説明

糸巻取装置

【課題】作業を煩雑にすることなく、複数の糸を同時に巻取管に糸掛けする
【解決手段】1つのクレードル20に保持された2つの巻取管19Bに、それぞれ、糸Ya、Ybを巻き取ることによって2つのパッケージPを形成可能な巻取装置に、2つの自動糸掛け装置24a、24bが設けられている。自動糸掛け装置24a、24bは、サクションマウス51、糸寄せ機構52、糸配置アーム53、糸保持アーム54、糸押し付けアーム55などを備えている。糸配置アーム53は、巻取管19Bの軸方向と平行なシャフト65を中心に揺動して、糸Ya、Ybを巻取管19Bと対向するように配置させる。糸押し付けアーム55は、シャフト65と平行なシャフト66を中心に揺動して、糸配置アーム53により配置された糸Ya、Ybを巻取管19Bの外周面に押し付けて密着させる。糸保持アーム54は糸押し付けアーム55との間で糸Ya、Ybを挟んで保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取管に糸を巻き取る糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の糸巻取機では、クレードルに1つの巻取管が回転自在に保持されており、供給された2本の糸を合糸し、合糸された糸をこの巻取管に巻き取ることによって、1つのパッケージを形成することと、供給された2本の糸を、そのまま、この巻取管の互いに離隔する部分に巻き取ることによって、2つのパッケージを形成することとが切り替え可能となっている。
【0003】
また、特許文献1に記載の糸巻取機では、1つのパッケージを形成する際、及び、2つのパッケージを形成する際のいずれにおいても、パッケージの形成が完了した後、次に糸を巻き取る空の巻取管が供給されたときに、オペレータが巻取管への糸掛けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−74219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の糸巻取機において、2つのパッケージを形成する場合に、2本の糸の巻取管への巻き取りの開始タイミングが大きくずれると、形成された2つのパッケージ間で糸の量に大きな違いが生じてしまう。そのため、2つのパッケージにおける糸の量を均一にするために、2本の糸の巻取管への巻取が同じタイミングで開始されることが好ましい。そして、そのためには、2本の糸を同じタイミングで巻取管に糸掛けする必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、オペレータが2本の糸を巻取管に糸掛けする場合には、一方の糸を巻取管に糸掛けした後、他方の糸を巻取管に糸掛けすることとなるため、どうしても、2本の糸の間で糸掛けのタイミングにずれが生じてしまう。
【0007】
ここで、オペレータが一方の糸を巻取管に糸掛けするのと同じタイミングで、別のオペレータが他方の糸を巻取管に糸掛けするなどすれば、2本の糸を同じタイミングで糸掛けすることができるが、この場合には、2人のオペレータが必要となり、糸掛け作業が煩雑なものとなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、複数の糸を同じタイミングで糸掛けすることができ、且つ、その作業も煩雑になることのない糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る糸巻取装置は、巻取管を回転自在に保持する1つのクレードルを備え、供給された複数の糸を、前記巻取管にそれぞれ巻き取って複数のパッケージの形成する糸巻取装置であって、前記複数のパッケージの少なくとも1つに対して設けられており、前記巻取管に自動的に糸掛けを行う自動糸掛け装置を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、供給された複数の糸のうち少なくとも1本は、自動糸掛け装置によって巻取管に糸掛けが行われるため、作業を煩雑にすることなく、複数の糸を同じタイミングで糸掛けすることができる。
【0011】
第2の発明に係る糸巻取装置は、第1の発明に係る糸巻取装置において、供給された複数の糸を合糸する合糸装置をさらに備え、供給された複数の糸を、それぞれ、前記巻取管に巻き取って、複数のパッケージを形成することと、供給された複数の糸を、前記合糸装置において合糸し、合糸された糸を、巻取管に巻き取って、1つのパッケージを形成することと、を切り替えることができるようになっていることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、複数のパッケージの形成と、1つのパッケージの形成とが切り替え可能な糸巻取装置において、複数のパッケージを形成する場合に、供給された複数の糸のうち少なくとも1本は、自動糸掛け装置によって巻取管に糸掛けが行われるため、作業を煩雑にすることなく、複数の糸を同じタイミングで糸掛けすることができる。
【0013】
第3の発明に係る糸巻取装置は、第2の発明に係る糸巻取装置において、前記自動糸掛け装置が、2つ以上のパッケージに対して設けられており、前記2つ以上のパッケージのうち1つのパッケージに対応する前記自動糸掛け装置は、前記1つのパッケージの形成、及び、前記複数のパッケージの形成のいずれにも用いられ、それ以外の前記自動糸掛け装置の少なくとも一部分が、取り外し可能となっていることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、自動糸掛け装置のうちの1つを、1つのパッケージの形成と複数のパッケージの形成の両方で共用することができる。また、共用する自動糸掛け装置以外の自動糸掛け装置の少なくとも一部分を取り外すことができるので、複数のパッケージを形成する際に、自動糸掛け装置の上記一部分を取り外せば、糸が上記一部分に干渉するのを防止することができる。
【0015】
第4の発明に係る糸巻取装置は、第1〜第3のいずれかの発明に係る糸巻取装置において、前記自動糸掛け装置が、前記複数のパッケージの全てに対して設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、全ての糸を同じタイミングで、自動的に巻取管に糸掛けすることができる。
【0017】
第5の発明に係る糸巻取装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る糸巻取装置において、前記自動糸掛け装置が、前記巻取管に向けて送られる糸の途中部分を保持する糸保持部と、前記巻取管と前記糸保持部との間に配置されており、前記糸保持部によって保持された糸を切断するカッターと、前記巻取管の軸方向と平行な軸を中心に揺動して、前記カッターに切断された糸の前記糸保持部よりも上流側の部分を前記巻取部側に持っていくことによって、糸を前記巻取管と対向するように配置させる糸配置アームと、前記糸配置アームにより前記巻取管と対向するように配置された糸を挟んで、前記巻取管と反対側に配置されており、前記巻取管の軸方向と平行な軸を中心に揺動して、糸を前記巻取管に押し付けて密着させる糸押し付けアームと、を備えていることを特徴とする。
【0018】
