説明

紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法

【課題】表裏状態がばらばらの紙幣を整列させるときの処理時間を短縮可能にする。
【解決手段】一時保留部から繰り出される紙幣は、反転要否判断部11にてターン部による表裏反転を必要とするターン紙幣か表裏反転を必要としないスルー紙幣かが判断され、繰出済紙幣判断部12では、先に繰り出した紙幣がターン紙幣であるか否かを判断する。ここで、繰出間隔調整部13では、先に繰り出した紙幣がターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣がスルー紙幣である繰出パターンと繰出済紙幣判断部12によって判断されたとき、次に繰り出す紙幣を繰出開始するまでの繰出間隔を、他の繰出パターンのときの繰出間隔よりも長く調整する。このように、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に衝突する危険があるときだけ、次に紙幣を繰り出すタイミングを遅らせることで、表裏整列処理を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法に関し、特に現金自動預払機などが入出金するときに紙幣の表裏を整列状態にする紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預払機などにおいて、たとえば入金された紙幣を揃えて金庫に収納したり、金庫に収納されている紙幣を出金したりするときに、紙幣の表裏を整列させる紙幣表裏整列装置を備えたものが知られている。紙幣表裏整列装置は、鑑別された紙幣を搬送する途中に紙幣の表裏を反転させるターン部を備えている。鑑別部を紙幣が通過するとき、鑑別部では、その紙幣が表であるか裏であるかを判別している。その判別の結果、先に通過した紙幣の表裏情報と次に通過した紙幣の表裏情報とを知ることができる。先に通過した紙幣の表裏状態、さらにその前の紙幣が表裏を反転させたかどうかの情報とから、次に通過した紙幣が表裏を反転させる必要のないスルー紙幣か反転させる必要のあるターン紙幣かを判断することができる。鑑別部を通過した紙幣が表裏を反転させる必要のないスルー紙幣の場合、そのスルー紙幣は、ターン部で何もされずに通過させられる。表裏を反転させる必要のあるターン紙幣の場合、そのターン紙幣は、ターン部で表裏が反転される。
【0003】
ターン部は、鑑別部の下流側で紙幣を搬送させる搬送路の途中に分岐された直進搬送路と分岐搬送路とを有し、分岐搬送路の出口が直進搬送路の出口で合流する構成のものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
図10はターン部の動作を説明する図であって、(A)はスルー紙幣がターン部を通過するときの動作を示し、(B)はターン紙幣がターン部によって表裏反転されるときの動作を示している。
【0005】
ターン部100にスルー紙幣101が導入されたときには、図10の(A)に示したように、スルー紙幣101は、直進搬送路102をそのまま直進して搬送される。一方、ターン紙幣103が導入されたときには、図10の(B)に示したように、ターン紙幣103は、直進搬送路102から分岐して分岐搬送路104へ導入される。この分岐搬送路104では、分岐搬送路104へ導入されてきたターン紙幣103は、今まで搬送方向後縁であった部分が今度は前縁となって分岐搬送路104から導出されることで表裏が反転され、その後、直進搬送路102の出口にて合流される。
【0006】
このような構成のターン部100では、スルー紙幣101がターン部100を通過するときの移動距離よりも、ターン紙幣103がターン部100を通過するときの移動距離の方が必然的に長くなる。そのため、ターン部100の通過時間も、スルー紙幣101の場合よりもターン紙幣103の方が長くなる。
【0007】
したがって、ターン部100へ繰り出す間隔を、スルー紙幣101をターン部100へ繰り出す間隔に合わせて設定すると、ターン紙幣103がターン部100でターン動作をしている間にスルー紙幣101がターン紙幣103に追い付いてしまうことがある。スルー紙幣101がターン紙幣103に追い付くと、スルー紙幣101およびターン紙幣103が衝突し、そこで紙詰まり現象を起こす原因となる。
