説明

糸巻取装置

【課題】糸巻取装置の製造を簡単にするとともに、製造コストを抑える。
【解決手段】同一材料からなる同一形状の2つのガイド部材44、45が、互いに対向するように配置されていることにより、これらの間に糸Yが通過するスリット55が形成されている。ガイド部材45は、揺動アーム43とともに揺動軸51を中心に揺動することで、ガイド部材44との間にスリット55を形成する位置と、ガイド部材44から離隔した位置との間で移動可能となっている。ガイド部材44などが取り付けられた基材41のスリット55と重なる部分に、前端が開口した切り欠き41aが形成されており、切り欠き41aの後側の壁により、糸Yがスリット55の後側から抜け落ちてしまうのが防止される。また、揺動アーム43は、スリット55を横切る部分を有し、この部分により、糸Yがスリット55の前側から抜け落ちてしまうのが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンから解舒した糸を巻き取る糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の自動ワインダーにおいては、管糸(給糸ボビン)から解舒された糸がプリテンション装置に案内され、プリテンション装置が、当該糸にテンションを付与するとともに、解舒された糸に輪抜けなどの解舒不良が生じたときには、糸の通過を阻止する。プリテンション装置は、固定された基板と、揺動可能な揺動腕とを備えており、揺動腕を揺動させて基板に近づけることにより、揺動腕が、基板の内部に入り込み、揺動腕と基板との間に隙間ができる。糸が正常に解舒された場合には、糸は、この隙間を通過することができるが、輪抜けなどの解舒不良がある場合には、糸が当該隙間を通過することができない。つまり、糸が巻取部側に送られるのが阻止される。また、揺動腕の先端部には、基板に向かって突出した2つの爪が設けられており、これら2つの爪により、糸が基板と揺動腕との隙間から抜け落ちてしまうのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−132075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、プリテンション装置を構成する基板と揺動腕とは、互いに形状の異なる部材である。一方、特許文献1に記載の自動ワインダーでは、糸の巻取を行う間、基板や揺動腕は、糸と接触する頻度が高いため、例えばセラミックスなど、糸を傷つけないような材料によって構成する必要がある。しかしながら、互いに形状の異なる基板と揺動腕をセラミックス材料などによって形成する場合には、基板及び揺動腕に対して個別に成形型などを作製する必要があり、装置の製造工程が煩雑になるとともに、製造コストも増大してしまう。
【0005】
本発明の目的は、製造が簡単であり、製造コストを抑えることが可能な糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る糸巻取装置は、給糸ボビンを保持するボビン保持部と、前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取る巻取部と、前記ボビン保持部と前記巻取部との間に設けられており、前記給糸ボビンにおいて解舒不良のあった糸が前記巻取部側へ送られるのを阻止する不良糸阻止部と、を備え、前記不良糸阻止部は、互いに対向して配置されることによって隙間を形成する2つのガイド部材を備え、前記2つのガイド部材が同一形状であることを特徴とする。
【0007】
不良糸阻止部を構成するガイド部材は糸と接触する頻度が高いため、セラミックスなど糸を傷つけにくい材料で形成する必要がある。そのため、2つのガイド部材の形状が異なっていると、2つのガイド部材を形成するために別々の成形型などが必要となり、糸巻取装置の製造工程が煩雑になるとともに、製造コストも増大してしまう。
【0008】
しかしながら、本発明によると、2つのガイド部材が、同一形状を有しているので、同じ成形型などを用いて2つのガイド部材を形成することができる。これにより、糸巻取装置を製造の簡単なものとすることができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0009】
