説明

紙幣処理装置のテストプログラム、紙幣処理装置のテスト方法、及び、紙幣処理装置の動作テストに用いる模擬紙幣

【課題】各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する。
【解決手段】金種を特定する金種特定マークMKを印刷する印刷範囲PRが、紙幣処理装置による取扱可能なすべての金種に共通して、紙幣処理装置によって取り扱われる複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として設定されている模擬紙幣SMを用いて、制御部に、鑑別部による紙幣の金種鑑別及び破損状況識別、並びに、搬送機構による紙幣搬送等の動作を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置のテストプログラム、紙幣処理装置のテスト方法、及び、紙幣処理装置の動作テストに用いる模擬紙幣に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣を用いて任意の処理を行う紙幣処理装置としては、例えば、金融機関や流通機関の施設に設置されている自動取引装置やキャッシュディスペンサ、金融機関の窓口に設置されている窓口装置、流通機関の店頭に設置されているレジスタ機等がある。
【0003】
紙幣処理装置は、任意の処理が適正に行われるように、製造検査時や保守点検時に、模擬紙幣を用いて様々なテストが行われる。例えば、紙幣処理装置の一種である自動取引装置は、入金処理や出金処理が適正に行われるように、製造検査時に、製造技術者によって、自動取引装置内部の各部品や各機構の動作確認作業が行われる。また、自動取引装置は、保守点検時に、保守員によって、自動取引装置内部の各部品や各機構の動作確認作業が行われる。また、自動取引装置は、自動取引装置を動作させるアプリケーションソフトウェアの開発時に、ソフトウェア技術者によって、アプリケーションソフトウェアのデバッグ作業が行われる。これらの作業において、自動取引装置は、模擬紙幣を用いて入金テストや出金テストが行われる。その模擬紙幣の中には、模擬紙幣の劣化状態を検出するための2つの方形状のマークが記されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−207635号公報(図12、段落53〜55)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙幣処理装置の入金テストや出金テストは、紙幣処理装置による取扱可能なすべての金種の模擬紙幣を対象にして行われる。そのため、テストの実行者(具体的には、紙幣処理装置の製造検査時の作業者や保守点検時の保守員等)は、膨大な数の模擬紙幣を用意する必要がある。
これにより、紙幣処理装置の入金テストや出金テストは、膨大な数の模擬紙幣を用意するための多大なコストがかかるという課題、及び、膨大な数の模擬紙幣の管理が煩雑になるという課題があった。これらの課題は、紙幣処理装置が海外向けの装置である場合に、取扱可能な金種の数が多くなるため、特に顕著になる。
【0006】
本発明の発明者は、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことができれば、すなわち、1枚の模擬紙幣を複数種類の通貨単位を表す券(媒体)として用いることができれば、これらの課題を解決することができると考えた。
さらに、発明者は、従来、模擬紙幣の劣化状態を検出するために用いられていたマーク(特許文献1では、方形状のマーク)を、模擬紙幣の金種を特定するマーク(以下、「金種特定マーク」と称する)として用い、紙幣処理装置が金種特定マークを常に読み取ることができるように、その位置を規定すれば、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことが実現できると考えた。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する紙幣処理装置のテストプログラム、紙幣処理装置のテスト方法、及び、紙幣処理装置の動作テストに用いる模擬紙幣を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、第1発明は、紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収容するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収容する複数の収容カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置の当該制御部に実行させる、紙幣処理装置のテストプログラムであって、出金テスト時に、前記搬送機構によって、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出させて前記鑑別部に搬送させ、前記鑑別部によって、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取らせることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別させるとともに、前記模擬紙幣の外観を識別させることによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別させ、前記搬送機構によって、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送させるとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送させる構成とする。
【0009】
また、第2発明は、紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置の当該制御部に実行させる、紙幣処理装置のテストプログラムであって、出金テスト時に、前記搬送機構によって、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出させて前記鑑別部に搬送させ、前記鑑別部によって、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取らせることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別させるとともに、前記模擬紙幣の外観を識別させることによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別させ、前記搬送機構によって、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送させるとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送させる構成とする。
【0010】
第1又は第2発明に係るテストプログラムは、各模擬紙幣の印刷範囲が紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として設定されており、その印刷範囲を対象にして、紙幣処理装置の制御部に、鑑別部による金種特定マークの読み取りを行わせる。金種特定マークは、同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番を表す。そのため、各模擬紙幣は、例えば、切断等によって印刷範囲の周囲の形状が変形された場合に、異なる通貨単位における、金種特定マークが表す順番の券として、紙幣処理装置に認識されるようになる。
したがって、第1又は第2発明に係るテストプログラムは、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すこと、すなわち、1枚の模擬紙幣を複数種類の通貨単位を表す券として用いることを許容する。
【0011】
また、第3発明は、紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収容するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収容する複数の収容カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置が実行する、紙幣処理装置のテスト方法であって、出金テスト時に、前記搬送機構は、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出して前記鑑別部に搬送し、前記鑑別部は、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取ることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別するとともに、前記模擬紙幣の外観を識別することによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別し、前記搬送機構は、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送するとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送する構成とする。
【0012】
