説明

紙のための表面処理サイズ/コーティングスリップ中に含まれる、およびそれから形成された表面処理層の蛍光増白剤の白色度安定性を増強する方法

本発明は、紙のための表面処理サイズ/コーティングスリップ中に含まれる、そしてそれから形成された表面処理層の蛍光漂白剤の白色度安定性を増強する方法に関する。この方法はソルビトールをサイズ/コーティングスリップへ担体として仕込むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイズおよびコーティングスリップの形の紙のための表面処理剤中に含まれる、および前記処理剤から形成された表面処理層の蛍光漂白剤の白色度安定性の改善に関する。蛍光増白剤(FWA)は、以前はしばしば光学的白色化剤(OBA)と呼ばれていた。この剤は、ヒトの眼に見えない紫外光(波長<380nmを有する)を吸収し、ヒトの眼に見える波長で光を再発射する性質を有する。再発射は430〜470nmの波長範囲にマークされ、その場合光は青い色相を有する。このプロセスは、ヒトの眼によってFWAで供給またはカバーされている問題の物体の白色度があたかも増大したように感じられる。蛍光漂白剤は有機タイプの化学物質である。スチルベン誘導体、すなわち中でも二つのベンゼン環を有する化合物が使用される。前記剤のさらに詳しい説明は、本明細書中で参照し、そしてコメントした文献中に提供されている。種々の蛍光増白剤の化学構造の完全な研究は教科書および辞典を参照されたい。
【0002】
FWAの広い使用分野は紙パルプ産業である。この剤は適切な紙へ混合することができ、また種々の態様で紙の表面へ適用することができ、本発明はこの技術に含まれる。定義上、板紙は紙の概念に入り、ここでは板紙は特別の場合でそして紙の特別のタイプであることが確立される。
【背景技術】
【0003】
紙および板紙にとって、光誘発老化に耐えることができることが重要である。表面処理、例えば表面サイズしたおよび/またはコートした製品について、光に対する白色度の定着は2部分に分けることができ、一部は製品がつくられるパルプ繊維(一タイプのまたは通常数タイプの)に依存し、一部は表面材料の老化に依存する。後者はFWAを含むすべての表面材料にあてはまる。FWAは、化合物のグループとして、不安定であるとされている。不安定とは、上に記載する性質が経時的に劣化、すなわちゼロまで崩壊することである。最も普通な調製形は、液体に溶解され、そして水が有用な普通の液体である。例えば、増白剤水溶液が不安定の原因となり得る。紙の表面処理の二つの最も普通の方法である表面サイジングおよびコーティングにおいて、FWAは上に示したように、通常紙へ適用されるサイズおよびコーティングスリップのそれぞれへ含められる。表面サイズ(非常に低い固形分含有を有する)および/またはコーティングスリップ(60〜70%のような非常に高い固形分含量を有する)の適用後、紙は乾燥され、増白剤は紙上の固体の薄い層内に含められる。実際および文献から、増白剤の安定性は、日光(紫外線)、熱および空気中湿度のような要因によって劣化および分解されることが知られている。
【0004】
FWAが所望の効果を与えるためには、担体と共に供給されなければならない。従ってこれは表面サイズおよびコーティングスリップにも当てはまる。さらに、担体は、既に示されているように、FWAが受ける光誘引老化に対してある程度保護する性質を有する。今日日常的に使用される担体の例は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、および種々の形のデンプンである。
【0005】
例えばコーティングスリップへその他の化学品の混入により、コーティング層の光誘発老化を制限することが可能であることか明らかにされた。このこと自体は良いことであるが、しかし問題の化学品はしばしばコーティングスリップの構造を損傷し、コーティングスリップを既知の方法において使用することを困難または不可能にする。知られているように、今日では紙のコーティング装置および板紙機械におけるウエブ材料のスピードは高く、そして絶えず増加するように試みられている。そのためコーティングスリップは、問題なしに材料ウエブへ適用でき、そしてその上に望む程度に保持されるように働くことが重要である。上に記載した状況は、例えばスウェーデン特許明細書第524471号(0203602−8)に開示されたサイズおよびコーティングスリップに当てはまる。これらは、芳香族基を含有し、および/または分子内でエステル化され、ラクトンを形成することができる有機酸またはその塩(添加剤A)と、還元剤(添加剤B)からなる。Aの例はアスコルビン酸およびその誘導体(または塩)であり、Bの例は亜硫酸水素(HSO)および/または亜硫酸(SO2−)を含んでいる化合物である。
