説明

紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法

【課題】低密度性に優れ、サイズ度低下が少なく、強度低下も少ない低密度紙を製造しうる紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法の提供。
【解決手段】一般式[1]のアミノ化合物のトリエステル又はその塩を含有する紙用低密度化剤、及び一般式[1]のアミノ化合物のトリエステル又はその塩を紙の製造に使用する。


式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数7〜35のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基、A1O、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に炭素数2〜4のオキシアルキレン基、k、m及びnは1以上の数であり、k+m+nは3〜60の数である。A1O、A2O及びA3Oがそれぞれ複数ある場合、各A1O、A2O及びA3Oは、それぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法に関し、さらに詳しくは、低密度性に優れ、サイズ度低下及び強度低下の少ない紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パルプ資源の不足及びそれに伴うパルプ価格の高騰、自然環境保護の必要性などにより、パルプの使用量を抑え、紙製品の坪量を下げる努力がなされている。新聞用紙、印刷用紙、記録用紙、包装用紙、壁紙原紙、襖用原紙、裏打ち紙、家庭紙などの紙製品の坪量を低減することにより、コスト低減はもちろん、森林資源の確保など、自然環境問題の解決に大きな効果をもたらすと考えられる。
また、一方で、印刷適性やボリューム感のある高品質の紙が要望されており、紙の嵩を高くした密度の低い紙が求められている。紙の密度を低くする方法として、架橋パルプを用いる方法、合成繊維との混抄による方法、パルプ繊維に無機物を充填する方法などが行われている。しかし、架橋パルプを用いる方法や合成繊維との混抄による方法では、紙のリサイクルが難しく、コスト的にも高くなる。また、無機物の充填による方法では、紙の強度を著しく低下させるという欠点がある。
【0003】
最近になって、抄紙時に添加することによって、密度を低くする薬剤が開発されている。例えば、糖アルコール系非イオン界面活性剤又は糖系非イオン界面活性剤を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献1参照)、高級脂肪酸のアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献2参照)、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する紙用低密度化剤(例えば、特許文献3参照)、オキシアルキレン基を有する多価アルコール脂肪酸エステル化合物(例えば、特許文献4参照)を用いた低密度化剤及び低密度化紙の製造方法が開示されている。しかしながら、これらの非イオン界面活性剤に基づく低密度化剤は紙への自己定着性が低いために低密度化効果が弱く、使用量を増やすことで低密度化効果を得ようとしても、定着性が弱いことにより低密度化剤は抄紙系の水の中に蓄積するようになるため紙の強度、表面強度を著しく低下させるなど低密度化のコントロールが難しくなる。さらにこれらの非イオン界面活性剤は、発泡、浮き種などの問題を生じやすい。
【0004】
一方、特許文献5では、高級アミンアルキレンオキシド付加物の脂肪酸エステル化物による低密度化剤が提案されている。この高級アミンアルキレンオキシド付加物の脂肪酸エステル化物は低密度化効果に優れており、サイズ低下が比較的少なく、起泡性が低く、定着性が高いため、泡による浮き種や、紙のピンホールなどのトラブルが発生しにくい。しかしながら、この化合物においても低密度化により強度が著しく低下する欠点がある。
【特許文献1】特開平11−200283号公報
【特許文献2】特開平11−200284号公報
【特許文献3】特再WO98/03730号公報
【特許文献4】特開平11−350380号公報
【特許文献5】特開2004−115935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下になされたものであり、低密度性に優れ、サイズ度低下が少なく、さらに強度低下も少ない低密度紙を製造しうる紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するトリヒドロキシアルキルアミンの脂肪酸トリエステルを製紙工程に添加することにより、低密度性に優れ、サイズ度の低下が少なく、しかも低密度効果の割に強度低下が少ない低密度紙を製造し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)下記一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を含有することを特徴とする紙用低密度化剤、及び
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数7〜35のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、A1O、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、k、m及びnは1以上の数であり、k+m+nは3〜60の数である。A1O、A2O及びA3Oがそれぞれ複数ある場合、各A1O、A2O及びA3Oは、それぞれにおいて同一であっても異なっていてもよい。)(2)一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を紙の製造に使用するパルプに添加することを特徴とする低密度紙の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアミノ化合物のトリエステル又はその塩を含有する紙用低密度化剤を使用することにより、低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を製造することができる。本発明による方法で得られた低密度紙は低密度化効果の割に強度低下が少ないため、従来技術では解消が困難であった強度低下に起因する印刷、加工における紙切れ、紙の層間剥離などの問題解決が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明の紙用低密度化剤について説明する。