複数の巻取管の間隔はそれほど大きくはないため、複数の自動糸掛け装置を設ける場合、各自動糸掛け装置は、巻取管の軸方向に関して小さい間隔で配置する必要がある。しかしながら、本発明によると、糸配置アーム及び糸押し付けアームは、巻取管の軸方向と平行な軸を中心に揺動可能なものであり、巻取管の軸方向には大きく移動しないため、自動糸掛け装置を巻取管の軸方向に小さい間隔で配置することができる。
【0019】
第6の発明に係る糸巻取装置は、第5の発明に係る糸巻取装置において、前前記糸押し付けアームにより前記巻取管の外周面に密着させた糸を、前記押し付けアームとの間で挟んで保持する糸保持アームをさらに備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明によると、巻取管の外周面に密着させた糸を、糸押し付けアームと糸保持アームとで挟んで保持しているため、糸掛けが完了した後、糸押し付けアームを糸保持アームから離れる方向に揺動させる、あるいは、糸保持アームを糸押し付けアームから離れる方向に移動させることにより、これらのアームによる糸の保持が解除され、直ちに糸の巻取を開始させることができる。
【0021】
第7の発明に係る糸巻取装置は、第5又は第6の発明に係る糸巻取装置において、前記巻取管に巻き取られている糸を前記糸保持部へ案内する糸案内部をさらに備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明によると、糸案内部により糸保持部に糸を案内することができるため、糸保持部を巻取中の糸から離れた位置に配置することができ、糸保持部の配置の自由度が高くなる。
【0023】
第8の発明に係る糸巻取装置は、第7の発明に係る糸巻取装置において、前記巻取管に巻き取る糸を前記巻取管の軸方向に綾振りさせるトラバースガイドをさらに備え、前記トラバースガイドによる糸の綾振り範囲は、前記糸案内部が前記糸保持部へ糸を案内させることのできる案内可能領域と、前記糸案内部が前記糸保持部へ糸を案内することのできない案内不可能領域とにまたがっており、前記トラバースガイドは、前記自動糸掛け装置による糸掛け時に、糸が前記案内可能領域に位置している状態で糸の綾振りを一時停止させ、前記糸案内部は、前記トラバースガイドによる綾振りが一時停止された糸を、前記糸保持部へ案内することを特徴とする。
【0024】
本発明によると、トラバースガイドによる糸の綾振り範囲が、案内可能領域と案内不可能領域にまたがっている場合でも、確実に、糸案内部により糸を糸保持部へ案内することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、供給された複数の糸のうち少なくとも1本は、自動糸掛け装置によって巻取管に糸掛けが行われるため、作業を煩雑にすることなく、複数の糸を同じタイミングで糸掛けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る合糸用延伸仮撚加工機の概略構成図である。
【図2】合糸用延伸仮撚加工機が有する各装置を糸の経路に沿って展開した模式図である。
【図3】巻取部の概略構成図である。
【図4】図3のクレードルに保持された巻取体の構成を示す図である。
【図5】(a)が自動糸掛け装置を含む巻取装置の平面図であり、(b)が(a)を矢印Bの方向から見た図である。
【図6】(a)が、図5(a)を矢印VIの方向から見た糸寄せ機構の図であり、(b)が(a)の状態から糸寄せレバーを揺動させた状態を示している。
【図7】(a)が図5(a)の矢印VIIの方向から見たカッターの図であり、(b)が、糸掛け時のカッター近傍の部分における糸の移動を示す図である。
【図8】糸掛けの途中の状態を示す図であり、(a)が図5(a)に対応する図、(b)が図5(b)に対応する図である。
【図9】糸掛けの途中の図8の後の状態を示す図であり、(a)が図5(a)に対応する図、(b)が図5(b)に対応する図である。
【図10】糸掛けの途中の図9の後の状態を示す図であり、(a)が図5(a)に対応する図、(b)が図5(b)に対応する図である。
【図11】1つのパッケージを形成する場合の図であり、(a)が図5(a)に対応する図、(b)が図5(b)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0028】
本実施の形態に係る合糸用延伸仮撚加工機1000は、図2の左右方向に配列された複数の仮撚加工錘100を備えている。なお、図2では、複数の仮撚加工錘100のうち2錘を図示している。
【0029】
図1、図2に示すように、各仮撚加工錘100は、給糸部1と、仮撚加工部2と、合糸部3と、後処理部4と、巻取部5とを備えている。給糸部1は、後述する第1フィードローラ6a、6bよりも上流側の区間を指し、仮撚加工部2は、第1フィードローラ6a、6bから後述する上流側第2フィードローラ7a、7bに至るまでの区間を指す。同様に、合糸部3は、上流側第2フィードローラ7a、7bから後述する下流側第2フィードローラ8a、8bに至るまでの区間を指し、後処理部4は、下流側第2フィードローラ8a、8bから後述する第3フィードローラ9a、9bに至るまでの区間を指す。そして、巻取部5は第3フィードローラ9a、9bよりも下流側の区間を指す。
【0030】
給糸部1は、クリールスタンド10に支持される2つの給糸パッケージ11a、11bを有し、2本の糸Ya、Ybを送出する。給糸パッケージ11a、11bから送出された糸Ya、Ybは、パイプ12a、12bと、第1フィードローラ6a、6bと、を経て仮撚加工部2に至る。
【0031】
仮撚加工部2は、給糸部1から送出された一対の糸Ya、Ybに対して仮撚加工を施すものである。仮撚加工部2は、糸Ya、Ybの走行方向の上流側から順に、糸Ya、Ybを加熱する1次ヒータ13と、糸Ya、Ybを冷却する冷却装置14a、14bと、糸Ya、Ybに対して撚りを付与する仮撚装置15a、15bとを備えている。
【0032】
合糸部3は、仮撚加工部2によって仮撚加工が施された糸に交絡部を形成するためのものであって、インタレースノズル16a、16bを備えている。上記2本の糸Ya、Ybがインタレースノズル16a、16bのうち何れか一方のインタレースノズル16b(16aでもよい、以下同様)に一緒に通される場合は、インタレースノズル16bが糸Ya、Ybに対して交絡部を形成することにより、糸Ya、Ybは合糸される。一方、上記一対の糸Ya、Ybが別個に、それぞれ、インタレースノズル16a、16bに通される場合は、インタレースノズル16aが糸Yaに対して交絡部を形成すると共に、インタレースノズル16bが糸Ybに対して交絡部を形成する。
【0033】
後処理部4は、糸Ya、Ybに対して熱処理を施すものであって、2次ヒータ17a、17bを備えている。なお、2次ヒータ17a、17bは設けられていなくてもよい。
【0034】
巻取部5は、仮撚加工部2によって仮撚加工が施された2本の糸Ya、Ybを巻取管に巻き取るためのものであって、巻取装置18(糸巻取装置)を備えている。巻取装置18は、1つのクレードル20、トラバース装置21、巻取ドラム23、及び、2つの自動糸掛け装置24a、24bを備えている。ここで、巻取装置18は、合糸用延伸仮撚加工機1000のコンパクト性の観点から、他の錘100の巻取装置18とほぼ上下に重なり合うように配置される。
