説明

紙塗工用組成物、塗工紙、及びその方法

本開示の実施態様には、紙塗工用組成物、塗工紙及び/または塗工板紙、並びに紙塗工用組成物を用いて塗工紙及び/または塗工板紙を形成する方法が含まれる。紙塗工用組成物の実施態様は、紙塗工用組成物に用いられる他の顔料(例えば、無機顔料)に対して、高水準の中空ポリマー顔料を含む。紙塗工用組成物は、下地の原紙の圧密(すなわち永久変形)を最小化しつつ、塗工紙及び/または塗工板紙に幅広い様々な所望の特徴(例えば、高光沢度、良好な平滑度、改良された曲げこわさ)を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照することによりその全体の内容が本明細書に組み込まれる、2007年6月18日に出願された米国仮特許出願第60/936,155号の部分優先権を主張する。
【0002】
本開示は、紙塗工用組成物、塗工紙、及び塗工紙を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
紙に印刷された文字及び/または像の外観は、紙の塗工層の存在によって影響され得る。塗工層は、クレー、顔料、及び結合剤の混合物を含むことができる。インクが非塗工紙に適用されるとき、インクは紙に吸収される。インクが塗工紙に適用されるとき、インクは塗工層上に位置する。この特質によって、塗工紙に印刷されたインクがくっきりした輪郭を保つことが可能になる。結果として、塗工紙は概して、より輪郭がはっきりして、より明るい像を作りだし、非塗工紙よりも良好な反射率を有する。
【0004】
塗工紙の製造においては、塗工層が最初に原紙上に適用され、次いで塗工された原紙がカレンダー加工操作で固められ、印刷により適したものにされる。カレンダー加工は、さまざまに、塗工紙の表面並びに全体の紙構造に影響する。例えば、カレンダー加工は紙の粗さを低減する。塗工紙の粗さは特に、カレンダー加工中の繊維網の変形に依存する。粗さの減少は、しばしば光沢度の増加を伴う。紙の光沢度は、表面に関連した紙の特性であり、主に、カレンダー加工での塗工層構造の変形に依存する。
【0005】
カレンダー加工はまた、原紙の構造及び特性にも影響する。例えば、カレンダー加工は、原紙の、不透明度の減少、曲げこわさの減少、及び強度の低下をもたらし得る。これは、塗工紙がきつくカレンダー加工された場合に、とくに当てはまる。
【0006】
塗工層は、カレンダー加工プロセスにおいて、高度の光沢、光沢、光沢のない、またはつや消し(光沢がない)の仕上げに仕上げられ得る。これらの仕上げの種類について他の若干の変化態様が可能である。塗工紙はまた、その白色度及び光沢度の水準によっていくつかの等級に分類される。等級は、高級塗工紙(最も白色度が高く且つ最高品質の等級の塗工紙)、塗工紙#1、塗工紙#2、塗工紙#3、塗工紙#4、塗工紙#5、塗工板紙、塗工レーザー紙、塗工C1S(一面のみを塗工)、塗工返信用はがき、及び塗工SCA(スーパーカレンダーされたタイプA)を含むことができる。
【0007】
様々な等級の塗工紙及び塗工紙を形成するために用いられる塗工用組成物の製造に関する改良についての要望が、当技術分野で継続してある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は紙塗工用組成物、塗工紙及び/または塗工板紙、並びに紙塗工用組成物を用いた塗工紙及び/または塗工板紙を形成する方法の実施態様を提供する。本明細書で述べるように、紙塗工用組成物の実施態様は、従来の紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の水準に対して、高水準の中空ポリマー顔料を含む。紙塗工用組成物は、下地の原紙の圧密(すなわち永久変形)を最小化しつつ、塗工紙及び/または塗工板紙に幅広い様々な所望の特徴(例えば、高光沢度、良好な平滑度、改良された曲げこわさ)を提供することができる。結果として、本開示の実施態様は、塗工紙及び/または塗工板紙に、本開示で達成される光沢度及び平滑度の水準を有しつつ、他の方法では不可能である改良された曲げこわさ及びかさばり係数の値を提供することができる。
【0009】
本明細書で用いられるとき、「紙及び/または板紙」とは、例えばセルロース、ヘミセルロース、リグニン、及び/または合成繊維のような植物及び/または木材の繊維を少なくとも部分的に含むことができる繊維を融合した原紙を言う。他の成分も当然、紙及び/または板紙の原紙の組成物中に含まれ得る。本明細書で用いられるように、紙及び/または板紙は、それらの厚み、強度、及び/または質量が異なるが、両者は、本明細書で提供される紙塗工用組成物及び方法の実施態様によって改良されて塗工紙及び/または塗工板紙を形成することを目的としている。読みやすさを向上するために、「紙」という用語が用いられる文脈から明らかであるような解釈を明確に意図しなければ、「紙」が、紙及び/または板紙の両方を包含するという認識を有して、「紙及び/または板紙」なる表現は、本明細書において「紙」という用語で置き換えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の実施態様は、原紙と、本開示の紙塗工用組成物から形成された塗工層とを有する塗工紙を含む。本開示の紙塗工用組成物は、原紙の第1及び/または第2の主面の少なくとも一面上に適用される。本開示の紙塗工用組成物から形成された塗工層は、ベースコート、トップコート、及び/または塗工紙のベースコート及びトップコートの間の1以上の中間コートとして、用いられ得る。
【0011】
様々な実施態様について、紙塗工組成物は、結合剤及び、塗工用組成物に用いられる他の顔料(例えば、無機顔料)に対して高水準の中空ポリマー顔料を含む。例えば、紙塗工用組成物に用いられる高水準の中空ポリマー顔料は、全顔料100質量部あたり約25質量部〜約65質量部の範囲にあることができる。本明細書で用いられるとき、「質量部」なる用語は、無水ベースの質量部であり、当技術分野で良く知られているように、質量部は顔料の100質量部を基準とする。
【0012】
本開示の目的のために、「無水」なる用語は、実質的に液体がないことを意味し、「無水ベース」なる用語は、乾燥材料の質量を言う。例えば顔料の固形分は、本質的に全ての揮発性材料を除去した後に残っている材料の質量を意味する乾燥質量として表される。
【0013】
様々な実施態様について、高水準の中空ポリマー顔料は様々な形態を有する。例えば、中空ポリマー顔料は、顔料の不連続の個別粒子であることができる。別の実施態様では、高水準の中空ポリマー顔料は、複数の、不連続の中空ポリマー顔料の塊(cluster)として形成され得る。本明細書で用いられるとき、「塊」とは、2以上の中空ポリマー顔料が結合した、複数の、不連続の中空ポリマー顔料によって形成された構造をいう。様々な実施態様について、中空ポリマー顔料は、流体力学クロマトグラフィーによって測定される、約1マイクロメートルよりも大きい体積メジアン径を有することができる。さらに、いくつかの実施態様において、紙塗工用組成物は、流体力学クロマトグラフィーによって測定される、少なくとも25%異なる体積メジアン径を有する2種類の中空ポリマー顔料を含むことができる。
【0014】
紙塗工用組成物から形成されたその塗工層を有する原紙は、次いで、カレンダー加工され、1.65PPS−H5(パーカープリントサーフ5(Parker PrintSurf 5))よりも小さい塗工層の平滑度を提供することができる。様々な実施態様について、この平滑度を有する塗工紙を、カレンダー加工装置に実質的に熱を加えずに動作するカレンダーの熱ロールを用いて、作ることができる。
【0015】
本明細書で用いられるとき、「カレンダー加工装置に実質的に熱を加えない」とは、カレンダー加工プロセス中に発生した熱及び/または一定の動作温度を保持するためにカレンダー加工装置に加えた熱を超えて、カレンダー加工装置に実質的にさらなる熱を加えない動作温度をいう。そのようなものとして、ある場合には、「カレンダー加工装置に実質的に熱を加えない」ということが、カレンダー加工プロセスに応じて、約20℃〜約65℃であることができる。驚くべきことに、1.65PPS−H5よりも小さい平滑度が、仮にあったとしても最小限に塗工紙の原紙を圧密(すなわち永久変形)しつつ、このカレンダー動作温度にて達成される。
【0016】
本明細書で述べられる平滑度に加えて、塗工紙はまた、高光沢度を有することができる。本明細書で用いられるとき、「高光沢度」とは、75°の反射角度にて測定される65以上のTAPPI光沢値を含む。
【0017】
本明細書で用いられるとき、「a」、「an」、「the」、「one or more(1以上)」、及び「at least one(少なくとも1)」は互換性を有して用いられる。「含む」なる用語及びその変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲で示されるところで、限定した意味を有さない。したがって、例えば、「結合剤」を含む反応混合物は、「1以上の結合剤」を含む結合剤を意味すると解釈され得る。
【0018】
「及び/または」とは、列挙した要素の1つまたは全てを意味する。
【0019】
また、本明細書では、端点による数の範囲の記述は、その範囲内に含まれる全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0020】
本開示の上述の発明の概要は、本開示の、それぞれの開示された実施態様または全ての実施を記載することを目的としていない。以下の記載が、具体例をより詳しく例示する。本願全体の中のいくつかの箇所において、様々な組み合わせで用いられ得る実施例のリストによって指針が提供される。各場合において、記載されたリストは、代表的な群としての役割のみを果たし、排他的なリストとして解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】プレコートされた原紙上への、本開示の一実施態様による紙塗工用組成物の塗工層についての走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、カレンダー加工されていない状態の塗工紙の像である。
【図1B】プレコートされた原紙上への、本開示の一実施態様による紙塗工用組成物の塗工層についての走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、カレンダー加工されていない状態の塗工紙の像である(図1Aとは異なる倍率で撮影)。
【図1C】プレコートされた原紙上への、本開示の一実施態様による紙塗工用組成物の塗工層についての走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、カレンダー加工(65.6℃にて140kN/m)された状態の塗工紙の像である。