本発明の紙用低密度化剤は、下記一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を含有することを特徴とする。
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数7〜35のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、A1O、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、k、m及びnは1以上の数であり、k+m+nは3〜60の数である。A1O、A2O及びA3Oがそれぞれ複数ある場合、各A1O、A2O及びA3Oは、それぞれにおいて同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
(一般式[1]に示すアミノ化合物のトリエステルの製造方法)
本発明に用いる一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステルの製造方法には特に制限はなく、例えば、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜4であるトリアルカノールアミンを出発原料にして、脂肪酸又はその誘導体との脱水反応、脂肪酸クロリドとの脱塩化水素反応、低級アルコール脂肪酸エステルとのエステル交換反応等により、k、m、nのいずれもが1である場合の一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステルを得ることができる。このようなトリアルカノールアミンとして、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、ヒドロキシプロピルジエタノールアミン、ジヒドロキシプロピルエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0010】
また、アンモニアやヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜4であるモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンを出発原料として、無触媒又はアルカリや酸などの触媒を用いて、アンモニアに関しては3当量モル以上、モノアルカノールアミンに対しては2当量モル以上、ジアルカノールアミン及びトリアルカノールアミンに対しては1当量モル以上の炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加することにより、トリアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンアルキレンオキシド付加物を得ることができる。炭素数2〜4のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、エチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシドを挙げることができる。アルキレンオキシド付加が2種以上のアルキレンオキシドによる場合、ランダム付加重合であっても、ブロック付加重合であっても良い。このようにして得られたトリアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンアルキレンオキシド付加物と脂肪酸との脱水反応、脂肪酸クロリドとの脱塩化水素反応、低級アルコール脂肪酸エステルとのエステル交換反応等によって、一般式[1]において、k+m+nが3以上のアミノ化合物のトリエステルを得ることができる。
また、順序を変えて、これらのトリアルカノールアミン類と脂肪酸との脱水反応、脂肪酸クロリドによる脱塩化水素反応、低級アルコール脂肪酸エステルとのエステル交換反応などによってトリアルカノールアミン脂肪酸トリエステルとし、ここに微量のアルカノールアミンを添加するか、又は、トリアルカノールアミン脂肪酸トリエステル合成の際、トリアルカノールアミンに対する脂肪酸、脂肪酸クロリド、低級アルコール脂肪酸エステルの反応モル比を当量とせず、トリアルカノールアミンにフリーのヒドロキシル基を一部残した上で、アルキレンオキシドを付加する方法でも、一般式[1]に示すアミノ化合物のトリエステルを得ることができる。この反応で、トリアルカノールアミン脂肪酸エステルのエステル基は、フリーのヒドロキシル基の存在により、分子間又は分子内でエステル交換を繰り返し、フリーとなった側のヒドロキシル基にアルキレンオキシドが付加する。
【0011】
アルキレンオキシ基の種類、モル数、組み合わせを適宣選択することにより、低起泡性で水に容易に溶解、乳化又は分散し、取り扱いやすい低密度化剤とすることができる。例えば、炭素数2のアルキレンオキシドを付加することにより、水への溶解、乳化又は分散性が向上し取り扱いやすくなる傾向にある。また、炭素数3又は炭素数4のアルキレンオキシドを付加することで、アミノ化合物のトリエステルは低粘度化し、低温でも固化しにくい特徴を有するため、取り扱いやすくなる。一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステルにおいて、k+m+nは3〜60の数であり、より好ましくは3〜30の数である。k+m+nが60を超えると低密度性が低下し、サイズ度の低下が極めて高くなるおそれがある。k+m+nが30以下では、低密度性が強まり、サイズ度の低下が少なくなる。
【0012】
一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステルの製造において、トリアルカノールアミン、トリアルカノールアミンアルキレンオキシド付加物は1種を単独で又は2種以上を組み合せて、脂肪酸又はその誘導体との脱水反応、脂肪酸クロリドとの脱塩化水素反応、低級アルコール脂肪酸エステルとのエステル交換反応することもできる。
