説明

糸巻取装置及び自動ワインダ

【課題】パッケージの巻取テンションを一定の状態に制御できる自動ワインダを提供する。
【解決手段】自動ワインダは、パッケージ30を回転させるためのドラム駆動モータ53と、パッケージ30に巻き取られる前の糸を貯留でき、この貯留した糸を給糸ボビン21側に引き出すことができるアキュムレータ61と、糸欠陥を検出するためのクリアラ15と、糸継作業を行うスプライサ装置14と、を備える。また、自動ワインダは、給糸ボビン21とアキュムレータ61との間に配置される第1テンサ41と、アキュムレータ61とパッケージ30との間に配置される第2テンサ42と、第1テンサ41及び第2テンサ42を制御するユニット制御部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸巻取装置に関するものであり、詳細には、パッケージに巻き取られる糸に付与されるテンションの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精紡機等で生産された糸は、給糸ボビンに巻き付けられて糸巻取装置へ搬送される。そして、糸巻取装置においては、当該糸巻取装置へ搬送された複数の給糸ボビンの糸が糸継装置によって繋ぎ合わされて所定長のパッケージが生成される。このような糸巻取装置において、糸の巻取途中にテンション制御手段で適宜のテンションを付与することによって、巻取テンションの変動を抑える構成をとることがある。
【0003】
上記のような糸巻取装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の糸巻取装置である巻取ユニットは、給糸ボビンから解舒される糸を巻取パッケージに巻き取る途中の糸道に、一対の櫛状体を噛み合わせるゲートテンサを配設して構成される。
【特許文献1】特開平5−766号公報
【0004】
また、ボビンから巻き出された糸を、一旦容器に貯留した後に、パッケージに巻き取る糸巻取方法及び装置が特許文献2に開示されている。
【特許文献2】米国特許第3314621号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッケージの巻取速度の高速化は、生産効率向上のために従来から求められているところである。しかし、巻取速度を高速化すれば、走行する糸への負荷が増大し、糸切れが頻発してしまう。糸切れが発生した場合、パッケージから糸を引き出して給糸ボビン側の糸と糸継ぎを行う必要があるが、糸継作業においてパッケージを逆転させてパッケージ側の糸を捕捉する際に、サクションアームの吸引力によってパッケージの表面部分が引っ張られて、綾乱れが発生することもあった。
【0006】
また、糸継作業中はパッケージを逆転させるために巻取作業が中断されるので、糸継後は巻取速度をゼロから定常時の速度まで加速させる必要があり、このときに巻取テンションの変動が生じ易かった。更に、給糸ボビンの残糸が少なくなってくると、給糸ボビンから解舒された糸がボビンに絡み付いて大きなテンション変動が起こり、このテンション変動がパッケージの巻取テンションに影響して、糸切れの発生やパッケージの品質低下を招いていた。
【0007】
この点、特許文献1の構成は、ピークテンションの発生を抑えて、糸切れの頻度を少なくすることができる。しかし、例えば給糸ボビンの交換時に発生するテンション変動は特に大きいため、テンション制御手段を備えていても大きなテンション変動が生じた場合、パッケージへの影響を良好に除去することは難しかった。
【0008】
また、特許文献2の構成は、ブレーキによりパッケージに巻かれる糸に一定のテンションを付与することは可能であるが、パッケージの巻取状態ないしは糸質に合わせて付与するテンションをフレキシブルに変更することに関しては開示されていない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッケージの巻始めから巻終りまで、パッケージの巻取テンションを一定の状態に制御できる糸巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、交換可能な給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置の以下の構成が提供される。即ち、この糸巻取装置は、給糸ボビン側で発生するテンション変動の伝達を遮断して、前記パッケージにテンション変動が伝達されることを防止するテンション伝達遮断機構と、前記パッケージに巻き取られる糸のテンションをフレキシブルに制御するテンション制御手段と、を備える。
【0012】
これにより、テンション変動がパッケージ側での巻取作業に影響しないように、テンション変動の伝播をテンション伝達遮断機構で遮断することができる。また、テンション伝達遮断機構によってテンション変動が遮断された上でテンション制御手段によってテンションが制御されるので、パッケージに巻き取られる糸のテンションを一定に保つことができる。従って、パッケージへのテンション変動の影響を抑えることができ、巻き状態の良好なパッケージを生産できる。
【0013】
前記の糸巻取装置においては、前記給糸ボビンから解舒されて、前記テンション伝達遮断機構に至るまでの糸に付与されるテンションをフレキシブルに制御する他のテンション制御手段を備えることが好ましい。
【0014】
