説明

紙幣識別装置

【課題】簡単なハードウェアの紙幣識別装置で、紙幣の印刷インクの磁気パターンを広いダイナミックレンジで詳細に検出する。
【解決手段】紙幣を所定の速度で搬送し、搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッドで検出して、第1増幅回路(センスアンプ)で増幅して、トレースデータを得る。この信号を基準電圧と比較して、2値信号を得る。積分回路で積分して増幅しアナログデータを得る。2値信号とアナログデータを、それぞれ基準データと比較して、紙幣識別を行う。また、アナログデータを、増幅率を変えて増幅した2つのデータとすることにより、磁気が強い箇所の磁気パターンと弱い箇所の磁気パターンのそれぞれを、容易かつ正確に識別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣識別装置に関し、特に、紙幣の印刷インクの磁気パターンを広いダイナミックレンジで詳細に検出できる紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣の印刷に使用するインクには磁気成分が含まれているが、その強弱は、紙幣の絵柄によって様々である。これらの紙幣を識別するため、磁気ヘッドを用いて、紙幣に含まれる磁気を読み取る方法がある。一定の増幅率の出力を基に織別すると、磁気成分が多い箇所の出力は有効に識別できるが、少ない箇所の出力はほとんど電圧が変化せず、識別が困難となる。以下に、従来の紙幣識別方法をいくつかあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「紙幣の識別装置」は、印刷パターンが異なる紙幣をも、精度よく識別できるものである。磁性インクにより印刷された紙幣の所定印刷部分に含まれる磁気をスキャンニングにより検出する。その検出信号をパルス化して、予め記憶した基準信号と比較することにより、紙幣の種別を判別する。
【0004】
特許文献2に開示された「紙幣識別装置」は、搬送手段の搬送速度が低下しても、真紙幣の受付率が低下しないようにしたものである。搬送手段の搬送速度に応じて、増幅手段の増幅率を切り替える。あるいは、電圧比較手段の基準電圧レベルを切り替える。このようにして、紙幣の磁気信号の電圧レベル特性を分析することにより、紙幣識別装置への供給電源電圧の低下や周囲温度の変動により、搬送手段の搬送速度が低下しても、紙幣識別性能が維持できる。
【0005】
特許文献3に開示された「紙幣計数機における磁気検出回路の自動調整装置」は、紙幣の磁気インク検出用信号のレベル調整を精密に行うことにより、紙幣処理の信頼性を向上させたものである。紙幣計数機の磁気検出回路の自動調整装置を、磁気センサ、プリアンプ、オフセット制御用D/Aコンバータ、電圧制御型増幅器、ゲイン制御用D/Aコンバータ、A/Dコンバータ、中央処理装置から構成する。磁気センサが磁気基準紙を未検出の状態で、オフセットレベルを調整する。オフセットレベル調整終了後は、磁気基準紙を紙幣計数機の搬送路へ1枚流し、磁気基準紙から検出した信号に基づきゲインレベル調整を行う。
【0006】
特許文献4に開示された「紙幣識別装置」は、搬送される紙幣の磁性強度を検出する微分型磁気ヘッドを用いて紙幣を識別する紙幣識別装置であり、搬送速度のゆらぎ、変動、又は異なる速度の設定といったことがあっても、これに影響を受けない磁気信号を得ることができるようにしたものである。パルス発生手段で、紙幣の搬送距離に比例したパルスを発生する。信号補正手段で、デエンファシス回路を用いて、磁気検出手段(磁気ヘッド)からの出力信号を補正する。パルス発生手段によって所定のパルスを発生する毎に、信号補正手段により補正された磁気検出手段からの信号を、サンプリング手段でサンプリングする。
【0007】
特許文献5に開示された「紙葉計数装置」は、容易かつ高精度に、磁気センサの感度調節を行うことのできる紙幣計数装置である。磁気検出手段は、磁気成分を有する試験用媒体中に含まれる複数ブロックの磁気成分量に応じた信号値を出力する。記憶手段は、磁気検出手段から出力される各信号値を記憶する。差分算出手段は、記憶手段に記憶された各信号値をそれぞれ比較し、最低信号値と最高信号値との差を求める。平均値算出手段は、差分算出手段によって算出された差が、あらかじめ設定された設定値以上である場合、最値信号値を破棄するとともに、残りの信号値の平均値を算出する。一方、差が設定値未満である場合、すべての信号値の平均値を算出する。平均値算出手段によって算出された平均値を、報知手段で外部に報知する。
【特許文献1】特開昭61-82290号公報
【特許文献2】特開平03-223994号公報
【特許文献3】特開平05-094569号公報
【特許文献4】特開平09-180026号公報
【特許文献5】特開平11-066267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の紙幣識別装置では、紙幣に含まれる大まかな磁気成分をコピーした紙葉類を、真券として識別しまう可能性があるという問題がある。