説明

紙葉束搬送機構、及び還流式紙幣処理装置

【課題】ベルト間に紙幣束を挟んで搬送する際に、両ベルトによる紙幣束の挟圧保持力の低下によって紙幣束が非整列状態となって搬送され、そのまま紙幣収納部内に不揃いの状態で導入、堆積される不具合を解決する。
【解決手段】内側ベルト63と外側ベルト73との間に形成される搬送領域Tによって紙葉束を挟持しつつ搬送する紙葉束搬送機構において、紙葉束の搬送方向長L1と、前記搬送領域に沿って隣接配置される各ローラ間の間隔L2との関係を、L1≧(L1/2)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば貨幣を入出金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の貨幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、詳細には金種別に紙幣を収容する還流式紙幣収納部を複数備えた還流式紙幣処理装置において、終業時等に全紙幣を一つの紙幣収納部等に回収する作業を迅速化するための技術に関するものである。特に、近接配置されて同方向に走行する2本のベルト間に形成される搬送領域内に紙幣束を挟んで搬送する際にベルト間の弛みによって紙幣間にずれやバラツキが発生することを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等に装備されており、この紙幣処理装置には始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に保管するための紙幣収納部が装備されている。
この種の紙幣処理装置において、終業時等に装置本体内に残った全ての紙幣を回収する際に、金種別の紙幣収納部内に夫々収容された紙幣束を機外に個別に取り出すとすれば、全ての紙幣収納部をカセット式に構成して機外に出入れ自在にする必要があるが、このように構成すると紙幣収納部の大型化を招くばかりでなく、回収作業が繁雑化、長時間化する。
【0003】
上記の如き不具合に対処するために、従来例えば千円紙幣、五千円紙幣、及び一万円紙幣を取り扱う還流式紙幣処理装置において、各紙幣の金種毎に対応する還流式紙幣収納部を備え、且つ、紙幣の補充・回収のための紙幣アクセスを行う機能を千円紙幣収納部に担わせたものがある。
なお、還流式の紙幣収納部とは、始業時に予め収納しておいた紙幣のみならず、装置の稼働中に利用者が投入した紙幣を一旦収納する一方で、この紙幣を釣銭等とするために外部へ繰り出す(排出する)機能を備えたタイプの紙幣収納部を指称する。また、還流式の紙幣収納部にはループ方式とスイッチバック方式がある。ループ方式は紙幣の入口(受入れ方向)と出口(繰り出し方向)を異ならせた方式であり、スイッチバック方式とは同じ出入り口から紙幣の受け入れと繰り出しを行う方式である。
【0004】
図3は従来のスイッチバック方式の還流式紙幣処理装置の構成を示す。
この紙幣処理装置101は、還流式の紙幣処理機構102と、この紙幣処理機構を内部に収容する外装体103と、から概略構成されている。
紙幣処理機構102は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、又は一枚ずつ受入れ可能な入金取込部104と、入金取込部104から受け入れられた紙幣を装置内に搬送する搬送経路105と、搬送経路105に沿って紙幣を搬送するための駆動力を生成、伝達するローラ、ベルト、分岐ゲート、モータ、ソレノイド等から成る搬送機構110と、入金取込部104の直下流側の搬送経路上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種を判定する識別装置115と、搬送経路105と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣(例えば、一万円紙幣)を出入れ自在に収容する還流式の第1の紙幣収納部120と、搬送経路105と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣(例えば、千円紙幣)を出入れ自在に収容する還流式の第2の紙幣収納部121と、紙幣を釣銭等として装置外に排出すると共に複数枚の紙幣を堆積させて保留する機能を有した出金保留部130と、これらを制御する制御手段140と、を備えている。
【0005】
入金取込部104は一括投入された複数枚の紙幣を一枚ずつに分離しながら搬送経路105に送り出すための分離給送機構を備えている。
搬送機構110は、入金取込部104から一枚ずつ給送された紙幣を金種別に第1、又は第2の紙幣収納部120、121に送り込む仕分け搬送機能と、第1、又は第2の紙幣収納部120、121から夫々一枚ずつ送り出されてきた紙幣を出金保留部130に搬送する機能と、を併有している。搬送機構110は図示しないローラ、ベルト、第1、及び第2の分岐ゲート111、112と、これらの可動部品を駆動するためのモータ、ソレノイド等から構成されており、制御手段140からの制御によって各ローラ、ベルト、分岐ゲートが駆動されることにより、所定のタイミングにて各搬送機能を実現することができる。
