説明

紙の製造方法

【目的】紙の摩擦係数の低下を抑制しつつ、サイズ効果の速い立ち上がりを満足する紙の製造方法を提供すること。
【解決手段】固形分塗工量が0.005〜1g/mである一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)を含む共重合物(A)、固形分塗工量が0.005〜0.15g/mであるアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー(B)、及び、固形分塗工量が0.001〜10g/mである水溶性高分子(C)を表面に塗工する紙の製造方法を用いる。
【化1】


(式中、R1およびR2は、水素またはメチル基を、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の製造方法に関する。特にライナーや新聞用紙に好適に用いられる紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、木質繊維等の繊維製品を製造する場合には、製品に耐水性、耐インキ性、耐にじみ性等を付与するために、サイズ剤が用いられている。このようなサイズ剤としては、一般にカルボキシル基を有するロジン又は強化ロジン(マレイン化ロジン)に代表されるロジン系サイズ剤が挙げられるが、ロジン系サイズ剤はそれ自体ではセルロース繊維に定着することが困難であるため、硫酸バンドを併用して、pH4.5〜6.5の酸性域で抄造が行われてきた。そのため、成紙の経時品質劣化が大きい、廃水処理が煩雑になる、抄造機器が腐食される等の問題や安価な填料である炭酸カルシウムを使用する場合には分解により炭酸ガスが発生する問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、近年、pH6.5〜8.0の中性領域でのサイジング方法が注目され、填料として安価な炭酸カルシウムの利用、炭酸カルシウムを含む損紙あるいは古紙の利用、抄紙系のクローズド化が行われるようになってきた。中性サイズ剤としては、ケテンダイマー系サイズ剤、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、カチオン性不飽和単量体と疎水性不飽和単量体との共重合体等が用いられるが、使用上の簡便さ及び少量の添加によりサイズ効果が高いことからケテンダイマー系サイズ剤が広く用いられている。
【0004】
ケテンダイマー系サイズ剤は広範囲の抄紙pH領域において使用することができ、かつ、少量の添加で高いサイズ効果を示す特徴を有するが、ケテンダイマー系サイズ剤を用いて、紙にサイズ効果を付与する方法として、一般にパルプスラリーにサイズ剤を内添する方法とパルプをシート化した後に、紙の表面にサイズ剤を塗布する方法がある。
【0005】
ところで、従来から、ケテンダイマー系サイズ剤の中でもアルキルケテンダイマー(AKD)が高いサイズ効果を示す特徴を有するという理由で、サイズ剤としてよく用いられている。しかしながら、AKDをサイズ剤として使用する場合、パルプスラリーにAKDを内添する方法(内添する方法)では、加水分解したAKDにより紙抄マシンの汚れが発生する問題がある。また、パルプへの歩留りは完全ではなく、サイズ効果の発現に非効率である。一方、紙の表面にAKDを塗工する方法は、全て紙に歩留るため、効率よくサイズ効果を付与することができる。しかし、紙の表面にAKDを塗工する方法は、紙の摩擦係数を低下させ易く、板紙では段ボールを輸送する際に荷崩れを起こす、印刷用紙では輪転機で印刷する際に紙ながれが起こり、紙にしわが発生するため、紙の用途が限られるといった問題があった。
【0006】
更に、AKDを使用する場合には、内添する方法、表面に塗工する方法に限らずサイズ効果が発現するまでに時間がかかり、いわゆる“サイズ効果の立ち上がり”に問題があった。サイズ効果の立ち上がりの悪さは、紙の品質管理において、サイズ効果の立ちあがった状態を測定するために加熱処理を施す必要があり煩雑さを伴う。また、紙が抄造された後、引き続き顔料とバインダーがコートされるいわゆるオンマシンコート紙においてはサイズ効果が発現しておらずコーティング液が紙に浸透してコート紙の均一性が損なわれると言う問題があった。これに対してサイズ効果の立ち上がりを解決するために、AKDの添加量を増加することで対応しようとすると、AKDがワックス成分であるため、紙の摩擦係数が低下し紙が滑り易くなる問題を引き起こす。
【0007】
このような問題を解決すべく、ケテンダイマー系サイズ剤を特定のカチオン性ビニルモノマーと非イオン性化合物の重合体を分散剤として用いる方法が提案されている。(特許文献1)しかし、この方法によれば立ち上がりが向上するものの、紙の表面に塗布した場合の紙の摩擦係数の低下の抑制は充分ではなかった。
【0008】
これに対しては、ゼータ電位を特定の範囲に制御したうえで水溶性高分子化合物と併用する表面サイズ剤が提案されている。(特許文献2参照)。本方法によれば、摩擦係数の低下は改善できるものの、サイズ効果の立ち上がりは不十分であった。
【0009】
このように、紙の摩擦係数の低下を抑制しつつ、サイズ効果の立ち上がりを両方満足する紙の製造方法は未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−299494号公報
【特許文献2】特開2003−221795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、紙の摩擦係数の低下を抑制しつつ、サイズ効果の速い立ち上がりを満足する紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のジアリルアミン系単量体を含む共重合体、アルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー、及び、水溶性高分子の塗工量を特定の範囲内として、これらを紙の表面に塗工する製造方法とすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明1は、固形分塗工量が0.005〜1g/mである一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)を含む共重合物(A)、固形分塗工量が0.005〜0.15g/mであるアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー(B)、及び、固形分塗工量が0.001〜10g/mである水溶性高分子(C)を表面に塗工する紙の製造方法である。
【化1】