精度を高めようとすると、非常に精密な磁気センサと増幅器を必要とすることになり、装置が大掛かりになって管理が困難であり、コストもかかりすぎるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、簡単なハードウェアの紙幣識別装置で、紙幣の印刷インクの磁気パターンを広いダイナミックレンジで詳細に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明では、紙幣識別装置を、紙幣を所定の速度で搬送する搬送手段と、搬送手段で搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する磁気ヘッドと、磁気ヘッドで検出した信号を増幅する第1増幅回路と、第1増幅回路の出力信号を積分する積分回路と、積分回路の出力信号を増幅する第2増幅回路と、第2増幅回路の出力信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換手段と、第2増幅回路の出力信号を増幅する第3増幅回路と、第3増幅回路の出力信号を第2デジタル信号に変換する第2A/D変換手段と、第1増幅回路の出力信号と基準電圧とを比較して2値信号を出力する比較回路と、第1デジタル信号を第1基準パターンと比較する第1比較手段と、第2デジタル信号を第2基準パターンと比較する第2比較手段と、2値信号を2値基準パターンと比較する2値比較手段と、第1比較手段の出力信号と第2比較手段の出力信号と2値比較手段の出力信号とに基づいて紙幣の真贋を判定する判定手段とを具備する構成とした。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明では、磁気ヘッドの出力信号を、増幅率を変えた2つの出力とすることにより、磁気が強い箇所の磁気パターンと弱い箇所の磁気パターンのそれぞれを、容易かつ正確に識別できる。また、磁気ヘッドの出力信号を直接2値信号に変換したデータも識別データにすることにより、識別精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図8を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分し増幅しA/D変換してデジタルデータとし、また、磁気パターンデータを基準電圧と比較して2値データとし、2つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する紙幣識別装置である。
【0014】
図1は、本発明の実施例1における紙幣識別装置の紙幣磁気データのアナログ・デジタル変換方法を説明する図である。図1(a)は、ある紙幣の印刷インクの磁気パターンを磁気ヘッドでトレースしたモデルデータである。図1(b)は、磁気ヘッドの出力データを閾値に基づいて2値データに変換したデジタルデータである。図1(c)は、磁気ヘッドの出力データを積分したアナログデータである。
【0015】
図2は、紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部の全体構成示すブロック図である。図2において、磁気ヘッド1は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する手段である。第1増幅回路2は、磁気ヘッドで検出した信号を増幅する回路である。積分回路3は、第1増幅回路の出力信号を積分する回路である。第2増幅回路4は、積分回路の出力信号を増幅する回路である。比較回路6は、第1増幅回路の出力信号と基準電圧とを比較する回路である。CPU7は、第2増幅回路の出力信号をA/D変換し、基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定するとともに、モータの制御を行う論理演算装置である。モータ制御回路8は、モータの回転を制御する回路である。モータ9は、紙幣を所定の速度で搬送する手段である。エンコーダ10は、モータの回転数を検出する手段である。
【0016】
上記のように構成された本発明の実施例における紙幣識別装置の動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、紙幣の磁気データの変換方法を説明する。紙幣を所定の速度で搬送し、搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッドで検出して、第1増幅回路(センスアンプ)で増幅して、図1(a)に示すトレースデータを得る。磁気ヘッドで検出する紙幣の位置と検出幅は、紙幣の種類などに応じて最適な位置と幅を設定する。通常複数位置の磁気パターンを検出するが、例としては1つの場合を示す。
【0017】
磁気ヘッドで検出した信号を第1増幅回路で増幅した出力信号と、基準電圧とを比較回路で比較して、図1(b)に示す2値信号を得る。また、第1増幅回路で増幅した信号を積分回路で積分して、第2増幅回路で増幅し、図1(c)に示すアナログデータを得る。このアナログデータを、A/D変換器でデジタル信号に変換する。
【0018】
次に、図2を参照しながら、紙幣識別装置の動作を詳しく説明する。CPU7により、モータ制御回路8を制御して、モータ9により、紙幣を所定の速度で搬送する。モータ9の回転数は、エンコーダ10により検出され、CPU7にフィードバックされる。これにより、任意の一定速度で紙幣を搬送することができる。搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッド1で検出する。磁気ヘッド1で検出した信号を、第1増幅回路2で増幅する。第1増幅回路2の出力信号を、積分回路3で積分する。積分回路3の出力信号を、第2増幅回路4で増幅する。
【0019】
第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に入力する。一方、第1増幅回路2の出力信号を、比較回路6で基準電圧と比較して、2値信号を出力して、CPU7に入力する。第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器で、デジタル信号に変換する。このデジタル信号を、デジタル基準パターンと比較する。また、2値信号を2値基準パターンと比較する。これらの比較結果に基づいて、紙幣の真贋を判定する。
【0020】
