説明

紙塗工用組成物

【課題】従来公知の紙塗工用組成物に比べ優れた多糖類の溶出を抑制効果を有し、湿潤紙力増強効果、およびサイズ効果の優れる紙塗工用組成物を付与し、しかも、塗工組成物の粘度が安定な紙塗工用組成物を提供する。
【解決手段】水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)を含むことを特徴とする紙塗工用組成物であり、好ましくは水分散性ポリイソシアネート組成物(A)が、疎水性ポリイソシアネート(a)をノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(b)で分散した水分散性ポリイソシアネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原紙に塗工することで多糖類の溶出を抑制し、湿潤紙力増強効果、およびサイズ効果の優れる紙塗工用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(I)イオン基および/またはポリエーテル基を有するポリイソシアネート(PI)と、 (II)多糖類から成る群の天然に存在するポリマー(NP)、 (III)ポリシロキサングラフトコポリマー(SP 1)、 (IV)水希釈可能合成ポリマー(SP 2)および (V)ヒドロキシル基を有するカチオンポリマー(SP 3)、から成る群の少なくとも一員を含むか、或は (I)上と同じポリイソシアネート(PI)と、 (II)上と同じ天然に存在するポリマー(NP)と、各場合とも上と同じ(III)、(IV)および(V)から成る群の少なくとも一員を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの組成物として記載されているものは広範におよび具体的な実施例などにおいては、未だ不十分なものであり、さらなる改良が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特表平10−500159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来に比べ多糖類の溶出を抑制し、湿潤紙力増強効果、およびサイズ効果が優れる紙塗工用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)を含むことを特徴とする紙塗工用組成物を原紙に塗工することで、多糖類の溶出を抑制し、湿潤紙力増強効果、およびサイズ効果の優れる紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)を含むことを特徴とする紙塗工用組成物、
(2)水分散性ポリイソシアネート組成物(A)が、疎水性ポリイソシアネート(a)をノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(b)で分散した水分散性ポリイソシアネート組成物である前記(1)紙塗工用組成物、
(3)カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)が、カチオン性モノマーとスチレン類及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種の疎水性モノマーを共重合することにより得られる共重合物及び当該共重合物に4級化剤を反応させたものである前記(1)又は(2)の紙塗工用組成物、
(4)多糖類(C)が澱粉類である前記(1)〜(3)のいずれかの紙塗工用組成物
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙塗工用組成物は、従来公知の紙塗工用組成物に比べ優れた多糖類の溶出を抑制し、湿潤紙力増強効果、およびサイズ効果を付与することができる紙塗工用組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)について説明する。本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)は、ポリオキシアルキレン基に代表されるノニオン性親水性基により変性された疎水性ポリイソシアネート、若しくは前記ノニオン性親水性基を含む化合物と疎水性ポリイソシアネートとを含むものである。好ましくは、疎水性ポリイソシアネート(a)とノニオン性親水性基及びイソシアネート基を含有するビニル系重合体(b)とを含むものである。また、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)において、該ノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(b)は、該疎水性ポリイソシアネート(a)を水性媒体中に分散する能力を有する。水分散性ポリイソシアネート組成物(A)には、上記のポリイソシアネート以外に水を含有し、それ以外に有機溶剤、乳化剤などを含有していてもよい。
【0009】
本発明において疎水性ポリイソシアネート(a)とは、分子中に公知慣用の各種のアニオン性基、カチオン性基及びノニオン性基等の親水性基を有しないポリイソシアネートである。疎水性ポリイソシアネート(a)としては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエートなどの脂肪族トリイソシアネート;1,3−または1,4−ビス(イソシアナートメチルシクロヘキサン)、1,3−または1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、3,5,5−トリメチル(3−イソシアナートメチル)シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,5−または2,6−ジイソシアナートメチルノルボルナンなどの脂環族ジイソシアネート;2,5−または2,6−ジイソシアナートメチル−2−イソシネートプロピルノルボルナンなどの脂環族トリイソシアネート;m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートなどのアラルキレンジイソシアネート;m−またはp−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−または2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナート−3,3’−ジメチルジフェニル、3−メチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)チオホスフェートなどの芳香族トリイソシアネート;上記各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基どうしを環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するジイソシアネートあるいはポリイソシアネート;上記各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートのイソシアネート基同士を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート;上記各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネート;上記各種のジイソシアネートあるいはトリイソシアネートを二酸化炭素と反応せしめて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;アロファネート構造を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
【0010】
そして、これらの中では、水分散性ポリイソシアネート組成物(A)を含有する紙塗工用組成物の効果、水分散後及びパルプスラリー添加後の湿潤紙力効果の安定性の点で脂肪族系あるいは脂環族系のジイソシアネートまたはトリイソシアネート、アラルキレンジイソシアネートあるいは、それらから誘導されるポリイソシアネートが好ましい。これらのポリイソシアネートのうち、湿潤紙力効果に優れた組成物を得るためには、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット構造を有するポリイソシアネート、ウレトジオン構造を有するポリイソシアネート、アロファネート構造を有するポリイソシアネート、ジイソシアネートと3価以上の多価アルコールを反応して得られるポリイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。なお、疎水性ポリイソシアネート(a)に加えて、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)の水に対する安定性を損なわない範囲内で、親水性基を有するポリイソシアネートを併用することができる。
