紙葉識別装置
【課題】紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定処理を行うに際し、真贋判定に伴う処理速度の向上が図れる紙葉識別装置を提供する。
【解決手段】本発明の紙幣識別装置は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う受光部26と、受光部26により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶するRAM114と、受光部26で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、画像データの画素の数を変更する画像データ間引き処理部116aと、画像データ間引き処理部116aによって変更された画像データに基づいて紙葉の真贋を識別する判定処理部116bとを有する。
【解決手段】本発明の紙幣識別装置は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う受光部26と、受光部26により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶するRAM114と、受光部26で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、画像データの画素の数を変更する画像データ間引き処理部116aと、画像データ間引き処理部116aによって変更された画像データに基づいて紙葉の真贋を識別する判定処理部116bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣、クーポン券、商品券等、各種の商品やサービスと交換価値(経済価値)を有する紙葉類の有効性を識別する紙葉識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、紙幣、クーポン券、商品券等の紙葉類は、偽造を防止するために、様々な偽造防止策が施されている。例えば、そのような偽造防止策の一つとして、マイクロプリント(極めて微細な文字や模様など)を施しておき、このマイクロプリントの情報を読込んで真正なデータと比較することで、その有効性を識別(真贋判定)することが行われている。すなわち、このようなマイクロプリントは、線幅が微細であることから、光の干渉によって特有な模様(モアレ縞;モアレパターン)を呈することが知られており、このモアレ縞(モアレパターン)を取得して、正規データと比較することで、紙葉の有効性を識別することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、紙葉類としての情報記録体に、万線で構成される隠しパターンを形成しておき、この隠しパターンを光源で照射すると共に、その反射光を確認パターン(確認用の万線パターンが形成されている)を介して光センサで検知する技術が開示されている。この場合、光センサでは、隠しパターンの万線と確認パターンの万線が干渉することで、特有なモアレパターンを検知することが可能となり、それを標準パターンと比較することで、紙葉の真贋判定を行っている。
【特許文献1】特開2004−78620号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙葉の真贋判定処理において、真札の比較データ(標準パターン)は、光センサを介して、確認パターンと隠しパターンが干渉することで得られるモアレデータであり、このモアレデータは、確認パターンと隠しパターンとが干渉する全ての領域を取込んだ画像データに基づいて作成されている。このため、モアレデータのデータ量が多くなってしまい、真贋判定の処理速度が遅くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定処理を行うに際し、真贋判定に伴う処理速度の向上が図れる紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された紙葉識別装置は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、前記読取手段で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、前記画像データの画素の数を変更する変更手段と、前記変更手段によって変更された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記した構成の紙葉識別装置によれば、搬送される紙葉の読取を行う際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げることにより、その紙葉固有のモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、かつこれと比較される比較データのデータ量も少なくすることができ、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記紙葉を搬送する紙葉搬送機構を備えており、前記読取手段は、前記紙葉搬送機構によって搬送される紙葉を、紙葉の搬送幅方向に亘って読取るラインセンサを備えており、前記他方の方向は、紙葉の搬送方向であることを特徴とする。
【0009】
上記した構成では、ラインセンサによる画像取込みタイミングを遅くし、紙幣の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことによりモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記紙葉搬送機構による搬送速度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成では、読込手段における画像読取タイミングを一定にしておいても、紙葉の搬送速度を高速に設定し、紙葉の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことによりモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真贋判定に伴う処理速度の向上が図れる紙葉識別装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。
【0014】
図1から図4は、紙幣識別装置(紙葉識別装置)の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0015】
本実施形態の紙幣識別装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣識別装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣識別装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣識別装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0016】