一般式[1]に示すアミノ化合物のトリエステルの代わりに、アミノ化合物のジエステル又はモノエステルのみを使用した場合、又はアミノ化合物のジエステル又はモノエステルの割合が多くなった場合、低密度性が低下し、サイズ度の低下が極めて高くなるが、トリエステルを30質量%以上含有するアミノ化合物を用いた場合、低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を製造することができる。トリエステルを50質量%以上含有するアミノ化合物を用いた場合、より低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を製造することができる。トリエステルを70質量%以上含有するアミノ化合物を用いた場合、さらに低密度性に優れ、サイズ度低下の少ない低密度紙を製造することができる。最も好ましくは、アミノ化合物のジエステル又はモノエステルを実質的に含有しないアミノ化合物のトリエステルを用いた場合である。
【0013】
(一般式[1]のエステル基)
一般式[1]において、R1、R2及びR3で示される炭素数7〜35のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基は、炭素数8〜36の高級脂肪酸と前記トリアルカノールアミン、トリアルカノールアミノアルキレンオキシド付加物との脱水反応の結果得られるエステル基である。
一般式[1]において、R1、R2及びR3は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ウンデシル基、トリデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、ヘンイコシル基などを挙げることができる。ヒドロキシアルキル基としては、例えば、9−ヒドロキシヘプタデシル基などを挙げることができる。アルケニル基としては、例えば、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、ウンデセニル基、トリデセニル基、ペンタデセニル基、ヘプタデセニル基、ノナデセニル基、ヘンイコセニル基などを挙げることができる。ヒドロキシアルケニル基としては、例えば、12−ヒドロキシ−9−オクタデセニル基などを挙げることができる。一般式[1]において、R1、R2、R3で示される基の炭素数が6以下であると、低密度性が弱くなり、サイズ度の低下が極めて強くなるおそれがある。好ましくは、炭素数が11以上の場合であり、このとき、低密度性が強く、サイズ度の低下が少ない低密度化剤が得られる。一方、炭素数が36以上では、水への乳化分散性が悪く、取り扱いが困難になるおそれがある。
【0014】
これらの置換基を有する炭素数8〜36の脂肪酸に特に制限はなく、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖状脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、ヒドロキシ基を有する脂肪酸など、いずれの脂肪酸も用いることができる。このような脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、2−ブチルカプリル酸、トリデシル酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、2−ヘキシルカプリル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、2−オクチルラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、2−デシルミリスチン酸、メリシン酸、ラクセル酸、セロメリシン酸、ゲダ酸、セロプラスチン酸などの飽和脂肪酸;ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、ペトロセリジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、プニカ酸、ステアリドン酸、リシノール酸、リシネラジン酸、ガドレイン酸、ゴドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ブラッシジン酸、ドコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸、ネルボン酸、セレブロン酸などの不飽和脂肪酸;牛脂脂肪酸、豚脂脂肪酸、魚油脂肪酸、鯨油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸、大豆脂肪酸、菜種油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、ひまし脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トーモロコシ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、落花生油脂肪酸などの混合脂肪酸やそれらの硬化脂肪酸が挙げられる。これらは単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合せて用いることもできる。前記トリアルカノールアミン、トリアルカノールアミンアルキレンオキシド付加物のヒドロキシ基とエステル化反応する化合物として、これらの脂肪酸のカルボン酸クロリド類及びこれら脂肪酸の低級アルコール脂肪酸エステルを用いることもできる。
【0015】
(紙用低密度化剤の剤型)
本発明の紙用低密度化剤においては、一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を1種単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。また、その剤型に特に制限はなく、例えば、一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステル及びこれらの塩を固体又は液状で用いることができ、あるいは、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して用いることもできる。一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステルの塩は、アミノ化合物のトリエステルを無機酸又は有機酸で中和して得ることができる。アミノ化合物のトリエステルの塩とすることで、水への乳化性、分散性又は溶解性が向上し、さらに、酸で中和することによりアミノ化合物のトリエステルにイオン性を与えることになるため、パルプへの定着性を高めることができる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、グリコール酸、スルファミン酸、アミノ酸類、パラトルエンスルホン酸、脂肪酸などがあるが限定するものではない。中でもより乳化性を向上するためには塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸が良いが、無機酸はpHによっては、エステル結合を切り製品の安定性を損なう恐れがある。より好ましくはギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、グリコール酸である。また一般式[1]に示すアミノ化合物のトリエステルにおいて、エチレンオキシドを付加した化合物には酸で中和しなくても、乳化、分散又は溶解できるものがあるが、酸で中和することによりアミノ化合物のトリエステルにイオン性を与え、パルプへの定着性を高めることができる。
