説明

純水生成装置または軟水生成装置

【課題】 イオン交換樹脂の再生に要する時間や水の使用量を高度に低減し、イオン交換樹脂の再生に要するコストを、より削減できる純水生成装置または軟水生成装置を提供する。
【解決手段】 陽極と陰極との間に電圧を印加することによってバイポーラ膜で水または塩水を電気分解し、生成したOHイオンまたはHイオンで上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂またはカチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたイオンを陽極室または陰極室に電圧の力によって排出する機構、およびタンクに貯蔵した酸性水をイオン交換樹脂再生の際に陽極室および陰極室に供給する機構を有することを特徴とする純水生成装置または軟水生成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂の再生手段を備えた純水生成装置または軟水生成装置に関し、さらに詳しくは、バイポーラ膜による水または塩水の電気分解によって生成するHイオンまたはOHイオンでイオン交換樹脂を再生する手段を備えた純水生成装置または軟水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
純水生成装置や軟水生成装置にはイオン交換樹脂を用いたものが数多く提案されている。例えば、軟水生成装置にはカチオン交換樹脂が用いられており、カチオン交換樹脂によって原水中に含まれる硬度成分であるCa2+イオンやMg2+イオンをNaイオンやHイオンなどに置換(イオン交換)して軟水にしている。
【0003】
しかしながら、カチオン交換樹脂の交換基であるNaイオンやHイオンなどがすべてCa2+イオンやMg2+イオンで置換されてしまった場合、それ以上のイオン交換が不可能になるため、このイオン交換能を回復させるためのイオン交換樹脂の再生が必要になる。つまり、イオン交換樹脂を用いるこの種の純水生成装置や軟水生成装置では、原水中のイオン交換とイオン交換樹脂のイオン交換能の回復のための再生とを交互に行う必要がある。
【0004】
このイオン交換樹脂のイオン交換能の回復のための再生には、酸やアルカリなどの薬剤や、塩などが用いられているが、これらの薬剤や塩は再生を行うたびに大量に必要であり、そのコストや手間が問題となっていた。
【0005】
そこで、薬剤や塩を用いないイオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成された酸性水でカチオン交換樹脂を再生する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、通常の電気分解で生成される酸性水はHイオンの濃度が低いために、塩の使用は回避できるものの、水を多量に必要とするという問題があった。
【0007】
また、電極表面での水の電気分解により生成するHイオンとOHイオンによってカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を同時に再生する機構を備えた軟水化装置も提案されている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、これら電極表面での水の電気分解では、次式に示すように、HガスおよびOガスの発生を伴うため、
2HO → 2H + O
効率的にHイオンおよびOHイオンを生成できない。また、電極表面にアニオンおよびカチオンを集めて、酸性およびアルカリ性の電解水を作る方法では、陽極では塩素ガス発生により酸の生成効率が低下し、陰極ではカルシウムスケールの生成により電極抵抗の増加が起こるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平7−68256号公報
【特許文献2】特開2001−340863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記のような従来の純水生成装置や軟水生成装置のイオン交換樹脂の再生における問題点を解決するための技術として、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り合わせてなるバイポーラ膜によって水や塩水を電気分解した場合には、次式のように、
O → H + OH
ガス発生を伴うことなく、HイオンとOHイオンを生成させることができ、従来の電極表面での水の電解の場合のようなガス発生に伴うHイオンとOHイオンの消費がないので、発生したイオンを効率よくイオン交換樹脂の再生に利用できることを見出し、かかるイオン交換樹脂再生機構を備えた純水生成装置または軟水生成装置を完成させ、既に特許出願を済ませている(特願2004−31658号)。
【0011】
上記の純水生成装置または軟水生成装置によれば、イオン交換樹脂の再生に薬剤や塩を使用せず、かつ再生のための水の使用量を低減し、イオン交換樹脂の再生に要するコストを削減することができる。
【0012】
本発明では、上記先願に係る純水生成装置または軟水生成装置の有する優れた作用を更に高めて、イオン交換樹脂の再生に要する時間や水の使用量の更なる低減を達成し、イオン交換樹脂の再生に要するコストを、より削減できる純水生成装置または軟水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の純水生成装置または軟水生成装置は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に、陽極側から、陽極室、アニオン交換樹脂室、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り合わせたバイポーラ膜、カチオン交換樹脂室、および陰極室を順次有し、かつ陽極室および陰極室と、通水可能な水路を介して連結された、酸性水を貯蔵するためのタンクを有してなり、上記アニオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にアニオン交換樹脂が充填されてなり、上記カチオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にカチオン交換樹脂が充填されてなり、上記陽極室は、上記陽極と上記アニオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、上記陰極室は、上記陰極と上記カチオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、上記バイポーラ膜は、アニオン交換膜側を陽極側にし、カチオン交換膜側を陰極側にして配されており、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することによって上記バイポーラ膜で水または塩水を電気分解し、生成したOHイオンまたはHイオンで上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂または上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたイオンを上記陽極室または上記陰極室に電圧の力によって排出する機構、および上記タンク内の酸性水を、上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂または上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂の再生の際に、上記陽極室および上記陰極室に供給する機構を備えることによって、前記課題を解決したものである。なお、本発明でいう酸性水(酸性水溶液)は、pHが7未満の水溶液を意味している。
【0014】