また、第4発明は、紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置が実行する、紙幣処理装置のテスト方法であって、出金テスト時に、前記搬送機構は、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出して前記鑑別部に搬送し、前記鑑別部は、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取ることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別するとともに、前記模擬紙幣の外観を識別することによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別し、前記搬送機構は、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送するとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送する構成とする。
【0013】
第3又は第4発明に係るテスト方法は、第1又は第2発明に係る紙幣処理装置のテストプログラムと同様に、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことを許容する。
【0014】
また、第5発明は、紙幣処理装置の動作テストに用いる模擬紙幣であって、複数金種の模擬紙幣の間で、金種を特定する金種特定マークを印刷する印刷範囲が、前記紙幣処理装置によって取り扱われる複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として設定されている構成とする。
【0015】
第5発明に係る模擬紙幣は、印刷範囲が紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として設定されている。紙幣処理装置は、その印刷範囲を対象にして、金種特定マークを読み取る。金種特定マークは、同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番を表す。そのため、各模擬紙幣は、例えば、切断等によって印刷範囲の周囲の形状が変形された場合に、異なる通貨単位における、金種特定マークが表す順番の券として、紙幣処理装置に認識されるようになる。
したがって、第5発明に係る模擬紙幣は、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことができる。
【発明の効果】
【0016】
第1又は第2発明によれば、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことを許容するため、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する、紙幣処理装置のテストプログラムを提供することができる。
また、第3又は第4発明によれば、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことを許容するため、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する、紙幣処理装置のテスト方法を提供することができる。
また、第5発明によれば、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことができるため、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する、模擬紙幣を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る模擬紙幣の構成を示す図(1)である。
【図3】実施形態に係る模擬紙幣の構成を示す図(2)である。
【図4】実施形態に係る模擬紙幣の構成を示す図(3)である。
【図5】実施形態に係る模擬紙幣の構成を示す図(4)である。
【図6A】入金テスト時の実施形態に係る紙幣処理装置の動作を示すフローチャート(1)である。
【図6B】入金テスト時の実施形態に係る紙幣処理装置の動作を示すフローチャート(2)である。
【図7】出金テスト時の実施形態に係る紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[実施形態]
<紙幣処理装置の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成につき説明する。図1は、実施形態に係る紙幣処理装置の構成を示す図である。ここでは、本実施形態に係る紙幣処理装置は、金融機関や流通機関の施設に設置されている自動取引装置であるものとして説明する。しかしながら、紙幣処理装置は、紙幣を鑑別したり搬送したりする装置であれば、例えば、金融機関の窓口に設置されている窓口装置や、流通機関の店頭に設置されているレジスタ機、その他の装置であってもよい。
【0020】
紙幣処理装置の一種である自動取引装置1は、接客部15、搬送機構20、鑑別部25、一時保留部30、補充回収カセット35、リジェクト部40、紙幣収納カセット45、制御部50、及び、記憶部55を有している。
【0021】
接客部15は、顧客との間で各種の取引処理を行うに際して、顧客に様々なデータを提示したり、顧客から様々な指示やデータを受け付けたりする手段である。接客部15は、自動取引装置1の操作面に設けられ、図示せぬ表示部と入力部とで構成される。表示部は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等によって構成され、取引選択画面、あるいは顧客に操作を促すメッセージを表した画面等を表示する。また、入力部は、タッチパネル等によって構成され、表示部に表示された画面に対して、指等によって接触された位置を検出して、顧客の応答を取得する。
接客部15は、紙幣が投入及び放出される入出金口15aを備えている。
【0022】
搬送機構20は、自動取引装置1内の各部に紙幣を搬送する機構である。
鑑別部25は、紙幣の画像や磁気データ等を読み取って、紙幣を鑑別する手段である。
一時保留部30は、入金処理時や出金処理時に紙幣を一時保留する部位である。
【0023】
補充回収カセット35は、自動取引装置1に補充する紙幣及び自動取引装置1から回収する紙幣を収納する収納庫である。補充回収カセット35は、自動取引装置1に対して着脱自在な構成となっている。補充回収カセット35は、自動取引装置1に装着されると、内部に収納されている補充用の紙幣が搬送機構20によって繰り出される。繰り出された補充用の紙幣は、紙幣収納カセット45a〜45dの中の対応する金種のカセットまで搬送されて、そのカセットの中に収納される。また、搬送機構20は、紙幣収納カセット45a〜45dの中から回収用の紙幣を繰り出して補充回収カセット35まで搬送する。搬送された回収用の紙幣は、補充回収カセット35の中に収納される。
【0024】
リジェクト部40は、還流使用が不能な紙幣を収納する収納庫である。リジェクト部40は、取り忘れカセット40a、損券カセット40b、及び、リジェクトカセット40cを備えている。取り忘れカセット40aは、顧客が取り忘れた紙幣を収納する収納庫である。損券カセット40bは、損券(還流使用が不能な破損度が大きい紙幣)を収納する収納庫である。リジェクトカセット40cは、入金処理時や、出金処理時、振込処理時等に、リジェクトされた紙幣を収納する収納庫である。
紙幣収納カセット45は、紙幣を種類毎に収納する収納庫である。図1に示す例では、自動取引装置1は、4つの紙幣収納カセット45a〜45dを有している。
【0025】
制御部50は、各部の動作を制御する手段である。制御部50は、CPUによって構成されている。本実施形態では、制御部50は、鑑別部25に、自動取引装置1による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として、模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取らせる。具体的には、制御部50は、鑑別部25によって取得される模擬紙幣SM(図5参照)の画像データの中から、後記する印刷範囲PR(図5参照)に表示されている後記する金種特定マークMK(図5参照)の画像を認識する。これにより、制御部50は、模擬紙幣SMの金種を特定する。
記憶部55は、テストプログラム65を含む、各部の動作を制御するためのプログラムやデータを記憶する手段である。記憶部55は、RAMや、ROM、HDD等によって構成されている。
【0026】
テストプログラム65は、例えば、図6A及び図6Bに示す入金テスト時の動作や図7に示す出金テスト時の動作を制御部50に行わせるためのプログラムである。本実施形態では、テストプログラム65は、記憶媒体60を介して自動取引装置1にインストールされるものとして説明する。しかしながら、テストプログラム65は、図示せぬネットワークを介して、外部の機器から自動取引装置1にダウンロードされるようにしてもよい。なお、記憶媒体60は、テストプログラム65を予め記憶する媒体である。記憶媒体60は、例えば、USBメモリ等のメモリ部材や、HDD装置、CD−ROMやDVD等の光学媒体、フレキシブルディスク等の磁気媒体、その他の形態となっている。
【0027】
<模擬紙幣の構成>
以下、図2〜図5を参照して、本実施形態に係る模擬紙幣の構成につき説明する。図2〜図5は、それぞれ、実施形態に係る模擬紙幣の構成を示す図である。
【0028】
図2は、各国で用いられている紙幣の金種の一覧を示している。
図2は、例えば、日本では、「円」を通貨単位とし、金額の小さい方から順に、金種1〜金種4に該当する紙幣として、1000円券(千円券)、2000円券(二千円券)、5000円券(五千円券)、及び、10000円券(1万円券)の4種類の紙幣が用いられていることを示している。
同様に、図2は、ヨーロッパでは、「ユーロ」を通貨単位とし、金額の小さい方から順に、金種1〜金種8に該当する紙幣として、1ユーロ券、2ユーロ券、5ユーロ券、10ユーロ券、20ユーロ券、50ユーロ券、100ユーロ券、及び、500ユーロ券の8種類の紙幣が用いられていることを示している。