さらに、低密度化性の低密度化性を損なわない範囲で、微量の界面活性剤などを用いて、水や溶剤に乳化、分散又は溶解して使用することもできる。
【0016】
次に、本発明の低密度紙の製造方法について説明する。
(低密度紙の製造方法)
本発明の低密度紙の製造方法は、前述した一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を、紙の製造に使用するパルプに添加することを特徴とする。
一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を添加する製紙工程に特に制限はなく、例えば、離解工程、叩解工程、薬品などを配合する調成工程及びその前後、抄紙前などを挙げることができる。また、古紙などの場合は、再生処理工程前後などを挙げることができる。一般式[1]で表されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩の添加方法に特に制限はなく、例えば、そのまま添加することができ、あるいは、微量の界面活性剤、水、溶剤などを配合して水に自己乳化するように製剤化した後添加することもでき、さらに、水、溶剤などに溶解、分散又は乳化して添加することもできる。
本発明方法において、紙の製造に使用するパルプに添加する紙用低密度化剤の添加量に特に制限はないが、パルプ100質量部に対しアミノ化合物のトリエステル量として0.01〜5.0質量部であることが好ましく、0.05〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0017】
本発明方法に使用するパルプに特に制限はなく、例えば、広葉樹、針葉樹などから得られる木材パルプ、バガス、ケナフ、竹パルプ、古紙再生パルプなどの植物繊維などの繊維材料などを挙げることができる。また、本発明方法により製造する低密度紙は、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造したものであって、素材としてレーヨン、ポリエステルなどの合成高分子物質を用いて製造した合成紙や、繊維状無機材料を配合した紙なども含まれる。
【0018】
本発明方法により製造する低密度紙の種類に特に制限はなく、例えば、新聞用紙、印刷用紙、記録用紙、包装用紙、板紙、ライナー、中芯などのダンボール用紙、壁紙原紙、襖紙原紙、裏打ち紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの家庭紙などの紙製品などを挙げることができる。紙の形態にも特に制限はなく、例えば、感熱記録紙、インクジェット記録紙、コート紙、アート紙、微コート紙などの塗被紙、パルプモールドなどの繊維材料にも応用することができる。また、低密度化にする目的にも特に制限はなく、例えば、めくりやすさ、印刷適性、ボリューム感、風合い、手触りなどの柔軟性、紙の割れ防止、層間剥離のしやすさ、吸水性、吸油性、吸樹脂性、不透明性、含水伸度・収縮率の低減、コスト低減、パルプ使用量の節減などを挙げることができる。
【0019】
本発明方法においては、低密度化の性能を損なわない程度に、他の薬剤を配合、併用添加することができる。他の薬剤としては、例えば、すでに公知の低密度化剤、サイズ剤、湿潤紙力剤、乾燥紙力剤、澱粉、ポリビニルアルコールなどの紙力剤、ドライヤー剥離剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、脱墨剤、サイズ剤、紙質改善剤、填料、顔料、染料、消泡剤などを挙げることができる。これらの他の薬剤は、紙料調成工程において、単独に添加することができ、あるいは、あらかじめ本発明の紙用低密度化剤に混合して添加することもできる。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、試験紙は下記の方法により評価した。
<試験紙の作製>
広葉樹晒しクラフトパルプを、フリーネス440mlに叩解してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーをラボスターラー[ヤマト科学(株)製]にて撹拌しながら、低密度化剤を対パルプ0.8質量%になるように添加し5分間撹拌した。さらにカチオン澱粉[日澱化学(株)製、「EXCELL V−7」]を対パルプ0.5質量%(1質量%水溶液で)添加し5分間撹拌した。次いでAKDサイズ剤[荒川化学工業(株)製、「サイズパイン(登録商標)K−903」]を対パルプ0.1質量%添加し5分間撹拌した。丸型シートマシン[熊谷理機工業(株)製]にて坪量80g/m2となるように抄紙し、プレス機[熊谷理機工業(株)製]により0.7MPaで5分間プレスした後、ヤンキードライヤー[熊谷理機工業(株)製]にて105℃で3分間乾燥して低密度紙を得た。
【0021】
(1)密度
JIS P 8118:1998に従い密度を測定し、下式により低密度化率を求めた。密度が小さいほど、低密度化率が大きいほど、低密度化性が良好である。
低密度化率(%)=[(A−B)/A]×100(%)
A:低密度化剤無添加時の密度
B:低密度化剤添加時の密度
(2)不透明度
JIS P 8138に従い、COLORIMETER[(株)村上色彩技術研究所製、「CM−53D」]を用いて測定した。
(3)サイズ度
JIS P 8122に従って測定した。
(4)比破裂強度
JIS P 8112:1994に従って、破裂度試験器[熊谷理機工業(株)製、「BURSTING TESTER MD−200」]にて、比破裂強度を測定し、下式により比破裂強度保持率を求めた。
比破裂強度保持率=(B/A)×100(%)
A:低密度化剤無添加時の比破裂強度
B:低密度化剤添加時の比破裂強度
(5)内部結合強さ(インターナルボンド)
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.18−2 2000に従って測定し、下式により内部結合強度保持率を求めた。