【0006】
第1の紙幣収納部120は、第1の紙幣、例えば一万円紙幣専用であり、搬送経路105を経由して一旦受け入れた一万円紙幣を搬送経路105に一枚ずつ送出する還流機能を有している。
第2の紙幣収納部121は、第2の紙幣、例えば千円紙幣専用であり、搬送経路105を経由して一旦受け入れた千円紙幣を搬送経路105に一枚ずつ送出する還流機能を有している。第2の紙幣収納部121は、機外に引出し可能なカセットタイプになっており、終業時には第1の紙幣収納部120に収納された金種の紙幣を順次第2の紙幣収納部121に送込んで集積することによって、第2の紙幣収納部121を利用して全紙幣を一括して機外に取り出すことができる。
なお、この従来例に係る還流式紙幣処理装置は、可能な限り小型化することを前提とした構成となっているが、分岐ゲート111、112による方向転換部は小さな曲率のU字ターン等の湾曲搬送が困難であるため、分岐ゲートによる方向転換部は大きな曲率の湾曲経路とならざるを得ず、搬送経路105の横幅の減縮に限界がある。
【0007】
この紙幣処理装置を備えた自動販売機の運用が終了した時点で、紙幣収納部120に収納されている紙幣を第2の紙幣収納部121に一枚ずつ自動的に移送した後、作業員は、第2の紙幣収納部121を引き出して売上代金(全ての紙幣)を回収する。
第1の紙幣収納部120から各紙幣を第2の紙幣収納部121に移送、収納する動作としては、例えば、第1の紙幣収納部120に収納されている紙幣束から一万円紙幣1枚を分離して搬送経路105に繰出し、搬送経路上のR点まで移動した後で、逆搬送して分岐ゲート113により経路を変えて第2の紙幣収納部121に移送する。
なお、始業時には釣銭として使用する千円紙幣を所定枚数だけ第2の紙幣収納部121にセットすれば足りるため、作業員による紙幣へのアクセス箇所を一箇所に制限してセキュリティ性を向上させると同時に、作業員の負担を軽減している。
しかしながら、上記従来のスイッチバック還流方式の紙幣処理装置にあっては、第1の紙幣収納部120から第2の紙幣収納部121に回収作業を行う際に、第1の紙幣収納部から一枚ずつ搬送経路に送り出した各紙幣をR点で逆転搬送して移送処理する方式を採らざるをえないために、回収時間が長期化するという問題があった。
【0008】
回収時間を短縮するための改善策としては図4に示したように第2の紙幣収納部121の出入り口に接続した搬送経路分岐点にトリプル分岐ゲート114を設けることで、第1の紙幣収納部120の収納紙幣を、一枚ずつ連続的に第2の紙幣収納部121に移送することができる。
しかしながら、トリプル分岐ゲート114を実際に組み込む場合、紙幣の湾曲搬送にはかなり大きな曲率が必要であり、且つ、極めて複雑、且つ大型の搬送機構となるため、還流式紙幣処理装置の大型化、高コスト化が避けられなかった。
【0009】
特許文献1には、金種別の紙幣収納部と、大容量の補充・回収紙幣収納部と、を備え、終業時には各紙幣収納部内の全紙幣を補充・回収紙幣収納部内に一枚ずつ送り込むことによって、補充・回収紙幣収納部から全紙幣を取り出すことができるようにした紙幣出金機が開示されている。
しかし、この従来例にあっては、各紙幣収納部に収納された多量の紙幣を一枚ずつ補充・回収紙幣収納部に移送する作業が必要となるため、回収作業に長時間を要するという問題がある。また、複数の紙幣収納部とは別個に大型の補充・回収紙幣収納部を装置内に配置する必要があるために、紙幣収納、搬送のための機構が複雑化するばかりでなく、装置が大型化するという欠点があった。また、紙幣の入口と出口を別々に備える金種別紙幣収納部を用いたループ方式の還流式紙幣処理装置であるため、複雑な搬送経路を有した大型の還流式紙幣処理装置となっている。
各種紙幣処理装置に対する小型化の要請が高まる中で、このような大型化をもたらす構成は採用することが困難である。
【0010】
次に、図3、図4に示した紙幣処理装置の搬送経路105は、複数のローラによって張設されたベルト間に紙幣束を挟んで搬送する搬送領域Tを含んでいる。搬送領域Tを構成する搬送機構部分は、例えば図5(a)の具体的構成図に示すように複数のローラ151、及び複数のローラ151によってエンドレスに張設され駆動されることによって走行する内側ベルト152を有した内側ベルトユニット150と、内側ベルト152の外側走行面152aに近接配置されて同方向に走行する内側走行面162aを有した外側ベルト162、及び外側ベルトをエンドレスに張設する複数のローラ161を有した外側ベルトユニット160と、を有しており、外側走行面152aと内側走行面162aとの間に形成される搬送領域Tによって一枚の紙幣、又は紙葉束Sを挟持しつつ搬送するように構成されている。
