説明

紙用添加剤及びそれを含む紙

【課題】紙を薄くすると不透明性が低下するだけでなく、製紙原料中の填料の歩留率も低下し、白色度も低下する傾向にある。また紙力のうち特に内部強度も低下する傾向にある。そのため本発明の目的は、紙を軽量化しても紙力のうち特に内部強度の低下が少なく、しかも白色度が低下しない処理を施した製紙用填料を提供する。
【解決手段】合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造した紙用添加剤を製紙原料に添加することによって達成できる。これら水溶性高分子の重量平均分子量は、5,000〜500,000であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用添加剤に関し、詳しくは合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造したことを特徴とする紙用添加剤、及びそれを含む紙に関する。
【背景技術】
【0002】
嵩高紙生産の背景としては、紙の軽量化に伴って不透明度、剛度や紙のこし、あるいは印刷時の裏抜けなどの問題点が発生しつつあり、それを解消する方法の一つとして嵩高によって上記の問題の解決策としていることが存在する。またもう一つは、より品位の高い紙を需要家は要求していることもたしかである。特に書籍用紙などは、ページをめくる場合の感触、あるいは嵩高に起因するボリューム感と軽量感など従来とは一味異なった要求事項がある。
【0003】
ところが嵩高紙の製造方法は、嵩高剤の使用から填料やパルプの加工方法に移行しつつある。例えば填料の加工方法として炭酸カルシウムなど填料の前処理方法がある。すなわち填料を製紙原料に添加する前に水系の高分子や活性剤により前処理し、その後製紙原料に添加する方法が、提案されている。すなわち親水性の単量体から構成されている高分子化合物(特許文献1)あるいは疎水部と親水部とが、アミド結合、エステル結合、及びエーテル結合により連結されている化合物(特許文献2)、製紙用嵩高剤の水分散液と炭酸カルシウム系填料のスラリーを混合し、この混合液を紙料に添加する方法(特許文献3)が開示されているが、紙力値低下の対策が十分ではない。またアニオン性多糖類と合成系カチオン性高分子を組み合わせた処理方法も開示されているが、紙力値低下あるいは特に白色度の向上が十分ではない(特許文献4)。
【特許文献1】特表2002−531714号公報
【特許文献2】特表2003−166195号公報
【特許文献3】特開2006−118056号公報
【特許文献4】特開2007−199403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在製紙各社では、紙の軽量化を推進しているが、紙を薄くすると不透明性が低下するだけでなく、製紙原料中の填料の歩留率も低下し、白色度も低下する傾向にある。また紙力のうち特に内部強度も低下する傾向にある。そのため本発明の目的は、紙を軽量化しても紙力のうち特に内部強度の低下が少なく、しかも白色度が低下しない処理を施した製紙用填料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため検討を重ねた結果、以下に述べるように嵩高性が向上するだけでなく、紙力値の低下が少なく、白色度が向上する紙用添加剤を発見し、本発明に達した。すなわち請求項1の発明は、合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性水溶性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造したことを特徴とする紙用添加剤に関する。
【0006】
請求項2の発明は、前記合成系水溶性カチオン性高分子が、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる水溶性カチオン性水溶性高分子、下記一般式(4)および/または下記一般式(5)で表される構造単位を10〜90モル%有する水溶性カチオン性水溶性高分子から選択される一種以上であり、前記合成系水溶性アニオン性水溶性高分子が、下記一般式(3)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる合成系水溶性アニオン性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤である。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。