(式中、R1およびR2は、水素またはメチル基を、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0014】
本発明2は、本発明1の紙の製造方法において、上記共重合体(A)が、一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)を1〜50モル%、(メタ)アクリルアミド(a2)を50〜99モル%を含有する紙の製造方法である。
【0015】
本発明3は、本発明1又は2の紙の製造方法において、上記水溶性高分子(C)が、澱粉及び/又はポリアクリルアミド類である紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙の製造方法は、紙の摩擦係数の低下を抑制しつつ、サイズ効果の速い立ち上がりを満足する紙を提供することができるため、特に紙の製造後から出荷までの期間が短く、高い摩擦係数が重要視されているライナーや新聞用紙などに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の紙の製造方法は、固形分塗工量が0.005〜1g/mである一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)(以下、(a1)成分という)を含む共重合物(A)(以下、(A)成分という)、固形分塗工量が0.005〜0.15g/mであるアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー(B)(以下、(B)成分という)、及び、固形分塗工量が0.001〜10g/mである水溶性高分子(C)(以下、(C)成分という)を表面に塗工するものである。
【化1】


(式中、R1およびR2は、水素またはメチル基を、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
【0018】
上記(A)成分は、少なくとも一般式(1)で示される(a1)成分を含むものである。(a1)成分としては、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルブチルアミン、ジメタリルアミンなどが挙げられる。なお、ジアリルアミンは塩となっていてもよい。ジアリルアミンの塩としては、上記ジアリルアミンの塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、又はギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。なお、(A)成分は、少なくとも(a1)成分を含む単量体を重合させることにより得られる。重合法は特に限定されず、公知のラジカル重合法を採用することができる。
【0019】
上記(a2)成分としては、アクリルアミド及びメタクリルアミドを用いることができる。
【0020】
上記(A)成分は、一般式(1)で示される(a1)成分を1〜50モル%、及び、(メタ)アクリルアミド(a2)(以下、(a2)成分という)を50〜99モル%含有することがサイズ効果の立ち上がりが良好となるという点で好ましく、(a1)成分を2〜30モル%、(a2)成分を70〜98モル%とすることが、更にサイズ効果の立ち上がりが良好になるという点で好ましい。
【0021】
上記(A)成分は、更に(a1)成分、(a2)成分以外の不飽和単量体(a3)(以下、(a3)成分という)を含有することにより(A)成分のポリマー構造をコントロールすることができるために更に良好なサイズ効果を示すという点において好ましい。(A)成分が(a1)成分を1〜50モル%、(a2)成分を50〜99モル%含有する場合、(a3)成分を0.01〜5モル%を含有することがサイズ効果の立ち上がりを阻害することなく、良好なサイズ効果を示すという点において好ましい。
【0022】
上記(a3)成分は、(A)成分を構成する単量体成分と共重合可能な不飽和単量体である。
(a3)成分としては、アニオン性単量体、カチオン性単量体、ノニオン性単量体等が挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の架橋性単量体を併用してもよい。
【0023】
上記アニオン性単量体としては、アニオン性官能基を有し、ラジカル重合性官能基を1つ有する単量体であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホ基(−SOH)、リン酸基(−HPO)などが挙げられる。具体的には、カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のα、β−不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。スルホ基(−SOH)含有単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。リン酸基(−HPO)含有単量体)としては、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフエート、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアシッドホスフエートなどが挙げられる。なお、これらのアニオン性官能基は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類やアンモニアやアミン類によるアンモニウム塩といった塩となっていてもよい。これらの単量体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、α、β−不飽和モノカルボン酸、α、β−不飽和ジカルボン酸およびこれらの塩が、サイズ効果を大きく向上させる点で好ましい。
【0024】
上記カチオン性単量体としては、カチオン性官能基を有し、ラジカル重合性官能基を1つ有する単量体であって、(a1)成分以外のものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。カチオン性官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基などが挙げられる。これらの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。なお、これらのカチオン性官能基は、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの無機酸あるいは有機酸の塩類となっていてもよい。また、3級アミノ基は、一部または全部が4級化剤で4級アンモニウムイオンとされていてもよい。4級化剤としては、たとえば、メチルクロライド、メチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等のアリールアルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド、スチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記ノニオン性単量体としては、ラジカル重合性官能基を1つ有する単量体であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、炭素数1〜8のアルコール等のアルコール類とアクリル酸もしくはメタクリル酸とのエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
上記架橋性単量体は、ラジカル重合性官能基を少なくとも2つ有するものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・エチレンオキサイド付加物トリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸、N,N’−ビスアクリルアミド酢酸メチル、N,N−ベンジリデンビスアクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルサクシネート、ジアリルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、N,N−ジアリルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルクロレンデート、グリシジル(メタ)アクリレート等の2官能単量体、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルアミン、トリアリルトリメリテート等の3官能単量体、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリテート、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、テトラアリルアミン塩、テトラアリルオキシエタン等の4官能単量体等が挙げられる。
【0027】
上記(B)成分は、アルキルケテンダイマー及び/又はアルケニルケテンダイマーを使用することができる。具体的には、たとえば、一般式(2):
【化2】