【0011】
ところで、紙幣Sの搬送方向長L1よりも長い配置間隔L2を隔てて隣接配置された2つのローラ151、161間に位置する両ベルト152、162による紙幣の挟持力は、一枚の紙幣を搬送する際には十分であるが、複数枚の紙幣が積層された紙幣束を搬送する際には不十分である。このため、図5(b)に示したように離間配置されたローラ151、161間に位置する両ベルト152、162間の挟圧力不足に起因して各紙幣が位置ずれを起こしやすくなる。このようにずれを起こした紙幣束を紙幣収納部に導入すると、紙幣収納部内の紙幣堆積部材上における積層状態が悪化する原因となる。紙幣束が不整列状態のまま紙幣収納部に投入されると、紙幣収納部内におけるジャム、収納不良等が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−260059公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のようにスイッチバック式の紙幣収納部を複数備えた紙幣処理装置にあっては、終業時に各紙幣収納部内に残留した全紙幣を一つの還流式紙幣収納部に一枚ずつ移送する必要があるため、搬送機構が大型化するという問題と、回収時間の短縮化に限界があるという問題があった。回収時間を短縮化するためにトリプル分岐ゲート等の複雑、大型の搬送機構を付加すると更に大型化、高コスト化するという問題があった。
また、紙幣束を搬送する搬送機構としてローラとベルトから成る構成を採用した場合には、近接しつつ同方向に走行する2つのベルト間による挟圧力不足によって搬送中の紙幣束に位置ずれが発生して、紙幣束が変形を起こすという問題があった。
【0014】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、金種別に複数の還流式紙幣収納部を備えた紙幣処理装置において、紙幣収納部の他に格別の回収専用カセットを装備することによる装置の大型化、高コスト化を招くことなく、小型化を積極的に図りつつ、終業時等において最短時間で各紙幣収納部から紙幣を一箇所に回収することができる還流式紙幣処理装置を提供することを目的としている。
更に本発明は複数のローラによって支持されたベルト間に紙幣束を挟んで搬送する際に、ローラ間隔が紙幣の搬送方向長に比して過大であるためにベルトによる挟圧力が不十分となり、紙幣束が非整列状態となって搬送され、そのまま紙幣収納部内に不揃いの状態で導入、堆積される不具合を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る紙幣束搬送機構は、複数のローラ、及び該複数のローラによってエンドレスに張設され且つ駆動されることによって走行する第1のベルトを有した第1のベルトユニットと、前記第1のベルトの走行面に近接して同方向に走行することによって搬送領域を形成する走行面を有した第2のベルト、及び該第2のベルトをエンドレスに張設して駆動する複数のローラを有した第2のベルトユニットと、を有し、前記搬送領域によって紙葉束を挟持しつつ搬送する紙葉束搬送機構において、前記搬送領域に沿って隣接配置される各ローラ間の間隔を、前記紙葉束を少なくとも2つのローラによって常時支持し得るように設定したことを特徴とする。
複数のローラによって夫々支持された2つのベルトの走行面同士を近接させることによって搬送領域を形成した紙幣束搬送機構においては、ローラによるベルト支持力が十分でない場合にはベルト走行面同士が紙幣束を挟圧する保持する力が低下して紙幣間の位置ずれが発生して搬送中における整列状態が悪化する。本発明では、搬送経路中におけるローラ間隔を調整し、紙幣束を常に複数のローラによって支持し得るように構成したので、紙幣束の整列性の悪化を防止することができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1及び第2のベルトが蛇行するように前記各ローラを配置したことを特徴とする。
これによれば、各ベルトの走行面による紙幣束の挟圧保持力を更に高めることが可能となる。
【0017】
請求項3の発明に係る還流式紙幣処理装置は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する一時保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部内の第1の紙幣を一枚ずつ送出して前記一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該一時保留部内の第1の紙幣束を前記第2の紙幣収納部内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1の紙幣収納部内に収容された全ての第1の紙幣を前記第2の紙幣収納部に移送するように制御し、前記搬送経路中に、請求項1又は2に記載の紙葉束搬送機構を配置したことを特徴とする。