これにより、巻取作業全体を通じて糸のテンションを一定にすることができる。また、糸のテンションが2箇所でフレキシブルに制御されるので、巻状態が良好な高品質のパッケージを形成することができる。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、交換可能な給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置の以下の構成が提供される。即ち、この糸巻取装置は、巻取駆動部と、糸貯留装置と、糸欠陥検出部と、糸継部と、第1テンション制御手段と、第2テンション制御手段と、制御部と、を備える。前記巻取駆動部は、パッケージを回転させる。前記糸貯留装置は、前記パッケージに巻き取られる前の糸を貯留でき、この貯留した糸を前記給糸ボビン側に引き出すことができる。前記糸欠陥検出部は、糸欠陥を検出する。前記糸継部は、糸継作業を行う。前記第1テンション制御手段は、前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間に配置される。前記第2テンション制御手段は、前記糸貯留装置と前記パッケージとの間に配置される。前記制御部は、前記第1テンション制御手段及び前記第2テンション制御手段を制御する。
【0016】
これにより、給糸ボビンの巻始めや巻終り等に発生するテンション変動がパッケージ側での巻取作業に影響しないように、テンション変動の伝播を糸貯留装置で遮断することができる。従って、給糸ボビン側で大きなテンション変動が起こった場合でも、巻取テンションを一定に保った状態で糸をパッケージに巻き続けることができる。また、糸欠陥や糸切れの発生時又は給糸ボビンの交換時でも、糸貯留装置に貯留されている糸をパッケージに巻き取らせつつ、当該糸貯留装置から糸を給糸ボビン側に引き出して糸継作業を行うことができるので、パッケージを逆転させることなく巻取作業を継続することができる。従って、糸継時の屑糸がパッケージに混入したり、パッケージに巻き形状の不良が発生したりすることを防止できる。更に、第1テンション制御手段によって糸貯留装置への貯留前の糸に適切なテンションを付与するとともに、第2テンション制御手段によってパッケージへの巻取前の糸に適切なテンションを付与することができる。これによって巻取作業全体を通じて巻取テンションを一定に制御でき、糸切れの発生を効果的に防止できる。以上のように、一定の状態で連続的にパッケージに糸を巻き取ることができるので、巻状態が良好な高品質のパッケージを生成することができる。
【0017】
前記の糸巻取装置においては、前記制御部は、前記パッケージの巻取速度に応じて、前記第2テンション制御手段によって糸に付与するテンションを調節することができることが好ましい。
【0018】
これにより、パッケージの巻取速度が変化した場合でも、例えば巻取速度が速くなった場合には糸に付与するテンションを弱めるように制御することで、巻取テンションを一定に保ちながら巻取作業を行うことができる。
【0019】
前記の糸巻取装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記糸貯留装置の糸貯留量を検出するための糸貯留量検出手段を備える。前記制御部は、前記糸貯留装置に貯留される糸量に応じて前記パッケージの巻取速度を変化させ、かつ変化した巻取速度に応じて、前記第2テンション制御手段によって糸に付与するテンションを調節することができる。
【0020】
これにより、糸貯留装置に貯留される糸量が適切なものとなるようにパッケージの巻取速度を変化させた場合でも、第2テンション制御手段が巻取速度に応じたテンションを糸に与えるので、一定の巻取テンションを維持したまま糸貯留装置に貯留される糸量を調節することができる。
【0021】
本発明の第3の観点によれば、前記糸巻取装置を複数備える自動ワインダが提供される。
【0022】
これにより、高品質なパッケージを生産できる自動ワインダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る糸巻取装置である巻取ユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0024】
図1に示す巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数の巻取ユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。そして、それぞれの巻取ユニット10は、正面視で左右一側に設けられた図略のユニットフレームと、このユニットフレームの側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0025】
前記巻取ユニット本体16は、巻取部5と、糸貯留部6と糸欠陥検出部7と、糸継部8と、給糸部9と、を備えている。前記巻取部5は、巻取ボビン22を保持可能に構成された図略のクレードルと、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、後述する第2テンサ42と、を備えている。前記クレードルは巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図1に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。また、前記糸貯留部6はパッケージ30に巻き取られる前の糸20を貯留するためのアキュムレータ61で構成される。また、前記糸欠陥検出部7は糸欠陥を検出するためのクリアラ15を備える。また、前記糸継部8は糸継作業を行うスプライサ装置(糸継装置)14と、下糸案内パイプ(下糸捕捉手段)25と上糸案内パイプ(上糸捕捉手段)26と、を備える。また、前記給糸部9は給糸ボビン21を保持するための給糸ボビン保持部60と、糸解舒補助装置12と、第1テンサ41と、を備える。
