説明

紙器及び紙器ブランク

【課題】 押込み領域部及び分離領域部が分離線に沿って分離される場合、その分離線の被断部の破断を、押込み領域部側から紙器の角部を越えて分離領域部側までスムーズに進展させることができる紙器及び紙器ブランクを提供することを目的とする。
【解決手段】 紙器の分離促進線11,11は、分離片20の幅方向両側にそれぞれ対称に1本ずつ設けられる一繋がりの切れ目Ctであり、分離線10に存在する他の切れ目Ctに比べて極端に長く形成されている。紙器を開封するには、まず、押込み領域部21が紙器本体内へ向けて押し込まれることで、分離線10の分離惹起線12の各被断部Shが破断され、この分離惹起線12の全ての被断部Shが破断されると、押込み領域部21が分離線10に沿って底面板3から分離されるとともに、分離線10の破断が各分離促進線11,11の切れ目終点11e,11eまで一気に進展する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱状の紙器、及び、その組み立てに用いられる紙器ブランクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙製のブランクから組み立てられる紙器には、その開封が容易なものとして、例えば、特許文献1に記載されるシールドエンドカートン(以下この欄において単に「紙器」という。)がある。この特許文献1記載の紙器には、その開封時に操作される摘み部が、後板に摘み部切れ目線で象られて設けられており、その摘み部切れ目線の両端から天下板を横断する方向に開封切れ目線もそれぞれ連続延設されている。
【0003】
この紙器によれば、それを開封する場合に、まず、摘み部が指で軽く押圧されることで、摘み部切れ目線が破れて、摘み部が開封される。その後、この摘み部と一緒に、天下板及びその上に重なる天板を摘んで、これらを引き上げることにより、天下板にある開封切れ目線が引き裂かれ、天下板からその一部が分離されて、紙器が開封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−206168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1の紙器は、後板と天下板との連設部分が直角折曲された角部となっているため、かかる角部の剛性が大きく、かかる角部近傍で摘み部切れ目が破断し難くなる。このため、摘み部を押し込んでも、上記した角部近傍で摘み部切れ目線の破断の進展が中断されてしまうという問題点があった。
【0006】
しかも、このように摘み部切れ目線の破断が途中で途切れると、摘み部切れ目線から開封切れ目線への破断の進展をスムーズに伝播させることができないため、かかる状態で無理矢理、摘み部を天板及び天下板と一緒に引き上げてしまうと、例えば、開封切れ目線とは異なる部分で天下板が裂けたり、未開封のまま摘み部が天下板からちぎれ取れたり、その他の予期せぬ不都合が生じて、紙器を最後までスムーズに開封できないという問題点があった。
【0007】
そこで、本願発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、押込み領域部及び分離領域部が分離線に沿って分離される場合、その分離線の被断部の破断を、押込み領域部側から紙器の角部を越えて分離領域部側までスムーズに進展させることができる紙器及び紙器ブランクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために請求項1の紙器は、箱状の紙器本体と、その紙器本体に開口形成される開口部と、その開口部を挟んで互いに対向する前記紙器本体の第1及び第2壁板と、その第1壁板に第1折れ線を介して開閉自在に連設され前記開口部を閉塞する内蓋板と、その内蓋板の外面に重畳接合されて前記開口部を閉塞するために前記第2壁板に第2折れ線を介して開閉自在に連設される外蓋板とを備えており、更に、前記第1壁板の一部として前記内蓋板に隣接して設けられ、前記第1折れ線上の離間した2点を結ぶ分離線を介して、前記第1壁板から分離可能に形成される押込み領域部と、前記内蓋板の一部として前記押込み領域部に隣接して設けられ、前記第1折れ線上の前記2点からそれぞれ前記内蓋板の反第1折れ線側の先端縁まで間隔を空けて更に延設される前記分離線を介して、前記内蓋板から分離可能に形成される分離領域部とを備えており、前記分離線には、紙厚方向に貫通する切れ目が被断部と交互配設され、その切れ目の中に2本の分離促進切れ目が備えられており、その2本の分離促進切れ目は、前記押込み領域部の先端稜線上の始点から当該押込み領域部の先端稜線及び両側稜線に沿って延設され前記第1折れ線上の前記2点を越えて前記分離領域部の両側稜線上の終点まで達するものである。
【0009】
請求項2の紙器は、請求項1の紙器において、前記2本の分離促進切れ目の始点は、前記押込み領域部の先端稜線上であって当該先端稜線の両端より内方に位置する2点に各々達している。
【0010】
請求項3の紙器は、請求項1又は2の紙器において、前記分離線には、前記押込み領域部の先端稜線に沿って前記2本の分離促進切れ目の始点間に設けられる分離惹起線と、前記2本の分離促進切れ目の終点に各々接続され前記分離領域部の両側稜線に沿って前記内蓋板の反第1折れ線側の先端縁まで設けられる2本の分離末端線とが備えられており、その分離末端線及び分離惹起線は、前記切れ目を破線状に複数配設したミシン目により形成されるものである。
【0011】