紙幣識別装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、ベース側となる下部フレーム2Bと、これを覆うように下部フレーム2Bに対して開閉可能な上部フレーム2Aとを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、基部を回動中心として開閉されるように構成されている。
【0017】
前記下部フレーム2Bは、略直方体形状を有しており、紙幣が搬送される紙幣搬送面3aと、その紙幣搬送面3aの両サイドに形成される側壁部3bとを備えている。また、上部フレーム2Aは、紙幣搬送面3cを備えたプレート状に構成されており、上部フレーム2Aが下部フレーム2Bの両サイドの側壁部3b間に入り込むように閉塞された際、紙幣搬送面3aと紙幣搬送面3cとの対向部分に、紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成される。
【0018】
そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、夫々紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成し、図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0019】
また、前記上部フレーム2Aの先端側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト4が配設されている。このロックシャフト4には、操作部4aが設けられており、操作部4aを、付勢バネ4bの付勢力に抗して回動操作することで、ロックシャフト4は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0020】
前記下部フレーム2Bには、紙幣搬送機構8、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50、並びに、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50等の構成部材の駆動を制御すると共に、読取った紙幣の有効性を識別する(真贋判定処理を行う)制御手段(制御基板100)が設けられている。
【0021】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0022】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。これらの駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0023】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0024】
なお、ローラ対12と同様、上記した搬送ローラ対13,14も、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c,14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0025】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、下部フレーム2Bの一方の側壁部3bに回転可能に配設されるギヤトレインによって構成される。具体的には、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0026】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0027】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0028】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0029】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで紙幣情報の読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光をフォトダイオードのような受光素子で検知することで紙幣の読取を行うようになっている。
【0030】
前記紙幣から得られる透過光と反射光の内、反射光については、後述するように、受光部を有するラインセンサによって、所定の大きさを1単位とする画素毎に読取が実行される。この場合、所定の大きさを1単位とする画素毎の読取を実行するに当たっては、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げる処理が行われる。具体的に、本実施形態では、後述するように、紙幣搬送幅方向に沿って延出するラインセンサによって、読取りを実行する際、紙幣の搬送方向(他方の方向)の読取画素数を、紙幣搬送幅方向(一方の方向)と比較して下げるように間引き処理がなされる。そして、このように他方の方向において、画素数が間引き処理された画像データは、予め格納されている真券の画像データと比較することで真贋の判定処理が実行される。
【0031】
なお、紙幣を透過した透過光については、反射光と同様な手法によって真贋の判定処理を行っても良いし、別の手法を用いて真贋の判定処理を行うようにしても良い。
【0032】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0033】
具体的にシャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、支軸55の幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの紙幣搬送面3aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0034】
また、前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定された紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動する。これにより、シャッタ機構を構成する回動片52は、駆動軸54aに連動する支軸55を介して紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0035】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0036】
前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0037】
次に、上部フレーム2A及び下部フレーム2Bに設置される紙幣読取手段20の構成について図2〜図4及び図6を参照して説明する。
【0038】
