説明

紙幣処理装置

【課題】折れ曲がりを有する紙幣が入出金部から繰出された場合、その紙幣を繰り出し直後に確実に検知できるようにする。
【解決手段】紙幣搬送路中を搬送すると紙幣ジャムを起こす可能性の高い折れ曲がり部23aを有する紙幣23が入出金部1から繰出された場合、繰出し直後にその紙幣23の左右の折れ曲がり部23aを紙幣ガイド板14の湾曲部Aに設けられた落とし込み部21の紙幣搬送方向下流側の端面21bに衝突させて紙幣23に斜行を発生させ、その斜行を落とし込み部21の下流に配置されたセンサ22で検知するか、センサ22への到達時間を監視して検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置(ATM)等に用いられる紙幣処理装置に関するもので、特に入金紙幣のジャムを防止するために、折れ曲った紙幣を検出するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金融機関等の営業店に設置され、現金の入金や出金等の取引を行うATM等に紙幣入出金装置として組み込まれる従来の紙幣処理装置は、入出金部(紙幣投入部)に投入された紙幣を複数のローラの協働により1枚ずつ分離して搬送路に送り込むものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
また、分離した紙幣を搬送する際、紙幣が大きく傾いて斜行したり、2枚以上重なった状態で繰出されることによって重送が生じたり、あるいは横ずれが生じたりする等の搬送不良を起こすことがあり、そのため紙幣の搬送路に光学的なセンサを配置し、このセンサにより紙幣の搬送不良が検出された場合、紙幣を元の収納部に戻し、再分離して搬送不良を解消するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−165577
【特許文献2】特開平5−278902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、以下の問題がある。
すなわち、搬送路に配置したセンサは、紙幣の斜行、重送、横ずれは検出することができるが、例えば四つ折りされることによって紙幣に生じた折れ曲がりまでは検出できず、そのため折れ曲がりのある紙幣はそのまま搬送されてしまい、その結果、紙幣の折れ曲がった部分が搬送路に配置されたガイドや搬送方向切替え用の切替えブレード等に衝突して紙幣ジャム等の障害を起こすという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、入金紙幣を投入する紙幣投入部と、この紙幣投入部から紙幣を1枚ずつ繰出す繰出しローラを備えた紙幣処理装置において、互いに対向する搬送面の間で前記紙幣投入部から繰出された紙幣を案内する一対の紙幣ガイド板を設け、該一対の紙幣ガイド板は湾曲部を有し、該湾曲部がなす円弧にあって、外側の円弧に当たる湾曲部に紙幣の落し込み部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、紙幣搬送路中を搬送すると紙幣ジャムを起こす可能性の高い折れ曲がり部を有する紙幣が紙幣投入部から繰出された場合、繰出し直後にその紙幣の左右の一方の折れ曲がり部をガイド板の湾曲部に設けた落とし込み部の端面に衝突させて紙幣に斜行を発生させ、その斜行を落とし込み部の下流に配置されたセンサで検知するか、センサへの紙幣到達時間を監視して検出することで、折れ曲がり部を有する紙幣を入出金部からの繰出し直後に確実に検出して停止させる。あるいは紙幣投入部に戻すようにして装置内部に取り込まないようにする。よってジャムによる停止を未然に防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施例を示す要部側面図
【図2】紙幣ガイド板の部分斜視図
【図3】紙幣ガイド板の部分側断面図
【図4】折れ曲がった紙幣の例を示す斜視図
【図5】切替えブレードが設けられた搬送路の側面図
【図6】折れ曲がった紙幣と切替えブレードの関係を示す斜視図
【図7】折れ曲がった紙幣の斜行発生状態を示す斜視図
【図8】斜行した紙幣の検知状態を示す斜視図
【図9】第2の実施例を示す紙幣ガイド板の部分側断面図
【図10】第3の実施例を示す紙幣ガイド板の部分側断面図
【図11】第4の実施例を示す紙幣ガイド板の部分斜視断面図
【図12】落し込み部の外側端を紙幣ガイド板の両側で開放した例を示す斜視図