【0026】
また、前記クレードルには、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、連続して不良の給糸ボビンが供給された場合やマシントラブル等の際に、前記クレードルを上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によって前記クレードルが上昇するのと同時に、前記クレードルに把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0027】
また、給糸部9は新たな給糸ボビン21を給糸ボビン保持部60へ供給するための図略のボビン供給装置を更に備えている。このボビン供給装置にはマガジン式の供給装置やトレイ式の供給装置があるが本実施形態においてはマガジン式供給装置を用いる。この給糸部9は、巻取ユニット10にセットされている給糸ボビン21から糸20が全て引き出されると、給糸ボビン保持部60に保持されている空ボビンを排出し、前記ボビン供給装置が新たな給糸ボビン21を交換のために給糸ボビン保持部60へ順次供給する。
【0028】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0029】
糸解舒補助装置12の近傍には、糸20の有無を検知可能なヤーンフィーラ(下糸検出センサ)37が設けられている。このヤーンフィーラ37は、給糸ボビン21から引き出される糸20が無くなったことを検出して、ユニット制御部50に糸無し検出信号を送信できるように構成されている。
【0030】
第1テンサ41は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態では、この第1テンサ41として、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、図略のロータリ式のソレノイドにより回動することができる。この第1テンサ41によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。なお、この第1テンサ41の制御の詳細については後述する。
【0031】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出したとき、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0032】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで監視することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52で処理することで、スラブ等の糸欠陥を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、糸20の走行速度を検知するセンサ、及び、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。
【0033】
また、クリアラ15の下流側には走行中の糸にワックス付けをするためのワキシング装置17が配置されている。また、ワキシング装置17の下流側には図略の吸引部が備えられている。この吸引部は適宜の負圧源に接続され、ワックスの滓や糸屑等を吸引除去することができる。
【0034】
アキュムレータ61は、所定量の糸を貯留できる糸貯留装置として構成される。給糸ボビン21から搬送されてきた糸20はアキュムレータ61に貯留され、その後、アキュムレータ61から引き出されてパッケージ30に巻き取られる。
【0035】
前記アキュムレータ61は、貯留した糸20を上流側及び下流側の両方に引き出すことができるように構成されている。この構成により、アキュムレータ61は、貯留されている糸20をパッケージ30に巻き取らせるのと並行して、給糸ボビン21側にも糸20を引き出して糸継作業を行うことができる。なお、アキュムレータ61の構造、糸継作業時の動作の詳細については後述する。
【0036】
第2テンサ42はアキュムレータ61の下流側に配置されており、アキュムレータ61からの糸がパッケージ30に巻き取られる際のテンションを制御するものである。これによって、アキュムレータ61から引き出された糸は適宜のテンションが付与された状態で巻取ボビン22に巻き取られることになる。この第2テンサ42として、本実施形態では第1テンサ41と同様に、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いている。また、第2テンサ42が糸20へ付与するテンションは、ユニット制御部50により巻取速度に応じて制御される。
【0037】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には下糸吸引口32が形成され、同様に上糸案内パイプ26の先端にも上糸吸引口34が形成されている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記下糸吸引口32及び上糸吸引口34に吸引流を作用させることができるように構成されている。