次に、図3の流れ図を参照しながら、紙幣識別装置の紙幣識別方法の手順を説明する。Step1で、磁気波形のアナログデータを、デジタルデータに変換する。Step2で、デジタルデータを基準データと比較して紙幣識別を行う。Step3で、識別結果に問題がないかどうか調べる。問題がなければ、Step6で紙幣識別の終了処理を行う。問題があれば、Step4で、2値データを2値基準データと比較して紙幣識別を行う。Step5で、識別結果に問題がないかどうか調べる。問題がなければ、Step6で紙幣識別の終了処理を行う。問題があれば、Step7で、エラー処理を行う。
【0021】
この例では、デジタルデータを優先的に利用して紙幣識別を行っているが、2値データを優先的に利用して紙幣識別を行ってもよい。また、常に両方のデータを利用して紙幣識別を行い、両者とも識別可能な場合のみ、真券と判断するようにしてもよい。
【0022】
上記のように、本発明の実施例1では、紙幣識別装置を、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分し増幅しA/D変換してデジタルデータとし、磁気パターンデータを基準電圧と比較して2値データとし、2つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する構成としたので、紙幣識別精度を高めることができる。
【実施例2】
【0023】
本発明の実施例2は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分して2種類のゲインで増幅し、それぞれA/D変換してデジタルデータとし、2つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する紙幣識別装置である。
【0024】
図4は、紙幣識別装置の紙幣磁気データの2つのデジタル変換方法を説明する図である。図4(a)は、ある紙幣の印刷インクの磁気パターンを磁気ヘッドでトレースしたモデルデータである。図4(b)は、磁気ヘッドの出力データを積分して、増幅度小で増幅したアナログデータである。図4(c)は、磁気ヘッドの出力データを積分して、増幅度大で増幅したアナログデータである。
【0025】
図5は、紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部の全体構成示すブロック図である。図5において、磁気ヘッド1は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する手段である。第1増幅回路2は、磁気ヘッドで検出した信号を増幅する回路である。積分回路3は、第1増幅回路の出力信号を積分する回路である。第2増幅回路4は、積分回路の出力信号を増幅する回路である。第3増幅回路5は、第2増幅回路の出力信号を増幅する回路である。CPU7は、第2増幅回路と第3増幅回路の出力信号をA/D変換し、基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定するとともに、モータの制御を行う論理演算装置である。
【0026】
上記のように構成された本発明の実施例2における紙幣識別装置の動作を説明する。最初に、図4を参照しながら、紙幣の磁気データの変換方法を説明する。紙幣を所定の速度で搬送し、搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッドで検出して、第1増幅回路(センスアンプ)で増幅して、図4(a)に示すトレースデータを得る。
【0027】
第1増幅回路で増幅した信号を積分回路で積分して、第2増幅回路で増幅し、図4(b)に示すアナログデータを得る。このアナログデータを、A/D変換器でデジタル信号に変換する。また、第2増幅回路で増幅した信号を第3増幅回路で増幅し、図4(c)に示すアナログデータを得る。このアナログデータでは、振幅が大きい部分は飽和により失われるが、振幅の小さい部分は、識別可能な程度まで増幅される。このアナログデータを、A/D変換器でデジタル信号に変換する。
【0028】
次に、図5を参照しながら、紙幣識別装置の動作を詳しく説明する。搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッド1で検出する。磁気ヘッド1で検出した信号を、第1増幅回路2で増幅する。第1増幅回路2の出力信号を、積分回路3で積分する。積分回路3の出力信号を、第2増幅回路4で増幅する。第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に入力する。第2増幅回路4の出力信号を、第3増幅回路5で増幅する。第3増幅回路5の出力のアナログ信号を、CPU7に入力する。
【0029】
第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器で、デジタル信号に変換する。このデジタル信号を、デジタル基準パターンと比較する。また、第3増幅回路5の出力のアナログ信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器で、デジタル信号に変換する。このデジタル信号を、デジタル基準パターンと比較する。これらの比較結果に基づいて、紙幣の真贋を判定する。
【0030】
次に、図6の流れ図を参照しながら、紙幣識別装置の紙幣識別方法の手順を説明する。Step11で、磁気波形の2つのアナログデータを、デジタルデータに変換する。Step12で、増幅度小のデジタルデータを基準データと比較して紙幣識別を行う。Step13で、デジタルデータに問題がないかどうか調べる。すなわち、振幅小のデータが、A/D変換により失われていないかどうか調べる。問題があれば、Step14で、増幅度大のデジタルデータを基準データと比較して紙幣識別を行う。Step15で、識別結果に問題がないかどうか調べる。問題があれば、Step16で、エラー処理を行う。問題がなければ、Step17で紙幣識別の終了処理を行う。