【0029】
図3は、本実施形態に係る模擬紙幣SMの外観を示している。ここでは、模擬紙幣SMの横幅を「W」とし、縦幅を「H」として説明する。模擬紙幣SMは、自動取引装置1の各種のテスト、特に、紙幣の厚さや材質等に関係しない項目のテスト(例えば、自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認のための、各サイズの紙幣媒体の走行テスト等)に活用される。また、模擬紙幣SMは、自動取引装置1を動作させるアプリケーションソフトウェアのデバッグ等にも活用される。
図3(a)は、金種8(図2参照)の模擬紙幣SMの構成を示している。一方、図3(b)は、金種3(図2参照)の模擬紙幣SMの構成を示している。模擬紙幣SMは、例えば、坪量100g/m及び厚さ100μmの用紙によって構成されている。
【0030】
図3に示すように、模擬紙幣SMは、金種特定マーク(すなわち、各券(媒体)に固有の金種を特定するためのマーク)MKが、例えば墨インキによって所定の印刷範囲PR(図5参照)の内部に印刷されている。金種特定マークMKは、個々のマークが方形状(図3に示す例では、正方形状)に形成されており、その方形状のマークが同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番を表す金種の順番に対応する個数分だけ設けられた構成となっている。例えば、図3(a)に示す模擬紙幣SMは、金種特定マークMKとして、方形状のマークが8個印刷されている。したがって、図3(a)に示す模擬紙幣SMは、金種8の紙幣に対応している。また、図3(b)に示す模擬紙幣SMは、金種特定マークMKとして、方形状のマークが3個印刷されている。したがって、図3(b)に示す模擬紙幣SMは、金種3の紙幣に対応している。
【0031】
以下、各模擬紙幣SMを、金種毎に区別して説明する場合に、金種特定マークMKを構成する方形状のマークの個数に応じて、模擬紙幣を表す符号「SM」の末尾に、数字「1〜8」を付して説明する。また、同様に、各模擬紙幣SMのサイズを、金種毎に区別して説明する場合に、模擬紙幣SMの横幅を表す符号「W」の末尾及び縦幅を表す符号「H」の末尾に、それぞれ、数字「1」〜「8」を付して説明する。
【0032】
図3(a)に示す金種8の模擬紙幣SM8としては、例えば500ユーロ券の模擬紙幣がある(図2参照)。500ユーロ券の模擬紙幣SM8は、自動取引装置1による取扱可能な紙幣の中でサイズが最も大きな券となっている。そのサイズは、横幅W8が160mmで、縦幅H8が82mmとなっている。
一方、図3(b)に示す金種3の模擬紙幣SM3としては、例えば5ユーロ券の模擬紙幣がある(図2参照)。5ユーロ券の模擬紙幣SM3は、自動取引装置1による取扱可能な紙幣の中でサイズが最も小さな券となっている。そのサイズは、横幅W3が120mmで、縦幅H3が62mmとなっている。
【0033】
図4は、図3と同様に、本実施形態に係る模擬紙幣SMの外観を示している。
図4(a)は、金種1の模擬紙幣SM1の構成を示している。金種1の模擬紙幣SM1は、例えば、対象国が日本の場合に1000円券の模擬紙幣となり、対象国が中国の場合に10元券の模擬紙幣となる(図2参照)。
図4(b)は、金種2の模擬紙幣SM2の構成を示している。金種2の模擬紙幣SM2は、例えば、対象国が日本の場合に2000円券の模擬紙幣となり、対象国が中国の場合に20元券の模擬紙幣となる(図2参照)。
図4(c)は、金種8の模擬紙幣SM8の構成を示している。金種8の模擬紙幣SM8は、例えば、対象国が日本や中国等の場合に該当する模擬紙幣が存在しない(図2参照)。
このように、金種特定マークMKは、方形状のマークの個数が、金種、すなわち、同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番を表している。
【0034】
図5は、異なる通貨単位間で使い回しするための模擬紙幣SMの構成を示している。具体的には、図5は、金種4の各通貨単位の模擬紙幣SM4の中でも、比較的大きなサイズの模擬紙幣SM4Yenからそれよりも小さなサイズの模擬紙幣SM4Euroを作成する場合の構成を示している。ここで、「模擬紙幣SM4Yen」とは、日本の金種4の模擬紙幣(すなわち、「1万円」券の模擬紙幣)を意味している。また、「模擬紙幣SM4Euro」とは、ヨーロッパの金種4の模擬紙幣(すなわち、「10ユーロ」券の模擬紙幣)を意味している。
【0035】
図5に示すように、模擬紙幣SMは、最内部に印刷範囲PRが設けられ、その周囲に、切断線CLによって区画された切り取りエリアCAが設けられた構成となっている。
印刷範囲PRは、金種特定マークMKが印刷される範囲である。印刷範囲PRは、すべての模擬紙幣SMに共通して、自動取引装置1による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として予め設定されている。
【0036】
切断線CLは、大きなサイズの模擬紙幣からそれよりも小さなサイズの模擬紙幣を作成する場合に、切断される線である。図5に示す例では、切断線CLは、模擬紙幣SM4Euroと模擬紙幣SM4Yenとの境目を表している。以下、図5に示す切断線CLを、「切断線CLEuro」と称する。切断線CLEuroは、模擬紙幣SM4Yenから模擬紙幣SM4Euroを作成する場合に、切断される。
なお、切断線CLの数は、使い回される通貨単位の種類が増えると、それに伴って増加する。例えば、切断線CLの数は、使い回される通貨単位の種類を「N」種類とする場合に、「N−1」本となる。
【0037】
切り取りエリアCAは、大きなサイズの模擬紙幣からそれよりも小さなサイズの模擬紙幣を作成する場合に、切り取られるエリアである。
なお、図5に示す例では、模擬紙幣SMは、切断線CL又は模擬紙幣SMの輪郭を指し示す「通貨単位CU」が印刷された構成となっている。「通貨単位CU」は、指し示す切断線CLや模擬紙幣SMの輪郭がいずれの通貨単位の模擬紙幣の輪郭であるのかを表している。
【0038】
日本の金種4の模擬紙幣(すなわち、1万円券の模擬紙幣)である模擬紙幣SM4Yenのサイズは、横幅をW4Yenとし、縦幅をH4Yenとする場合に、横幅W4Yenが160mmで、縦幅H4Yenが76mmとなっている。
一方、ヨーロッパの金種4の模擬紙幣(すなわち、10ユーロ券の模擬紙幣)である模擬紙幣SM4Euroのサイズは、横幅をW4Euroとし、縦幅をH4Euroとする場合に、横幅W4Euroが127mmで、縦幅H4Euroが67mmとなっている。
1万円券の模擬紙幣SM4Yenは、切り取りエリアCAが切断線CLEuroに沿って切り取られることによって、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroとして用いることができる。
【0039】
<模擬紙幣を用いたテスト時の紙幣処理装置の動作>
製造技術者は、自動取引装置1の製造検査時に、自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認を行うために、模擬紙幣SMを用いて入金テストや出金テスト等を行う。また、保守員は、自動取引装置1の保守点検時に、自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認を行うために、模擬紙幣SMを用いて入金テストや出金テスト等を行う。また、ソフトウェア技術者は、自動取引装置1を動作させるアプリケーションソフトウェアの作成時に、ソフトウェアのデバッグを行うために、模擬紙幣SMを用いて入金テストや出金テスト等を行う。
【0040】
以下、図6A、図6B、及び、図7を参照して、模擬紙幣SMを用いたテスト時の自動取引装置1の動作につき説明する。図6A及び図6Bは、それぞれ、入金テスト時の実施形態に係る紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。一方、図7は、出金テスト時の実施形態に係る紙幣処理装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、(1)日本向け自動取引装置1のテスト、(2)ヨーロッパ向け自動取引装置1のテスト、(3)中国向け自動取引装置1のテストの3つのテストを例示して説明する。
【0041】
(日本向け自動取引装置のテスト)
以下、日本向け自動取引装置1のテストにつき説明する。ここでは、日本向け自動取引装置1の製造検査時に、自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認を行うために、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを用いてテストを行うものとして説明する。以下、まず、図6A及び図6Bを参照して、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを用いて入金テストを行う場合の自動取引装置1の動作について説明し、次に、図7を参照して、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを用いて出金テストを行う場合の自動取引装置1の動作について説明する。なお、自動取引装置1の構成については、図1を参照するものとする。また、ここでは、自動取引装置1の搬送機構20によって搬送される紙幣を「紙幣媒体」と称する。
【0042】
(入金テスト)