また本発明の軟水生成装置は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に、陽極側から、陽極室、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り合わせたバイポーラ膜、カチオン交換樹脂室、および陰極室を順次有し、かつ陽極室および陰極室と、通水可能な水路を介して連結された、酸性水を貯蔵するためのタンクを有してなり、上記カチオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にカチオン交換樹脂が充填されてなり、上記陽極室は、上記陽極と上記バイポーラ膜とで仕切られてなり、上記陰極室は、上記陰極と上記カチオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、上記バイポーラ膜は、アニオン交換膜側を陽極側にし、カチオン交換膜側を陰極側にして配されており、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することによって上記バイポーラ膜で水または塩水を電気分解し、生成したHイオンでカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたカチオンを上記カチオン交換樹脂室から陰極室に電圧の力によって排出する機構、および上記タンク内の酸性水を、上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂の再生の際に、上記陽極室および上記陰極室に供給する機構を備えることによって、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の純水生成装置または軟水生成装置によれば、イオン交換樹脂の再生に大量の薬剤や塩を使用せず、かつ再生のための水の使用量を低減し、イオン交換樹脂の再生に要するコストを大幅に低減することができる。
【0016】
すなわち、本発明の純水生成装置または軟水生成装置では、バイポーラ膜による水の電気分解(以下、「電気分解」を簡略化して「電解」という場合がある)によってH+ イオンとOH- イオンを生成し、それらのイオンによってイオン交換樹脂を再生するので、イオン交換樹脂の再生にあたって大量の薬剤や塩を使用する必要がない。
【0017】
また、バイポーラ膜による水の電解では、次式のように、
O → H + OH
ガス発生を伴うことなく、HイオンとOHイオンを生成させることができ、従来の電極表面での水の電解の場合のようなガス発生に伴うHイオンとOHイオンの消費がないので、効率よく再生に使用するイオンを発生することができる。
【0018】
ちなみに、従来提案されていた電極表面での水の電解では、通常、次式のように、ガス発生を伴う反応となる。
2HO → 2H + O
【0019】
そのため、前記のように生成したHイオンとOHイオンを消費してしまうほか、爆発性のある水素ガスと燃焼を促進する酸素ガスを同時に多量に発生するという問題点があった。
【0020】
また、本発明の純水生成装置または軟水生成装置では、再生によってイオン交換されたCa2+イオンやMg2+イオンなどのカチオンやClイオンやNOイオンなどのアニオンは電位によってそれぞれ陰極側または陽極側の電極室に引き寄せられ、排出される。
【0021】
更に、本発明の純水生成装置または軟水生成装置では、上記先願に係る純水生成装置または軟水生成装置と同様に、イオン交換樹脂の再生に当たり、陽極室や陰極室にCa2+イオンなどのカチオンやClイオンなどのアニオンを有する水を供給しつつ、バイポーラ膜での電解を行うことで、後記の「イオン濃縮効果」により、HイオンやOHイオンの生成量を飛躍的に高めて、イオン交換樹脂の再生を高効率で達成することができるが、特に本発明の構成を採用することで、再生初期からこの「イオン濃縮効果」を高いレベルで確保できるため、イオン交換樹脂の際にアニオン交換樹脂室内やカチオン交換樹脂室に供給する水の量を、極少量としつつ、良好にイオン交換樹脂の再生を行うことができる。
【0022】
従って、本発明の純水生成装置または軟水生成装置を用いれば、イオン交換樹脂の再生に大量の薬剤や塩を用いないので、再生のためのコストの低減や手間の簡略化ができ、しかも水の使用量を大幅に低減できるため、イオン交換樹脂の再生に要するコストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎに、本発明の純水生成装置または軟水生成装置の実施の形態を、図を用いて説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態(純水生成装置または軟水生成装置)の一例を示す概略図である。この図1に示す純水生成装置または軟水生成装置では、電気分解を行うための陽極1と陰極2とからなる一対の電極と、アニオン交換膜3aとカチオン交換膜3bとを貼り合わせたバイポーラ膜3によって仕切られたアニオン交換樹脂室10とカチオン交換樹脂室11とを有し、アニオン交換樹脂室10にはアニオン交換樹脂6が充填され、このアニオン交換樹脂室10は陽極1側に配置され、カチオン交換樹脂室11にはカチオン交換樹脂7が充填され、このカチオン交換樹脂室11は陰極2側に配置されている。そして、上記バイポーラ膜3はアニオン交換膜3aが陽極1側に、カチオン交換膜3bが陰極2側になるように配置されている。
【0025】
また、アニオン交換樹脂室10の外側には隔膜4で仕切られた陽極室8が設けられ、陽極室8の他方の面は陽極1で仕切られている。つまり、陽極室8は隔膜4と陽極1とで仕切られている。さらに、カチオン交換樹脂室11の外側には隔膜5で仕切られた陰極室9が設けられ、この陰極室9の他方の面は陰極2で仕切られている。つまり、陰極室9は隔膜5と陰極2とで仕切られている。また、図1の装置では、アニオン交換樹脂室10とカチオン交換樹脂室11とが、通水可能な水路16aを介して連結されている。
【0026】
さらに図1の装置では、陽極室8と陰極室9が、通水可能な水路15を介して連結されており、陽極室8、陰極室9は、それぞれタンク12と、通水可能な水路14a、14bを介して連結されている。すなわち、図1の装置では、陽極室8−水路15−陰極室9−水路14b−タンク12−水路14a、が接続されることで循環水路(以下、「再生水路」ということもある)が構成されており、該循環水路内には、さらにポンプ13が設けられており、該ポンプ13によって循環水路内で水を循環させることができる。なお、陽極室8と陰極室9を連結する水路15中には、止水手段(活栓など,図示しない)が設けられていることが好ましい。
【0027】
タンク12内には、酸性水を貯蔵しておき、アニオン交換樹脂室10内のアニオン交換樹脂6やカチオン交換樹脂室11内のカチオン交換樹脂7を再生する際に、該酸性水を陽極室8および陰極室9に供給する(詳しくは後述する)。図1中、点線矢印は、水処理時の被処理水および処理水(純水または軟水)の流れ、並びにイオン交換樹脂再生時の、アニオン交換樹脂室10内の水の入れ替えの際の水の流れの一例を、実線矢印は、イオン交換樹脂再生時のタンク内の貯蔵水の流れの一例を、それぞれ示している。
【0028】
なお、本発明においては、例えば、上記のように、アニオン交換樹脂室10の外側には隔膜4で仕切られた陽極室8が設けられとか、陽極室8の他方の面は陽極1で仕切られとか、陽極室8は隔膜4と陽極1とで仕切られとか、カチオン交換樹脂室11の外側には隔膜5で仕切られた陰極室9が設けられとか、この陰極室9の他方の面は陰極室で仕切られとか、陰極室9は隔膜5と陰極2とで仕切られ、と表現しているが、陽極1、隔膜4、隔膜5、陰極2などは、それぞれ、それらの機能が発揮できるように配置されていればよく、陽極室8の全部が隔膜4と陽極1とで仕切られていることは要求されず、それらと他の部材とで仕切られていてもよいし、また、陰極室9の全部も隔膜5と陰極2とで仕切られていることは要求されず、それらと他の部材とで仕切られていてもよい。
【0029】
上記隔膜4、5は、不織布のような微細な孔が開いていてイオンと水の両方を透過させることができる膜やイオンのみが通るイオン交換膜が適しているが、不織布などのようにカチオン、アニオン両方を通す膜を用いると、電位によってカチオンがアニオン交換樹脂室内において濃縮され、アニオンがカチオン交換樹脂室内において濃縮されるので、イオン交換樹脂の再生効率をより高めることができる。なお、図1では、隔膜4、5が単一の素材で構成されている態様を示したが、隔膜4、5は、イオン(および水)が通過可能なように構成されていればよく、不織布やイオン交換樹脂から構成される部分と、他の素材(樹脂フィルムなど)で構成される部分を有する複合体であっても構わない。