【0006】
国際特許出願WO2005/068597には、光誘発老化に耐える望ましい性質を本来持っているといわれる、3種の特定の蛍光増白剤の混合物が記載されている。この出願の10頁第2パラグラフには、例えば以下のように述べられている。“本発明のさらなる一面において、式(1a),(1b)および(1c)の化合物の混合物は、SPE(日光保護ファクター)レーティングを増大するための、または織物繊維材料を蛍光増白するための方法を提供し、該方法は織物繊維材料を、前に規定した本発明の式(1a),(1b)および(1c)の化合物の1種以上の混合物で、織物繊維材料の重量を基準にして0.05ないし5重量%で処理することを含む。”
【0007】
前記3種類の特定の蛍光漂白剤は、紙を処理するための表面サイズおよびコーティングスリップにも使用することができる。この特許出願の最大のスペースは前記3種類の蛍光漂白剤の構造式、すなわち化学構造に与えられている。しかしながら前記剤に加えて、複類の補助剤よりなる水溶液を製造することができると述べている。顔料、分散剤、保水助剤、バインダー、増粘剤、および担体を含む、多数の補助剤がリストされている。例えばコーティングスリップの担体の例として、ポリエチレングリコール、大豆タンパク、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、天然または加工デンプン、キトサンまたはその誘導体、特にポリビニルアルコールが述べられている。保水助剤の例として、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトールおよび殺生物剤が述べられている。コーティングはその全体がこの特許出願の数ケ所、例えば7頁下部、8頁上部、そして具体的実施例14〜33に述べられている。コーティングスリップ中量的に常に支配的な成分、すなわち顔料が勿論述べられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したところから見られるように、蛍光増白剤(FWA)を含む紙のコーティング層の白色度に関し、安定性を増強するいくつかの方法がある。しかしながら、一方では前記安定性を増大させ、他方では、例えば工業的コーティングにおいて有用性および流動性に関してコーティングスリップに影響しない剤、すなわち化学薬品を見出すことは困難であることがわかっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこの課題を解決し、そして担体としてソルビトールをサイズ/コーティングスリップへ仕込むことを特徴とする、紙のための表面処理サイズ/コーティングスリップ中に、およびそれから形成された表面処理層の蛍光漂白剤(FWA)の白色安定性を増大する方法に関する。
【0010】
蛍光漂白剤に関し、いかなる既知の剤も使用することができる。混合物の複数の増白剤も使用することができる。増白剤の仕込み量は変動し得る。コーティングスリップにおいては、仕込みはコーティングスリップに含まれる顔料100重量部を基準にして重量部で与えられる。この仕込みはしばしば0.1〜1重量部の範囲内であり、最も普通には0.2〜0.5重量部である。表面サイズにおいては、仕込みは絶乾サイズ中のパーセントで与えられ、そして適当な仕込みは0.05〜15%,好ましくは0.1〜0.5%である。終りの実施例に蛍光漂白剤がもっと詳細に記載されている。
【0011】
ソルビトールは唯一の担体として添加することができるが、しかしソルビトールに加え、少なくとも1種の追加の担体を添加することも可能である。前に指示したように、利用し得る多数の担体があり、これら担体のどれもソルビトールと共に使用することができる。有利には、ソルビトールと共に、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびデンプンのうち少なくとも1種を使用することができる。
【0012】
コーティングスリップは高度に変動する処方を持つことができ、その結果、コーティングスリップ中に多数の化学品を変動する量で含めることができる。しかしながら、少数の成分から非常に多数の成分までどれかを含有するコーティングスリップがある。蛍光増白剤に加え、コーティングスリップは以下の化学品の少数または多数、多分全部を含有し得る:顔料、バインダー、担体、硬化剤、分散剤、増粘剤および保水助剤。量的には顔料が支配的である。これは粉砕した大理石、石灰岩およびタルクを含む天然および沈降炭酸カルシウム(PCC)である炭酸カルシウム単独か、またはカオリンまたは粘土のようなケイ酸アルミニウムまたはマグネシウム、さらには硫酸バリウム、サチンホワイトおよび二酸化チタンとの混合物中の炭酸カルシウムを含む。顔料は、上で指摘したように、完全に炭酸カルシウムを含まなくてもよい。さらに白色有機顔料もある。