【化4】


式中R10,R11、は水素原子またはメチル基を、X- は陰イオンを表わす。
【0007】
請求項3の発明は、前記合成系水溶性アニオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加、攪拌した後、合成系水溶性カチオン性高分子を添加、攪拌し製造したものであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の紙用添加剤である。
【0008】
請求項4の発明は、前記合成系水溶性カチオン性高分子および前記合成系水溶性アニオン性高分子の重量平均分子量が、5,000〜500,000であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の紙用添加剤である。
【0009】
請求項5の発明は、前記無機物微粒子が、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレイおよびホワイトカーボンから選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤である。
【0010】
請求項6の発明は、前記微細凝集粒子が、5質量%の無機物微粒子水性分散液を前記処理剤によって処理し、10倍希釈後、前記無機物微粒子水性分散液を粒度分布計によって測定した体積累積メジアン径(粒度分布中の全粒子の体積に対して、小さいほうの粒子から体積を累積していき、全体積に対して50%となる粒子の粒径)において、処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤添加時の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の紙用添加剤を含む紙である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製紙用添加剤は、合成系水溶性カチオン性高分子と合成系水溶性アニオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造したことを特徴とする。そのため一般的に市販されている水溶性高分子を使用できるので、低コストでしかも用意に無機粒子の表面性と会合あるいは凝集した粒子の大きさの調節が可能である。この微細凝集粒子からなる製紙用添加剤を使用することにより、内部強度、引張り強度、白色度の向上などが期待できる。前記合成系水溶性カチオン性高分子は、(メタ)アクリル系、DADMAC系、ポリアミジン系、ポリビニルアミン系などの重合体が使用可能であり、合成系水溶性アニオン性水溶性高分子は、(メタ)アクリル系などの重合体が使用可能である。水溶性高分子の添加法は、無機物微粒子水性分散液に合成系水溶性アニオン性高分子、合成系水溶性カチオン性水溶性高分子の順に添加するほうが好ましい。これら水溶性高分子の重量平均分子量が、10,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0013】
また前記無機物微粒子が、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレイおよびホワイトカーボンなどを使用することが好ましい。また前記微細凝集粒子が、5質量%の無機物微粒子水性分散液を前記処理剤によって処理し、10倍希釈後、前記無機物微粒子水性分散液を粒度分布計によって測定した体積累積メジアン径において、処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤添加時の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であることが好ましい。また無機物微粒子が炭酸カルシウムあるいはホワイトカーボンから選択される異種以上であることが好ましい。さらに本発明には、上記紙用添加剤を含有する紙も含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の紙用添加剤は、炭酸カルシウムなどの填料分散液を初めに調製する。分散液は、水中に粉末状の填量を投入し、ホモジナイザーなどのような強攪拌ができる攪拌機によって均一に分散させることにより調製する。その後、合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造する。この時、填料は弱い凝集を起こし、填料粒子が凝集した微細で嵩高なフロックを形成する。嵩高な程度や凝集粒子部の大きさは、本発明で使用する処理剤の添加量やカチオン性共重合体の分子量によって変化するため、紙の種類によって適宜前記カチオン性共重合体を選択する。
【0015】
使用する合成系水溶性カチオン性高分子は、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる水溶性カチオン性水溶性高分子、下記一般式(3)および/または下記一般式(4)で表される構造単位を10〜90モル%有するカチオン性水溶性高分子から選択される一種以上である。前記合成系水溶性アニオン性高分子は、下記一般式(3)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる合成系水溶性アニオン性高分子を使用する。またこれらカチオン性水溶性高分子は、本発明の効果に影響しない範囲でアニオン性のイオン性基を含有していても良く、その範囲は0モル%より多く、20モル%よりは少ない。この理由としてアニオン性基があまり多いと、本発明で使用する水溶性高分子で処理した後生成する微細凝集粒子表面のアニオン性基が多くなりすぎ、製紙原料への吸着が低下する。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【化4】

