説明

納豆容器

【課題】
納豆の乾燥を防止するための皮膜を、手や衣類等を汚さずに取り除くことのできる簡単な構成の納豆容器を提供する。
【解決手段】
容器本体と、納豆の表面を完全に被覆するに足る大きさの皮膜とを含む納豆容器において、皮膜を通過させる皮膜通過部を容器周縁の上部近傍に形成する。前記通過部は端部が開放端とされた隙間部を有している。特に、蓋体と本体部とに重合するフランジ部がある場合には、これを蓋体フランジ部側に形成することにより、納豆収容部に異物が混入せず、破損しにくい通過部を簡単な構成で実施することができる。皮膜の周縁端部を粘着物に接触した面を内側にして折って、開放端から隙間部に差し込んで、前記通過部を通過させ、筋状にして収束させることにより、手や衣類を汚すことなく皮膜を処理することができる。皮膜につまみ位置標示をつけると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆容器に関する。詳しくは、容器本体内に納豆菌が接種された原料大豆が収容され、この原料大豆が皮膜に被覆され醗酵された後、開口部が封止された状態で市場に出荷される納豆容器に関する。
【背景技術】
【0002】
健康食品として食用されている納豆は、納豆菌が接種された蒸煮大豆を容器に入れて醗酵室内に搬入し、この醗酵室内で所定時間加熱して醗酵させた後、醗酵室から取り出され、その後、納豆の表面に皮膜が被覆され、さらにその上にタレ袋やカラシ袋が同封され、この状態で容器本体が蓋体や合成樹脂フィルムなどで封止され、市場に出荷されている。
【0003】
このような納豆容器としては、発泡合成樹脂材などから成る箱状のもの、又は、加工紙から成るカップ状のものが主に市場に出荷されている。
【0004】
ところで、このような納豆容器に入った納豆を食する際には、まず、容器本体を封止している蓋体又は樹脂フィルムを開いて、納豆の上に同封されているタレ袋やカラシ袋の調味料を取り出し、更に納豆に密接して納豆を被覆している皮膜を取除き、タレやカラシと共に納豆を撹拌することが必要である。
【0005】
ところが、皮膜は粘着性の強い納豆に密着して納豆を被覆しているため、皮膜を取除く際に、皮膜には一部の納豆粒が付着すると共に、収容凹部に収容されている納豆との間に多数の筋状の糸を引くことになる。この納豆特有の糸は粘り気が強く、指先や衣類を汚さないように注意が必要になると共に、指先などについた場合には、ねばねばが取れにくく煩わしいという課題があった。
【0006】
このような課題を解決するため、特開2007−045427号公報(特許文献1)には、蓋体に開口部が設けられており、蓋体を閉めた状態で、その開口部から皮膜を引き出すことができる納豆容器の技術が開示されている。
【0007】
ところが、特許文献1に記載の発明の場合には、納豆容器の蓋体から皮膜まで離間しているために、開口部から指を差し込んで皮膜をつまみあげるためには指の太さ以上の幅の開口が必要であり、指の太い人は扱いにくく、取り出された皮膜がスカート状に開いた状態(図8(a)参照)であるため、皮膜面から多くの筋の糸が引き、糸が飛散する可能性がある。更に、指が入る大きさの開口部から異物の混入を防止するためには、開口部を小蓋で被蓋する必要があり、容器の構造が複雑になるという問題があった。
【0008】
また、特開2000−313491号公報(特許文献2)では、蓋体とは別に、容器本体上部に中蓋を嵌合させ、かつ該中蓋の中央部に小径の透孔を穿設し、該透孔下方の皮膜部分を底板から起立している押し上げ筒で蓋中央部の透孔から外方へ突出させ、その皮膜部分を引き上げることで、中蓋の下方から皮膜を引き出すことができるよう形成した技術が公開されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の納豆収納容器は、中蓋の透孔から皮膜の中央部分を突出させるものであり、次のような問題点がある。まず突出した皮膜の長さが比較的短く、不用意に引き込まれるおそれがあること。これを防ぐためには、皮膜上端を蓋体の下面に接着することが必要であり製造に手間がかかること。底壁の中央部から透孔上方へ押し上げ筒を起立し、かつ該押し上げ筒で透孔下方の皮膜部分を押し上げて透孔から外方へ突出させているため、皮膜と納豆上面との間に隙間が空き、納豆上面を完全に被覆することが困難であるという問題があった。