【0030】
図1に示す装置によって水(例えば水道水)を処理して純水または軟水を得るには、アニオン交換樹脂室10およびカチオン交換樹脂室11に通水してイオン交換を行う。例えば、カチオン交換樹脂室11でのみ水を処理した場合には、弱酸性の軟水が得られる。他方、アニオン交換樹脂室10とカチオン交換樹脂室11の両者で水を処理した場合には、純水または中性の軟水が得られる。後者の場合、通水する順序は、図1中点線矢印で示すように、カチオン交換樹脂室11を先としてもよく、該点線矢印方向の逆方向、すなわち、アニオン交換樹脂室10を先としても構わない。なお、水路15に上記の止水手段(活栓など)が設けられている場合には、該手段により、陽極室8と陰極室9の間での直接の水の移動を遮断することが望ましい。
【0031】
水処理の実施によりイオン交換樹脂のイオン交換能の低下が進行して、更なる水処理が困難または不可能になれば、イオン交換樹脂の再生を行う。イオン交換樹脂再生の際には、バイポーラ膜3による水の電解では若干量の水が消費されるため、アニオン交換樹脂室10とカチオン交換樹脂室11には水が満たされていることが望ましい。また、アニオン交換樹脂室10とカチオン交換樹脂室11に塩水を満たしておくことにより、生成するOHイオンおよびHイオンの濃度を再生初期から高くすることができるというメリットがあるが、コストや手間の関係から、必ずしも塩水を満たす必要はない。
【0032】
イオン交換樹脂を再生する際には、タンク12内の酸性水を、陽極室8に供給し通過させ、この陽極室8を通過した酸性水を、引き続き陰極室9中を通過させつつ、陽極1と陰極2との間に電圧を印加することによってバイポーラ膜3で水または塩水を電気分解する。この電気分解によって生成したHイオンまたはOHイオンでイオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたイオンを隔膜で仕切られた電極室(陽極室または陰極室をまとめて「電極室」ということがある)へ電圧の力によって排出することができる。
【0033】
これを詳しく説明すると、バイポーラ膜3による水または塩水の電解によって生成したHイオンはカチオン交換樹脂室11に供給され、そこに充填されているカチオン交換樹脂7中のCa2+イオンやMg2+イオンとイオン交換(置換)してカチオン交換樹脂7を再生し、そのカチオン交換樹脂室7の再生によって生じたCa2+イオンやMg2+イオンなどのカチオンは電位によって陰極2側に引き寄せられ、カチオン交換樹脂室11から陰極室9に排出される。また、バイポーラ膜3による水または塩水の電解によって生成したOHイオンはアニオン交換樹脂室10に供給され、そこに充填されているアニオン交換樹脂6中のClイオンやNOイオンとイオン交換してアニオン交換樹脂を再生し、再生によって生じたClイオンやNOイオンなどのアニオンは電位によって陽極1側に引き寄せられ、アニオン交換樹脂室10から陽極室8に排出される。
【0034】
さらに、Ca2+イオンなどのカチオンやClイオンなどのアニオンを含んでいる水を陽極室8に供給すると、電位によって、Ca2+イオンなどのカチオンが陽極1から反発してアニオン交換樹脂室10内に移動するため、アニオン交換樹脂室10内(特にバイポーラ膜3表面近傍)のCa2+イオンなどのカチオン濃度が増大する(すなわち、Ca2+イオンなどのカチオンが濃縮される)。また、陽極室8を通過し、Ca2+イオンなどのカチオン濃度が低下した水を陰極室9に供給すると、電位によって、水中のClイオンなどのアニオンが陰極2から反発してカチオン交換樹脂室11内に移動するため、カチオン交換樹脂室11内(特にバイポーラ膜3表面近傍)のClイオンなどのアニオン濃度が増大する(すなわち、Clイオンなどのアニオンが濃縮される)。
【0035】
このように、アニオン交換樹脂室10内(特にバイポーラ膜3表面近傍)でカチオンが濃縮され、カチオン交換樹脂室11内(特にバイポーラ膜3表面近傍)でアニオンが濃縮されると、電気的平衡の関係から、バイポーラ膜3での電気分解で生成し、カチオン交換樹脂室11に供給されるHイオン量、およびアニオン交換樹脂室10に供給されるOHイオン量が飛躍的に増大する。このため、本発明の装置では、極めて高い効率でアニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂を再生することができる(以下、各樹脂室におけるイオン濃縮によってイオン交換樹脂の再生効率が向上する効果を「イオン濃縮効果」という)。
【0036】
ちなみに、例えば、上記特許文献2では、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の間に配する隔膜として、バイポーラ膜を用いたイオン交換樹脂の再生方法(イオン交換樹脂の再生が可能な浴槽水循環式軟水化装置)についても開示している。しかしながら、この特許文献2に係る装置は、イオン交換樹脂の再生を、陽極および陰極で生成されたHイオンおよびOHイオンによって行うものであり、その装置構成上、バイポーラ膜での電気分解により発生するHイオンおよびOHイオンを利用するものではなく、また、陽極側にカチオン交換樹脂が、陰極側にアニオン交換樹脂が配される構成を採用しているため、本発明の装置に係る上記イオン濃縮効果を確保可能なものではない。仮に、陽極表面にClイオンなどのアニオンを濃縮した場合には、電子の授受により塩素などが発生してHイオンの生成効率が低下する。また、陰極表面にCa2+イオンなどのカチオンを濃縮した場合には、電子の授受によってカルシウムスケールが生成するなどして電解効率を悪化させてしまう。これに対し、本発明のようにバイポーラ膜で電解を行った場合には、電子の授受が生じないために、こうした問題が発生しないし、バイポーラ膜表面での水素ガスや酸素ガス発生の問題も生じない。これらの点において、本発明の装置は従来の装置とは大きく相違している。
【0037】
本発明の装置では、上記のイオン濃縮効果によって、高効率でのイオン交換樹脂再生を達成しているが、再生初期では、各樹脂室内でのアニオン濃度やカチオン濃度が低いために電気抵抗が大きく、また、陽極室8および陰極室9に供給する水として、水道水などの飲料水などを用いると、これらに含まれる塩の濃度が低いため、効率のよい再生に必要な程度にアニオン濃度やカチオン濃度が高まるまでには、アニオンやカチオンの濃縮を比較的長い時間実施しなければならない。よって、アニオンやカチオンが十分に濃縮されるまでは、供給する電力や水(再生水)をイオン交換樹脂の再生に効率的に利用できない。
【0038】
そこで、本発明の装置では、イオン交換樹脂再生の際に陽極室8および陰極室9に供給する水として、各種イオン濃度の低い水道水などではなく、予めタンク12に貯蔵しておいた酸性水(酸性水溶液)を用いることで、各樹脂室内のイオン濃度を再生初期から高くして、効率的なイオン交換樹脂再生を達成している。
【0039】
また、装置内に存在する水に含まれるCa2+やMg2+などは、例えば、イオン交換樹脂再生中に、局所的にpHが12以上になると、水に不溶なカルシウム塩やマグネシウム塩を形成するため、こうした塩が電極表面や装置の各部材内壁などに析出し、電解効率を下げるなどの問題が発生することがある。しかしながら、本発明の装置では、イオン交換樹脂再生の際に、タンク内に貯蔵した酸性水を各電極室に供給するため、上記のような水不溶性の塩の析出を抑制することもできる。
【0040】
本発明の装置は、イオン交換樹脂再生の際にタンク12内の酸性水(以下、「再生水」ということもある)を陽極室8や陰極室9に供給できる構成であればよいが、例えば、図1に示すように、装置が、タンク12と、陽極室8および陰極室9とを水路14a、14bを介して連結してなる循環水路を有しており、イオン交換樹脂の再生の際に、再生水を該循環水路内で循環させ得る機構を有していることが好ましい。このように再生水を循環させて繰り返し各電極室に供給すれば、アニオン交換樹脂の再生により陽極室8に排出されたアニオンを陰極室9に、カチオン交換樹脂の再生により陰極室9に排出されたカチオンを陽極室8に、それぞれ供給することができるため、各樹脂室内でのイオン濃縮速度を更に高めることができ、イオン交換樹脂再生に要する水の量を更に大幅に削減できる。