請求項4の紙器は、請求項3の紙器において、前記分離惹起線に代えて、1つの被断部により、又は、2つの被断部とその間にある1つの切れ目により形成される分離惹起線と、前記分離末端線に代えて、1つの被断部により、又は、2つの被断部とその間にある1つの切れ目により形成される分離末端線とを備えている。
【0012】
請求項5の紙器は、請求項3又は4の紙器において、前記分離惹起線の前記切れ目は、前記分離末端線の前記切れ目より長く形成されている。
【0013】
請求項6の紙器ブランクは、請求項1から5のいずれかの紙器を組み立て形成するために用いられるものである。よって、この請求項6の紙器ブランクによれば、請求項1から5のいずれかの紙器がもたらす技術的特徴を必然的にもたらすものであり、故に、これら請求項1から5のいずれかの紙器と同様の作用及び効果をもたらすものである。
【0014】
本発明の紙器及び紙器ブランクによれば、紙器本体の開口部は、第1壁板及び第2壁板に各々連設される内蓋板及び外蓋板が重なり合って被さることで閉塞される。このとき、開口部は、第1折れ線で第1壁板に対して折曲げられた内蓋板の外面に、第2折れ線で第2壁板に対して折曲げられた外蓋板を重畳して接合することで封止される。
【0015】
一方、このように封止された紙器を開封するには、押込み領域部が紙器本体内へ向けて押し込まれ、この押し込み力により押込み領域部の先端稜線上にある被断部が破断され、この被断部の破断により押込み領域部が分離線に沿って第1壁板から分離される。押込み領域部が第1壁板から分離されると、この第1壁板には、押込み領域部の抜けた通穴が形成される。
【0016】
そして、この通穴から紙器本体内へ指を挿入し、その指で内蓋板の内面側から分離領域部を紙器本体の外方へと押圧すれば、この押圧力により分離領域部の両側稜線上にある被断部が破断され、かかる被断部の破断により分離領域部が分離線に沿って内蓋板から分離される。
【0017】
このようにして分離領域部が内蓋板から分離されると、内蓋板の外面に重畳接合された外蓋板が分離領域部と一緒に内蓋板から捲り取られて、内蓋板及び外蓋板により封止されていた紙器が開封される。
【0018】
ここで、押込み領域部及び分離領域部の分離線は、個々の被断部が破断されることで、元々個々に独立していた各切れ目線が、互いに繋がり合って一繋がりの長い裂け目へと成長するようになっている。
【0019】
つまり、分離線では、この裂け目が押込み領域部の先端稜線から両側稜線、第1折れ線上の2点を経て、分離領域部の両側稜線から内蓋板の反第1折れ線側の先端縁まで進展して達することで、押込み領域部を第1壁板から及び分離領域部を内蓋板からそれぞれ分かつようになっている。
【0020】
特に、この分離線に備わる2本の分離促進切れ目は、押込み領域部の先端稜線上にある始点から、その押込み領域部の両側稜線に沿って延設され、第1折れ線上の2点を越えて更に分離領域部の両側稜線の途中にある終点まで達するものである。このため、押込み領域部の先端稜線上にある被断部が全て破断されれば、複数の切れ目が一繋がりとなった裂け目が、第1折れ線上の2点を超えて分離領域部の両側稜線の途中まで一気に達する格好となる。
【0021】
したがって、押込み領域部を押し込む力が小さくても、押込み領域部の先端稜線上にある被断部を破断できさえすれば、分離線における裂け目は、第1折れ線近傍で中断されることなく、押込み領域部側から第1折れ線を越えて分離領域部側までスムーズかつ一気に進展されるのである。
【0022】
しかも、2本の分離促進線は、第1壁板及び内蓋板が第1折れ線で折曲することで生じる角部に跨った切れ目であるので、その裂け目の進展が、第1折れ線近傍の角部で妨げられることなく、押込み領域側から分離領域部側に伝播することができる。よって、分離領域部を内蓋板から分離させる場合に要する押圧力を軽減でき、分離領域部を容易に分離できる。
【0023】
請求項2の紙器によれば、2本の分離促進切れ目の始点が押込み領域部の先端稜線上にあり、かつ、押込み領域部の先端稜線の両端より内方に位置する2点に各々達している。このため、2本の分離促進切れ目の各始点間に、押込み領域部の被断部が存在し、結果、押込み領域部に係る分離線の被断部が局所的に偏在するようになっている。したがって、押込み領域部を押し込む力が、かかる被断部の偏在箇所に集中するので、結果、効率よく押込み領域部に係る分離線の被断部を破断させて、押込み領域部を第1壁板から分離させることができる。
【0024】
しかも、2本の分離促進切れ目の始点が押込み領域部の先端稜線の線上にあり、かつ、その先端稜線の両端より内方に位置する2点に各々達しており、既に、押込み領域部における先端稜線と両側稜線との繋ぎ目(連結部分)に切れ目が入っている。よって、分離線の破断が押込み領域部の先端稜線から両側稜線へと伝播する場合に、当該先端稜線と両側稜線との繋ぎ目で途切れることもなく、分離線の裂け目をスムーズに進展させることができる。
【0025】
請求項3の紙器によれば、分離線は、その2本の分離促進切れ目を除けば、分離惹起線及び分離末端線が、複数の切れ目を破線状に配設したミシン目で形成される。このため、2本の分離促進切れ目が押込み領域部の先端稜線上から分離領域部の両側稜線まで達する比較的長い切れ目であっても、分離惹起線及び分離末端線に存在する細かな被断部の存在により、非開封状態における紙器の分離線周辺の剛性強度の低下を防止することができる。
【0026】
請求項4の紙器によれば、分離惹起線若しくは分離末端線又はこれらの双方は、1つの被断部により形成されるか、又は、2つの被断部とその間にある1つの切れ目により形成されるので、その被断部の数が少なくなるので、押込み領域部の被断部を破断させるために必要な押し込む力を小さくすることができる。
【0027】