【0010】
更に、蓋を落し蓋にして、納豆に落し蓋を密着させて納豆の乾燥を防ぎ、皮膜をなくす技術も開発されて、その技術を適用した納豆も市場に提供されている。具体的には、落し蓋の凹部をタレ袋やカラシ袋を収容するための空間として使うため、その空間を別のシートで被蓋する構成としたものや、納豆とタレを収容する収容凹部を2分したものがある。これらの場合には、開蓋したときに、納豆粒の一部が、蓋に付着して出てくるという問題がある。また、蓋の上にシートを貼着するという工程が増加し、納豆が収容された部分が不整形になり納豆が撹拌しにくくなる等の問題もあった。本発明は、簡単な構成の納豆容器で、皮膜が取除き易い技術を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−045427号公報
【特許文献2】特開2000−313491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
納豆特有の糸を飛散させないで、指や衣類等を汚すことなく、納豆を被覆している皮膜を取除くことができる簡単な構成の納豆容器を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、底体と該底体から起立した壁体とからなる収容凹部が形成された容器本体と、前記収容凹部に収容された納豆の表面に密着して、前記納豆を完全に被覆するに足る大きさの皮膜と、を含む納豆容器において、
前記皮膜を通過させて収束させる皮膜通過部を備え、
該皮膜通過部は、前記収容凹部の上縁近傍に形成されると共に、前記納豆の粒径よりも狭小であって且つ上下に開放された隙間部を有し、
少なくとも該隙間部の側端の一部が、前記皮膜の周縁端部を前記隙間部に差し込み可能に開放端とされていることを特徴としている。
【0014】
第1の発明において、納豆容器は、納豆の皮膜を通過させて収束させる隙間部が形成された皮膜通過部を備えている。皮膜通過部が形成される収容凹部の上縁近傍とは、水平方向については前記壁体の上縁の内外を含み、また垂直方向についても前記上縁の上下を含む領域である。また、隙間部とは、穴、又は少なくとも二つの辺に挟まれた隙間をいい、その形状は限定されない。収容している納豆がひき割り納豆である場合、ひき割り納豆の粒径よりも狭小に形成される。また、開放端は、側端をなす辺の全部又は一部を開放端としたものでもよく、また、矩形形状の隙間部の角隅部を構成する2辺の一部を連続させて隅部分を開放端としたものでもよい。また、皮膜は納豆の表面に密着して、完全に被覆するに足る大きさであり、その形状は矩形形状に限定されず、指でつまみ易いつまみ部が形成されたものであってもよい。
【0015】
皮膜の周縁端部がつままれて、側端の一部の開放端から隙間部に差し込まれて、皮膜通過部を通過されることにより、皮膜の納豆に接していた面同士がくっつき、粘着物が付着していない面を表面にして皮膜が引き抜かれる。前記隙間部を通過するときに、納豆の表面に密着していた皮膜は収束されて筋状にまとまり、納豆特有の粘り気のある糸が僅かに引くだけとなる。これにより、手や衣類を汚す可能性が小さくなる。皮膜の周縁端部とは、皮膜の角隅部が好適であるが、皮膜の角隅に限定されず、角隅からずれた位置であってもよい。
【0016】
皮膜通過部は、納豆の収容凹部の上縁近傍に形成されている。前記皮膜を取除くときに、皮膜通過部が、つまみあげられる皮膜の周縁端部の近傍に位置されていることにより、広い範囲の皮膜を無理にはがして、皮膜通過部に近づける必要がない。そして、近くに位置している開放端から隙間部に皮膜の周縁端部が差し込み可能であるため、皮膜の引き抜き過程で、多数の糸が発生して、飛散することがない。また、隙間部は納豆の粒径よりも狭小に形成され、上下に開放されているため、皮膜を隙間部から上方向に引き抜くことが可能であり、皮膜に付着した納豆粒は、皮膜が隙間部を通過する際に、収納凹部に残存され、皮膜に付着して収納凹部から出ることがない。