還流式の紙幣収納部の一方を回収紙幣収納部として兼用することにより、装置全体形状を小型化することが可能となる。更に、一時保留部を利用した紙幣束単位の回収動作を実施できる構成としたことにより、搬送経路、及び搬送機構をシンプル化、小型化することができるため、装置全体形状を更に小型化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金種別のスイッチバック還流式紙幣収納部を併設した構成において、一方の紙幣収納部に収納されている紙幣を他方の紙幣収納部に回収するに際し、集積機能だけを有したシンプルな構成の一時保留部を介在させた一括搬送を実施するようにしたので、装置の大型化を招くことなく、移送処理時間を短縮することができる。即ち、還流式紙幣収納部よりも構成が簡素な一時保留部を用い、移送すべき収納紙幣を一時保留部へ1枚ずつ送り込んで所定枚数集積させ、集積した紙幣束をそのまま同じ搬送経路上に繰出して、回収紙幣収納部を兼ねた紙幣収納部に束搬送するようにしたので、紙幣の移送処理にかかる時間を短縮することができる。
また、ローラ、ベルトから成る搬送領域を含む紙葉束搬送機構においては、隣接するローラ間の搬送方向間隔が過大であると、ローラ間に位置するベルトによる紙幣束の挟圧保持力が不十分となって搬送中の紙幣束が変形して不整列状態となり、紙幣間に位置ずれが残った状態で紙幣収納部に収納される虞がある。
【0019】
本発明では、搬送方向に沿って配置された複数のローラ間の間隔を、少なくとも2つのローラによって紙幣束を常に支持し得るように設定したので、ベルトによる挟圧保持力を十分に維持することが可能となり、紙幣束のバラツキを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る紙葉束搬送機構(紙幣束搬送機構)の構成説明図である。
【図3】従来のスイッチバック方式の還流式紙幣処理装置の構成を示す説明図である。
【図4】他の従来例の構成説明図である。
【図5】(a)及び(b)は他の従来例の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る紙幣処理装置の概略構成図である。
この紙幣処理装置1は、例えば食券等の自動販売機(券売機)に装備されて紙幣の受け入れ、釣銭等としての紙幣の払い出しの処理を行う機能を有する。
紙幣処理装置1は、還流式の紙幣処理機構2と、この紙幣処理機構2を内部に収容する外装体3と、から概略構成されている。
紙幣処理機構2は、金種の異なる紙幣を複数枚一括して、又は一枚ずつ受入れ可能な入金取込部4と、入金取込部4から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路5と、搬送経路5に沿って紙幣を搬送するための駆動力を生成、伝達するためのモータ、ソレノイド、及びローラ、ベルト、ゲートから成る搬送機構10と、入金取込部4の直下流側の搬送経路上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種を判定する識別装置15と、搬送経路5と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部20と、搬送経路5と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部25と、搬送経路5を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して搬送経路に送出する一時保留部30と、釣銭としての紙幣を装置外に排出する出金保留部35と、これらを制御する制御手段40と、を備えている。
【0022】
入金取込部4は一括投入された複数枚の紙幣を一枚ずつに分離しながら搬送経路5に送り出すための分離給送機構を備えている。
搬送機構10は、入金取込部4から一枚ずつ給送された紙幣を所定のルートにて搬送することにより金種別に第1、又は第2の紙幣収納部20、25に送り込む仕分け搬送機能と、第1、又は第2の紙幣収納部20、25から夫々一枚ずつ繰り出されてきた紙幣を一時保留部30内に順次搬送して堆積させる機能と、一時保留部30から繰り出されてきた紙幣束を回収用の収納部を兼ねた第2の紙幣収納部25に一括して送り込む一括搬送機能と、を併有している。制御手段40からの制御によって各ローラ、ベルト、ゲート11を切り替え駆動されることにより、所定のタイミングにて上記の各搬送機能を実現することができる。
【0023】
第1の紙幣収納部20は、第1の紙幣、例えば一万円紙幣専用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた一万円紙幣を搬送経路5に一枚ずつ送出する還流機能を有している。
第2の紙幣収納部25は、釣銭とした多用される第2の紙幣、例えば千円紙幣用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた千円紙幣を搬送経路5に一枚ずつ送出するスイッチバック式の還流機能を有している。