【0041】
再生水の循環の方向は、例えば、図1中実線矢印の方向、すなわち、タンク12から出た再生水を先に陽極室8に供給する方向とすることが望ましい。再生水は、陽極室8を通過する際に、該陽極室8で電圧の力によってCa2+などのカチオン濃度が低下する。よって、図1中実線矢印の方向で再生水を循環させれば、カチオン濃度の低下した再生水を陰極室9に供給することができるため、陰極室9内壁での水不溶性の塩の析出(特に陰極2表面での析出)を、更に抑制することができる。なお、陽極室8内では、Ca2+などのカチオンは、陽極1から反発してアニオン交換樹脂室10のバイポーラ膜3表面側へ移動するが、バイポーラ膜3のアニオン交換樹脂室10側はアニオン交換膜3aであるため、Ca2+などのカチオンはバイポーラ膜3表面からも反発する。そのため、陽極室8内部やアニオン交換樹脂室10内部で仮にカルシウム塩などが生成しても陽極1やバイポーラ膜3表面に析出することはないため、これらの生成による悪影響は極めて少ない。
【0042】
イオン交換樹脂の再生が終了したら、循環させていた再生水は廃棄してもよいが、再びタンク12内に貯蔵しておき、次回のイオン交換樹脂再生に利用することがより好ましい。
【0043】
イオン交換樹脂再生中に上記循環水路内で再生水を循環させる場合には、イオン交換樹脂の再生が急速に進行するため、アニオン交換樹脂室10内では局所的にカチオンが濃縮されて、pH12以上となり、カルシウムやマグネシウムの塩(水に不溶な塩)が析出してしまうことがある。また、イオン交換樹脂の再生時に流す電流値によっては、各樹脂室内で電気抵抗による発熱が生じるが、特にアニオン交換樹脂は耐熱性が低いため、熱劣化を防止する観点から冷却することが好ましい。そこで、イオン交換樹脂の再生時には、適当なタイミングで、アニオン交換樹脂室10内に存在する水を入れ替えることが推奨される。アニオン交換樹脂室10内の水を入れ替えることで、カチオンの過度の濃縮を抑えて、水に不溶性の塩の析出を防止できると共に、アニオン交換樹脂室10内を冷却して、アニオン交換樹脂の熱劣化を防ぐこともできる。なお、アニオン交換樹脂室10内の水の入れ替えの間隔は、特に制限はないが、例えば、水入れ替えの基準をアニオン交換樹脂室内の温度が50℃に達した時点とすることが推奨される。通常のアニオン交換樹脂では、50℃程度であれば熱劣化が生じにくいからである。
【0044】
アニオン交換樹脂室内の水の入れ替え方法は、特に制限はないが、例えば、図1に示す装置であれば、アニオン交換樹脂室10下方に水排出用の廃液口(図示しない)を設けておき、該廃液口からアニオン交換樹脂室10内の水を排出すると共に、アニオン交換樹脂室10上方から新たな水(例えば、タンク12内部の再生水や水道水など)をアニオン交換樹脂室10内に供給する手段などを採用すればよい。
【0045】
また、上記のアニオン交換樹脂室10内の水の入れ替えを行うに当たり、まずカチオン交換樹脂室11に水を供給・通過させ、該水を、引き続き水路16を通じてアニオン交換樹脂室10内に供給・通過させた後に排出する(すなわち、図1中点線矢印の方向に水を通過させる)ことが、より好ましい。このような手法でアニオン交換樹脂室10内の水の入れ替えを行うと、カチオン交換樹脂室11内で濃縮された酸(Clなどのアニオン)、およびカチオン(Ca2+など)が、アニオン交換樹脂室10内に導入される。アニオン交換樹脂室10内に導入されたClなどのアニオンは、イオン交換によりアニオン交換樹脂6に回収され、カチオン交換樹脂室11から導入されたカチオンと、元々アニオン交換樹脂室10内に存在していたカチオンが、水と共に装置外に排出される。アニオン交換樹脂6に回収されたアニオンは、更なるイオン交換樹脂再生によって、アニオン交換樹脂6から脱離し、再生水内に溶解してアニオン交換樹脂室10外に放出される。そのため、アニオン交換樹脂10内の水の入れ替えを行っても、カチオン交換樹脂室11内で濃縮されていたアニオンが装置外に排除されることを抑制できるため、循環水路内の再生水の酸性度の低下を防止でき、イオン交換樹脂再生を、より効率的に進めることができる。
【0046】
なお、一般に、カチオン交換樹脂には、強酸性のものと弱酸性のものが存在し、アニオン交換樹脂には、強塩基性のものと弱塩基性のものが存在する。強酸性カチオン交換樹脂としては、イオン交換のための官能基として、例えばスルホン酸基を有するものが、弱酸性カチオン交換樹脂としては、イオン交換のための官能基として、例えばカルボキシル基を有するものが知られている。また、強塩基性アニオン交換樹脂としては、イオン交換のための官能基として、例えば4級アンモニウム基を有するものが、弱塩基性アニオン交換樹脂としては、イオン交換のための官能基として、例えば3級アミノ基や2級アミノ基などを有するものが知られている。
【0047】
例えば、強酸性カチオン交換樹脂や強塩基性アニオン交換樹脂は、CaClやNaClなどの中性塩を解離させてイオン交換することができるが、弱酸性カチオン交換樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂は、こうした中性塩のイオン交換はできない。このため、一般に純水生成装置には強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂が用いられており、本発明の純水生成装置にも、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂を用いることが好ましい。他方、生成する純水または軟水の純度や硬度について、さほど高いレベルまでの要求がない場合、例えば、飲用の水を生成するなどの場合には、本発明の装置には、強酸性カチオン交換樹脂や強塩基性アニオン交換樹脂を用いてもよいが、弱酸性カチオン交換樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂を用いることも可能である。
【0048】
特にイオン交換樹脂の再生の効率化の観点からは、弱酸性カチオン交換樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂を用いることが望ましい。弱酸性カチオン交換樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂や強塩基性アニオン交換樹脂と比較して、より弱い酸やアルカリで再生できるからである。
【0049】
上述の通り、本発明の装置におけるイオン交換樹脂の再生では、イオン濃縮効果によって、バイポーラ膜での電解によるHイオンおよびOHイオンの生成効率を高め、イオン交換樹脂の再生効率を向上させているが、イオン交換樹脂が弱酸性カチオン交換樹脂や弱塩基性アニオン交換樹脂の場合には、より低いHイオン濃度やOHイオン濃度で再生を進めることができるため、強酸性カチオン交換樹脂や強塩基性アニオン交換樹脂を用いた場合よりも、非常に早く再生操作を完了することができる。
【0050】
また、図2に本発明の装置の第1実施形態の他の例の概略図を示す。図2では、上記図1と作用が共通する要素については、共通の符号を付して重複説明を避ける(後記の図3および図4についても、同じ)。図2の装置では、カチオン交換樹脂室11とタンク12とが、通水可能な水路14cを介して連結されている。タンク12には、イオン交換樹脂の再生終了時にカチオン交換樹脂室11内に存在する水(詳しくは後述する)の一部または全部、および水処理の開始前に、カチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いられた洗浄水の廃液(詳しくは後述する)の一部または全部を貯蔵することができる。また、図2の装置では、ポンプ13と接続している水路(タンク12と反対側の水路)に、水路14aと水路14cの分岐部があるが、該分岐部には、例えば、三方弁(図示しない)が設置されていることが望ましい。なお、水路14aと水路14cは、それぞれが独立して、別個のポンプを介してタンク12に連結されていてもよい。
【0051】