【0013】
担体の形でソルビトールは、顔料100重量部あたり0.5〜10重量部の量でコーティングスリップへ仕込まれる。好ましい混合物は顔料100重量部あたり1〜4重量部である。
【0014】
コーティングスリップは、紙へ公知のどのコーティング方法によっても塗布することができる。コーティングスリップは紙の片側または両側へ一層または二層または三層に塗布することができる。コーティング層の坪量は、約7g/mから約50g/mまで変動することができる。複数のコーティング層に塗装する場合には、各層のコーティングスリップの量はしばしば一層に塗装されるコーティングスリップの量より低い。
【0015】
表面サイズも高度に変動する組成を有することができ、それ故多数の化学薬品を変動する量でサイズに含めることができる。非常に高い固形分含量、例えば60〜70%を持っているコーティングスリップとは対照的に、表面サイズは非常に低い固形分含量を通常持っており、0.5〜15%の範囲内であることができる。蛍光増白剤に加え、表面サイズはデンプン、カルボキシメチルセルロース、ラテックス、担体、顔料および疎水化剤のうちの1種以上を含むことができる。表面サイズの塗布量は1g/mのような低い量から約10g/mまで変動することができる。
【0016】
表面サイズは必ずしも常に、むしろ例外的にしか顔料を含まないので、顔料100重量部あたり担体ソルビトールの混合量を計算することはできない。それ故ソルビトールの混入量は絶乾サイズの量に対して計算され、そしてその量は絶乾サイズの1〜50%,好ましくは2〜10%である。
【0017】
伝統的に表面サイズを紙へ塗布するためサイズプレスが使用されている。サイズプレスは通常、紙を乾燥固形分含量約95%まで乾燥する時間を持つ製紙/板紙機械の乾燥部分の前方に設置される。最近は伝統的なサイズの廃止が増加しつつあり、コーティング様設備、例えばブレードコーターおよびバーコーターに変りつつある。
【0018】
特にコーティングスリップに関し、担体の増粘効果のために担体混合によって大きく影響される。コーティングスリップの有用性および流動性は、中でもコーティングスリップの粘度に関係する。流動性の概念には、中でもコーティングスリップがポンプ輸送可能でなければならないことが含まれる。コーティングスリップの粘度を決定する複数の異なる方法がある。低いせん断率が使用されるそのような測定はブルックフィールド粘度と称され、cPで表される。もしブルックフィールドに従って測定されたコーティングスリップの粘度が2500cPを超すならば、コーティングスリップの流動性が著しく劣化することがわかった。
【0019】
この理由のため、最も普通の担体の混合量は制限されなければならない。例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)は0.5重量部の仕込みが良く、1重量部で既に過大ブルックフィールド粘度を与える。ポリビニルアルコールの場合、これは通常使用される担体であるが、2重量部の仕込みが良く、この混合量を超えるのを注意しなければならない。本発明に従った担体、すなわちソルビトールでは、非常に驚くべきことに、この関係は反対であること、すなわちコーティングスリップのブルックフィールド粘度はソルビトールの混和量の増加につれて減少することが判明した。
【0020】
〔効果〕
後出の実施例は、板紙へ適用される蛍光漂白剤含有コーティングスリップに担体としてソルビトールを使用するならば、板紙上のコーティング層中のソルビトール混和量の増加は製品の初期CIE白色度を増加させ、そして白色度安定性を増加させること、すなわち光誘発老化による板紙の白色度低下が効果的に阻止されることを示している。
【0021】
すなわち、ソルビトールの混入はコーティングスリップの構造およびレオロジー、および最終的にはコーティングスリップの有用性および流動性を犠牲にせず、むしろ反対である。コーティングスリップの流動性が劣化されないことが確立された。高くてはならないコーティングスリップの臨界ブルックフィールド粘度に関し、上記に従った初期白色度と白色度安定性の観点から好適なソルビトール添加量の増加は、粘度の低下をもたらす。非常に高いソルビトール添加量(慣用の担体の添加量に比較して)の場合に、コーティングスリップの粘度が低くなり過ぎる危険はない。何故ならば増粘剤がいつでも使用できるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明のある部分を詳細に記載し、同時に研究室において行ったテストを報告する。