【0011】
上記疎水性ポリイソシアネート(a)の市販品としては、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型ポリイソシアネートである「バーノックDN−980S」〔大日本インキ化学工業(株)製〕などを挙げることができる。
【0012】
本発明に好適に使用されるノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(b)[以下、ビニル系重合体(b)という]の代表的なものとしては、ノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有する、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体またはポリオレフィン系重合体などが挙げられる。
【0013】
ビニル系重合体(b)に導入されるノニオン性親水性基としては、公知慣用の各種のものがあるが、好ましいものとしては、末端がアルコキシ基、置換アルコキシ基、エステル基、もしくはカーバメート基などの官能基で封鎖されたポリオキシアルキレン基である。その代表的なものとしては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基またはポリオキシブチレン基などの各種ポリオキシアルキレン基等に加え、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基などの前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合されたもの、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基などの相異なるポリオキシアルキレン基がブロック状に結合したもの、ジオキソラン環の開環重合によって得られるポリオキシアルキレン基等が挙げられる。そして、これらのポリオキシアルキレン基の中で好ましいものは、オキシエチレン単位を必須の構成単位として含有するものである。
【0014】
前記した末端を封鎖するために使用される基の中で好ましいものは、アルコキシ基、または置換アルコキシ基であり、特に好ましいものはアルコキシ基である。アルコキシ基の代表的なものとしては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等などの低級アルコキシ基が挙げられる。
【0015】
かかるポリオキシアルキレン基の数平均分子量は、ポリイソシアネート組成物の水分散性、および当該組成物を含む紙塗工用組成物を用いたときの効果の点から、好ましくは、130〜10,000なる範囲内、より好ましくは、150〜6,000なる範囲内、最も好ましくは、200〜2,000なる範囲内である。
【0016】
ビニル系重合体(b)に導入される好適なノニオン性親水性基の量は、疎水性ポリイソシアネート(a)を容易に水に分散せしめ、且つ、本発明のポリイソシアネート組成物を水に分散して得られる分散液を紙塗工用組成物として使用した場合の効果の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、ビニル系重合体(b)重量の8〜80重量%であり、より好ましい量は、12〜65重量%であり、最も好ましい量は、15〜55重量%である。
【0017】
ビニル系重合体(b)に導入されるイソシアネート基としては、公知慣用の各種のものがあるが、その代表的なものとしては、アルキル基に結合したイソシアネート基、シクロアルキル基に結合したイソシアネート基、アリール基に結合したイソシアネート基、シクロアルキル基が置換したアルキル基に結合したイソシアネート基、アリール基が置換したアルキル基に結合したイソシアネート基等が挙げられる。
【0018】
ビニル系重合体(b)に導入される好適なイソシアネート基の量は、ビニル系重合体(b)が、パルプ中の活性水素と反応して架橋に関与することが可能であり、且つ、本発明の紙塗工用組成物の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、ビニル系重合体(b)の1000g当たり、0.05〜6モル、好ましくは、0.1〜5.0モル、さらに好ましくは、0.2〜4.0モルである。
【0019】
本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)において、ビニル系重合体(b)は疎水性ポリイソシアネート(a)を水に分散する能力を有する。従って、ビニル系重合体(b)は、本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイソシアネート組成物に優れた水への分散性を付与する機能を有する。また、ビニル系重合体(b)は、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性を付与する。さらに、ビニル系重合体(b)は、イソシアネート基をも有することから、ポリイソシアネート組成物からなる本発明の紙塗工用組成物は優れた効果を有する。
【0020】
また、ビニル系重合体(b)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入すると、本発明のポリイソシアネート組成物にいっそう優れた水への分散性を付与するとともに、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性をいっそう向上させ、さらには疎水性基及びカチオン性基を有するカチオン性ポリマー(B)との相互作用が向上できるという点で好ましい。
【0021】
ビニル系重合体(b)に導入される総炭素原子数が4個以上の疎水性基としては、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基もしくはn−オクタデシル基などの炭素原子数が4以上のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジシクロペンタニル基、ボルニル基、イソボルニル基などの炭素原子数が4以上のシクロアルキル基;シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル基が置換したアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基もしくは1−ナフチル基などの総炭素原子数が6以上のアリール基もしくは置換アリール基;さらにはベンジル基もしくは2−フェニルエチル基などのアラルキル基等が挙げられる。
【0022】
上記各種の総炭素原子数が4個以上の疎水性基のなかで、好ましいものは総炭素原子数が4〜22のものであり、そして特に好ましいものは総炭素原子数が5〜18のものである。そしてかかる疎水性基の中でも特に好ましいものは、アルキル基、シクロアルキル基もしくはシクロアルキル基が置換したアルキル基である。
【0023】
ビニル系重合体(b)に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入する場合、その好適な導入量としては、ビニル系重合体(b)中の、疎水性基の重量割合が1〜45重量%であり、より好ましくは、5〜30重量%である。
【0024】
ビニル系重合体(b)の重量平均分子量は、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の紙塗工用組成物の効果の観点から、好ましくは5,000〜200,000で、さらに好ましくは8,000〜70,000である。
【0025】
ビニル系重合体(b)を調製するには、例えば、疎水性ポリイソシアネート(a)と、予め調製したノニオン性親水性基及びイソシアネート基と反応する活性水素含有基を含有するビニル系重合体とを反応させる方法を適用できる。
【0026】
上記方法は、疎水性ポリイソシアネート(a)とノニオン性親水性基及びイソシアネート基と反応する活性水素含有基を有するビニル重合体[以下、活性水素基含有ビニル系重合体という]とを、活性水素基含有基に対してイソシアネート基が過剰となるモル比率で反応させることを特徴とするものである。上記方法において、疎水性ポリイソシアネートとしては上記のような疎水性ポリイソシアネート(a)と同様のものを使用することができる。そして、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)の水に対する安定性を損なわない範囲の量の親水性基を有するポリイソシアネートを併用することもできる。