【0017】
本発明の第2の発明は、第1の発明の納豆容器において、前記収容凹部を被蓋する蓋体を備え、
前記収容凹部は、水平断面形状が略正方形形状に形成されると共に前記壁体上縁周囲部には前記底面に略平行に突出して帯状に本体フランジ部が形成されている納豆容器において、
前記蓋体は、前記収容凹部に整合する凸部を備え、該凸部の外周縁部に前記本体フランジ部と重合する蓋体フランジ部が形成され、
前記皮膜通過部が、前記蓋体フランジ部の角隅部近傍であって端部が自由端とされている位置に形成され、前記開放端が前記蓋体側方に向かって開放され、
前記皮膜が略正方形形状をなして形成されていることを特徴としている。
【0018】
第2の発明において、収容凹部の水平断面形状が略正方形に形成されているため、箸を円運動させやすく、納豆が撹拌し易い。また、納豆容器は前記収容凹部を被蓋する蓋体を備えているため、異物が混入することがない。蓋体は、容器本体に屈曲可能に連結された蓋体であると好適であるが、容器本体とは分離されるようにされたものでもよく、容器本体に装着される蓋体であってもよい。
【0019】
そして、皮膜通過部が蓋体フランジ部の角隅部近傍であって端部が自由端とされている位置に形成され、前記開放端が蓋体側方に向かって開放されるように形成されている。蓋体フランジ部の端部が自由端とは、蓋体フランジ部の外縁が別の物に付設されていない状態、例えば本体フランジ部に連設されていない状態をいう。皮膜通過部は本体フランジ部と重合する蓋体フランジ部に形成されているため、予め隙間部などの欠損部を該蓋体フランジ部に形成させても、欠損のない本体フランジ部に保護され、皮膜通過部が破損されにくい。また、隙間部は納豆の収容凹部につながったものとならない。これにより異物が混入する可能性がなくなる。
【0020】
また、収容凹部の上縁隅角部近傍の蓋体フランジ部における自由端に皮膜通過部を形成させて、略正方形形状の皮膜のいずれかの角隅部の近くに、前記隙間部の開放端を位置させている。これにより、開放端に近い皮膜の角隅端部をつまんで、その端部を皮膜通過部に差し込むことが容易であり、皮膜を隙間部の開放端に差し込む際に、皮膜をはがす量が少なくてすみ、皮膜から多数の糸が発生して、飛散することがない。
【0021】
皮膜通過部は蓋体の凸部外側に形成されているため、皮膜を引き抜いて取除くときに、蓋体フランジ部が破損されやすい発泡合成樹脂材からなっていても、皮膜が凸部に沿うように引き抜かれ、蓋体に皮膜が食い込んで蓋体が破損されることがない。また、開放端が蓋体外方に向かって開放されるように形成されているため、容器本体に蓋体を閉じた状態でも、納豆容器外に引っ張りだされた皮膜の端部を皮膜通過部に差し込むことができる。
【0022】
本発明の第3の発明は、第1の発明の納豆容器において、前記収容凹部は、水平断面形状が略円形形状に形成され、前記壁体の上縁端部に封止シートが貼着されて、前記収容凹部の開口部が封止される納豆容器において、
前記壁体の上縁近傍に形成される舌片に前記皮膜通過部が備えられることを特徴としている。
【0023】
本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、収容凹部をその水平断面形状を略円形形状としているので、箸を円運動させやすく、納豆が撹拌し易い。また、蓋体を省略して容器を簡単な構成として、製造コストを抑えることができる。更に、壁体の上縁近傍に舌片を形成して、又は壁体の一部を舌片として、皮膜通過部を備えさせると簡単な構成とすることができる。
【0024】
本発明の第4の発明は、第1から第3に記載の納豆容器において、前記隙間部の前記開放端に近い前記皮膜の角隅近傍に、前記皮膜を上からつまむ位置を示すつまみ位置標示がされていることを特徴としている。つまみ位置表示は、図形であっても文字であってもよく。また文字と図形が共に表示されているものであってもよい。その図形は、円形、矩形、星形などいかなる形状のものであってもよい。また、文字は、「上からつまんで隙間に通してひき抜いてください。」などの皮膜を取除く方法が、付記されたものであると好適である。