請求項5の紙器によれば、分離惹起線の切れ目は、分離末端線の切れ目より長く形成されているので、分離惹起線の被断部の間隔が大きくなっているので、分離惹起線の方が分離末端線に比べて分離され易く、分離線の裂け目が進展し易くなっている。一方、分離末端線は、その切れ目が分離惹起線のものより短くて破断され難くなっているので、紙器の捩れ等により分離惹起線が容易に破断してしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0028】
本発明の紙器及び紙器ブランクによれば、その紙器の開封時に破断される分離線には、2本の分離促進切れ目が、押込み領域部の先端稜線上にある始点から、その押込み領域部の両側稜線に沿って延設され、第1折れ線上の2点を越えて更に分離領域部の両側稜線の途中にある終点まで設けられている。このため、押込み領域部の先端稜線上にある被断部が全て破断されれば、その時点で、分離線の裂け目を、第1折れ線上の2点を超えて、分離領域部の両側稜線の途中まで一気に到達させることができる。したがって、押込み領域部及び分離領域部が分離線に沿って分離される場合に、その分離線の被断部の破断を、押込み領域部側から紙器の角部を越えて分離領域部側までスムーズに進展させて、紙器を容易に開封できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例である紙器を組み立てるために用いられる紙器ブランクの展開図である。
【図2】(a)は、図1のA部分の拡大図であって、紙器ブランクから分離線を仮想的に除去することで、分離片の輪郭線を図示したものであり、(b)は、図1のA部分の拡大図であって分離線及びそれにより象られる分離片を拡大視したものである。
【図3】紙器ブランクを用いて組み立てられた紙器の底面側斜視図であって、当該紙器の底面板側を上向きにして斜視したものである。
【図4】図3に示す状態の紙器について、その一方の開口部を開放した状態を図示した斜視図であり、当該紙器の上面板側を上向きにして斜視したものである。
【図5】第2実施例の紙器ブランクの展開図である。
【図6】(a)は、図5のA部分の拡大図であって、紙器ブランクから分離線を仮想的に除去することで、分離片の輪郭線を図示したものであり、(b)は、図5のA部分の拡大図であって分離線及びそれにより象られる分離片を拡大視したものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例である紙器50(図3参照。)を組み立てるために用いられる紙器ブランク1の展開図であり、図中では、紙器ブランク1に設けられる全ての折目線Lを1点鎖線で図示している(以下同じ。)。
【0031】
図1に示すように、紙器ブランク1は、紙器50を展開したものであり、これを組み立てることによって六面体箱状の紙器50(図3参照)となるものである。この紙器50となる紙器ブランク1は、1枚の高剛性積層紙材を素材として用いている。
【0032】
この紙器ブランク1の素材となる高剛性積層紙材は、段ボール原紙、白板紙、チップボール、黄ボールその他の高剛性の多層抄きの板紙である。なお、高剛性積層紙材には、例えば、坪量が160グラム平方メートル〜2700グラム平方メートルの程度のものを使用しても良い。
【0033】
この紙器ブランク1は、上面板2と、底面板3と、一対の側壁板4,4と、一対の外蓋板5,5と、一対の内蓋板6,6と、糊代板7と、4枚の差込板8,8,・・・とを備えており、これらの各板2〜8のうち、各内蓋板6、糊代板7及び各差込板8が台形状に形成され、その残りの板2〜5が長方形状に形成されている。また、紙器ブランク1の各板2〜8は、その隣接するもの同士が折目線(折目部)Lを介して折り曲げ可能に連設されている。
【0034】
具体的には、上面板2の2つの短辺(図1上下両側)には、2枚ある長方形状の外蓋板5,5が1枚ずつ折目線Lを介して折り曲げ可能かつ開閉自在にそれぞれ連設されており、上面板2の2つの長辺(図1左右両側)には、2枚ある長方形状の側壁板4,4が1枚ずつ折目線Lを介して折り曲げ可能にそれぞれ連設されている。
【0035】
ここで、上面板2と各外蓋板5,5とを連設する各折目線Lについては、以下、「外蓋折目線La」というものとする。また、一対の側壁板4,4の長手方向両端(図1上下両側)にある各短辺には、それぞれ差込板8が1枚ずつ折目線Lを介して折り曲げ可能に連設されている。
【0036】
また、底面板3の2つの短辺(図1上下両側)には、2枚ある台形状の内蓋板6,6が1枚ずつ折目線Lを介して折り曲げ可能かつ開閉自在にそれぞれ連設されている。また、底面板3の一方の長辺(図1左側)には、上面板2右側の長辺に連設される側壁板4が折目線Lを介して折り曲げ可能に連設され、底面板3の他方の長辺(図1右側)には、糊代板7が折目線Lを介して折り曲げ可能に連設されている。なお、以下、底面板3と各内蓋板6とを連設する各折目線Lを、以下「内蓋折目線Lb」という。
【0037】
このように、紙器ブランク1には、底面板3と内蓋板6,6との連設部分が2箇所存在しており、その連設部分のいずれにも、底面板3及び内蓋板6,6に跨って形成される分離線10と、この分離線10を介して後述するように紙器50の開封時に紙器ブランク1から分離される分離片20とが設けられている。
【0038】
なお、紙器ブランク1にある2つの分離線10は、底面板3の中心(重心)に対して点対称な形態となっており、紙器ブランク1に2箇所にある分離片20も、底面板3の中心(重心)に対して点対称な形態となっている。
【0039】
ここで、分離片20は、分離線10を介して底面板3から分離可能な押込み領域部21と、分離線10を介して内蓋板6から分離可能な分離領域部22とを備えており、かかる押込み領域部21及び分離領域部22が内蓋折目線Lbを介して相互に連設されている。