【0027】
上記方法において、イソシアネート基/活性水素含有基なる比率が約1.5〜3程度のモル比となるように、疎水性ポリイソシアネート(a)と活性水素基含有ビニル系重合体を反応させた場合、反応混合物は、主成分としてビニル系重合体(b)を含有し、少量成分として未反応の疎水性ポリイソシアネートを含有する。このようにして調製される反応混合物と疎水性ポリイソシアネート(a)を混合することにより、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)が得られる。
【0028】
上記方法において、イソシアネート基/活性水素含有基なる比率が3〜350程度のモル比となるように、疎水性ポリイソシアネートと活性水素基含有ビニル重合体を反応させると、より多くの未反応の疎水性ポリイソシアネート(a)とビニル系重合体(b)を含有する反応混合物、即ち、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)が、一段階で調製される。以下に、かかる一段階の反応により本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)を製造する方法について説明する。
【0029】
疎水性ポリイソシアネート(a)と活性水素基含有ビニル重合体から、水分散性ポリイソシアネート組成物(A)を調製するに当たり、イソシアネート基/活性水素含有基のモル比は3〜350なる範囲で両成分を反応させる必要がある。そして、このモル比の範囲のうち、得られる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)の水分散性と当該組成物を含有する紙塗工用組成物の効果の観点から、5〜300なる範囲が好ましく、10〜250なる範囲がより好ましく、15〜100なる範囲が最も好ましい。
【0030】
疎水性ポリイソシアネート(a)と活性水素基含有ビニル重合体とを反応させるには、両成分を一括仕込みして反応させる、疎水性ポリイソシアネート(a)に活性水素基含有ビニル重合体の溶液を添加しながら反応させる、活性水素基含有ビニル重合体の溶液に疎水性ポリイソシアネート(a)を添加しながら反応させる等の各種の方法を適用できる。
【0031】
そして、かかる両成分の反応を行うに当たり、両成分の混合物を、不活性ガス雰囲気下に、約10〜50℃程度の比較的低い温度に長時間保持、長時間攪拌してもよいが、50〜130℃程度の温度で0.5〜20時間程度加熱・攪拌せしめるのが好ましい。また、かかる反応を行うに当たって、イソシアネート基と活性水素含有基の反応を促進する公知慣用の各種の触媒を添加してもよい。
【0032】
また、活性水素基含有ビニル重合体を調製する際に、溶剤の一部あるいは溶剤の全量に代えて疎水性ポリイソシアネート(a)を使用して、活性水素基含有ビニル重合体の調製と、活性水素基含有ビニル重合体と疎水性ポリイソシアネート(a)の反応を並行して進行せしめることにより、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)を調製することもできる。
【0033】
上記のようにして調製された水分散性ポリイソシアネート組成物(A)に、更に、疎水性ポリイソシアネート(a)を添加して得られる混合物もまた、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)として使用することができる。
【0034】
以下に、上記方法によりビニル系重合体(b)又は本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)を調製する際に使用される活性水素基含有ビニル重合体について詳しく説明する。
【0035】
活性水素基含有ビニル重合体に導入されるイソシアネート基と反応する活性水素含有基としては、公知慣用の各種のものが挙げられ、その代表的なものとしては、水酸基、カルボキシル基、燐酸基、亜燐酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、メルカプト基、シラノール基、活性メチレン基、カーバメート基、ウレイド基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基等が挙げられる。これらの中でも、導入のし易さの点で、水酸基、アミノ基、カルボキシル基および活性メチレン基が好ましく、特に好ましいものは水酸基およびカルボキシル基である。これらの各種の活性水素含有基は、それぞれが単独で導入されていてもよいし、二種類以上が導入されていてもよい。
【0036】
上記の活性水素含有基をビニル重合体に導入するには、公知慣用の各種の方法を適用できるが、上記のような活性水素含有基を有するビニル系単量体を共重合せしめることにより導入するのが簡便である。
【0037】
活性水素基含有ビニル重合体を調製する際に使用される、水酸基を含有する単量体の代表的なものとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、ブチル(2−ヒドロキシメチル)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノ(2−ヒドロキシプロピル)−モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルエステル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのような水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を含有するポリオキシアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート類;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルなどの水酸基を含有するアリル化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基を含有するビニルエーテル化合物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールクロトン酸アミドなどの水酸基を有する不飽和カルボン酸アミド化合物;リシノール酸等の水酸基含有不飽和脂肪酸類;リシノール酸アルキル等の水酸基含有不飽和脂肪酸エステル類;上記の各種水酸基含有単量体をε−カプロラクトンと付加反応せしめて得られる単量体が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0038】
活性水素含有基としてカルボキシル基を有する単量体の代表的なものとしては、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ヘキサヒドロフタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ソルビン酸などの不飽和モノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独もしくは、二種以上用いても良い。
【0039】
活性水素含有基としてアミノ基を有する単量体の代表的なものは、2−(N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−n−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−エチルアミノ)エチルクロトネート、2−(N−ブチルアミノ)エチルクロトネートなどの二級アミノ基含有ビニル系単量体が挙げられる。これらは単独もしくは、二種以上用いても良い。
【0040】
活性水素含有基として活性メチレン基を有する単量体の代表的なものは、ビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、4−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピルメタクリレートが挙げられる。これらは単独もしくは、二種以上用いても良い。
【0041】
活性水素基含有ビニル重合体に導入される活性水素含有基は、本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイソシアネート組成物の水分散性および当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性の観点から、活性水素基含有ビニル重合体の1000g当たり、0.01〜5モル、好ましくは、0.05〜3モル、最も好ましくは、0.1〜2モルである。