入金テストに際して、自動取引装置1の製造技術者は、テストの実行者となり、製造検査時の自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作を確認するためのテストプログラム65を自動取引装置1にインストールする。次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作してテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)を日本に設定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に入金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)を日本とする、入金テスト時の動作を開始する。
【0043】
入金テストでは、図6A及び図6Bに示すように、まず、自動取引装置1の制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放(入出金口開放)させる(S105)。テストの実行者は、入出金口15aの図示せぬシャッタが開放されると、1乃至複数枚の紙幣媒体(ここでは、1万円券の模擬紙幣SM4Yen)を入出金口15aに挿入する。
【0044】
制御部50は、入出金口15aの周囲に設けられた図示せぬ検知センサの検知状況によって、紙幣媒体(ここでは、1万円券の模擬紙幣SM4Yen)が挿入されたか否かを判定する(S110)。S110の判定で、紙幣媒体が挿入されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S115に進む。一方、S110の判定で、紙幣媒体が挿入されていないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S120に進む。
【0045】
すなわち、S110の判定で、紙幣媒体が挿入されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S115)。
一方、S110の判定で、紙幣媒体が挿入されていないと判定された場合(“No”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタが開放されてから所定時間が経過したか否かを判定する(S120)。
【0046】
S120の判定で、所定時間が経過したと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S122)。これにより、処理は、終了となる。一方、S120の判定で、所定時間が経過していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S110に戻る。この場合に、S110及びS120の処理が繰り返し行われる。
【0047】
S115の後、制御部50は、搬送機構20を駆動させて、入出金口15aから紙幣媒体を1枚ずつ繰り出させて鑑別部25に搬送させる(S125)。そして、制御部50は、鑑別部25を作動させて、各紙幣媒体が鑑別部25を通過する度に、印刷範囲PR(図5参照)に基づく金種鑑別を行う(S130)。このとき、鑑別部25は、図示せぬイメージセンサによって、通過した紙幣媒体(ここでは、1万円券の模擬紙幣SM4Yen)の画像を取得し、画像データを制御部50に出力する。制御部50は、鑑別部25から紙幣媒体の画像データが入力されると、紙幣鑑別アルゴリズムに基づいて、入力された紙幣媒体の画像データの中の印刷範囲PRの画像を対象にして、紙幣媒体の金種を鑑別する。ここでは、鑑別部25を通過する紙幣媒体は、1万円券の模擬紙幣SM4Yenであり、金種特定マークMKとして4つの方形状のマークが印刷されている。そのため、制御部50は、紙幣媒体の金種を金種4に該当する「1万円」として鑑別する。以下、鑑別された金種を「鑑別金種」と称する。なお、鑑別部25を通過する紙幣媒体(すなわち、テストの実行者が入出金口15aに挿入した紙幣媒体)が例えば白紙である場合に、制御部50は、紙幣鑑別アルゴリズムに基づいて、紙幣媒体をリジェクト券として鑑別する。
【0048】
制御部50は、S130の金種鑑別により、紙幣媒体の金種が特定されたか否かを判定する(S135)。S135の判定で、紙幣媒体の金種が特定されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S140に進む。一方、S135の判定で、紙幣媒体の金種が特定されていないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S145に進む。
【0049】
すなわち、S135の判定で、紙幣媒体の金種が特定されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ一時保留部/入出金口切り替え用のブレードの搬送方向を一時保留部30側に切り替えさせる。これにより、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25から一時保留部30に搬送させて(S140)、一時保留部30に保留させる。
【0050】
一方、S135の判定で、紙幣媒体の金種が特定されないと判定された場合(“No”の場合)に、例えば、紙幣媒体が白紙である場合に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ一時保留部/入出金口切り替え用の搬送方向を入出金口15a側に切り替えさせる。これにより、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25から入出金口15aに搬送させて(S145)、入出金口15aに集積させる。
【0051】
S140の後、制御部50は、入出金口15aに挿入されたすべての紙幣媒体が入出金口15aから繰り出されると、テストの実行者用の図示せぬ表示操作部(又は、接客部15の図示せぬ表示操作部)に「確認」及び「キャンセル」の選択ボタンを表示させる。テストの実行者用が「確認」ボタンを押下すると、制御部50は、再び搬送機構20を駆動させて、一時保留部30から紙幣媒体を1枚ずつ繰り出させて鑑別部25に搬送させる(S150)。
【0052】
そして、制御部50は、鑑別部25を作動させて、各紙幣媒体が鑑別部25を通過する度に、各紙幣媒体の外観に基づく破損状況識別を行う(S155)。このとき、鑑別部25は、図示せぬイメージセンサにより、通過した紙幣媒体(ここでは、1万円券の模擬紙幣SM4Yen)の画像を取得し、画像データを制御部50に出力する。制御部50は、鑑別部25から紙幣媒体の画像データが入力されると、紙幣鑑別アルゴリズムに基づいて、入力された紙幣媒体の画像データから、擦過傷や破れ目等の紙幣媒体の外観上の破損箇所を検出する。
【0053】
制御部50は、S155の破損状況識別により、紙幣媒体が破損していないかを判定する(S160)。S160の判定で、紙幣媒体が破損なしと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S165に進む。一方、S160の判定で、紙幣媒体が破損ありと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S170に進む。
【0054】
すなわち、S160の判定で、紙幣媒体が破損なしと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ紙幣収納カセット/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向を紙幣収納カセット45側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25から鑑別金種(ここでは、1万円)の紙幣収納カセット45に搬送させて(S165)、鑑別金種の紙幣収納カセット45に集積させる。これにより、処理は、終了となる。
【0055】
一方、S160の判定で、紙幣媒体が破損ありと判定された場合(“No”の場合)に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ紙幣収納カセット/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向をリジェクト部40側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25からリジェクト部40の損券カセット40bに搬送させて(S170)、損券カセット40bに集積させる。これにより、処理は、終了となる。
【0056】
S145の後、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放(入出金口開放)させる(S175)。テストの実行者は、入出金口15aから紙幣媒体を抜き取る。これにより、金種が特定されなかった紙幣媒体が、テストの実行者に返却される。
【0057】
S175の後、制御部50は、入出金口15aの周囲に設けられた図示せぬ検知センサの検知状況によって、紙幣媒体の抜き取りが検知されたか否かを判定する(S180)。S180の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S185に進む。一方、S180の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されていないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S190に進む。
【0058】
すなわち、S180の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S185)。これにより、処理は、終了となる。
【0059】