さらに図2の装置では、カチオン交換樹脂室11に接続している水路14cから、通水可能な水路16aが分岐しており、該水路16aはアニオン交換樹脂室10に接続している。水路14cと水路16aとの分岐部には、例えば、三方弁(図示しない)が設置されていることが望ましく、水処理の際には、該三方弁によって、カチオン交換樹脂室11からタンク12へ向かう水の流れを遮断しておくことが好ましい。なお、水路14cと水路16aは、それぞれがカチオン交換樹脂室11と直接に接続していてもよい。図2中、破線矢印は、カチオン交換樹脂室11内の水をタンク12へ貯蔵する際の水の流れの一例を示している。
【0052】
図2の装置では、タンク12内に、イオン交換樹脂の再生終了時にカチオン交換樹脂室11内に存在する水の一部または全部、および水処理の開始前に、カチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いられた洗浄水の廃液の一部または全部を貯蔵することができ、この貯蔵水を次回のイオン交換樹脂再生の際に再生水として使用できる。バイポーラ膜3を使用した本発明の装置に係るイオン交換樹脂の再生では、再生終了時にカチオン交換樹脂室11内にアニオンが濃縮された水、すなわち酸性水溶液が残る。この酸性水溶液には、濃縮されたアニオン以外にもカチオン交換樹脂の再生によって排出されたCa2+やMg2+などのカチオンが多量に残存している(一部は、陰極室9に排出される)。また、カチオン交換樹脂室11内には、再生後にこうした酸性度の高い水溶液が存在していることから、水処理に先立って、カチオン交換樹脂室11内を洗浄して、処理後の純水や軟水に悪影響が出ないようにすることが好ましいが、この洗浄水の廃液も、アニオンやカチオンを多量に含む酸性水溶液となる。
【0053】
そこで、図2の装置では、イオン交換樹脂の再生終了時にカチオン交換樹脂室11内に存在する酸性水溶液、および該酸性水溶液を除去後、水処理の再開前にカチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いた洗浄水の廃液、すなわち、カチオンを多量に含む酸性水溶液の一部または全部をタンク12に貯蔵し、次回のイオン交換樹脂の再生の際に、陽極室8や陰極室9に供給する。このような操作により、再生初期から各電極室(すなわち各樹脂室)内のアニオン濃度やカチオン濃度を高くして、これらの濃縮速度を飛躍的に向上させ得るため、電力や再生水の供給量を更に低減しつつ、良好にイオン交換樹脂の再生を達成することができる。
【0054】
イオン交換樹脂の再生終了時にカチオン交換樹脂室11内に存在する酸性水溶液、および該酸性水溶液を除去後、水処理の再開前にカチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いた洗浄水の廃液を、カチオン交換樹脂室11から取り出してタンク12に貯蔵するには、例えば、図2に示すようにポンプ13を設置しておき、これにより、破線矢印方向に、カチオン交換樹脂室11からタンク12へ酸性水溶液を導く方法が採用できる。なお、カチオン交換樹脂室11内の水をタンク12に貯蔵する際には、水路14aと水路14cの分岐部に設置された三方弁により、水路14cから水路14aへの水の流れを遮断しておくことが好ましい。
【0055】
また、図2の装置では、図1の装置と同様に、タンク12と、陽極室8および陰極室9とを水路14a、14bを介して連結してなる循環水路を有しており、イオン交換樹脂の再生の際は、再生水を該循環水路内で循環させ得る機構を有しているが、再生水の循環の際には、水路14aと水路14cの分岐部に設置した三方弁により、水路14aから水路14cへの水の流れを遮断しておくことが好ましい。
【0056】
なお、図1および図2の装置では、水を処理して純水または軟水を得る際に、陽極1と陰極2の間に電圧を印加し、タンク12内の再生水を陽極室8および陰極室9に供給することで、水処理(純粋化・軟水化)とイオン交換樹脂の再生を同時に行うこともできる。
【0057】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態(軟水生成装置)の一例を示す概略図である。この図3に示す軟水生成装置では、電気分解を行うための陽極1および陰極2からなる一対の電極と、アニオン交換膜3aとカチオン交換膜3bとを貼り合わせたバイポーラ膜3と隔膜5とで仕切られたカチオン交換樹脂室11を有し、かつ上記カチオン交換樹脂室11の外にバイポーラ膜3と陽極1とで仕切られた陽極室8と、隔膜5と陰極2とで仕切られた陰極室9を有している。この図3に示す軟水生成装置でも、バイポーラ膜3はそのアニオン交換膜3aが陽極1側に、カチオン交換膜3bが陰極2側になるように配置されていて、隔膜5には第1実施形態の場合と同様に不織布などが好適に用いられる。
【0058】
さらに図3の装置では、陽極室8と陰極室9が、通水可能な水路15を介して連結されており、陽極室8、陰極室9は、それぞれタンク12と、通水可能な水路14a、14bを介して連結されている。すなわち、図3の装置でも、陽極室8−水路15−陰極室9−水路14b−タンク12−水路14a、が接続されることで循環水路(再生水路)が構成されており、該循環水路内には、さらにポンプ13が設けられており、該ポンプ13によって循環水路内で水を循環させることができる。なお、第1実施形態の場合と同様に、水路15中には、止水手段(活栓など、図示しない)が設けられていることが望ましい。
【0059】
タンク12内には、酸性水を貯蔵しておき、カチオン交換樹脂室11内のカチオン交換樹脂の再生の際に、該酸性水を陽極室8および陰極室9に供給する(詳しくは後述する)。図3中、点線矢印は、水処理時の被処理水および処理水(軟水)の流れの一例を、実線矢印は、イオン交換樹脂再生時のタンク内の貯蔵水の流れの一例を、それぞれ示している。
【0060】
図3の装置によって軟水を得るには、カチオン交換樹脂室11に被処理水(水道水など)を供給してイオン交換を行う。水処理の際のカチオン交換樹脂室11への被処理水の供給、および処理水の取り出しの流れは、図3の点線矢印の方向であってもよく、該点線矢印とは逆方向としても構わない。なお、水路15に上記の止水手段(活栓など)が設けられている場合には、該手段により、陽極室8と陰極室9の間での直接の水の移動を遮断することが望ましい。
【0061】
水処理の実施によりイオン交換樹脂のイオン交換能の低下が進行して、更なる水処理が困難または不可能になれば、イオン交換樹脂の再生を行う。イオン交換樹脂再生の際には、バイポーラ膜3による水の電解では若干量の水が消費されるため、カチオン交換樹脂室11内には水または塩水が満たされていることが望ましい。
【0062】
イオン交換樹脂を再生する際には、タンク12内の酸性水を、陽極室8中に供給し通過させ、この陽極室8を通過した水を、引き続き陰極室9に供給しつつ、陽極1と陰極2との間に電圧を印加することによってバイポーラ膜3で水または塩水を電気分解すると、生成したHイオンはカチオン交換樹脂室11に供給され、そこに充填されているカチオン交換樹脂7中のCa2+イオンやMg2+イオンなどとイオン交換してカチオン交換樹脂7を再生し、そのカチオン交換樹脂7の再生によって生じたCa2+イオンやMg2+イオンなどのカチオンは電位によって陰極2側に引き寄せられ、カチオン交換樹脂室11から陰極室9に排出される。
【0063】
また、イオン交換樹脂の再生の際には、陽極室8に供給された水中のCa2+イオンなどのカチオンが陽極1から反発してバイポーラ膜3側に移動するため、バイポーラ膜3の陽極側表面近傍のカチオン濃度が増大する。さらにこの陽極室8を通過した水を陰極室9に供給すると、水中のClイオンなどのアニオンが、陰極2から反発してカチオン交換樹脂室11内に移動するため、カチオン交換樹脂室11内(特にバイポーラ膜3の表面近傍)のアニオン濃度が増大する。よって、第1実施形態の場合と同様のイオン濃縮効果により、バイポーラ膜3での水の電気分解によるHイオンの生成量が飛躍的に増大するため、高い効率でカチオン交換樹脂7の再生が達成できる。
【0064】