前記紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側で搬送路幅方向に亘ってスリット状の光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設されたラインセンサ25とを有している。
【0039】
前記下部フレーム2B側に設置されるラインセンサ25は、紙幣を挟むようにして、前記第1発光部23と対向するように配設される受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、スリット状の光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0040】
前記ラインセンサ25の受光部26と対向配置された第1発光部23は、透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子23aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0041】
なお、前記ラインセンサ25の受光部26は、導光体である第1発光部23と平行にライン状に配設されており、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。具体的には、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォックレンズアレイ26aを配置した構成となっている。
【0042】
前記ラインセンサ25の第2発光部27は、反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子27aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0043】
なお、前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣識別装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0044】
上記したラインセンサ25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面3aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24もラインセンサ25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0045】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。なお、ここでは、上記したように、反射光を利用した真贋判定処理について説明する。
【0046】
通常、紙幣には、偽造防止の1つの手段として、マイクロプリント(再現が困難となるような極めて微細な文字や模様など)が形成されている。このマイクロプリントは、図7に模式的に示すように、単位幅内に多数の細線200を形成することで構成されており、例えば、彫刻凹版によって形成することが可能である。マイクロプリントの構成については、ここでは詳細に説明しないが、図では分かり易いように、単位幅内に多数の直線状の細線を描画することで構成されている。もちろん、細線は、図に示す直線状以外にも、曲線状としたり、直線と曲線を組み合わせたものであっても良い。また、これらの細線によって、別途、文字や模様を構成しても良い。
【0047】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定手法は、まず、紙幣Mが紙幣搬送機構8によって搬送された状態で、前記ラインセンサ25における第2発光部27から紙幣に照射され、その反射光を受光部26で受光して紙幣の読取を実行する。この読取は、紙幣の搬送処理中、所定の大きさを1単位とする画素毎に実行され、このようにして読取られた多数の画素(複数の画素)によって構成される紙幣の画像データは、RAMなどの記憶手段に記憶される。そして、ここで記憶された複数の画素によって構成される画像データは、画像処理部において、紙幣搬送方向に沿った方向で画素の数を間引くように間引き処理が施される。
【0048】
上記したように、紙幣搬送方向に沿った方向で、画素の数を間引き処理(画素の数を減少させる処理)した紙幣の画像データには、上記したマイクロプリント部分において、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。このモアレデータは、読取時に得られた画素の数を、所定の比率(縮小率)で間引き処理することで、その縮小率特有のものが得られることから、予め格納されている真券のモアレデータと比較することで、真贋判定を行うことが可能となる。
【0049】
図8は、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50、紙幣の真贋判定処理を実行する真贋判定部150等を備えた紙幣識別装置1を制御する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【0050】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板100を備えており、この制御基板100上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、画像処理部116とが実装されている。
【0051】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、及び画像処理部116における画素データ間引き処理部116aにて実行される画素データの間引き率に関するプログラム等、恒久的なデータが記憶されている。
【0052】
前記CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識別装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18や通過検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、駆動モータ10の駆動制御、並びに、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0053】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、判定対象となる紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される紙幣の画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を有する。
【0054】