【図1D】プレコートされた原紙上への、本開示の一実施態様による紙塗工用組成物の塗工層についての走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、カレンダー加工(65.6℃にて140kN/m)された状態の塗工紙の像である(図1Cとは異なる倍率で撮影)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、紙塗工用組成物、塗工紙、及び紙塗工用組成物から形成された塗工層を有する塗工紙を形成する方法を提供する。本明細書で述べられるように、他の顔料(例えば、無機顔料)に対して高水準の中空ポリマー顔料を用いることによって、カレンダー加工プロセス中に、原紙に対して、塗工用組成物を選択的に永久変形させることが可能になる。
【0023】
本開示の塗工用組成物は、下地の原紙の圧密(すなわち永久変形)を最小化しつつ、幅広い様々な所望の特徴(例えば、高光沢度、良好な平滑度)を有する塗工紙を提供することができる。原紙は、カレンダー加工プロセス中に、たとえあったとしても最小限に圧密され得るので、65以上の光沢度(75°の反射角度におけるTAPPI光沢値)及び1.65PPS−H5(パーカープリントサーフ5)よりも小さい平滑度を与える塗工層を提供されつつ、原紙は、カレンダー加工プロセスの前からのその初期の曲げこわさ及びバルク特性を保つことができる。さらに、紙塗工用組成物は、斑点形成しにくい塗工紙を作りながら、またはバニシ仕上げしながら、カレンダー加工の際のビルドアップ(calendering buildup)をほとんど形成せず、また、良好な印刷強度及び良好なインクセッティング(ink setting)性能を有する。
【0024】
さらに、塗工紙の特徴(例えば、高光沢度、良好な平滑度)が、カレンダー加工装置に実質的に熱を加えないプロセスを含む低いカレンダー加工温度にて達成され得る。この低いカレンダー加工温度における動作はまた、斑点形成しにくい塗工紙を作りながら、またはバニシ仕上げしながら、カレンダー加工の際のビルドアップをほとんど形成せず、また、良好な印刷強度及び良好なインクセッティング性能をもたらす。
【0025】
本開示の様々な実施態様によれば、塗工用組成物は、結合剤と、従来の紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の水準に対して高水準の中空ポリマー顔料とを含むことができる。例えば、高水準の中空ポリマー顔料は、全顔料100質量部あたり、25質量部〜約65質量部が中空ポリマー顔料であり、顔料100質量部の残部が他の顔料であることができる。さらなる実施態様では、紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の量は、全顔料100質量部あたり約30質量部〜約50質量部の範囲であることができる。様々な実施態様において、紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の量は、全顔料100質量部あたり約35質量部〜約45質量部の範囲であり、顔料100質量部の残部が他の顔料であることができる。
【0026】
本明細書に記載されるように、本開示の高水準の中空ポリマー顔料を含んだ紙塗工用組成物中を使用することは、高水準の中空ポリマー顔料を有さない塗工用組成物を用いて塗工した紙と比べて、上記の紙塗工用組成物を用いて塗工した紙の平滑度を改良することができる。例えば、Amickによる国際公開第WO99/63157号(以下WO99/63157号)は、紙塗工用組成物中に高水準の中空ポリマー顔料を使用することを記載しているが、しかしながら、WO99/63157号に含まれる実施例において、高水準の中空ポリマー顔料を含む組成物を用いて塗工した紙のそれぞれの試料が、対照よりも大きいパーカープリント平滑度の値を示している。特に、高水準の中空ポリマー顔料を有する塗工用組成物を用いて調製されたWO99/63157号に含まれる試料が全て、1.79PP−H5よりも大きいパーカープリント平滑度の値を有し、一方で、対照が約1PP−H5のパーカープリント平滑度の値を有する。言い換えれば、高水準の中空ポリマー顔料が塗工用組成物に含まれるとき、塗工紙の平滑度が悪化している。当業者には明らかなように、実際のところ、平滑度の値の増加は塗工紙の平滑度の低下である。
【0027】
同様に、塗工用組成物中に高水準の中空ポリマー顔料を含むことは、得られる塗工紙の平滑度に悪影響を与えることが、当技術分野において認識されている。また一方、この認識は、塗工用組成物中の中空ポリマー顔料の水準を低水準の中空ポリマー顔料(例えば、全顔料100質量部あたり約10質量部)から徐々に増加させた実験に基づいている。塗工用組成物中の中空ポリマー顔料の水準を上記のように徐々に増加させて、塗工紙の平滑度を測定するとき、平滑度の値は増加を示す。平滑度の値の上昇傾向のために、当業者は、塗工用組成物中に含まれる中空ポリマー顔料の水準が増加するにつれて、平滑度がさらに増加するであろうというデータを推定している。
【0028】
しかしながら、本開示の実施態様は、本明細書に明示されるように、全顔料100質量部あたり約25質量部〜約60質量部が中空ポリマー顔料であり、顔料100質量部の残部が他の顔料であるように、中空ポリマー顔料の水準が高水準の中空ポリマー顔料に達するとき、平滑度の値が顕著に減少することを示す。そのような実施態様において、塗工用組成物が高水準の中空ポリマー顔料を含むとき、そこから作られる塗工紙の平滑度の値は実際に改良する。実に、本開示の実施態様は、対照よりも良好で、1.65PP−H5よりも小さい平滑度を有する塗工紙を提供する。
【0029】
様々な中空ポリマー顔料が、本開示の塗工用組成物に好適である。例えば、好適な中空ポリマー顔料は、限定されるものではないが、酸コアプロセス(acid core process)によって作られるもの及び/またはエステルコアプロセス(ester core process)によって作られるものを含むことができる。
【0030】
酸コアプロセスを用いて作られる中空ポリマー顔料の例は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるKowalskiによる米国特許第4,468,498号明細書にみることができる。エステルコアプロセスを用いて作られる中空ポリマー顔料の例は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるLeeによる米国特許第5,157,084号明細書及びLeeによる同第5,521,253号明細書の両方にみることができる。
【0031】
好適な中空ポリマー顔料を、様々な粒径及び空隙容量で入手可能である。平均粒径は概して、約0.35〜約3.0マイクロメートルの範囲である。本明細書で用いるとき、「平均粒径」とは、流体力学クロマトグラフィーによって測定される体積メジアン径をいう。
【0032】
中空ポリマー顔料の空隙容量は約15%〜約60%の範囲であることができる。好ましい中空球形プラスチック顔料は、約0.8〜1.2マイクロメートルの平均粒径及び約40%〜55%の空隙容量を有する。好適な中空ポリマー顔料は、それらの全てがダウ・ケミカル社から商業的に入手可能であるHS3000NA中空ポリマー顔料、HS3020NA中空ポリマー顔料、UCARHIDE4001、及び/若しくはUCARHIDE98、またはローム・アンド・ハース社(フィラデルフィア、PA)から入手可能であるRhopaque HP 1055、Ropaque Ultra E、及び/若しくはRopaque OP−96を含む。
【0033】
中空ポリマー顔料の混合物もまた、塗工用組成物に用いることができる。そのような組成物はポリモーダル(polymodal)系と考えられ得る。「ポリモーダル」とは、少なくとも2つの異なる次元量、例えば、流体力学クロマトグラフィーによって測定される体積メジアン径、を有する中空ポリマー顔料を含む塗工用組成物をいう。塗工用組成物は、2種の異なる大きさの中空ポリマー顔料を有するバイモーダル(bimodal)であることができる。また一方、3種以上の異なる大きさの中空ポリマー顔料を有する塗工用組成物も可能である。
【0034】
本開示の実施態様において、2つの異なる大きさの中空ポリマー顔料を混合することは、平滑度、光沢度、不透明度、空隙率、及びそれらの組み合わせを含む向上した塗工特性を有する塗工層を作ることができる。さらに、異なる大きさの中空ポリマー顔料の使用は、他の塗工層の特性に悪影響を与えずに、特定の特性を向上するために用いられ得る。同様に、特定の目的のための特定の特性を有する塗工層を作るように、異なる大きさの中空ポリマー顔料を、様々な比率で組み合わすことができ、様々な塗工質量にて適用することができ、そして様々な圧力にてカレンダー加工することができる。
【0035】
いくつかの実施態様では、紙塗工用組成物は、結合剤、第1の次元量を備えた個別粒子を有する第1の中空ポリマー顔料、及び第1の中空ポリマー顔料の第1の次元量に基づいた第2の次元量を備えた個別粒子を有する第2の中空ポリマー顔料を含むことができる。様々な実施態様において、第2の次元量は、第1の中空ポリマー顔料の第1の次元量よりも少なくとも25%小さくあることができる。さらに、様々な実施態様において、第2の次元量は、第1の中空ポリマー顔料の第1の次元量よりも少なくとも50%小さくあることができる。
【0036】
いくつかの実施態様では、第1及び第2の中空ポリマー顔料の第1及び第2の次元量は、流体力学クロマトグラフィーによって測定される体積メジアン径であることができる。そのようなものとして、第1の中空ポリマー顔料は第1の所定値の体積メジアン径を有することができ、第2の中空ポリマー顔料は、第1の中空ポリマー顔料の第1の所定値よりも少なくとも25%小さい第2の所定値の体積メジアン径を有することができる。様々な実施態様において、第2の中空ポリマー顔料の体積メジアン径の第2の所定値は、第1の中空ポリマー顔料の第1の所定値よりも少なくとも50%小さくあることができる。さらに、いくつかの実施態様では、第1及び第2の中空ポリマー顔料の体積メジアン径は、約300ナノメートル〜約1100ナノメートルの範囲にあることができる。
【0037】
いくつかの実施態様では、より多くの、例えばより低い光沢度及び平滑度を有する第2の中空ポリマー顔料を組み込むことは、2つの系の直接平均である特性を有する塗工用組成物をもたらすだろうということに必ずしもならない。むしろ、いくつかの実施態様では、特性は直線的には向上せず、両方の系を超えてより一層改良され得る。例えば、19質量%の第2の中空ポリマー顔料を有する系についての光沢度及び平滑度は、第1または第2の中空ポリマー顔料のいずれか一方を有する塗工用組成物を用いて形成された塗工紙よりも、光沢があり且つ平滑である塗工紙を形成する塗工用組成物をもたらすことができる。
【0038】