【0035】
クレードル20は、互いに対向する一対のボビンホルダ22a、22bを備えており、ボビンホルダ22a、22bを介して、図3(a)に示すように、略円筒状の1つの巻取管19Aを回転自在に保持する。あるいは、図3(b)に示すように、2つの巻取管19Bを含む巻取体40を回転自在に保持する。
【0036】
ここで、巻取体40は、図4に示すように、2つの巻取管19Bと、2つの巻取管19Bを分離可能に連結させる連結部材41とを備えている。巻取管19Bは、軸方向に関する長さが巻取管19Aの約半分の巻取管である。
【0037】
連結部材41は、合成樹脂などの弾性材料からなる、外径が巻取管19Bの内径とほぼ同じ略円筒形状の部材である。連結部材41の軸方向に関する中央部を挟んだ両側に位置する部分は、それぞれ、挿通部42となっており、これら2つの挿通部42を、それぞれ、その先端側から巻取管19Bに挿通させることによって、連結部材41に巻取管19Bを取り付け、これにより、2つの巻取管19Bを互いに連結させる。
【0038】
また、2つの挿通部42の間に位置する、連結部材41の軸方向に関する略中央部には、ゴムなどの弾性材料からなるOリング43が巻かれている。そして、挿通部42に巻取管19Bが取り付けられた状態では、Oリング43と、巻取管19Bの端とが密着した状態となっている。
【0039】
トラバース装置21は、図示しないモータによって往復走行するベルト体26と、このベルト体26に設けられ、糸Ya、Ybを案内する、2つのトラバースガイド27a、27bと、を備えている。ベルト体26は、例えば、内周に多数の歯を有する歯付きベルトであり、図示しない駆動モータによって正逆回転される駆動プーリ28と、一対の従動プーリ29と、に巻き掛けられる。この一対の従動プーリ29間におけるベルト体26の走行経路は巻取管19Bの軸と略平行となっている。上記のトラバースガイド27a、27bは、従動プーリ29の一方と他方の間において、所定の間隔を空けて、ベルト体26に設けられる。ここで、「所定の間隔」とは、2つの巻取管19Bの軸方向に関する中心間の距離とほぼ同じ間隔である。また、2つのトラバースガイド27a、27bは、それぞれ、ベルト体26に対して着脱可能となっている。
【0040】
また、トラバース装置21の上流側には、糸ガイド30a〜30cが設けられている。糸ガイド30aは、第3フィードローラ9aから送出される糸Yaの糸道をトラバースガイド27aのトラバース中心の正面へと変化させるためのものである。糸ガイド30bは、第3フィードローラ9bから送出される糸Ybの糸道をトラバースガイド27bのトラバース中心の正面へと変化させるためのものである。糸ガイド30cは、糸ガイド30a、30bよりも上流側且つ下方に配置されており、巻取管19Bの軸方向に関して糸ガイド30a、30bの間に位置している。糸ガイド30cは、糸Yaと糸Ybとが合糸されることによって形成される糸Ygの糸道をトラバースガイド27b(27aでもよい)のトラバース中心の正面へと変化させるためのものである。なお、糸ガイド30cは、実際には、図5(b)に示す位置よりも低い位置、具体的には、図5(b)に示す巻取装置18の下方に配置された巻取装置18の糸ガイド30a、30bとほぼ同じ高さに配置されているが、図5(b)では、スペースの都合により、糸ガイド30cの位置を実際よりも上方に図示している。
【0041】
また、糸ガイド30a〜30cは、使用状況に応じて取り付け、取り外し、位置の変更等ができるようになっていてもよい。また、図5に示すように、糸ガイド30a、30bのすぐ下流側の部分には、巻取管19Bの軸方向に延びた略円柱形状のガイドバー70が設けられている。
【0042】
巻取ドラム23は、クレードル20に保持された巻取管19A、19Bの外周面と密着するように配置されている。そして、巻取ドラム23は、図示しないモータによって回転し、巻取ドラム23が回転すると、巻取ドラム23に密着した巻取管19A、19Bが連れ回りする。
【0043】
自動糸掛け装置24a、24bは、それぞれ、サクションマウス51、糸寄せ機構52、糸配置アーム53、糸保持アーム54、糸押し付けアーム55、カッター56などを備えている。
【0044】
サクションマウス51(糸保持部)は、糸ガイド30a、30bとトラバースガイド27a、27bとの間における糸ガイド30a、30b近傍の部分に、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybから、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の上側)にずれて配置されており、図示しない仮撚加工錘100のフレームに取り付けられている。また、自動糸掛け装置24bのサクションマウス51は、上記フレームから取り外し可能になっている。
【0045】
サクションマウス51は、その上端に吸引口51aが設けられているとともに、下端が図示しない負圧供給源に接続されている。また、吸引口51aは、蓋61によって開閉可能となっている。そして、図示しない駆動機構によって蓋61を移動させて吸引口51aを開くと、後述するように、吸引口51aから糸Ya、Ybを吸引(保持)可能となる。
【0046】
糸寄せ機構52(糸案内部)は、糸ガイド30a、30bとサクションマウス51との間に配置されており、糸寄せレバー62と糸ガイド板63とを備えている。糸寄せレバー62は、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされた糸Ya、Ybの下方を通るように、巻取管19Bの軸方向に延びた薄板状の部材であり、糸Ya、Ybがトラバースガイド27a、27bによる綾振り範囲のどの位置にある状態でも、糸Ya、Ybとそれぞれ対向している。糸寄せレバー62は、片側の端部(図6(a)における右端部)において、平面視で巻取管19Bの軸方向と直交する方向(図5(a)の左右方向)に延びたシャフト64に揺動自在に支持されており、図示しないモータなどによって、シャフト64を中心に揺動させることができるようになっている。
【0047】
糸ガイド板63は、巻取管19Bの軸方向に延びた板状体であり、前記巻取管19Bの軸方向に関して、糸寄せレバー62の先端部側の端からその途中部分までは、シャフト64側ほどその上端の高さが高くなっており、この途中部分よりもシャフト64側の部分においては、上端の高さが一定となっている。また、糸ガイド板63は、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybから、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の上側)にずれて配置されている。
【0048】
また、自動糸掛け装置24bの糸寄せレバー62及び糸ガイド板63は、仮撚加工錘100のフレームから取り外し可能となっている。
【0049】