【図13】紙幣入出金装置の内部構造を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による紙幣処理装置の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、装置全体の説明を行う。
図13は紙幣処理装置の内部構造を示す概略図で、ここでは紙幣入出金装置を例にして説明する。
図において1は利用者が紙幣を投入したり、利用者に紙幣を払出し出金したりするための入出金部(紙幣投入部)、2は入金や出金の際に紙幣を鑑別して計数する鑑別部、3a〜3dはこの鑑別部2で入金可能な真券と鑑別された紙幣を一時保留する一時保留部である。
4a〜4dは紙幣収納部で、上下方向に並べて配置されており、一時保留部3a〜3dはこの紙幣収納部4a〜4dに対応して設けられている。
ここで、最上段の紙幣収納部4aは、入金時に真券ではあるが損券と鑑別された紙幣及び出金対象外の金種と鑑別された紙幣(例えば2千円紙幣)を収納するものとし、紙幣収納部4b〜4dは出金用の紙幣を金種別に収納するように設定されている。
【0010】
5は出金時のリジェクト紙幣を収納するリジェクト収納部、6は顧客が取忘れた紙幣を取込んで収納する取忘れ紙幣収納部で、このリジェクト収納部5及び取忘れ紙幣収納部6は最上段に位置する紙幣収納部4aを挟んで一時保留部3aの反対側に設けられている。
7〜10は紙幣を搬送する第1〜第4の搬送路で、各々の搬送路は二組のベルト対を備え、それぞれのベルト対で紙幣をその表裏両面から挟持して搬送するように構成されている。このベルト対で挟持される紙幣の部分は、紙幣の幅方向(搬送方向と直行する方向)の端部より一定の長さ内側の紙幣中央部分である。
【0011】
ここで第1の搬送路7は、入出金部1から鑑別部2を経て一時保留部3a〜3dに至るように設けられており、また第2の搬送路8は入金時の紙幣搬送方向における鑑別部2の下流側で第1の搬送路7から分岐して入出金部1に戻るように設けられ、更に第3の搬送路9及び第4の搬送路10は入出金部1と鑑別部2との間で第1の搬送路7からそれぞれ分岐してリジェクト収納部5及び取忘れ紙幣収納部6に至るように設けられている。
【0012】
尚、第1の搬送路7及び第2の搬送路8は紙幣を双方向に搬送できるようになっている。
また、第1の搬送路7には紙幣の搬送方向を切替える切替えブレードが一時保留部3a〜3dと対応する位置に設けられ、また第2の搬送路8〜第4の搬送路10との分岐部にも切替えブレードが設けられている。
【0013】
上述した構成において、入金処理及び出金処理は以下のように行われる。
尚、以下に説明する各部の動作は、図示しない記憶部に格納された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいて図示しない制御部により制御される。
まず、入金処理の場合、取引が開始されて、入出金部1の図示しないシャッタが開かれた状態で利用者(例えば顧客)により紙幣が一括して投入されると、前記シャッタが閉じられ、入出金部1から紙幣が1枚ずつ分離されて第1の搬送路7に繰出される。
【0014】
その際、本実施例では折れ曲がった紙幣23を検出して入出金部1へ戻し、利用者に折れ曲がりを直した上で再投入するよう促すが、その詳細については後述するものとし、ここでは装置全体の動作の説明を進める。
入出金部1から繰出された紙幣は、第1の搬送路7により鑑別部2に搬送され、この鑑別部2で紙幣の正損、金種等の鑑別、及び連鎖、斜行等の搬送異常の検出が行われる。
【0015】
その結果、金種不明の紙幣や、搬送異常が検出された紙幣は、入金リジェクト紙幣として第2の搬送路8により入出金部1に送り戻され、前記の投入紙幣と区別されて集積される。
また、金種は判明したものの外形イメージから一部が切断あるいは欠損している損券と鑑別された紙幣、及び出金対象外金種と鑑別された紙幣は、第1の搬送路7により一時保留部3aに搬送され、集積されて一時保留される。
【0016】
一方、出金対象の金種で出金に適する正券と鑑別された紙幣は、第1の搬送路により一時保留部3b〜3dに搬送され、集積されて一時保留される。
入出金部1に投入された紙幣がすべて繰出されて鑑別が終了すると、シャッタ開かれ、リジェクトされた紙幣が利用者に返却される。
そして、取引が確定すると一時保留部3a〜3dに集積されている紙幣が対応する紙幣収納部4a〜4dに取込まれて収納される。
【0017】
