でも効率良く作業ができる。なお、配管ユニット109は、各紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。
【0075】
クレードル装置100がフレーム6に取り付けられた状態では、上記雄コネクタ部103の各接続口103aが雌コネクタ部107の各接続口107aに差し込まれる。これにより、フレーム6側の各圧空配管L65,L67,L69が、対応するエアシリンダ60のポート又はリフトアップ用エアシリンダ160のポートに接続される。雌コネクタ部107の各接続口107aには、雄コネクタ部103が取り外された場合に圧縮空気の漏洩を防止するための弁107b(図2参照)が設けられている。
【0076】
弁107bは、圧縮空気の流路上で圧空配管L65,L67,L69側から接続口107aに向けて付勢された弁体(図示せず)を有している。雌コネクタ部107に雄コネクタ部103が接続されていない状態では、上記弁体が接続口107a側に密着し接続口107aを閉塞することにより、圧空配管L65,L67,L69が外部から遮断される。雌コネクタ部107に雄コネクタ部103が接続されると、接続口107aに挿入される雄コネクタ部103の接続口103aが上記弁体を押し込むことで空気の流路が形成され、圧空配管L65,L67,L69が雄コネクタ部103側に連通される。
【0077】
弁107bの具体例として、チェック弁が挙げられる。なお、チェック弁とは、流体の配管に取り付け流体の逆流を禁止するためのデバイスである。但し、チェック弁は弁107bの一例であって、エア漏れを防止するシャッタ等を圧空配管L65,L67,L69側に設けて、チェック弁の機能を実現しても良い。
【0078】
上記の弁107bの機能により、雌コネクタ部107に雄コネクタ部103が接続されている場合には、弁107bが開き、各圧空配管L65,L67,L69からの圧縮空気を雄コネクタ部103側に通過させる。雌コネクタ部107から雄コネクタ部103が取り外されている場合には、弁107bが閉じ、各圧空配管L65,L67,L69からの圧縮空気が外部に漏洩しないように遮断される。この構成により、ある紡績ユニット2のクレードル装置100をフレーム6から取り外した場合にも、圧空配管L65,L67,L69から圧縮空気が漏洩しないので、他の紡績ユニット2の運転は停止する必要がない。なお、このクレードル装置100は、3本の圧空配管L65,L67,L69から圧縮空気供給を受けているが、2本又は4本以上の圧空配管から圧縮空気供給を受ける場合にも同様の構成が可能である。
【0079】
続いて、上述の紡績ユニット2及び紡績機1による作用効果について説明する。
【0080】
紡績ユニット2では、クレードル装置100がモジュールとして纏めてフレーム6から着脱可能である。よって、クレードル装置100のメンテナンス時には、クレードル装置100の構成部品全体を一度にフレーム6から着脱できる。従って、クレードル装置100のメンテナンスを簡単に行うことができる。更に、フレーム6に設けられた圧空配管L65,L67,L69も配管群として設けられているので、紡績ユニット2全体及び紡績機1全体の構成を簡素化することができる。
【0081】
クレードル装置100の雄コネクタ部103と、フレーム6の雌コネクタ部107とで圧縮空気路を接続することができるので、チューブの着脱等の煩雑な作業が発生せず、クレードル装置100の着脱を容易に行うことができる。また、紡績機1が備える複数のクレードル装置100は、モジュールとして個別にフレーム6から取り外すことができる。複数のクレードル装置100のうちの一部を取り外した場合にも、雌コネクタ部107の弁107bにより圧空配管L65,L67,L69から外部への圧縮空気が遮断されるので、他のクレードル装置100への圧縮空気の供給状態にはほとんど影響が出ない。よって、一部のクレードル装置100のメンテナンス時においても、他のクレードル装置100では糸巻取作業を継続することができる。
【0082】
クレードル装置100のクレードルアーム71の開閉を行うための開閉軸71cは、クレードルアーム71の支軸70よりも下方に設けられている。この構成によれば、ボビンホルダ105と開閉軸71cとが離れたところに位置することになる。これにより、パッケージ45の幅が変更になったとしても、パッケージ45を挟み込む挟持アーム71aと挟持アーム71bとがなす角度の変化は少ない。従って、両方の挟持アーム71aと挟持アーム71bとが平行に近い状態でパッケージ45を挟んで保持することができる。その結果、ボビンホルダ105同士の回転軸のズレが小さく、保持されたパッケージ45を円滑に回転させることができる。なお、従来の紡績機にあっては、クレードルアームの回動軸が、複数の紡績ユニット2を横切って延在し、複数の紡績ユニット2で共有される構成が採用される場合があった。この構成では、挟持アームの開閉軸を、クレードルアームの回動軸よりも低い位置に配置することは困難であった。これに対し、紡績機1では、紡績ユニット2ごとに個別にクレードル装置100をモジュール化したので、支軸70や開閉軸71cを比較的自由に配置することができ、上述の構成が可能になった。
【0083】
玉揚装置59がクレードル操作アーム89によりクレードルアーム71の開閉を行い、パッケージ45の取り外しやボビン48の取付けを行うので、玉揚作業の作業性が向上する。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【0085】