糸配置アーム53は、サクションマウス51とトラバースガイド27a、27bとの間に配置された、巻取管19Bの軸方向に延びたシャフト65に取り付けられており、図示しないモータなどによりシャフト65を回転させると、シャフト65を中心に揺動する。また、糸配置アーム53は、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybから、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の上側)にずれて配置されている。
【0050】
糸配置アーム53は、後述するように巻取管19Bに糸を巻き取っている状態(図5の状態)で、シャフト65に取り付けられている部分から、平面視で、巻取管19Bから離れる方向(図5(a)の右方)に延びており、その先端部が、サクションマウス51と糸ガイド板63との間に位置している。また、この状態で、糸配置アーム53は、その先端部において、シャフト65側の部分から順に、下方、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の下方)、及び、上方に折れ曲がっており、これらのうち、巻取管19Bの軸方向、及び、上方に折れ曲がった部分は、サクションマウス51の吸引口51a、及び、糸ガイド板63の上端のうち最も高い部分(高さが一定の部分)よりも下方に位置している。
【0051】
糸保持アーム54は、糸配置アーム53のシャフト65近傍の部分に取り付けられており、糸配置アーム53と一体的にシャフト65を中心に揺動可能となっている。糸保持アーム54は、図5(b)の方向から見て、糸配置アーム53に取り付けられた部分から、糸配置アーム53に対して右上方に傾斜した方向に延びているとともに、途中で、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の下方)に折れ曲がっている。
【0052】
糸押し付けアーム55は、サクションマウス51とシャフト65との間に設けられた、巻取管19Bの軸方向に延びたシャフト66に取り付けられており、図示しないモータなどによりシャフト66を回転させると、シャフト66を中心に揺動する。また、糸押し付けアーム55は、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybから、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の上側)にずれて配置されている。
【0053】
糸押し付けアーム55は、後述するように巻取管19Bに糸を巻き取っている状態(図5の状態)で、シャフト66に取り付けられている部分から、平面視で、巻取管19Bから離れる方向(図5(a)の右方)に延びており、その先端部が、サクションマウス51とシャフト66との間に位置している。また、この状態で、糸押し付けアーム55は、その先端部において、シャフト66側から順に、巻取管19Bの軸方向(図5(a)の下方)、及び、上方に折れ曲がっており、糸保持アーム54の先端部と、糸押し付けアーム55の先端部のうち巻取管19Bの軸方向に延びた部分とは、図5(a)の左右方向から見て互いに重なっている。
【0054】
ここで、シャフト65は、自動糸掛け装置24aの糸配置アーム53が取り付けられた部分65aと、自動糸掛け装置24bの糸配置アーム53が取り付けられた部分65bとに分かれている。部分65aは、その両端部が、それぞれ、仮撚加工錘100の図示しないフレームに固定されたプレート67に設けられた支持部68a、68bに回転自在に支持されている。部分65bは、その両端部が、それぞれ、上述の支持部68b、及び、プレート67に取り付けられた取り付け板69に設けられた支持部68cに回転自在に支持されている。そして、部分65aと部分65bとは、支持部68b内において互いに連結され、一体的に回転する。
【0055】
また、シャフト66は、自動糸掛け装置24aの糸押し付けアーム55が取り付けられた部分66aと、自動糸掛け装置24bの糸押し付けアーム55が取り付けられた部分66bとに分かれている。部分66aは、その両端部が、それぞれ、上述の支持部68a、及び、プレート67に設けられた支持部68dに回転自在に支持されている。部分66bは、その両端部が、それぞれ、上述の支持部68d、及び、取り付け板69に設けられた支持部68eに回転自在に支持されている。そして、部分66aと部分66bとは、支持部68d内において互いに連結され、一体的に回転する。
【0056】
また、支持部68c、68eが設けられた取り付け板69は、プレート67から取り外しが可能となっており、シャフト65の部分65b、及び、シャフト66の部分66bは、それぞれ、支持部68b、68dから引き抜くことが可能となっている。そして、取り付け板69をプレート67から取り外すとともに、部分65b、66bをそれぞれ支持部68b、68dから引き抜くことによって、自動糸掛け装置24bの糸配置アーム53、糸保持アーム54及び糸押し付けアーム55を、仮撚加工錘100から取り外すことができるようになっている。
【0057】
カッター56は、後述するように、糸掛け時に糸を切断するためのものであって、プレート67の糸押し付けアーム55の先端部とシャフト66との間に配置されており(少なくともサクションマウス51とトラバースガイド27a、27bとの間に配置されていてればよい)、巻取管19Bの軸方向に延びている。カッター56には、図7における右側の端において開口したスリット56aが形成されており、スリット56aの壁を形成する部分に刃56bが設けられている。また、カッター56は、プレート67から取り外し可能となっている。
【0058】
次に、仮撚加工錘100においてパッケージPを形成する手順について説明する。仮撚加工錘100においては、2本の糸Ya、Ybを、2本の巻取管19Bに巻き取って2つのパッケージPを形成することと、2本の糸Ya、Ybを合糸し、合糸された糸Ygを1つの巻取管19Aに巻き取って1つのパッケージPを形成することとが切り替え可能となっている。
【0059】
まず、2つのパッケージPを形成する動作について説明する。この場合には、給糸パッケージ11a、11bから送出された2本の糸Ya、Ybは、それぞれ、パイプ12a、12bと、第1フィードローラ6a、6bと、1次ヒータ13と、冷却装置14a、14bと、仮撚装置15a、15bと、上流側第2フィードローラ7a、7bと、インタレースノズル16a、16bと、下流側第2フィードローラ8a、8bと、2次ヒータ17a、17bと、第3フィードローラ9a、9bと、を介して、巻取装置18に送られる。
【0060】
詳しくは、上流側第2フィードローラ7a、7bの糸送り速度は第1フィードローラ6a、6bの糸送り速度よりも大となるように設定される。これにより、糸Ya、Ybは、第1フィードローラ6a、6bと上流側第2フィードローラ7a、7bとの間で延伸され、この状態で、仮撚装置15a、15bによって、第1フィードローラ6a、6bと上流側第2フィードローラ7a、7bとの間で加撚される。延伸されつつ加撚された糸Ya、Ybは、1次ヒータ13で熱セットされた後、冷却装置14a、14bで冷却される。加撚及び熱セット、冷却された糸Ya、Ybは、仮撚装置15a、15bを通過した後、上流側第2フィードローラ7a、7bに至るまでに解撚される。
【0061】
また、上流側第2フィードローラ7a、7bを通過した糸Yaは、インタレースノズル16aへ導かれ、このインタレースノズル16a、16bによって交絡部が形成された後、下流側第2フィードローラ8a、8bへ送られる。