出金処理の場合は、取引が開始されると紙幣収納部4b〜4dから紙幣が繰出され、第1の搬送路7により鑑別部2に送られて正損、金種等の鑑別、及び連鎖、斜行等の搬送異常の検出が行われる。
その結果、一部が切断あるいは欠損している損券と鑑別された紙幣(手作業の補充等により紙幣収納部4b〜4d内に混入した損券)や、搬送異常が検出された紙幣は、出金リジェクト紙幣として第3の搬送路9によりリジェクト収納部5に搬送されて収納される。
【0018】
また、鑑別部2で正券と鑑別され、金種が確定した紙幣は、第1の搬送路7により入出金部1に搬送されて集積される。
そして、予め利用者により指定された金種、枚数による金額分の紙幣が入出金部1に集積されるとシャッタが開かれ、利用者に出金される。
このとき、利用者が紙幣を取忘れた場合、その取忘れ紙幣は入出金部1内で第2の搬送路8側に送られ、第2の搬送路8に繰出されて第1の搬送路7から鑑別部を通り、第4の搬送路10により取忘れ収納部6に送り込まれて収納される。
【0019】
次に、本発明の特徴部分について説明する。
図1は第1の実施例を示す要部側面図である。
この図に示したように入出金部(紙幣投入部)1の上部にはシャッタ11が設けられており、このシャッタ11は入出金動作での利用者との紙幣23の受渡し時に開閉するものとなっている。
【0020】
入出金部1には紙幣23を1枚ずつ分離して第1の搬送路7に送込む(取込む)ために外周を高摩擦部材で形成したピックアップローラ12と、入出金部1内に立位状態で集積された紙幣23をピックアップローラ12に押付ける移動可能な紙幣押え13が設けられている。
入出金部1の一端下部には紙幣出入口1aが形成され、この紙幣出入口1aの下側には一対の紙幣ガイド板14,15が一定の間隔を保って平行になるように配置されている。
【0021】
この紙幣ガイド板14、15は第1の搬送路7に向かって延在しており、途中の少なくとも1箇所に湾曲部Aを有している。
紙幣ガイド板15には、紙幣出入口1aの近傍から湾曲部Aを超える長さに渡る第1の穴とその下流に位置する第2の穴が設けられていて、第1の穴から紙幣ガイド板14、15間に外周部が入り込むように繰出しローラ17が配置され、第2の穴から紙幣ガイド板 14、15間に外周部が入り込むように搬送ローラ20が配置されている。
【0022】
ここで繰出しローラ17は、外周の一部に高摩擦部材17aが設けられていて、ピックアップローラ12と同期して正逆両方向に回転できるものとなっており、搬送ローラ20も同様に回転するものとなっている。
一方、紙幣ガイド板14には、紙幣ガイド板15に設けられた第1の穴の上端(一端)側に位置する第1の穴と、この第1の穴の下端(他端)側に位置する第2の穴と、この第2の穴の下流に位置する第3の穴が設けられていて、この紙幣ガイド板14の第1の穴から紙幣ガイド板14、15間に外周部が入り込むようにゲートローラ16が配置され、第2の穴から紙幣ガイド板14、15間に外周部が入り込むように搬送ローラ18が配置され、更に第3の穴から紙幣ガイド板14、15間に外周部が入り込むように搬送ローラ19が配置されている。
【0023】
ここでゲートローラ16は、繰出しローラ17に対して軸方向にずらし、かつ外周が繰出しローラ17の外周とオーバラップするように設けられ、ピックアップローラ12と繰出しローラ17により繰出される紙幣23を1枚ずつ分離するために、紙幣繰出し時における繰出しローラ17の回転方向と同方向にしか回転しないようになっている。
また、搬送ローラ18は繰出しローラ17と対向して接触するように設けられていて、繰出しローラ17との間に紙幣23を挟持して搬送するようになっており、更に搬送ローラ19は搬送ローラ20と対向して接触し、搬送ローラ20との間に紙幣23を挟持して搬送するようになっている。
【0024】
21は紙幣ガイド板14の湾曲部Aに設けられた落し込み部で、この落し込み部21は紙幣23の折れ曲がり部23aが落ちこむ大きさで紙幣ガイド板14を貫通する穴として形成されている。
22は紙幣ガイド板14、15間を搬送される紙幣23を落し込み部21の下流の搬送ローラ18の位置で紙幣を検知するセンサで、紙幣ガイド板14、15の紙幣検知位置に設けられた後述する検知孔を介して対向するように配置された発光素子と受光素子により構成され、図の奥行き方向に2組設けられている。
【0025】