(式中、R及びRは炭素数6〜30の飽和炭化水素基又は炭素数6〜30の不飽和炭化水素基であり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる化合物を用いることができる。
【0028】
上記一般式(2)において、R又はRの炭化水素基は、例えば、へキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル等のアルキル基、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、エイコセニル等のアルケニル基、オクチルフェニル、ノニルフェニル、ドデシルフェニル等の置換フェニル基、ノニルシクロヘキシル等の置換シクロアルキル基、フェニルエチル等のアラルキル基などである。R、Rは直鎖状の炭化水素に限定されるものではなく、分岐状のものや環状のものであってもよい。オクタデシルケテンダイマー、ヘキサデシルケテンダイマー、テトラデシルケテンダイマー、ドデシルケテンダイマーなどが挙げられる。なお、ケテンダイマーは異なる脂肪酸の混合物を二量化したものでもよい。
【0029】
上記(B)成分は、公知の方法で乳化して乳化物として使用してもよい。乳化では、例えば、カチオン化澱粉、リグニンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等を乳化分散剤として用いることができる。乳化分散剤の使用量は特に限定されないが、通常、乳化対象物である(B)成分100重量部に対し、固形分で5〜100重量部程度用いる。乳化法は、特に限定されず公知の方法によればよく、例えば、各種公知の界面活性剤の存在下、(B)成分を分散させることにより得られる。分散に用いる方法としては、強制乳化、反転乳化、溶剤乳化等の方法が挙げられるが、高圧ホモジナイザーを使用する強制乳化法が好ましい。
【0030】
上記(C)成分は、上記(A)成分以外の水溶性高分子である。(C)成分としては、澱粉、各種変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド類、スチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ塩、オレフィン−マレイン酸のアルカリ塩、アクリルエステル−(メタ)アクリル酸のアルカリ塩等が挙げられる。サイズ効果を更に良好にすることができる点において、澱粉及び/又はポリアクリルアミド類が好ましい。
【0031】
上記ポリアクリルアミド類としては、例えば、アクリルアミドと上記アニオン性単量体、カチオン性単量体、ノニオン性単量体の共重合物が挙げられ、過硫酸アンモニウムなどの重合開始剤の存在下でアクリルアミドとアニオン性単量体、カチオン性単量体、ノニオン性単量体を重合させることにより製造することができる。
【0032】
上記澱粉としては、特に限定されず、酸化澱粉や酵素変性澱粉、APS(過硫酸アンモニウム)変性澱粉などの糊化液を用いることができる。
【0033】
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の固形分塗工量は、それぞれ0.005〜1g/m、0.005〜0.15g/m、及び、0.001〜10g/mである。この範囲の塗工量とすることで、紙の摩擦係数の低下を抑制しつつ、サイズ効果の立ち上がりを満足することが可能となる。(A)成分が0.005g/m未満であると、サイズ効果の立ち上がりが悪くなり、1g/mを超えると、(A)成分は親水性が高いためにサイズ効果が低くなる。(B)成分が0.005g/m未満であると、サイズ効果が低くなり、0.15g/mを超えると、紙の摩擦係数が低下する。(C)成分が0.001g/m未満であると、(B)成分の分散性が低下することによりサイズ効果が低くなり、10g/mを超えると、塗工後のドライヤーの乾燥負荷が大きくなる。更に好ましくは、(A)(B)及び(C)成分の固形分塗工量はそれぞれ、0.010〜0.500g/m、0.010〜0.100g/m、及び、0.010〜3.000g/mである。