【0062】
下流側第2フィードローラ8a、8bの糸送り速度は第3フィードローラ9a、9bの糸送り速度と異なるように設定される。これにより、糸Ya、Ybは、下流側第2フィードローラ8a、8bと第3フィードローラ9a、9bとの間で弛緩され、この状態で、糸Ya、Ybは、2次ヒータ17a、17bにおいて弛緩熱処理され、第3フィードローラ9a、9bへ送られる。ここで、下流側第2フィードローラ8a、8bと第3フィードローラ9a、9bとの糸送り速度の比率は、糸Ya、Ybの形態に応じて設定される。
【0063】
第3フィードローラ9a、9bから繰り出された2本の糸Ya、Ybは、それぞれ、糸ガイド30a、30bを通過し、ベルト体26の往復走行により2つの巻取管19Bの軸と平行に往復運動するトラバースガイド27a、27bによって綾振られながら、回転する巻取ドラム23に当接して連れ回る2つの巻取管19Bにそれぞれ巻き取られ、これにより、2つのパッケージPが形成される。
【0064】
そして、2つのパッケージPが満巻きとなると、トラバースガイド27a、27bによる糸Ya、Ybの綾振りを継続したまま、図8に示すように、サクションマウス51の吸引口51aを開いて、糸Ya、Ybを吸引可能な状態にし、その後、図6(b)に示すように、糸寄せレバー62を時計回り方向に約90°揺動させる。すると、図6(b)に示すように、糸Ya、Ybの糸寄せレバー62近傍の部分は、糸寄せレバー62に押されて図6(b)に矢印Rで示すように、糸ガイド板63の上端に沿って移動し、巻取管19Bの軸方向に関して、サクションマウス51を挟んだ反対側まで移動する(サクションマウス51へ案内される)。
【0065】
このとき、糸Ya、Ybは、図7(b)に矢印Sで示すように、カッター56の上端に沿って移動することで、カッター56のスリット56aの開口側(図7(b)の右側)まで移動する。なお、図8では、このときの糸Ya、Ybの位置を、一点鎖線で示している。さらに、この状態で、トラバースガイド27a、27bにより、糸Ya、Ybが綾振りされると、糸Ya、Ybが図8(a)の下方へ移動するときに、図7(b)に矢印Tに示すように、糸Ya、Ybは、スリット56a内に導入され、刃56bによって切断される。また、このとき、糸Ya、Ybのカッター56の上流側に位置する部分が、サクションマウス51の吸引口51aの真上にきており、切断された糸Ya、Ybのうち、カッター56よりも上流側の部分(図8の実線で示した部分)の糸端が、サクションマウス51に吸引されることによって保持され、カッター56よりも下流側の部分(図8(a)の二点鎖線で示した部分)は巻取管19Bに巻き取られる。
【0066】
次に、図示しない玉揚機構がクレードル20を回動させ、パッケージPが巻取ドラム23から離反されて玉揚される。そして、2つの巻取管19Bが空の巻取体40がクレードル20に供給されてボビンホルダ22a、22bに保持されると、クレードル20を回動させ、2つの巻取管19Bを巻取ドラム23に対して当接させた状態とする。すると、巻取ドラム23に対する当接により2つの巻取管19Bが回転し始める。
【0067】
次に、図9に示すように、糸配置アーム53を、図9(b)の反時計回り方向に揺動させることにより、糸配置アーム53の先端部を巻取管19Bの上方まで持っていく。これにより、糸Ya、Ybのサクションマウス51よりも上流側の部分が糸配置アーム53の先端部に引っ掛かかり、糸Ya、Ybの糸配置アーム53に引っ掛かった部分が糸配置アーム53の先端部とともに巻取管19B側に持っていかれることによって、糸Ya、Ybが巻取管19Bと対向するように配置される。このとき、糸配置アーム53の先端部が上述したように折り曲げられているため、糸配置アーム53に引っ掛かった糸Ya、Ybが糸配置アーム53から抜け落ちてしまうことが防止される。
【0068】
続いて、糸寄せレバー62を揺動させて、元の位置(図6(a)の位置)に戻す。これにより、平面視で、糸Yaは、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22aとの境界を横切るように配置され、糸Ybは、対応する巻取管19BとOリング43との境界を横切るように配置される。
【0069】
また、このとき、糸配置アーム53とともに揺動する糸保持アーム54は、巻取管19Bの近傍まで移動し、糸Ya、Ybよりも下方に位置しているとともに、糸Ya、Ybと対向している。
【0070】
次に、図10に示すように、糸押し付けアーム55を図10(b)の反時計回り方向に揺動させる。すると、糸Ya、Ybの糸配置アーム53と糸ガイド30a、30bとの間の部分が、糸押し付けアーム55によって下方に押し付けられることによって巻取管19Bの外周面に密着する。このとき、糸押し付けアーム55の先端部が上述したように折り曲げられているため、糸押し付けアーム55により糸Ya、Ybを押し付ける際に、糸Ya、Ybが糸押し付けアーム55から抜け落ちてしまうのが防止される。また、巻取管19Bの外周面に密着した糸Ya、Ybは、糸押し付けアーム55と糸保持アーム54とに挟まれて保持される。
【0071】
そして、糸Ya、Ybが巻取管19Bの外周面に密着した状態で保持されると、糸Ya、Ybの巻取管19Bの外周面に密着した部分は、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22a、及び、対応する巻取管19BとOリング43に挟まれることによって捕捉される。このとき、上述したように、糸Ya、Ybが、それぞれ、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22aとの境界、及び、対応する巻取管19BとOリング43との境界を横切るように配置されているため、巻取管19Bの軸方向に関する長さにばらつきがある場合でも、Ya、Ybの巻取管19Bの外周面に密着した部分は、確実に対応する巻取管19Bとボビンホルダ22a、及び、対応する巻取管19BとOリング43に挟まれる。そして、この状態で巻取管19Bが回転すると、各巻取管19Bの軸方向に関する片側の端部(図10(a)における上端部)にバンチ巻Bが形成され、これにより、糸掛けが完了する。
【0072】
そして、この後、糸押し付けアーム55を揺動させて元の位置(図5の位置)に戻すと、糸Ya、Ybは、巻取管19Bの軸方向への移動、すなわち、トラバースガイド27a、27bによる綾振りが可能となり、巻取管19Bへの糸Ya、Ybの巻取が再開される。ここで、糸押し付けアーム55を元の位置に戻す際に、糸押し付けアーム55が糸Ya、Ybを保持しないため、上述したように、糸掛けが完了した直後に綾振りが再開される。したがって、トラバースガイド27a、27bによる綾振りが再開される前に、巻取管19Bの同じ個所に連続して糸Ya、Ybが巻き取られること(いわゆる、棒巻き)がなく、巻取管19Bに巻き取られる糸Ya、Ybにたるみが生じにくくなる。そして、巻取管19Bへの糸Ya、Ybの巻取が再開され、糸Ya、Ybが糸保持アーム54と対向しない位置まで移動してから、糸配置アーム53(糸保持アーム54)を揺動させて、元の位置(図5の位置)に戻す。
【0073】