さらに、イオン交換樹脂再生の際に、タンク内12に貯蔵しておいた酸性水を再生水として用いることで、再生初期からカチオン交換樹脂室11内のアニオン濃度を高くして、その濃縮速度を飛躍的に向上させ得るため、電力や再生水の供給量を更に低減しつつ、良好にイオン交換樹脂の再生を達成することができる。また、水不溶性のカルシウム塩やマグネシウム塩の析出を防止して、かかる析出による不具合の発生も抑制できる。
【0065】
第2実施形態に係る装置では、タンク12内の再生水を、イオン交換樹脂の再生の際に陽極室8や陰極室9に供給できる構成を採用していればよいが、該装置が、図3に示すように、タンク12と、陽極室8および陰極室9とを水路14a、14bを介して連結してなる循環水路(再生水路)を有しており、イオン交換樹脂の再生の際は、再生水を該循環水路内で循環させ得る機構を有していることが好ましい。このように再生水を循環させて繰り返し各電極室に供給することで、イオン交換樹脂再生に要する水の量を更に大幅に削減できる。再生水の循環の方向は、第1実施形態に係る装置と同じ理由から、図3中実線矢印の方向、すなわち、タンク12から出た再生水を先に陽極室8に供給する方向とすることが好ましい。
【0066】
また、第2実施形態に係る装置では、第1実施形態に係る装置と同様に、カチオン交換樹脂として強酸性カチオン交換樹脂を用いてもよく、弱酸性カチオン交換樹脂を用いても構わないが、カチオン交換樹脂の再生速度を高める観点からは、弱酸性カチオン交換樹脂を用いることが望ましい。
【0067】
さらに、図4に本発明の装置の第2実施形態の他の例の概略図を示す。図4の装置では、カチオン交換樹脂室11とタンク12とが、通水可能な水路14cを介して連結されている。タンク12には、イオン交換樹脂の再生終了時にカチオン交換樹脂室11内に存在する水の一部または全部、および水処理の開始前に、カチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いられた洗浄水の廃液の一部または全部を貯蔵することができる。第1実施形態の場合と同様に、こうしたカチオン交換樹脂室11から得られる水は、種々のアニオン、カチオンが濃縮された酸性水溶液であるため、タンク12内に貯蔵しておき、次回のイオン交換樹脂再生の際の再生水として用いることができる。
【0068】
図4の装置では、ポンプ13と接続している水路(タンク12と反対側の水路)に、水路14aと水路14cの分岐部があるが、該分岐部には、例えば、三方弁(図示しない)が設置されていることが望ましい。なお、水路14aと水路14cは、それぞれが独立して、別個のポンプを介してタンク12に連結されていてもよい。
【0069】
また、図4の装置では、カチオン交換樹脂室11に接続している水路14cから、通水可能な水路16bが分岐している。水処理の際には、この水路16bを通じて、被処理水(水道水など)をカチオン交換樹脂室11内に供給したり、処理水をカチオン交換樹脂室11から取り出したりすることができる。水路14cと水路16bとの分岐部には、例えば、三方弁(図示しない)が設置されていることが望ましい。なお、水路14cと水路16bは、それぞれがカチオン交換樹脂室11と直接に接続していてもよい。図4中、破線矢印は、カチオン交換樹脂室11内の水をタンク12へ貯蔵する際の水の流れの一例を示している。
【0070】
水処理の際には、水路14cと水路16bの分岐部に設置された三方弁によって、タンク12へ向かう水の流れを遮断しておくことが好ましい。
【0071】
また、図4の装置において、イオン交換樹脂を再生するに当たり、タンク12内の再生水を循環させる際には、水路14aと水路14cの分岐部に設置した三方弁により、水路14aから水路14cへの水の流れを遮断しておくことが好ましい。
【0072】
なお、図3および図4の装置では、水を処理して軟水を得る際に、陽極1と陰極2の間に電圧を印加し、タンク12内の再生水を陽極室8および陰極室9に供給することで、軟水化とイオン交換樹脂の再生を同時に行うこともできる。
【0073】
このように、本発明の純水生成装置または軟水生成装置によれば、極めて低コストで、イオン交換樹脂を再生することができる。なお、従来の電極表面での水の電解では、反応を起こすのに、少なくとも水の電解電位である1.23Vの電圧が必要であるが、バイポーラ膜による電解では0.83Vの電解電圧でHイオンとOHイオンを生成させることができる。よって、第1実施形態および第2実施形態の上記説明(図1〜図4)では、カチオン交換樹脂室およびバイポーラ膜(第1実施形態においては、さらにアニオン交換樹脂室)が1組の態様のみを示したが、これらが複数並列して陽極1および陰極2の間に組み込まれている態様も好ましく、この場合には、HイオンとOHイオンの生成に要する電力量を低減することができる。
【実施例】
【0074】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
この実施例1では、図2に示す構成の純水生成装置を用いて、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の再生を行った。上記純水生成装置では、陽極1には白金をコートしたチタン板を用い、陰極2にステンレス鋼板を使用し、アニオン交換樹脂室10、カチオン交換樹脂室11の幅(図2では水平方向の距離)をそれぞれ15mmにし、陽極室8と陰極室9の幅をそれぞれ2mmとして、電極間距離(陽極1と陰極2との間の距離)を合計34mmとした。また、電極面積は、陽極1、陰極2とも、180mm×100mmであった。バイポーラ膜3はトクヤマ社製の「バイポーラBP−1E(商品名)」(厚み:200μm)を用い、カチオン交換樹脂は三菱化学社製の強酸性イオン交換樹脂「ダイヤイオンSK1B(商品名)」を用い、アニオン交換樹脂は三菱化学社製の強塩基性イオン交換樹脂「ダイヤイオンSA10A(商品名)」を用いた。また、隔膜4、5にはジャパンゴアテックス社製の親水性PTFE不織布「SGT010T135」(厚み:135μm)を用いた。なお、バイポーラ膜および隔膜はこのように厚みの薄いものを使用しているため、上記の電極間距離の設定に当たっては、これらの厚みを無視している(後記の各実施例・比較例についても、同じ)。
【0076】
そして、この純水生成装置では、被処理水を、アニオン交換樹脂室10を通過させた後にカチオン交換樹脂室11に通過させるように被処理水用水路16aを設置し、両樹脂室の通過によって純水が得られるようにした。また、カチオン交換樹脂室11内の水を貯蔵するためのタンク12を設置し、カチオン交換樹脂室11とタンク12とを、間にポンプ13を挟んで水路14cで連結した。また、再生によって各電極室に排出されたイオンを水によって循環させるため、タンク12から再生水をポンプ13で陽極室8に導入し、該陽極室8を通過した再生水を陰極室9に導入し、該陰極室9を通過した再生水をタンク12に戻すことができるように、水路14a、水路14bを設けて再生水路(循環水路)を構成するようにした。
【0077】
イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂:250mlをカチオン交換樹脂室11に充填し、アニオン交換樹脂:250mlをアニオン交換樹脂室10に充填した。
【0078】
イオン交換樹脂の再生実験に当たっては、初めに、タンク12内に、再生水を貯蔵するための水処理およびイオン交換樹脂の再生を行った。まず、再生水路中に止水手段(図示しない)を設けておき、該止水手段で止水した後、塩化カルシウムで硬度100に調整した被処理水2.0L/minの流量で、図2中点線矢印の方向に通水し、処理をしても硬度が90以下にならないようになるまでイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させた。
【0079】
その後、イオン交換樹脂の再生を以下のように行った。すなわち、被処理水用水路16aを、止水手段(図示しない)で止水し、定電圧定電流で陽極1−陰極2間に通電し、イオン交換樹脂の再生を行った。具体的には、最初は40Vの定電圧で通電し、通電電流が2Aとなったとき、2Aの定電流での通電に切り替える通電条件で、6時間再生を行った。通電の間には、食塩:1gとクエン酸:4gを水:1Lに溶解させて得られた水溶液を、0.2L/minの流量で、再生水路に通水した。なお、イオン交換樹脂の再生の際には、アニオン交換樹脂の熱劣化防止、およびカルシウム塩の析出防止のため、1時間ごとにアニオン交換樹脂室10内の液を、アニオン交換樹脂室10に設けた廃液口(図示しない)から排出し、硬度100に調整した水でアニオン交換樹脂室10を満たした。