【発明の効果】
【0025】
納豆容器の構造を複雑にしないで、皮膜を納豆の粘着物が付着した面を略内側にして、筋状に収束させて取除くことができる。これにより、皮膜から多数の糸を発生させず、納豆特有の伸びた糸又はちぎれた糸を飛散させず、指や衣類等を汚すことを防止することが可能である。そして、納豆を食べ慣れていない人にも、健康食品としての納豆の需要を拡大させるという効果をも生む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】納豆容器を説明する斜視図である。(実施例1)
【図2】皮膜の取除き工程を説明する図である。(実施例1)
【図3】納豆容器を説明する斜視図である。(実施例2)
【図4】皮膜の取除き工程を説明する図である。(実施例2)
【図5】納豆容器を説明する斜視図である。(実施例3)
【図6】納豆容器を説明する斜視図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、この発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、この発明の実施例1に係る納豆容器100を示した斜視図である。この実施例1に係る納豆容器は、ポリエチレンテレフタレート、発泡ポリスチレンやポリプロピレン等の樹脂、または加工紙で、水平断面形状が略正方形に形成され、縦断面形状が略凹状に形成された納豆の収容凹部を備えた容器本体10と、該容器本体に屈曲可能に連結され、容器本体の開口部を開閉する蓋体20と、皮膜30と、から構成されている。また、皮膜30は、薄い可撓性の合成樹脂のシートでポリエチレン、ポリプロピレン等樹脂を使用したもので略正方形に形成され、一つの角隅の近傍には○印を示したつまみ位置標示がされている。なお、このつまみ位置標示は省略してもよい。
【0028】
その収容凹部には、原料大豆を浸漬・蒸煮して納豆菌を接種したものが盛り込まれている。尚、この発明では、容器本体の形状及び使用材質は上記例に限定されるものではなく、公知の各種納豆容器を用いることができる。即ち、上記容器本体10は、蓋体のフランジ部21と重合する形状に形成された容器フランジ部11と、該容器フランジ部11の内周縁部から下方に延設された嵌合部12と、該嵌合部12から更に下方に略凹状に形成された収納凹部13と、から構成されており、該収納凹部13の周壁面には縦状の凹凸形状14が連続形成されていると共に、その底面部にも図示しない凹凸が連続形成されている。
【0029】
また、蓋体20は、前記容器本体の嵌合部12に整合して嵌合されるように、蓋体周囲部のフランジ部21の内側に容器本体側に向けて凸部22が形成されている。また、凸部22に囲まれた蓋体には容器内外を連通させる通気穴23が形成され、納豆容器内外の通気を可能にしている。また、蓋体20と容器本体10とは、連結部ヒンジ16にて連結されて、蓋体フランジ部21と容器本体フランジ部11との重合部を、部分的に熱シール15により溶着して、蓋体を容器本体に被蓋している。勿論、この発明にあっては、上記の溶着に替えて、例えば、蓋体のフランジ部の外周端部を下方に延設して延長片部を設け、該延長片部の下端部にフック部を設けて、該フック部を容器本体のフランジ部の外周端部に係合させるようにしてもよい。
【0030】
さて、実施例1では、蓋体のフランジ部21に皮膜通過部40が形成されている。皮膜通過部40は、前記本体フランジ部と連結されていない蓋体フランジ部のうち、蓋体と容器本体を連結させている連結部ヒンジ16に交差する方向の側辺フランジにおいて、収容凹部の上縁隅角部近傍となる位置となる前記凸部22の外側位置に形成されている。皮膜通過部40は、収容凹部13側から蓋体上方に皮膜を通過させて、収束させる隙間部41を有している。また、隙間部の側端は蓋体の側方に向かって開放端42とされ、粘着面を内側にして角隅端部が指でつままれた皮膜30を、側方から前記隙間部41に差し込み可能にしている。