次に、1つのパッケージPを形成する動作について説明する。この場合には、糸Ygとの接触を防止するために、予め、取り付け板69をプレート67から取り外すとともに、部分65b、66bをそれぞれ支持部68b、68dから引き抜くことによって、自動糸掛け装置24bの糸配置アーム53、糸保持アーム54及び糸押し付けアーム55を取り外しておくとともに、自動糸掛け装置24bの、サクションマウス51、糸寄せレバー62、糸ガイド板63、カッター56を取り外しておく。
【0074】
そして、この場合には、上述と同様にして、第1フィードローラ6a、6bと上流側第2フィードローラ7a、7bとの間で延伸されつつ加撚された2本糸Ya、Ybは、仮撚装置15a、15bを通過した後、ともに、1つのインタレースノズル16bへ導かれ、このインタレースノズル16bによって合糸された後、下流側第2フィードローラ8bへ送られる。
【0075】
合糸されることによって形成された糸Ygは、図3(a)に示すように、下流側第2フィードローラ8bと第3フィードローラ9bとの間で弛緩され、この状態で、2次ヒータ17bにおいて弛緩熱処理され、第3フィードローラ9bへ送られる。
【0076】
第3フィードローラ9bから繰り出された糸Ygは、それぞれ、糸ガイド30cを通過し、ベルト体26の往復走行により1つの巻取管19Aの軸と平行に往復運動するトラバースガイド27aによって綾振られながら、回転する巻取ドラム23に当接して連れ回る1つの巻取管19Aに巻き取られ、これにより、1つのパッケージPが形成される。
【0077】
このとき、1つの巻取管19Aに糸Ygを巻き取る場合のトラバースガイド27bの移動幅は、2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取る場合のトラバースガイド27a、27bの移動幅よりも大きくなる。しかしながら、図11に示すように、糸Ygは、糸ガイド30a、30bよりもトラバースガイド27aから離れた位置にある糸ガイド30cを中心に綾振りされるため、糸ガイド30cにおける糸Ygの屈曲角度は、2つのパッケージを形成する場合の糸ガイド30a、30bにおける糸Ya、Ybの屈曲角度と同程度となる。
【0078】
また、糸ガイド30cは糸ガイド30a、30bよりも下方に位置しているため、糸Ygの糸ガイド30cとトラバースガイド27aとの間の部分は、略円柱形状のガイドバー70に掛かっており、滑らかに屈曲されている。そして、糸Ygのガイドバー70に掛かっている部分は、トラバースガイド27aにより綾振りされたときに、滑らかなガイドバー70の外周面上を、ガイドバー70の軸方向に移動する。これにより、ガイドバー70において屈曲された糸Ygに大きなダメージを与えてしまうのを防止している。
【0079】
また、1つのパッケージPを形成する場合でも、2つのパッケージPを形成する場合と同様、パッケージPが満巻きとなると、パッケージPの玉揚、空の巻取管19Aへ糸掛けが行われるが、この場合には、自動糸掛け装置24aにより、巻取管19Aへの糸掛けを行う。すなわち、本実施の形態では、自動糸掛け装置24aは、2つのパッケージPを形成する場合の、巻取管19Bへの糸Yaの糸掛け、及び、1つのパッケージPを形成する場合の、巻取管19Aへの糸Ygの糸掛けの両方に用いられる。
【0080】
ただし、この場合には、図11(a)に示すように、トラバースガイド27aに綾振られた糸Ygの位置によっては、糸寄せレバー62と対向しないため、糸Ygが糸寄せレバー62と対向しない位置にある状態で、図8で説明したのと同様に糸寄せレバー62を揺動させてしまうと、糸Ygをサクションマウス51に向けて移動させることができない。
【0081】
そこで、巻取管19Aに糸掛けを行う場合には、トラバースガイド27aを、糸Ygが糸寄せレバー62と対向するように配置される位置において一時停止させ、この状態で、糸寄せレバー62を揺動させる。そして、糸Ygをサクションマウス51に吸引させてから、トラバースガイド27aの動作を再開させる。これにより、糸寄せレバー62を揺動させたときに、確実に、糸Ygをサクションマウス51に向けて移動させることができる。なお、本実施形態では、トラバースガイド27aによる糸Ygの綾振り範囲のうち、糸寄せレバー62と対向する領域が、本発明に係る案内可能領域に相当し、糸寄せレバー62と対向しない領域が、本発明に係る案内不可能領域に相当する。
【0082】
以上に説明した、本実施の形態によると、供給された2本の糸Ya、Ybを、それぞれ巻取管19Bに巻き取って2つのパッケージPを形成することと、糸Ya、Ybが合糸された糸Ygを巻取管19Aに巻き取って1つのパッケージPを形成することとが切り替え可能な巻取装置18において、2つの自動糸掛け装置24a、24bが設けられているため、2つのパッケージPを形成する場合に、2つの巻取管19Bに同じタイミングで糸掛けを行うことができる。これにより、2つの巻取管19Bへ同じタイミングで糸Ya、Ybの巻取が開始される。このとき、オペレータの作業が煩雑になるといったこともない。
【0083】
また、本実施の形態の巻取装置18は、比較的小さい間隔で配列された2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取るものであるため、自動糸掛け装置24a、24bの巻取管19Bの軸方向に関する間隔を大きくすることはできない。しかしながら、本実施の形態では、自動糸掛け装置24a、24bの、糸配置アーム53、糸保持アーム54及び糸押し付けアーム55が、巻取管19Bの軸方向に延びたシャフト65、66を中心に揺動するものであり、巻取管19Bの軸方向には大きく移動しない。したがって、自動糸掛け装置24a、24bを巻取管19Bの軸方向に関して小さい間隔で配置することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、糸保持アーム54がその先端部において巻取管19Bの軸方向と平行に延びており、糸押し付けアーム55が、糸保持アーム54とで糸Ya、Ybを挟んで、糸Ya、Ybを巻取管19Bの外周面に密着させるため、バンチ巻Bが形成された後、糸押し付けアーム55を糸保持アーム54から離して元の位置に戻すと、糸Ya、Ybが、トラバースガイド27a、27bによる綾振りが可能な状態となり、直ちに、巻取管19Bへの糸Ya、Ybの巻取を再開することができ、巻取管19Bに糸Ya、Ybが棒巻きされてしまうのを防止することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、自動糸掛け装置24a、24bが糸寄せ機構52を備えているので、サクションマウス51を、巻取時の糸Ya、Ybから離れた位置に配置することが可能となり、サクションマウス51の配置の自由度が高くなる。
【0086】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0087】