【0040】
押込み領域部21は、内蓋板6に隣接した底面板3の一部であって、底面板3の短辺方向(図1左右方向)における中央位置に設けられており、指先で押圧可能な程度の面積を有した舌片状に形成されている。分離領域部22は、押込み領域部21に隣接した内蓋板6の一部であって、当該内蓋板6の長辺方向(図1左右方向)における中央位置に設けられており、平面視台形状に形成されている。
【0041】
次に、図2を参照して、分離線10及び分離片20の詳細について説明する。図2(a)は、図1のA部分の拡大図であって、紙器ブランク1から分離線10を仮想的に除去することで、分離片20(押込み領域部21及び分離領域部22)の輪郭線を図示したものであり、図2(b)は、図1のA部分の拡大図であって分離線10及びそれにより象られる分離片20を拡大視したものである。
【0042】
図2(a)に示すように、押込み領域部21は、その押込み領域部21の先端の輪郭線となる弓形状の先端稜線21aと、当該押込み領域部21の幅方向両側の輪郭線となる2本の直線状の側稜線21b,21b(以下「両側稜線」ともいう。)とを備えている。
【0043】
また、この両側稜線21b,21bは、先端稜線21aの両端点P,Pから内蓋折目線Lbへ向けて、当該内蓋折目線Lbに対する直交方向(図1上下方向)と平行にそれぞれ延びており、いずれも内蓋折目線Lbと直交している。この押込み領域部21の両側稜線21b,21bと内蓋折目線Lbとの2つの交点Q,Qは、その内蓋折目線Lbの線上において互いに離間しており、かかる2つの交点Q,Qを、以下「分離中点Q,Q」というものとする。
【0044】
分離領域部22は、その分離領域部22の幅方向両側の輪郭線となる2本の側稜線22a,22a(以下「両側稜線」ともいう。)を備えており、これらの両側稜線22a,22aは分離中点Q,Qから内蓋板6の先端縁6aへ向けて平面視ハの字状に延設され、その内蓋板6の先端縁6aの辺上において互いに離間する2つの点R,R(以下「分離終点R,R」という。)にまで達している(図1参照)。
【0045】
図2(b)に示すように、分離線10は、主に、2本の分離促進線11,11と、1本の分離惹起線12と、2本の分離末端線13,13とを備えている。この分離線10は、上記した分離片20の輪郭線に含まれる各線、即ち、押込み領域部21の先端稜線21a及び両側稜線21b,21b並びに分離領域部22の両側稜線22a,22aの線上に、これらの各線21a,21b,22aに沿って設けられている。また、分離線10は、複数の切れ目Ctと複数の被断部Shとを備えており、これらの切れ目Ct及び被断部Shが交互に複数配設されることで構成されている。
【0046】
ここで、分離線10は、その各切れ目Ctがいずれも紙器ブランク1の紙厚方向に貫通形成されており、その各被断部Shがいずれも紙器ブランク1の紙厚方向に非貫通とされている。特に、この分離線10における複数の切れ目Ctの中には、上記した2本の分離促進線11,11が含まれている。この各分離促進線11は、分離片20の幅方向両側にそれぞれ対称に1本ずつ設けられる一繋がりの切れ目Ctであり、分離線10に存在する他の切れ目Ctに比べて極端に長く形成されている。
【0047】
また、各分離促進線11は、その切れ目Ctの始点となる切れ目始点11sが押込み領域部21の先端稜線21aの線上にあり、この切れ目始点11sからこの押込み領域部21の先端稜線21a及び側稜線21bに沿って連続して延設されて、各分離中点Qを越えて更に分離領域部22の側稜線22aの線上の途中にある切れ目終点11eまで達している。
【0048】
ここで、各分離促進線11の切れ目始点11sは、押込み領域部21の先端稜線21aの線上に存在しており、なおかつ、かかる先端稜線21aの両端点Pよりも内方(内側)に位置している。つまり、各分離促進線11は、押込み領域部21の先端稜線21aの線上であって当該先端稜線21aの端点Pよりも当該先端稜線21aの中央よりの位置まで達する切れ目Ctとなっている。
【0049】
また、分離促進線11,11の切れ目始点11s,11s同士の間には、押込み領域部21の先端稜線21aに沿って分離惹起線12が設けられている。この分離惹起線12は、分離線10の一部であって、分離促進線11よりも短い2つの切れ目Ctと、当該切れ目Ctより更に短い3つの被断部Shとを有しており、この各被断部Shの間に切れ目Ctが破線状に複数配設されたミシン目状に形成されている。
【0050】
かかる分離惹起線12の被断部Shは、紙器50の開封時における押込み領域部21の押込みの際に真っ先に破断されるべきものであり、この分離惹起線12の全ての被断部Shが破断されることによって、分離線10の破断(裂け目)は、内蓋折目線Lbのある紙器50の角部で中断することなく、底面板3から内蓋板6の分離領域部22の側稜線22aの線上にある分離促進線11の切れ目終点11eまで一気に進展されるのである。
【0051】
また、各分離促進線11の切れ目終点11eには、分離末端線13の始点が接続されている。この各分離末端線13は、各分離促進線11の切れ目終点11eから分離領域部22の側稜線22aに沿って内蓋板6の先端縁6aにある各分離終点Rまで設けられている。また、各分離末端線13は、分離惹起線12の数を超える複数の切れ目Ctと複数の被断部Shとを有しており、かかる各被断部Shの間に切れ目Ctが破線状に複数配設されたミシン目状に形成されている。
【0052】