【0038】
前記下糸案内パイプ25は、軸33を中心に回動して、下糸をスプライサ装置14まで案内するように構成されている。また、上糸案内パイプ26は、図1に鎖線で示す捕捉位置まで軸35を中心として回動し、糸の吸引捕捉を行う。図1に示すように、前記捕捉位置では上糸案内パイプ26の上糸吸引口34がアキュムレータ61近傍の糸20に対面する。この状態で、上糸案内パイプ26は上糸吸引口34により糸20を吸引捕捉し、元の位置へ回動することで糸20をスプライサ装置14まで案内することができる。
【0039】
巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24はドラム駆動モータ(巻取駆動部)53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0040】
次に図2を参照してアキュムレータ61について説明する。図2は、アキュムレータ61の概略的な構成を示す模式断面図である。図2に示すように、アキュムレータ61は、回転軸ケーシング70と、貯留部71と、糸案内部72と、を備える。また、前記回転軸ケーシング70は、上方が開放された円筒状の筒部78と、この筒部78の開放側端部に形成された鍔部79と、を備えている。
【0041】
前記貯留部71は、前記鍔部79の上方に配置されている。この貯留部71は、円板状に形成される支持板81と、この支持板81から上方に突出する複数のロッド部材82と、この複数のロッド部材82の先端部分が接続される円板状の取付板83と、を備える。また、貯留部71は、前記支持板81と前記鍔部79との間に隙間を形成するように配置されており、この隙間の内部を後述の巻付筒75が回転できるように構成されている。
【0042】
複数のロッド部材82は鉛直方向に直交する円周上に等間隔で並べて配置されており、前記貯留部71は、これらのロッド部材82によって略円筒形状を形成するように構成されている。この複数のロッド部材82で構成される略円筒形状の貯留部71の外周部分に糸20を巻き回すことによって、糸20が貯留部71に貯留されることになる。
【0043】
糸案内部72は、前記回転軸ケーシング70の内部に配置されている。回転軸ケーシング70において、前記筒部78の下部(貯留部71と反対側の端部)には導入孔80が形成されており、給糸ボビン21から引き出された糸20は前記導入孔80から糸案内部72へ導かれるようになっている。
【0044】
前記筒部78の内部には、前記回転軸ケーシング70及び貯留部71に対して相対回転可能に取り付けられる回転軸73が配置されている。この回転軸73と前記筒部78との間にはサーボモータ(糸貯留駆動部)55が組み込まれており、回転軸73を正転及び逆転させることができる。また、この回転軸73の中心には、軸孔状の糸通路74が形成されている。
【0045】
この回転軸73の一端(前記導入孔80と反対側の端部)には、円筒状に形成される巻付筒(巻付手段)75が固定されている。この巻付筒75は、上向きに若干傾斜しながら、回転軸ケーシング70(鍔部79)と支持板81との隙間を通過するようにして径方向に延出し、その先端部分の一部が回転軸ケーシング70より若干飛び出すように構成されている。この巻付筒75は回転軸73と一体的に回転するように構成される。また、巻付筒75の内部は前記糸通路74と接続されている。
【0046】
以上の構成において、糸案内部72の導入孔80から回転軸ケーシング70内に導かれた糸20は、糸通路74及び巻付筒75の内部を通って当該巻付筒75の先端から排出されることで、前記貯留部71の側面部分に誘導される。従って、前記サーボモータ55を正方向に駆動すると、巻付筒75が回転軸73とともに回転し、これによって前記側面部分に糸20が巻き回されることになる。
【0047】
また、前記貯留部71において複数配置されるロッド部材82のそれぞれは、支持板81側の端部から取付板83側の端部へ近づくに従って貯留部71の内側方向へ傾斜するように配置されている。このロッド部材82の傾斜によって、貯留部71に巻き付けられた糸は上方に滑るように移動する。従って、後述の巻付筒75によって糸20が連続して巻き付けられると、前記傾斜部分に巻き取られた糸が上方へと移動していくので、ロッド部材82で構成される前記側面部分には糸20が螺旋状に整列した状態で貯留されることになる。
【0048】
なお、本実施形態では糸貯留駆動部としてサーボモータ55が使用されているので、巻付筒75の回転の急停止又は加減速等を精密に行うことができる。これによって糸20の引出量や糸20を引き出すタイミング等を正確に制御でき、糸継作業をよりスムーズに行うことができる。
【0049】
また、図1に示すように、巻取ユニット10は、貯留部71の上部に配置される第1貯留センサ76と、貯留部71の下部に配置される第2貯留センサ77と、を備えている。この2つの貯留センサ(糸貯留量検出手段)76,77は非接触型の光学センサ等で構成されており、それぞれがユニット制御部50に電気的に接続されている。第1貯留センサ76は、貯留部71を構成するロッド部材82の上端側に巻き付けられた糸を検出可能なように貯留部71の上端側に配置され、アキュムレータ61の最大貯留状態を検知する。また、第2貯留センサ77は、ロッド部材82の下端側に巻かれた糸を検出可能なように貯留部71の下端側に配置され、アキュムレータ61の糸貯留不足を検知する。ユニット制御部50は、第1貯留センサ76及び第2貯留センサ77からの糸検出信号に基づいて、貯留部71への糸20の巻付速度を制御する。これによって、アキュムレータ61の糸貯留量を過不足が生じないように調節することができる。