【0031】
この例では、増幅度小のデジタルデータを優先的に利用して紙幣識別を行っているが、増幅度大のデジタルデータを優先的に利用して紙幣識別を行ってもよい。また、常に両方のデータを利用して紙幣識別を行い、両者とも識別可能な場合のみ、真券と判断するようにしてもよい。
【0032】
上記のように、本発明の実施例2では、紙幣識別装置を、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分して2種類のゲインで増幅し、それぞれA/D変換してデジタルデータとし、2つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する構成としたので、磁気が強い箇所の磁気パターンと弱い箇所の磁気パターンのそれぞれを、容易かつ正確に識別できる。
【実施例3】
【0033】
本発明の実施例3は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分して2種類のゲインで増幅し、それぞれA/D変換し、磁気パターンデータを基準電圧と比較して2値データとし、3つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する紙幣識別装置である。
【0034】
図7は、本発明の実施例3における紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部の全体構成示すブロック図である。図3において、磁気ヘッド1は、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する手段である。第1増幅回路2は、磁気ヘッドで検出した信号を増幅する回路である。積分回路3は、第1増幅回路の出力信号を積分する回路である。第2増幅回路4は、積分回路の出力信号を増幅する回路である。第3増幅回路5は、第2増幅回路の出力信号を増幅する回路である。比較回路6は、第1増幅回路の出力信号と基準電圧とを比較する回路である。CPU7は、第2増幅回路と第3増幅回路の出力信号をA/D変換し、基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定するとともに、モータの制御を行う論理演算装置である。
【0035】
上記のように構成された本発明の実施例3における紙幣識別装置の動作を説明する。図7に示すように、搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを、磁気ヘッド1で検出する。磁気ヘッド1で検出した信号を、第1増幅回路2で増幅する。第1増幅回路2の出力信号を、積分回路3で積分する。積分回路3の出力信号を、第2増幅回路4で増幅する。第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に入力する。第2増幅回路4の出力信号を、第3増幅回路5で増幅する。第3増幅回路5の出力のアナログ信号を、CPU7に入力する。一方、第1増幅回路2の出力信号を、比較回路6で基準電圧と比較して、2値信号を出力して、CPU7に入力する。
【0036】
第2増幅回路4の出力のアナログ信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器で、デジタル信号に変換する。第3増幅回路5の出力のアナログ信号を、CPU7に内蔵されたA/D変換器で、デジタル信号に変換する。これらのデジタル信号を、デジタル基準パターンと比較する。また、2値信号を2値基準パターンと比較する。これらの比較結果に基づいて、紙幣の真贋を判定する。
【0037】
図8の流れ図を参照しながら、紙幣識別装置の紙幣識別方法を説明する。Step21で、磁気波形の2つのアナログデータを、デジタルデータに変換する。Step22で、増幅度小のデジタルデータを基準データと比較して紙幣識別を行う。Step23で、デジタルデータに問題がないかどうか調べる。すなわち、振幅小のデータが失われていないかどうか調べる。問題があれば、Step24で、増幅度大のデジタルデータを基準データと比較して紙幣識別を行う。Step25で、識別結果に問題がないかどうか調べる。問題がなければ、Step29で紙幣識別の終了処理を行う。問題があれば、Step26で、2値データを2値基準データと比較して紙幣識別を行う。Step27で、識別結果に問題がないかどうか調べる。問題がなければ、Step29で紙幣識別の終了処理を行う。問題があれば、Step28で、エラー処理を行う。
【0038】
この例では、増幅度小のデジタルデータを優先的に利用して紙幣識別を行っているが、増幅度大のデジタルデータを優先的に利用して紙幣識別を行ってもよい。2値データを優先的に利用して紙幣識別を行ってもよい。また、常に3つのデータを利用して紙幣識別を行い、3通りとも識別可能な場合のみ、真券と判断するようにしてもよい。あるいは、いずれか2通りで識別可能な場合に、真券と判断するようにしてもよい。
【0039】