【実施例】
【0023】
板紙工場の研究室において、以下のテストを行った。
【0024】
坪量265g/mを持つ標準品質の板紙を工場からサンプル採取した。5層の異なる層にリグニン含量パルプ繊維は使用されていなかった。軟木パルプおよび硬木パルプを含んでいる異なるパルプストック中には漂白サルフェートパルプのみが使用されていた。パルプは88%ISOをこえる白色度を有していた。
【0025】
研究室中のパイロットプラント規模のブレードコーターにおいて、板紙の片側にコーティングスリップが3回塗布された。コーターの一端には幅60cmと直径180cmを有する板紙のリールが適用された。板紙ウエブは巻戻され、そしてコーターを通って3回塗工された。
【0026】
プレコーティングおよび中間コーティングのコーティングスリップ処方は以下の通りであった。
粉砕した大理石の形の炭酸 100重量部
カルシウム(Hydrocarbタイプ)
ラテックス(バインダー) 12重量部
ポリビニルアルコール(担体) 0.9重量部
合成増粘剤(補助バインダー) 0.6重量部
炭酸アンモニウムジルコニウムの形の 0.12重量部
硬化剤(Bacoteタイプ)
FWA(Blankophor P Fluessigタイプ) 0.25重量部
【0027】
コーティングスリップの乾燥固形分含量は67%であった。プレコーティングは坪量10g/mを有し、中間コーティング層は7g/mの坪量を有していた。
【0028】
トップコーティング用のコーティングスリップ処方は以下の通りであった。
粉砕した大理石の形の炭酸 70重量部
カルシウム(Hydrocarbタイプ)
粘土 30重量部
ラテックス(バインダー) 16重量部
ポリビニルアルコール(担体) 0.72重量部
合成増粘剤(補助バインダー) 0.4重量部
炭酸アンモニウムジルコニウムの形の 0.17重量部
硬化剤(Bacoteタイプ)
FWA(Blankophor P Fluessigタイプ) 0.20重量部
【0029】
コーティングスリップの乾燥固形含量は66%であった。トップコーティング層は8g/mの坪量を有し、これは3層のコーティング層の合計坪量は25g/mであったことを意味する。
【0030】
毎回のコーティング操作は、上のコーティングスリップと、毎回本発明による担体、すなわちソルビトールを1,2および3重量部補給したコーティングスリップで板紙をコートする4実験からなっていた。これは、第1回の実験では少量のポリビニルアルコールを唯一の担体として使用し(参照)、そしてさらなる3実験において、コーティングスリップは担体としての少量のポリビニルアルコールに加え、ソルビトールを担体として供給された。実施した実験において、コーティングスリップの有用性および流動性に影響する、構造上およびレオロジーの見地において、本発明のどのコーティングスリップからも問題が発生しなかった。この状況において、参照コーティングスリップと、本発明に従った3種のコーティングスリップの間に差は全く見られなかった。
【0031】
板紙ウエブは最終的に乾燥された後、A4サイズのシートに切断された。
【0032】
次に、板紙シートの塗工側がSuntest XLS+タイプのテストチャンバー中で光へ8時間の期間曝露された。太陽光に似た光をキセノンランプによって発生させた。しかしながら光のある範囲の波長は濾光除去しなければならない。これは紫外(UV)線を透過させないガラスフィルターによって実施される。実験では、320nm以下の波長をカットするフィルターが使用され、この光はショウウインドウ内の光に似ている。キセノンランプの出力は600Wであった。テストチャンバー中1時間の露光は、日光へ約3.6日の露光時間に相当する。
【0033】
板紙サンプルの露光は、その白色度を測定するため何回か中断された。この測定はDatacolor InternationalからのElepho SF450を使用して実施された。板紙サンプルをテストチャンバーへ入れる前にも測定が実施された。測定した白色はCIE(Commission International 1’Eclairage)白色度であった。これは標準光のスペクトルエネルギー分布を規定する。測定結果は以下の表1に見られる。
【0034】
【表1】

【0035】
*参照サンプルを構成するコーティングスリップへソルビトールを添加しなかったテストシリーズ
【0036】
参照コーティングスリップでは担体としてポリビニルアルコールのみが使用される。他のすべてのコーティングスリップ、すなわち、プレ、中間およびトップコーティングスリップでは、表に与えた重量部に相当する量でソルビトールが仕込まれたことに注目せよ。
【0037】