また、前記画像処理部116は、前記RAM114に格納された紙幣の画像データに関し、その画素の間引き処理を行う画素データ間引き処理部116aと、紙幣に関する基準のデータを格納している基準データ記憶部116bと、画素データ増減処理部116aにおいて画素の間引き処理が成された画像データと、基準データ記憶部116bに格納されている基準データとを比較し、紙幣の判定処理を行う判定処理部116cを備えている。この場合、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116bに記憶させているが、これを上記したROM112に記憶させておいても良い。すなわち、画像データの間引き率に関連付けして、その真券データを格納しておいても良い。また、真券の基準データについては、基準データ記憶部116bに予め記憶させても良いが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させても良い。
【0055】
さらに、CPU110には、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部(導光体)23と、ラインセンサ25における受光部26及び第2発光部(導光体)27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、画像処理部116と共に、紙幣の真贋判定部150を構成し、紙幣識別装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。なお、本実施形態では、真贋判定部150については、紙幣の駆動系を制御する制御部と共通化されているが、真贋判定処理を行う機能を、それ専用のハード構成としても良い。
【0056】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣識別装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置300に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0057】
ここで、上記した画素データ間引き処理部116aにおける画像データの画素を増減する一手順例について、図9の概念図を参照して説明する。
【0058】
図9(a)は、最初に読取手段20を介して読取られた紙幣の画像データを画素毎にした元データを模式的に示している(縦方向:横方向=1:1とし、画素の数を少なくして示す)。1つの四角は1画素に対応しており、各四角内に付されている数字は、読取った紙幣のその画素における色の明るさを示している。なお、実際には、各画素では、RGBのフィルタ制御によって各RGBの明るさが制御されているため、画素毎に異なる明るさの色情報を含んだものとなっている(図9(a)では、全ての画素が夫々異なる明るさの色情報で構成されている)。
【0059】
このように紙幣読取手段20によって読取られる紙幣の元データは、記憶手段であるRAM114に格納された後、画像データ間引き処理部116aにおいて画素データの間引き処理が施される。例えば、縦方向はそのままで横方向を0.25倍(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を間引く場合、例えば、図9(b)に示すように、横方向の全画素を平均して1/4づつ分割し、間の画素(空白で示す画素)を間引く方法で縮小処理を行えば良い(図9(c))。これにより、縦方向はそのままで、横方向には1/4に縮小された画像データを生成することが可能となる。
【0060】
図10は、上記したように画素数の間引き処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示している。上記したように、元データに対して、(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その減少率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Aが得られるようになる。すなわち、取込んだ紙幣に関する画像データに関し、一方の方向(紙幣搬送幅方向)よりも他方の方向(紙幣搬送方向)の読取画素数を下げることによって、その紙幣固有のモアレデータを取得することが可能になる。
【0061】
ここで、上記したモアレ縞の発生原理、及び発生条件について、図11〜図13を参照して説明する。
図11に示すように、紙幣Mに形成されている細線(隣接する黒いバーで示す)200の間隔をbとした場合、その間隔bが、上述した紙幣読取手段20を構成するラインセンサ25が1画素を読取る間隔dよりも広ければ(b>d)、紙幣の細線200を正確に読取ることができるため、読取画像データ(a)は、そのまま紙幣の細線を再現した状態となり、モアレ縞が発生することはない。
【0062】
これに対して、図12に示すように、紙幣Mに形成されている細線200の間隔bが、ラインセンサ25が1画素を読取る間隔dと同一か、それ以下になると(b≦d)細線である黒いバーは、図11で示すような画像データ(a)として再現できなくなり、その読取画像データは、全て黒い状態として読取ってしまう。すなわち、b≦dになると、紙幣の細線200を正確に読取ることができなくなって、微細な線が粗くなってしまい、これによりモアレ縞が発生する原因となる。
【0063】
上述したように、画素数の間引き処理を行う場合、例えば、図13に示すように、紙幣本来の細線の間隔bが、画素データを間引いたことによって得られる画素間の間隔d以下となったとき(画素数の減少率がb≦dの条件を満足する)、隣接する細線同士が明確に区別することが困難となり(読取った細線データの線が粗くなってしまう)、粗くなった状態の細線同士によってモアレ縞が発生するようになる。
【0064】
この結果、判定処理部116cにおいて、基準データ記憶部116bに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋判定処理を行うことが可能となる。具体的には、例えば、モアレ縞が生じている部分の各画素について、明るさ(濃度)に関する画素データを検出し、それを基準データと比較して、その違いが所定の値以下である場合、その画素部分については等しいとみなし、これをモアレ縞が生じている部分の全ての画素について実行することで、真贋判定を行うことが可能である。このように、モアレデータは、紙幣の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、かつこれと比較される比較データのデータ量も少なくすることができ、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0065】
図14は、上記した紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る紙幣識別装置の処理動作について説明する。
【0066】
最初、紙幣識別装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、駆動モータ10が駆動されて、紙幣搬送機構8を介して紙幣の搬送処理が行われる(ステップS02)。なお、このとき、LED70が点灯処理され、利用者に対して紙幣処理中であることを知らせて追加の紙幣挿入が防止される。
