説明

紙容器

【課題】ゲーベルトップ型もしくはフラットトップ型等の紙容器に関し、溶着されて貼り合わされた部分に印字した文字等を確認する時に印字部分が明確に確認できる紙容器を提供する。
【解決手段】少なくともオレフィン系樹脂層と紙基材層とオレフィン系樹脂層がこの順に積層された積層体により形成される紙容器において、該紙容器の形成後に外観上は見えない部分に印字されている紙容器であって、該部分の少なくとも一部に剥離性ニスが塗布され、該剥離性ニスが塗布された部分の少なくとも一部に印字されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュース、牛乳等の飲料、シャンプーや洗剤等の液体物、または農薬や香辛料等の顆粒物を入れる紙容器に関する。具体的には、ゲーベルトップ型またはフラットトップ型のような紙容器の内側に折込まれた部分に、剥離性ニスを塗布し、そこに印字がされていることを特徴とする紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース、牛乳等の飲料、シャンプーおよび液体洗剤等の液体物、または農薬や香辛料等の顆粒物を入れる紙容器において、販売促進の目的で審美性、意匠性の優れたデザインを施した紙容器が多数流通している。さらに、種々の規制、法律により、消費者や使用者に対し、中身の商品に関する情報を容器の外側に記載する必要がある。このような表示はただ文字を記載しているだけであり、商品の購買意欲を促進するための容器のデザインとは必ずしも調和しない。
特に、消費者や使用者が必要としない情報、たとえば製造者もしくは販売者がその製品を管理するための番号や記号のうち、必ずしも容器の表面に記載する必要がないものも存在する。このような情報は、容器の内側に印刷する方法も考えられるが、容器の内容物に影響を及ぼす可能性もあり、衛生上問題となる場合がある。また、内容物を充填後、製造番号等を確認しようとすると、内容物をわざわざ廃棄する等の手間がかかる。
そこで、本願発明者らは、紙容器の成形後に外観上見えなくなる部分に、製造者や販売者のみが必要とする情報を印字された紙容器を発案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上記のような紙容器には少なくともオレフィン系樹脂層と紙基材層とオレフィン系樹脂層がこの順に積層された積層体を使用する。このような積層体を加熱してオレフィン系樹脂を溶着して貼り合わせることで紙容器に成形する。成形したときに外観上は見えなくなる部分、つまり容器成形時に貼り合わされた部分に印字した場合、この印字を見る為には紙容器の貼り合わせた部分を剥がす必要がある。
【0004】
この時にオレフィン系の樹脂どうしが強く貼り合わされていると、貼り合わされた部分を剥がした際に紙基材の部分まで剥がれてしまい、印字部分が十分に確認できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者らは鋭意検討し、紙容器の外観上見えない部分の印字部分に剥離性ニスを施すことで、印字部分を確認するために紙容器の貼り合せ部分を剥がしても、剥離性ニスが塗布されている部分は、印字部分が十分確認できる程度に剥れることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明による紙容器では、外側に表示する必要がないが製造者や販売者にとって必要である印字を、通常の紙容器の外観を損なうことなく印字することができ、意匠性および審美性に優れる紙容器を提供することができる。
さらに、この紙容器をリサイクルする場合に、「リサイクルにご協力お願いします」等の記載を紙容器の外観上見えない部分に印字して、紙容器のリサイクルを消費者および使用者に喚起することもできる。
この他、本発明の紙容器を用いた商品が、製造者の意図しない流通経路で販売された場合に、外観上認識できない部分に印字された情報に基づき、転売元等を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の紙容器について、具体的実施形態に基づき詳細に説明する。
本願発明の紙容器は、少なくともオレフィン系樹脂と紙基材層とオレフィン系樹脂層とがこの順に積層した積層体を基材として用いる。紙基材としては、コートボール、マニラボール等の板紙、カード紙、アイボリー紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、クラフト紙、上質紙等の公知の紙基材を使用することができる。
本発明の紙容器に詰める内容物の種類に依存するが、紙容器に使用する坪量は一般に100g/m〜500g/mである。
【0008】
上記紙基材の両面に、ポリオレフィン系の樹脂を積層する。本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、本願発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと呼ぶ)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、チーグラー系低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0009】