上記のように、本発明の実施例3では、紙幣識別装置を、紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出し、積分して2種類のゲインで増幅し、それぞれA/D変換し、磁気パターンデータを基準電圧と比較して2値データとし、3つのデータをそれぞれ基準パターンと比較して紙幣の真贋を判定する構成としたので、磁気が強い箇所の磁気パターンと弱い箇所の磁気パターンのそれぞれを、容易かつ正確に識別できる。また、磁気ヘッドの出力信号を直接2値信号に変換したデータも識別データにすることにより、識別精度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の紙幣識別装置は、簡単なハードウェアで紙幣を正確に識別できる装置として、自動販売機や両替機などに利用できる。また、紙幣に限らず磁性材料が混入した媒体であれば応用可能であるので、各種の有価証券やその他の印刷物の識別装置としても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1における紙幣識別装置の紙幣磁気データのアナログ・デジタル変換方法を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1における紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部全体構成示す図である。
【図3】本発明の実施例1における紙幣識別装置の紙幣識別方法の手順を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施例2における紙幣識別装置の紙幣磁気データのアナログ・デジタル変換方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2における紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部全体構成示す図である。
【図6】本発明の実施例2における紙幣識別装置の紙幣識別方法の手順を示す流れ図である。
【図7】本発明の実施例3における紙幣識別装置の紙幣識別・搬送部全体構成示す図である。
【図8】本発明の実施例3における紙幣識別装置の紙幣識別方法の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・磁気ヘッド、2・・・第1増幅回路、3・・・積分回路、4・・・第2増幅回路、5・・・第3増幅回路、6・・・比較回路、7・・・CPU、8・・・モータ制御回路、9・・・モータ、10・・・エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を所定の速度で搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドで検出した信号を増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路の出力信号を増幅する第2増幅回路と、前記第2増幅回路の出力信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換手段と、前記第1増幅回路の出力信号と基準電圧とを比較して2値信号を出力する比較回路と、前記第1デジタル信号を第1基準パターンと比較する第1比較手段と、前記2値信号を2値基準パターンと比較する2値比較手段と、前記第1比較手段の出力信号と前記2値比較手段の出力信号とに基づいて前記紙幣の真贋を判定する判定手段とを具備することを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
紙幣を所定の速度で搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドで検出した信号を増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路の出力信号を増幅する第2増幅回路と、前記第2増幅回路の出力信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換手段と、前記第2増幅回路の出力信号を増幅する第3増幅回路と、前記第3増幅回路の出力信号を第2デジタル信号に変換する第2A/D変換手段と、前記第1デジタル信号を第1基準パターンと比較する第1比較手段と、前記第2デジタル信号を第2基準パターンと比較する第2比較手段と、前記第1比較手段の出力信号と前記第2比較手段の出力信号とに基づいて前記紙幣の真贋を判定する判定手段とを具備することを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項3】
紙幣を所定の速度で搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送される紙幣の印刷インクの磁気パターンを検出する磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドで検出した信号を増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力信号を積分する積分回路と、前記積分回路の出力信号を増幅する第2増幅回路と、前記第2増幅回路の出力信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換手段と、前記第2増幅回路の出力信号を増幅する第3増幅回路と、前記第3増幅回路の出力信号を第2デジタル信号に変換する第2A/D変換手段と、前記第1増幅回路の出力信号と基準電圧とを比較して2値信号を出力する比較回路と、前記第1デジタル信号を第1基準パターンと比較する第1比較手段と、前記第2デジタル信号を第2基準パターンと比較する第2比較手段と、前記2値信号を2値基準パターンと比較する2値比較手段と、前記第1比較手段の出力信号と前記第2比較手段の出力信号と前記2値比較手段の出力信号とに基づいて前記紙幣の真贋を判定する判定手段とを具備することを特徴とする紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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