説明

紙幣識別機

【課題】 自動販売機,両替機等に搭載される紙幣識別機において,その動作設定の変更を簡潔にできる方法及び紙幣識別装置を提供する。
【解決手段】 紙幣識別機1は,紙幣の表面を少なくとも1個の磁気センサ−,反射型あるいは透過型の光センサ−を用いて走査し,当該光センサ−の出力に基づき前記紙幣の真偽を識別し,識別条件や識別機の動作設定を記憶する不揮発性メモリを内蔵している。識別条件や不揮発性メモリ−の書き換え等を,紙幣と同じように投入口よりカ−ドを差し込むだけでディップスイッチなどによらずとも簡単に条件変更ができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,各種商品の自動販売機,両替機等に内蔵されている紙幣識別機に関するものであり,特に容易に紙幣識別における識別条件や内蔵されている不揮発メモリ−の内容を簡単に変更することができる技術であり,紙幣以外の金券等を識別するための紙葉類識別機にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動販売機等に使用されている紙幣識別機は,光センサ−などにより,紙幣の濃度パタ−ンを読み取り,パタ−ンマッチングなどの比較手段により,紙幣の真偽を識別している。そして識別率の強弱,内部制御に関わる,たとえば識別にかかわる読み取り時間や信号特性といった各種仕様については外部からディップスイッチ等により変更を行なっている。ディップスイッチの変更はわざわざ自動販売機を開けなくてはできず,面倒でありまた各種設定についてもディップスイッチの数量分のみの変更しか出来ず,後になって増やそうとしても困難であった。
【0003】
このような背景のもと、引用文献1には、ROMの代わりにメモリカードに識別プログラムや識別テーブルを格納しておき、更新の際にメモリカードを交換する方法が開示されている。この場合、メモリカード内の識別プログラムや識別テーブルのバージョンが紙幣識別機の表示部に表示され、これを作業者ないしはオペレータが確認し,変更するものである。
【0004】
また,引用文献2においては,メモリカ−ド等の記憶媒体あるいはシリアル通信によって更新する方法が開示されている。これらの方法ではカードリ−ダ−や通信手段などの装置が必要であり,高価なものとなり,紙幣を偽札と真札と識別する単機能な廉価の識別機には不向きである。
【0005】
【特許文献1】特許第2824439号公報
【特許文献1】特開2000-231648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,上記のような紙幣識別機においては,新たに紙幣の識別率を下げたい。たとえば,偽札が発覚した場合においては対策が採られるまで,今までの識別率を下げてきびしく判定することで,一時的に偽札をはねるようにすることにより,利用者に迷惑をかけないようにするわけであるが,それには内部のディップスイッチの切替によっておこなうのが通例である。
【0007】
しかし上記ディップスイッチの切替をするためには,外部から変更することは出来ず,装置の扉をあける必要がある。また設定項目についても,ディプスイッチの装着数に限定されるため,その設定数を超える場合は,ディップスイッチを増設せねばならず,コスト増につながっている。
【0008】
また客先の仕様については,識別時間や外部出力の信号特性などをそれぞれディプスイッチにより客先ごと設定を行なっている。識別機の使用用途によって,たとえば自動販売機や単なる両替機に接続される場合,信号特性が違うため,その設定を各仕様ごとディップスイッチの切替によって行なう必要性があり,工数がかかる。
【0009】
本発明は,このような問題に鑑みてなされたものであって,その目的とするところは,内部を開ける事なく,またメモリカ−ド等の記憶媒体やシリアル通信等,高価な装置を使わずとも,簡単に紙幣の識別率や信号特性といった各種設定を行なうことができる紙幣識別機における動作設定方法とそれらを備えた紙幣識別機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前期の目的を達成すべく,本発明の紙幣識別機においては,紙幣状の紙またはフィルム等にあらかじめ設定内容について,暗号化をほどこしたものを印刷したデータ変更記憶手段,それを紙幣投入口に投入することで,識別機に読みこませる読み込み手段を介して,簡単に設定を変更することができることを特徴としている。
【0011】
上記読み込み手段は,紙幣の光学的濃度を判定する識別機においては,既存のハ−ドウェアで実現でき,あらたにコスト増になることがなく経済性にすぐれていることを特徴としている。
【0012】
更に,暗号化をほどこしたものを印刷したデ−タ変更記録手段においては,紙幣と同じような大きさ,厚さであれば紙,フィルム状なものに限定されるものでなく,紙幣識別と同様に認識できる材質であればよいため,コスト等を考え,いろいろな選択ができることを特徴とする。
【0013】
本発明による紙幣識別機において,読み込み手段により読み取られた明暗波形は,2値化されチェックディジットやサムチェックなどのエラ−チェックを施した後,コマンドコ−ドとしてデコ−ドされ,命令を実行することを特徴としている。コマンドコ−ドはエラ−チェック機能を持つコ−ド体系となっているため,誤って他の図形などを認識することがなく,確実に変更したい命令を実行することができる。
【0014】
また要求された変更は,内部の不揮発メモリ−に保存され,電源をオフした後も消えることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による紙幣識別機によれば, 紙幣状の紙またはフィルム等にあらかじめ設定内容について,暗号化をほどこしたものを印刷したデータ変更記憶手段を通常の紙幣と同じように投入することにより,識別機に命令を実行させることができ,内部をあける事もなく,高価な装置も使用せず,簡単に各種設定変更ができ,ディップスイッチ等も不要なため,コストを安くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明に関わる紙幣識別の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態に関わる識別機の概略構成をしめしてある。紙幣識別機1の紙幣搬送機構2の構成は一般的に使用されているものと同様である。すなわち,紙幣搬送機構2は,紙幣3の挿入口4と,この挿入口4から挿入される紙幣3を搬送路に沿って搬送するためのロ−ラ群5とを備えている。この紙幣搬送機構2の搬送路には,例えば,透過型の光センサ−6が配置されている。光センサ−6は,搬送される紙幣3の一方の側に位置する発光素子6aと,反対側に位置する発光素子6bとを備えている。識別対象が厚い場合には,透過型センサ−の変わりに反射型センサを使用すればよい。
【0017】
紙幣識別機1はマイクロコンピュ−タからなる識別ユニット10を備えている。この識別ユニット10は,ドライバ7を介して搬送モ−タ8を駆動制御することにより,紙幣の搬送を制御する。また,光センサ−6の出力をA/D変換器11を介して受け取り,識別対象の紙幣3の濃度デ−タ−を検出する。CPU12は,ROM13に格納されているプログラムに従って,RAM14を作業領域として利用して,取得された濃度デ−タを,ROM13に格納されているマスタパタ−ンと比較する。比較した結果,識別対象の紙幣3が真札である場合には,そのまま紙幣3を取り込む。この後は,当該紙幣識別機が組み込まれている自動販売機,両替機等における動作が実行される。しかし,識別対象の紙幣3が偽札である場合には,搬送機構2を駆動して,挿入された紙幣3を挿入口4から排出する。
【0018】
図2は,あらかじめ設定変更しようとする内容,たとえば紙幣の識別率の変更等を暗号化にほどこし,それを印刷したデータ変更記憶手段としてのカ−ドであり,それを紙幣識別機に挿入するときのイメ−ジ図である。大きさや厚み,材質等については,通常の紙幣と同じように投入できるものならば,特に限定されるものではなく,紙,フィルムであってもよい。
【0019】