一時保留部30は、第1、及び第2の紙幣収納部20、25から夫々一枚ずつ繰り出されてきた紙幣を一枚ずつ受入れて所定の許容枚数だけ積層させる集積機能と、積層された紙幣束を一括して搬送経路5に繰り出す一括送出機能を有している。
本発明では、例えば第2の紙幣収納部25をカセット式に着脱自在(出入れ自在を含む)に構成し、第2の紙幣収納部25と対面する外装体3の壁部に設けた図示しないドアを開放することによって第2の紙幣収納部25を取出し、収納された紙幣を回収できるように構成されている。
【0024】
本発明の特徴は、終業時における紙幣回収作業において作業者が所定の回収スイッチを操作することにより、制御手段40が、第1の紙幣収納部20内の一万円紙幣を一枚ずつ搬送経路5に送出して搬送機構10によって高速搬送することにより一時保留部30に所定枚数(例えば、15枚)堆積させた後で、一時保留部内の15枚の一万円紙幣束を第2の紙幣収納部25内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、第1の紙幣収納部20内に収容された全ての一万円紙幣を第2の紙幣収納部25に移送するようにした構成にある。一時保留部30に送り込まれる紙幣の枚数は、搬送経路等の適所に配置した通紙センサによって検知された通過情報にもとづいてカウントされる。
この実施形態では、第2の紙幣収納部25を回収紙幣収納部として兼用しており、終業時に第2の紙幣収納部25内に第1及び第2の紙幣を全て回収することにより、一括した回収作業を実施することが可能となる。従って、第2の紙幣収納部25は装置本体内から着脱可能、或いは出入れ可能なカセットタイプに構成することが好ましい。利用者によって投入される紙幣としては勿論、釣銭として使用される紙幣としても使用頻度の高い千円紙幣を収容する第2の紙幣収納部25を紙幣回収用の収納部として兼用し、且つ一万円紙幣等の使用頻度の低い紙幣をこの第2の紙幣収納部25に移送する構成とすることにより、回収時間を短縮することが可能となる。
【0025】
一時保留部30は一枚ずつ高速搬送されてくる紙幣を積層状態で集積させると共に、積層した紙幣束を一括して搬送経路に送り出すための構成を有しており、搬送経路に送出された紙幣束は第2の紙幣収納部25内に一括して送り込まれるため回収効率を大幅に高めることができる。つまり、収納枚数が少ない第1の紙幣収納部内の一万円紙幣を一時保留部30に積層して収納した後で紙幣束として一括して第2の紙幣収納部内に移送するため、一枚ずつ回収する従来装置に比して回収時間が大幅に短縮することが明かである。しかも、専用の回収紙幣収納部を別設するわけではないから装置の全体サイズを小さくすることができる。
この実施形態に係る紙幣処理装置によれば、金種別のスイッチバック還流式紙幣収納部を併設した構成において、一方の紙幣収納部に収納されている紙幣を他方の紙幣収納部に回収するに際し、一時保留部を介在させた一括搬送を実施するようにしたので、装置の大型化を招くことなく、移送処理時間を短縮することができる。即ち、還流式紙幣収納部よりも構成が簡素な一時保留部を用い、移送すべき収納紙幣を一時保留部へ1枚ずつ送り込んで所定枚数集積させ、集積した紙幣束をそのまま同じ搬送経路上に繰出して、回収紙幣収納部を兼ねた紙幣収納部に束搬送するようにしたので、紙幣の移送処理にかかる時間を短縮することができる。
【0026】
次に、図2は本発明の一実施形態に係る紙葉束搬送機構(紙幣束搬送機構)の構成説明図である。
この紙幣束搬送機構60は、複数のローラ62、及び複数のローラ62によってエンドレスに張設され、且つ一方向、又は双方向に駆動されることによって走行する内側ベルト(第1のベルト)63を有した内側ベルトユニット61と、内側ベルト63の外側走行面63aに近接配置されて同方向に走行する内側走行面73aを有した外側ベルト(第2のベルト)73、及び外側ベルト73をエンドレスに張設する複数のローラ72を有した外側ベルトユニット71と、を備え、内側ベルト63と外側ベルト73との間に形成される搬送領域Tによって紙葉束Sを挟持しつつ搬送する。
搬送領域Tは、反転ローラ62aの外周に巻掛けられた内側ベルト63とガイド部材80との間に形成されるU字搬送領域T1と、反転ローラ62aの上流側、及び下流側において内外ベルト間に夫々形成される直線搬送領域T2と、から構成されている。
【0027】
本発明の特徴的な構成は、紙葉束の搬送領域に沿って順次隣接配置される各ローラ62、72間の間隔L2を、紙葉束S(紙葉束の搬送方向長(=同金種紙幣一枚の搬送方向長)L1)を少なくとも2つのローラ62、72によって常時支持し得るように設定した構成が特徴的である。