実施形態では、フレーム6の鉛直面6bに設けられた雌コネクタ部107に、雄コネクタ部103が水平方向に対面する配置とされているが、本発明では、雄コネクタ部(第1接続部)と雌コネクタ部(第2接続部)とが上下方向に対面する配置とされてもよい。例えば、雌コネクタ部が接続口を上方に向けてフレーム6の水平面6aに設けられ、支脚部101の対応する位置に、接続口を下方に向けて雄コネクタ部が配置されてもよい。コネクタ部の雄型と雌型の組み合わせは実施形態のものには限られず、フレーム6に雄型のコネクタを設け、クレードル装置100に雌型のコネクタを設けてもよい。
【0086】
実施形態では、雄コネクタ部(第1接続部)103及び雌コネクタ部(第2接続部)107で圧縮空気路を接続しているが、本発明の第1及び第2接続部は、電気配線を接続するための接続部であってもよい。
【0087】
例えば、実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、紡績糸10を一定量巻き付けて貯留する糸貯留ローラ21によって空気紡績装置9から紡績糸10を引き出しているが、本発明は、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置から紡績糸を引き出すタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0088】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、糸欠点検出時に空気紡績装置9の旋回気流を停止させて紡績糸10の切断を実行している、本発明は、カッターを用いて紡績糸の切断を行うタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0089】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、上部のドラフト装置7から下部の巻取装置13に向けて、紡績糸10が下向きに走行するように糸道が配置されているが、本発明は、下から上に向けて走行する糸道が配置された紡績機や紡績ユニットに適用してもよい。
【0090】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、空気紡績装置9は、繊維案内部に保持され、紡績室に突出するように配置されたニードルを備えていてもよい。当該ニードルは、繊維束8の撚りが空気紡績装置9の上流側に伝播することを防止する。空気紡績装置9は、ニードルの代わりに、繊維案内部の下流側端部により、繊維束8の撚りの伝播を防止してもよい。また、空気紡績装置9は、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズルを備えていてもよい。
【0091】
実施形態の紡績機1及び紡績ユニット2では、ドラフト装置7のボトムローラやトラバース装置75のトラバース機構が、複数の紡績ユニット2に共通で駆動されているが、本発明は、紡績ユニットの各部(例えば、ドラフト装置、空気紡績装置、糸巻取装置等)が各紡績ユニット2で独立で駆動されるタイプの紡績機及び紡績ユニットに適用してもよい。
【0092】
本発明は、空気紡績機に限られず、オープンエンド精紡機、自動ワインダ等の他の糸巻取機にも適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1…紡績機(糸巻取機)、2…紡績ユニット(糸巻取ユニット)、4…玉揚台車、6…フレーム、7…ドラフト装置、8…繊維束、9…空気紡績装置、10…紡績糸、45…パッケージ、59…玉揚装置、60…エアシリンダ(駆動部、第1駆動装置)、63a,64a,68a…電磁弁(制御部)、65…接圧用圧空源、69…リフタ用圧空源、70…支軸(回動軸)、71…クレードルアーム、71a,71b…挟持アーム、71c…開閉軸、71h…力点、79…クレードル操作アーム(クレードル操作部)、100…クレードル装置、101…支脚部(支持部)、103…雄コネクタ部(第1接続部)、105…ボビンホルダ(パッケージ保持部)、107…雌コネクタ部(第2接続部)、107a…弁、L65,L67,L69…圧空配管(空気配管)、160…リフトアップ用エアシリンダ(駆動部、第2駆動装置)、P1…保持位置、P2…解放位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
紡績糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持するクレードルアームと、前記クレードルアームを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記フレームに対しモジュールとして着脱可能であるクレードル装置と、
を備えたことを特徴とする糸巻取ユニット。
【請求項2】
前記駆動部は、エアシリンダであり、
前記フレームに設けられ、圧縮空気を前記エアシリンダに案内する複数の空気配管と、を更に備え、
複数の前記空気配管は、配管群として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の糸巻取ユニット。
【請求項3】
前記クレードル装置は、
前記エアシリンダを前記空気配管に接続させる第1接続部を更に有し、
前記空気配管には、
前記第1接続部に接続される第2接続部が設けられており、
前記第2接続部は、
前記第1接続部が接続されている場合には前記空気配管からの圧縮空気を前記第1接続部に通過させ、前記第1接続部が接続されていない場合には前記空気配管からの圧縮空気を遮断する弁を備えたことを特徴とする請求項2に記載の糸巻取ユニット。