本明細書で述べられるように、いくつかの実施態様では、2つの異なる大きさの中空ポリマー顔料の使用は、所定の特性を有するように塗工用組成物を調整するために用いられ得る。例えば、所定の範囲内の平滑度及び光沢度を有する塗工層を形成することが望まれる場合、いくつかの実施態様では、2つの異なる大きさの顔料の使用は、該塗工層を形成するための塗工用組成物を作り出すために用いられ得る。
【0039】
さらに、2つの異なる大きさの顔料の使用は、様々な加工条件、例えば、より高い温度及び圧力が紙の曲げこわさに与え得る影響を軽減するために役立ち得る、より低いカレンダー加工の温度及び圧力を用いながら、塗工層の所定の特性を得るために用いられ得る。さらに、目的が、コストを低減しつつ同じ特性を有する塗工層を形成することである実施態様では、混合物の使用が、同等の塗工層の特性を得つつ、塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の量を低減することができ、及び/または塗工質量を低減することができ、塗工プロセスのコストを低減することができる。
【0040】
また、当業者に明らかなように、中空ポリマー顔料の混合物は、塗工用組成物中に含まれる無機顔料に依存し得る。そのようなものとして、いくつかの実施態様では、所望の特性を有する塗工層を得るために、様々な比率の中空ポリマー顔料の混合物が、様々な無機顔料と混合され得る。
【0041】
理論に束縛はされないが、2つの異なる大きさの中空ポリマー顔料の使用は、より大きいポリマー顔料と一緒により小さいポリマー顔料を使用することに関連した向上した充填効率の結果としての低いカレンダー加工の温度及び圧力を用いながら、改良された塗工層の特性をもたらすことができる。明らかなように、より小さいポリマー顔料は、より大きいポリマー顔料の周り及び隙間の間で位置を変えることができ、より大きいポリマー顔料の間の隙間を埋めることができる。そのような例では、塗工用組成物中の第2の中空ポリマー顔料に対する第1の中空ポリマー顔料の比率が、ポリマー顔料の充填によって、塗工厚みを通じて延在する一連の接触した中空ポリマー顔料を達成することができるように、決定され得る。そのような調整によって、塗工層がより圧縮しやすく/折りたたみやすくなり、カレンダー加工プロセスの際に紙が永久変形しにくくなって、紙の曲げこわさを向上する。
【0042】
例えば、いくつかの実施態様では、全中空顔料の少なくとも50%が、塗工層の非変形中空ポリマー顔料に比べて変形され得る。さらに、塗工紙の原紙が、塗工層を適用される前の原紙の初期厚みと比べて、変化がない厚みを有することができる。いくつかの実施態様では、塗工紙の原紙が、塗工層を適用される前の原紙の初期厚みと比べて、約10%以下の変化した厚みを有することができる。
【0043】
いくつかの実施態様では、紙塗工用組成物は、塗工用組成物の全中空ポリマー顔料100質量部あたり約5質量部〜約40質量部の第2の中空ポリマー顔料を含むことができる。様々な実施態様において、紙塗工用組成物は、塗工用組成物の全中空ポリマー顔料100質量部あたり約15質量部〜約30質量部の第2の中空ポリマー顔料を含むことができる。さらに、第1及び第2の中空ポリマー顔料は、紙塗工用組成物の顔料100質量部あたり約30質量部未満の顔料を提供することができる。さらに、第1及び第2の中空ポリマー顔料は、紙塗工用組成物の顔料100質量部あたり約20質量部〜約30質量部の顔料を提供することができる。
【0044】
様々な実施態様について、高水準の中空ポリマー顔料は様々な形態を有することができる、例えば、中空ポリマー顔料は、顔料の不連続の個別粒子であることができる。別の実施態様では、高水準の中空ポリマー顔料は、結合した複数の不連続の中空ポリマー顔料を有する塊として形成され得る。本明細書で用いられるとき、「塊」とは、2以上の中空ポリマー顔料が結合した、複数の不連続の中空ポリマー顔料によって形成された構造をいう。本明細書で用いられるとき、「結合」とは、塊を形成するように2以上の不連続の中空ポリマー顔料を化学的に結合することをいう。一実施態様では、中空ポリマー顔料の塊は、2以上の不連続の中空ポリマー顔料を含む。他の実施態様では、塊は、結合している2〜20の中空ポリマー顔料を含む。さらに他の実施態様では、塊は、制限されるものではないが、左右対称(例えば、球形)から非対称(例えば、円錐形、ぶどうの房状、ラズベリー状、及び/または棒(bar))形状を含む様々な形状を有することができる。様々な形状の塊の混合物も、本開示の塗工用組成物に用いることができる。
【0045】
2以上の中空ポリマー顔料を結合して塊を作るための様々な加工が可能である。例えば、2以上の中空ポリマー顔料を結合するための加工は、塩を用いるかまたは陽イオン界面活性剤を用いる制御された凝集を含むことができる。2以上の中空ポリマー顔料を結合する例は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるTsavalas等による欧州特許出願公開第EP1784537号明細書にみることができる。他の凝集技術も可能である。
【0046】
好適な凝集剤には例えば、塩化セチルピリジニウム、第4級アンモニウム塩、及びエトキシ化第4級アンモニウム塩のような陽イオン界面活性剤;カチオンでんぷん、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリルアミド−co−アクリル酸、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDADMAC)等のような、正、または負、または両性の、荷電高分子電解質;例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルのような中性の水溶性ポリマー;並びに、例えば塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、及び硫酸アンモニウムのような凝集塩が含まれる。
【0047】
中空ポリマー顔料が付着するコロイド的に安定な粒子はまた、好適な凝集剤であることができる。そのような凝集剤の例には、塩化セチルピリジニウム及びポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が含まれる。凝集剤の混合物も使用できる。凝集剤は、約1マイクロメートルよりも大きい質量平均の断面寸法を有する中空ポリマー顔料の凝集を形成するために十分な量で用いられる。凝集剤の量は有利には、中空ポリマー顔料の固形分の少なくとも約30質量%を塊に変えるために十分な量である。さらなる実施態様において、凝集剤は、中空ポリマー顔料の固形分の少なくとも約50質量%、少なくとも約75質量%、及び/または少なくとも約90質量%を塊に変えるために十分な量であることができる。様々な実施態様について、中空ポリマー顔料の固形分1グラムあたり、約0.01〜約1.0グラムの凝集剤が使用される。さらなる実施態様において、中空ポリマー顔料の固形分1グラムあたり、約0.03〜約0.5グラムの凝集剤を使用することができる。
【0048】
さらに、結合された中空ポリマー顔料の塊は、中空ポリマー顔料のスラリーがノズルを通してスプレーされるせん断工程を通じて形成され得る。参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、発明の名称が「Spray Dried Polymer for Catalyst Support」である、米国特許第6,013,594号明細書が、せん断工程を用いて凝集されたラテックス粒子を作る方法を提供する。
【0049】
様々な実施態様について、得られた中空ポリマー顔料の塊は、約1マイクロメートルよりも大きい質量平均の断面寸法を有することができる。一実施態様において、中空ポリマー顔料の塊は、約2〜約15マイクロメートルの質量平均の断面寸法を有することができる。様々な実施態様について、紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の量は、本明細書に提供されるような範囲内にあることができる。さらに、紙塗工用組成物の実施態様は、少なくとも50質量%の塊状の中空ポリマー顔料を含むことができる。
【0050】
様々な実施態様について、紙塗工用組成物用の結合剤は、合成ラテックス、でんぷん、またはタンパク質(例えば、大豆、カゼイン、アルブミン)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール。ポリアクリル酸塩、及びそれらの混合物のような他の中性の結合剤からなる群から選択される。一実施態様において、紙塗工用配合剤に用いられる結合剤は合成ラテックスである。特に、合成ラテックスはスチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−アクリル、スチレン−ブタジエン−アクリル、酢酸ビニル、及びそれらの組み合わせの重合形態の群から選択され得る。合成ラテックスの調製に用いられ得るモノマーのさらなる例には、エチレン及び酢酸ビニルの混合物、並びにアクリル酸及び/またはメタクリル酸のエステルが含まれる。
【0051】
さらに、本開示の結合剤はカルボキシル化され得る。例えば、本明細書に提供される合成ラテックス結合剤をカルボキシル化することができ、すなわちカルボン酸を用いて共重合することができる。
【0052】
様々な実施態様について、紙塗工用組成物の結合剤はポリマーの水性分散体であることができる。当然のことながら、結合剤の水性部分は、その大部分が、本明細書で述べられるような塗工紙の製造の際に蒸発する。一実施態様において、合成ラテックス結合剤は、そのようなポリマーの水性分散体の一例である。さらに、合成ラテックスはモノモーダルまたはポリモーダル、例えばバイモーダルの粒径分布を有することができる。結合剤の混合物も、塗工用組成物に用いることができる。
【0053】
塗工用組成物中の結合剤の平均粒径は、概して約450〜約5000Åである。比較的小さい粒径を有する結合剤を含む塗工用組成物は概して改良された塗工強度を示す。なぜなら、より小さい粒子は、他の塗工層の成分を結合するための単位質量あたりのより大きな表面積を提供するからである。
【0054】
幅広い様々な商業的に入手可能な結合剤を入手できる。好適なラテックス結合剤の例には、ダウ・ケミカル社によって製造されるCP615NA、CP638NA、DL920、DL966、PROSTAR5401、及びCP692NA; Omnova Solutions Incによって製造される、GenFlo557及びGenFlo576; 並びにBASF社によって製造されるAcronal S 504及びAcronal S 728が含まれる。好適なでんぷん結合剤は、Penford Gum PG290(Penford Products Co.,Cedar Rapids IA)を含むことができる。
【0055】