図2は紙幣ガイド板14の部分斜視図で、図示したように紙幣ガイド板14の中央部にゲートローラ16及び搬送ローラ18が位置し、このゲートローラ16及び搬送ローラ18より外側の位置に2個の落し込み部21と2組のセンサ22の光を通す検知孔24がそれぞれ左右対称に設けられている。
図3は紙幣ガイド板14の部分側断面図で、この図に示したように落し込み部21における紙幣搬送方向上流側の端面21aは紙幣23の折れ曲がり部23aが進入しやすく、かつスムーズに案内されるように紙幣ガイド板14の紙幣搬送面14aに対してスロープ状に形成され、また紙幣搬送方向下流側の端面21bは紙幣23の折れ曲がり部23aが突き当たる突き当たり面として紙幣搬送面14aに対してほぼ垂直に形成されている。
【0026】
次に第1の実施例の作用を図1〜図8により説明する。
図4は折れ曲がった紙幣の例を示す斜視図、図5は切替えブレードが設けられた搬送路の側面図、図6は折れ曲がった紙幣と切替えブレードの関係を示す斜視図、図7は折れ曲がった紙幣の斜行発生状態を示す斜視図、図8は斜行した紙幣の検知状態を示す斜視図である。
【0027】
まず、図1において利用者により入出金部1に投入された紙幣23は紙幣押え13によりピックアップローラ12に押付けられる。
そして、ピックアップローラ12と繰出しローラ17及びゲートローラ16の回転により紙幣23は1枚ずつ分離されて入出金部1から紙幣ガイド板14、15間へ繰出され、下流側へ給送される。
【0028】
繰出された紙幣23は繰出しローラ17と搬送ローラ18の間に送り込まれるが、その際、2組のセンサ22により紙幣23の通過が検知されるので、この2組のセンサ22が紙幣を検知したタイミングや紙幣23の到達時間を監視することで、紙幣23の姿勢や搬送状態を検出することができる。
例えば、紙幣23が斜行して搬送されてきた場合には、左右2組のセンサ22により検知されるタイミングに時間差が生じるので、その検知タイミングに時間差が生じたときに紙幣23の斜行を検出することができる。
【0029】
ところで、利用者が投入する紙幣23の中には、図4(a)、(b)に示すように折れ曲った紙幣23、つまり長手方向に半分に折り、更にその半分に折って四つ折りにすることにより左右非対称の山と谷の折れ曲がり部23aができた紙幣23が混入していることがあり、このような折れ曲がり部23aを有する紙幣23が紙幣搬送路中に設けられた搬送方向切替え用の切替えブレード等へ搬送されると紙幣ジャムを生じる危険性が高くなる。
【0030】
例えば、図5に示すように第1の搬送路7により搬送された紙幣23を、紙幣収納部4aに対応する一時保留部3aに送り込む場合、第1の搬送路7に設けられた切替えブレード30により紙幣23の搬送方向が切替えられる。
この切替えブレード30は、通常、図6に示すように回転軸32に固定された筒状のボス部31の外周に一定の間隔で2個で設けられており、紙幣23はそれぞれの切替えブレード30の凹状に湾曲したガイド面31aにより一時保留部3aに案内されるが、その際、紙幣23の折れ曲がり部23aが切替えブレード30側に山状に突出した状態にあると、紙幣23がこの切替えブレード30を通過するとき、山状の折れ曲がり部23aが切替えブレード30間でボス部31に衝突して紙幣ジャムを生じることになる。
【0031】
本実施例では、図4(b)に示したように四つ折りによって右に谷状、左に山状の折れ曲がり部23aができた紙幣23が入出金部1から繰出された場合、図7に示すように山状の折れ曲がり部23aは紙幣ガイド板14に設けられた落し込み部21に落ち込むことなく搬送されて行くが、谷状の折れ曲がり部23aは落し込み部21の紙幣搬送方向上流側のスロープ状の端面21aの案内により落し込み部21内に滑り落ち、下流側の端面21bに突き当たる。
【0032】
そのため、紙幣23は図8に示すように落し込み部21の下流側の端面21bを中心に回転し、これにより紙幣23の左側の部分は右側の部分より先行するため、紙幣23は斜行した状態となり、先行した紙幣23の左側の部分は下流の検知孔24に早く到達するため、左右の検知孔24に対応する2組のセンサ22の検知タイミングに時間差が生じることになる。
【0033】
従って、この2組のセンサ22の検知タイミングを図示しない制御部が監視することで、検知タイミングに時間差が生じたとき、折れ曲がり部23aを有する紙幣23が搬送されてきたことを検出することができる。
図4(a)に示したように四つ折りによって左に谷状、右に山状の折れ曲がり部23aができた紙幣23が入出金部1から繰出された場合も同様に検出することができる。