本実施形態では、搬送経路Tを構成するベルト63、73を間に挟んで反対側位置に夫々配置された各ローラ62、72によって各ベルト同士を圧接させる方向に付勢するように構成したので、搬送経路内における紙幣束に対する挟圧力が増大し、紙幣束を構成する紙幣間の位置ずれ発生を防止することができる。
【0028】
このように搬送経路Tを通過する紙幣束Sが、ベルト63、73を間に挟んで夫々反対側に配置された少なくとも2つのローラ62、72によって支持されつつ搬送されるように構成したので、ベルト間の挟圧力の増強によって紙幣束を理想的な積層状態にて搬送することが可能となる。従って、紙幣束が紙幣収納部に一括導入される際に紙幣がバラバラになったり、不整合状態となることがない。
各ローラ62、73によって支持された各ベルト63、73によって形成される搬送領域Tは直線状であってもよいし、図2に示したように蛇行するように構成してもよい。このように蛇行するようにローラ62、73を配置することにより両ベルトによる紙幣束の挟圧力をより高めてより安定した搬送が可能となる。
なお、内側ベルト63、及び外側ベルト73を正逆転させることにより、紙幣束Sを双方向に搬送可能に構成する搬送機構に対して本発明を適用してもよい。
【0029】
なお、本発明の搬送機構は紙幣のみならず、紙葉を束搬送する紙葉類搬送装置一般に適用することができる。
また、本発明の紙幣束搬送機構は、図1に示した如く還流式紙幣収納部の一つを回収用として兼用するタイプの紙幣処理装置のみならず、還流式紙幣収納部とは別個に紙幣回収専用のカセットを備えたタイプの紙幣処理装置の紙幣束搬送機構、その他、ローラとベルトから成る紙幣束(紙葉束)搬送機構一般に適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1…紙幣処理装置、2…紙幣処理機構、3…外装体、4…入金取込部、5…搬送経路、10…搬送機構、11…ゲート、15…識別装置、20、25…紙幣収納部、30…一時保留部、35…出金保留部、40…制御手段、60…紙幣束搬送機構、61…内側ベルトユニット、62…ローラ、62a…反転ローラ、63…内側ベルト、63a…外側走行面、71…外側ベルトユニット、72…ローラ、73…外側ベルト、73a…内側走行面、T1…U字搬送領域、T2…直線搬送領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラ、及び該複数のローラによってエンドレスに張設され且つ駆動されることによって走行する第1のベルトを有した第1のベルトユニットと、
前記第1のベルトの走行面に近接して同方向に走行することによって搬送領域を形成する走行面を有した第2のベルト、及び該第2のベルトをエンドレスに張設して駆動する複数のローラを有した第2のベルトユニットと、を有し、
前記搬送領域によって紙葉束を挟持しつつ搬送する紙葉束搬送機構において、
前記搬送領域に沿って隣接配置される各ローラ間の間隔を、前記紙葉束を少なくとも2つのローラによって常時支持し得るように設定したことを特徴とする紙葉束搬送機構。
【請求項2】
前記第1及び第2のベルトが蛇行するように前記各ローラを配置したことを特徴とする請求項1に記載の紙葉束搬送機構。
【請求項3】
金種の異なる紙幣を複数枚一括して、或いは一枚ずつ受入れ可能な入金取込部と、該入金取込部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成する搬送機構と、該搬送経路と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部と、該搬送経路と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部と、該搬送経路を経由して搬送されてきた紙幣を一枚ずつ受け入れて堆積すると共に堆積した紙幣束を一括して該搬送経路に送出する一時保留部と、これらを制御する制御手段と、を備えた還流式紙幣処理装置であって、
前記制御手段は、前記第1の紙幣収納部内の第1の紙幣を一枚ずつ送出して前記一時保留部に所定枚数堆積させた後で、該一時保留部内の第1の紙幣束を前記第2の紙幣収納部内に一括搬送する動作を繰り返すことにより、前記第1の紙幣収納部内に収容された全ての第1の紙幣を前記第2の紙幣収納部に移送するように制御し、
前記搬送経路中に、請求項1又は2に記載の紙葉束搬送機構を配置したことを特徴とする還流式紙幣処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−184112(P2012−184112A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105597(P2012−105597)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2006−331132(P2006−331132)の分割
【原出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】