内部結合強度保持率=(D/C)×100(%)
C:低密度化剤無添加時の内部結合強度
D:低密度化剤添加時の内部結合強度
【0022】
実施例1
四つ口フラスコにステアリン酸341.4g(1.2モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱して溶融し、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのステアリン酸トリエステルを得た。
実施例2
四つ口フラスコにパルミチン酸92.3g(0.36モル)、ステアリン酸239.0g(0.84モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱して溶融し、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)によるトリエステルを得た。
【0023】
実施例3
四つ口フラスコにトール油脂肪酸[ハリマ化成(株)製、「ハートールFA−1」酸価194mgKOH/g]347.0g(1.2モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのトール油脂肪酸トリエステルを得た。
実施例4
四つ口フラスコにヤシ脂肪酸[日油(株)製、「ヤシ脂肪酸」酸価265mgKOH/g]254.0g(1.2モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを仕込み、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのヤシ脂肪酸トリエステルを得た。
【0024】
実施例5
四つ口フラスコにイソステアリン酸[日産化学工業(株)製、「イソステアリン酸」酸価195mgKOH/g]345.2g(1.2モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのイソステアリン酸トリエステルを得た。
実施例6
四つ口フラスコにベヘニン酸245.2g(0.72モル)、ステアリン酸136.6g(0.48モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱して溶融し、トリエタノールアミン59.7g(0.4モル)を発熱に注意しながら滴下した。窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのベヘニン酸(1.8)/ステアリン酸(1.2)によるトリエステルを得た。
【0025】
実施例7
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.2gを添加した。 内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド132g(3モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約5時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約280gのトリエタノールアミンエチレンオキシド3モル付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸69.2g(0.27モル)、ステアリン酸179.2g(0.63モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミンエチレンオキシド3モル付加物84.4g(0.3モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンエチレンオキシド3モル付加物のパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)によるトリエステルを得た。
【0026】
実施例8
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.2gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約5時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約410gのトリエタノールアミンエチレンオキシド6モル付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸69.2g(0.27モル)、ステアリン酸179.2g(0.63モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミンエチレンオキシド6モル付加物124.0g(0.3モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンエチレンオキシド6モル付加物のパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)によるトリエステルを得た。
【0027】
実施例9
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.5gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、プロピレンオキシド348g(6モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約7時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約495gのトリエタノールアミンプロピレンオキシド6モル付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸69.2g(0.27モル)、ステアリン酸179.2g(0.63モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミンプロピレンオキシド6モル付加物149.2g(0.3モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンプロピレンオキシド6モル付加物のパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)によるトリエステルを得た。
【0028】
実施例10
