説明

紙束

【課題】 定数枚葉紙の50枚、100枚単位等のブロックを区分けする合紙が各ブロックの間に挿入された紙束において、断裁、包装等の工程において、枚葉紙(本紙)と合紙との間の滑り性が安定し、加工機での搬送性が良好で、各ブロック分けがスムーズに行なえる紙束を提供することを目的とする。
【解決手段】 多数枚の定数枚葉紙のブロック3における最下面に、合紙2が丁合された紙束1で、該合紙が枚葉紙と接触する面に、剥離層が設けられていて、かつ合紙と剥離層との間に目止め層を設けた構成をとることにより、合紙と枚葉紙との間の滑り性が安定し、加工機での搬送性が良好となり、ブロック分けがスムーズに行なえるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定数枚葉紙の50枚、100枚単位等のブロックを区分けする合紙が各ブロックの間に挿入された紙束に関し、特に、断裁、包装等の工程において、枚葉紙(本紙)と合紙との間の滑り性が安定し、加工機での搬送性が良好で、各ブロック分けがスムーズに行なえる紙束に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、カレンダー、カタログ、チラシ等の商業印刷物、株券、債券、商品券等の証券印刷物などにおいて、印刷、丁合、包装(製本)の各工程が行なわれて、最終製品が製造されている。その際に、50枚、100枚単位等で、ブロック分けされた最終製品を作製する時に、上記の各単位の間に合紙を挿入して、その後の工程を効率良く、実施することが行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、定数積載紙の員数、断裁の各工程を自動給送断裁システムとして、定数枚葉紙のブロックの供給、断裁において、合紙を丁合(挿入)して、各ブロックの区分を明確にして、各工程の一連の作業を自動化することが提案されている。しかし、上記の方法を行なった場合、ブロックを構成する枚葉紙(本紙)と合紙との間の滑り性が経時変化したりして、安定せずに、加工機での搬送性が悪く、各単位のブロック分けがスムーズに行なえない問題が生じている。
【特許文献1】特公昭59−1661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、上記の問題を解決すべく、定数枚葉紙の50枚、100枚単位等のブロックを区分けする合紙が各ブロックの間に挿入された紙束において、断裁、包装等の工程において、枚葉紙(本紙)と合紙との間の滑り性が安定し、加工機での搬送性が良好で、各ブロック分けがスムーズに行なえる紙束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の紙束は、請求項1として、多数枚の定数枚葉紙のブロックにおける最下面に、合紙が丁合されたもので、該合紙が枚葉紙と接触する面に、剥離層が設けられていて、かつ合紙と剥離層との間に目止め層を設けたことを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2として、請求項1に記載の合紙において、剥離層の設けられた面と反対側に、目止め層が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙束は、多数枚の定数枚葉紙のブロックにおける最下面に、合紙が丁合されたもので、該合紙が枚葉紙と接触する面に、剥離層が設けられていて、かつ合紙と剥離層との間に目止め層を設けた構成をとることにより、合紙と枚葉紙との間の滑り性が安定し、加工機での搬送性が良好となり、ブロック分けがスムーズに行なえるようになった。さらに、前記の紙束において、合紙における剥離層の設けられた面と反対側に、目止め層を設けることにより、合紙同士を多数枚積載した状態で保管していても、剥離層と接触する合紙に、剥離層から分離した離型剤(シリコーン樹脂)が転移しにくく、合紙を多数枚の定数枚葉紙のブロックに挿入して使用しても、合紙と枚葉紙との間の滑り性が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の紙束1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、100枚の定数の枚葉紙が積載されたブロック3における最下面に、合紙2が丁合されたものである。この多数枚の枚葉紙及び合紙は、全て縦横の外形サイズが等しく、端面が揃った状態で積み重ねられたものである。
【0009】
図1で示された合紙は、図2に示すような実施形態をとることができる。図2a)では、基紙4の一方の面に、目止め層5、剥離層6をこの順に設けた構成である。この合紙の剥離層と、上記のブロックを構成する枚葉紙とが接触して重ね合わされて紙束となる。また、図2b)に示すような合紙の構成をとることも可能である。すなわち、基紙4の一方の面に、目止め層5、剥離層6をこの順に設け、さらに基紙4に他方の面に、目止め層7を設けた構成である。この構成の合紙同士を表面、裏面の向きを全て揃えた状態で、多数枚積載した状態で保管しておいても、剥離層と接触する隣接した合紙は、直接合紙の基紙と接触せずに、目止め層を介して接触するので、剥離層から分離した離型剤(シリコーン樹脂)が相手の合紙に転移しにくい。
【0010】
以下、本発明の紙束を構成する各要素について、詳細に説明する。
(合紙)