【0050】
なお、アキュムレータ61において糸が貯留部71に巻き付けられる速度(換言すれば、上流側の給糸ボビン21からアキュムレータ61への糸供給速度)は、糸の巻取を開始した時点では、順次増幅されるパッケージ30の糸巻取速度と等しい速度又はそれよりも速い速度になるように制御する。そして、巻取開始から所定時間が過ぎ、糸継作業時に必要な糸量がアキュムレータ61に貯留されたときには、サーボモータ55の駆動を制御し、パッケージ30の糸巻取速度と等しい速度で糸を貯留部71に巻き付け、アキュムレータ61に貯留された糸量を維持させる。なお、糸継作業時に必要な糸量とは、後述するスプライサ装置14での糸継作業のためにアキュムレータ61から上流側へ引き出される糸量に、当該糸継作業と並行して行われるパッケージ30への巻取のためにアキュムレータ61から下流側へ引き出される糸量を加算したものである。貯留部71においては、この必要な糸量以上の糸を貯留した状態を常に維持することが好ましい。このように、アキュムレータ61に貯留される糸量を一定に保つことにより、アキュムレータ61から下流側へ引き出される糸の解舒位置を所定の範囲内に特定させ、アキュムレータ61からの糸引き出しテンションを一定に保つことができる。
【0051】
次に、クリアラ15が糸欠陥を検出したときの糸継作業について説明する。クリアラ15は、糸太さの監視により糸欠陥を検出すると、ユニット制御部50に糸欠陥検出信号を送信する。この糸欠陥検出信号に基づき、前記ユニット制御部50はクリアラ15の下方に設けられたカッタ(糸切断手段)を操作して、糸20を切断する。同時にユニット制御部50は、アキュムレータ61のサーボモータ55を停止させることにより、巻付筒75の回転を停止させる。これにより、上糸は、アキュムレータ61の導入孔80より下方で停止させられる。
【0052】
そしてユニット制御部50は、軸35を中心として上糸案内パイプ26を捕捉位置に回動させ、アキュムレータ61入口近傍の糸を吸引捕捉するとともに、この状態で下方回動してスプライサ装置14まで上糸を導く。また、ユニット制御部50は、下糸吸引口32によって下糸を吸引捕捉させた状態で、軸33を中心として下糸案内パイプ25を上方へ回動させ、スプライサ装置14まで下糸を導く。そして、上糸と下糸とをスプライサ装置14で糸継した後、再びサーボモータ55を制御して、糸20が貯留される方向に巻付筒75を回転させる。
【0053】
次に給糸ボビン21の交換時の糸継動作を説明する。給糸ボビン21から供給される糸が無くなったことを前記ヤーンフィーラ37が検出すると、当該ヤーンフィーラ37は糸無し検出信号をユニット制御部50に送信する。この糸無し検出信号を受信したユニット制御部50は、アキュムレータ61への糸の供給を停止させる。
【0054】
そしてユニット制御部50は、上糸案内パイプ26を捕捉位置に回動させてアキュムレータ61入口近傍の糸を吸引捕捉するとともに、この状態で下方回動してスプライサ装置14まで上糸を導く。また、前記マガジン式供給装置によって新しい給糸ボビン21が供給されると、その新しい給糸ボビン21側の糸は、下糸案内パイプ25によってスプライサ装置14まで導かれる。上糸と下糸とをスプライサ装置14で糸継した後、再びサーボモータ55を制御して、糸20が貯留される方向に巻付筒75を回転させる。
【0055】
次に、図3を参照して、第1テンサ41及び第2テンサ42による巻取速度に応じたテンションの付与について説明する。図3は、糸の番手(10、20、30、60、80、100)ごとの糸速とテンサの電流値の関係を示したグラフである。なお、テンサの電流値は糸に与えるテンションに対応しており、電流値が小さい場合は糸に付与するテンションの値が小さいことを意味する。また、糸の番手は綿番手であり、その数字は、その数が大きい程、糸の直径は細くなっている。例えば、図3に示す番手10の糸の直径より番手20の糸の直径の方が細いものとなっており、同様に、番手20の糸の直径より番手30の糸の直径の方が細いものとなっている。
【0056】
糸をパッケージ30に巻き取る際の巻取テンションは、糸20の走行によって発生するテンションと、テンション制御手段によって付与するテンションと、を加算したものである。糸の巻取速度が変化した場合、糸20の走行によって発生するテンションがそれに伴って変動するが、このテンション変動に応じて第2テンサが糸20へ付与するテンションを調節することで、巻取テンションを一定に保つことができる。具体的には、例えば図3のグラフのように、テンサによるテンションの値(電流値)を巻取速度が速くなるにつれて小さくするように制御することで、巻取テンションを一定にしている。
【0057】
本実施形態においては、アキュムレータ61から解舒される糸20に対し第2テンサ42が付与するテンションを変化させることで、パッケージ30の巻取テンションを一定のものとすることができる。具体的には、糸20の巻取速度が速くなった場合は、糸20の走行によって発生するテンションが増大するので、第2テンサ42が付与するテンションを上記の分だけ弱めるように制御する。一方、巻取速度が遅くなった場合は、糸20の走行によるテンションが弱まるので、第2テンサ42によって付与するテンションを上記の分だけ強めるように制御する。以上により、巻取テンションを一定に保つことができる。