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム2.0gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)及びプロピレンオキシド348g(6モル)の混合液を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約9時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約760gのトリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸69.2g(0.27モル)、ステアリン酸179.2g(0.63モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.6gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物228.4g(0.3モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約8時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物のパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)によるトリエステルを得た。
【0029】
実施例11
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン74.6g(0.5モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム2.0gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約4時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。次いで、プロピレンオキシド348g(6モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約8時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約680gのトリエタノールアミン(エチレンオキシド12モル−プロピレンオキシド12モル)ブロック付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸34.6g(0.135モル)、ステアリン酸89.6g(0.315モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン(エチレンオキシド12モル−プロピレンオキシド12モル)ブロック付加物206.0g(0.15モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミン(エチレンオキシド12モル−プロピレンオキシド12モル)ブロック付加物のパルミチン酸(0.9)/ステアリン酸(2.1)トリエステルを得た。
【0030】
実施例12〜14
実施例4の化合物を使用した。
実施例15
実施例7の化合物を使用した。
実施例16
実施例8の化合物を使用した。
【0031】
実施例17
四つ口フラスコにパルミチン酸76.9g(0.3モル)、ステアリン酸199.2g(0.7モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン74.6g(0.5モル)を発熱に注意しながら滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのパルミチン酸(0.6)/ステアリン酸(1.4)によるジエステルを得た。
当該実施例のアミノ化合物ジエステル30質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル70質量%を混合した。
【0032】
実施例18
実施例17のアミノ化合物ジエステル40質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル60質量%を混合した。
実施例19
実施例17のアミノ化合物ジエステル50質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル50質量%を混合した。
実施例20
実施例17のアミノ化合物ジエステル60質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル40質量%を混合した。
実施例21
実施例17のアミノ化合物ジエステル70質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル30質量%を混合した。
実施例22
実施例17のアミノ化合物ジエステル80質量%に、実施例2のアミノ化合物のトリエステル20質量%を混合した。
【0033】
比較例1
低密度化剤を添加することなく、実施例1と同様にして試験紙を作製し、評価を行った。
比較例2
低密度化剤として、ステアリルアルコールのエチレンオキシド5モル付加物を用い、水にて5質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例3
低密度化剤として、ステアリン酸のエチレンオキシド5モル付加物を用い、水にて5質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
比較例4
低密度化剤として、ペンタエリスリトールのステアリン酸トリエステル/ラウリルアルコールの(エチレンオキシド10モル/プロピレンオキシド7.5モル)ランダム付加物(質量比90/10)を用い、水にて5質量%となるように乳化・分散させた分散液を用いた以外は、実施例1の操作を行って、低密度紙を得た。
【0034】
比較例5
四つ口フラスコにパルミチン酸76.9g(0.3モル)、ステアリン酸199.2g(0.7モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を発熱に注意しながら滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのパルミチン酸(0.3)/ステアリン酸(0.7)によるモノエステルを得た。
比較例6
四つ口フラスコにパルミチン酸76.9g(0.3モル)、ステアリン酸199.2g(0.7モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.4gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン74.6g(0.5モル)を発熱に注意しながら滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約6時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミンのパルミチン酸(0.6)/ステアリン酸(1.4)によるジエステルを得た。