一方、S180の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されていないと判定された場合(“No”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタが開放されてから所定時間が経過したか否かを判定する(S190)。
【0060】
S190の判定で、所定時間が経過したと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S195)。次に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、図示せぬ紙幣収納カセット/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向をリジェクト部40側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を入出金口15aからリジェクト部40の取り忘れカセット40aに搬送させて(S200)、取り忘れカセット40aに集積させる。これにより、処理は、終了となる。
一方、S190の判定で、所定時間が経過していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S180に戻る。この場合に、S180及びS190の処理が繰り返し行われる。
【0061】
テストの実行者は、S165で鑑別金種の紙幣収納カセット45に搬送された各紙幣媒体を各紙幣収納カセット45から抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況(例えば、破損や擦過傷等が各紙幣媒体に無いかや、各紙幣媒体の金種が紙幣収納カセット45に設定された金種に一致するか等)を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合(例えば、破損や擦過傷等が各紙幣媒体になく、かつ、各紙幣媒体の金種が紙幣収納カセット45に設定された金種に一致する場合)に、テストの実行者は、自動取引装置1の入金テストを、「合格」と判定する。
【0062】
(出金テスト)
次に、図7を参照して、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを用いて出金テストを行う場合の自動取引装置1の動作について説明する。
出金テストに際して、テストの実行者は、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを、自動取引装置1の「1万円券」に対応する紙幣収納カセット45に収納する。なお、テストの実行者は、他の金種の模擬紙幣SMを用いる場合には、当然ながら、その模擬紙幣SMを、模擬紙幣SMの金種に対応する紙幣収納カセット45に収納する。
【0063】
次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作して入金テスト時に自動取引装置1にインストールされたテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)を日本に設定し、さらに、出金する紙幣の金種及び枚数を指定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に出金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)を日本とする、出金テスト時の動作を開始する。以下、出金する紙幣の金種を「指定金種」と称する。また、出金する紙幣の枚数を「指定枚数」と称する。ここでは、テストの実行者は、指定金種として、金種4に該当する「1万円」を指定するものとして説明する。
【0064】
図7に示すように、出金テストでは、まず、自動取引装置1の制御部50は、搬送機構20を駆動させて、指定金種の紙幣収納カセット45から紙幣媒体を指定枚数分だけ1枚ずつ繰り出させて(S605)、鑑別部25に搬送させる(S610)。
【0065】
そして、制御部50は、鑑別部25を作動させて、各紙幣媒体が鑑別部25を通過する度に、印刷範囲PR(図5参照)に基づく金種鑑別を行う(S615)。このとき、鑑別部25は、図示せぬイメージセンサによって、通過した紙幣媒体(ここでは、1万円券の模擬紙幣SM4Yen)の画像を取得し、画像データを制御部50に出力する。制御部50は、鑑別部25から紙幣媒体の画像データが入力されると、紙幣鑑別アルゴリズムに基づいて、入力された紙幣媒体の画像データの中の印刷範囲PRの画像を対象にして、紙幣媒体の金種を鑑別する。ここでは、鑑別部25を通過する紙幣媒体は、1万円券の模擬紙幣SM4Yenであり、金種特定マークMKとして4つの方形状のマークが印刷されている。そのため、制御部50は、紙幣媒体を金種4に該当する1万円券の模擬紙幣SM4Yenとして鑑別する。
【0066】
制御部50は、S615の金種鑑別により、紙幣媒体の金種が指定金種であるか否かを判定する(S620)。S620の判定で、紙幣媒体の金種が指定金種であると判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S625に進む。一方、S620の判定で、紙幣媒体の金種が指定金種でないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S630に進む。
【0067】
すなわち、S620の判定で、紙幣媒体の金種が指定金種であると判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、各紙幣媒体の外観に基づく破損状況識別を行う(S625)。このとき、制御部50は、S615の金種鑑別により、入力された紙幣媒体の画像データから、擦過傷や破れ目等の紙幣媒体の外観上の破損箇所を検出する。
【0068】
一方、S620の判定で、紙幣媒体の金種が指定金種でないと判定された場合(“No”の場合)に、例えば、紙幣媒体の金種が指定金種と異なる金種である場合や白紙のように金種が不明である場合に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ入出金口/リジェクト部切り替え用の搬送方向をリジェクト部40側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25からリジェクト部40に搬送させて(S630)、リジェクト部40のリジェクトカセット40cに集積させる。これにより、処理は、終了する。
【0069】
S625の後、制御部50は、S625の破損状況識別により、紙幣媒体が破損していないかを判定する(S635)。S635の判定で、紙幣媒体が破損なしと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S640に進む。一方、S635の判定で、紙幣媒体が破損ありと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S645に進む。
【0070】
すなわち、S635の判定で、紙幣媒体が破損なしと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ入出金口/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向を入出金口15a側に切り替えさせる。これにより、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25から入出金口15aに搬送させて(S640)、入出金口15aに集積させる。
【0071】
一方、S635の判定で、紙幣媒体が破損ありと判定された場合(“No”の場合)に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、鑑別部25よりも下流に設けられた図示せぬ入出金口/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向をリジェクト部40側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を鑑別部25からリジェクト部40の損券カセット40bに搬送させて(S645)、損券カセット40bに集積させる。これにより、処理は、終了となる。
【0072】
S640の後、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放(入出金口開放)させて(S650)、紙幣媒体を出金紙幣としてテストの実行者に抜き取らせる。これにより、指定金種の紙幣媒体が、テストの実行者に支払われる。
【0073】
S650の後、制御部50は、入出金口15aの周囲に設けられた図示せぬ検知センサの検知状況によって、紙幣媒体の抜き取りが検知されたか否かを判定する(S655)。S655の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、処理は、S660に進む。一方、S655の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されていないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S665に進む。
【0074】
すなわち、S655の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されたと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S660)。これにより、処理は、終了となる。
【0075】