さらに、紙基材にオレフィン系樹脂の他にもポリエチレンテレフタラートフィルム(以下「PETフィルム」と呼ぶ)などの耐熱層や、アルミニウム箔やアルミ蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルム(以下、「VM−PET」と呼ぶ)、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルム(以下シリカPETと呼ぶ)などのバリア層を積層したものも使用できる。例えば、以下の積層体が例示される。
・LDPE/紙基材/酸変性ポリエチレン/アルミ箔/PET/LDPE
・LDPE/紙基材/酸変性ポリエチレン/VM−PET/LDPE
・LDPE/紙基材/酸変性ポリエチレン/シリカPET/LDPE
・LDPE/紙基材/エチレン・アクリル酸共重合体/アルミ箔/PET/LDPE
・LDPE/紙基材/エチレン・アクリル酸共重合体/VM−PET/LDPE
・LDPE/紙基材/エチレン・アクリル酸共重合体/シリカPET/LDPE
・LDPE/紙基材/エチレン・アクリル酸共重合体/PET/アルミ箔/エチレン・アクリル酸共重合体ポリエチレン/LDPE
・LDPE/紙基材/エチレン・アクリル酸共重合体/アルミ箔/O‐Ny/酸変性ポリエチレン/LDPE
【0010】
図1は、本発明の1実施形態であるゲーベルトップ型のブランク板の表面の状態を示す平面図である。
本発明の印字部分は、図1に示すように、紙容器の外観上は見えない部分、例えば折り込み上パネル12に行う。
図1では印字部分の一例を示したが、反対側の折り込み上パネル32や、折り込み下パネル(11,13,31,33)、内側端部パネル(14a、14b、34a、34b)、トップ内側リブパネル(15a、15b、35a、35b)でもよい。この他、底側端部パネル22や、底側閉鎖パネル21の22と貼り合わされるために外観上は見えなくなる部分でもよい。
【0011】
本発明の紙容器の印字部分の少なくとも一部には剥離性ニスが塗布されている。通常、本発明のような紙容器は、ポリオレフィン系樹脂が熱で溶着されて容器の形状に成形する。剥離性ニスを施すことで、印字部分を確認する際に、貼り合わされたポリオレフィン樹脂層間できれいに剥がれ、紙基材が剥がれることなく印字部分を残して紙容器を壊すことができる。
剥離性ニスは、ブランク製造工程にて印字する面および対向する面に塗布する。印字する部分の面全体に剥離性ニスを塗布する必要はなく、図1の網掛部分で示しているように、印字部分およびその印字部分に対抗する部分にのみ塗布すればよい。
剥離性ニスは、印字部分のみもしくは印字部分に対向する部分のみ塗布してもよく、両方の部分に塗布してもよい。
ただし、剥離性ニスは塗布面積が広いと紙容器の成形性に悪影響を及ぼすため、塗布面積は印字が確認できる最小限にとどめるのが望ましい。
【0012】
図1の折り込み上パネル12に印字して印字部分を設け、適切な部分に剥離性ニスを印刷する。この後ブランク板を紙容器へ組み立てると、図2に示すような印刷部分が底面のゲーベルトップ型の紙容器になる。この図3からわかるように、印字は折り込まれて貼り合わされ底部を形成している部分に存在しているため、外部からは確認できない。
この印字部分を確認するためには、まず底側端部パネル22を底側閉鎖パネル21から剥がして起こし、さらに張り合わされている内側端部パネル14a、14bおよび折り込み下パネル11、13、折り込み上パネル12をそれぞれ剥がして、印字部分を露出する(図4)。この時、印刷部分には図1に示すように剥離性ニスが塗布してあるため、剥がす際に紙基材部分から剥がれることなく明確に印字部分が確認できる。
【0013】
印字は、平仮名、カタカナ、漢字、数字、アルファベット等の文字でもよく、図形、模様等でもよく、特に限定されない。印刷により印字されてもよく、レーザーとで印字してもよい。印字部分には、製造者及び販売者のみが管理上認識できる文字等を印刷してもよく、また「リサイクルにご協力お願いします」等の紙容器のリサイクルを喚起する印字をすることもできる。
剥離性ニスを塗布した後に印字してもよく、印字した後に剥離性ニスをその上に塗布してもよい。
【0014】
本発明の紙容器は、ブランク材に適宜折り目を付けて、これを折りたたむことにより立体的な容器に形成できるものであり、紙容器に形成されたときに、外観上は見えなくなる部分が生じるものであれば特に制限されない。例えば、ゲーベルトップ型紙容器およびフラットトップ型紙容器を使用することができる。
【0015】
本発明の紙容器は外観上みえない部分に印字がされているため、製造者および販売者のみが製品管理上必要な情報を印字することができる。このことにより、製造者および販売者が意図しない販売経路に商品が転売された場合に、その商品を転売した経路を特定することができる。つまり不正転売経路を特定することができる。また、成形後に印字を確認する為には貼り合わせ部分を剥がして紙容器を破壊しなくてはならず、再成形ができないことから、転売時に印字が不正に修正されていることがない。
【実施例】
【0016】
次に、本発明の紙容器について、具体的に実施例を挙げて説明する。
(製造例)