上述の実施の形態では、糸寄せレバー62は、糸Ya、Ybがトラバースガイド27a、27bによる綾振り範囲のどの位置にある状態でも、糸Ya、Ybとそれぞれ対向していたが、これには限られない。糸寄せレバーは、上述の実施の形態の糸寄せレバー62よりも長さが短く、糸Ya、Ybがトラバースガイド27a、27bによる綾振り範囲のうち一部の領域(案内可能領域)にあるときにのみ糸Ya、Ybと対向し、それ以外の領域(案内不可能領域)にあるときには糸Ya、Ybと対向しないようになっていてもよい。この場合でも、糸掛け時に、1つの巻取管19Aに糸掛けを行う場合と同様、糸Ya、Ybが糸寄せレバーと対向する位置にきた状態でトラバースガイド27a、27bによる綾振りを一時停止させてから、糸寄せレバー62を揺動させれば、糸Ya、Ybをサクションマウス51に案内することができる。
【0088】
また、糸寄せ機構52は、糸寄せレバー62と糸ガイド板63とを備えたものであることには限られず、糸Ya、Yb、Ygをサクションマウス51に案内することが可能な別の機構であってもよい。
【0089】
また、上述の実施の形態では、サクションマウス51が、トラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybから、巻取管19Bの軸方向にずれた位置に配置されており、糸掛け時に、糸寄せ機構52により、糸Ya、Ybをサクションマウス51により吸引可能な位置に案内するようになっていたが、これには限られない。糸寄せ機構52がなく、サクションマウス51が、吸引口51aを開くだけでトラバースガイド27a、27bにより綾振りされる糸Ya、Ybが吸引されるような位置に配置されていてもよい。ただし、この場合には、サクションマウス51を、綾振りされる糸Ya、Ybを吸引可能であり、且つ、巻取時に糸Ya、Ybに干渉しないような位置に配置する必要がある。
【0090】
また、上述の実施の形態では、糸Ya、Ybが、糸配置アーム53により、それぞれ、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22aとの境界、及び、対応する巻取管19BとOリング43との境界を横切るように配置されていたが、これには限られない。例えば、糸Ya、Ybが、糸配置アーム53により、これらの境界と平行に配置されるようになっていてもよい。
【0091】
この場合には、例えば、糸配置アーム53によって配置された糸Ya、Ybを、これらの境界に向けて巻取管19Bの軸方向にスライドさせる機構などを別途設けるなどすれば、糸Ya、Ybの巻取管19Bの外周面に密着した部分は、確実に、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22a、及び、対応する巻取管19BとOリング43にそれぞれ挟まれることによって捕捉される。
【0092】
また、このような糸Ya、Ybをスライドさせる機構がない場合でも、糸Ya、Ybを精度よくこれらの境界と対向するように配置させれば、糸Ya、Ybの巻取管19Bの外周面に密着した部分を、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22a、及び、対応する巻取管19BとOリング43に挟まれることによって捕捉させることができる。
【0093】
また、上述の実施の形態では、糸Yaが、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22aとに挟まれることによって捕捉され、糸Ybが、対応する巻取管19BとOリング43とに挟まれることによって捕捉されるようにしていたが、これには限られない。糸Yaが、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22aとに挟まれることによって捕捉され、糸Ybが、対応する巻取管19Bとボビンホルダ22bとに挟まれることによって捕捉されるようにしてもよい。あるいは、糸Ya、Ybが、ともに、対応する巻取管19BとOリング43とに挟まれることによって捕捉されるようにしてもよい。ただし、これらの場合には、2つの巻取管19Bの互いに反対側の端部にバンチ巻Bが形成されるため、2つの巻取管19Bにおける糸Ya、Ybの巻取方向が互いに逆向きになる。
【0094】
さらには、糸Ya、Ybが、対応する巻取管19Bと、ボビンホルダ22a、22bやOリング43とに挟まれることによって捕捉されるようにすることにも限られない。例えば、巻取管19Bの軸方向に関する一方の端部に、その周方向に沿って溝が形成されており、糸Ya、Ybがこれらの溝によって捕捉されるようにしてもよい。
【0095】
また、上述の実施の形態では、糸掛けが完了した(バンチ巻Bが形成された)後、糸保持アーム54を揺動させずに、糸押し付けアーム55を揺動させることにより、糸Ya、Ybを巻取管19Bの軸方向に移動(トラバースガイド27a、27bによる綾振り)可能となるようにしたが、これには限られない。糸押し付けアーム55を揺動させずに、糸保持アーム54を糸押し付けアーム55から離れる方向に揺動させてもよい。あるいは、糸押し付けアーム55と糸保持アーム54とを、互いに離隔する方向に揺動させてもよい。
【0096】
また、上述の実施の形態では、糸押し付けアーム55により巻取管19Bの外周面に密着させた糸Ya、Ybを糸押し付けアーム55と糸保持アーム54との間で挟んで保持したが、2つのアーム54、55以外の機構によって糸Ya、Ybを保持してもよい。
【0097】
また、上述の実施の形態では、2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取って2つのパッケージPを形成することと、1つの巻取管19Aへの糸Ygを巻き取って1つのパッケージPを形成することとを切り替え可能とするために、自動糸掛け装置24bの、サクションマウス51、糸寄せレバー62、糸ガイド板63、糸配置アーム53、糸保持アーム54及び糸押し付けアーム55などが取り外し可能となっていたが、これには限られない。
【0098】
例えば、これらの部材のうちの一部のみが、取り外し可能となっており、他の部材については、巻取管19Aへの巻取時の糸Ygに干渉しない位置に配置されていてもよい。あるいは、これらの部材を、1つのパッケージPを形成する際に、糸Ygに干渉しない位置に移動させることができるようになっていてもよい。さらには、自動糸掛け装置24bの全ての部材が、巻取管19Aへの巻取時の糸Ygに干渉しない位置に配置されている場合や、巻取装置18が2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取って2つのパッケージPを形成することだけを行うものである場合には、自動糸掛け装置24b全ての部材が、取り外しできないものであってもよい。
【0099】
また、上述の実施の形態では、サクションマウス51によって保持された糸Ya、Ybを、巻取管19Bの軸方向に平行なシャフト65を中心に揺動する糸配置アーム53によって巻取管19Bと対向するように配置させるとともに、巻取管19Bの軸方向に平行なシャフト66を中心に揺動する糸押し付けアーム55によって巻取管19Bの外周面に密着させたが、これには限られない。
【0100】
例えば、糸配置アーム53とは別の構成によって糸Ya、Ybを巻取管19Bと対向するように配置させてもよいし、糸押し付けアーム55とは別の構成によって糸Ya、Ybを巻取管19Bの外周面に密着させてもよい。さらには、自動糸掛け装置は、糸Ya、Ybを巻取管19Bと対向するように配置し、配置された糸を巻取管19Aの外周面に密着させるのとは異なる動作によって、巻取管19Bに糸掛けを行うものであってもよい。