一方、S655の判定で、紙幣媒体の抜き取りが検知されていないと判定された場合(“No”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタが開放されてから所定時間が経過したか否かを判定する(S665)。
【0076】
S665の判定で、所定時間が経過したと判定された場合(“Yes”の場合)に、制御部50は、入出金口15aの図示せぬシャッタを閉鎖(入出金口閉鎖)させる(S670)。次に、制御部50は、搬送機構20を駆動させながら、図示せぬ紙幣収納カセット/リジェクト部切り替え用のブレードの搬送方向をリジェクト部40側に切り替えさせる。この後、制御部50は、紙幣媒体を入出金口15aからリジェクト部40の取り忘れカセット40aに搬送させて(S675)、取り忘れカセット40aに集積させる。これにより、処理は、終了となる。
一方、S665の判定で、所定時間が経過していないと判定された場合(“No”の場合)に、処理は、S655に戻る。この場合に、S655及びS665の処理が繰り返し行われる。
【0077】
テストの実行者は、S640で入出金口15aに搬送された各紙幣媒体を入出金口15aから抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況(例えば、破損や擦過傷等が各紙幣媒体に無いかや、各紙幣媒体の金種が指定金種であるか、各紙幣媒体の枚数が指定枚数であるか等)を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合(例えば、破損や擦過傷等が各紙幣媒体になく、各紙幣媒体の金種が指定金種であり、かつ、各紙幣媒体の枚数が指定枚数である場合)に、テストの実行者は、自動取引装置1の出金テストを、「合格」と判定する。
このようにして、テストプログラム65は、模擬紙幣SMを用いて日本向け自動取引装置1の品質確認を行う。
【0078】
(ヨーロッパ向け自動取引装置のテスト)
以下、ヨーロッパ向け自動取引装置1のテストにつき説明する。ここでは、ヨーロッパ向け自動取引装置1の保守点検時に、自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認を行うために、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを用いてテストを行うものとして説明する。
【0079】
テストの実行者となる自動取引装置1の保守員は、事前に、1万円券の模擬紙幣SM4Yenの切り取りエリアCAを切断線CLEuroに沿って切り取ることによって、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを用意する。この10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroは、1万円券の模擬紙幣SM4Yenに印刷されていた金種特定マークMKを構成する4つの方形状のマークが、印刷範囲PRに残存している。そのため、この模擬紙幣SM4Euroは、金種4の模擬紙幣SM4として自動取引装置1に認識される。テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)をヨーロッパに設定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50にテストを実行させる。これによって、テストの実行者は、この模擬紙幣SM4Euroを用いて10ユーロ券に対応する自動取引装置1の動作テストを行うことができる。
【0080】
(入金テスト)
入金テストに際して、自動取引装置1の保守員は、テストの実行者となり、自動取引装置1の保守点検による動作を確認するためのテストプログラム65を自動取引装置1にインストールする。次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作してテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)をヨーロッパに設定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に入金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)をヨーロッパとする、入金テスト時の動作を開始する。
【0081】
ヨーロッパ向け自動取引装置1の入金テストは、日本向け自動取引装置1の入金テストと同様に、テストプログラム65が、自動取引装置1の制御部50に、図6A及び図6Bに示す処理を行わせることによって、行われる。ただし、テストの実行者は、S105で、紙幣媒体として、1万円券の模擬紙幣SM4Yenの代わりに、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを、入出金口15aに挿入する。10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroは、前記した通り、金種特定マークMKを構成する4つの方形状のマークが、印刷範囲PRに残存している。そのため、この模擬紙幣SM4Euroは、金種4の模擬紙幣SM4として自動取引装置1に認識される。したがって、自動取引装置1の制御部50は、S130で、紙幣媒体の金種を金種4に該当する「10ユーロ」として鑑別する。その結果、制御部50は、S165で、紙幣媒体を鑑別部25から鑑別金種(ここでは、10ユーロ)の紙幣収納カセット45に搬送させて、鑑別金種の紙幣収納カセット45に集積させる。
【0082】
なお、テストの実行者が入出金口15aに挿入した紙幣媒体が例えば白紙等の金種が特定されない媒体である場合に、制御部50は、S130で、紙幣媒体をリジェクト券として鑑別する。その結果、制御部50は、S145で、紙幣媒体を鑑別部25から入出金口15aに搬送させて、入出金口15aに集積させた後、S175で、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放させて、紙幣媒体をテストの実行者に返却させる。
【0083】
テストの実行者は、日本向け自動取引装置1の入金テストと同様に、S165で鑑別金種の紙幣収納カセット45に搬送された各紙幣媒体を各紙幣収納カセット45から抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合に、テストの実行者は、自動取引装置1の入金テストを、「合格」と判定する。
【0084】
(出金テスト)
出金テストに際して、テストの実行者は、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを、自動取引装置1の「10ユーロ券」に対応する紙幣収納カセット45に収納する。なお、テストの実行者は、他の金種の模擬紙幣SMを用いる場合には、当然ながら、その模擬紙幣SMを、模擬紙幣SMの金種に対応する紙幣収納カセット45に収納する。
【0085】
次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作して入金テスト時に自動取引装置1にインストールされたテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)をヨーロッパに設定し、さらに、出金する紙幣の金種及び枚数を指定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に出金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)をヨーロッパとする、出金テスト時の動作を開始する。
【0086】
ヨーロッパ向け自動取引装置1の出金テストは、日本向け自動取引装置1の出金テストと同様に、テストプログラム65が、自動取引装置1の制御部50に、図7に示す処理を行わせることによって、行われる。ただし、自動取引装置1の各紙幣収納カセット45a〜45dには、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを含むユーロ券の模擬紙幣SMが収納されている。10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroは、前記した通り、金種特定マークMKを構成する4つの方形状のマークが、印刷範囲PRに残存している。そのため、この模擬紙幣SM4Euroは、金種4の模擬紙幣SM4として自動取引装置1に認識される。したがって、自動取引装置1の制御部50は、S615で、紙幣媒体の金種を金種4に該当する「10ユーロ」として鑑別する。その結果、制御部50は、S640で、紙幣媒体を10ユーロ券の模擬紙幣SM4として入出金口15aに搬送させて、入出金口15aに集積させる。そして、制御部50は、S650で、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放させて、紙幣媒体を出金紙幣としてテストの実行者に抜き取らせる。
【0087】
なお、テストの実行者が紙幣収納カセット45に収納した紙幣媒体が例えば白紙等の金種が特定されない媒体である場合に、制御部50は、S615で、紙幣媒体をリジェクト券として鑑別する。その結果、制御部50は、S630で、紙幣媒体を鑑別部25からリジェクト部40のリジェクトカセット40cに搬送させて、リジェクトカセット40cに集積させる。
【0088】
テストの実行者は、日本向け自動取引装置1の出金テストと同様に、S640で入出金口15aに搬送された各紙幣媒体を入出金口15aから抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合に、テストの実行者は、自動取引装置1の出金テストを、「合格」と判定する。
このようにして、テストプログラム65は、模擬紙幣SMを用いてヨーロッパ向け自動取引装置1の品質確認を行う。