第2の発明に係る糸巻取装置は、第1の発明に係る糸巻取装置において、前記2つのガイド部材は、相対移動することによって、前記隙間を形成する、解舒不良のあった糸が前記巻取部側へ送られるのを阻止する不良糸阻止状態と、前記不良糸阻止状態よりも前記2つのガイド部材同士が大きく離隔した、前記2つのガイド部材の間に糸を導入させるための糸導入状態、のいずれかの状態を選択的にとることができるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、2つのガイド部材を相対移動させて糸導入状態とすることにより、容易に2つのガイド部材の間に糸を導入することができ、これにより、不良糸阻止状態において形成される2つのガイド部材の隙間に、容易に糸を通すことができる。
【0011】
第3の発明に係る糸巻取装置は、第2の発明に係る糸巻取装置において、前記不良糸阻止部が、前記2つのガイド部材とは別の部材であって、前記不良糸阻止状態で、前記隙間の前記糸が通る部分の両側に位置して、糸が前記隙間から抜け落ちてしまうのを防止する2つの抜け落ち防止部材をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、糸が2つのガイド部材の隙間から抜け落ちてしまうのを防止することができる。ここで、抜け落ち防止部材は、糸が隙間から抜け落ちそうになったときに一時的に接触するだけであるので、例えば金属などの加工しやすい材料によって形成することができる。そのため、2つのガイド部材を互いに異なる形状とすることで、糸が抜け落ちないようにするよりも、2つのガイド部材を同一形状にし、ガイド部材とは別に糸抜け防止部材を設けるほうが、製造工程は簡単になり、製造コストも抑えることができる。
【0013】
第4の発明に係る糸巻取装置は、第3の発明に係る糸巻取装置において、前記2つのガイド部材のうち一方のガイド部材が、前記2つのガイド部材が配置された面と直交する揺動軸を中心に揺動自在に支持されていることによって、前記2つのガイド部材が相対移動可能となっており、前記2つの抜け落ち防止部材のうち、前記揺動軸からより離れた位置に設けられた前記抜け落ち防止部材は、前記一方のガイド部材と一体的に揺動するとともに、前記糸導入状態で他方の前記ガイド部材から離隔した位置にくることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、一方のガイド部材を揺動させることによって2つのガイド部材を相対移動させることができるようになっている場合に、2つの抜け落ち防止部材のうち、揺動軸からより離れた位置に設けられた抜け落ち防止部材を、当該一方のガイド部材と一体的に揺動するとともに、糸導入状態で他方のガイド部材から離隔した位置にくるようにすることにより、2つのガイド部材の間に糸を導入する際に、揺動軸や抜け落ち防止部材が邪魔にならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つのガイド部材が、同一形状を有しているので、同じ成形型などを用いて2つのガイド部材を形成することができる。これにより、糸巻取装置の製造工程を簡単にすることができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動ワインダーの概略構成図である。
【図2】図1の糸巻取時のプレクリアラーの平面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】糸導入時のプレクリアラーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、給糸ボビンから解舒された糸を巻取管に巻取って巻取パッケージを形成する巻取ユニットを多数備えた、自動ワインダーに本発明を適用した一例である。自動ワインダーは、1つのパッケージを形成する巻取ユニットが、一方向に多数列設された構成を有する。図1は、自動ワインダーの1つの巻取ユニット1(糸巻取装置)の側面図である。なお、図1において、右側を作業者が巻取ユニット1に対して作業を行う前側(正面側)、左側をその反対の後側(背面側)と定義する。
【0018】
図1に示すように、巻取ユニット1の各々は、ボビン供給装置2、ボビン支持部3、及び、糸巻取部4を備えている。そして、巻取ユニット1は、ボビン供給装置2から供給された給糸ボビン8をボビン支持部3で保持しつつ、この給糸ボビン8から解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取管6に巻き付けて、所定形状のパッケージPを形成する。
【0019】