【0101】
また、上述の実施の形態では、2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取るのに対応して、2つの自動糸掛け装置24a、24bが設けられていたが、これには限られず、例えば、自動糸掛け装置24aのみが設けられていてもよい。この場合には、糸Yaについては、自動糸掛け装置24aによって糸掛けを行い、糸Ybについては、オペレータが手動で糸掛けを行う。そして、この場合でも、オペレータが、自動糸掛け装置24aにより糸掛けが行われるのと同時に、糸Ybを糸掛けすれば、同じタイミングで2本の糸Ya、Ybを巻取管19Bに糸掛けすることができる。
【0102】
なお、この場合には、2つの巻取管19Bが空の巻取体40がクレードル20に供給されてボビンホルダ22a、22bに保持された後、オペレータがスイッチの操作などにより糸掛けの開始を指示したときに、自動糸掛け装置24aによる以降の動作(アーム53〜55の揺動)が実行されるようにすれば、オペレータは、所望のタイミングで糸掛けを行うことができ、自動糸掛け装置24aと糸掛けのタイミングを合わせやすくなる。
【0103】
また、上述の実施の形態では、2本の糸Ya、Ybを2つの巻取管19Bに巻き取って2つのパッケージPを形成したが、これには限られず、2本の糸Ya、Ybを、糸Ygを巻き取ったのと同じ1つの巻取管19Aの互いに離隔した部分にそれぞれ巻き取って2つのパッケージPを形成してもよい。なお、この場合には、巻取完了後、巻取管19Aを切断すれば、2つのパッケージPを分離することができる。
【0104】
また、以上では、2つの巻取管19Bに糸Ya、Ybを巻き取る糸巻取装置に本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、3つ以上の巻取管に糸を巻き取る糸巻取装置に本発明を適用することも可能である。
【0105】
この場合には、全ての巻取管19Bに対して自動糸掛け装置を設け、全ての巻取管19Bに対して自動糸掛け装置により糸掛けを行う場合や、巻取管19Bの数よりも1つ少ない数の自動糸掛け装置を設け、1つの巻取管19Bについては、オペレータが糸掛けを行い、残りの巻取管19Bについては自動糸掛け装置により糸掛けを行う場合には、全ての巻取管19Bへ同じタイミングで糸掛けを行うことができる。
【0106】
また、自動糸掛け装置の数が、巻取管19Bの数よりも2つ以上少ない場合でも、全ての巻取管19Bに対してオペレータが手動で糸掛けを行う場合と比較すれば、オペレータが手動で糸掛けを行う糸の本数は少なくなり、各巻取管19B間における糸掛けのタイミングのずれを小さくすることはできる。あるいは、各巻取管19Bに同じタイミングで糸掛けを行うのに、必要なオペレータの数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0107】
16a、16b インタレースノズル
18 巻取装置
19A、19B 巻取管
20 クレードル
24a、24b 自動糸掛け装置
51 サクションマウス
52 糸寄せ機構
53 糸配置アーム
54 糸保持アーム
55 糸押し付けアーム
65、66 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取管を回転自在に保持する1つのクレードルを備え、
供給された複数の糸を、前記巻取管にそれぞれ巻き取って複数のパッケージの形成する糸巻取装置であって、
前記複数のパッケージの少なくとも1つに対して設けられており、前記巻取管に自動的に糸掛けを行う自動糸掛け装置を備えていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
供給された複数の糸を合糸する合糸装置をさらに備え、
供給された複数の糸を、それぞれ、前記巻取管に巻き取って、複数のパッケージを形成することと、
供給された複数の糸を、前記合糸装置において合糸し、合糸された糸を、巻取管に巻き取って、1つのパッケージを形成することと、を切り替えることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記自動糸掛け装置が、2つ以上のパッケージに対して設けられており、
前記2つ以上のパッケージのうち1つのパッケージに対応する前記自動糸掛け装置は、前記1つのパッケージの形成、及び、前記複数のパッケージの形成のいずれにも用いられ、
それ以外の前記自動糸掛け装置の少なくとも一部分が、取り外し可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記自動糸掛け装置が、前記複数のパッケージの全てに対して設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記自動糸掛け装置が、
前記巻取管に向けて送られる糸の途中部分を保持する糸保持部と、
前記巻取管と前記糸保持部との間に配置されており、前記糸保持部によって保持された糸を切断するカッターと、
前記巻取管の軸方向と平行な軸を中心に揺動して、前記カッターに切断された糸の前記糸保持部よりも上流側の部分を前記巻取部側に持っていくことによって、糸を前記巻取管と対向するように配置させる糸配置アームと、
前記糸配置アームにより前記巻取管と対向するように配置された糸を挟んで、前記巻取管と反対側に配置されており、前記巻取管の軸方向と平行な軸を中心に揺動して、糸を前記巻取管に押し付けて密着させる糸押し付けアームと、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記糸押し付けアームにより前記巻取管の外周面に密着させた糸を、前記押し付けアームとの間で挟んで保持する糸保持アームをさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記巻取管に巻き取られている糸を前記糸保持部へ案内する糸案内部をさらに備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記巻取管に巻き取る糸を前記巻取管の軸方向に綾振りさせるトラバースガイドをさらに備え、
前記トラバースガイドによる糸の綾振り範囲は、前記糸案内部が前記糸保持部へ糸を案内させることのできる案内可能領域と、前記糸案内部が前記糸保持部へ糸を案内することのできない案内不可能領域とにまたがっており、
前記トラバースガイドは、前記自動糸掛け装置による糸掛け時に、糸が前記案内可能領域に位置している状態で糸の綾振りを一時停止させ、
前記糸案内部は、前記トラバースガイドによる綾振りが一時停止された糸を、前記糸保持部へ案内することを特徴とする請求項7に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23385(P2013−23385A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163356(P2011−163356)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】