【0089】
(中国向け自動取引装置のテスト)
以下、中国向け自動取引装置1のテストにつき説明する。ここでは、中国向け自動取引装置1を動作させるアプリケーションソフトウェアの作成時に、ソフトウェアのデバッグを行うために、100元券の模擬紙幣として10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを用いてテストを行うものとして説明する。なお、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroのサイズは、中国の100元券の紙幣のサイズよりも小さい。しかしながら、ソフトウェアのデバッグを行うためのテストは、自動取引装置1の各部品や各機構が適正に動作するか否かを検証するためのものであるため、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを100元券の模擬紙幣として用いても、問題が生じない。
【0090】
入金テストに際して、ソフトウェア技術者は、テストの実行者となり、ソフトウェアのデバッグをするためのテストプログラム65を自動取引装置1にインストールする。次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作してテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)を中国に設定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に入金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)を中国とする、入金テスト時の動作を開始する。
【0091】
中国向け自動取引装置1の入金テストは、ヨーロッパ向け自動取引装置1の入金テストと同様に、テストプログラム65が、自動取引装置1の制御部50に、図6A及び図6Bに示す処理を行わせることによって、行われる。なお、このテストでは、テストの実行者は、S105で、100元券の模擬紙幣として、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを、入出金口15aに挿入する。10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroは、前記した通り、金種特定マークMKを構成する4つの方形状のマークが、印刷範囲PRに残存している。そのため、この模擬紙幣SM4Euroは、金種4の模擬紙幣SM4として自動取引装置1に認識される。したがって、自動取引装置1の制御部50は、S130で、紙幣媒体の金種を、中国で使用されている通貨の金種4に該当する「100元」として鑑別する。その結果、制御部50は、S165で、紙幣媒体を鑑別部25から鑑別金種(ここでは、100元)の紙幣収納カセット45に搬送させて、鑑別金種の紙幣収納カセット45に集積させる。
【0092】
なお、テストの実行者が入出金口15aに挿入した紙幣媒体が例えば白紙等の金種が特定されない媒体である場合に、制御部50は、S130で、紙幣媒体をリジェクト券として鑑別する。その結果、制御部50は、S145で、紙幣媒体を鑑別部25から入出金口15aに搬送させて、入出金口15aに集積させた後、S175で、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放させて、紙幣媒体をテストの実行者に返却させる。
【0093】
テストの実行者は、ヨーロッパ向け自動取引装置1の入金テストと同様に、S165で鑑別金種の紙幣収納カセット45に搬送された各紙幣媒体を各紙幣収納カセット45から抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合に、テストの実行者は、自動取引装置1の入金テストを、「合格」と判定する。
【0094】
(出金テスト)
出金テストに際して、テストの実行者は、100元券の模擬紙幣として10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを、自動取引装置1の「100元券」に対応する紙幣収納カセット45に収納する。なお、テストの実行者は、他の金種の模擬紙幣SMを用いる場合には、当然ながら、その模擬紙幣SMを、模擬紙幣SMの金種に対応する紙幣収納カセット45に収納する。
【0095】
次に、テストの実行者は、図示せぬ操作部を操作して入金テスト時に自動取引装置1にインストールされたテストプログラム65を起動させる。そして、テストの実行者は、自動取引装置1の使用対象国(地域)を中国に設定し、さらに、出金する紙幣の金種及び枚数を指定して、テストプログラム65を用いて、自動取引装置1の制御部50に出金テストを実行させる。これにより、自動取引装置1の制御部50は、使用対象国(地域)を中国とする、出金テスト時の動作を開始する。
【0096】
中国向け自動取引装置1の出金テストは、ヨーロッパ向け自動取引装置1の出金テストと同様に、テストプログラム65が、自動取引装置1の制御部50に、図7に示す処理を行わせることによって、行われる。ただし、自動取引装置1の各紙幣収納カセット45a〜45dには、10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroを含むユーロ券の模擬紙幣SMが収納されている。10ユーロ券の模擬紙幣SM4Euroは、前記した通り、金種特定マークMKを構成する4つの方形状のマークが、印刷範囲PRに残存している。そのため、この模擬紙幣SM4Euroは、金種4の模擬紙幣SM4として自動取引装置1に認識される。したがって、自動取引装置1の制御部50は、S615で、紙幣媒体の金種を、中国で使用されている通貨の金種4に該当する「100元」として鑑別する。その結果、制御部50は、S640で、紙幣媒体を100元券の模擬紙幣SM4として入出金口15aに搬送させて、入出金口15aに集積させる。そして、制御部50は、S650で、入出金口15aの図示せぬシャッタを開放させて、紙幣媒体を出金紙幣としてテストの実行者に抜き取らせる。
【0097】
なお、テストの実行者が紙幣収納カセット45に収納した紙幣媒体が例えば白紙等の金種が特定されない媒体である場合に、制御部50は、S615で、紙幣媒体をリジェクト券として鑑別する。その結果、制御部50は、S630で、紙幣媒体を鑑別部25からリジェクト部40のリジェクトカセット40cに搬送させて、リジェクトカセット40cに集積させる。
【0098】
テストの実行者は、ヨーロッパ向け自動取引装置1の出金テストと同様に、S640で入出金口15aに搬送された各紙幣媒体を入出金口15aから抜き取り、目視にて、各紙幣媒体の状況を確認する。各紙幣媒体の状況が適正である場合に、テストの実行者は、自動取引装置1の出金テストを、「合格」と判定する。
このようにして、テストプログラム65は、模擬紙幣SMを用いて中国向け自動取引装置1の各部品や各機構が適正に動作するか否かを検証して、ソフトウェアのデバッグを行う。
【0099】
なお、本実施形態では、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを10ユーロ券や100元券等の模擬紙幣として用いる例を説明した。しかしながら、模擬紙幣SMは、切り取りエリアCAのサイズを変更すれば、例えば、1万円券の模擬紙幣SM4Yenを10アメリカドル券や1000台湾ドル券、その他の、金種4の模擬紙幣SM4として用いることができる。また、模擬紙幣SMは、例えば、1000円券の模擬紙幣SM1Yenを1アメリカドル券や100台湾ドル券、その他の、金種1の模擬紙幣SM1として用いることができる。このように、模擬紙幣SMは、金種特定マークMKを構成する方形状のマークの個数に応じて、異なる通貨単位における同一金種の模擬紙幣として用いることができる。
【0100】
この模擬紙幣SMは、前記した通り、印刷範囲PRが、自動取引装置1による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として予め設定されている。自動取引装置1の制御部50は、その印刷範囲PRに印刷されている金種特定マークMKに基づいて、各模擬紙幣SMの金種を鑑別する。そのため、制御部50は、各通貨単位に共通して、1枚の模擬紙幣SMを、同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番の券として、認識する。例えば、制御部50は、自動取引装置1の使用対象国(地域)の設定に応じて、1枚の模擬紙幣SMを、1万円券として、又は、10ユーロ券として、又は、100元券として、認識する。
【0101】
したがって、模擬紙幣SMは、各種のテストに使用する模擬紙幣の種類及び枚数を減らすことができる。そのため、模擬紙幣SMは、各種のテストに使用する模擬紙幣を用意するためのコストを軽減することができるとともに、模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減することができる。
【0102】
また、模擬紙幣SMは、自動取引装置1に関する様々な作業(例えば、自動取引装置1の製造検査時や保守点検時における自動取引装置1内部の各部品や各機構の動作確認作業や、自動取引装置1を動作させるソフトウェアの作成時におけるソフトウェアのデバッグ作業等)で、共通に用いることができる。そのため、模擬紙幣SMは、使い勝手がよく、製品開発からユーザへの納入までのプロセスを大幅に効率化することができる。
【0103】
以上の通り、本実施形態に係るテストプログラム65又はテスト方法によれば、1枚の模擬紙幣SMを異なる通貨単位間で使い回すことを許容するため、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する、紙幣処理装置のテストプログラム又はテスト方法を提供することができる。