ボビン供給装置2は、芯管に糸が巻き付けられてなる筒状の給糸ボビン8を複数貯留するとともに、貯留している給糸ボビン8のうちの1つをボビン支持部3に供給する。詳細には、ボビン供給装置2は、複数の給糸ボビン8を収容する円柱状のマガジン10と、このマガジン10の下方に配置され、マガジン10に収容された複数の給糸ボビン8のうちの1つをボビン支持部3へ向けて案内しながら落下させるガイドシュート11を有する。なお、巻取ユニット1の機台7に、支持フレーム12が、例えばネジ止めによって、着脱可能に設けられており、マガジン10とガイドシュート11は、ボビン支持部3のペッグ16に向くように鉛直方向に対して前側にやや傾いた姿勢で、それぞれ支持フレーム12に取り付けられている。
【0020】
マガジン10は、支持フレーム12に取り付けられた回動軸13を中心に回動可能に構成されている。このマガジン10には、周方向に配置されて、それぞれ給糸ボビン8が収容される複数のボビン収容孔(図示省略)が形成されている。また、マガジン10の下側には、複数のボビン収容孔にそれぞれ収容された複数の給糸ボビン8を受けるボビン受け板14が設けられている。ボビン受け板14には切欠部(図示省略)が形成されており、マガジン10が回動して、ある給糸ボビン8が切欠部の上方に位置したときに、その給糸ボビン8が、切欠部を介して、ガイドシュート11へ落下するように構成されている。
【0021】
ガイドシュート11は左右1対の開閉部材15を有し、開閉部材15が開放状態であるときに、マガジン10から落下してきた給糸ボビン8をボビン支持部3まで案内する。また、開閉部材が閉止状態であるときには、マガジン10からボビン支持部3への給糸ボビン8の落下が阻止される。
【0022】
ボビン支持部3は、給糸ボビン8の芯管の下端部に挿入されることによって給糸ボビン8を保持するペッグ16と、ペッグ16に保持されている給糸ボビン8をボビン支持部3の外に排出する跳ね板17を有する。
【0023】
ペッグ16は、前後方向に揺動可能であり、ボビン供給装置2から給糸ボビン8が供給される際には、その先端部がガイドシュート11側を向くように前側に傾いた姿勢となり、糸Yの巻取時には、直立した姿勢となる。
【0024】
跳ね板17は、ペッグ16によって給糸ボビン8が直立状態で保持されているときには、図1に示す水平な状態で待機しており、このとき、跳ね板17には給糸ボビン8の下端が当接している。この状態から跳ね板17が前方に回動し、その上に載っている給糸ボビン8を前方へ跳ね飛ばすことによって、給糸ボビン8を排出する。
【0025】
なお、上述したペッグ16、及び、跳ね板17は、図示しないステッピングモータなどによって駆動される。
【0026】
ボビン支持部3と糸巻取部4との間の糸走行経路には、ボビン支持部3側から順に、糸解舒補助装置19、プレクリアラー20、テンション付与装置21、糸継装置22、クリアラー23、ワキシング装置24が配設されている。
【0027】
糸解舒補助装置19は、給糸ボビン8の上端部に被せられる可動筒体31を、糸Yの解舒が進行するに従って下降させることで、解舒中の糸Yの膨らみ(バルーン)を規制し、これにより、解舒張力を安定させる。
【0028】
プレクリアラー20(不良糸阻止部)は、給糸ボビン8において、輪抜け(スラッフィング)などの糸Yの解舒不良が生じたときに、糸Yが糸巻取部4側に送られるのを阻止する。これにより、解舒不良により糸Yの張力が変動した状態で、糸Yの巻取が行われてしまうのが防止される。なお、プレクリアラー20の詳細な構成については、後述する。
【0029】
テンション付与装置21は、走行する糸Yに所定のテンションを付与するためのものである。このテンション付与装置21としては、例えば、固定櫛歯とこの固定櫛歯に対して移動可能に配設された可動櫛歯とを有する、ゲート式のものを使用できる。
【0030】
糸継装置22は、次述のクリアラー23が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン8からの糸解舒中の糸切れ時に、給糸側の糸(下糸)と、巻取側の糸(上糸)とを糸継ぎするものである。この糸継装置22としては、例えば、上糸端と下糸端のそれぞれの撚り戻しを行う解撚ノズルと、解撚された両糸端に旋回空気流を作用させて撚り合わせを行う撚り掛けノズルとを有する、いわゆる、エア式の糸継装置(エアスプライサー)を使用できる。
【0031】
クリアラー23はスラブ等の糸欠陥や、糸の有無を検出するためのものであって、糸欠陥検出時の糸切断用のカッターが付設されている。また、ワキシング装置24は、糸Yにワックスを塗布するためのものである。