【0008】
そこで、このような現象を回避するために、スルー紙幣を迂回搬送してスルー紙幣の移動距離とターン紙幣の移動距離とが同じにすることが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。また、別の回避方法としては、紙幣の繰出間隔を十分大きくとって時間的に確実に衝突することがないようにすることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−89667号公報(段落〔0017〕,図2)
【特許文献2】特開昭62−136474号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、スルー紙幣およびターン紙幣の移動距離を同じにする場合およびスルー紙幣およびターン紙幣の繰出間隔を十分大きくとる場合のいずれにおいても、整列処理に長い時間がかかるという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、表裏状態がばらばらの紙幣に対する整列処理時間を短縮可能にする紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記の課題を解決するために、一時保留部から繰り出された紙幣の表裏を整列することができるターン部を備えた紙幣表裏整列装置において、前記一時保留部から繰り出される紙幣が前記ターン部による表裏反転を必要とするターン紙幣か表裏反転を必要としないスルー紙幣かを判断する反転要否判断部と、前記反転要否判断部の判断に基づき、前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣か否かを判断する繰出済紙幣判断部と、前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣が前記スルー紙幣である繰出パターンのとき、次に繰り出す紙幣を繰出開始する繰出間隔を、他の繰出パターンのときの繰出間隔よりも長くする繰出間隔調整部と、を備えていることを特徴とする紙幣表裏整列装置が提供される。
【0013】
また、本発明では、一時保留部から繰り出された紙幣の表裏を整列する紙幣表裏整列方法において、前記一時保留部に保留されている紙幣がターン部による表裏反転を必要とするターン紙幣か表裏反転を必要としないスルー紙幣かを判断し、前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣か否かを判断し、先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣が前記スルー紙幣である繰出パターンのとき、次に繰り出す紙幣を繰出開始する繰出間隔を、他の繰出パターンのときの繰出間隔よりも長くする、ことを特徴とする紙幣表裏整列方法が提供される。
【0014】
このような紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法によれば、ターン部による表裏反転処理にかかる時間のために、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に衝突する危険があるときだけ、次に紙幣を繰り出すタイミングを遅らせるようにした。これにより、表裏整列処理を短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の紙幣表裏整列装置および紙幣表裏整列方法は、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に衝突する危険があるときだけ、繰出間隔を長くしたので、先に繰り出した紙幣が同一方向の紙幣が多いほど、表裏整列処理を短縮できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による紙幣表裏整列装置の構成を示す図である。
【図2】本発明による紙幣表裏整列装置を適用した現金自動預払機の紙幣ユニットの構成例を示す図である。
【図3】一時保留部の構成例を示す図である。
【図4】現金自動預払機の制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【図5】鑑別部の鑑別結果の例を示す図である。