ところで、分離末端線13は、その各切れ目Ctがその各被断部Shに比べて若干長い程度のものとなっている。また、分離末端線13の切れ目Ctは分離惹起線12の切れ目Ctに比べて短く形成されており、分離末端線13の被断部Shは分離惹起線12の被断部Shと同程度の長さに形成されている。つまり、分離末端線13と分離惹起線12とでは、分離惹起線12の方が分離末端線13よりも切れ目Ctが長く形成されているのである。
【0053】
このため、分離末端線13は、分離惹起線12に比べて単位長さ当たりの切れ目Ct長さが小さくなり、結果、分離惹起線12に比べて単位長さ当たり被断部Sh長さが長くなり、その分、分離惹起線12に比べて剪断強度が大きくなっており、紙器50の捩れなどに伴う不用意な破損が防止されるようになっている。
【0054】
また、逆に、分離惹起線12については、分離末端線13に比べて、単位長さ当たりの被断部Sh長さが短くて、単位長さ当たりの切れ目Ct長さが大きくなる分、分離末端線13に比べて剪断強度が小さくなっており、押込み領域部21の押込み時に被断部Shの破断が容易になされるようになっている。
【0055】
このように構成された分離線10との関係に基づいて、分離片20の押込み領域部21及び分離領域部22を説明するならば、押込み領域部21は、2つの分離中点Q,Qを通る2本の分離促進線11,11の一部分と、その2本の分離促進線11,11の切れ目始点11s,11s間に接続される分離惹起線12と、当該2つの分離中点Q,Q間にある内蓋折目線Lbの一部分とにより、囲まれた部位と言うことができる。
【0056】
また、分離領域部22については、2つの分離中点Q,Q間にある内蓋折目線Lbと、その2つの分離中点Q,Qを通って内蓋板6の反内蓋折目線Lb側にある先端縁6aへ向けてハの字状に延設される2本の分離促進線11,11の残余部分と、その分離促進線11,11の各切れ目終点11e,11eから内蓋板6の先端縁6aへ向けてハの字状に延設される2本の分離末端線13,13と、この各分離末端線13,13が到達する2つの分離終点R,R間にある内蓋板6,6の先端縁6aの一部分とにより、囲まれた部位と言うことができる。
【0057】
図1に戻って説明を続けると、このように構成された分離線10は、その機能に基づけば、押込み領域部21を底面板3から分離するための第1の分離線10Aと、分離領域部22を内蓋板6から分離するための第2の分離線10B,10Bとに分けられる。
【0058】
そして、ここで言う、第1の分離線10Aこそが、押込み領域部21の先端稜線21a及び両側稜線21b,21bに沿って2つの分離中点Q,Qを結んだ部分に相当し、第2の分離線10B,10Bこそが、分離領域部22の両側稜線22a,22aに沿って設けられる部分に相当している。
【0059】
また、第2の分離線10B,10Bは、各分離中点Q,Qから各分離終点R,Rまで非交差状態で互いに間隔を空けて延びる2本の直線状のものであり、その間隔が分離中点Q,Qから分離終点R,Rに至るまでハの字状に漸増されている。
【0060】
このため、当該第2の分離線10B,10Bよれば、分離領域部22を内蓋板6から捲り取って開口部52を開封する場合において、分離線が内蓋折目線Lbに沿って設けられるもの、又は、分離線が各分離中点Q,Qから平行かつ一定間隔で内蓋板6の先端縁6aまで延ばされるものに比べて、その破断抵抗が軽減される。
【0061】
また、分離領域部22が内蓋板6から分離されたとき(図4参照。)、内蓋板6にできる開口部51に連通する通穴の開口サイズは、紙器50の上面板3側に近いほど幅広になるので、紙器50の収容空間内から内容物を取り出す際に、かかる通穴内へ手先を挿入するために必要となる通穴の横幅を十分に確保することができる。
【0062】
また、内蓋板6は、その外面(図1紙面手前側)が外蓋板5との重畳接合面となるのであるが、上記した分離領域部22と当該分離領域部22を除く部分(以下「非分離領域」という。)23,23の双方に接着剤が塗布されることから、かかる分離領域部22及び非分離領域23,23の両方に跨るように、破線状の切り込み線24が、内蓋折目線Lbと平行に複数形成されている。
【0063】
この複数の切り込み線24は、高剛性積層紙材の紙厚方向に非貫通な状態で接着剤の塗布面に形成される切込みである。この複数の切り込み線24によれば、内蓋板6の内面に接着剤が塗布される場合、接着剤が各切込み線24に入り込むことで、接着剤が内蓋板6の上から垂れ落ちることを防止できる。
【0064】
また、紙器50を封止する場合に、内蓋板6に接着剤を塗布してこれを外蓋板5に押圧すると、その際に接着剤が各切り込み線24に入り込むことにより、かかる塗布範囲の過剰な拡大が抑制され、外蓋板5と内蓋板6との間外に接着剤が流れることも防止できる。
【0065】
図3は、上記した紙器ブランク1を用いて組み立てられた紙器50の底面側斜視図であって、当該紙器50の底面板3側を上向きにして斜視したものである。
【0066】
図3に示した紙器50を、図1に示す紙器ブランク1を用いて組み立てるには、まず、図1に示した紙器ブランク1の上面板2、底面板3、側壁板4,4、糊代板7が、それらを相互に連結する各折目線Lに沿って折り曲げられた上で、一方の側壁板4(図1中の左側のもの)と糊代板7とが接着剤で接着されると、紙器本体51が形成される。
【0067】
ここで、紙器本体51とは、上記した紙器ブランク1の各板2〜8のうち、上面板2、底面板3、側壁板4,4及び糊代板7により形作られる紙器50の基本となる箱状体であって、上記した外蓋板5,5、内蓋板6,6及び4枚の差込板8を除いたものをいう。また、この紙器本体51内には、上記した各板2〜4により4面が覆われた収容空間が形成されている。
【0068】