【請求項4】
前記クレードルアームは、
前記パッケージを挟んで保持する2つの挟持アームと、
前記挟持アームのパッケージ挟持位置に取り付けられ前記パッケージを回転可能にして前記挟持アームに挟持させるためのパッケージ保持部と、を有し、
各前記クレードル装置は、
前記クレードルアームを回動可能にする回動軸と、
前記回動軸を支持すると共に前記駆動部を支持し、前記フレームに固定される支持部と、
前記挟持アームの一方を、前記パッケージを保持する保持位置と、前記パッケージを解放する解放位置と、の間で移動させて、前記クレードルアームを開閉する開閉軸と、を有し、
前記開閉軸は、前記回動軸に対して、前記パッケージ保持部とは反対側に位置することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の糸巻取ユニット。
【請求項5】
前記クレードル装置は、
前記クレードルアームを回動可能に支持し前記フレームに固定される支持部と、
前記支持部に対して前記クレードルアームを回動させる前記駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記支持部に対して前記クレードルアームの所定の力点を変位させ前記クレードルアームを回動させる第1駆動装置と、
前記支持部に対して前記第1駆動装置を移動させることにより前記力点を変位させて前記クレードルアームを回動させる第2駆動装置と、を有し、
前記第2駆動装置による前記力点の変位量は、前記第1駆動装置による前記力点の変位量よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の糸巻取ユニット。
【請求項6】
フレームと、
紡績糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持するクレードルアームと、前記クレードルアームを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記フレームに対し個別にモジュールとして着脱可能である複数のクレードル装置と、
を備えたことを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
前記駆動部は、エアシリンダであり、
各前記クレードル装置のエアシリンダに圧縮空気を供給する圧空源と、
前記フレームに設けられ、前記圧空源から供給される圧縮空気を各前記クレードル装置の前記エアシリンダに案内する複数の空気配管と、を更に備え、
複数の前記空気配管は、配管群として設けられていることを特徴とする請求項6に記載の糸巻取機。
【請求項8】
各前記クレードル装置は、
前記エアシリンダを前記空気配管に接続させる第1接続部を更に有し、
前記空気配管には、
各前記クレードル装置の前記第1接続部に接続される複数の第2接続部が設けられており、
前記第2接続部は、
前記第1接続部が接続されている場合には前記空気配管からの圧縮空気を前記第1接続部に通過させ、前記第1接続部が接続されていない場合には前記空気配管からの圧縮空気を遮断する弁を備えたことを特徴とする請求項7に記載の糸巻取機。
【請求項9】
前記クレードルアームは、
前記パッケージを挟んで保持する2つの挟持アームと、
前記挟持アームのパッケージ挟持位置に取り付けられ前記パッケージを回転可能にして前記挟持アームに挟持させるためのパッケージ保持部と、を有し、
各前記クレードル装置は、
前記クレードルアームを回動可能にする回動軸と、
前記回動軸を支持すると共に前記駆動部を支持し、前記フレームに固定される支持部と、
前記挟持アームの一方を、前記パッケージを保持する保持位置と、前記パッケージを解放する解放位置と、の間で移動させて、前記クレードルアームを開閉する開閉軸と、を有し、
前記開閉軸は、前記回動軸に対して、前記パッケージ保持部とは反対側に位置することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の糸巻取機。
【請求項10】
前記クレードル装置に対して前記パッケージの玉揚作業を行う玉揚装置を更に備え、
前記玉揚装置は、前記クレードルアームの開閉を行うクレードル操作部を有していることを特徴とする請求項9に記載の糸巻取機。
【請求項11】
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束を旋回気流で紡績する空気紡績装置と、を更に備えたことを特徴とする請求項6〜10の何れか1項に記載の糸巻取機。
【請求項12】
各前記クレードル装置は、
前記クレードルアームを回動可能に支持し前記フレームに固定される支持部と、
前記支持部に対して前記クレードルアームを回動させる前記駆動部と、を備え、
前記駆動部は、
前記支持部に対して前記クレードルアームの所定の力点を変位させ前記クレードルアームを回動させる第1駆動装置と、
前記支持部に対して前記第1駆動装置を移動させることにより前記力点を変位させて前記クレードルアームを回動させる第2駆動装置と、を有し、
前記第2駆動装置による前記力点の変位量は、前記第1駆動装置による前記力点の変位量よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63809(P2013−63809A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202122(P2011−202122)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】