【0032】
糸継装置22の上下には、給糸ボビン8側の下糸を吸引捕捉して糸継装置22へ案内する下糸捕捉案内部材25と、パッケージP側の上糸を吸引捕捉して糸継装置22へ案内する上糸捕捉案内部材26が設けられている。上糸捕捉案内部材26はパイプ状に構成されており、軸26aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部にマウス26bが設けられている。同様に下糸捕捉案内部材25もパイプ状に構成されており、軸25aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部には吸引口25bが設けられている。さらに、上糸捕捉案内部材26及び下糸捕捉案内部材25には適宜の負圧源が接続されているとともに、それらの先端のマウス26b及び吸引口25bから空気を吸引して糸端を捕捉することができるようになっている。
【0033】
糸巻取部4は、巻取管6を回転自在かつ着脱可能に支持する1対のクレードルアームを有するクレードル27と、クレードル27に支持された巻取管6の表面、又は、巻取管6に形成されたパッケージPの表面に接触可能な綾振ドラム28を備えている。そして、糸巻取部4は、綾振ドラム28が巻取管6(又は、パッケージPの表面)に接触した状態で、図示しないドラム駆動モータにより綾振ドラム28を回転駆動することで、糸Yを綾振りしながら巻取管6を従動回転(連れ回り)させて、巻取管6の外周にパッケージPを形成するように構成されている。
【0034】
次に、プレクリアラー20の構成について詳細に説明する。プレクリアラー20は、図2、図3に示すように、基材41、取付部材42、揺動アーム43、2つのガイド部材44、45、スライド部材46、調整レバー47などを備えている。なお、図2、図3では、図面をわかりやすくするため、最も紙面手前側に位置する基材41を二点鎖線で図示するとともに、基材41を除いたときに、紙面手前側に現れる部分を実線で図示している。
【0035】
基材41は、金属材料などによって構成された板状体であり、巻取ユニット1の機台7に固定されている。また基材41には、前側の端部に、前後方向に延びているとともに前端が開口した切り欠き41aが形成されている。
【0036】
取付部材42は、合成樹脂材料などによって構成された略矩形の部材であり、基材41の下面(図2の紙面奥側の面)の、図2における切り欠き41aのすぐ右側に位置する部分に設けられている。また、取付部材42の内部には、図2の左右方向に延びているとともにその両端が開口した空間42aが形成されており、空間42a内にガイド部材44が設けられている。
【0037】
ガイド部材44は、例えばセラミックス材料からなる板状体であり、その略半分(図2における略右半分)が空間42a内部に配置されており、残りの略半分(図2における略左半分)が空間42aから切り欠き41a側に飛び出している。また、ガイド部材44の空間42a内に位置する部分は略矩形の平面形状を有しており、空間42aから飛び出した部分は、その先端側(図2の右側)の部分ほどその幅(前後方向の長さ)が小さくなっているとともに、その先端に前後方向に延びた対向面44aが形成されている。
【0038】
また、ガイド部材44の空間42a内部に配置された部分は、同じく空間42a内に配置されたスライド部材46の片側(図2における左側)の端部に固定されている。スライド部材46は、空間42aの前後の壁面に沿って、ガイド部材44と一体的に、図2の左右方向に移動可能となっている。また、スライド部材46は、図示しないバネ等により、切り欠き41aから離れる方向(図2の右側)に付勢されている。また、スライド部材46のガイド部材44と反対側の端部は、その一部分が他の部分よりもガイド部材44と反対側(図2の右側)に突出しており、その先端部が下側(図2の紙面奥側)に折り曲げられることにより当接部46aとなっている。
【0039】
スライド部材46のガイド部材44を挟んだ反対側には、調整レバー47が設けられている。調整レバー47は、鉛直方向(図2の紙面垂直方向)に延びた軸48に回動自在に支持されている。また調整レバー47の軸48側の端部の側面は、円弧状の当接面47aとなっており、図示しないバネの付勢力により付勢されたスライド部材46は、当接部46aが当接面47aに当接する位置に位置づけられる。ここで、当接面47aの円弧の中心は、軸48からずれており、調整レバー47を図2の反時計回り方向に回動させるほど、当接面47aがスライド部材46側(図2の左側)にくるようになっている。