【0031】
実施例1では、隙間部41は、収容されている納豆粒よりも小さく且つ上下方向に開放された円形状の穴が、納豆の粒径よりも狭小な隙間部となり、その一部がフランジ部外方に開放された開放端となっている。このスリット状に形成された開放端と円形穴接続部の角の出っ張りに規制されて、皮膜30は隙間部41から外に、はみ出ない状態で粘着面を略内側にして収束されて、筋状にまとまり、皮膜30に付着した粘着物が引く糸は僅かなものとなる。この隙間部41を皮膜が通過する際に、皮膜に付着した納豆粒は納豆容器100内に残存されることになる。
【0032】
隙間部41の形状は、円形形状のほか、矩形形状、楕円形形状、三角形形状などその形状に限定はない。また、隙間部41を形成させる位置は、蓋体20を容器本体10に溶着させている熱シール15から離間した位置であり、且つ矩形形状の皮膜の角隅端部31の位置の上方近傍が好適である。これにより、熱シール15を切って、蓋体20を容器本体10から外すときにも、隙間部が破損せず、皮膜を引きはがして隙間部に差し込む距離が短く、納豆特有の糸を飛散させにくい。
【0033】
また、略正方形形状の皮膜30は、納豆の表面に密着して、納豆を完全に被覆するに足る大きさの皮膜であり、納豆に接していない周囲の部分は、収容凹部の壁に沿って折り上げられ、又は皮膜の上に折り重ねられて収容されている。この皮膜30は、その角隅端部31において粘着面を内側にして折られ、前記開放端42から前記隙間部41に差し込まれて、蓋体20が閉じられた状態で、蓋体側の凸部22と容器本体側の嵌合部12とに挟まれるようにして、前記隙間部41を通過して蓋体の上方に引き抜かれて取り除かれる。皮膜の角隅部の上側をつまんで引き出した場合には、皮膜は正方形の対角線に沿うように粘着面を内側に三角形が筋状に収束されたものとして容器外に取り除かれる。角隅部からずれた位置の上側をつまんで引き出した場合でも、皮膜は粘着面を略内側に筋状に収束され、粘着物が引く納豆特有の糸は僅かなものとなり、皮膜の処理が容易になる。
【0034】
ここで、皮膜を取除く工程を図2を参照して説明する。図2(A)図は納豆容器が蓋体で封止された状態の断面図である。図2(B)図は納豆容器の蓋体を開けて斜めに傾けて、皮膜の周縁角隅端部のつまみ位置標示35がされている部分を、指で上からつまみあげて差し込んでいる状態を説明する図である。図2(C)図は皮膜を蓋体の上方に引き抜いている状態を説明する図である。図2(D)図は皮膜を蓋体の上方に引き抜いた状態を説明する図である。
【0035】
蓋体が閉じられた状態においては、タレ袋17やカラシ袋18が皮膜30の上に同封されている(図2(A)図参照)。まず、蓋体20と容器本体10とを接合している熱シール15を切って、蓋体20を開けて、同封されていたタレ袋17やカラシ袋18を納豆容器の外に取り出す。次に、皮膜通過部40に近い位置で、折り上げられ又は重ねられていた皮膜30の周縁の角隅端部31において、つまみ位置標示35がされている部分を、上から納豆の粘着物が付着した面を内側にしてつまみ、容器の外に僅かに引き出す。(図1、図3参照)。引き出された皮膜30をつまんだまま、開放端42から隙間部41に差し込み、皮膜30を隙間部41を通すようにして、蓋体20の上方に前記角隅端部31を突き出す。(図2(B)図参照)そして、蓋体から下方に突出している凸部22を嵌合部12に嵌め込むようにして、蓋体20を容器本体10に被蓋する。
【0036】
次に、蓋体が容器本体から浮き上がらないように保持して、蓋体20から上方に突き出している皮膜の角隅端部31をつまんで、ゆっくり皮膜30を筋状にした状態で、前記隙間部を通過させて、蓋体の上方に向けて引き抜く(図2(C)図参照)。皮膜30を引き抜き切った状態では、前述したように、皮膜30は粘着物付着面を略内側にして収束されて筋状32にまとまり、皮膜30に付着した粘着物が引く納豆特有の糸33は僅かなものとなる(図2(D)図参照)。そして、蓋体を開けながら、皮膜から伸びる納豆特有の糸33を蓋体のフランジ部の縁に接触させて切るなどしてから、皮膜30を廃棄する。これにより、納豆の皮膜30を取除くときに、多数の糸が発生せず、その飛散により指や衣類等を汚すことがなくなり、煩わされることがなくなる。