この紙器本体51の収容空間は、内容物を収容するための空間であり、この収容空間の残る2面が開口部52,52として開放される(図4参照。)。この各開口部52は、紙器本体51の収容空間と連通しており、図3に示すように、上記した内蓋板6、外蓋板5及び差込板8を用いて閉塞される。なお、図4では、2つある開口部52のうち一方のみを図示ている。
【0069】
そして、紙器本体51の形成後、各開口部52について、紙器ブランク1の差込板8、内蓋板6及び外蓋板5が、これらを相互に連結する各折目線L(内蓋折目線Lb及び外蓋折目線Laを含む。)に沿って、この順番で紙器本体51の内部側から重なるように折り曲げられて、それぞれ閉塞される。
【0070】
このとき、各内蓋板6の外面に接着剤が塗布され、これらの内蓋板6の上に折り曲げられた各外蓋板5が重畳されると、各内蓋板6の外面に各外蓋板5の内面が接着(接合)されて、図3に示す紙器50が形成されるとともに、各開口部52が閉塞及び封止される。
【0071】
図3に示すように、上記した紙器ブランク1を用いた紙器50は六面体に形成されており、この紙器50の底面板3には、所定の刻印9が各押込み領域部21の近傍にそれぞれ1つずつ凹設されている。この2つの刻印9,9は、「OPEN」という文字列を表わしたものであり、紙器50の開封時に押込み領域部21を押し込みを指示する標示である。紙器50(紙器ブランク1)が高剛性積層紙材で形成されるので、例えば、プレス加工により紙表面を塑性的に凹ませることで印刷によらずに必要な標示が施されるのである。
【0072】
図4は、図3に示す状態の紙器50について、その一方の開口部52を開放した状態を図示した斜視図であり、当該紙器50の上面板3側を上向きにして斜視したものである。
【0073】
図4に示すように、紙器本体51の長手方向両端部には、上記した収容空間と連通する開口部52が形成されている。この開口部52は、紙器50内に収容される内容物を納め入れかつ取り出すためのものであり、上面板2、底面板3及び一対の側壁板4,4により囲まれた正面視長方形状に開放されている。また、この開口部52を挟んで、紙器本体51を成す底面板3及び上面板2が互いに対向する格好となっている。
【0074】
各開口部52は、上記したように2枚の差込板8、内蓋板6及び外蓋板5が順番に重なり合って被さることで閉塞されるものであり、内蓋板6,6の外面に接着剤が塗布されその内蓋板6へ向けて折曲げられた外蓋板5を重畳して接着(接合)することで封止されるようになっている。
【0075】
次に、図4に示す紙器50の開封方法について説明する。まず、紙器50の押込み領域部21が紙器本体51内へ向けて押し込まれることで、分離線10の分離惹起線12の各被断部Shが破断され、この分離惹起線12の全ての被断部Shが破断されると、押込み領域部21が分離線10に沿って底面板3から分離されるとともに、分離線10の破断が分離促進線11,11の切れ目終点11e,11eまで一気に進展する(図2(b)参照。)。
【0076】
このように押込み領域部21が底面板3から分離されることで、底面板3には押込み領域部21の抜けた通穴が形成される。そして、この通穴から紙器本体51内へ指を挿入し、その指で内蓋板6の内面側から分離領域部22を紙器本体51の外方へ押圧すると、既に、分離線10の破断が分離促進線11,11の切れ目終点11e,11eまで進展していることから、この後は、各分離末端線13,13の被断部Shが順次破断されて、分離領域部22が分離線10に沿って内蓋板6,6から分離されていく(図1参照。)。
【0077】
そして、分離領域部22の両側稜線22a,22aに沿って各分離末端線13,13の被断部Shが全て破断されると、分離領域部22が内蓋板6から完全に分離される。すると、図4に示すように、分離領域部22が、外蓋板5の内面に重畳接合さた状態のまま外蓋板5と一緒に内蓋板6から捲り取られて、内蓋板6及び外蓋板5により閉塞封止されていた紙器50の開口部52が開封されるのである。
【0078】
しかも、内蓋板6の外面には、破線状の切り込み線24が複数刻設されていることから、内蓋板6の素材となっている高剛性積層紙材の表層部分が剥離され易くなっている。このため、紙器50を開封する場合に、分離片20が底面板3及び内蓋板6から分離されるとき、分離領域部22と一緒に内蓋板6,6の非分離領域23,23の表層部分23a,23aを剥離させることができる。したがって、一度開封された紙器50に開封証拠を残すことができるのである。
【0079】
次に、図5及び図6を参照して、上記実施例の変形例について説明する。図5は、第2実施例の紙器ブランク100の展開図であり、図6(a)は、図5のA部分の拡大図であって、紙器ブランク100から分離線10を仮想的に除去することで、分離片20(押込み領域部21及び分離領域部22)の輪郭線を図示したものであり、図6(b)は、図5のA部分の拡大図であって分離線10及びそれにより象られる分離片20を拡大視したものである。
【0080】
第2実施例の紙器ブランク100は、上記した第1実施例の紙器ブランク1に対して、分離線の分離惹起線及び2本の分離促進線の経路を変更して、分離片の押込み領域部の形態を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0081】
図5及び図6に示すように、第2実施例の紙器ブランク100では、押込み領域部21の先端稜線21aの片側半分(図6(a)左側)が湾出して左右非対称な形態となっているので、この先端稜線21aに沿って設けられる分離惹起線12も同様に片側半分(図6(b)左側)が湾出した左右非対称な曲線状となっている。
【0082】