見られるように、コーティングスリップ中に担体としてソルビトールの添加は板紙の初期、すなわち板紙を露光する前の白色度を増加し、そしてそれはソルビトールの添加量を増加するにつれ明らかに増加する。
【0038】
白色度安定性に関し、ソルビトールの添加のために著しく改善される。参照サンプルの白色度は露光8時間後31.6単位低下したが、ソルビトール1,2および3重量部添加の対応する値は、それぞれ28.4,23.4および19.8単位であった。見られるように、白色度安定性はコーティングスリップ中のソルビトール添加量の増加によって明らかに改善される。白色度安定性はソルビトール3重量部が最適であると信ずる理由はなく、白色度安定性はもっと多量のソルビトール添加によってさらに改善されるように見える。ソルビトール添加量の上限はコーティングスリップの流動性と、多分ソルビトール添加量の増加によるコスト上昇に依存すると考えられる。
【0039】
以前に指摘したように、例えば他の化学薬品の添加により、例えばコーティング層中の蛍光漂白剤が安定化されることを確実にするのに十分ではなく、コーティングスリップ自身も例えば工業的コーティングにおいて有用であり、流動し得る特別の品質を持たなければならない。
【0040】
それ故、研究室において多数のコーティングスリップが製造され、その粘度性質に関して最初にテストされた。何故ならば当業者の間ではコーティングスリップの粘度とその有用性/流動性の間に関係があることが明らかであるからである。
【0041】
すべてのコーティングスリップのベースは以下の化学品による。
Carbitalタイプの炭酸シルシウム 100重量部
ラテックス(バインダー) 12重量部
炭酸アンモニウムジルコニウム(Bacoteタイプ) 0.12重量部
の形の硬化剤
PWA(Blankophor P Fluessigタイプ) 0.25重量部
【0042】
コーティングスリップ中で変動し、そして以下の表2に報告されているのは合成増粘剤(補助バインダー)および担体としてのポリビニルアルコール(PVA)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、そしてソルビトールである。
【0043】
【表2】

【0044】
見られるように、担体の一つ、すなわちPVAはすべてのコーティングスリップに存在する。コーティングスリップについて6項目の、すなわちpH(標準)、SCAN−P39−80に従った乾燥固形分含量、保水容量、および3種の粘度測定の測定が実施された。保水容量および粘度の測定方法を以下に概略的に記載する。
【0045】
保水容量はAAGWRと命名された方法に従って決定される。これは“Abo ARademi Gravimetric Water Retention”の略号であり、最初にフィンランドのAbo ARademiに開発された方法である。この分析方法は、2分間0.4バールの圧力でいくらの水がコーティングスリップから濾過(プレス)されたかの測定を与える。測定機器はGradek社によって製造され、そして下部が開いているサンプルシリンダーよりなる。濾紙を秤量し、プラスチックシムの上に置く。そのトップにあるタイプのメンブレンフィルター(OSMONICSポリカーボネート47mm/5.0ミクロン)を設置する。メンブレンフィルターのトップにサンプルシリンダーを置く。サンプルシリンダーは圧縮空気へ連結されたピストンを含んでいる。コーティングスリップ10mlをプラスチックシリンジへ吸入し、そしてこのサンプルをサンプルシリンダーへ入れる。次にピストンがサンプルを0.4バールの圧力で2分間プレスすることを許容する。コーティングスリップ中に存在する水の一部がメンプレンフィルターを通って押出され、そして濾紙中に垂れる。濾紙を再び秤量し、重量の差と濾紙の面積とから、コーティングスリップによって与えられたg/mで表わした水の量に換算する。
【0046】
粘度測定法の一つはブルックフィールドと呼ばれる。この測定法にはAnton Paar DV−IPRと命名された機器が使用される。この方法は一般に、回転測定体が液体に浸漬され、そして回転抵抗が測定される方法であると記載される。粘度は液体がどれ程ねばいかの測定である。粘度が高ければ高いほど、液体はねばい。粘度はセンチポイズ(cP)で測定される。コーティングスリップを測定するとき、少なくともコーティングスリップの500mlが600mlガラスビーカーに入れられる。円筒形であり、そしてボブまたはスピンドルと呼ばれる測定体がコーティングスリップ体へ降下される。異なる寸法のボブまたはスピンドルがあり、そのどれか一つが1種類のコーティングスリップの粘度を測定するために使用される。測定において、ボブを回転し、ビーカーとボブの間の間隙にせん断速度(秒の逆数)を与える。サンプルの特徴は、前記回転の結果として発生するせん前応力(Pa)の大きさ、すなわちせん断速度を決定する。前断応力とせん断速度の間の比は、温度と問題のせん断速度におけるコーティングスリップの粘度(mPa・s−1これはCPに変換できる)を構成する。この測定方法において比較的低いせん断速度が使用される。