【0042】
ノニオン性親水性基を活性水素基含有ビニル重合体に導入するには、末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン基を含有するビニル系単量体を共重合する、予め調製した官能基を含有するビニル系重合体と、当該官能基と反応する官能基を有する末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオキシアルキレン化合物を反応させる等の方法を適用できる。前者の方法が簡便で好ましい。
【0043】
活性水素基含有ビニル重合体を調製する際に使用されるポリオキシアルキレン基を含有するビニル系単量体の代表的なものとしては、それぞれ、上記のような各種のポリオキシアルキレン基を有する、(メタ)アクリル酸エステル系、クロトン酸エステル系、イタコン酸エステル系、フマル酸エステル系あるいはビニルエーテル系などの各種の単量体が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の代表的なものとしては、モノメトキシ化ポリエチレングリコール、モノメトキシ化ポリプロピレングリコールもしくはオキシエチレン単位と、オキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオールのモノメトキシ化物などの各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0045】
活性水素基含有ビニル重合体に導入されるノニオン性親水性基の量は、当該活性水素基含有ビニル重合体と疎水性ポリイソシアネート(a)とを反応させて得られる本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイソシアネート組成物を容易に水に分散せしめ、かつ当該組成物を水に分散して得られる分散液に含有されるイソシアネート基の安定性を損なわない範囲の量でよい。そして、その好ましい量としては、活性水素基含有ビニル重合体の重量の10〜90重量%であり、より好ましい量は、15〜70重量%であり、最も好ましい量は、20〜60重量%である。
【0046】
活性水素基含有ビニル重合体に、総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入することにより、上記のように本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイソシアネート組成物に水へのより優れる分散性を付与し、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性をいっそう向上させ、さらにはカチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)との相互作用が向上させることができる。
【0047】
活性水素基含有ビニル重合体に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入するには、かかる基を有するビニル系単量体を共重合せしめればよい。上記のような総炭素原子数が4個以上の疎水性基を有するビニル系単量体の代表的なものとしては、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどの総炭素原子数が4〜22であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;シクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートなどの各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの各種の芳香族ビニル系単量体類;ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニルなどの総炭素原子数が5以上のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸−n−ブチル、クロトン酸−2−エチルヘキシルなどの炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;ジ−n−ブチルマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−n−ブチルイタコネートなどの炭素原子数が4〜22のアルキル基を少なくとも1つ有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;n−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテルなどの炭素原子数が4〜22のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルなどの各種のシクロアルキルビニルエーテル類等が挙げられる。
【0048】
活性水素基含有ビニル重合体に総炭素原子数が4個以上の疎水性基を導入する場合、その好適な導入量は、本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイシシアネート組成物の水分散性および当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の安定性の観点から、活性水素基含有ビニル重合体に含有される疎水性基の重量割合として1〜50重量%であり、好ましくは、5〜30重量%である。
【0049】
また、活性水素基含有ビニル重合体の調製に際し、上記のような各種の単量体に加えて、これらと共重合可能な他の公知慣用の単量体を併用することができる。その代表的なものとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートなどの炭素原子数が3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどの各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの総炭素原子数が4以下のカルボン酸のビニルエステル類;クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチルなどの炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のクロトン酸エステル類;ジメチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネートなどの炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種の不飽和二塩基酸ジエステル類;(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリルなどの各種のシアノ基含有ビニル系単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンなどの各種のクロル化オレフィン類;エチレンもしくはプロピレンなどの各種のα−オレフィン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルなどの炭素原子数が3以下のアルキル基を有する各種のアルキルビニルエーテル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジンもしくはN−ビニルピロリドンなどの3級アミド基含有ビニル系単量体類等が挙げられる。
【0050】
上記の活性水素基含有ビニル重合体を調製する場合の重合方法に制約はなく、公知慣用の種々の重合法を適用できる。それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法が、簡便であり好ましい。
【0051】
溶液ラジカル重合法を適用する際の重合開始剤としては、公知慣用の種々の化合物が使用できる。代表的なものとしては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの各種のアゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートなどの各種の過酸化物類等が挙げられる。
【0052】