式中R10,R11は水素原子またはメチル基を、X- は陰イオンを表わす。
【0016】
前記一般式(1)で表される単量体は、第4級アンモニウム塩あるいは第3級アミンの塩を含有するカチオン性単量体である。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩などが挙げられる。
前記一般式(2)で表される単量体は、ジアリルアンモニウム塩であり、具体的にはジアリルジメチルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0017】
前記合成系水溶性アニオン性高分子は、前記一般式(3)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる合成系水溶性アニオン性高分子を使用する。アニオン性単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどが挙げられる。非イオン性単量体との共重合体でも使用可能であり、非イオン性単量体は、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0018】
また前記一般式(4)及び/又は(5)で表される構造単位を有する水溶性高分子は、ポリビニルアミジン系水溶性高分子であり、N−ビニルカルボン酸アミドとアクリロニトリル共重合物の酸による加水分解とそれに継続するアミジン化反応によって合成することができる。
【0019】
本発明で使用する合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子は、重量平均分子量が、5,000〜500,000であり、好ましくは5,000〜200,000であり、さらに好ましくは5,000〜100,000である。
【0020】
本発明の原料となる無機物質微粒子水性分散液は、炭酸カルシウムなど無機粉体を水に分散させた水性スラリーとして調製する。これに重量平均分子量が5,000〜500,000である合成系水溶性アニオン性水溶性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子を添加する。添加順はどちらが先でも良いが合成系水溶性アニオン性高分子、合成系水溶性カチオン性高分子の順が好ましい。この理由は、製紙原料への吸着を顧慮した場合、凝集粒子表面がカチオン性になっているほうが、効率が良いことによる。その後、攪拌下、微細凝集粒子部を形成させ製造する。または予め必用な量の水を用意し、その中に分散剤を溶解しておき、そこに無機微粒子粉体を投入していっても良い。
【0021】
分散液中の無機微粒子粉体濃度は、15〜60質量%であるが、20〜50質量%であるほうがより好ましい。またホモジナイザーなどによる攪拌回転数は、200〜2000回転/分であるが、300〜1000回転/分であるほうがより好ましい。攪拌時間としては、合成系水溶性アニオン性高分子を添加して5〜20分、合成系水溶性カチオン性高分子を添加して5〜20分であることが好ましい。あまり長時間攪拌を持続すると凝集粒子が細かくなりすぎ、白色度や内部強度の向上に影響を与えるからである。
【0022】
本発明の紙用添加剤の特徴は、白色度が向上し、また紙力値も低下の度合いが小さい。白色度が向上する理由として処理剤によって適度な大きさの凝集粒子部が生成するためと見られる。すなわち、一般的なカチオン性水溶性高分子により処理した場合では、凝集粒子部が大きいものから小さいものまで粒度が広い分布になる。しかし本発明では例えば、合成系水溶性アニオン性水溶性高分子で処理し無機微粒子を凝集させ、そのままシェアを掛けることにより凝集粒子が崩壊し、その後合成系水溶性カチオン性高分子の添加により再凝集する。しかし最初の合成系水溶性アニオン性水溶性高分子による凝集、シェアによる崩壊で凝集粒子の分布が狭まり、さらに合成系水溶性カチオン性高分子の添加により極微細あるいは極粗大粒子の生成が抑制されると推定される。
【0023】