また、本実施形態に係る模擬紙幣SMによれば、1枚の模擬紙幣を異なる通貨単位間で使い回すことができるため、入金テストや出金テスト等の各種テストに使用する模擬紙幣を用意するためのコスト及び模擬紙幣の管理の煩雑さを軽減する、模擬紙幣を提供することができる。
【0104】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、本発明に係るテストプログラム及びテスト方法は、自動取引装置に限らず、キャッシュディスペンサや、窓口装置、レジスタ機、その他の紙幣処理装置に適用することができる。
【0105】
また、例えば、本発明に係るテストプログラム及びテスト方法は、出金テスト時において取り忘れられた模擬紙幣をリジェクト部の取り忘れカセットに搬送させる場合や、入金テスト時において金種が不明な紙幣として入出金口に搬送された模擬紙幣をリジェクト部の取り忘れカセットに搬送させる場合にも、適用することができる。
【0106】
また、例えば、本発明に係るテストプログラム及びテスト方法は、振り込み処理を行う場合にも適用することができる。
また、例えば、本発明に係るテストプログラム及びテスト方法は、紙幣処理装置に補充回収カセットを装着して、模擬紙幣を補充回収カセットから紙幣処理装置の紙幣収納カセットに補充させる場合や、模擬紙幣を紙幣処理装置の紙幣収納カセットから補充回収カセットに回収させる場合にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 紙幣処理装置(自動取引装置)
15 接客部
15a 入出金口
20 搬送機構
25 鑑別部
30 一時保留部
35 補充回収カセット
40 リジェクト部
40a 取り忘れカセット
40b 損券カセット
40c リジェクトカセット
45 紙幣収納カセット
50 制御部
55 記憶部
60 記憶媒体
65 テストプログラム
CA 切り取りエリア
CL 切断線
CU 通貨単位
H 縦幅
MK 金種特定マーク
PR 印刷範囲
SM 模擬紙幣
W 横幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置の当該制御部に実行させる、紙幣処理装置のテストプログラムにおいて、
入金テスト時に、
前記搬送機構によって、紙幣が投入及び放出される入出金口から模擬紙幣を前記鑑別部に搬送させ、
前記鑑別部によって、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取らせることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別させ、
前記搬送機構によって、金種が不明な模擬紙幣を前記入出金口に搬送させるとともに、金種が特定された模擬紙幣を前記一時保留部に搬送させた後、前記鑑別部に搬送させ、
前記鑑別部によって、前記一時保留部に搬送された前記模擬紙幣の外観を識別させることによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別させ、
前記搬送機構によって、破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送させるとともに、破損がない模擬紙幣を鑑別された金種の前記収納カセットに搬送させる
ことを特徴とする紙幣処理装置のテストプログラム。
【請求項2】
紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置の当該制御部に実行させる、紙幣処理装置のテストプログラムにおいて、
出金テスト時に、
前記搬送機構によって、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出させて前記鑑別部に搬送させ、
前記鑑別部によって、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取らせることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別させるとともに、前記模擬紙幣の外観を識別させることによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別させ、
前記搬送機構によって、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送させるとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送させる
ことを特徴とする紙幣処理装置のテストプログラム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙幣処理装置のテストプログラムにおいて、
異なる通貨単位間での金種の鑑別に共通して、常に、前記鑑別部によって、前記印刷範囲を対象にして、前記金種特定マークを読み取らせることによって、1枚の前記模擬紙幣を複数種類の通貨単位を表す媒体として使用させる
ことを特徴とする紙幣処理装置のテストプログラム。
【請求項4】
紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置が実行する、紙幣処理装置のテスト方法において、
入金テスト時に、
前記搬送機構は、紙幣が投入及び放出される入出金口から模擬紙幣を前記鑑別部に搬送し、
前記鑑別部は、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取ることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別し、
前記搬送機構は、金種が不明な模擬紙幣を前記入出金口に搬送するとともに、金種が特定された模擬紙幣を前記一時保留部に搬送した後、前記鑑別部に搬送し、
前記鑑別部は、前記一時保留部に搬送された前記模擬紙幣の外観を識別することによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別し、
前記搬送機構は、破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送するとともに、破損がない模擬紙幣を鑑別された金種の前記収納カセットに搬送する
ことを特徴とする紙幣処理装置のテスト方法。
【請求項5】
紙幣を搬送する搬送機構、紙幣を鑑別する鑑別部、紙幣を一時保留する一時保留部、還流使用が不能な紙幣を収納するリジェクト部、複数種類の紙幣を種類毎に収納する複数の収納カセット、及び、各部の動作を制御する制御部を有する紙幣処理装置が実行する、紙幣処理装置のテスト方法において、
出金テスト時に、
前記搬送機構は、特定金種の前記収納カセットから特定金種の模擬紙幣を繰り出して前記鑑別部に搬送し、
前記鑑別部は、前記紙幣処理装置による取扱可能な複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として前記模擬紙幣に予め設定されている印刷範囲を対象にして、前記模擬紙幣の金種を特定する金種特定マークを読み取ることによって、前記模擬紙幣の金種を鑑別するとともに、前記模擬紙幣の外観を識別することによって、前記模擬紙幣の破損状況を識別し、
前記搬送機構は、金種が前記特定金種と異なる模擬紙幣及び破損がある模擬紙幣を前記リジェクト部に搬送するとともに、金種が前記特定金種でかつ破損がない模擬紙幣を、紙幣が投入及び放出される入出金口に搬送する
ことを特徴とする紙幣処理装置のテスト方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の紙幣処理装置のテスト方法において、
異なる通貨単位間での金種の鑑別に共通して、常に、前記鑑別部によって、前記印刷範囲を対象にして、前記金種特定マークを読み取らせることによって、1枚の前記模擬紙幣を複数種類の通貨単位を表す媒体として使用させる
ことを特徴とする紙幣処理装置のテスト方法。
【請求項7】
紙幣処理装置の動作テストに用いる模擬紙幣において、
金種を特定する金種特定マークを印刷する印刷範囲が、前記紙幣処理装置による取扱可能なすべての金種に共通して、前記紙幣処理装置によって取り扱われる複数種類の紙幣の中で一番小さい紙幣のサイズよりも小さな領域として設定されている
ことを特徴とする模擬紙幣。
【請求項8】
請求項7に記載の模擬紙幣において、
前記金種特定マークは、同一通貨単位内で発行されている各紙幣に付された金額の大小の順番を表している
ことを特徴とする模擬紙幣。
【請求項9】
請求項8に記載の模擬紙幣において、
前記金種特定マークは、マークの個数によって前記金額の大小の順番を表している
ことを特徴とする模擬紙幣。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の模擬紙幣において、
前記金種特定マークの印刷範囲は、周囲に、切断箇所を示す切断線が記されている
ことを特徴とする模擬紙幣。
【請求項11】
請求項10に記載の模擬紙幣において、
前記金種特定マークの印刷範囲の周囲が前記切断線に沿って切断されることによって、異なる通貨単位の紙幣として用いられる
ことを特徴とする模擬紙幣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113158(P2011−113158A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266998(P2009−266998)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】