【図6】紙幣表裏整列装置の反転要否判断部での判断例を示す図であって、(A)はスルー紙幣が続く場合を示し、(B)はターン紙幣が続く場合を示し、(C)はスルー紙幣の後にターン紙幣が続く場合を示し、(D)はターン紙幣の後にスルー紙幣が続く場合を示している。
【図7】紙幣表裏整列装置の制御部における一時保留部繰出処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】繰出間隔の詳細を示す図であって、(A)は繰出間隔が短い場合を示し、(B)は繰出間隔が長い場合を示している。
【図9】表裏状態の異なる紙幣を所定枚数繰り出したときにかかる時間を示した図である。
【図10】ターン部の動作を説明する図であって、(A)はスルー紙幣がターン部を通過するときの動作を示し、(B)はターン紙幣がターン部によって表裏反転されるときの動作を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、紙幣表裏整列装置を、現金自動預払機が備える一時保留部の紙幣繰出機構に対して繰出制御を行う部分に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明による紙幣表裏整列装置の構成を示す図である。
本発明による紙幣表裏整列装置10は、反転要否判断部11と、繰出済紙幣判断部12と、繰出間隔調整部13と、ピックローラ駆動部14とを備えている。反転要否判断部11は、連続して搬送されてきた紙幣が表を向いているのか裏を向いているのかの情報を基に反転要否を判断する。繰出済紙幣判断部12は、先に繰り出した紙幣の反転要否を判断する。繰出間隔調整部13は、繰出済紙幣判断部12が判断した反転要否に応じて、次の紙幣を繰出開始するまでの繰出間隔を調整する。ピックローラ駆動部14は、繰出間隔調整部13において調整された繰出間隔の経過後に、次に繰り出す紙幣の繰出動作を開始する。
【0019】
先に繰り出した紙幣がスルー紙幣であると繰出済紙幣判断部12が判断したとき、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に衝突する危険がないので、繰出間隔調整部13は、繰出間隔を短く調整する。また、先に繰り出した紙幣がターン紙幣であると繰出済紙幣判断部12が判断したときには、次に繰り出す紙幣がスルー紙幣であるなら、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に衝突する危険があるので、繰出間隔調整部13は、繰出間隔を長く調整する。次に繰り出す紙幣もターン紙幣である場合、次に繰り出す紙幣は、自身も反転するために先に繰り出した紙幣に追い付くことがなく、衝突する危険がないことから、繰出間隔調整部13は、繰出間隔を短く調整する。このように、先に繰り出した紙幣がターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣がスルー紙幣である繰出パターンの場合のみ、紙幣繰出間隔を長く設定する。それ以外の繰出パターンの場合では、紙幣繰出間隔を最小限の値に設定するので、複数の紙幣を整列処理する場合のトータルの処理時間を短縮することができる。
【0020】
紙幣表裏整列装置10は、また、金種によって紙幣の搬送方向の長さが相違する場合を考慮して、金種判別部15と、操出間隔設定部16とを備えている。操出間隔設定部16は、先に繰り出した紙幣の搬送方向の長さに応じて次の紙幣を繰り出すまでの操出間隔を設定する。これにより、紙幣の操出間隔を金種に応じた最適の間隔に設定することができる。
【0021】
図2は本発明による紙幣表裏整列装置を適用した現金自動預払機の紙幣ユニットの構成例を示す図、図3は一時保留部の構成例を示す図、図4は現金自動預払機の制御部のハードウェア構成例を示す図である。
【0022】
紙幣表裏整列装置10を適用した現金自動預払機の紙幣ユニット20は、紙幣入出金部21、鑑別部22、一時保留部23、ターン部24、金庫25〜30およびリジェクト庫31,32を備えている。
【0023】
紙幣入出金部21は、現金自動預払機の紙幣ユニット20が入金の取引を行うときに、紙幣33の受け入れを行い、出金の取引を行うときには、金庫25〜28から繰り出された紙幣が払い出される。
【0024】