【0058】
以上に示したように、交換可能な給糸ボビン21から引き出される糸20をパッケージ30に巻き取る本実施形態の巻取ユニット10は、以下のように構成される。巻取ユニット10は、給糸ボビン21側で発生するテンション変動の伝達を遮断して、前記パッケージにテンション変動が伝達されることを防止するアキュムレータ(テンション伝達遮断機構)61と、パッケージ30に巻き取られる糸のテンションをフレキシブルに制御することができる第2テンサ(テンション制御手段)42と、を備える。
【0059】
この構成により、テンション変動がパッケージ30側での巻取作業に影響しないように、テンション変動の伝播をアキュムレータ61で遮断することができる。また、アキュムレータ61によってテンション変動が遮断された上で第2テンサ42によってパッケージ30に巻き取る糸のテンションが適切に制御されるので、巻き取られる糸20のテンションを一定に保つことができる。従って、パッケージ30へのテンション変動の影響を抑えることができるので巻き状態の良好なパッケージを生産できる。また、糸継作業の間も、パッケージ30側の巻取作業を連続的に行うことができるので、パッケージ30の巻取作業が中断されることによって生じる巻取時間のロスを削減でき、生産効率を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態の巻取ユニット10においては、以下のように構成される。巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒されて、アキュムレータ61に至るまでの糸20に付与されるテンションをフレキシブルに制御する第1テンサ(他のテンション制御手段)41を備える。
【0061】
この構成により、巻取作業全体を通じて糸20のテンションを一定にすることができる。また、糸のテンションが2箇所でフレキシブルに制御されるので、巻状態が良好な高品質のパッケージ30を形成することができる。
【0062】
また、本実施形態の巻取ユニット10においては、以下のように構成される。即ち、巻取ユニット10は、ドラム駆動モータ53と、アキュムレータ61と、クリアラ15と、スプライサ装置14と、第1テンサ41と、第2テンサ42と、ユニット制御部50と、を備える。前記ドラム駆動モータ53は、パッケージ30を回転させる。前記アキュムレータ61は、パッケージ30に巻き取られる前の糸20を貯留でき、この貯留した糸20を給糸ボビン21側に引き出すことができる。前記クリアラ15は、糸欠陥を検出する。前記スプライサ装置14は、糸継作業を行う。前記第1テンサ41は、給糸ボビン21とアキュムレータ61との間に配置される。前記第2テンサ42は、アキュムレータ61とパッケージ30との間に配置される。前記ユニット制御部50は、第1テンサ41及び第2テンサ42を制御する。
【0063】
この構成により、給糸ボビン21の巻始めや巻終り等に発生するテンション変動がパッケージ30側の巻取作業に影響しないように、テンション変動の伝播をアキュムレータ61で遮断できる。従って、大きなテンション変動が給糸ボビン21で起こった場合でも、巻取テンションを一定に保った状態で糸20を巻き続けることができる。また、糸欠陥や糸切れの発生時又は給糸ボビン21の交換時でも、アキュムレータ61に貯留されている糸20をパッケージに巻き取らせつつ、当該アキュムレータ61から糸20を給糸ボビン21側に引き出して糸継作業を行うことができるので、パッケージ30を逆転させることなく巻取作業を継続することができる。更に、第1テンサ41によってアキュムレータ61への貯留前の糸20に適切なテンションを付与するとともに、第2テンサ42によってパッケージ30への巻取前の糸20に適切なテンションを付与することができる。これによって、巻取作業全体を通じて巻取テンションを一定に制御でき、糸切れの発生を効果的に防止できる。また、巻取の開始から所定時間経過後は、一定の巻取速度でパッケージ30が回転することになり、糸欠陥が検出された場合等でも巻取停止(巻取速度の変化)が行われないので、テンション変動も生じない。以上のように、一定の状態で連続的にパッケージ30の巻取作業を行うことができるので、巻状態が良好な高品質なパッケージ30を生成することができる。
【0064】
また、本実施形態の自動ワインダは、ユニット制御部50が、パッケージ30の巻取速度に応じて、第2テンサ42によって糸20に付与するテンションを調節できるように構成されている。
【0065】
この構成により、パッケージ30の巻取速度が変わった場合でも、例えば巻取速度が速くなった場合には糸20に付与するテンションを弱めるように制御することで、巻取テンションを一定に保ちながら巻取作業を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態においては、自動ワインダが複数の前記巻取ユニット10を備える。この構成により、高品質なパッケージを生産できるとともに、生産効率の高い自動ワインダを提供することができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、巻取開始から所定時間経過後は巻取速度を変更せずに一定の状態(定格速度)で巻き取るように構成しているが、糸欠陥を検出したときや糸継作業時に巻取速度を変化させる構成とすることもできる。以下に図4を参照して、糸欠陥検出時にユニット制御部50が糸20の貯留量に応じて巻取速度を制御する構成について説明する。図4は、糸欠陥検出時にアキュムレータ61に貯留される糸量を調節する場合の巻取ドラム24及び第2テンサ42の制御を示すフローチャートである。