【0080】
再生処理後、カチオン交換樹脂室11内に存在していた水をタンク12に貯蔵し、更にその後、カチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いた洗浄水の廃液もタンク12に貯蔵した。タンク12中の再生水は、合計1Lとした。
【0081】
タンク12に再生水を貯蔵した後に、上記と同じ条件で水処理を行ってイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させ、更に再生水としてタンク12内に貯蔵した水を用いた他は、上記と同じ条件でイオン交換樹脂の再生を行った。イオン交換樹脂の再生処理後、再生水路を止水し、イオン交換樹脂を純水で洗浄した後にカチオン交換樹脂を取り出し、そのイオン交換可能容量をHClによる中和滴定で求めたところ、理論交換容量に対するカチオン交換樹脂の再生率は約70%であった。また、再生(2回目の再生)に用いた水量は、タンク12の容量である1Lと、アニオン交換樹脂の過熱防止およびアニオン交換樹脂室10内のカルシウム塩析出防止用の水4Lであった。
【0082】
実施例2
カチオン交換樹脂に三菱化学社製の弱酸性イオン交換樹脂「ダイヤイオンWK10(商品名)」を用い、アニオン交換樹脂に三菱化学社製の弱塩基性イオン交換樹脂「ダイヤイオンWA20(商品名)」を用いた他は、実施例1と同様にして、図2に示す構成の軟水生成装置を作製し、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の再生を行った。
【0083】
イオン交換樹脂の再生実験に当たっては、初めに、タンク12内に、再生水を貯蔵するための水処理およびイオン交換樹脂の再生を行った。まず、再生水路中に止水手段(図示しない)を設けておき、該止水手段で止水した後、クエン酸カルシウムで硬度50に調整した被処理水2.0L/minの流量で、図2中点線矢印の方向に通水し、処理をしても硬度が30以下にならないようになるまでイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させた。
【0084】
その後、処理時間を4時間に変更し、1時間ごとにアニオン交換樹脂室10内に供給する水の硬度を50に変更した他は、実施例1と同様にしてイオン交換樹脂の再生を行った。再生処理後、カチオン交換樹脂室11内に存在していた水をタンク12に貯蔵し、更にその後、カチオン交換樹脂室11内を洗浄した洗浄水の廃液もタンク12に貯蔵した。タンク12中の再生水は、合計1Lとした。
【0085】
タンク12に再生水を貯蔵した後に、上記と同じ条件で水処理を行ってイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させ、更に再生水としてタンク12内に貯蔵した水を用いた他は、上記と同じ条件でイオン交換樹脂の再生を行った。イオン交換樹脂の再生処理後、再生水路を止水し、イオン交換樹脂を純水で洗浄した後にカチオン交換樹脂を取り出し、そのイオン交換可能容量をHClによる中和滴定で求めたところ、理論交換容量に対するカチオン交換樹脂の再生率は約85%であった。また、再生(2回目の再生)に用いた水量は、タンク12の容量である1Lと、アニオン交換樹脂の過熱防止およびアニオン交換樹脂室10内のカルシウム塩析出防止用の水4Lであった。
【0086】
実施例3
実施例3では、図4に示す軟水生成装置を用いて、カチオン交換樹脂の再生を行った。上記軟水生成装置では、陽極1には白金をコートしたチタン板を用い、陰極2にステンレス鋼板を使用し、カチオン交換樹脂室11の幅(図4では水平方向の距離)を15mmにし、陽極室8と陰極室9の幅をそれぞれ2mmとして、電極間距離(陽極1と陰極2との間の距離)を合計19mmとした。また、電極面積は、陽極1、陰極2とも、180mm×100mmであった。バイポーラ膜3はトクヤマ社製の「バイポーラBP−1E(商品名)」(厚み:200μm)を用い、カチオン交換樹脂は三菱化学社製の強酸性イオン交換樹脂「ダイヤイオンSK1B(商品名)」を用いた。また、隔膜4、5にはジャパンゴアテックス社製の親水性PTFE不織布「SGT010T135」(厚み:135μm)を用いた。
【0087】
そして、この軟水生成装置では、被処理水を、カチオン交換樹脂室11を通過させるように被処理水用水路16bを設置し、該樹脂室11の通過によって軟水が得られるようにした。また、カチオン交換樹脂室11内の水を貯蔵するためのタンク12を設置し、カチオン交換樹脂室11とタンク12とを、間にポンプ13を挟んで水路14cで連結した。また、再生によって各電極室に排出されたイオンを水によって循環させるため、タンク12から再生水をポンプ13で陽極室8に導入し、該陽極室8を通過した再生水を陰極室9に導入し、該陰極室9を通過した再生水をタンク12に戻すことができるように、水路14a、水路14bを設けて再生水路(循環水路)を構成するようにした。
【0088】
イオン交換樹脂は、H型のカチオン交換樹脂:250mlをカチオン交換樹脂室11に充填した。
【0089】
イオン交換樹脂の再生実験に当たっては、初めに、タンク12内に、再生水を貯蔵するための水処理およびイオン交換樹脂の再生を行った。まず、再生水路中に止水手段(図示しない)を設けておき、該止水手段で止水した後、塩化カルシウムで硬度100に調整した被処理水2.0L/minの流量で、図4中点線矢印の方向に通水し、処理をしても硬度が90以下にならないようになるまでイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させた。
【0090】
その後、イオン交換樹脂の再生を以下のように行った。すなわち、被処理水用水路16bを、止水手段(図示しない)で止水し、定電圧定電流で陽極1−陰極2間に通電し、イオン交換樹脂の再生を行った。具体的には、最初は40Vの定電圧で通電し、通電電流が2Aとなったとき、2Aの定電流での通電に切り替える通電条件で、4時間再生を行った。通電の間には、食塩:1gとクエン酸:4gを水:1Lに溶解させて得られた水溶液を、0.2L/minの流量で、再生水路に通水した。
【0091】
再生処理後、カチオン交換樹脂室11内に存在していた水をタンク12に貯蔵し、更にその後、カチオン交換樹脂室11内の洗浄に用いた洗浄水の廃液もタンク12に貯蔵した。タンク12中の再生水は、合計1Lとした。
【0092】
タンク12に再生水を貯蔵した後に、上記と同じ条件で水処理を行ってイオン交換樹脂のイオン交換能を低下させ、更に再生水としてタンク12内に貯蔵した水を用いた他は、上記と同じ条件でイオン交換樹脂の再生を行った。イオン交換樹脂の再生処理後、再生水路を止水し、イオン交換樹脂を純水で洗浄した後にカチオン交換樹脂を取り出し、そのイオン交換可能容量をHClによる中和滴定で求めたところ、理論交換容量に対するカチオン交換樹脂の再生率は約65%であった。また、再生(2回目の再生)に用いた水量は、タンク12の容量である1Lのみであった。
【0093】
比較例1
以下の相違点以外は、実施例1と同じ構成の純水生成装置を用いて、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂の再生を行った。すなわち、比較例1の純水生成装置では、タンク12、ポンプ13、水路14a、14b、14cを有しておらず、アニオン交換樹脂室10に接続する水路16aが、直接カチオン交換樹脂室11にも接続している。また、イオン交換樹脂の再生によって各電極室に排出されたイオンを装置外に排出するために、水道水を陽極室8を通過した後に陰極室9を通過させるように排水用水路を設置し、その後で装置外に排水する機構を設けている。
【0094】
イオン交換樹脂の再生実験に当たっては、まず、実施例1と同様にして水処理を行い、イオン交換樹脂のイオン交換能を低下させた。次に、被処理水用水路16aを止水し、実施例1と同じ通電条件で通電し、イオン交換樹脂の再生を行った。イオン交換樹脂の再生は6時間とし、その際には、排水用水路に、0.2L/minの流量で硬度50の水道水を通水した。