本開示に目的のために、結合剤を選択することができ、その使用量は、結合剤が、塗工紙の製造用に十分な接着力と塗工強度とを有することを確保するのに十分な量であることができる。様々な実施態様について、紙塗工用組成物中の結合剤の量は、ピッキングに耐えるような適切な塗工強度を提供する量であるべきである。驚くべきことに、紙塗工用組成物に必要な結合剤の割合は、紙塗工用組成物の約10質量%未満であることができる。例えば、結合剤の好適な割合は、限定されるものではないが、紙塗工用組成物の約6質量%〜約10質量%の間の範囲を含むことができる。一実施態様において、紙塗工用組成物に用いられ得る結合剤の割合は、塗工用組成物の約5質量%〜約7質量%であることができる。
【0056】
本明細書で述べられるように、紙塗工用組成物は、中空ポリマー顔料に加えてさらなる顔料を含んで100質量部の全顔料を得ることができる。不連続の個別の中空ポリマー顔料(すわなち塊ではない中空ポリマー顔料)を含む紙塗工用組成物用について、さらなる顔料が無機顔料であることができる。無機顔料の例は、カオリンクレー、タルク、焼成クレー、構造クレー、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミニウム三水和物、サテンホワイト、シリカ、酸化亜鉛、硫酸バリウム、及びそれらの混合物を含むことができる。炭酸カルシウムは特に好ましい無機顔料である。
【0057】
いくつかの実施態様では、100質量部の全顔料を得るために組成物に加えられたさらなる顔料が、無機顔料及び/または固体ポリマー顔料であることができる。本明細書に用いられるように、固体ポリマー顔料は、約5%以下の空隙容量を有するそれらのポリマー顔料を含む。好適な固体ポリマー顔料の例には、制限されるものではないが、ダウ・ケミカル社から入手可能なPlastic Pigment 722、Plastic Pigment 730、またはPlastic Pigment 756が含まれる。
【0058】
さらに、紙塗工用組成物が不連続の個別の中空ポリマー顔料(すわなち塊ではない中空ポリマー顔料)を含む様々な実施態様において、100質量部の全顔料を得るために組成物に加えられたさらなる顔料が、固体ポリマー顔料を実質的に含まないことができる。
【0059】
本開示の塗工用組成物に用いられる無機顔料の粒径分布はまた、そのような塗工用組成物を用いて形成される塗工紙の光沢度に影響を有し得る。例えば、比較的粗い粒径分布を有する炭酸カルシウムの顔料(例えば、HYDROCARB 60,Omya、 Inc、 Proctor Vermont、USA)が紙塗工用組成物に使用されるとき、比較的微細な粒径分布を有する炭酸カルシウムの顔料(例えばHYDROCARB 90、Omya、 Inc、 Proctor Vermont、USA)の使用と比べて、塗工紙について良好な光沢度及び平滑度を提供することが分かる。
【0060】
いくつかの実施態様において、粒子が、無機顔料の約65%未満が約2マイクロメートル未満の直径である粒径分布を有する(製造者によって特定される)場合、粒子は粗い粒径分布を有することができる。例えば、HYDROCARB 60は、約1.4マイクロメートルのメジアン粒径を有する(製造者によって特定される)。明らかなように、比較的微細な粒径分布を有する無機顔料に比べて、改良された光沢度及び平滑度を提供するために、(上記のような)約2マイクロメートル未満の直径である無機顔料の65%以外の値(例えば70%、75%、80%等)を有する粗い粒径分布も可能である。
【0061】
炭酸カルシウム顔料の微細な粒径分布を含む塗工用組成物もまた、光沢度及び平滑度について良好な結果を与える。
【0062】
本明細書に用いられるとき、「微細な粒径分布」とは、無機顔料の約90%が約2マイクロメートル未満の直径である粒径分布を有する(製造者によって特定される)粒子をいう。例えば、HYDROCARB 90は、約0.65マイクロメートルのメジアン粒径を有する(製造者によって特定される)。
【0063】
概して、微細な粒径分布の無機顔料は、粗い粒径分布の無機顔料と比べて、より高い光沢度及びより良好な平滑度を有する塗工層を提供すると期待される。しかしながら、高水準の中空ポリマー顔料を本開示の塗工用組成物に用いるとき、通常、例えばHYDROCARB 60のようなより低い光沢度の粗い粒径分布の無機顔料が、このたび、塗工用組成物の他の因子及び成分が同じでありながら、例えばHYDROCARB 90のような従来の高光沢度の微細な粒径分布の無機顔料を用いて達成され得るよりも、塗工紙についてより高い光沢度を得ることができる。
【0064】
理論に束縛はされないが、粗い粒径分布の無機顔料が中空ポリマー顔料のより良好な充填を可能とするために、微細な粒径分布の無機顔料と比べて、粗い粒径分布の無機顔料は良好な光沢度及び平滑度を提供すると思われる。粗い粒径分布の無機顔料は単位体積あたりにより少ない粒子を有するため(粗い無機顔料及び中空ポリマー顔料の所定の体積比を前提として)、中空ポリマー顔料が塗工用組成物中で連続的になるための空間がより多くある。その結果、これは、本明細書で述べられるように、塗工用組成物中の中空ポリマー顔料の充填性及び圧縮性の改良をもたらす。
【0065】
別の実施態様では、本明細書で述べられるように、中空ポリマー顔料の塊が、紙塗工用組成物中に用いられ、本明細書で述べられるように、該組成物はまた無機顔料及び結合剤の両方を含む。さらに、中空ポリマー顔料の塊を有する紙塗工用組成物はまた、中空ポリマー顔料の塊とは対照的に、顔料の不連続の個別粒子の形態のさらなるポリマー顔料を含むことができる。これらの不連続の個別粒子のポリマー顔料は、固体ポリマー顔料及び/または中空ポリマー顔料である。好適な中空ポリマー顔料の例には、本明細書で述べた顔料が含まれる。好適な固体ポリマー顔料の例には、限定されるものではないが、ダウ・ケミカル社から入手可能なPlastic Pigment 722、Plastic Pigment 730、またはPlastic Pigment 756が含まれる。
【0066】
中空ポリマー顔料の塊を含む紙塗工用組成物について、中空ポリマー顔料の塊は、全顔料100質量部を基準として、顔料100質量部あたり少なくとも約25質量部〜約65質量部を構成することができ;無機顔料は、顔料100質量部あたり約35質量部〜約75質量部を構成することができ;結合剤は、顔料100質量部あたり約6質量部〜約25質量部を構成することができ;さらなるポリマー顔料は、顔料100質量部あたり約0質量部〜約25質量部を構成することができる。さらなる実施態様では、紙塗工用組成物に用いられる中空ポリマー顔料の塊は、全顔料100質量部を基準として、顔料100質量部あたり約30質量部〜約50質量部を構成することができ;無機顔料は、顔料100質量部あたり約55質量部〜約65質量部を構成することができ;結合剤は、顔料100質量部あたり約6質量部〜約25質量部を構成することができ;さらなるポリマー顔料は、顔料100質量部あたり約0質量部〜約25質量部を構成することができる。
【0067】
所望ならば、常用の添加剤もまた、紙塗工用組成物の特性を改良するために、紙塗工用組成物の実施態様に組み込むことができる。これらの添加剤の例には、常用の増粘剤、分散剤、染料及び/または着色剤、防腐剤、殺生物剤、消泡剤、光学的光沢剤、湿潤強度剤、潤滑剤、保水剤、架橋剤、界面活性剤、及びpH制御剤、並びにそれらの混合物が含まれる。他の添加剤を紙塗工用組成物に使用することも可能である。当業者は、所望の最終製品の特性を達成するように、適切なさらなる添加剤の選択方法を知っている。
【0068】
紙塗工用組成物のレオロジーは、所望の結果に応じて、当技術分野で知られているように幅広く変化し得る。紙塗工用組成物の固形分は有利には、少なくとも約25%〜約65%であり、一実施態様では、約30〜約50%である。
【0069】
本開示の実施態様について、紙塗工用組成物は、カレンダー加工プロセスの前に、原紙の第1及び/または第2の主面の少なくとも一面上に適用される。原紙は、例えばセルロース、ヘミセルロース、リグニン、及び/または合成繊維のような植物及び/または木材の繊維を、少なくとも部分的に含むことができる繊維の乾燥した融合物であることができる。当然のことながら、他の成分を紙及び/または板紙の原紙の組成物中に含んでもよい。
【0070】
紙塗工用組成物は、多くの様々な塗工技術を用いて原紙に適用され得る。これらの技術の例には、ロッド、溝付きロッド、カーテン塗工、スティッフブレード、アプリケータロール、ファウンテン、ジェット、ショートドウェル、スロットダイ、ベントブレード、ベベルブレード、エアーナイフ、バー、グラビア、サイズプレス(常用のまたはメータリング)、スプレー塗布技術、ウェットスタック(wet stack)、及び/またはカレンダー加工プロセス中の塗布が含まれる。他の塗工技術も可能である。
【0071】
一実施態様において、紙塗工用組成物の1以上の層が、ロッド及び/またはスティッフブレード塗工技術を用いて、原紙の少なくとも一面に適用される。一実施態様において、一面あたりの全乾燥塗工質量は約0.5〜約20g/m2であり、さらなる実施態様では、約4〜約10g/m2である。一実施態様において、塗工層を原紙の両面に適用して、印刷シートの両面上の印刷像が同等の品質を有することを確保することができる。一実施態様において、紙塗工用組成物を単一層として原紙に適用することができる。
【0072】
次いで、紙塗工用組成物の層を乾燥する。紙塗工用組成物の乾燥は、対流、伝導、放射、及び/またはそれらの組み合わせによって達成され得る。
【0073】
さらに、塗工紙はまた、原紙及び本開示の塗工層の間にベースコートを含むことができる。本明細書に用いられるとき、「ベースコート」とは、本開示の紙塗工用組成物の下に位置することができ、結合剤を含むことができる、着色または無着色のベースコートをいう。ベースコートが着色されたものであるとき、顔料は、カオリン、タルク、焼成クレー、構造クレー、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミニウム三水和物、サテンホワイト、中空ポリマー顔料、固体ポリマー顔料、シリカ、酸化亜鉛、硫酸バリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。ベースコートの顔料成分は単分散または多分散の粒子径分布を有することができる。
【0074】
ベースコート層は、紙塗工用組成物を適用するよりも前に、原紙に適用される。ベースコート層は、本明細書に記載されるような紙塗工用組成物の場合と同様の態様で適用され、1以上の層で適用され得る。
【0075】
次いで、紙塗工用組成物のその塗工層を有する原紙をカレンダー加工することができる。本明細書で用いられるとき、「カレンダー加工」とは、複数のロールを用いて1以上のニップを通して塗工紙を加工する、幅広い範囲の様々な操作をいう。そのようなオンまたはオフマシンカレンダー加工プロセスの例には、制限されるものではないが、シングルニップカレンダー、高温/ソフトカレンダー、マルチニップカレンダー、エクステンデッドニップカレンダー、及びスーパーカレンダープロセスが含まれる。カレンダーのロールは様々な材料で作られ得る。例えば、ロールを、ポリマーの被覆及び/または綿の被覆を有する金属(例えば、スチール)で形成することができ、様々なロールがそれぞれ、異なった直径及び任意の被覆を有することができる。