鑑別部22は、入出金を行う搬送路に設置されてその搬送路を紙幣が通過するときに、その紙幣の真贋、金種、正損、裏表、重なりなどを鑑別する。このうち、紙幣表裏整列装置10では、紙幣の表裏情報が反転要否判断部11にて使用され、金種情報が金種判別部15にて使用される。
【0025】
一時保留部23は、入金取引の際に利用者が入金し、鑑別部22で鑑別された紙幣を一時的に保持し、取引完了後に金庫25〜28に収納する。一時保留部23は、図3に示したように、紙幣を積層して収納する収納部35を有し、その底部には、上下方向に移動自在なステージ36を有し、上部には、ピックローラ37が配置され、紙幣が出入りする位置には、搬送ローラ38が配置されている。搬送ローラ38によって搬送される紙幣の搬送路には、繰出センサ39が配置されている。この繰出センサ39は、発光素子と受光素子とを備え、搬送路を紙幣が通過していないとき、発光素子が発光した光を受光素子が受光し、搬送路を紙幣が通過しているときは、発光素子が発光した光を紙幣が遮光して受光素子が受光しない。繰出センサ39は、この受光素子が光を検出するかしないかで、紙幣の搬送状態を検出する。
【0026】
一時保留部23は、入金された紙幣を保留するとき、ステージ36が下方へ移動して紙幣を導入するために収納部35の上部に空間を確保し、中に導入された紙幣は、ステージ36の上に積み重ねられる。一時保留部23から紙幣を繰り出すときは、ステージ36が上昇して上に乗っている紙幣をピックローラ37へ押し当て、ピックローラ37が所定のタイミングで回転駆動されることにより、一番上の紙幣が搬送ローラ38へ向けて押し出される。このとき、搬送ローラ38は、回転駆動されており、ピックローラ37によって押し出された紙幣を受け取り、鑑別部22へ向けて搬送するよう繰り出す。繰り出された紙幣は、繰出センサ39が遮光を検出することによって搬送方向前縁が検出され、繰出センサ39が再び受光を検出することによって搬送方向後縁が検出され、すなわち、紙幣の通過が検出される。
【0027】
また、一時保留部23は、紙幣を入れたときに搬送方向後縁であった部分が出るときには搬送方向前縁となるので、入れたときと出したときとでは表裏が反転する特性を有している。この特性を利用して、出金取引の際に、金庫25〜28から繰り出された紙幣の表裏が整列していないときに、紙幣の表裏を反転させるターン部として使用することができる。
【0028】
ターン部24は、入金された紙幣が表裏混合状態にあるときにそれらを表だけまたは裏だけに整列した状態にするためのものであり、ここを出た紙幣は、表裏が整列された状態で金庫25〜28に収納される。
【0029】
金庫25〜28は、入金された紙幣を金種別に収納するものであり、出金時には、該当する金種の金庫25〜28から必要枚数の紙幣が繰り出される。入金された紙幣は、同じ金種の金庫25〜28に格納され、出金時には、入金された紙幣がリサイクルされる。なお、金庫25〜28は、2つ以上を1つの金種に割り当てたり、1つを2つ以上の金種に割り当てたりすることがある。
【0030】
金庫29,30は、主として、金庫25〜28のうち、出金により不足してきた金種の金庫に補充するための紙幣を収納するためのものである。ここでは、金庫29,30は、出金の多い2金種の紙幣をそれぞれ収納している。また、金庫29,30は、金庫25〜28が固定式であるのに対し、着脱可能なカセットになっており、容易に補充ができるようになっている。
【0031】
リジェクト庫31,32は、金庫25〜28から繰り出された紙幣のうち、鑑別部22が流通券として不適当であると判定した不良紙幣を収納する。不良紙幣としては、たとえば、破れていたり、斜行していたり、部分的に欠損していたり、ひどく汚れていたりした場合などの紙幣が該当し、これらは、出金されることなく、リジェクト庫31,32にて回収される。
【0032】
以上の構成の現金自動預払機の紙幣ユニット20において、入金取引のとき、紙幣33が束で紙幣入出金部21に投入されると、紙幣入出金部21は、投入された紙幣33を1枚ずつ分離して繰り出す。繰り出された紙幣33は、鑑別部22にて鑑別され、一時保留部23に収納される。すべての紙幣33が鑑別され、一時保留部23に収納された後、現金自動預払機の紙幣ユニット20は、確認画面を出す。入金したユーザによる確認がなされると、一時保留部23は、収納された紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣は、鑑別部22を通って該当金種の金庫25〜28まで搬送され、収納される。なお、紙幣33の表裏反転が必要と判断された場合はターン部24を経由して金庫25〜28まで搬送され、収納される。