本発明の合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性水溶性高分子により凝集処理した粒子の粒度分布は、5質量%の無機物微粒子水性分散液を前記処理剤によって処理し、10倍希釈後、分散液を粒度分布計などによって解析し、体積累積メジアン径を管理することによって適切な凝集粒子部を得ることが出来る。すなわち処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤を添加し、微細凝集処理後の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であると本発明の目的とする条件に適合する。この場合の合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性水溶性高分子の合計添加量としては、2〜15質量%である。ここでメジアン径というのは、ある粒度分布中の全粒子の体積に対して、小さいほうの粒子から体積を累積していき、全体積に対して50%となる粒子の粒径を表わす。例えばメジアン径が5μmであれば5μmに近い範囲の粒子がそこに集中していることを示す。ただしその分布が広い分布か狭い分布かまでは表わしていない。
【0024】
例えばジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリルアミドからなるカチオン性高分子では、無機物に1〜5質量%添加し、分散液を処理してもDm/Dmoは、0.7〜0.8程度にしかならない。また界面活性剤系の嵩高剤により処理した場合でも、前記比は0.2〜1.1程度である。従って、原料として使用する無機粒子や攪拌条件、使用するカチオン性の油溶性高分子によって変化するが、本発明で使用するカチオン性の油溶性高分子によって処理すると、適度な大きさの粒子径、すなわち大よそには体積累積メジアン径において10〜16μmのものが、比較的狭い範囲で分布した分散粒子が生成する。この時、処理剤無添加では、3〜4μmであり、界面活性剤系の嵩高剤により処理した場合は2〜5μm、親水性単量体のみからなるジメチルジアリルアンモニウムクロリドとアクリルアミドからなるカチオン性高分子では2〜4μmである。
【0025】
これら水溶性高分子の添加量は、無機粉体に対し0.02〜1質量%、好ましくは0.03〜0.5質量%である。また無機微粒子粉体を凝集処理して得られる紙用添加剤としての添加量は、製紙原料100質量%に対して5〜60質量%、好ましくは5〜30質量%を仕込む。
【0026】
本発明の紙の製造方法においては、前記紙用嵩高剤は抄紙前の製紙原料中に添加される。添加場所は、ミキシングチェスト、種箱、マシンチェストやヘッドボックスや白水タンク等のタンク、またはこれらの設備と接続された配管中(ファンポンプ等)に添加することができる。特に好ましくは、本発明の紙用嵩高剤は前記カチオン性共重合体がパルプスラリー中に均一に分散しパルプ繊維に定着することによって効果を発現するため、添加から抄紙までに充分に混合が行われる場所である。
【0027】
本発明では、必要に応じて、サイズ剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力向上剤、ピッチコントロール剤、硫酸アルミニウム、アクリルアミド基を有する化合物、ポリエチレンイミン等の凝結剤等を併用することができる。
【0028】
また、本発明の紙の製造方法によって得られる紙は、新聞用紙、書籍用紙、印刷・情報用紙、包装用紙等の紙、板紙である。
【0029】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制約はされない。
【実施例1】
【0030】
(微細凝集粒子の調製)炭酸カルシウムの水性スラリーに表1に記載する水溶性高分子を添加し、凝集処理を行い、紙用添加剤を調製した。すなわち炭酸カルシウムを水に分散させ、一昼夜攪拌を継続させ5質量%水性スラリーを調製した。これに各アニオン性水溶性高分子を対炭酸カルシウム0.03質量%添加し、マグネチックスターラーにより400回転/分で10分攪拌し、更に各カチオン性水溶性高分子を対炭酸カルシウム0.05質量%添加し、マグネチックスターラーにより400回転/分で10分攪拌することにより微細凝集粒子部を形成させ製造した。また市販の嵩高剤(界面活性剤タイプ;ステアリン酸のプロピレンオキサイド付加物(PO重合度15)(比較試料−1)、アニオン性多糖類(カルボキシメチルセルロース、分子量30万、アニオン化度、35.5対グルコース単位、比較試料−2)によって処理した炭酸カルシウム微細凝集粒子部、また合成系水溶性アニオン性水溶性高分子あるいは合成系水溶性カチオン性水溶性高分子単独の場合も行った。これらの場合は、確薬剤添加後10分間攪拌し処理した。
【0031】
(表1)