【0040】
また、調整レバー47には、その途中部分にドーム状の凸部47bが形成されている。これに対応して、基材41には、調整レバー47を軸48を中心に回動させたときに凸部47bが描く円弧に沿って配列された、凸部47bに対応する、略円形の複数の貫通孔41bが形成されている。そして、調整レバー47を、凸部47bが複数の貫通孔41bのいずれかとが重なる位置まで回動させて、凸部47bを当該貫通孔41bに係止させることにより、調整レバー47を基材41に固定することができる。これにより、調整レバー47を、凸部47bが複数の貫通孔41bとそれぞれ重なる複数の位置のうち、いずれかの位置において選択的に、基材41に固定することができる。
【0041】
揺動アーム43は、基材41の下面の、図2における取付部材42の後側に位置する部分に設けられた、鉛直方向(図2の紙面垂直方向)に延びた揺動軸51に揺動自在に支持されており、揺動軸51に支持された部分から、図2における左前方に延び、その途中部分よりも先端側の部分が、切り欠き41aよりも図2における左側に位置している。揺動アーム43は、図示しないモータなどによって、揺動軸51を中心に揺動させることができるようになっている。
【0042】
また、揺動アーム43の先端部には、図2の状態(糸巻取時の状態、不良糸阻止状態)で前側に突出した突出部43aが設けられている。突出部43aは、図2の状態(不良糸阻止状態)で、図2における右側の面が、基材41の下面に形成されたストッパー52に接触し、これにより、揺動アーム43が図2に示す位置よりもさらに反時計回りに揺動するのが規制されている。
【0043】
さらに、揺動アーム43は、揺動軸51に支持されている部分に設けられた図示しないねじりバネなどによって、図2における反時計回り方向に付勢されており、図2の状態では、ねじりバネの付勢力により、突出部43aが、ストッパー52に密着している。また、揺動アーム43の揺動軸51に支持されている部分、つまり、ねじりバネが設けられた部分は、封止されており、これにより、ねじりバネなどに風綿がたまってしまうのが防止されている。
【0044】
ガイド部材45は、ガイド部材44と同じセラミックス材料などからなる、ガイド部材44と同一形状の部材であり、平面視でガイド部材44を約180°回転させた向きで、対向面44aに対応する面である対向面45aが、対向面44aと対向するように、揺動アーム43に取り付けられている。これにより、ガイド部材44とガイド部材45との間には、前後方向に延びたスリット55が形成される。そして、給糸ボビン8から正常に糸Yが解舒された場合には、糸Yは、スリット55を通過して、糸巻取部4側(図2の紙面手前側)に送られる。
【0045】
一方、給糸ボビン8において輪抜けなど糸の解舒不良が発生したときには、給糸ボビン8から解舒された糸Yは、ガイド部材44、45に接触することにより、糸巻取部4側に送られるのが阻止される。これにより、解舒不良によって糸Yの張力が変動した状態で、糸Yの巻取が行われるのが防止される。なお、2つのガイド部材44、45が、図2に示すように、スリット55を形成する位置にある状態が、本発明に係る不良糸阻止状態に相当する。
【0046】
そして、糸巻取部4側に送られるのが阻止された糸Yは、糸巻取部4が糸Yを巻き取る力によって切断される。糸Yが切断されると、クリアラー23によって糸Yがないことが検出され、これに連動して、給糸ボビン8側の糸Y、及び、糸巻取部4側の糸Yは、それぞれ、下糸捕捉案内部材25及び上糸捕捉案内部材26によって捕捉されるとともに糸継装置22に案内され、糸継装置22においてこれらの糸Yが糸継される。そして、糸継が完了した後に、糸Yの巻取が再開される。
【0047】
また、このとき、上述したように揺動アーム43の突出部43aがストッパー52密着していることにより、基材41に取り付けられたガイド部材44と、揺動アーム43に取り付けられたガイド部材45との間に形成されるスリット55の幅(図2の左右方向に関する長さ)、つまり、ガイド部材44とガイド部材45との間隔が一定に保たれる。
【0048】