本実施例では、坪量285g/mのミルク原紙(ポトラッチ社抄造のミルク原紙、片面ポリエチレンラミネート品〔LDPE20g/m+紙基材285g/m)を用いて、図5に示すようなゲーベルトップ型容器製造の為の積層体を調製した。この図5で示される積層体の51はLDPE60μm、52はPET12μm、53はアルミニウム(AL)6μm、54はEMAA20μm、55は紙基材285g/m、56はLDPE20g/mで形成される。この積層体の51が容器の最内層となる。
この積層体において、図1の底部11〜13の該当する部分(網掛部分)に、剥離性ニス(シリコーン含有20%)を塗布した。次に、この積層体をブランクシート(約26cm×24.5cm)に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設け、図1のようなブランクシートを作製した。作製したブランクシートの胴部をフレームシールまたはホットエアーシールにより貼り合わせて紙カートンを作製した。
その後、折り込み上パネル12の剥離性ニスを塗布した部分にレーザーを用いて、それぞれの紙カートンに印字して任意の6桁の番号を付与した。この番号と同じ番号を記したシールを用意して、対応する紙カートンの傾斜パネル41に貼り付けた(図1)。このシールは、紙容器を成形後、印字部分の印字内容を確認する為に貼るものであり、製品として出荷等する際には適宜剥がす。
【0017】
この後、充填機に供給し、充填機により成形、内容物の充填、ヒートシールを行い、ゲーベルトップ型の紙容器を作成した。この時、充填機のボトムヒーターには図6に示されるように、印字部分を加熱し過ぎないようにするため、印字部分のチャンパーの熱風が出てくる通気孔を塞いだ。点線で囲まれた部分は熱風が出てくる穴を塞いだ部分である。このように、印字部分の加熱の強さを調節することで接着の強さを調節することができる。
上記の如く、製造したゲーベルトップ型の紙容器は図2に示すような外観となる。
【0018】
(実施例)
上記と同様に100個のゲーベルトップ型の紙容器を製造し、これを実施例とした。また比較例として、剥離性ニスを使用しないで、先の実施例と同様にゲーベルトップ型の紙容器を100個作製した。これら実施例および比較例のサンプルの底部を剥がして、印字部分を確認した。
実施例では100個全てのサンプルで記した6桁の番号全てを読み取る事が出来たのに対し、比較例では紙基材から剥がれが起きてしまい、全てのサンプルで6桁全ての数字を確認する事は困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のゲーベルトップ型紙容器のブランク板の表面の状態を示す平面図である。網掛部分は剥離性ニスを塗布した部分である。レーザーにて番号「123456」を焼印している。
【図2】本発明のゲーベルトップ型紙容器の斜視図である。
【図3】本発明のゲーベルトップ型紙容器の底部を示したものである。図面上側が底部に該当する。
【図4】本発明の印字部分を確認するために、ゲーベルトップ型紙容器の底部を剥がした部分の斜視図である。図面上側が底部に該当する。
【図5】本発明の製造例で使用した積層体の断面を説明した図である。
【図6】本発明の製造例で使用した充填機のボトムヒーターを示した図である。網掛け部は本発明の紙容器の剥離性ニス塗布部に該当し、点線部で囲まれた部分は、熱量を下げるため、チャンバーの孔を塞いだ部分である。
【符号の説明】
【0020】
1 胴部側パネル(側面)
2 胴部側パネル(正面)
3 胴部側パネル(側面)
4 胴部側パネル(背面)
11、13 折り込み下パネル
12 折り込み上パネル
14a、b 内側端部パネル
15a、b トップ内側リブパネル
21 底側閉鎖パネル
22 底側端部パネル
31、33 折り込み下パネル
32 折り込み上パネル
34a、b 内側端部パネル
35a、b トップ内側リブパネル
41 傾斜パネル
51 LDPE層
52 PET層
53 アルミニウム(AL)層
54 EMAA層
55 紙基材
56 LDPE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともオレフィン系樹脂層と紙基材層とオレフィン系樹脂層がこの順に積層された積層体により形成される紙容器において、該紙容器の形成後に外観上は見えない部分に印字されている紙容器であって、該部分の少なくとも一部に剥離性ニスが塗布され、該剥離性ニスが塗布された部分の少なくとも一部に印字されていることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記外観上は見えない部分が、紙容器成形時に貼り合わせられる部分である、請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記紙容器がゲーベルトップ型紙容器またはフラットトップ型紙容器である、請求項1または2に記載の紙容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の紙容器を用いた不正転売経路特定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−208833(P2009−208833A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56478(P2008−56478)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】