図3は,本例における紙幣識別機の設定変更を行なう時のフロ−チャ−トである。設定変更をほどこした,暗号化されたカ−ドを,紙幣投入口より投入すると,光センサ−6によりカ−ドにほどこされた図柄を読み取り,2値化された後デコ−ドされ,数字列へと変換される。その後サムチェックにより,書き換えのための有効な数字列かいなかの判定をした結果,書き換えのための有効な数字列の場合は,コマンド解析を経て,不揮発性メモリ,EEP-ROM15の内容を書き換える。その後カ−ドは真札と同様にとりこまれる。または偽札のように挿入口4より排出する設定も可能である。しかるにサムチェックの結果,書き換えに有効な数字列と認識されなかった場合は,紙幣の識別動作が行なわれ,真札,偽札の識別をする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した紙幣識別機の概略構成図。
【図2】データ−変更記憶手段としてのカ−ドとその挿入イメ−ジ図。
【図3】設定変更を行なう時のフロ−チャ−ト。
【符号の説明】
【0021】
1---紙幣識別機,
2---紙幣搬送機構, 3---紙幣, 4---紙幣挿入口,
5---搬送ロ−ラ, 6---光センサ−, 7---ドライバ,
8---搬送モ−タ−, 10---識別ユニット, 11---AD変換器, 12---CPU, 13---ROM, 14---RAM, 15---EEP-ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の表面を少なくとも1個の磁気センサ−,反射型あるいは透過型の光センサ−を用いて走査し,当該光センサ−の出力に基づき前記紙幣の真偽を識別し,識別条件や識別機の動作設定を記憶する不揮発性メモリを内蔵している紙幣識別機において,
紙幣状の紙またはフィルム等にあらかじめ設定内容について,暗号化をほどこしたものを印刷したデータ変更記憶手段を紙幣と同じように,紙幣投入口より投入することで,描かれた図形もしくは模様等の濃淡を走査し,識別機への命令に変換し,命令を実行する事で,紙幣の識別条件や内蔵不揮発メモリ−の内容を簡単に変更することができることを特徴とする紙幣識別機
【請求項2】
請求項1において,紙幣以外の金券など真偽の識別を行なうことを特徴とする紙葉類識別機


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−251949(P2006−251949A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64890(P2005−64890)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(597091362)株式会社 ちくま精機 (4)
【Fターム(参考)】