【0047】
他の似た粘度測定法は、ハーキュレスHI−シアと呼ばれる。ここでも金属体がコーティングスリップを入れた測定カップ中に浸漬される。金属体は、中間せん断速度として表すことができるブルックフィールド法に比較して高いせん断速度で回転される。粘度の単位は上に記載した単位、mPa・s−1である。
【0048】
上に記載した二つの測定方法では達成することができない著しい高いせん断速度に到達するため、ACASystemタイプの毛細管粘土計が使用された。この場合は、金属の小さい薄い毛細管を通って非常に高い圧力下でコーティングスリップが押出される。押出されたコーティングスリップは機器によって自動的に秤量され、コンピュータプログラムがmPa・sec−1の単位においてコーティングスリップの毛細管粘度を計算する。コーティングスリップが毛細管を通って押出される時、それはせん断速度およびその結果せん断応力にかけられる。この測定方法においては高いせん断速度が使用され、または他のやり方で押出され、コーティングスリップは高いせん断速度にかけられ、これもこのパラグラフの最初に示されている。
【0049】
以下の表3において、実施した測定の結果が示されている(コーティングスリップの毛細管粘度の測定を除く。これは図1および2の曲線に描かれている)。
【0050】
【表3】

【0051】
見られるように、異なるコーティングスリップのpH値の変動は殆んど存在しない。このことは乾燥固形分含量の変動にもあてはまる。
【0052】
コーティングスリップの保水容量に関し、変動は大きい。低い値を持つのが良い。何故ならばコーティングスリップは塗布したスリップと支持体、すなわち板紙を含む紙の界面を通って少量の水を放出することを意味するからである。これは塗工作業において実施上の重要性を有する。例えばブレードコーティングにおいて、コーティングスリップは前方へ走行する紙ウエブへある固定点において適用され、紙の輸送方向のさらに前方の他の固定点においてコーティングスリップの過剰量が掻き取られ、下方タンクへ流下する。コーティングスリップによって放出され、そして前記距離の間で紙が吸収する水の量が多ければ多い程、水に溶かした化学薬品がコーティングスリップから紙へ移動する量が多くなり、適用したコーティングスリップの化学的組成とリサイクルしたコーティングスリップの化学的組成の間の不一致を増大させる。このことは、コーティングスリップはバッチ式に調製され、そしてバッチ式に消費されるため重要である。たとえコーティングスリップのこの性質が重要であっても、この性質はコーティングスリップの粘度性質の下位にある。
【0053】
ブレードコーティングに関し、コーティングスリップのブルックフィールド粘度は2500cPを超えてはならないことが見出された。サンプル1,2および3からは、コーティングスリップの粘度は担体としてポリビニルアルコールの添加量の増加に応じて増加することが見られる。2重量部のポリビニルアルコール添加量において、粘度値は2250cP、すなわち2250cPの臨界値の途中になった。サンプル8から、担体としてポリビニルアルコール1重量部とカルボキシメチルセルロース1重量部の添加は、6300cPもの高い粘度を持つコーティングスリップを与えることが見られる。このことは、このコーティングスリップはブレードコーティングに使用できないこと、すなわち流動しないことを意味する。またこのコーティングスリップは保水容量に関し49もの低い値を持っていることでも使用できない。サンプル7は、担体としてカルボキシメチルセルロース0.5重量部(ポリビニルアルコール1重量部にプラスして)の添加量を有し、低い粘度を与える。本発明に従ったコーティングスリップを構成するサンプル4,5および6は、担体としてソルビトールを次第に増加する量で供給するならば、粘度はすぐれたままにとどまり、そして担体としてソルビトール3重量の添加はソルビトール1重量部を供給したコーティングスリップよりも相当に低い粘度を有するコーティングスリップを与える点においてそのとおりであることを示している。
【0054】