【0095】
イオン交換樹脂の再生処理後、イオン交換樹脂を純水で洗浄し、実施例1と同様にして求めたカチオン交換樹脂の再生率は約35%であった。また、イオン交換樹脂の再生時の通水量は72Lであった。
【0096】
以上の通り、本発明の装置(実施例1および実施例2)では、比較例1の装置にも増して、より早く、かつ少ない通水量で、イオン交換樹脂の再生が達成できている。また、カチオン交換樹脂として弱酸性カチオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂として弱塩基性アニオン交換樹脂を用いた実施例2の装置では、強酸性カチオン交換樹脂および強塩基性アニオン交換樹脂を用いた実施例1の装置よりも、イオン交換樹脂の再生効率が優れている。このように、本発明の純水生成装置または軟水生成装置によれば、電気の力によって連続的にイオン交換樹脂の再生が効率的に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の純水生成装置または軟水生成装置の一例を概略的に示す図である。
【図2】カチオン交換樹脂室内の水をタンクに貯蔵できる機構を備えた本発明の純水生成装置または軟水生成装置の一例を概略的に示す図である。
【図3】本発明の軟水生成装置の一例を概略的に示す図である。
【図4】カチオン交換樹脂室内の水をタンクに貯蔵できる機構を備えた本発明の軟水生成装置の一例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 陽極
2 陰極
3 バイポーラ膜
3a アニオン交換膜
3b カチオン交換膜
4、5 隔膜
6 アニオン交換樹脂
7 カチオン交換樹脂
8 陽極室
9 陰極室
10 アニオン交換樹脂室
11 カチオン交換樹脂室
12 タンク
13 ポンプ
14a、14b、14c、15、16a、16b 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水生成装置または軟水生成装置であって、
上記装置は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に、陽極側から、陽極室、アニオン交換樹脂室、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り合わせたバイポーラ膜、カチオン交換樹脂室、および陰極室を順次有し、かつ陽極室および陰極室と、通水可能な水路を介して連結された、酸性水を貯蔵するためのタンクを有してなり、
上記アニオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にアニオン交換樹脂が充填されてなり、
上記カチオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にカチオン交換樹脂が充填されてなり、
上記陽極室は、上記陽極と上記アニオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、
上記陰極室は、上記陰極と上記カチオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、
上記バイポーラ膜は、アニオン交換膜側を陽極側にし、カチオン交換膜側を陰極側にして配されており、
上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することによって上記バイポーラ膜で水または塩水を電気分解し、生成したOHイオンまたはHイオンで上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂または上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたイオンを上記陽極室または上記陰極室に電圧の力によって排出する機構、および
上記タンク内の酸性水を、上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂または上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂の再生の際に、上記陽極室および上記陰極室に供給する機構を有することを特徴とする純水生成装置または軟水生成装置。
【請求項2】
水または塩水の電気分解によって生成したHイオンでカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたカチオンを上記カチオン交換樹脂室から上記陰極室に排出し、水または塩水の電気分解によって生成したOHイオンでアニオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたアニオンを上記アニオン交換樹脂室から上記陽極室に排出するものである請求項1に記載の純水生成装置。
【請求項3】
カチオン交換樹脂の再生と、その再生によってイオン交換されたカチオンの排出のみを行うものである請求項1に記載の軟水生成装置。
【請求項4】
軟水生成装置であって、
上記装置は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に、陽極側から、陽極室、アニオン交換膜とカチオン交換膜とを貼り合わせたバイポーラ膜、カチオン交換樹脂室、および陰極室を順次有し、かつ陽極室および陰極室と、通水可能な水路を介して連結された、酸性水を貯蔵するためのタンクを有してなり、
上記カチオン交換樹脂室は、隔膜と上記バイポーラ膜で仕切られた空間にカチオン交換樹脂が充填されてなり、
上記陽極室は、上記陽極と上記バイポーラ膜とで仕切られてなり、
上記陰極室は、上記陰極と上記カチオン交換樹脂室を仕切る隔膜とで仕切られてなり、
上記バイポーラ膜は、アニオン交換膜側を陽極側にし、カチオン交換膜側を陰極側にして配されており、
上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することによって上記バイポーラ膜で水または塩水を電気分解し、生成したHイオンでカチオン交換樹脂を再生し、再生によってイオン交換されたカチオンを上記カチオン交換樹脂室から上記陰極室に電圧の力によって排出する機構、および
上記タンク内の酸性水を、上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂の再生の際に、上記陽極室および上記陰極室に供給する機構を有することを特徴とする軟水生成装置。
【請求項5】
上記タンクと、上記陽極室および上記陰極室とを、通水可能な水路で連結してなる循環水路を有しており、上記アニオン交換樹脂室内のアニオン交換樹脂または上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂の再生の際には、上記タンク内の酸性水を、上記陽極室に供給し上記陰極室から取り出して再度タンク内に導入する方向に、該循環水路内で循環させる機構を有する請求項1〜4のいずれかに記載の純水生成装置または軟水生成装置。
【請求項6】
アニオン交換樹脂として弱塩基性アニオン交換樹脂を有し、および/またはカチオン交換樹脂として弱酸性カチオン交換樹脂を有する請求項1〜5のいずれかに記載の純水生成装置または軟水生成装置。
【請求項7】
上記カチオン交換樹脂室内のカチオン交換樹脂を再生した後に該カチオン交換樹脂室内に存在する水の一部または全部、および非処理水の処理前にカチオン交換樹脂室内の洗浄に用いた洗浄水の廃液の一部または全部を、上記酸性水として上記タンク内に貯蔵する機構を有する請求項1〜6のいずれかに記載の純水生成装置または軟水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−43549(P2006−43549A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226448(P2004−226448)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】