【0076】
明らかなように、塗工紙へのカレンダー加工プロセスの効果は、ロール表面の温度、運転速度、ロールの弾性特性、及びロール間の線形負荷等によって決まる。一実施態様において、カレンダー加工プロセスの線形負荷の範囲は約35〜約525kN/mの範囲であることができ、動作ロール温度は約20℃〜約300℃の範囲であることができる。さらなる実施多様において、動作ロールの温度は、約90℃〜約150℃であることができる(すなわち、カレンダー加工プロセスのロールに熱が加えられない場合)。
【0077】
様々な実施態様について、原紙上の紙塗工用組成物の層をカレンダー加工することは、1.65PPS−H5(パーカープリントサーフ5)よりも小さい塗工層の平滑度を提供することができる。さらに、塗工紙は、75°の反射角度にて測定される65以上のTAPPI光沢値をさらに示すことができる。様々な実施態様について、この平滑度及び高光沢を有する塗工紙は、カレンダー加工装置に実質的に熱を加えずに動作するカレンダーの熱ロールを用いて作られ得る。驚くべきことに、このレベルの平滑度及び光沢度は、仮にあったとしても最小限に塗工紙の原紙を圧密(すなわち永久変形)しつつ、このカレンダーの動作温度にて達成される。
【0078】
様々な実施態様について、塗工紙の高光沢度、良好な平滑度、改良された曲げこわさ、及びかさ(bulk)の組み合わせが、原紙に対する本開示の塗工紙組成物の圧縮特性によって達成される。高水準のまたは部分的な中空ポリマー顔料は、紙塗工用組成物が塗工される原紙に比べて紙塗工用組成物を高度に圧縮することを可能とする。
【0079】
理論に束縛はされないが、紙塗工用組成物の高度な圧縮特性の少なくとも1つの理由は、中空ポリマー顔料の圧縮が、硬い非圧縮性顔料(例えば炭酸カルシウム)の比較的大きな量によってほとんど抑制されないこと、であると考えられる。そのため、カレンダー加工プロセスの際に、原紙の初期厚み(Z方向)を最小限に変えながら(すなわち、ほとんど圧密せずまたは全く圧密しない)、紙塗工用組成物が永久変形され得る。本明細書で用いられるとき、「Z方向」なる用語は、測定される塗工紙についての一部分(例えば原紙の厚み)の厚み寸法(すなわち3次元のうちの最も小さい寸法)をいう。
【0080】
これは、原紙からの塑性応答を許容しながら(例えば、圧密及び変形せずに圧縮が起こる弾性応答は永久的ではない)、カレンダー加工プロセスの圧縮力によって、塗工用組成物から形成される塗工層を永久変形させる。そのため、カレンダー加工プロセスの際に、紙塗工用組成物から形成される塗工層を永久変形することができ、一方で、カレンダー加工プロセスの際に、仮にあったとしても原紙を最小限に圧密する(すなわち永久変形)。結果として、カレンダー加工プロセスから所望の紙の表面特性(例えば、光沢度及び平滑度)をさらに達成しつつ、原紙の強度特性を本質的に保つことができる。
【0081】
紙塗工用組成物から形成される塗工層が、原紙に比べて非常に高度に圧縮されるため、所望の塗工紙の特徴(例えば、平滑度、曲げこわさ係数、かさばり係数、光沢度等)を達成する上で、カレンダー加工プロセスの動作条件(例えば、ニップ圧力、カレンダー動作温度、カレンダーの種類、カレンダー加工速度、ロール硬さ)に、より大きな自由度がある。さらに、斑点形成しにくいものであるべき塗工紙を作りながら、またはバニシ仕上げしながら、且つ良好な印刷強度及び良好なインクセッティング性能を示す塗工紙を作りつつ、これらの所望の塗工紙の特徴を達成することができる。
【0082】
塗工紙をカレンダー加工プロセスに通すことは、紙塗工用組成物から形成された塗工層を圧縮して、初期の塗工厚みに対して少なくとも20%、原紙上の塗工厚みを減少するということが分かった。驚くべきことに、塗工厚みの減少は塗工用組成物のZ方向にわたって均一である。すなわち、このレベルの圧縮(すなわち、少なくとも20%)は、塗工用組成物のZ方向内の位置の関係なく見られ得る。この均一な圧縮が得られる少なくとも1つの理由は、塗工用組成物中のそれらの水準や位置に関係なく変形される塗工用組成物の中空ポリマー顔料が原因となり得る。
【0083】
さらに、カレンダー加工プロセス中に塗工厚みを少なくとも20%減少する際に、中空ポリマー顔料の少なくとも50%が変形される。すなわち、中空ポリマー顔料の少なくとも50%が、カレンダー加工プロセスの前のそれらの非変形状態に比べてカレンダー加工プロセスの際に変形される。塗工層の厚みにわたって均一に圧縮されるので、このように、塗工層のZ方向にわたって、中空ポリマー顔料の少なくとも50%の変形が均一に(例えば、均一に分散されて)起こる。本明細書で用いられるとき、「変形」とは、カレンダー加工プロセスによる中空ポリマー顔料の初期形状(すなわちカレンダー加工前のそれらの形状)を変えることをいう。
【0084】
本明細書で述べるように、原紙の初期厚み(Z方向)を最小限に変えながら(すなわち、ほとんど圧密せずまたは全く圧密せずに)、原紙上の紙塗工用組成物から形成された塗工層の圧縮を、達成することができる。例えば、本明細書で述べるように、塗工層を適用される前の原紙の初期厚みと比べて塗工紙の原紙の厚みの変化を約10%以下にしつつ、カレンダー加工プロセスは塗工厚みを変更する。本明細書で述べるように、カレンダー加工プロセスが、塗工厚みを変更させながら、塗工層を適用される前の原紙の初期厚みと比べて塗工紙の原紙の厚みを本質的に変化させないようにする(すなわち、原紙の初期厚みを維持する)ことも可能である。
【0085】
図1A〜1Dは、本開示の紙塗工用組成物から形成された塗工層の均一圧縮性を表す走査型電子顕微鏡(SEM)像を提供する。塗工層及び原紙の厚みを、IMAGEJソフトウェアを用いてSEM像から得た。図1A及び1Bは、カレンダー加工されてない状態の、プレコートされた原紙上への本開示の一実施態様による紙塗工用組成物から形成された塗工層の像を提供する(それぞれ異なる倍率で撮影)。示されるように、紙塗工用組成物100は原紙104上に塗工される。
【0086】
Beloit Wheeler Model 753 Laboratory Calenderを用いて、66℃の温度、140kN/mのカレンダー圧力で、3つのニップにシートを通してカレンダー加工することによって、カレンダー加工された紙塗工用組成物の厚みにわたって、塗工用組成物の中空ポリマー顔料が均一に変形された。図1C及び1Dの像に示されるように(それぞれ異なる倍率で撮影)、カレンダー加工プロセス中に中空ポリマー顔料の少なくとも50%が変形して、紙塗工用組成物の厚みが、塗工層の初期厚みと比べて少なくとも20%均一に減少した。さらに、原紙104の初期厚み(Z方向)が、ほとんど圧密しなかった。
【0087】
塗工用組成物から形成されカレンダー加工された塗工層部分が、紙塗工用組成物の他の領域と比較して中空ポリマー顔料がほとんど変形しなかった無機顔料の周辺の領域を表す(すなわち、像の不規則な形状の白い部分)。これはおそらく、硬い無機顔料が、カレンダー加工プロセスの圧縮力から中空ポリマー顔料を保護したためである。
【0088】
カレンダー加工プロセスで形成される平滑度及び高光沢度に加えて、塗工紙はまた、少なくもと約0.5ガーレー((PPS−S10)g/m2))の曲げこわさ係数を示すことができる。さらに、対照と比較して、本開示の塗工紙の曲げこわさが少なくとも25%、改良されることが分かった。本明細書で用いられるとき、曲げこわさ係数は紙の曲げこわさに関係し、塗工紙の平滑度及び原紙の坪量の乗積によって塗工紙の複合曲げこわさ値を割ることから計算される。本明細書で用いられるとき、複合曲げこわさ値は、式:
【数1】

にしたがって、塗工紙の順目の曲げこわさ及び逆目の曲げこわさから決定される。
【0089】
本明細書で用いられるように、順目は、抄紙機のストックの流れの方向に対応する紙シートまたはウェブ(web)の面内の方向である。繊維は主に順目に配向する傾向がある。逆目は、順目に直角方向の紙シートまたはウェブの面内の方向である。
【0090】
塗工紙はまた、式:
【数2】

のように、塗工紙の全質量の関数として表すことができる、少なくとも約1mm(g/m2)のかさばり係数を有する。
【0091】
本明細書に用いられるように、「かさばり係数」は、カレンダー加工強度パラメータの指標であり、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,254,725号明細書に述べられている。様々な実施態様について、坪量を紙の単位面積あたりの質量(g/m2)として表すことができる。
【0092】
本開示の塗工紙は、様々な印刷用途に用いられ得る。これらの印刷用途には、限定されるものではないが、低粗さ及び均一な表面構造が印刷結果に重要となる多色(例えば、4色)の印刷工程でしばしば印刷される、雑誌、ちらし、カタログ、本、及び包装のような高品質の製品が含まれ得る。さらに、本開示の塗工紙は、改良された印刷表面だけでなく、それらのプレカレンダー加工条件に対する曲げこわさも保持することができる。そのため、本開示の塗工紙は、これまでの最新技術において互いに全く正反対であった2つの特性である、原紙の曲げこわさを保持しながら同時に良好な印刷表面を保持することができる。
【0093】
本開示の実施態様は、次の実施例によって例示される。当然のことながら、特定の例、材料、量、及び手順は、本明細書に示すように本発明の範囲及び趣旨にしたがって広く解釈すべきである。
【実施例】
【0094】
次の例は、本開示の範囲を例示するために与えられ、限定するものではない。特に断りがなければ、全ての部分及び割合は質量に基づく。特に断りがなければ、全ての機器及び化学物質は商業的に入手可能である。
【0095】
試験方法
【0096】
体積メジアン径
中空ポリマー顔料の体積メジアン径を、流体力学クロマトグラフィーによって測定した。流体力学クロマトグラフィーを用いて体積メジアン径を測定する方法は、「Development and application of an integrated, high−speed, computerized hydrodynamic chromatograph」, Journal of Colloid and Interface Science, Vol.89, Issue I, September 1982, Pgs.94−106. Gerald R. McGowan and Martin A. Langhorst に示されている。
【0097】
紙の断面のSEM像