ハーキュレス粘度に関し、この場合にも(図1および2に示した毛細管粘度にもあてはまる)、測定結果は個々の変動する測定点から構成された曲線の形に得られる。せん断速度17000sec−1および対応する粘度値の選定はこの曲線に基いている。異なるコーティングスリップのハーキュレス粘度は、数値の大きさが違ってもこれらコーティングスリップのブルックフィルード粘度に主に対応する。サンプル4,5および6、すなわち本発明に従ったコーティングスリップを考えると、担体として1,2および3重量部のソルビトールの次第に増加する添加量は、それぞれ74.6、69.2および63.6の測定値によって代表される次第に減少する粘度をもたらすことが示されている。このことは非常に驚くべき結果であるが、未だその説明は存在しない。
【0055】
図1および2において、前記コーティングスリップの毛細管粘度が見られる。ここでも以前見られた同じパターンが見られる。図1において、コーティングスリップ中に担体として次第に増加するソルビトールの使用がどれ位粘度の増加をもたらすかと、そしてコーティングスリップ中担体として少量のCMCの使用は低い粘度を与えるが、コーティングスリップ中担体として倍量のCMCへの増加はその粘度を劇的に、特に低いせん断速度において与えることを示している。本発明に従ったコーティングスリップ、すなわち4,5および6とそれらの粘度曲線が図2に集合的に描かれている。比較または参照として、コーティングスリップ1の粘度曲線も含まれている。このタイプの粘度測定においても、コーティング中へ担体としてソルビトールの増加して行く添加量は減少して行く粘度をもたらすことを確立する。
【0056】
上の実施例は、コーティングスリップ中のソルビトールの使用は(同じことは表面サイズにもあてはまると考えることを正当化する理由である)、コーティングスリップへ当初含められ、そして紙上の仕上った塗工層中の蛍光増白剤(FWA)を顕著に態様で経時的に安定することを示している。さらに前記使用は、紙の初期白色度の明白な増加を招来する。さらに上の実施例は、本発明に従った添加によってコーティングスリップの有用性および流動性が劣化する徴候がないこと、そしてむしろ反対の徴候があることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】コーティングスリップ中に伝統的な担体を使用する時、コーティングスリップの毛細管粘度はせん断速度によってどのように変動するかを示している。
【図2】コーティングスリップ中に本発明に従った担体、すなわちソルビトールを使用する時、コーティングスリップの毛細管粘度がせん断速度によってどのように変動するかを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙のための表面処理サイズ/コーティングスリップ中に含まれる、およびそれから形成された表面処理層の蛍光増白剤の白色度安定性を増強する方法であって、担体としてソルビトールをサイズ/コーティングスリップへ仕込むことを特徴とする方法。
【請求項2】
サイズ/コーティングスリップへ他の担体を添加せず、ソルビトールを唯一の担体とすることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の追加の担体をサイズ/コーティングスリップへ添加することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)およびデンプンが追加の担体のグループに含まれる請求項3の方法。
【請求項5】
コーティングスリップ中に含まれる顔料100重量部を基準にして、ソルビトールが0.5〜10重量部、好ましくは1〜4重量部が仕込まれる請求項1ないし4のいずれかの方法。
【請求項6】
絶乾サイズの1〜50%,好ましくは2〜10%を構成する量で仕込まれる請求項1ないし4のいずれかの方法。
【請求項7】
担体としてソルビトールに加えCMCが仕込まれる場合、CMCは1重量部未満の量で仕込まれる請求項1,3,4または5のいずれかの方法。
【請求項8】
担体としてソルビトールに加えPVAが仕込まれる場合、PVAは2重量部未満の量で仕込まれる請求項1,3,4または5のいずれかの方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−540145(P2009−540145A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515349(P2009−515349)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000585
【国際公開番号】WO2007/145577
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(501352446)ホルメン、アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】