【0033】
一時保留部23に収納されている紙幣の金種および表裏の情報は、最初に鑑別部22を通過したときに認識しており、金庫25〜28に収納するために一時保留部23から収納されている紙幣を繰り出すときに、繰出間隔調整部13による繰出間隔の調整が行われる。繰出間隔の調整は、繰り出される紙幣の表裏の情報に基づき、繰出済紙幣判断部12の判断および繰出間隔設定部16の設定に従って行われる。
【0034】
出金取引のときには、まず、該当する金種の金庫25〜28から必要枚数の紙幣が繰り出され、鑑別部22でチェックを受けた後、紙幣入出金部21へ搬送される。鑑別部22のチェックで表裏が整列していないと判断された場合は、一時保留部23を使って反転してから紙幣入出金部21へ搬送される。
【0035】
現金自動預払機の紙幣ユニット20では、一時保留部23のステージ36、ピックローラ37、搬送ローラ38、繰出センサ39などを制御する制御部40を備えている。この制御部40は、図4に示したように、CPU(Central Processing Unit)41によって装置全体が制御されている。CPU41には、バス47を介してROM(Read Only Memory)42、RAM(Random Access Memory)43、タイマ44、ドライバ45および通信インタフェース46が接続されている。制御部40は、また、鑑別部22がバス47に接続され、ドライバ45には、センサ48およびアクチュエータ49が接続されている。センサ48には、一時保留部23の繰出センサ39を含んでいる。アクチュエータ49には、ターン部24の入口に設けられて搬送方向を切り替えるゲート駆動用ソレノイド、搬送ベルトおよび搬送ローラ38の駆動用モータ、ピックローラ37の駆動用モータ、一時保留部23のステージ36を昇降させるモータなどを含んでいる。
【0036】
ROM42は、フラッシュメモリなどによって構成され、OS(Operating System)のプログラム、一時保留部23の紙幣表裏整列処理を行うプログラムなどを含むファームウエアが格納されている。
【0037】
RAM43には、CPU41に実行させるOSのプログラムや実行中のアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM43には、CPU41による処理に必要な鑑別部22からの各種データが格納される。
【0038】
タイマ44は、紙幣の繰出間隔を計時する。なお、このタイマ44は、ここではハードウェアによって独立して設けられているが、同機能をソフトウェアによって実現することもできる。
【0039】
ドライバ45は、センサ48の検出結果をCPU41へ伝え、CPU41からの命令に従って各種のアクチュエータ49を制御駆動する。
通信インタフェース46は、ネットワーク50を介してホストコンピュータ51に接続され、ホストコンピュータ51との間で情報の送受信を行う。
【0040】
以上のようなハードウェア構成によって、本実施の形態の紙幣表裏整列処理機能を実現することができる。
図5は鑑別部の鑑別結果の例を示す図である。
【0041】
鑑別部22は、紙幣が通過するときに紙幣の画像を読み取り、画像処理をすることによって紙幣に関する各種情報を取得する。鑑別によって得られる情報は、たとえば、図5に示したように、方向情報、正/損情報、金種情報などであり、鑑別を行った紙幣毎にインデックス番号が付けられている。方向情報は、紙幣が表を向いているか、裏を向いているかの情報であり、これは、紙幣表裏整列装置10の反転要否判断部11にて使用される。反転要否判断部11では、積層されている紙幣のうち、隣接する紙幣の表裏の情報を基に、ターン部24による反転が必要かどうかが判断される。
【0042】
正/損情報は、鑑別した紙幣が正常券であるか、何らかの損傷がある不良券なのかを表す情報であり、この情報は、入金処理では、返却対象紙幣の判断に使用され、出金処理では、リジェクト庫31,32への収納対象紙幣の判断に使用される。金種情報は、紙幣表裏整列装置10では、金種判別部15で使用される。
【0043】