【0034】
このように折れ曲がり部23aを有する紙幣23を検出した場合、制御部はピックアップローラ12、繰出しローラ17及び搬送ローラ18の回転を停止させ、紙幣押さえ13をピックアップローラ12から離れる方向へ所定距離移動させて、入出金部1内の紙幣23とピックアップローラ12との間に隙間を作り、繰出しローラ17及び搬送ローラ18を逆方向へ回転させて折れ曲がり部23aを有する紙幣23を入出金部1内に戻す。
【0035】
この場合、図1に示すように入出金部1底面の紙幣出入口1aからセンサ22による紙幣23の検知位置までの距離を紙幣23の繰出方向の長さ(短手方向の長さ)より短くすることで、入出金部1に戻される紙幣23の後端(戻し方向の先端)が、紙幣出入口1aから繰出されようとする後続の紙幣23に衝突することなく重なった状態になっている間に逆送りすることができるので、紙幣ジャムを生じさせることなく折れ曲がり部23aを有する紙幣23を整然と入出金部1内に戻すことができる。
【0036】
その後、制御部はシャッタ11を開き、利用者に対して、折れ曲がり部23aを有する紙幣23を抜取り、折れ曲がり部23aを矯正して再投入するよう促すメッセージを図示しない表示部に表示したり、音声ガイダンスを行う。
これにより、利用者が折れ曲がり部23aを有する紙幣23を入出金部1から抜き取り、折れ曲がり部23aを矯正して入出金部1に再投入すると、制御部はシャッタ11を閉じて分離繰出し動作を再開する。
【0037】
また、制御部は入出金部1から繰出された紙幣23がセンサ22に到達するまでの時間監視を行い、所定時間経過しても紙幣23がセンサ22で検知されない場合、ピックアップローラ12、繰出しローラ17及び搬送ローラ18の回転を停止させ、紙幣押さえ13をピックアップローラ12から離れる方向へ所定距離移動させて、入出金部1内の紙幣23とピックアップローラ12との間に隙間を作り、繰出しローラ17及び搬送ローラ18を逆方向へ回転させるよう制御する。
【0038】
これにより左右の折れ曲がり部23aがともに落し込み部21の端面21bに突き当たって搬送されなくなった紙幣23を検出できるので、その紙幣23を入出金部1内に戻し、前記と同様に利用者に折れ曲がり部23aを矯正させて入出金部1に再投入させ、分離繰出し動作を再開する。
この場合の時間監視の開始タイミングは、1枚目の紙幣23の場合、ピックアップローラ12等の回転開始時とし、2枚目以降は先行する紙幣23の通過がセンサ22で検知されたときとすることができるが、紙幣入出口1aにセンサを設けて、このセンサによる紙幣23の先端検知時としてもよい。
【0039】
以上説明した第1の本実施例によれば、紙幣搬送路中を搬送すると紙幣ジャムを起こす可能性の高い折れ曲がり部を有する紙幣が入出金部から繰出された場合、繰出し直後にその紙幣の左右の一方の折れ曲がり部を落し込み部の端面に衝突させて紙幣に斜行を発生させ、その斜行を落し込み部の下流に配置されたセンサで検知するか、センサへの紙幣到達時間を監視して検出するようにしているため、折れ曲がり部を有する紙幣を入出金部からの繰出し直後に確実に検出することができるという効果が得られる。
【0040】
また、折れ曲がりを有する紙幣を検出すると、その紙幣を入出金部に戻すようにしているため、紙幣の折れ曲がりを利用者に矯正させて再投入させることが可能になり、これにより折れ曲がりを有する紙幣が搬送路中を搬送されることに起因する紙幣ジャムの発生を未然に防ぐことができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0041】
図9は第2の実施例を示す紙幣ガイド板14の部分側断面図である。
この第2の実施例は、落し込み部21の紙幣搬送方向下流側の端面21bを紙幣ガイド板14の紙幣搬送面14aより寸法L1だけ低くしたもので、その他の構成は第1の実施例と同様である。
このようにした第2の実施例では、紙幣23の折れ曲がり部23aが寸法L1以上の高さの場合のみ落し込み部21の端面21bに衝突させて紙幣23に斜行を生じさせることができるため、折れ曲がり部23aの高さが高い(折れ曲がりの大きい)紙幣23、つまりジャムを発生する可能性が極めて高い紙幣23のみを検出することが可能となり、それによりジャムを発生する可能性の高い紙幣23のみを入出金部1に戻して利用者に折れ曲がり部23aを矯正させることができるので、無駄な入出金部1への戻し動作を行わなくても済み、効率のよい矯正が可能になるという効果が得られる。