本発明の紙束を構成する合紙2は、基紙4の一方の面に、目止め層5を介して、剥離層6を設けたものである。また、その基紙4の他方の面に、目止め層7を設けることもできる。基紙4としては、天然パルプ、合成パルプ、それらの混合物から抄紙されるパルプ紙等が挙げられ、いずれでも使用できる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、熱転写用紙、ケント紙等が使用される。その基紙の厚みは、20〜150μm程度の厚みが好ましい。
【0011】
上記の目止め層としては、基紙と剥離層との間に設ける目止め層5と、基紙4の剥離層の設けられている他方の面に設ける目止め層7とは、同じ機能を有するもので、同様の材料、構成、厚さで形成できる。本発明では、目止め層は、剥離層の形成される面積と同等以上の大きさで設け、また剥離層から分離する離型剤が合紙の基紙に浸透したり、転移することを防止できれば、印刷方式、使用するインキは適宜選択することができる。本発明では、酸化重合型インキ、紫外線硬化型インキ等を用いて、オフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷により目止め層を設けることが、好ましく行なわれる。
【0012】
上記の目止め層における酸化重合型インキは、油性インキと呼ばれ、ビヒクルの酸化重合による固化、不溶化によって皮膜をつくるもので、乾性油ワニス、乾性アルキドなどがこの部類に入る。酸化促進剤としてコバルトやマンガンが添加されている。また、目止め層における紫外線硬化型インキの樹脂形成材料としては、プレポリマーまたはオリゴマーとして、ポリオールアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、アルキッドアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等、モノマーとしては、モノアクリレート系、ジアクリレート系、トリアクリレート系等を使用したインキが挙げられる。目止め層として、着色させる場合は、上記材料に体質顔料や色材としての有機顔料等が添加されるが、顔料等の着色剤を添加しないメジウムインキとして使用することもできる。
【0013】
上記の酸化重合型インキ、紫外線硬化型インキ等を用いて、印刷形成される目止め層は、厚さとして、0.5〜5μmが好ましい。その厚さが少なすぎると、基紙の上に均一に印刷することが困難になり、また剥離層から分離する離型剤の基紙への浸透や、転移を防止できなくなる。また、その一方で、目止め層の厚さが、上記の範囲より多くなると、上記の目止めの機能は変わらないが、コストのみ向上するし、さらに極端に多くなると皮膜が厚くなり、合紙が変形したり、搬送性が悪化する。
【0014】
上記の剥離層は、剥離層を形成するインキとしては、ビヒクル、あるいはバインダー樹脂に離型剤が添加されたものであり、その離型剤は、シリコーン樹脂、弗素樹脂、シリコーン或は弗素で変性した各種の樹脂が使用出来るが、滑り性を確保するために、好ましいものはシリコーン樹脂である。本発明における剥離層は、ブロックを構成する枚葉紙と合紙との間の滑り性が優れていれば、印刷方式、使用するインキは適宜選択することができる。本発明では、紫外線硬化型インキ等を用いて、オフセット印刷、活版印刷により剥離層を設けることが、好ましく行なわれる。
【0015】
剥離層における紫外線硬化型インキの樹脂形成材料としては、プレポリマーまたはオリゴマーとして、ポリオールアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、アルキッドアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系等、モノマーとしては、モノアクリレート系、ジアクリレート系、トリアクリレート系等を使用したインキが挙げられる。これらの紫外線硬化型インキの樹脂形成材料に、離型剤が添加される。
【0016】
上記離型剤としては、シリコーン樹脂を添加するのが好ましい。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、もしくは環状ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイルを使用することができ、また、各種の変成シリコーンオイルも使用できる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変成、エポキシ変成、カルボキシル変成、カルビノール変成、メタクリル変成、等が、また非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変成、メチルスチリル変成、アルキル変成、高級脂肪酸エステル変成、高級アルコキシ変成、もしくはフッ素変成のものを使用できる。
【0017】
上記のシリコーン樹脂は紫外線硬化樹脂組成物中、紫外線硬化樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜6.0質量部配合するのが好ましい。配合量が下限未満であると滑り性向上効果が認められず、上限を超えると、紫外線硬化が十分に行われなくなるからである。上記の剥離層は、上記に説明した材料からなるインキを用いて印刷形成されるが、その厚さは0.5〜10μmが好ましい。その厚さが少なすぎると、基紙の上に均一に印刷することが困難になり、また剥離性が悪化する。その一方で、剥離層の厚さが上記の範囲より多くなると、滑り性は変わらないが、コストのみ向上するし、さらに極端に多くなると硬化後、シリコーン樹脂の接触面への転移が著しく多くなる。
【0018】
(枚葉紙)