紙の正方形の試料を、紙のサンプルシートから切り出した。正方形の試料は、両側が約15.9mmであり、例えば紙の塗工していない端に沿うような、塗工物が存在し得る領域から離れた領域内で切り出した。正方形の試料を、1つのクリップに5つの試料まで保持することができる、S−shaped Struers Multiclip (Cold Mounting Accessories Brochure; item 40300027)に取り付けた。
【0098】
試料を、オスミウムの蒸気に一晩曝露することによって、染色した。(クリップに取り付けた)試料を、約0.5gの四酸化オスミウムの結晶とともに、1リットルの気密容器内に置いた。蒸気中のオスミウムが、ブタジエンのような材料中に存在する残基の二重結合と反応して、例えば電子線顕微鏡のような原子量に敏感な試験において、これらの領域を特定するために有益である効果的な染色をもたらす。
【0099】
染色した試料及びクリップを3.175cmのStruers Epoformの埋め込みカップ内に置き、次いでエポキシ内で真空埋め込みしたものを約24時間、硬化させた。硬化してすぐに、埋め込み試料を、Streurs Rotopol−V 及び Buehler Vibromat の2つの研磨機による一連の連続微細研磨で、金属組織学的に研磨した。
【0100】
研磨表面を、FEI Nova NanoSEM 600 走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する前に、約30Åの導電コーティング(炭素またはクロム)で被覆した。高い原子数の材料が低い原子数よりも多くの電子を散乱するように、像のコントラストが原子数に基づく後方散乱検出器を用いて像を取得した。これは、有機物及びオスミウム染色領域から無機フィラー(クレー、炭酸塩)を区別することを可能にする。電子線を3nmのスポットサイズ、10keVの加速電位で照射した。観察する対象物に応じて、様々な解像度にて像を取得し、さらなる精密調査用にTIFF像(tagged image file format)として保存した。
【0101】
米国国立衛生研究所にて書かれたパブリック・ドメイン・プログラムであるImageJソフトウェアで、像を加工した。比較的明るい塗工層についてしきい値を境に二値化すること、並びに二値化したピクセルを「黒」及び残りのピクセルを白に変換することによって、塗工層を分析用に分離した。塗工層の二値化表示が実際通りの塗工層の像に忠実になるように、二値化における誤差を、像の編集ツールを用いて手動で修正した。
【0102】
ドライピック
ピッキングは、印刷中の原紙の表面からの、塗工層、膜、または繊維の持ち上がりとして定義される。印字ホイールが紙試料に接触してインクを堆積する場合、次いで、インクを載せた印字ホイールが紙表面から外れるときに、その結果生じた負力が紙に加えられる。塗工紙のドライピック強度を、加速レートにて印刷試験器内で一片の塗工紙を印刷することからなる方法を用いて測定した。印字ホイールの加速速度及びインクのタックレートを調整して、特定の印刷条件にて塗工紙試料の強度を測定した。印字ホイール速度及びインクタックの組み合わせが非常に十分な場合、それによって得られる負力が、印字ホイール及び塗工紙試料の表面上の白色領域、塗工紙試料の表面上のブリスター及びテクスチャー領域、塗工紙試料の層剥離(表面層の剥がれ)、または原紙試料の破断(完全な強度破壊)として表れ得るピッキングを引き起こす。
【0103】
次いで、特定のタックレートのインクを用いて特定の印刷速度にて試験を行い、塗工紙試料上の、最初にインクを塗工した位置と、最初のピッキング位置との間の距離を測定することによって、塗工強度を評価した。塗工紙試料のドライピックを、15μmのWestvaco Wheel、Westvaco Applicator Rod、及びIGT Tack Rated Black Printing Inksを用いて、IGTPrintability Tester model A1C2−5 で測定した。
【0104】
紙の厚み、またはしばしば「キャリパー(caliper)」として呼ばれるものは、紙の基本特性であり、紙を製造及び販売するときに、しばしば特定される。本明細書で用いるとき、「キャリパー」は、特定の条件下の紙または板紙の2つの主面の間の垂直距離(すなわち、厚み)をいう。米国では、厚みの慣習的な単位を、1000分の1インチである「ポイント(point)」という。しかしながら、キャリパーはまた、ミリメートル(mm)でも定義され得る。
【0105】
TMIのマイクロメーター モデル49−70(Testing Machines, Inc., Ronkonkoma, NY)を、実施例部分で提供された紙試料のキャリパーを測定するために用いた。その機器は、ユニットを支える重く頑丈な枠からなり、厚み測定変換器及び関連電気回路を内蔵している。その機器はTAPPI T411の規格を満足している。キャリパー測定値はTAPPI T411に従って得られた。
【0106】
光沢度
紙の光沢度を、75°の入射角にてTechnidyneの光沢度計 モデル T 480Aを用いて測定した。光沢度は、それぞれの塗工紙試料を横切って一直線に5カ所のそれぞれにて(すわなち、左端、中央左側、中央、中央右側、右端)、2回測定の複合測定値を得るように、塗工紙上の複数位置を測定することによって、測定した。報告された光沢度の数は、平均10測定値であった。
【0107】
塗工質量の測定
塗工質量を、塗工紙試料を熱風炉で130〜140℃、10分間、乾燥した後、非塗工紙試料から塗工紙の質量を差し引くことによって測定した。検査試料を、原紙及びそれぞれの塗工層について100cm2の打ち抜き型を用いて12枚のシートから切り出した。報告された塗工質量の数は平均12試料であった。
【0108】
曲げこわさ
曲げこわさについて、ガーレー曲げこわさ試験器No.4171の使用方法にしたがって、ガーレー曲げこわさ試験機を用いて試験した。それぞれの試験を全6回繰り返した。
【0109】
平滑度
全ての平滑度の試験を、TAPPI試験方法T−555に記載されているような印刷表面測定装置を用いて行った。50%±2.0%の相対湿度且つ23℃±1.0℃の雰囲気で24時間、塗工紙を調整して、同じ雰囲気内で紙を試験した後、塗工紙の試料につき10以上のシートについて0.5及び1.0kgの荷重の両方で試験を行った。報告された平滑度の数は平均10測定値であった。
【0110】
配合剤
次の材料を、塗工用配合剤に用いた。
炭酸塩(A):水中の、60%の粒径が2μm未満の、乾燥した炭酸カルシウム(Omya、 Inc、 Proctor Vermont、 USA から入手可能なHydrocarb 60)。
炭酸塩(B):水中の、90%の粒径が2μm未満の、乾燥した炭酸カルシウム(Omya、 Inc、 Proctor Vermont、 USA から入手可能なHydrocarb 90)。
中空ポリマー顔料(A):ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なHS3020であって、水中に26%の固形分を有する。
中空ポリマー顔料(B):ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なUCARHIDE4001あって、水中に30.5%の固形分を有する。
中空ポリマー顔料(C):ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能な UCARHIDE 98であって、水中に37%の固形分を有する。
ラテックス(A): カルボキシル化されたスチレンブタジエンラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なCP 615NA)であって、水中に50%の固形分を有する。
ラテックス(B): カルボキシル化されたスチレンブタジエンラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なCP 692NA)であって、水中に50%の固形分を有する。
ラテックス(C): カルボキシル化されたスチレンブタジエンラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なCP 638NA)であって、水中に50%の固形分を有する。
ラテックス(D): カルボキシル化されたスチレンブタジエンラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なPB 6840)であって、水中に49%の固形分を有する。
ラテックス(E): カルボキシル化されたスチレンアクリレートラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なRAP 800NA)であって、水中に50%の固形分を有する。
ラテックス(F): カルボキシル化されたスチレンブタジエンラテックス(ダウ・ケミカル社、 Midland Michigan、 USA から入手可能なXU31398)。
クレー(A): US No.1 乾燥カオリンクレー(J.M. Huber Company、 Macon Georgia、 USA から入手可能なHydrofine)。
クレー(B): 水中の、90%の粒径が2μm未満の、US No.1 乾燥カオリンクレー(J.M. Huber Co.、 Macon Georgia、 USA から入手可能なHydrafine 90)。
クレー(C): 乾燥した焼成クレー(Engelhard Company、 Sandersville Georgia、 USA から入手可能なAnsilex 93)。
TiO2: 二酸化チタン−ルチル(デュポン社、 Wilmington Delaware から入手可能なTi−PURE RPS Vantage Slurry (固形分68〜71%))。
でんぷん: エチル化されたコーンスターチ(Penford Products Co、 Cedar Rapids IA から入手可能なPenford Gum PG290)。
【0111】
上記の材料を、第1表〜第5表に示した量で連続して混合して、原紙のシートを塗工するために用いる塗工用配合剤を得た。塗工用配合剤のpHは、全ての材料を混合した後、NaOH溶液(10質量%)を添加することによって8.5に調整した。配合剤の固形分を調整するために必要に応じて水を添加し、塗工用配合剤の使用前に、100μmのポリアミドフィルターでろ過した。
【0112】
原紙
特定の最終使用に好適な生成物を作る繊維からなる、フィラー及び他の添加剤を含むかまたは含まない紙を、本開示の実施態様について、原紙または板紙として、用いることができる。原紙は概して、紙を製造するために用いるパルプの種類及び坪量によって分類される。次の材料を実施例の原紙として用いた。
【0113】
原紙A: SAPPI Fine Papers、 Muskegon MI から入手可能な38ポンドの軽量の非塗工等級の原紙。
原紙B: Appleton Coated、 Combined Locks WI から入手可能な80ポンドのテキスト用の原紙。