【0037】
(実施例2)
図3は、この発明の実施例2に係る納豆容器200を示した斜視図である。この実施例2に係る納豆容器200及び皮膜30は、実施例1と同様な材質であり、水平断面形状が略円形形状に形成されたカップ形状の容器本体50と、該容器本体50の開口部の上縁部51を閉塞する封止シート60と、皮膜30と、から構成されている。納豆の製造方法やタレ袋等の同封については、実施例1と同様である。
【0038】
実施例2では、容器本体の上縁部51に、上縁に沿って折り曲げ可能とされた舌片52aが下方に向けて垂設されて備えられている。実施例2が市場に流通している過程においては、搬送等の支障にならないように舌片52aは容器壁に沿って下方に折られている。舌片52aには、それが垂設されている容器上縁部に沿って、隙間部41aと該隙間部41aの開放端42aとが一体となった皮膜通過部40aが備えられている。皮膜通過部40aは、納豆粒よりも狭い矩形形状の隙間に形成されている。容器本体50には、補強のため縦筋が形成されている。
【0039】
封止シート60は、合成樹脂性の薄いシートであり、容器の上縁に熱溶着などにより貼着されている。皮膜は略正方形形状に形成されてもよい。また、図は省略しているが、皮膜を、容器の水平断面形状に適合して略円形形状にし、その四分円部分を正方形として、その外角隅部をつまみ部としてもよい。皮膜をつまむ位置となる角隅近傍34又は前記つまみ部は、前記開放端の近傍に位置されると、皮膜をつまんで開放端に差し込むことが容易になる。更に略正方形形状の皮膜の角隅近傍34又は前記つまみ部にはつまみ位置標示35がされると好適である。
【0040】
さて、図4を参照しつつ、皮膜30を取除く工程を説明する。図4(A)図は、納豆容器が封止シート60で閉じられた状態を示している。図4(B)図は、納豆容器の封止シート60を剥離して、タレ袋17とカラシ袋18を取り出して、舌片52aを収容凹部の上に水平に折り曲げた状態を示している。図4(C)図は、皮膜を上方に引き抜いている状態を示している。皮膜を引き抜いた状態では、皮膜は図2(D)図と同様な状態となる。
【0041】
まず、納豆容器の上縁を封止している封止シート60を剥離して、納豆と同封されているタレ袋17とカラシ袋18を納豆容器の外に取り出す。次に下方に向けて折り曲げられていた舌片52aを収納凹部の上方に水平となるように、舌片52aが垂設されている部分の上縁に沿って折り曲げる(図4(B)図の矢印(c)、図3の矢印(b)参照)。次に、舌片52aの開放端側に位置している皮膜の周縁の角隅端部34において、つまみ位置標示35がされている部分の上面をつまんで、納豆の粘着物が付着している面を内側にして折って、皮膜の上面側から、舌片52aに形成された開放端42aを通して隙間部41aに差し込む(図3矢印(a)参照)。
【0042】
次に、納豆容器と舌片52aとを保持して、皮膜の角隅端部34を隙間部41aに通しながら、ゆっくり皮膜30を筋状にした状態で、前記隙間部を通過させて、開放端42aとは反対側の斜め上方向に向けて引き抜くようにする。納豆粒よりも狭い隙間部41aを皮膜が通過することにより、納豆粒は容器内に残存される。また、開放端42aとは反対側の斜め上方向に引き上げられることにより、薄い可撓性の皮膜は、粘着物が付着した側を略内側にして、筋状に収束されて引き抜かれる。
【0043】
そして納豆容器から皮膜が引き抜かれた状態において、皮膜に付着した粘着物が引く納豆特有の糸は、実施例1と同様に僅かなものとなる(図2(D)図参照)。そして、皮膜から伸びる前記糸を容器の上縁部51等に接触させて切るなどしてから、皮膜30を廃棄する。これにより、納豆の皮膜30を取除くときに、多数の糸が発生せず、その飛散により指や衣類等を汚すことがなくなり、煩わされることがなくなる。
【0044】
(実施例3)