本発明の紙束を構成する多数枚の枚葉紙は、上記の合紙の基紙で説明したものと同様のものが使用できる。枚葉紙は例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、熱転写用紙、ケント紙等のパルプ紙が使用される。その枚葉紙の厚みは、20〜150μm程度の厚みが好ましい。この枚葉紙が50枚、100枚等の単位で、全て縦横の外形サイズが等しく、端面が揃った状態で積み重ねられたものが、本発明におけるブロック3を構成する。尚、上記の枚葉紙は、各単位で共通した印刷部、また必要に応じて、各単位で可変情報(可変番号など)を印刷などで設けたものが使用される。
【0019】
(加工機)
上記に説明した紙束の断裁、包装(製本)等の工程を行なう加工機について説明する。その前に、多数枚の定数枚葉紙のブロックにおける最下面に、合紙を丁合する必要があり、その丁合加工について、説明する。多数枚の定数枚葉紙は1枚毎の枚葉紙が全て共通したものであれば、枚葉紙の製造後、員数して定数に分け、ブロックを用意し、そのブロックにおける最下面に、合紙を挿入するだけである。それに対し、多数枚の定数枚葉紙が共通したものでなく、異なるもの、例えば、印刷された内容が個別情報である場合、印刷された色彩が異なるものである場合等では、各枚葉紙及び合紙を個別に供給して、丁合機で順番に丁合して、最下面に合紙が挿入されたブロック、つまり紙束を用意する。
【0020】
紙束の断裁、包装(製本)等の工程を行なう加工機については、例えば、50枚等の定数の枚葉紙の積載されたブロックは、そのブロックにおける最下面に、合紙が丁合されて、紙束を構成し、その紙束の複数を、端面が揃った状態で積み重ねられた条件で、断裁、包装の各工程が開始される。断裁工程は、上記の複数の単位の紙束が積み重ねられた状態で、一括して断裁することが多用される。それに対し、包装、製本等の工程では、複数の単位の紙束が積み重ねられた状態から、セパレーター、コンベヤー等を用いて、一つずつの紙束を順次、供給して、包装、製本の実工程が行なわれる。この包装、製本の実工程は、従来から知られた方法により行なわれる。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
50枚の定数の枚葉紙として、各枚葉紙は印刷の内容が個別情報である条件で、枚葉紙の印刷を行なって、枚葉紙を用意した。尚、100μm厚の上質紙の枚葉紙を用いた。合紙として、基紙は100μm厚の上質紙を用い、その基紙の上に、紫外線硬化型インキのザ・インクテック株式会社製「UV BFインキ」(アクリル樹脂系)を使用して、オフセット印刷により、目止め層を厚さ3μmで形成した。
【0022】
上記の目止め層の上に、紫外線硬化型インキのザ・インクテック株式会社製「UV無色蛍光用剥離ニス」(アクリル樹脂系で、5.0質量%のシリコーン樹脂があらかじめ添加されたものである。)を使用して、オフセット印刷により、剥離層を厚さ5μmで形成し、合紙同士が積み重ねられたものを用意した。上記の個別情報が印刷された50枚の枚葉紙と、合紙を各供給部にセットして、丁合機で順番に丁合して、最下面に合紙が挿入された紙束を用意した。但し、その紙束は、複数の単位の紙束が積み重ねられた状態で用意した。
【0023】
上記の複数の単位の紙束が積み重ねられた積載物を、枚葉紙の印刷絵柄に合わせて、一括して断裁機で切断した。その後に、断裁された50枚の枚葉紙の積載された紙束(50枚の枚葉紙(ブロック)の最下面に、合紙が丁合されている)が、複数の単位の紙束として積み重ねられた状態から、セパレーター、コンベヤーを用いて、一つずつの紙束を順次、供給して、包装工程を行なって、各紙束が包装された製品を作製した。
【0024】
上記の製品を作製した際、合紙同士が多数枚積載した状態で保管していても、剥離層と接触する合紙に、剥離層から分離した離型剤(シリコーン樹脂)が転移しにくく、合紙を多数枚の定数枚葉紙のブロックに挿入して使用しても、上記の包装工程の前工程の紙束の供給時に、合紙と枚葉紙との間の滑り性が安定し、各単位のブロック分けがスムーズに行なえた。これは、ブロックを構成する枚葉紙(本紙)と合紙との間の滑り性が経時変化せずに、安定していることを示すものであった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の紙束の一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の紙束で使用される合紙の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 紙束
2 合紙
3 ブロック
4 基紙
5 目止め層
6 剥離層
7 目止め層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数枚の定数枚葉紙のブロックにおける最下面に、合紙が丁合された紙束において、該合紙が枚葉紙と接触する面に、剥離層が設けられていて、かつ合紙と剥離層との間に目止め層が設けられていることを特徴とする紙束。
【請求項2】
前記の合紙において、剥離層の設けられた面と反対側に、目止め層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙束。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−263104(P2009−263104A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116061(P2008−116061)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】