このため、図6(b)に示すように、分離惹起線12の被断部Shは、押込み領域部21の先端稜線21aの線上の片側半分に偏在した格好となっており、これによって押込み領域部21が紙器50内へ押込まれた場合に、分離惹起線12の一部分に局所的に力が集中して、分離惹起線12の被断部Shが容易に破断されるようになっている。
【0083】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
例えば、上記実施例では、分離促進線11の切れ目始点11sが、押込み領域部21の先端稜線21aの線上であって当該先端稜線21aの端点Pより内側に位置したが、かかる各分離促進線11の切れ目始点11sの位置は、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、押込み領域部21の先端稜線21aの端点Pと一致させても良い。
【0085】
また、上記実施例では、紙器ブランク1,100が1枚の高剛性積層紙材により形成されていたが、紙器ブランクに使用する高剛性積層紙材の枚数は必ずしも1枚に限定されるものではなく、複数枚の高剛性積層紙材を用いて紙器ブランクを形成するようにしても良い。さらに、上記実施例では、紙器50の形態を六面体として説明したが、かかる紙器の形態は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、五面体、七面体その他の多面体を紙器の形態として採用しても良い。
【0086】
また、上記実施例では、紙器50の内蓋板6及び外蓋板5を封止する場合に、内蓋板6の分離領域部22の外面及び非分離領域23,23の外面の双方に接着剤を塗布して外蓋板5を重畳接着したが、かかる重畳接着の形態は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、接着剤の塗布箇所を内蓋板6の分離領域部22の外面にのみにしたり、或いは、外蓋板5の内面と内蓋板6の分離領域部22の外面との接着力(接合強度)に比べて、外蓋板5の内面と内蓋板6の非分離領域23,23の外面との接着力を相対的に弱めるようにしても良い。
【0087】
また、上記実施例では、分離片20の押込み領域部21の先端稜線21aを、左右対称な弓形状(図2参照。)又は片側に湾出した左右非対称な曲線状(図6(b)参照。)としたが、かかる押込み領域部の先端稜線の形態、及び、分離線の分離惹起線の形態は必ずしもこれらに限定されるものではなく、例えば、山形状その他の折れ線状、直線状、円弧状、楕円弧状などであっても良い。即ち、少なくとも押込み領域部21の平面形状が指先で押圧できる面積を有するものであれば良い。
【0088】
また、上記実施例では、分離線10における押込み領域部21の両側稜線21b,21b及び分離領域部22の両側稜線22a,22aに沿った部分が、直線状(図1及び図5参照。)であるものとして説明したが、これらの形態は必ずしもこれに限定されることなく、例えば、曲線状や折れ線等であっても良い。
【0089】
また、上記実施例では、分離惹起線12が3つの被断部Shと当該各被断部Sh間に1つずつ合計2つ設けられる切れ目Ctとを有したミシン目状である場合について説明したが、分離惹起線の形態は、必ずしもこのようなミシン目状に限定されるものではない。
【0090】
例えば、各分離促進線の切れ目始点間に1つの被断部のみを設けたものや、各分離促進線の切れ目始点間に2つの被断部を設けて当該被断部間に1つの切れ目を設けたものなどのように、ミシン目状とは到底言えないものを含んでも良く、又は、各分離促進線の切れ目始点間に4つ以上の被断部を設けて当該被断部間に1つずつ設けられる複数の切れ目を設けても良い。
【0091】
また、上記実施例では、各分離末端線13が複数の被断部Shと当該各被断部Sh間に1つずつ設けられる複数の切れ目Ctとを有したミシン目状である場合について説明したが、分離末端線の形態は、必ずしもこのようなミシン目状に限定されるものではない。
【0092】
例えば、分離促進線の切れ目終点と分離終点との間において、被断部を1つのみ設けてこれを分離末端線としたり、又は、2つの被断部を設けて当該被断部間に1つの切れ目を設けてこれを分離末端線とするなど、ミシン目状とは到底言えないものを含んでも良い。
【0093】
以下に、本発明の変形例である第1から4変形例の紙器について示す。
【0094】
第1変形例の紙器は、請求項1から5のいずれかの紙器において、高剛性の多層抄き板紙で形成されているので、分離線の一部に2本の分離促進切れ目のような長い切れ目を設けても、紙器自体の剛性強度を十分に確保することができる。また、紙器を多層抄き板紙で形成した場合、この多層抄き板紙内部の各積層紙同士の接合力に比べて、内蓋板と外蓋板とを重畳接合する接合力が強ければ、内蓋板の表層部分にある積層紙が剥離しやすくなる。
【0095】
そこで、内蓋板と外蓋板との重畳接合力を、接合剤の接合強度を高めるなどすることで紙器素材となる多層抄き板紙内の各積層紙同士の接合力より大きくした場合、分離領域部が内蓋板から分離されるときに、内蓋板の非分離領域部の表面層分が外蓋板に接合されたまま剥離され、この剥離に伴って、分離領域部の両側稜線上にある分離線の厚紙も薄くなるので、小さい力でも分離領域部の両側稜線上にある分離線を破断させることができるようになる。
【0096】
第2変形例の紙器は、請求項1から6のいずれか又は第1変形例の紙器において、前記分離線は、前記分離領域部の両側稜線に沿って設けられる部分の間隔が、前記第1折れ線上の前記2点から前記内蓋板の反第1折れ線側の先端縁へ向けて漸増されている。
【0097】