図5は、この発明の実施例3を示した斜視図である。図5(A)図は、この発明の実施例3に係る納豆容器300を示した斜視図である。図5(B)図は、舌片と舌片の切り込み部を保護する保護シートの要部を示した斜視図である。実施例2と同じ構成である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。この実施例3に係る納豆容器300の容器本体50の壁体には、上縁部51から下方に約1cmの切り込みが入れられ、更に該切り込み下端から連続させて横方向に約2cmの切り込みが入れられて、横方向の切り込み端部から縦方向に伸びる軸を折れ線として、該壁体の納豆容器の内方に向けて水平に折り込み可能に、舌片52bが形成されている。該舌片52bが、収納凹部の上縁近傍に形成される隙間部41bと開放端42bとが一体となった皮膜通過部40bとして作用する。実施例3では、隙間部は舌片52bの基端部近傍では、納豆粒よりも狭い略V字形状の隙間に形成されている(図5(A)図参照)。
【0045】
また、図5(B)図に示したように、前記舌片52bは、隣接した位置の壁体と同一面をなして構成され、その表面を保護シート53が貼着されることにより、被覆されて保護されている。これにより、実施例3の納豆容器300が市場に流通しているときには、舌片52bが浮き上がって異物が混入することが防止される。保護シート53の材質は、樹脂シート、紙シートなどで材質が限定されるものではない。また、皮膜は実施例2と同様な構成とされる。
【0046】
この実施例3の容器によって納豆を食するときには、納豆容器の上縁を封止している封止シート60をはがして、更に、舌片52bを保護している保護シート53をはがす。前記舌片52bを前記折線を縦方向軸にして、容器の内側に水平に折り、納豆容器壁体との間に、納豆粒よりも狭い隙間部41bと開放端42bとが一体となり、上下方向に略V字形状の隙間をなす皮膜通過部40bを形成する。そして、実施例2と同様に、皮膜の周縁の角隅端部34においてつまみ位置標示35がされている部分を上方からつまんで、皮膜を納豆表面からはがしながら、納豆に接していた面を内側に折って、図5(A)図の破線矢印(c)に示したように、開放端42bから隙間部41bに差し込む。次に、納豆容器を保持して、開放端42bとは反対側の斜め上方向に、ゆっくり皮膜30を筋状にした状態で、隙間部41bを通過させて引き抜くようにする。
【0047】
この実施例3によっても、実施例2と同様の作用により、薄い可撓性の皮膜は、粘着物が付着した側を略内側にして、筋状に収束されて引き抜かれる。そして引き抜かれた状態の皮膜に付着した粘着物が引く納豆特有の糸は、実施例1と同様に僅かなものとなる(図2(D)図参照)。この実施例3によっても、納豆の皮膜30を取除くときに、多数の糸が発生せず、その飛散により指や衣類等を汚すことがなくなり、煩わされることがなくなる。
【0048】
(実施例4)
図6は、この発明による実施例4を説明する斜視図である。実施例4の納豆容器は、実施例1の容器と略同様の形態をしている。実施例4は、蓋体を開いたときに蓋体の一部が舌片70として、熱シール15等により溶着されたまま容器本体に、一体に残存する実施例を示している。該舌片70は、図示しない切り込み目又はミシン目により蓋体本体から切り離し可能とされ、蓋体を開放したときに、容器本体のフランジ部に貼着されたまま一体となって、容器本体に付設された状態となる。
【0049】
該舌片70は、容器本体に付設されたフランジ部と同一の方向に、容器本体の壁体の上縁部とは納豆粒よりも狭い幅で離間した突出片71を備え、前記容器本体の壁体の上縁部と前記突出片71とで隙間部41cと開放端42cとが一体となった皮膜通過部40cを形成する。
【0050】
皮膜の角隅端部31のつまみ位置標示35の部分を、上方からつまんで、粘着物が付着した側を略内側にして、ゆっくり皮膜通過部40cを通過させることにより、薄い可撓性の皮膜は、筋状に収束されて引き抜かれる。そして引き抜かれた状態の皮膜に付着した粘着物が引く納豆特有の糸は、実施例1と同様に僅かなものとなる。(図2(D)図参照)。この実施例4によっても、納豆の皮膜30を取除くときに、多数の糸が発生せず、その飛散により指や衣類等を汚すことがなくなり、煩わされることがなくなる。