【0067】
この紙幣の搬送処理と同期して、紙幣読取手段20において紙幣の読取処理を実行する(ステップS03)。この紙幣の読取処理は、CPU110が、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から紙幣に向けて照射光を照射し、受光部26において、その反射光を受光することで成される。なお、紙幣の識別処理に用いられるモアレデータは、上述したように、発光部27から照射した光の反射光に基づいて取得される。
【0068】
紙幣の装置内への搬送により、前記紙幣読取手段20がその情報を読取り、上記した制御手段30において、真贋判定処理が実行される。上記した紙幣の読取は、ラインセンサ25の受光部26において、第2発光部27から照射され、搬送状態にある紙幣からの反射光を受光することで成される。この読取時においては、上述したように、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙幣の画像情報が取得される。また、第1発光部23から照射されて、紙幣を透過する透過光については、別の真贋判定処理(濃淡データ等による真贋判定処理など)に用いることが可能である。
【0069】
なお、この真贋判定処理が実行されている際に、紙幣検知センサ18が搬送状態にある紙幣の後端を検知すると(紙幣検知センサ18がOFF)ソレノイド54が通電され、これにより、回動片52が回動駆動されて紙幣挿入口6を閉塞し、紙幣の追加投入を防止する。
【0070】
上記したように、画素毎に読取られた紙幣情報は、複数の画素によって紙幣全体の画像データを構成することとなり、この画像データは、記憶手段であるRAM114に格納される(ステップS04)。そして、引き続いて、RAM114に記憶された画像データは、画像処理部116において、画素の数を間引く画像処理が施される(ステップS05)。この画像処理における間引き率は、ROM112に格納されているプログラムに基づいて実行され、この処理によって得られる紙幣の画像データには、上述したように、間引き率に応じて、マイクロプリント部分において特有のモアレデータが得られる。
【0071】
そして、引き続き、ステップS06で紙幣の真贋判定処理を行う。上述したように、ROMに格納されている変換テーブルによる増減率によって、特有のモアレデータ(モアレ縞)が得られることから、これを、判定処理部116cにおいて、基準データ記憶部116bに予め格納されている基準データ(間引き率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋が判定される。
【0072】
上記した真贋判定処理において、搬送された紙幣が真券であると判定された場合(ステップS07のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS08)。この処理は、例えば、紙幣をそのまま下流側にあるスタッカに向けて搬送する処理、下流側に向けて搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階で駆動モータ10の駆動を停止する処理、及び、これに伴い、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませて、紙幣挿入口6を開放状態にすると共にLED70を消灯する処理等が該当する。
【0073】
一方、上記したステップS07の処理において、搬送された紙幣が偽札であると判定された場合(紙幣が著しく汚損しているような場合も含む)、紙幣判定NG処理が実行される(ステップS09)。この処理は、例えば、挿入された紙幣を返却すべく、駆動モータ10の逆転処理、或いは上位装置300に対して警報信号を出力する処理等が該当する。
【0074】
以上のように構成される紙幣識別装置1によれば、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数を間引くことにより、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、取得されるデータ量、及び比較対象となる基準データのデータ量を少なくすることができ、真贋判定に伴う処理速度を向上することが可能になる。また、例えば、識別精度向上を図るため、紙幣読取手段20を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタ等、新たに製造する必要が無くなって、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0075】
上記した構成では、紙幣読取手段20において読取られる紙幣の読取精度を下げる手段として、一旦取得した紙幣の画像データ(複数の画素データ)を、画像処理部116において間引く処理を行ったが、それ以外にも、例えば、読取手段20におけるラインセンサの読取時に、画像取込周期を変更することで読取精度を下げるように構成しても良い。
【0076】
図15は、画像データの画素の数を減少するように変更する変更手段(画像取込周期を変更する画像取込周期変更回路)の構成を示すブロック図である。
【0077】
画像取込周期変更回路250は、前記ラインセンサ25の受光部26の画像を取込む周期を変更できるように構成されており、所定のタイミングでクロック信号を発生するカウンタ251と、任意の周期を設定する設定部252と、カウンタ251からの計数時間と設定部252の設定時間(画像取込周期;画像の取込みタイミング)が一致することで読取トリガ信号を発するコンパレータ253を備えている。また、画像取込周期変更回路250は、受光部26から得られる紙幣の画像信号をA/D変換するA/D変換器260、ラインバッファ261、フレームメモリ262、及びコンパレータ253からのトリガ信号に基づいてフレームメモリ262に格納されているライン毎の画素情報を、設定した周期でCPU110側に送信制御する制御部265を備えている。
【0078】
上記した構成の画像取込周期変更回路250では、受光部26より出力される画像データはA/D変換器260によってデジタルデータに変換され、ラインバッファ261に、紙幣搬送幅方向における画素の1ライン毎に蓄積される。ラインバッファ261に蓄積された1ライン毎の紙幣に関する画像データ(1ライン画素データ)は、フレームメモリ262に送信され、ライン毎の画像データとして蓄積、保持される。そして、フレームメモリ262に蓄積、保持されている1ライン毎の画像データは、コンパレータ253から送信されるトリガ信号によって、所定の周期毎に抽出され、この抽出された画像データはCPU110側に送信される。
【0079】
このような画像取込周期変更回路250によれば、設定部252で設定された画像取得タイミングを変更設定(遅く設定)することで、紙幣の搬送方向における紙幣の読取精度を下げる(画素を間引く)ことができ、上記した構成と同様、特有のモアレデータを取得することが可能となる。そして、読取精度を下げたことによって得られるモアレデータを、その低下率に応じて予め記憶されている基準データと比較することによって、紙幣の真贋を判定することが可能となる。