原紙C: Appleton Coated、 Combined Locks WI から入手可能な100ポンドのテキスト用の原紙。
原紙D: Appleton Coated、 Combined Locks WI から入手可能な100ポンドのカバー用の原紙。
原紙E: Potlatch Corporation、Lewiston ID から入手可能なSBS 14ptの板紙。
原紙F:NewPage Corporation、 Miamisburg OH から入手可能なStoraEnsoの38ポンドの軽量の塗工等級の原紙。
【0114】
塗工手順
実験室スケールの塗工機(Enz Technick、 AG製の「実験用塗工機(Lab Coater)」)を、塗工用配合剤を紙に適用するために用いた。全ての試料を、ベントブレードアセンブリを有するブレードメータリングアプリケーションを用いて所望の塗工質量に塗工した。ブロッキングを避けるために赤外線乾燥器及びエアーフローテーション乾燥器の組み合わせによって、塗工層を乾燥した。別法では、パイロットスケールの塗工機(「パイロット塗工機(Pilot coater)」)を用いて、塗工用配合剤を紙に適用した。パイロット塗工機の装置は、塗工質量を測定するためのロッドを有するBELOIT − Short Dwell Head、または BELOIT − Pre−Metered Size Pressであった。塗工層を、赤外線乾燥器及びエアーフローテーション乾燥器の組み合わせによって乾燥した。
【0115】
カレンダー加工
塗工紙試料を、Beloit Wheeler Model 753 Laboratory Calender (「実験用カレンダー(Lab Calender)」)を用いてカレンダー加工した。それぞれのシートを、2つのロールの間をスチールに塗工面を対向させて、通過させた。カレンダー加工圧力及び温度を、第1表〜第5表に示した条件にしたがって設定した。それぞれのシートを全3つのニップを通してカレンダー加工した。パイロット塗工機で調製した試料を、第1表〜第5表に示した条件にしたがってVALMET − Super Calendarでカレンダー加工した。
【0116】
例1
【表1】

【0117】
対照1及び試料1によって、軽量の塗工紙に用いられる従来の配合剤に対して、本開示の塗工用組成物の一実施態様を比較した。第1表に示すように、試料1は4.7g/cm2の塗工質量を有し、一方で対照は8.6g/cm2の塗工質量を有した。しかしながら、試料1の塗工質量が約半分にもかかわらず、試料1の塗工剤組成で塗工された紙は、対照よりも大きい曲げこわさを有した。さらに、試料1の塗工剤組成の実施態様は、対照1よりも、低いカレンダー加工圧力にて、良好なピック強度、高光沢度、及び改良された平滑度を提供した。
【0118】
【表2】

【0119】
対照2及び試料2によって、同じカレンダー加工温度における対照の配合剤に対して、本開示の塗工用組成物の一実施態様を比較した。試料2の塗工用組成物から形成した紙は、カレンダー加工条件が一定のとき、対照2よりも改良された光沢度及び平滑度をもたらした。
【0120】
【表3】

【0121】
対照3及び試料4によって、塗工されたフリーペーパー用途用の本開示の塗工用組成物の一実施態様に対して、従来の塗工用配合剤を比較した。試料4は、塗工紙について大きな曲げこわさ値を維持しながら、同時に高光沢度及び平滑度を得る能力を示した。
【0122】
【表4】

【0123】
試料5及び試料6は、炭酸塩Aを含む配合剤を用いて塗工した紙が、炭酸塩Bを含む配合剤を用いて塗工した紙よりも、良好な光沢度、平滑度、及びピック強度をもたらすという、予期せぬ結果を示した。
【0124】
例2
第5表は、様々な配合剤を用いて塗工して、且つ様々な条件下でカレンダー加工した紙の結果を示す。原紙(E)については、パイロット塗工機及びスーパーカレンダーを使用して、原紙(A)については、実験用塗工機及び実験用カレンダーを使用して、塗工紙試料を調製した。
【0125】
【表5】

【表6】

【0126】
第5表から分かるように、配合剤が、塗工紙試料を作るために用いられる全顔料100質量部あたり25質量部より多い中空顔料を含むとき、曲げこわさ係数が改良された。さらに、調製したそれぞれの試料は、対照の塗工層と比較して、改良された平滑度の値を有した。
【0127】
例3
第6表は、中空ポリマー粒子の水準を増加させた場合の、様々な配合剤を用いて塗工した紙についての平滑度の値を示す。実験用塗工機、及び線インチあたり200ポンド(PLI)且つ150°F(65.55℃)における実験用カレンダーを用いて、配合剤を原紙B上に塗工した。
【0128】
【表7】

【0129】
第6表から分かるように、組成物中の中空ポリマー顔料の水準が増加するにつれて、中空ポリマー顔料を含む塗工用組成物を用いて塗工された紙の平滑度の値が増加する傾向、または平滑でなくなる傾向を示すようにみえた。しかしながら、組成物の全質量に基づいて、中空ポリマー顔料の水準が35質量部を超えて増加すると、平滑度の値は低減した。言い換えれば、組成物の全質量に基づいて、中空ポリマー顔料の水準が35質量部を超えて増加すると、塗工用組成物を用いて塗工された紙は、より良好な平滑度を有する。
【0130】
例4
例4は、対照5として示される軽量の塗工紙に用いられる従来の配合剤に対して、試料12〜15の2種の異なる大きさの中空ポリマー顔料の粒子を含む塗工用組成物を比較した。この調査は、第1のより大きなポリマー顔料と、様々な水準の第2のより小さいポリマー顔料を組み合わせることを含む。この例では、それぞれの試料を調製して、3種の異なるカレンダー加工圧力にて試験した。それゆえ、対照5は、200PLI、600PLI、及び1000PLIのカレンダー加工圧力における特性(例えば、光沢度)の測定値を有した。さらに、2種の異なる大きさの中空ポリマー顔料の粒子を含む塗工用組成物を、より大きなポリマー顔料/より小さいポリマー顔料の比率が、25/75、50/50、及び75/25である群にグループ分けした。次いで、それぞれの試料をまた、3種の異なる圧力にてカレンダー加工した。第7表は、配合剤、及び試料の試験条件を示す。第8表は、それぞれの試料について得られた、シート光沢度及び平滑度の値を示す。
【0131】
【表8】

【0132】
【表9】

【0133】
第8表に示すように、塗工用組成物への2種の異なる大きさの中空ポリマー顔料の粒子の添加は、塗工層の所望の特性を向上することができる。例えば、光沢度を向上させつつ粗さを低減することができた。しかしながら、塗工用組成物への2種の異なる大きさの中空ポリマー粒子の添加は、第2のより小さい中空ポリマー顔料の粒子を増加するように添加したとき、特性について線形の増加または減少をもたらさなかった。例えば、600のカレンダー加工圧力にて、粗さは、100/0の組成物の場合の0.56から、50/50の組成物の場合の0.63に、最後に75/25の組成物の場合の0.60に変化した。
【0134】
例5
例5では、試料16及び17によって、多い方及び少ない方の中空ポリマー顔料の間で粒子径に違いがある場合の、2種の中空ポリマー顔料系(全顔料100質量部あたり、33.75質量部の多い方の中空ポリマー顔料、11.25質量部の少ない方の中空ポリマー顔料)を用いた塗工用組成物を比較した。塗工は、実験用塗工機を用いて行い、実験用カレンダーを用いてカレンダー加工した。第9表は、組成物及び試料の調製、並びに最終の塗工紙試料についての平滑度及び光沢度の結果を示す。
【0135】
【表10】

【0136】
第9表から分かるように、多い方の中空ポリマー顔料の成分、中空ポリマー顔料(A)及び(C)、それぞれの粒子径の変化が、15ポイント低い光沢度を有しながら同等の平滑度となる予期せぬ結果を達成した。さらに、この結果は、同じ配合剤及びカレンダー加工条件を用いて達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗工紙または塗工板紙であって:
第1の主面と、該第1の主面の反対側の第2の主面とを有する原紙;
該第1及び該第2の主面の少なくとも一面上への塗工層であって、
結合剤と、
全顔料100質量部あたり約25質量部〜約65質量部の中空ポリマー顔料及び該顔料100質量部の残部である他の顔料と、
を有する塗工用配合剤から形成された塗工層;並びに
1.65PPS−H5よりも小さい該塗工層の平滑度、
を有する、塗工紙または塗工板紙。
【請求項2】
該塗工層の平滑度と該原紙の坪量との乗積によって複合曲げこわさを割ることから計算される少なくとも約0.5ガーレー((PPS−S10(g/cm2))の曲げこわさ係数を有する、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項3】
少なくとも約1mm(g/m2)のかさばり係数を有する、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項4】
該中空ポリマー顔料が、全顔料100質量部あたり約30質量部〜約50質量部の範囲の量を有する、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項5】
該塗工層の非変形中空ポリマー顔料に比べて、該中空ポリマー顔料の少なくとも50%が変形している、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項6】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、実質的に変化がない厚みを有する、請求項5に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項7】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、約10%以下の変化した厚みを有する、請求項5に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項8】
該塗工層の該中空ポリマー顔料が、複数の不連続の中空ポリマー顔料の塊を形成し、該塊のそれぞれが、流体力学クロマトグラフィーによって測定される約1マイクロメートルよりも大きい体積メジアン径を有する、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項9】
該原紙及び該塗工層の間にベースコートをさらに含む、請求項1に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項10】
塗工紙または塗工板紙を製造する方法であって:
結合剤と、
全顔料100質量部あたり約25質量部〜約65質量部の中空ポリマー顔料及び該顔料100質量部の残部である他の顔料と、
を含む塗工用組成物を用いて、原紙の少なくとも一面を塗工すること;並びに
該原紙上の該塗工用組成物をカレンダー加工して、1.65PPS−H5よりも小さい該原紙の該塗工層の平滑度を形成すること、