また、スリット55の幅は、上述の調整レバー47を回動させることによって調整することができる。より詳細に説明すると、調整レバー47が図2の実線で示す位置にある状態、すなわち、凸部47bが、複数の貫通孔41bのうち図2の最も反時計回り方向下流側の貫通孔41bと重なる位置にある状態では、スリット55の幅が最も小さくなっている。そして、図2に一点鎖線で示すように、調整レバー47をこの位置から図2の時計回り方向に回動させると、当接面47bがスライド部材46から離れる方向移動する。これに連動して、図示しないバネによって付勢されたスライド部材46、及び、スライド部材46に取り付けられたガイド部材44が、ガイド部材45から離れる方向(図2の右方)に移動する。これにより、ガイド部材44とガイド部材45との間隔が広がり、スリット55の幅が大きくなる。そして、凸部47bが、図2における反時計回り方向上流側の貫通孔41bと重なる位置で、調整レバー47を基材41に固定した場合ほど、スリット55の幅は大きくなる。
【0049】
ここで、スリット55の幅は、糸Yの太さや種類に応じて、正常に解舒された糸Yは通過可能であるが、解舒不良のあった糸Yは通過できないような幅に調整される。例えば、糸Yが綿番手90の糸である場合には、スリット55の幅が0.4〜0.5mm程度に調整され、糸Yが綿番手30の糸である場合には、スリット55の幅が0.6〜0.9mm程度に調整される。
【0050】
また、切り欠き41aの後端は、図2におけるスリット55のすぐ後側に位置しており、基材41の切り欠き41aの後端の壁となる部分41cにより、糸Yが、スリット55の後側から抜け落ちてしまうのが防止される。
【0051】
また、揺動アーム43には、ガイド部材45が取り付けられた部分から、スリット55を横切るように図2における右前方に延びた部分43bが設けられており、揺動アーム43の部分43bにより、糸Yが、スリット55の前側から抜け落ちてしまうのが防止される。
【0052】
なお、本実施の形態では、基材41の切り欠き41aの後端の壁となる部分41c、及び、揺動アーム43のスリット55を横切る部分43bが、本発明に係る2つの抜け落ち防止部材に相当する。
【0053】
また、巻取ユニット1において糸掛けを行う際には、図示しないモータを駆動して、揺動アーム43を図2の時計回り方向に揺動させる。すると、揺動アーム43とガイド部材45とが一体的に揺動して、図4に示すように、ガイド部材45がガイド部材44から離隔して両者の間隔が広がるとともに、揺動アーム43の部分43b(2つの抜け落ち防止部材のうち、揺動軸51からより離れている抜け落ち防止部材)が、図4のにおける切り欠き41aよりも左側の位置まで移動する。なお、2つのガイド部材44、45がこのように互いに離隔した位置にある状態が、本発明に係る糸導入状態に相当する。
【0054】
これにより、図4に矢印Aで示すように、切り欠き41aの開口から、切り欠き41aの内部に糸Yを導入することが可能となり、糸Yを切り欠き41aの対向面44aと対向する位置まで導入した状態で、揺動アーム43を図4の反時計回り方向に揺動させることにより、図2に示すように、容易にスリット55に糸Yを通すことができる。
【0055】
このとき、揺動アーム43のスリット55を横切っていた部分が、図4における切り欠き41aよりも左側に位置しているため、切り欠き41aに糸Yを導入する際に、揺動アーム43の上記部分が邪魔になることがない。
【0056】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については適宜その説明を省略する。
【0057】
上述の実施の形態では、揺動アーム43に取り付けられたガイド部材45が、揺動アーム43とともに揺動することによって、ガイド部材44に対して相対移動するようになっていたが、これには限られない。ガイド部材45は、例えば、図2の左右方向に平行移動するなど、上述の実施の形態とは異なる方向に移動することで、ガイド部材44に対して相対移動するようになっていてもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態では、一方のガイド部材45が移動することによって、2つのガイド部材44、45が相対移動するようになっていたが、2つのガイド部材44、45の両方が移動することによって、2つのガイド部材44、45が相対移動するようになっていてもよい。
【0059】
さらには、2つのガイド部材44、45は、相対移動するように構成されていることにも限られず、スリット55を形成する位置(図2に示す位置、不良糸阻止状態)で固定されていてもよい。ただし、この場合には、糸掛け時に、幅の狭いスリット55に直接糸Yを通す必要がある。