【0068】
なお、以下のフローチャートの説明において「十分な糸量」とは、糸欠陥検出時及びボビン交換時の糸継作業を行うのに十分な糸貯留量のことをいい、アキュムレータ61の最大貯留状態を検出する第1貯留センサ76が検出する糸量のことである。また、以下のフローチャートの説明において「糸量が十分に貯留されていない状態」とは、糸欠陥除去時及びボビン交換時の糸継作業を行うのに十分な糸貯留がなされていない状態をいい、第1貯留センサ76が糸を検出していない状態をいう。
【0069】
図4のフローが開始されると、ユニット制御部50は、十分な糸量がアキュムレータ61に貯留されているかを貯留センサ76,77の検出値によって調べる(S101)。糸量が十分に貯留されていない状態と判定された場合は、ユニット制御部50は巻取ドラム24の回転速度が定格速度より遅く(低速度に)なるようにドラム駆動モータ53を制御する(S102)。また、巻取テンションが一定になるように、巻取ドラム24の回転速度に応じて第2テンサ42による糸へのテンションを強める(S103)。
【0070】
糸欠陥部分の除去及び糸継作業が行われ、糸欠陥除去作業が終了すると(S104)次に、貯留センサ76,77によってアキュムレータ61に十分な糸量が貯留されたか否かを調べる(S105)。十分な糸量が貯留されている場合は、ユニット制御部50はドラム駆動モータ53を制御して、糸欠陥が検出される前の速度に回転速度を戻す(S106)。そして、ドラム駆動モータ53の回転速度に応じたテンションを付与するように第2テンサ42を制御し(S107)、フローを終了する。
【0071】
一方、S101の判断で糸量が十分に貯留されていると判定された場合は、巻取ドラム24の回転速度及び第2テンサ42のテンション制御を行うことなくそのまま糸欠陥除去作業(S108)に移行し、糸欠陥除去作業が終了すると糸欠陥発見時のフローを終了する。
【0072】
以上に示すように、図4に示す構成の自動ワインダは、アキュムレータ61に貯留される糸量を検出するための第1貯留センサ76及び第2貯留センサ77を備える。また、ユニット制御部50は、糸量に応じてパッケージ30の巻取速度を制御するとともに、パッケージ30の巻取速度に応じて、第2テンサ42によって糸20に付与するテンションを調節する。
【0073】
この構成により、アキュムレータ61に貯留される糸量が適切なものとなるようにパッケージ30の巻取速度を変化させることができる。また、糸欠陥や糸切れの発生時又は給糸ボビン21の交換時であって、アキュムレータ61に貯留させた糸量が少ない場合、糸貯留量がゼロにならないように巻取速度を減速するような制御も可能である。更に、第2テンサ42が巻取速度に応じたテンションを糸20に与えるので、一定の巻取テンションを維持したまま、アキュムレータ61の糸貯留量を調節することができる。
【0074】
また、上記実施形態の構成に代えて、糸欠陥検出時及び糸継作業時には自動的に巻取速度を低下させるように構成することもできる。この構成では、糸欠陥が検出された場合、ユニット制御部50は、ドラム駆動モータ53を制御して巻取速度を低下させるとともに、第2テンサ42による糸20へのテンションを強めるように制御する。そして、糸欠陥を除去して糸継作業を行った後、巻取ドラム24の回転速度を元に戻すとともに、第2テンサ42によるテンションの付与を巻取ドラム24の回転速度に応じて弱める。これにより、糸20の貯留量が少ない場合でもパッケージ30に糸20を連続的に巻き取ることができる。
【0075】
また、新しい給糸ボビン21が供給された場合に、同様に巻取速度を低下させるように構成することができる。具体的には、糸が無くなったことをヤーンフィーラ37が検出すると、ユニット制御部50は巻取速度を低下させ、この巻取速度の低下に合わせて第2テンサ42による糸20へのテンションを強めるように制御する。この状態で新しく供給された給糸ボビン21の糸と糸継作業を行う。糸継作業の終了後は、糸欠陥を検出したときと同様に巻取ドラム24の回転速度を元に戻すとともに、第2テンサ42によるテンションの付与を巻取ドラム24の回転速度に応じて弱める。
【0076】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0077】
上記実施形態の構成に加えて、一定条件を満たすと巻取ドラム24の回転が停止する構成とすることもできる。例えば、クリアラ15による糸欠陥の検出が3回連続して発生した場合には、不良の給糸ボビンが供給されたとみなして巻取を停止する構成とすることができる。
【0078】
また、上記実施形態では、テンションを制御するための第1テンサ41及び第2テンサ42はゲート式のものを用いているが、この構成に代えてディスク式のテンサを用いる等、テンション制御手段の構成は適宜変更することができる。また、上記実施形態の第1テンサ41に代えて、糸解舒補助装置12によって給糸ボビン21からアキュムレータ61間のテンション制御を行っても良い。更に、上記実施形態に代えて、糸欠陥検出時等の糸継作業の際に第1テンサ41と第2テンサ42を連携して制御する等、テンサの制御は本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、アキュムレータ61に貯留されている糸量を2つの貯留センサ76,77を用いて検出しているが、例えば3つ以上の貯留センサを用いる等、糸量の検出方法は適宜変更することができる。