【実施例3】
【0042】
図10は第3の実施例を示す紙幣ガイド板14の部分側断面図である。
この第3の実施例は、落し込み部21の下流側の端面21bに面取り部21cを設けて、端面21bを紙幣ガイド板14の紙幣搬送面14aより寸法L1だけ低くしたもので、その他の構成は第1の実施例と同様である。
このようにした第3の実施例では、第2の実施例と同様に紙幣23の折れ曲がり部23aが寸法L1以上の高さの場合のみ落し込み部21の端面21bに衝突して紙幣23に斜行を生じさせることができるため、第2の実施例と同様の効果が得られ、折れ曲がり部23aの高さが低い紙幣23は、その折れ曲がり部23aが面取り部21cに案内され、その際、折れ曲がり部23aは面取り部21cで押されて平らにならされて下流側に通過して行くため、より確実にジャムの発生を防止できることになる。
【実施例4】
【0043】
図11は第4の実施例を示す紙幣ガイド板14の部分斜視断面図である。
この第4の実施例は、紙幣ガイド板14の紙幣搬送面14aに落し込み部21の上流から下流にいたる長さでかつ前記寸法L1の高さのリブ25を複数本並行に設け、このリブ25上を紙幣23が搬送されるようにすることで、落し込み部21の下流側の端面21bがリブ25の頂部から寸法L1だけ低くなるようにすると共に、リブ25間の間隔L2を例えば図6に示した切替えブレード30間の間隔つまり折れ曲がり部23aを有する紙幣20の先端が衝突する可能性のある部材の配置間隔より狭くしたものである。
【0044】
この他の構成は第1の実施例と同様である。
このようにした第4の実施例も、第2の実施例と同様に紙幣23の折れ曲がり部23aが寸法L1以上の高さの場合のみ落し込み部21の端面21bに衝突して紙幣23に斜行を生じさせることができるため、第2の実施例と同様の効果が得られる他、以下の効果も得られる。
【0045】
すなわち、この第4の実施例では、落し込み部21に設けたリブ25間の間隔L2を、紙幣搬送方向の下流側に配置される切替えブレード30間の間隔より狭くしているため、折れ曲がり部23aが落し込み部21の端面21bに衝突することなく通過する紙幣23は下流の切替えブレード30のボス部31等に引っかかることはないので、良好に搬送でき、ジャムの発生の可能性の高い紙幣23のみを検出できるという効果が得られる。
【0046】
尚、上述した第2〜第4の実施例でも、第1の実施例と同様に時間監視を行うものとし、それによる折れ曲がりを有する紙幣の検出も可能にする。
また、上述した第1〜第4の各実施例において、左右の落し込み部21は紙幣23の幅(長手方向の長さ)以内の範囲に設けるものとする。これは次の理由による。
図12は左右の落し込み部21を紙幣23の幅以上の範囲に設けて、左右の落し込み部21の外側端を紙幣ガイド板14の両側で開放した例を示す斜視図である。
【0047】
一般に、紙幣23には流通によって図12に示したように角部23bや23c等が折れたものが多く見られる。
このような角部23bや23c等が折れた紙幣23は下流の搬送路に送り込まれてもジャムを生じる恐れはないが、前記のように左右の落し込み部21を紙幣23の幅以上の範囲に設けられていると、このような折れた角部23bや23cが落し込み部21の端面21bに衝突して紙幣23に斜行が生じるため、入出金部1に戻されてしまうことになる。
【0048】
従って、このような無駄な動作を行わないために、本発明では、左右の落し込み部21は紙幣23の幅(長手方向の長さ)以内の範囲に設けるものとしている。
以上、各実施例について説明したが、これに限られるものではない。
例えば、上述した各実施例では、紙幣入出金装置を例にして説明したが、入金専用の装置にも適用可能である。
また、図1に示したように紙幣ガイド板14、15をS字状に形成し、落し込み部21の下流側に位置する湾曲部Bに紙幣ガイド板15に同様の落し込み部21と図示しないセンサを設けることで紙幣23の両面で折れ曲がり部23aを端面21bに衝突させ、これにより紙幣の斜行当を検出できるようにすれば、更に効果は高いものとなる。
【0049】
また、各実施例において、落し込み部21は紙幣ガイド板14を貫通する穴として形成するものとしたが、窪み状に形成してもよく、要は紙幣の折れ曲がり部23aを落し込み部21の下流側の端面に衝突させられる構造であればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 入出金部