【0034】
本発明の紙の製造で用いる紙としては、特に制限されず、通常は木材セルロース繊維を原料とする板紙を含む未塗工の紙を特に制限なく用いることができる。なお、紙は、抄紙用パルプから得られるものであり、抄紙用パルプとしてはLBKP(L−晒クラフトパルプ)、NBKP(N−晒クラフトパルプ)等の化学パルプや、GP(砕木パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)等の機械パルプ、古紙パルプ等が挙げられる。特に古紙パルプを含有する紙は、上記(B)成分を含むサイズ剤を使用すると、従来はサイズ効果が発揮されにくくなっていたが、本発明の紙の製造方法によれば、古紙パルプを有する紙においても、良好なサイズ効果を発揮するため、本発明が有効となる。また、紙中に内添する填料やサイズ剤、紙力増強剤等の各種内添薬品についても特に限定されない。
【0035】
本発明の紙の製造方法は、(A)成分、(B)成分、及び、(C)成分は、紙中に添加せずに、抄紙した紙の表面に塗工することを特徴とするものである。表面に塗工することで、薬品をロスすることなく効率よくサイズ効果を付与することができる。塗工方法としては、含浸法、バーコーター法、カレンダー法、スプレー法、二本ロールサイズプレス等の方式、ゲートロールサイズプレス、シムサイズプレス等のフィルム転写方式等が挙げられる。各成分の表面塗工の順番は特に限定されず、各成分を混合して同時に行ってもよく、又は、各成分ごとに行ってもよく、(A)成分と(B)成分の混合物を表面塗工した後に(C)成分を表面塗工してもよく、(A)成分を表面塗工した後に(B)成分と(C)成分の混合物を表面塗工してもよい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「%」および「部」は特に断りのない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0037】
(ジアリルアミン系単量体とアクリルアミドの共重合物の製造)
合成例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水1330.0部、ジアリルアミン7.8部(0.08モル)を仕込んだ後、35%希硫酸にてpHを7に調整した。窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、70℃まで加熱し、イオン交換水過硫酸アンモニウム3.5部添加した。次いで、70℃で50%アクリルアミド水溶液549.4部(3.92モル)を2時間かけて添加し、70℃で2時間保温した。重合終了後、イオン交換水を加え、不揮発分15.5%、pH3.7、粘度(25℃)3600mPa・sのジアリルアミン系単量体とアクリルアミドの共重合物(A)を得た。
【0038】
合成例2〜12
合成例1において、a1、a2、その他の不飽和単量体の種類および使用割合を表1記載のものに変更したほかは、合成例1と同様の方法により共重合物(A)を得た。なお、その他の不飽和単量体として、アクリル酸、イタコン酸を併用する場合は50%アクリルアミド水溶液に添加した後に10%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH7に調整し、また、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートを併用する場合は50%アクリルアミド水溶液に中和に必要な35%希硫酸を添加した後にN,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレートを添加しpH7で合成を行った。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