【0035】
比較例7
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン149.2g(1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム2.0gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)及びプロピレンオキシド348g(6モル)の混合液を力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約9時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約760gのトリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸46.2g(0.18モル)、ステアリン酸119.5g(0.42モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物228.4(0.3モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約8時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミン(エチレンオキシド6モル/プロピレンオキシド6モル)ランダム付加物のパルミチン酸(0.6)/ステアリン酸(1.4)によるジエステルを得た。
【0036】
比較例8
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン29.8g(0.2モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム2.0gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)及びプロピレンオキシド348g(6モル)の混合液を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約9時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約640gのトリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物を得た。
四つ口フラスコにヤシ脂肪酸[日油(株)製、「ヤシ脂肪酸」酸価265mgKOH/g]63.5g(0.3モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物320.9g(0.1モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約8時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物のヤシ脂肪酸トリエステルを得た。
【0037】
比較例9
耐圧反応容器に、トリエタノールアミン29.8g(0.2モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム2.0gを添加した。内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド264g(6モル)及びプロピレンオキシド348g(6モル)の混合液を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約9時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約640gのトリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物を得た。
四つ口フラスコに、ベヘニン酸61.3g(0.18モル)、ステアリン酸34.1g(0.12モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにトリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物320.9g(0.1モル)を滴下し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約8時間脱水エステル化反応を行ない、トリエタノールアミン(エチレンオキシド30モル/プロピレンオキシド30モル)ランダム付加物のベヘニン酸(0.18モル)/ステアリン酸(0.12モル)トリエステルを得た。
【0038】
比較例10
耐圧反応容器に、ステアリルアミン269g(1.0モル)を仕込み、内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温した。ここにエチレンオキシド88g(2モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約2時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成して、約350gのステアリルアミンエチレンオキシド2モル付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸76.9g(0.3モル)、ステアリン酸199.2g(0.7モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.5gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにステアリルアミンエチレンオキシド2モル付加物178.5g(0.5モル)を添加し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約8時間脱水エステル化反応を行ない、ステアリルアミンエチレンオキシド2モル付加物のパルミチン酸(0.6)/ステアリン酸(1.4)によるジエステルを得た。
【0039】
比較例11