【0080】
上記実施形態では、糸貯留量検出手段として2つの貯留センサ76,77を用いてアキュムレータ61の糸貯留量を検出し、ユニット制御部50は、検出された糸貯留量に応じてドラム駆動モータ53(巻取駆動部)を制御しているが、糸貯留量検出手段として糸欠陥除去の発生頻度を監視する監視部を設け、その監視結果を基準としてドラム駆動モータ53を制御してもよい。例えば、前記監視部が糸欠陥除去の作業が所定の期間に複数回発生したことを検知した場合は、ユニット制御部50は、アキュムレータ61に糸欠陥除去の作業が完了する間にパッケージ30に巻き取られる糸長さに相当する糸貯留量が無いと判断する。前記糸貯留量が無いと判断したユニット制御部50は、ドラム駆動モータ53を低速に制御する。これによっても、アキュムレータ61の糸貯留量を適切に維持しながら巻取作業を行うことができる。更に、前記監視部は、糸欠陥除去のみに限らず給糸ボビンの交換作業と糸欠陥除去との発生タイミング等を考慮してドラム駆動モータ53を制御することもできる。
【0081】
また、上記実施形態の巻取ユニット10はマガジン式供給装置によって給糸ボビン21を供給する構成であるがこの構成に限定されるわけではない。例えば、給糸ボビン21をセットしたトレイを適宜の経路に沿って搬送することで巻取ユニット10に給糸ボビン21を供給する構成に変更することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻取ユニットの概略的な構成を示した正面図。
【図2】本実施形態のアキュムレータの様子を示した模式断面図。
【図3】巻取速度とテンサによるテンション付与の関係を糸の番手ごとに示したグラフ。
【図4】糸欠陥検出時にアキュムレータに貯留される糸量によって巻取速度を調節する場合の第2テンサの制御を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0083】
10 巻取ユニット
14 スプライサ装置
15 クリアラ(糸欠陥検出部)
21 給糸ボビン
30 パッケージ
41 第1テンサ(第1テンション制御手段)
42 第2テンサ(第2テンション制御手段)
50 ユニット制御部
53 ドラム駆動モータ(巻取駆動部)
55 サーボモータ
61 アキュムレータ(糸貯留装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能な給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置において、
前記給糸ボビン側で発生するテンション変動の伝達を遮断して、前記パッケージにテンション変動が伝達されることを防止するテンション伝達遮断機構と、
前記パッケージに巻き取られる糸のテンションをフレキシブルに制御するテンション制御手段と、を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
前記給糸ボビンから解舒されて、前記テンション伝達遮断機構に至るまでの糸に付与されるテンションをフレキシブルに制御する他のテンション制御手段を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
交換可能な給糸ボビンから引き出される糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置において、
パッケージを回転させるための巻取駆動部と、
前記パッケージに巻き取られる前の糸を貯留でき、この貯留した糸を前記給糸ボビン側に引き出すことができる糸貯留装置と、
糸欠陥を検出するための糸欠陥検出部と、
糸継作業を行う糸継部と、
前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間に配置される第1テンション制御手段と、
前記糸貯留装置と前記パッケージとの間に配置される第2テンション制御手段と、
前記第1テンション制御手段及び前記第2テンション制御手段を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取装置であって、
前記制御部は、前記パッケージの巻取速度に応じて、前記第2テンション制御手段によって糸に付与するテンションを調節することができることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取装置であって、
前記糸貯留装置の糸貯留量を検出するための糸貯留量検出手段を備え、
前記制御部は、前記糸貯留装置に貯留される糸量に応じて前記パッケージの巻取速度を変化させ、かつ変化した巻取速度に応じて、前記第2テンション制御手段によって糸に付与するテンションを調節することができることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取装置を複数備えることを特徴とする自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−149977(P2010−149977A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328862(P2008−328862)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】