【0060】
また、上述の実施の形態では、基材41の後端の壁となる部分41cと、揺動アーム43のスリット55を横切る部分43bとによって、糸Yがスリット55から抜け落ちてしまうのを防止するための2つの抜け落ち防止部材が形成されていたが、これには限られない。
【0061】
例えば、揺動アーム43に、糸巻取時の状態で、スリット55の、糸Yの通過部分の両側に位置する領域をそれぞれ横切るように延びた2つの部分が設けられており、これら2つの部分によって2つの抜け落ち防止部材が形成されていてもよい。なお、この場合、上述の糸導入状態において、揺動アーム43の上記2つの部分のうち、少なくとも揺動軸51からより離れている部分が、図4における切り欠き41aよりもの左側にくるようになっていれば、切り欠き41aの開口から糸Yを導入して、スリット55に糸Yを通すことができる。
【0062】
また、2つの抜け落ち防止部材が、揺動アーム43とは別に設けられており、抜け落ち防止部材のうち、少なくとも揺動軸51からより離れている抜け落ち防止部材が、ガイド部材45とは独立して移動するようになっていてもよい。
【0063】
あるいは、切り欠き41aの前側の端が開口しておらず、基材41の切り欠き41aの前後両端の壁となる部分が、2つの抜け落ち防止部材となっていてもよい。ただし、この場合には、切り欠き41aの前側の端が開口していないため、切り欠き41aに糸Yを導入するためには、下方から糸Yを導入するなどする必要がある。
【0064】
さらには、例えば、スリット55が前後方向に十分長く延びている場合など、糸Yがスリット55から抜け落ちることがない場合には、抜け落ち防止部材は設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
8 給糸ボビン
16 ペッグ
20 プレクリアラー
41 基材
41a 切り欠き
41c 部分
43 揺動アーム
43b 部分
44、45 ガイド部材
55 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンを保持するボビン保持部と、
前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取る巻取部と、
前記ボビン保持部と前記巻取部との間に設けられており、前記給糸ボビンにおいて解舒不良のあった糸が前記巻取部側へ送られるのを阻止する不良糸阻止部と、を備え、
前記不良糸阻止部は、
互いに対向して配置されることによって隙間を形成する2つのガイド部材を備え、
前記2つのガイド部材が同一形状であることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記2つのガイド部材は、相対移動することによって、
前記隙間を形成する、解舒不良のあった糸が前記巻取部側へ送られるのを阻止する不良糸阻止状態と、
前記不良糸阻止状態よりも前記2つのガイド部材同士が大きく離隔した、前記2つのガイド部材の間に糸を導入させるための糸導入状態、のいずれかの状態を選択的にとることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記不良糸阻止部が、前記2つのガイド部材とは別の部材であって、前記不良糸阻止状態で、前記隙間の前記糸が通る部分の両側に位置して、糸が前記隙間から抜け落ちてしまうのを防止する2つの抜け落ち防止部材をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記2つのガイド部材のうち一方のガイド部材が、前記2つのガイド部材が配置された面と直交する揺動軸を中心に揺動自在に支持されていることによって、前記2つのガイド部材が相対移動可能となっており、
前記2つの抜け落ち防止部材のうち、前記揺動軸からより離れた位置に設けられた前記抜け落ち防止部材は、前記一方のガイド部材と一体的に揺動するとともに、前記糸導入状態で他方の前記ガイド部材から離隔した位置にくることを特徴とする請求項3に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67451(P2013−67451A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205710(P2011−205710)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】