【0080】
このような構成においても、モアレデータは、ラインセンサによる読取精度を下げたことで得られるものであることから、データ量を少なくすることができ、真贋判定処理に伴う処理速度を向上することが可能になる。
【0081】
なお、上記したラインセンサ25による読取精度を下げる手段としては、画像取込周期変更回路250を設置する以外にも、上記したCPU110及び駆動モータ駆動回路125を介して駆動モータ10の駆動速度を制御して、紙幣の搬送速度を変更することで実施することが可能である。すなわち、ラインセンサによる1ライン毎の画像取得タイミングを一定とした状態で、駆動モータ10の駆動速度を高速に変更して紙幣の搬送速度を高速に設定することで、上記した構成と同様、紙幣の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことが可能となり、同様なモアレデータを取得することが可能になる。
【0082】
このような構成においても、モアレデータは、ラインセンサによる読取精度を下げたことで得られるものであることから、データ量を少なくすることができ、真贋判定処理に伴う処理速度を向上することが可能になる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、搬送される紙幣を読取るに際して、読取られる画像データの読取画素数(読取精度)を下げることでモアレデータを取得し、そのモアレデータを有する紙幣の画像データに基づいて紙幣の真贋を識別する構成であれば良く、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、紙幣の読取を行う読取手段(センサ)の構成や配置態様については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の紙幣識別装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本発明の紙葉識別装置として、上記した実施形態では、紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、紙幣以外にも、金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る紙幣識別装置の一実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図。
【図4】下部フレームの裏面図。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図。
【図6】紙幣識別装置の構成を模式的に示した図。
【図7】紙幣の概略構成を示す図。
【図8】紙幣識別装置の制御系を示すブロック図。
【図9】(a)〜(c)を含み、画素データ間引き処理部における画像データの画素を間引く一手順例を説明する図。
【図10】画素数の間引き処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示す図。
【図11】モアレ縞の発生原理を示す模式図であり、モアレ縞が発生しない条件を説明する図。
【図12】モアレ縞の発生原理を示す模式図であり、モアレ縞が発生する条件を説明する図。
【図13】紙幣を読取る場合において、画素数を間引く処理をした際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図。
【図14】紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャート。
【図15】画像データの画素の数を減少するように変更する変更手段(画像取込周期を変更する画像取込周期変更回路)の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0086】
1 紙幣識別装置
2 フレーム
2A 上部フレーム
2B 下部フレーム
6 紙幣挿入口
8 紙幣搬送機構
10 駆動モータ
18 紙幣検知センサ
20 紙幣読取手段
23 第1発光部
25 ラインセンサ
27 第2発光部
30 制御手段
100 制御基板
250 画像取込周期変更回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙幣、クーポン券、商品券等、各種の商品やサービスと交換価値(経済価値)を有する紙葉類の有効性を識別する紙葉識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、紙幣、クーポン券、商品券等の紙葉類は、偽造を防止するために、様々な偽造防止策が施されている。例えば、そのような偽造防止策の一つとして、マイクロプリント(極めて微細な文字や模様など)を施しておき、このマイクロプリントの情報を読込んで真正なデータと比較することで、その有効性を識別(真贋判定)することが行われている。すなわち、このようなマイクロプリントは、線幅が微細であることから、光の干渉によって特有な模様(モアレ縞;モアレパターン)を呈することが知られており、このモアレ縞(モアレパターン)を取得して、正規データと比較することで、紙葉の有効性を識別することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、紙葉類としての情報記録体に、万線で構成される隠しパターンを形成しておき、この隠しパターンを光源で照射すると共に、その反射光を確認パターン(確認用の万線パターンが形成されている)を介して光センサで検知する技術が開示されている。この場合、光センサでは、隠しパターンの万線と確認パターンの万線が干渉することで、特有なモアレパターンを検知することが可能となり、それを標準パターンと比較することで、紙葉の真贋判定を行っている。