AACNa;アクリル酸ナトリウム、IA;イタコン酸、AAM;アクリルアミド、DMQ;アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、DADMAC;ジアリルジリメチルアンモニウム塩化物、
【0032】
(粒度分布の測定)炭酸カルシウムの粒度分布は以下のようにして測定した。軽質炭酸カルシウムタマパールTP−121(奥多摩工業製)の5%液に、処方−1〜処方−4(いずれもアニオン性水溶性高分子、カチオン性水溶性高分子の順に添加)を炭酸カルシウムに対し0.03%+0.05%添加し、マグネチックスターラーにより400rpmで10分+10分攪拌した。その後、炭酸カルシウムスラリーを10倍(0.5%)に希釈し、HORIBA、レーザ回折/散乱式粒度分布計、LA−920にて粒度分布を解析し、処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo(μm)、処理剤添加時の体積累積メジアン径をDm(μm)とし、その比Dm/Dmoを算出した。結果を表2に示す。




【0033】
(表2)

【実施例2】
【0034】
0.5質量%のLBKPパルプスラリー(CSF400ml)を、抄紙後のシートの坪量が80g/mになるように量りとり、攪拌下、処方−1〜処方−4によって処理した製紙用添加剤をパルプに対して純分15質量%添加し、また歩留向上剤として高分子量アクリル系水溶性高分子(ポリアクリルアミド系、重量平均分子量1800万、カチオン当量値2.09meq/g)をパルプに対し0.03%添加した。
【0035】
これを1/16mタッピースタンダードシートマシンにて抄紙し、湿紙を得た。湿紙を3.0kg/mで5分間プレスした後、鏡面ドライヤーを用いて105℃で3分間乾燥した。乾燥した紙を、23℃、50%RHの条件で1日間調湿した後、その坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し(熊谷理機工業製JIS紙厚計(TM−600)、坪量/厚みにより、紙の密度を求めた。紙中灰分は、525℃で灰化することにより測定した。また同じ紙の別の部分を使用し、白色度計(テクニダイン社製、分光光度計型測色計、カラータッチPC)によりISO白色度(JIS、8148;2001)、内部結合強度(JAPAN−TAPPI−No.18−1:2000)は、オリエンテック社製テンシロン−RTC−1210A、移送速度20mm/min.により測定した。結果を表3に示す。
【0036】
(比較例)実施例2と同様な操作により、比較処方−1〜比較処方−5によって処理した製紙用添加剤を添加し、紙を抄き、紙質の試験を実施した。結果を表3に示す。
【0037】
(表3)

厚み;mm、密度;g/m、白色度は無次元、内部結合強度;KN/m
紙中灰分;紙に対する質量%




















【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成系水溶性アニオン性高分子と合成系水溶性カチオン性高分子を無機物微粒子水性分散液に添加し、微細凝集粒子を形成させ製造したことを特徴とする紙用添加剤。
【請求項2】
前記合成系水溶性カチオン性高分子が、下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる合成系水溶性カチオン性高分子、下記一般式(4)および/または下記一般式(5)で表される構造単位を10〜90モル%有する合成系水溶性カチオン性高分子から選択される一種以上であり、前記合成系水溶性アニオン性高分子が、下記一般式(3)で表される単量体を5〜100モル%共重合して得られる合成系水溶性アニオン性高分子であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基あるいはベンジル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基であり、同種でも異種でも良い。Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基あるいはベンジル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【化4】

式中R10,R11は水素原子またはメチル基を、X- は陰イオンを表わす。
【請求項3】
前記合成系水溶性アニオン性高分子を無機物水性分散液に添加、攪拌した後、合成系水溶性カチオン性水溶性高分子を添加、攪拌し製造したものであることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の紙用添加剤。
【請求項4】
前記合成系水溶性カチオン性高分子および前記合成系水溶性アニオン性高分子の重量平均分子量が、5,000〜500,000であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の紙用添加剤。
【請求項5】
前記無機物が、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレイおよびホワイトカーボンから選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【請求項6】
前記微細凝集粒子が、5質量%の無機物水性分散液を前記処理剤によって処理し、10倍希釈後、前記無機物水性分散液を粒度分布計によって測定した体積累積メジアン径(粒度分布中の全粒子の体積に対して、小さいほうの粒子から体積を累積していき、全体積に対して50%となる粒子の粒径)において、処理剤無添加時の体積累積メジアン径をDmo、処理剤添加時の体積累積メジアン径をDmとした場合、Dm/Dmoが2以上、6以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の紙用添加剤を含む紙。
























【公開番号】特開2010−138516(P2010−138516A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315126(P2008−315126)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】