第3変形例の紙器は、請求項1から6のいずれか又は第1若しくは第2変形例の紙器において、前記内蓋板は、前記分離領域部のみが前記外蓋板と接合されている。よって、使用する接合剤の量を減少させることができる。また、外蓋板が内蓋板の非分離領域部と接合されないので、外蓋板と内蓋板の非分離領域部との接合を引き剥がす必要がない。したがって、小さな力でも分離領域部を内蓋板から分離させて紙器を開封できる。
【0098】
第4変形例の紙器は、請求項1から6のいずれか又は第1から第3変形例の紙器において、前記内蓋板は、その内蓋板における前記分離領域部及びそれを除く部分(非分離領域部ともいう。)の双方が前記外蓋板と重畳接合されており、その分離領域部と前記外蓋板との接合強度は、当該分離領域部を除く部分と前記外蓋板との接合強度より大きくされている。よって、内蓋板の非分離領域部と外蓋板との接合力が強すぎることで、かえって分離領域部の内蓋板からの分離が阻害される事態を回避できる。
【符号の説明】
【0099】
1,100 紙器ブランク
2 上面板(第2壁板)
3 底面板(第1壁板)
4,4 側壁板
5,5 外蓋板
6,6 内蓋板
6a 内蓋板の先端縁(内蓋板の反第1折れ線側の先端縁)
10 分離線
10A 第1の分離線(押込み領域部を第1壁板から分離する分離線)
10B 第2の分離線(分離領域部を第2壁板から分離する分離線)
11,11 分離促進線(分離促進切れ目)
11s 切れ目始点(分離促進切れ目の始点)
11e 切れ目終点(分離促進切れ目の終点)
12 分離惹起線
13,13 分離末端線
21 押込み領域部
21a 先端稜線(押込み領域部の先端稜線)
21b,21b 側稜線(押込み領域部の両側稜線)
22 分離領域部
22a,22a 側稜線(分離領域部の両側稜線)
23 非分離領域部(内蓋板の分離領域部を除く部分)
23a 非分離領域部の表層部分
50 紙器
51 紙器本体
52 開口部
La 外蓋折目線(第2折れ線)
Lb 内蓋折目線(第1折れ線)
Ct 切れ目
Sh 被断部
P,P 先端稜線の端点(押込み領域部の先端稜線の両端)
Q,Q 分離中点(第1折れ線上の離間した2点)
R,R 分離終点(分離線と内蓋板の反第1折れ線側の先端縁との交点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の紙器本体と、その紙器本体に開口形成される開口部と、その開口部を挟んで互いに対向する前記紙器本体の第1及び第2壁板と、その第1壁板に第1折れ線を介して開閉自在に連設され前記開口部を閉塞する内蓋板と、その内蓋板の外面に重畳接合されて前記開口部を閉塞するために前記第2壁板に第2折れ線を介して開閉自在に連設される外蓋板とを備えている紙器において、
前記第1壁板の一部として前記内蓋板に隣接して設けられ、前記第1折れ線上の離間した2点を結ぶ分離線を介して、前記第1壁板から分離可能に形成される押込み領域部と、
前記内蓋板の一部として前記押込み領域部に隣接して設けられ、前記第1折れ線上の前記2点からそれぞれ前記内蓋板の反第1折れ線側の先端縁まで間隔を空けて更に延設される前記分離線を介して、前記内蓋板から分離可能に形成される分離領域部とを備えており、
前記分離線には、紙厚方向に貫通する切れ目が被断部と交互配設され、その切れ目の中に2本の分離促進切れ目が備えられており、
その2本の各分離促進切れ目は、前記押込み領域部の先端稜線上の始点から当該押込み領域部の先端稜線及び両側稜線に沿って延設され前記第1折れ線上の前記2点を越えて前記分離領域部の両側稜線上の終点まで達することを特徴とする紙器。
【請求項2】
前記2本の分離促進切れ目の始点は、前記押込み領域部の先端稜線上であって当該先端稜線の両端より内方に位置する2点に各々達していることを特徴とする請求項1記載の紙器。
【請求項3】
前記分離線には、前記押込み領域部の先端稜線に沿って前記2本の分離促進切れ目の始点間に設けられる分離惹起線と、前記2本の分離促進切れ目の終点に各々接続され前記分離領域部の両側稜線に沿って前記内蓋板の反第1折れ線側の先端縁まで設けられる2本の分離末端線とが備えられており、
その分離末端線及び分離惹起線は、前記切れ目を破線状に複数配設したミシン目により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙器。
【請求項4】
請求項3記載の紙器において、
前記分離惹起線に代えて、1つの被断部により、又は、2つの被断部とその間にある1つの切れ目により形成される分離惹起線と、
前記分離末端線に代えて、1つの被断部により、又は、2つの被断部とその間にある1つの切れ目により形成される分離末端線とを備えていることを特徴とする紙器。
【請求項5】
前記分離惹起線の前記切れ目は、前記分離末端線の前記切れ目より長く形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の紙器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の紙器を組み立て形成するために用いられる紙器ブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−152924(P2011−152924A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14036(P2010−14036)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(591142079)マルト印刷工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】