また、有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な化合物であれば、いずれをも使用することが出来る。かかる溶媒として使用される化合物の代表的なものとしては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノンなどの各種ケトン類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネート等が挙げられる。そして、かかる化合物はそれぞれを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記各種の化合物を有機溶剤として使用するに当たって、含水率の高いものを使用すると本発明のポリイソシアネート組成物(A)の安定性等に悪影響を及ぼすので可能な限り含水率の低いものを使用することが好ましい。また、含水率が比較的高いものを使用した場合には、重合終了後に溶剤の一部分を留去する共沸脱水法等により脱水を行って含水率を下げればよい。
【0054】
上記のようにして調製される活性水素基含有ビニル重合体の重量平均分子量は、本発明の紙塗工用組成物に含まれるポリイソシアネート組成物の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の紙塗工用組成物の効果の観点から、3,000〜100,000の範囲であることが好ましく、5,000〜40,000の範囲であることがより好ましい。
【0055】
ビニル系重合体(b)の調製に際し、有機溶剤の一部またはすべてを疎水性ポリイソシアネート(a)に置き換えて、有機溶剤と疎水性ポリイソシアネート(a)の混合物あるいは疎水性ポリイソシアネート(a)を溶媒として使用することが可能である。
【0056】
ビニル系重合体(b)と疎水性ポリイソシアネート(a)を混合する条件としては特に制限はないが、概ね、室温から150℃の範囲、好ましくは室温から100℃なる範囲の温度で混合すればよい。
【0057】
本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)中の疎水性ポリイソシアネート(a)とビニル系重合体(b)の比率は、特に制限されないが、本発明の水分散性ポリイソシアネート組成物(A)の水への分散性、当該組成物の水分散液に含有されるイソシアネート基の水に対する安定性、本発明の紙塗工用組成物の効果の観点から、重量比率で、疎水性ポリイソシアネート(a)/ビニル系重合体(b)=30/70〜85/15が好ましく、50/50〜80/20がより好ましく、60/40〜80/20が最も好ましい。
【0058】
次に、本発明で使用されるカチオン性ポリマー並びにカチオン性基及び疎水性基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種であるカチオン性基を有するカチオン性ポリマー(B)について説明する。本発明でいうカチオン性ポリマーとは、ポリマー全体としてカチオン性を示すようにカチオン性基を有し、かつ、ポリマー全体としてカチオン性を示すポリマーであれば他の官能基を有していてもよい。本発明でいうカチオン性基及び疎水性基を有する化合物とは、少なくともカチオン性基を有し、かつ、疎水性基を有する化合物であれば他の官能基を有していてもよい。
【0059】
上記カチオン性基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基および/または3級アミノ基を有する化合物、並びに当該化合物に4級化剤を反応させた4級アンモニウム基などを挙げることがある。
【0060】
上記疎水性基としては、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基もしくはn−オクタデシル基などの炭素原子数が4以上のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジシクロペンタニル基、ボルニル基、イソボルニル基などの炭素原子数が4以上のシクロアルキル基;シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル基が置換したアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基もしくは1−ナフチル基などの総炭素原子数が6以上のアリール基もしくは置換アリール基;さらにはベンジル基もしくは2−フェニルエチル基などのアラルキル基等が挙げられる。
【0061】
上記疎水性基の中で、好ましいものは総炭素原子数が4〜22のものであり、特に好ましいものは総炭素原子数が5〜18のものである。疎水性基の中でも特に好ましいものは、アルキル基、フェニル基である。
【0062】
本発明に使用されるカチオン性基を有するカチオン性ポリマー(B)は、ヒドロキシル基やニトロ基等が含まれていても良い。また、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基またはポリオキシブチレン基等の各種ポリオキシアルキレン単位が含まれていても良い。
【0063】
カチオン性基を有するカチオン性ポリマー(B)は、疎水性基を有することが、本発明の紙塗工用組成物に含まれる水分散性ポリイソシアネート組成物(A)のパルプスラリーへの定着性をより一層向上させ、湿潤紙力を向上させる点で好ましい。
【0064】
カチオン性ポリマーとしては、具体的には、少なくともカチオン性モノマーを重合されることやアミド化合物などの重縮合物にカチオン性官能基を有するポリマーを挙げることができる。
【0065】
上記カチオン性モノマーとしては、(メタ)アリルアミン、N−ビニルホルムアミドの加水分解物等の1級アミノ基を有するモノマー、ジ(メタ)アリルアミン等の2級アミノ基を有するモノマー、(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノアルキル又はジアルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、及びメチルジアリルアミン等の3級アミノ基を有するモノマー、並びにトリメチルアミノエチルメタクリレート、トリメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のベンジルクロライド4級化物等の4級アンモニウム塩の構造を有するカチオン性モノマーを挙げることができ、これらの一種又は二種以上を混合して使用できる。この中でも、(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、又はモノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0066】
カチオン性ポリマーに用いるカチオン性モノマー以外のその他のモノマーとしては、疎水性モノマー、ノニオン性モノマー、アニオン性モノマーなどを用いることができ、カチオン性モノマーのみの使用よりも疎水性モノマーを併用することが好ましく、疎水性モノマーを併用した場合には、カチオン性基及び疎水性基を有する化合物ということもできる。なお、アニオン性モノマーはポリマー全体としてカチオン性が維持できる範囲で用いることができる。
【0067】
疎水性モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、αメチルスチレンダイマー、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、及びフマル酸のジアルキルジエステル類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにメチルビニルエーテル等が挙げられ、これらのモノマーの一種を単独で使用することができ、又は二種以上を混合して使用することができる。中でもスチレン類及びアルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0068】
ノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0069】
アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。
【0070】
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマーを重合した後に4級化剤を用いて4級化することもできる。4級化剤としては、エピクロロヒドリン、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシアンモニウムクロライド等の有機ハロゲン化物、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、並びにスチレンオキシド等のオキシド類、ジメチル硫酸、並びにジエチル硫酸等が挙げられる。中でも、エピクロロヒドリン、及びブチレンオキシドが好ましい。