を有する、塗工紙または塗工板紙の製造方法。
【請求項11】
該原紙が、原紙上に塗工厚みを形成し、且つ該原紙上の該塗工用組成物をカレンダー加工装置に通すことが、該塗工用組成物を圧縮して、少なくとも20%、該塗工厚みを減少することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該塗工用組成物を圧縮することが、該塗工厚みにわたって、該塗工用組成物を均一に圧縮することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該原紙が、該原紙上に該塗工用組成物を加工する前の初期厚みを有し、
該原紙上の該塗工用組成物を該カレンダー加工装置に通すことが、該原紙の該初期厚みと比べて、約10%以下の変化した厚みに、該初期厚みを圧縮することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
該原紙が、該原紙上の該塗工用組成物を加工する前の初期厚みを有し、
該原紙上の該塗工用組成物を該カレンダー加工装置に通すことが、該原紙の該初期厚みを維持することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
該原紙上の該塗工用組成物を加工することが、該中空ポリマー顔料の少なくとも50%を変形することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
該塗工用組成物を用いて該原紙の少なくとも一面を塗工することが、約0.5〜約20g/m2の塗工質量で該塗工用組成物の単一層を適用することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該原紙上の該塗工用組成物をカレンダー加工することが、少なくとも約0.5ガーレー((PPS−S10)(g/m2))の曲げこわさ係数を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
該原紙上の該塗工用組成物をカレンダー加工することが、少なくとも約1mm(g/m2)のかさばり係数を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
結合剤;
流体力学クロマトグラフィーによって測定される、第1の所定値の体積メジアン径を有する第1の中空ポリマー顔料;及び
流体力学クロマトグラフィーによって測定される、該第1の所定値よりも少なくとも25%小さい第2の所定値の体積メジアン径を有する第2の中空ポリマー顔料、
を含む、紙塗工用組成物。
【請求項20】
全中空ポリマー顔料100質量部あたり、少なくとも約9質量部〜約30質量部の第2の中空ポリマー顔料を含む、請求項19に記載の紙塗工用組成物。
【請求項21】
該第2の中空ポリマー顔料の該体積メジアン径が、該第1の中空ポリマー顔料の該体積メジアン径よりも少なくとも50%小さい、請求項19に記載の紙塗工用組成物。
【請求項22】
該第1の中空ポリマー顔料及び該第2の中空ポリマー顔料の該体積メジアン径が、約300ナノメートル〜約1100ナノメートルの範囲にある、請求項19に記載の紙塗工用組成物。
【請求項23】
該第1の中空ポリマー顔料及び該第2の中空ポリマー顔料が、約20質量部〜約30質量部の中空粒子を提供する、請求項19に記載の紙塗工用組成物。
【請求項24】
該第1の中空ポリマー顔料及び該第2の中空ポリマー顔料が、該塗工用組成物で形成された塗工厚みを通じて延在する一連の接触した中空ポリマー顔料を達成することができる、請求項23に記載の紙塗工用組成物。
【請求項25】
該第1の中空ポリマー顔料が約40〜約60%の空隙容量を有する、請求項19に記載の紙塗工用組成物。
【請求項26】
請求項19に記載の紙塗工用組成物から形成された塗工層を有する紙または板紙。
【請求項27】
塗工紙または塗工板紙であって:
第1の主面と、該第1の主面の反対側の第2の主面とを有する原紙;並びに
該第1及び該第2の主面の少なくとも一面上への塗工層であって、
結合剤と、
流体力学クロマトグラフィーによって測定される、第1の所定値の体積メジアン径を有する第1の中空ポリマー顔料と、
流体力学クロマトグラフィーによって測定される、該第1の所定値よりも少なくとも25%小さい第2の所定値の体積メジアン径を有する第2の中空ポリマー顔料と、
を有する、塗工用配合剤から形成された塗工層、
を有する、塗工紙または塗工板紙。
【請求項28】
該第1及び該第2の主面の少なくとも一面上への該塗工層が、該紙塗工用組成物の全固形分100質量部あたり約30質量部未満の該第1の中空ポリマー顔料及び該第2の中空ポリマー顔料を含む、請求項27に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項29】
該第1及び該第2の主面の少なくとも一面上への該塗工層が、約1.65PPS−H5より小さい平滑度を有する、請求項27に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項30】
該塗工層が、全中空顔料100質量部あたり約15質量部〜約30質量部の該第2の中空ポリマー顔料を含む、請求項27に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項31】
該塗工層の非変形中空ポリマー顔料に比べて、該全中空顔料の少なくとも50%が変形している、請求項30に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項32】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、実質的に変化がない厚みを有する、請求項31に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項33】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、約10%以下の変化した厚みを有する、請求項31に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項34】
第1の次元量を備えた個別粒子を有する第1の中空ポリマー顔料を選択すること;
該第1の中空ポリマー顔料の該第1の次元量に基づいて、第2の次元量を備えた個別粒子を有する第2の中空ポリマー顔料を選択すること;
該第1の中空ポリマー顔料と該第2の中空ポリマー顔料とを混合すること;及び
結合剤を、該第1の中空ポリマー顔料及び該第2の中空ポリマー顔料と混合すること、
を含む、紙塗工用組成物を形成する方法。
【請求項35】
第2の中空ポリマー顔料を選択することが、該第1の中空ポリマー顔料の該第1の次元量よりも少なくとも25%小さい該第2の次元量を備えた個別粒子を有する該第2の中空ポリマー顔料を選択することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第2の中空ポリマー顔料を選択することが、該第1の中空ポリマー顔料の該第1の次元量よりも少なくとも50%小さい該第2の次元量を備えた個別粒子を有する該第2の中空ポリマー顔料を選択することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
該第1の中空ポリマー顔料と該第2の中空ポリマー顔料とを混合することが、該紙塗工用組成物の全中空ポリマー顔料100質量部あたり約15質量部〜約30質量部にて、該第2の中空ポリマー顔料を混合することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
該第2の中空ポリマー顔料の該選択に基づいて、該紙塗工用組成物で形成される塗工層の特性を調整することを含む、請求項34に記載の方法であって、
塗工層の該特性が平滑度、光沢度、不透明度、空隙率、及びそれらの組み合わせの群から選択される、
方法。
【請求項39】
該第1の中空ポリマー顔料と該第2の中空ポリマー顔料とを混合することが、該紙塗工用組成物の顔料100質量部あたり約30質量部未満の顔料を提供する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
該塗工厚みを通じて延在する一連の接触した中空ポリマー粒子を達成することができる該粒子の充填を可能にする、該塗工用組成物中の該第2の中空ポリマー顔料に対する該第1の中空ポリマー顔料の比率を決定することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
第1の中空ポリマー顔料を選択することが、該塗工用組成物で形成される塗工層の所定の平滑度及び光沢度を達成し;
第2の中空ポリマー顔料を選択することが、該塗工層の該平滑度及び光沢度を維持しながら、該紙塗工用組成物で形成される該塗工層の不透明度を改良する、
請求項34に記載の方法。
【請求項42】
塗工紙または塗工板紙であって:
第1の主面と、該第1の主面の反対側の第2の主面とを有する原紙;
該第1及び該第2の主面の少なくとも一面上への塗工層であって、
結合剤と、
全顔料100質量部あたり約25質量部〜約65質量部の中空ポリマー顔料及び該顔料100質量部の残部である他の顔料と、
を有する、塗工用配合剤から形成された塗工層;並びに
1.2PPS−H10よりも小さい該塗工層の平滑度、
を有する、塗工紙または塗工板紙。
【請求項43】
該中空ポリマー顔料が、全顔料100質量部あたり約30質量部〜約50質量部の範囲の量を有する、請求項42に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項44】
該塗工層の非変形中空ポリマー顔料に比べて、該中空ポリマー顔料の少なくとも50%が変形している、請求項42に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項45】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、実質的に変化がない厚みを有する、請求項44に記載の塗工紙または塗工板紙。
【請求項46】
該塗工層を適用される前の該原紙の初期厚みと比べて、該塗工紙の該原紙が、約10%以下の変化した厚みを有する、請求項44に記載の塗工紙または塗工板紙。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2010−530482(P2010−530482A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513182(P2010−513182)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/005038
【国際公開番号】WO2008/156519
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】