図6は紙幣表裏整列装置の反転要否判断部での判断例を示す図であって、(A)はスルー紙幣が続く場合を示し、(B)はターン紙幣が続く場合を示し、(C)はスルー紙幣の後にターン紙幣が続く場合を示し、(D)はターン紙幣の後にスルー紙幣が続く場合を示している。
【0044】
一時保留部23から順次繰り出される紙幣の並びとしては、この4種類(A)〜(D)の繰出パターンが考えられる。この中で、図6の(A)に示した繰出パターンは、先に繰り出した紙幣および次に繰り出す紙幣がいずれもスルー紙幣の場合である。この場合、先に繰り出した紙幣に次に繰り出す紙幣が衝突する危険はないので、繰出間隔調整部13は、次に繰り出す紙幣との繰出間隔を、たとえば、100msecに設定する。
【0045】
次に、図6の(B)に示した繰出パターンは、先に繰り出した紙幣も次に繰り出す紙幣もターン紙幣である場合である。この場合、次に繰り出す紙幣は、自身も表裏反転をするために先に繰り出した紙幣に追い付くことはなく、したがって衝突する危険もない。このため、繰出間隔調整部13は、次に繰り出す紙幣との繰出間隔を、たとえば、100msecに設定する。
【0046】
次の図6の(C)に示した繰出パターンは、先に繰り出した紙幣がスルー紙幣、次に繰り出す紙幣がターン紙幣の場合である。この場合、先に繰り出した紙幣に次に繰り出す紙幣が衝突する危険はないので、繰出間隔調整部13は、次に繰り出す紙幣との繰出間隔を、たとえば、100msecに設定する。
【0047】
そして、図6の(D)に示した繰出パターンは、先に繰り出した紙幣がターン紙幣、次に繰り出す紙幣がスルー紙幣の場合である。この場合、先に繰り出した紙幣が表裏反転をしている間に、次に繰り出す紙幣が先に繰り出した紙幣に追い付いて衝突する可能性を有しているので、繰出間隔調整部13は、次に繰り出す紙幣との繰出間隔を、たとえば、250msecに設定する。この繰出間隔は、ターン部24が紙幣を表裏反転させるのに要する時間より長くしてある。
【0048】
図7は紙幣表裏整列装置の制御部における一時保留部繰出処理の流れを示すフローチャート、図8は繰出間隔の詳細を示す図であって、(A)は繰出間隔が短い場合を示し、(B)は繰出間隔が長い場合を示している。
【0049】
図7に示す一時保留部繰出処理は、入金されたすべての紙幣が鑑別部22で鑑別され、一時保留部23に保留された後に開始される。制御部40のCPU41は、まず、既に繰り出されている前繰出紙幣がターン紙幣か否かを判断し(ステップS1)、繰出紙幣がターン紙幣でなければ、次繰出開始タイマ(タイマ44)を10msecに設定する(ステップS3)。ここで、図8の(A)に示したように、停止状態のピックローラ37が起動開始してから、紙幣が繰り出され、繰出センサ39が紙幣の通過を検出するまで90msecかかるとする。すると、紙幣の繰出間隔は、次繰出開始タイマが設定した10msecを加算して、100msecに設定されることになる。
【0050】
ステップS1の判断において、既に繰り出されている前繰出紙幣がターン紙幣である場合、CPU41は、次に繰り出す繰出紙幣がスルー紙幣か否かを判断する(ステップS2)。ここで、次繰出紙幣がスルー紙幣でなければ、CPU41は、次繰出開始タイマ(タイマ44)を10msecに設定する(ステップS3)。ステップS2の判断において、次繰出紙幣がスルー紙幣である場合、CPU41は、次繰出開始タイマを160msecに設定する(ステップS4)。この場合、紙幣繰出間隔は、図8の(B)に示したように、250msecに設定されることになる。
【0051】
次に、CPU41は、次繰出開始タイマの設定した待ち時間がタイムアウトした後、ピックローラ37を起動し、積層して収納されている紙幣を押し出して搬送ローラ38に渡し、搬送ローラ38が繰り出すという繰出処理を行う(ステップS5)。
【0052】
次に、CPU41は、図示しないセンサにて、一時保留部23に紙幣が残っているかどうかを判断する(ステップS6)。一時保留部23がエンプティ状態なら、この繰出処理は終了し、まだ、一時保留部23に紙幣が残っている場合には、CPU41は、処理をステップS1に戻す。
【0053】
図9は表裏状態の異なる紙幣を所定枚数繰り出したときにかかる時間を示した図である。