【0071】
上記カチオン性ポリマーは、例えば前記疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの混合物、疎水性モノマーとカチオン性モノマーとその他の共重合可能なビニルモノマーとの混合物を、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等の低級アルコール系有機溶剤あるいはベンゼン、トルエン及びキシレン等の油性有機溶剤中にて、又はこれらの低級アルコール系有機溶剤と水との混合液中にて、さらには水中において、ラジカル重合触媒を使用して60〜120℃で1〜10時間重合させ、重合終了後に、必要に応じて有機溶剤を留去することにより得られる。当該共重合物に4級化剤を反応させる場合、公知慣用の方法で3級アミノ基を上記4級化剤で4級化することにより得られる。
【0072】
ラジカル重合触媒としては、水溶性ラジカル開始剤が使用でき、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素等の過酸化物、これらの過硫酸塩及び過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系重合触媒、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等の水溶性アゾ系触媒、並びにターシャリーブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物を挙げることができる。さらに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、及びジメチル2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)等の油溶性アゾ系触媒、並びにベンジルパーオキシド等の油溶性有機過酸化物を使用できる。又、必要に応じてアルキルメルカプタン等の公知の連鎖移動剤を適宜に併用しても差し支えない。
【0073】
前記カチオン性ポリマーにおいて、好ましい態様である疎水性モノマーを用いる場合の疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの構成比は、モル比で、疎水性モノマー/カチオン性モノマーが40〜80/60〜20であるのが製造時の安定性及び水分散性ポリイソシアネートの定着向上性の点で好ましく、さらに50〜70/50〜30であるのがより好ましい。また、当該共重合物を4級化する場合に、使用する4級化剤の量は特に限定されるものではないが、上記共重合物におけるカチオン性モノマーと4級化剤とのモル比が100/60〜100であることが、得られたカチオン性ポリマーの安定性の面で好ましい。
【0074】
上記カチオン性ポリマーとしては、ポリアミド化合物などの重縮合物であってカチオン性官能基を有するポリマーを挙げることができ、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の二塩基酸及び/又はパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸とを重縮合させたアミノ基を有するポリアミド化合物を挙げることができ、また、アミノ基を有するポリアミド化合物にエピクロロヒドリンを付加させ、カチオン性を高めた変性物を挙げることができる。
【0075】
カチオン性基を有するカチオン性ポリマー(B)であって上記カチオン性ポリマー以外のものとしては、ラウリルアミン、セチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン等の1級アミン類、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジパルミチルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベヘニルアミン等の2級アミン類、ジメチルラウリルアミン、ジメチルセチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジメチルベヘニルアミン等のジメチルアルキルアミン類、及びメチルジラウリルアミン、メチルジセチルアミン、メチルジパルミチルアミン、メチルジステアリルアミン、メチルジオレイルアミン、メチルジベヘニルアミン等のメチルジアルキルアミン類、ポリアルキレンオキシジアルキルアミン類、ビス(ポリアルキレンオキシ)アルキルアミン類等の3級アミン類、トリメチルモノラウリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノセチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノパルミチルアンモニウムクロライド、トリメチルモノステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルモノオレイルアンモニウムクロライド、トリメチルモノベヘニルアンモニウムクロライド等のトリメチルアルキルアンモニウムクロライド類、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド、ジメチルジセチルアンモニウムクロライド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロライド、ジメチルジベヘニルアンモニウムクロライド等のジメチルジアルキルアンモニウム類、ポリアルキレンオキシメチルジアルキルアンモニウムクロライド類、ビス(ポリアルキレンオキシ)メチルアルキルアンモニウムクロライド類、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリンエチル硫酸塩、1−ヒドロキシエチル−1−メチル−2−オレイルイミダゾリンクロライド、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−ラウリルイミダゾリンエチル硫酸塩等の4級アンモニウム類が挙げられる。この中でも、トリメチルアルキルアンモニウムクロライド類、ジメチルジアルキルアンモニウムクロライド類が好ましい。
【0076】
本発明の多糖類(C)とは、単糖分子がグリコシド結合によって多数重合した糖であればよい。具体的には、澱粉類、セルロース類、キチン、キトサン、カラギーナン、ヒアルロン酸、ヘパリンなどを挙げることができる。この中でも澱粉類が好ましい。
【0077】
澱粉類としては、コーン、ポテト、タピオカ、米、及び小麦粉等をベースにした加工澱粉を単独又は二種以上使用することができる。加工方法としては、様々な方法で製造したものを用いることができるが、通常は次亜塩素酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウム等の酸化剤により変性した酸化澱粉、酵素を用いて処理した酵素変性澱粉、3−クロロー2−ヒドロキシプロピルジメチルアミン等の3級化剤、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級化剤により変性したカチオン化澱粉、カルボキシメチル澱粉、及びヒドロキシメチル澱粉等のエーテル化澱粉、エステル化澱粉、並びに酸性基とカチオン性基を両方有する両性澱粉等を単独又は二種以上使用できる。これらのうち、酸化澱粉、カチオン化澱粉が好ましい。
【0078】
水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)の使用比は、通常0.01〜50/0.01〜50/100であり、好ましくは0.5〜10/0.5〜10/100である。
【0079】
本発明の紙塗工用組成物の粘度は、100mPa・s以下であることが塗工適性の面で好ましく、さらに50mPa・s以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明の紙塗工用組成物の使用方法としては、水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)を含む紙塗工用組成物を原紙にサイズプレス、ゲートロールコーター等を用いて表面塗工あるいは含浸加工する方法などが用いられる。
【0081】
本発明の紙塗工用組成物は、水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)以外に、必要に応じて、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアルコール類、アルカリ物質、防滑剤、離型剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、撥水剤等を用いることができる。