【特許文献1】特開2004−78620号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙葉の真贋判定処理において、真札の比較データ(標準パターン)は、光センサを介して、確認パターンと隠しパターンが干渉することで得られるモアレデータであり、このモアレデータは、確認パターンと隠しパターンとが干渉する全ての領域を取込んだ画像データに基づいて作成されている。このため、モアレデータのデータ量が多くなってしまい、真贋判定の処理速度が遅くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、紙葉に形成されているマイクロプリントを利用して真贋判定処理を行うに際し、真贋判定に伴う処理速度の向上が図れる紙葉識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された紙葉識別装置は、明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、前記読取手段で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、前記画像データの画素の数を変更する変更手段と、前記変更手段によって変更された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記した構成の紙葉識別装置によれば、搬送される紙葉の読取を行う際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げることにより、その紙葉固有のモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、かつこれと比較される比較データのデータ量も少なくすることができ、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記紙葉を搬送する紙葉搬送機構を備えており、前記読取手段は、前記紙葉搬送機構によって搬送される紙葉を、紙葉の搬送幅方向に亘って読取るラインセンサを備えており、前記他方の方向は、紙葉の搬送方向であることを特徴とする。
【0009】
上記した構成では、ラインセンサによる画像取込みタイミングを遅くし、紙幣の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことによりモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記紙葉搬送機構による搬送速度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成では、読込手段における画像読取タイミングを一定にしておいても、紙葉の搬送速度を高速に設定し、紙葉の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことによりモアレデータを取得することが可能になる。このモアレデータは、紙葉の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真贋判定に伴う処理速度の向上が図れる紙葉識別装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、真贋判定処理を行う対象を紙幣として説明すると共に、それを取扱う装置(紙葉識別装置)を紙幣識別装置として説明する。
【0014】
図1から図4は、紙幣識別装置(紙葉識別装置)の構成を示す図であり、図1は、全体構成を示す斜視図、図2は、上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図、図3は、下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図、そして、図4は、下部フレームの裏面図である。
【0015】
本実施形態の紙幣識別装置1は、例えば、スロットマシン等の各種の遊技機間に設置される遊技媒体貸出装置(図示せず)に組み込み可能に構成されている。この場合、遊技媒体貸出装置には、紙幣識別装置1の上側又は下側に、他の装置(例えば、紙幣収納ユニット、硬貨識別装置、記録媒体処理装置、電源装置など)を設置しておいても良く、紙幣識別装置1は、これら他の装置と一体化されていたり、別個に構成されていても良い。そして、このような紙幣識別装置1に紙幣が挿入され、挿入された紙幣の有効性が判定されると、その紙幣価値に応じた遊技媒体の貸出処理、或いは、プリペイドカードのような記録媒体への書き込み処理等が行なわれる。
【0016】
紙幣識別装置1は、略直方体状に形成されたフレーム2を備えており、このフレーム2が図示されていない遊技媒体貸出装置の係止部に装着される。フレーム2は、ベース側となる下部フレーム2Bと、これを覆うように下部フレーム2Bに対して開閉可能な上部フレーム2Aとを有しており、これらのフレーム2A,2Bは、図2に示すように、基部を回動中心として開閉されるように構成されている。
【0017】
前記下部フレーム2Bは、略直方体形状を有しており、紙幣が搬送される紙幣搬送面3aと、その紙幣搬送面3aの両サイドに形成される側壁部3bとを備えている。また、上部フレーム2Aは、紙幣搬送面3cを備えたプレート状に構成されており、上部フレーム2Aが下部フレーム2Bの両サイドの側壁部3b間に入り込むように閉塞された際、紙幣搬送面3aと紙幣搬送面3cとの対向部分に、紙幣が搬送される隙間(紙幣搬送路)5が形成される。
【0018】
そして、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bには、この紙幣搬送路5に一致するようにして、夫々紙幣挿入部6A,6Bが形成されている。これら紙幣挿入部6A,6Bは、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bが閉じられた際、スリット状の紙幣挿入口6を形成し、図1に示すように、紙幣Mは、紙幣の短い辺側から矢印A方向に沿って内部に挿入される。
【0019】
また、前記上部フレーム2Aの先端側には、下部フレーム2Bに係止可能なロックシャフト4が配設されている。このロックシャフト4には、操作部4aが設けられており、操作部4aを、付勢バネ4bの付勢力に抗して回動操作することで、ロックシャフト4は回動支点Pを中心に回動し、上部フレーム2Aと下部フレーム2Bのロック状態(両者が閉じた状態;重合状態)が解除される。
【0020】
前記下部フレーム2Bには、紙幣搬送機構8、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知する紙幣検知センサ18、紙幣検知センサ18の下流側に設置され、搬送状態にある紙幣の情報を読取る紙幣読取手段20、紙幣挿入口6と紙幣検知センサ18との間の紙幣搬送路5に設置され、紙幣挿入口6を閉塞するように駆動されるシャッタ機構50、並びに、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50等の構成部材の駆動を制御すると共に、読取った紙幣の有効性を識別する(真贋判定処理を行う)制御手段(制御基板100)が設けられている。
【0021】
前記紙幣搬送機構8は、紙幣挿入口6から挿入された紙幣を挿入方向Aに沿って搬送可能であると共に、挿入状態にある紙幣を紙幣挿入口6に向けて差し戻すように搬送可能とする機構である。紙幣搬送機構8は、下部フレーム2B側に設置された駆動源である駆動モータ10と、この駆動モータ10によって回転駆動され、紙幣搬送路5に紙幣搬送方向に沿って所定間隔おいて配設される搬送ローラ対12,13,14を備えている。
【0022】
搬送ローラ対12は、下部フレーム2B側に配設される駆動ローラ12Aと、上部フレーム2A側に配設されて駆動ローラ12Aに当接されるピンチローラ12Bとを備えており、これら駆動ローラ12Aとピンチローラ12Bは、紙幣搬送方向と直交する方向に沿って、所定間隔をおいて2箇所設置されている。これらの駆動ローラ12A及びピンチローラ12Bは、その一部が紙幣搬送路5に露出した状態となっている。