DAA:ジアリルアミン、AM:アクリルアミド、DAMA:ジアリルメチルアミン、AA:アクリル酸、ITA:イタコン酸、DM:N、Nジメチルアミノエチルメタアクリレート、AN:アクリロニトリル、MBAA:メチレンビスアミリルアミド
【0040】
(アルキル及び/又はアルケニルケテンダイマーを含むサイズ剤の調製)
AKD−1合成例
アルキルケテンダイマー(ステアリン酸50%とパルミチン酸50%の混合物を原料としたもの)80部と予め90℃で1時間糊化された10%カチオン化澱粉糊液(窒素含有率0.50〜0.60%、酸化澱粉をグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドにてカチオン変性したもの)185部、アニオン性分散剤(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、花王(株)製)の40%水溶液3.75部および水131.25部を仕込み、70〜80℃に加熱し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)で予備分散させた後、同温度にて250kg/cmの条件下に高圧ホモジナイザー(APV.GAULIN社製)に2回通して分散させた。直ちに25℃まで冷却し、濃度調整のための水を更に加え、不揮発分20.5%、粘度12.5mPa・s(25℃)、pH3.5(25℃)、平均粒子径0.7μmのアルキルケテンダイマーを含むサイズ剤(B)AKD−1を得た。
【0041】
AKD−2合成例
AKD−1合成例において、ケテンダイマーの種類を表2に示すように変え、AKD−1合成例と同様の方法によりアルキルケテンダイマー及びアルケニルケテンダイマーを含むサイズ剤(B)AKD−2を得た。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
(水溶性高分子の調整)
水溶性高分子−1(澱粉)調製例
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた反応装置に、イオン交換水900部、酸化澱粉(王子コンスターチ社製、商品名王子エースA)を仕込んだ後、80℃まで加熱し2時間保温して、不揮発分10.0%、pH6.9、粘度(25℃)55mPa・sの水溶性高分子−1を得た。
【0044】
水溶性高分子−2(ポリアクリルアミド類)合成例
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水1000部、ポリアクリルアミド類として、アクリルアミド350部、イタコン酸20部、アクリル酸5部、メタリルスルホン酸ナトリウム3部を仕込んだ後、40℃まで加熱し、40℃で過硫酸アンモニウム1部、ピロ亜硫酸ナトリウム0.2部添加した。重合熱で80℃まで温度が上昇した後に3時間保温した。次いでpH調整のために48%水酸化ナトリウムと濃度調整のために水を加え、不揮発分20%、pH6.0、粘度(25℃)1600mPa・sの水溶性高分子−2を得た。
【0045】
(実施例)
ジアリルアミン系単量体とアクリルアミドの共重合物(A)とアルキルケテンダイマーを含むサイズ剤(B)と水溶性高分子(C)を水の中にそれぞれ添加することによって(各配合比は表3の通り)、塗工液を調製した。次に2分間のコッブサイズ度が178g/mで坪量180g/mの段ボール古紙パルプから抄紙した弱酸性ライナー原紙にバーコーターを用いて塗工液を付着量が15g/mになるように塗工した。その後、回転式ドラムドライヤーを用いて80℃で60秒間乾燥して試験紙を得た。得られた試験紙の乾燥直後のコッブサイズ度を測定した。また、恒温恒湿(23℃、50%相対湿度)環境下で24時間調湿した後のコッブサイズ度とすべり角度を測定した。各薬品の塗工量ならびに結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
(性能試験)
(吸水度試験〔コッブ法〕)
JIS P−8140に準拠して、コッブサイズ度(g/m)を測定した。水との接触時間は2分間とし、数値が小さいほど良好なサイズ度を表す。
(すべり角度〔傾斜方法〕)
JIS P−8147の傾斜方法に準拠してすべり角度(°)を測定した。すべり角度が小さいほど滑りやすい。
(平均粒子径)
レーザー回折・散乱法による粒子径測定装置LASER DIFFRACTION PARTICLE SIZE ANALYZER SALD−2000J((株)島津製作所製)で平均粒子径(μm)を測定した。
(pH)
ガラス電極pHメーター((株)堀場製作所製)を用い、塗工液の温度を40℃に調整してpHを測定した。
(粘度)
サンプルの温度25℃とし、ブルック・フィールド粘度計を使用して粘度(mPa・s)を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分塗工量が0.005〜1g/mである一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)を含む共重合物(A)、固形分塗工量が0.005〜0.15g/mであるアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー(B)、及び、固形分塗工量が0.001〜10g/mである水溶性高分子(C)を紙の表面に塗工する紙の製造方法。
【化1】

(式中、R1およびR2は、水素またはメチル基を、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
【請求項2】
上記共重合体(A)が、一般式(1)で示されるジアリルアミン系単量体(a1)を1〜50モル%、及び、(メタ)アクリルアミド(a2)を50〜99モル%含有することを特徴とする請求項1記載の紙の製造方法。
【請求項3】
上記水溶性高分子(C)が、澱粉及び/又はポリアクリルアミド類であることを特徴とする請求項1又は2記載の紙の製造方法。

【公開番号】特開2012−224949(P2012−224949A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91343(P2011−91343)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】