【0082】
本発明の紙塗工用組成物は、通常0.001〜5g/m、好ましくは0.1〜3g/mを原紙に塗工することができる。
【0083】
本発明の紙塗工用組成物を塗工する原紙の製造にあたっては、硫酸アルミニウムを用いる酸性系、または、硫酸アルミニウムを全く用いないかあるいは少量用いる中性系のいずれのパイプスラリーを用いても良い。また、パルプスラリーに対して、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルもしくはアルキルコハク酸無水物系サイズ剤などを添加しても良い。また、他に、パルプスラリーにサイズ定着剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、消泡剤、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の充填剤、pH調整剤、染料、蛍光増白剤等を適宜含有せしめてもよい。また、製造される原紙は、通常、坪量が10〜400g/m程度である。
【0084】
本発明の紙塗工用組成物を塗工する原紙としては、コート原紙、ライナー、コートボール原紙、白板、ワンプ、難燃原紙、葉書用紙、ラベル用紙、印刷筆記用紙、フォーム用紙、PPC用紙、インクジェット記録用紙、感熱紙、及び感圧紙の酸性又は中性抄紙した各種の紙が使用できる。この中でもラベル用紙、印刷筆記用紙に用いることが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて重量%である。
【0086】
疎水性ポリイソシアネート(A−1)
ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する)系イソシアヌレート型ポリイソシアネートである「バーノックDN−980S」〔大日本インキ化学工業(株)製のイソシアネート基含有率(以下NCO基含有率と略称する)21%、平均NCO官能基数が約3.6、不揮発分100%〕を用いた。
【0087】
参考例1〔ビニル系重合体(b)の調製〕
攪拌機、温度計、冷却管、窒素導入管を備えた4つ口のフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル(以下EDEと略称する)429部を仕込み、窒素気流下に110℃に昇温した後、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートである「ブレンマーPME−400」〔日油(株)製、1分子当たりオキシエチレン単位を平均9個含有〕500部、メチルメタクリレート(以下、MMAと略称する)300部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、2−HEMAと略称する)50部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、CHMAと略称する)150部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート45部、t−ブチルパーオキシベンゾエート5部からなる混合液を5時間かけて滴下した。滴下後、110℃にて9時間反応せしめ、不揮発分が70%なるアクリル系重合体の溶液を得た。以下、これをビニル系重合体(b−1)と略称する。
【0088】
〔カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(CP−1)の調製〕
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、スチレン100部、ジメチルアミノエチルメタクリレート100部、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製 V601、アゾ系触媒)4部及びイソプロピルアルコール50部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いで「V601」を0.5部仕込みさらに同温度で2時間保持した。次いで酢酸43部を加えた後、水500部を加えエマルションを得てから、更に昇温してイソプロピルアルコールの留去を行った。次いで、水100部を加えてエピクロロヒドリン59部を加え、80℃で4時間反応させ、水130部を加えて固形分25.0%の共重合物を得た。得られた共重合物[CP−1]は(スチレン:ジメチルアミノエチルメタクリレート):エピクロロヒドリン=(60:40):40(モル%)であった。
【0089】
〔カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(CP−2)の調製〕
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、スチレン50部、n−ブチルアクリレート80部、ジメチルアミノエチルメタクリレート75部、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製 V601、アゾ系触媒)4部及びイソプロピルアルコール50部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いで「V601」を0.5部仕込みさらに同温度で2時間保持した。次いで酢酸32部を加えた後、水500部を加えエマルションを得てから、更に昇温してイソプロピルアルコールの留去を行った。次いで、水100部を加えてエピクロロヒドリン44部を加え、80℃で4時間反応させ、水100部を加えて固形分25.2%の共重合物を得た。得られた共重合物[CP−2]は(スチレン:n−ブチルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート):エピクロロヒドリン=(30:40:30):30(モル%)であった。
【0090】
〔カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(CP−3)の調製〕
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、スチレン50部、2−エチルヘキシルアルキレート50部、ジメチルアミノエチルメタクリレート100部、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製 V601、アゾ系触媒)3部及びイソプロピルアルコール50部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いで「V601」を0.5部仕込みさらに同温度で2時間保持した。次いで酢酸43部を加えた後、水480部を加えエマルションを得てから、更に昇温してイソプロピルアルコールの留去を行った。次いで、水100部を加えて1,2−ブチレンオキシド46部を加え、60℃で4時間反応させ、水110部を加えて固形分25.5%の共重合物を得た。得られた共重合物[CP−3]は(スチレン:2−エチルヘキシルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート):1,2−ブチレンオキシド=(35:20:45):45(モル%)であった。
【0091】
〔カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(CP−4)の調製〕
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアルキレート150部、ジメチルアミノエチルメタクリレート70部、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製 V601、アゾ系触媒)3部及びイソプロピルアルコール50部を仕込み、80℃で3時間保持し、次いで「V601」を0.5部仕込みさらに同温度で2時間保持した。次いで酢酸30部を加えた後、水500部を加えエマルションを得てから、更に昇温してイソプロピルアルコールの留去を行った。次いで、水100部を加えて1,2−ブチレンオキシド32部を加え、60℃で4時間反応させ、水120部を加えて固形分25.4%の共重合物を得た。得られた共重合物[CP−4]は(2−エチルヘキシルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート):1,2−ブチレンオキシド=(65:35):35(モル%)であった。
【0092】
〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1)200部とビニル系重合体(b−1)100部を仕込み、窒素気流下に90℃に昇温した後、同温度で6時間攪拌下に反応を行って、不揮発分が90%、NCO基含有率が13%なる水分散性ポリイソシアネート組成物を得た。以下、これを水分散性ポリイソシアネート組成物(P−1)と略称する。
【0093】
〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−2)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1)100部を仕込み、室温で攪拌しながらメトキシポリエチレングリコールである「ユニオックスM−400」〔日油(株)製、平均分子量400〕14.3部を仕込み、30分かけて100℃に昇温した後、100℃にて3時間反応させた。室温に冷却後、不揮発分が100%、NCO基含有率が17.2%なるメトキシポリエチレングリコールで変性された疎水性でないポリイソシアネートを得た。以下、これを水分散性ポリイソシアネート組成物(P−2)と略称する。
【0094】
〔水分散性ポリイソシアネート組成物(P−3)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、疎水性ポリイソシアネート(A−1)100部を仕込み、室温で攪拌しながらメトキシポリエチレングリコールである「ユニオックスM−400」〔日油(株)製、平均分子量400〕14.3部を仕込み、30分かけて100℃に昇温した後、100℃にて3時間反応させた。30℃に冷却後、ジブチル錫(II)ジラウレート0.6部を仕込み、さらにジエチルアミノエタノール10.8部を30分間かけて仕込んだ。この混合物を40℃に加熱し、40℃にて12時間反応させた。冷却後、不揮発分が100%、NCO含有率が12.5%なる、メトキシポリエチレングリコールおよびジエチルアミノエタノールで変性された疎水性でないカチオン性のポリイソシアネートを得た。以下、これを水分散性ポリイソシアネート組成物(P−3)と略称する。
【0095】
〔ヒドロキシ基を有するカチオン性エマルション(CE−1)の調製〕
参考例1と同様の反応器に、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライドである「アーカード16−29」〔ライオンアクゾ(株)製〕41gと水436gを仕込み、窒素気流下に70℃に昇温した後、アクリロニトリル82.5g、アクリル酸n−ブチル82.5g、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンである「ファインサーフTDE−105」〔青木油脂工業(株)製〕5.4g、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルである「ブラウノンEL1509.5」〔青木油脂工業(株)製〕0.6gの混合物、並びに水120gで希釈した35%過酸化水素4gを同時に2時間かけて滴下添加した。滴下終了1時間後に水10gで希釈した35%過酸化水素1gを滴下し、さらに3時間攪拌し、冷却後、濾過し、固形分25.9%の炭黄色エマルションを得た。以下、これをヒドロキシル基を有するカチオン性エマルション(CE−1)と呼称する。
【0096】
〔比較例用疎水性基を含まないカチオン性ポリマー1〕
ポリビニルアミン樹脂である「Catiofast VFH」〔BASFジャパン(株)製、有効分12.5%〕。
【0097】
〔比較例用疎水性基を含まないカチオン性ポリマー2〕
ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド樹脂である「AC7304」〔星光PMC(株)製、固形分25%〕
【0098】
〔比較例用疎水性基を含まないカチオン性ポリマー3〕
ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂である「WS4020」〔星光PMC(株)製、固形分25%〕
【0099】
(試験例)
(1)記録紙用中性原紙の抄造
400mlカナディアン・スタンダード・フリーネスにまで叩解したパルプ(広葉樹対針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.4%のスラリーとし、これに対してパルプ1%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製;TP121S)と5%のタルク(富士タルク工業(株)製;NDタルク)とを添加した。
【0100】
次いで、対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の硫酸バンド、対パルプ0.8%(絶乾重量基準)の両性デンプン(ナショナルスターチ社製; Cato3210)及び対パルプ0.15%(絶乾重量基準)の中性紙用ロジンサイズ剤(星光PMC(株)製; CC1404)を順次に添加した後、pH7.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、希釈したパルプスラリーに対パルプ4%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製; TP121S)、対パルプ0.01%(絶乾重量基準)の歩留り向上剤(ハイモ社製; NR12MLS)を添加し、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量65g/mとなるように抄紙した。尚、このときの抄紙pHは7.5であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
【0101】
(2)塗工液の調製方法
酸化澱粉(MS3800、日本食品化工(株)製)を濃度12.5%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、前記酸化澱粉と、ポリイソシアネート組成物、及びカチオンポリマーを、酸化澱粉の固形分濃度が10%になり、前記ポリイソシアネート組成物の固形分濃度が0.5%になり、前記カチオンポリマーの固形分濃度が0.25%になるように配合した。
【0102】
(3)塗工紙の調製方法
前記(1)で抄造した塗工用原紙に、前記(2)で配合した塗工液をサイズプレスで塗工し、記録紙を得た。得られた試験紙を恒温恒湿(20℃、65%相対湿度) 環境下で24時間調湿した。
【0103】
(4)塗工紙の評価
前記(3)で得られた試験紙の澱粉溶出率、湿潤時の紙力強度(JIS−P−8113)、ステキヒトサイズ度(JIS−P−8122に準拠)の測定を行った。評価結果を表に示す。尚、湿潤時の紙力強度及びステキヒトサイズ度は、値が高いほど良好であることを示す。
(5)澱粉溶出率の測定
2.5cm×30cmの長方形状に切ったサンプル紙をアダムス・ウェット・ラブ計で30回水中を回転させ、澱粉を溶出させた。水中に溶け出た澱粉量を紙中の澱粉量に対する百分率で示した。値が低い程、溶出が少ないことを示す。
【0104】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性ポリイソシアネート組成物(A)、カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)、並びに多糖類(C)を含むことを特徴とする紙塗工用組成物。
【請求項2】
水分散性ポリイソシアネート組成物(A)が、疎水性ポリイソシアネート(a)をノニオン性親水性基及びイソシアネート基を有するビニル系重合体(b)で分散した水分散性ポリイソシアネート組成物であることを特徴とする請求項1に記載の紙塗工用組成物。
【請求項3】
カチオン性基及び疎水性基を有するカチオン性ポリマー(B)が、カチオン性モノマーとスチレン類及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも1種の疎水性モノマーを共重合することにより得られる共重合物及び当該共重合物に4級化剤を反応させたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙塗工用組成物。
【請求項4】
多糖類(C)が澱粉類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紙塗工用組成物。

【公開番号】特開2010−111960(P2010−111960A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284251(P2008−284251)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】