比較のために、現金自動預払機が1回の入金取引で取り扱える最大枚数の200枚の紙幣を毎秒4枚の速度で、すなわち、紙幣繰出間隔が変わることなく一定の250msecで繰り出すとした場合、繰り出しにかかる時間は、50秒である。
【0054】
次に、一時保留部23にターン紙幣または、スルー紙幣のどちらかしか収納されていない場合は、衝突の危険性は無いため、繰り出しにかかる時間は、最短の20秒となる。このとき、繰り出される紙幣の速度は、毎秒10枚になる。
【0055】
そして、一時保留部23にターン紙幣とスルー紙幣とが交互に収納されている場合、繰出にかかる時間は、35秒となる。それでも、繰出間隔が一定の場合に比較して、15秒の時間短縮になる。
【0056】
なお、上記の実施の形態では、紙幣を短手方向に搬送・収納する場合を想定している。また、紙幣の短手方向の寸法が金種すべて同じである場合は、図1に示した紙幣表裏整列装置10の繰出間隔設定部16は、金種に関係なく同じ値を設定することになる。
【符号の説明】
【0057】
10 紙幣表裏整列装置
11 反転要否判断部
12 繰出済紙幣判断部
13 繰出間隔調整部
14 ピックローラ駆動部
15 金種判別部
16 繰出間隔設定部
20 紙幣ユニット
21 紙幣入出金部
22 鑑別部
23 一時保留部
24 ターン部
25〜30 金庫
31,32 リジェクト庫
33 紙幣
35 収納部
36 ステージ
37 ピックローラ
38 搬送ローラ
39 繰出センサ
40 制御部
41 CPU
42 ROM
43 RAM
44 タイマ
45 ドライバ
46 通信インタフェース
47 バス
48 センサ
49 アクチュエータ
50 ネットワーク
51 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時保留部から繰り出された紙幣の表裏を整列することができるターン部を備えた紙幣表裏整列装置において、
前記一時保留部から繰り出される紙幣が前記ターン部による表裏反転を必要とするターン紙幣か表裏反転を必要としないスルー紙幣かを判断する反転要否判断部と、
前記反転要否判断部の判断に基づき、前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣か否かを判断する繰出済紙幣判断部と、
前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣が前記スルー紙幣である繰出パターンのとき、次に繰り出す紙幣を繰出開始する繰出間隔を、他の繰出パターンのときの繰出間隔よりも長くする繰出間隔調整部と、
を備えていることを特徴とする紙幣表裏整列装置。
【請求項2】
前記反転要否判断部は、紙幣を鑑別したときに取得した紙幣の表または裏を表す方向情報を基に、前記一時保留部に収納されているすべての紙幣について表裏反転を必要とするか否かを判断していることを特徴とする請求項1記載の紙幣表裏整列装置。
【請求項3】
前記繰出間隔調整部は、先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣が前記スルー紙幣である繰出パターンのときの繰出間隔を、前記ターン部が前記ターン紙幣を表裏反転するのに要する時間より長くなるよう調整することを特徴とする請求項1記載の紙幣表裏整列装置。
【請求項4】
一時保留部から繰り出された紙幣の表裏を整列する紙幣表裏整列方法において、
前記一時保留部に保留されている紙幣がターン部による表裏反転を必要とするターン紙幣か表裏反転を必要としないスルー紙幣かを判断し、
前記一時保留部から先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣か否かを判断し、
先に繰り出した紙幣が前記ターン紙幣であり、次に繰り出す紙幣が前記スルー紙幣である繰出パターンのとき、次に繰り出す紙幣を繰出開始する繰出間隔を、他の繰出パターンのときの繰出間隔よりも長くする、
ことを特徴とする紙幣表裏整列方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69217(P2013−69217A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208875(P2011−208875)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】