【0051】
(その他)
・底体と該底体から起立した壁体とからなる収容凹部が形成された容器本体と、該容器本体の前記壁体の外周に整合する垂下壁が周囲に形成された天板からなる蓋体とから構成される納豆容器であって、前記収容凹部の上縁隅角部近傍に位置する前記蓋体に皮膜通過部が形成されるようにしてもよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
100,200,300…納豆容器、
10…容器本体、11…容器本体フランジ部、12…嵌合部、
13…収納凹部、14…凹凸形状、15…熱シール、16…連結部ヒンジ、
17…タレ袋、18…カラシ袋、
20…蓋体、21…蓋体フランジ部、22…凸部、23…通気穴、
30…皮膜、31,34…角隅端部、
32…筋状となった皮膜、33…納豆特有の糸、35…つまみ位置標示、
40,40a,40b,40c…皮膜通過部、
41,41a,41b,41c…隙間部、
42,42a,42b,42c…開放端、
50…カップ型容器本体、51…上縁部、52a,52b…舌片、53…保護シート、
60…封止シート、70…舌片、71…突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底体と該底体から起立した壁体とからなる収容凹部が形成された容器本体と、
前記収容凹部に収容された納豆の表面に密着して、前記納豆を完全に被覆するに足る大きさの皮膜と、を含む納豆容器において、
前記皮膜を通過させて収束させる皮膜通過部を備え、
該皮膜通過部は、前記収容凹部の上縁近傍に形成されると共に、前記納豆の粒径よりも狭小であって且つ上下に開放された隙間部を有し、
少なくとも該隙間部の側端の一部が、前記皮膜の周縁端部を前記隙間部に差し込み可能に開放端とされている、
ことを特徴とする納豆容器。
【請求項2】
前記収容凹部を被蓋する蓋体を備え、
前記収容凹部は、水平断面形状が略正方形形状に形成されると共に前記壁体上縁周囲部には前記底面に略平行に突出して帯状に本体フランジ部が形成されている納豆容器において、
前記蓋体は、前記収容凹部に整合する凸部を備え、該凸部の外周縁部に前記本体フランジ部と重合する蓋体フランジ部が形成され、
前記皮膜通過部が、前記蓋体フランジ部の角隅部近傍であって端部が自由端とされている位置に形成され、
前記開放端が、前記蓋体側方に向かって開放され、
前記皮膜が、略正方形形状をなして形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の納豆容器。
【請求項3】
前記収容凹部は、水平断面形状が略円形形状に形成され、
前記壁体の上縁端部に封止シートが貼着されて、前記収容凹部の開口部が封止される納豆容器において、
前記壁体の上縁近傍に形成される舌片に前記皮膜通過部が備えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の納豆容器。
【請求項4】
前記隙間部の前記開放端に近い前記皮膜の角隅近傍に、前記皮膜を上からつまむ位置を示すつまみ位置標示がされている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の納豆容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−62060(P2012−62060A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186661(P2010−186661)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【特許番号】特許第4614471号(P4614471)
【特許公報発行日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(510222316)合同会社知財テラス (1)
【Fターム(参考)】