1a 紙幣出入口
2 鑑別部
3a〜3d 一時保留部
4a〜4d 紙幣収納部
5 リジェクト収納部
6 取忘れ紙幣収納部
7 第1の搬送路
8 第2の搬送路
9 第3の搬送路
10 第4の搬送路
12 ピックアップローラ
13 紙幣押え
14 紙幣ガイド板
15 紙幣ガイド板
16 ゲートローラ
17 繰出しローラ
18〜20 搬送ローラ
21 落し込み部
21a、21b 端面
21c 面取り部
22 センサ
23 紙幣
23a 折れ曲がり部
25 リブ
30 切替えブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金紙幣を投入する紙幣投入部と、この紙幣投入部から紙幣を1枚ずつ繰出す繰出しローラを備えた紙幣処理装置において、
互いに対向する搬送面の間で前記紙幣投入部から繰出された紙幣を案内する一対の紙幣ガイド板を設け、該一対の紙幣ガイド板は湾曲部を有し、
該湾曲部がなす円弧にあって、外側の円弧に当たる湾曲部に紙幣の落し込み部を設けたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部は、繰出しローラを中央として左右両側に設けたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部は紙幣搬送方向上流側の端面を紙幣搬送面に対してスロープ状とし、下流側の端面を紙幣搬送面に対してほぼ垂直としたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
紙幣搬送方向における前記落し込み部の下流側で紙幣を検出する2組のセンサを設け、前記紙幣投入部からこのセンサの紙幣検知位置までの距離を紙幣搬送方向における紙幣の長さ以下としたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
紙幣搬送方向における前記落し込み部の下流側に位置する別の落し込み部を他方の紙幣ガイド板に設けたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部の下流側の端面は、前記紙幣ガイド板の紙幣搬送面より所定寸法低くしたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部の下流側の端面に面取り部を設けて、該下流側の端面を前記紙幣ガイド板の紙幣搬送表面より所定寸法低くしたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部に、前記紙幣ガイド板の紙幣搬送面より所定寸法高い複数のリブを前記落し込み部の上流側から下流側に至るように設けると共に、リブ間の間隔は紙幣搬送方向下流で紙幣搬送方向と直行する方向に配置されていて紙幣の先端が衝突する可能性のある部材の配置間隔以下にしたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
前記落し込み部は、取扱い紙幣のうちの最も幅の狭い紙幣の幅以内の範囲に設けたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項10】
請求項4〜請求項9のいずれか1項に記載の紙幣処理装置において、
2組のセンサの紙幣検知タイミングを監視し、紙幣検知タイミングに差が生じたことを検出した場合、前記繰出しローラを逆転して紙幣を紙幣投入部に戻すようにしたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の紙幣処理装置において、
2組のセンサへの紙幣の到着時間を監視し、所定時間経過しても紙幣が検出されない場合、前記繰出しローラを逆転して紙幣を紙幣投入部に戻すようにしたことを特徴とする紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−99150(P2012−99150A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27333(P2012−27333)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2006−186956(P2006−186956)の分割
【原出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】