耐圧反応容器に、ステアリルアミン269g(1.0モル)を仕込み、内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温した。ここにエチレンオキシド88g(2モル)を圧力400kPa以下に保ちながら、140〜150℃にて約2時間を要して添加し、さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。これを冷却して80℃以下にした後、触媒として水酸化ナトリウム1.0gを添加し、内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温し、エチレンオキシド176g(4モル)を圧力400kPa以下を保ちながら、140〜150℃にて約3時間を要して添加した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約530gのステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物を得た。
四つ口フラスコにパルミチン酸38.5g(0.15モル)、ステアリン酸99.6g(0.35モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを仕込み、70〜90℃に加熱し溶融した。ここにステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物133.3g(0.25モル)を添加し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、ステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物のパルミチン酸(0.6)/ステアリン酸(1.4)によるジエステルを得た。
【0040】
比較例12
耐圧反応容器に、ステアリルアミン269g(1.0モル)を仕込み、内部を窒素ガスで置換後、130℃に昇温した。ここにエチレンオキシド88g(2モル)を圧力400kPa以下に保ちながら140〜150℃にて約2時間を要して添加した。さらに120〜150℃にて約1時間熟成した。これを冷却して80℃以下にした後、触媒として水酸化ナトリウム1.0gを添加し、内部を窒素ガスで置換後130℃に昇温した。エチレンオキシド176g(4モル)を圧力400kPa以下を保ちながら、140〜150℃にて約3時間を要して添加した。反応生成物を取り出してリン酸にて触媒を中和し、減圧脱水後に減圧ろ過を行ない、析出した結晶をろ別して、約530gのステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物を得た。
四つ口フラスコにトール油脂肪酸[ハリマ化成(株)製、「ハートールFA−1」酸価194mgKOH/g]144.6g(0.5モル)及び触媒としてパラトルエンスルホン酸0.3gを仕込んだ。ここにステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物133.3g(0.25モル)を添加し、窒素ガス気流下、180〜240℃で約7時間脱水エステル化反応を行ない、ステアリルアミンエチレンオキシド6モル付加物のトール油脂肪酸によるジエステルを得た。
【0041】
実施例1〜9、実施例17〜22、比較例5〜7、比較例10については、酢酸にて中和した後、各例の化合物が5質量%になるようにホモミキサーにて、強制乳化したものを使用した。
実施例12は蟻酸、実施例13はクエン酸、実施例14はグリコール酸で中和した後、各例の化合物が5質量%になるようにホモミキサーにて、強制乳化したものを使用した。
実施例10〜11、実施例15〜16、比較例2〜4、比較例8〜9、比較例11〜12については、そのまま、各例の化合物が5質量%になるように、ホモミキサーにて強制乳化したものを使用した。
第1表に前記実施例及び比較例の化合物の内容を示す。また、これらの化合物を使って低密度紙を作製した結果を第2表に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
第2表から分かるように、本発明の紙用低密度化剤を用いて本発明方法により作製した実施例1〜22の試験紙は、密度が低く、不透明度が高く、比破裂強度、インターナルボンドの強度の維持率が高かった。
また、実施例2、実施例17〜22、比較例6の結果に見られるように、ジエステルとトリエステルの比率でトリエステルの比率が低くなるほど密度が高く、不透明度が低く、低密度化剤としての効果が低かった。特に30質量%以下で急激に効果が低下した。
比較例2〜9の場合、密度が高く、不透明度が低く、低密度化剤としての効果が低かった。
また、低密度化効果が低い割には、比破裂強度、インターナルボンドの強度の維持率が低かった。
一方、比較例10〜12の場合、密度が低く、不透明度が高く低密度化剤としての効果がある程度、見られるものの、比破裂強度、インターナルボンドの強度の維持率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の紙用低密度化剤及び低密度紙の製造方法によれば、紙の強度低下を抑えながら、紙製品のパルプ原料の使用量及び原料コストを低減し、製品の生産性を向上させることができる。また、本発明の紙用低密度化剤は印刷適性に優れ、ボリューム感のある高品質の紙を製造することができる。さらに、不透明度の向上によって無機填料の使用量を低減することができ、良品質の紙の製造が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を含有することを特徴とする紙用低密度化剤。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数7〜35のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、A1O、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、k、m及びnは1以上の数であり、k+m+nは3〜60の数である。A1O、A2O及びA3Oがそれぞれ複数ある場合、各A1O、A2O及びA3Oは、それぞれにおいて同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式[1]で示されるアミノ化合物のトリエステル又はその塩を紙の製造に使用するパルプに添加することを特徴とする低密度紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−65350(P2010−65350A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233599(P2008−233599)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】