【0023】
前記2箇所に設置される駆動ローラ12Aは、下部フレーム2Bに回転可能に支持された駆動軸12aに固定されており、前記2つのピンチローラ12Bは、上部フレーム2Aに支持された支軸12bに回転可能に支持されている。この場合、上部フレーム2Aには、支軸12bを駆動軸12a側に付勢する付勢部材12cが設けられており、ピンチローラ12Bを駆動ローラ12A側に所定の圧力で当接させている。
【0024】
なお、ローラ対12と同様、上記した搬送ローラ対13,14も、それぞれ駆動軸13a,14aに固定される2つの駆動ローラ13A,14Aと、支軸13b,14bに回転可能に支持される2つのピンチローラ13B,14Bによって構成され、それぞれ付勢部材13c,14cによって、各ピンチローラ13B,14Bは、各駆動ローラ13A,14Aに所定の圧力で当接されている。
【0025】
前記搬送ローラ対12,13,14は、駆動モータ10に連結される駆動力伝達機構15によって同期駆動される。この駆動力伝達機構15は、下部フレーム2Bの一方の側壁部3bに回転可能に配設されるギヤトレインによって構成される。具体的には、駆動モータ10の出力軸に固定される出力ギヤ10a、この出力ギヤ10aに順次噛合され、前記駆動軸12a,13a,14aの端部に装着される入力ギヤ12G,13G,14G、及びこれらのギヤ間に設置されるアイドルギヤ16を備えたギヤトレインによって構成される。
【0026】
上記した構成により、駆動モータ10が正転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を挿入方向Aに向けて搬送するように駆動され、駆動モータ10が逆転駆動されると、各搬送ローラ対12,13,14は、紙幣を紙幣挿入口側に差し戻すように逆転駆動される。
【0027】
前記紙幣検知センサ18は、紙幣挿入口6に挿入された紙幣を検知した際に、検知信号を発生するものであり、本実施形態では、後述するシャッタ機構を構成する回動片と、紙幣を読取る紙幣読取手段20との間に設置されている。前記紙幣検知センサ18は、例えば、光学式のセンサ、より詳しくは、回帰反射型フォトセンサによって構成されており、図5に示すように、上部フレーム2A側に設置されるプリズム18aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体18bによって構成される。具体的には、プリズム18aとセンサ本体18bは、センサ本体18bの発光部18cから照射された光が、プリズム18aを介してセンサ本体18bの受光部18dで検知される配置態様となっており、プリズム18aとセンサ本体18bとの間に位置する紙幣搬送路5に紙幣が通過して受光部18dで光が検知されなくなると検知信号を発生する。
【0028】
なお、上記した紙幣検知センサ18は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0029】
前記紙幣検知センサ18の下流側には、搬送状態にある紙幣について、その紙幣情報を読取る紙幣読取手段20が設置される。紙幣読取手段20は、上記した紙幣搬送機構8によって紙幣が搬送される際、紙幣に光を照射することで紙幣情報の読取を行い、紙幣の有効性(真贋)を判定できるような信号を生成できる構成であれば良く、本実施形態では、紙幣の両側から光を照射し、その透過光と反射光をフォトダイオードのような受光素子で検知することで紙幣の読取を行うようになっている。
【0030】
前記紙幣から得られる透過光と反射光の内、反射光については、後述するように、受光部を有するラインセンサによって、所定の大きさを1単位とする画素毎に読取が実行される。この場合、所定の大きさを1単位とする画素毎の読取を実行するに当たっては、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げる処理が行われる。具体的に、本実施形態では、後述するように、紙幣搬送幅方向に沿って延出するラインセンサによって、読取りを実行する際、紙幣の搬送方向(他方の方向)の読取画素数を、紙幣搬送幅方向(一方の方向)と比較して下げるように間引き処理がなされる。そして、このように他方の方向において、画素数が間引き処理された画像データは、予め格納されている真券の画像データと比較することで真贋の判定処理が実行される。
【0031】
なお、紙幣を透過した透過光については、反射光と同様な手法によって真贋の判定処理を行っても良いし、別の手法を用いて真贋の判定処理を行うようにしても良い。
【0032】
前記紙幣挿入口6の下流側には、紙幣挿入口6を閉塞するシャッタ機構50が配設されている。このシャッタ機構50は、常時、紙幣挿入口6を開放した状態になっており、紙幣が挿入されて、紙幣検知センサ18が紙幣の後端を検知した際(紙幣検知センサ18がOFF)に閉塞されて、不正行為等が行えないように構成される。
【0033】
具体的にシャッタ機構50は、紙幣搬送路5の紙幣搬送方向と直交する方向に所定間隔おいて出没するように回動駆動される回動片52と、この回動片52を回動駆動する駆動源であるソレノイド(プル型)54とを有している。この場合、回動片52は、支軸55の幅方向に2箇所設置されており、紙幣搬送路5を形成する下部フレーム2Bの紙幣搬送面3aには、各回動片52が出没できるように紙幣搬送方向に延出する長孔5cが形成されている。
【0034】
また、前記紙幣読取手段20の下流側には、紙幣の通過を検知する紙幣通過検知センサ60が設けられている。この紙幣通過検知センサ60は、有効と判定された紙幣が、更に下流側に搬送されて、紙幣の後端を検知した際に検知信号を発生するものであり、この検知信号の発生に基づいて、上記したソレノイド54の通電が解除され(ソレノイドOFF)、駆動軸54aに設けられた付勢バネの付勢力によって駆動軸54aは突出方向に移動する。これにより、シャッタ機構を構成する回動片52は、駆動軸54aに連動する支軸55を介して紙幣搬送路を開放状態とするように回動駆動される。
【0035】
前記紙幣通過検知センサ60は、上述した紙幣検知センサ18と同様、光学式のセンサ(回帰反射型フォトセンサ)によって構成されており、上部フレーム2A側に設置されるプリズム60aと、下部フレーム2B側に設置されるセンサ本体60bによって構成される。もちろん、上記した紙幣通過検知センサ60は、光学式のセンサ以外にも、機械式のセンサによって構成されていても良い。
【0036】
前記紙幣挿入口6の近傍には、紙幣が挿入された状態にあることを視認可能に報知する報知素子が設けられている。このような報知素子は、例えば、点滅するLED70によって構成することが可能であり、利用者が紙幣挿入口6に紙幣を挿入することで点灯し、紙幣の処理状態であることを利用者に知らせる。このため、利用者が誤って次の紙幣を差し込むことを防止することが可能となる。
【0037】
次に、上部フレーム2A及び下部フレーム2Bに設置される紙幣読取手段20の構成について図2〜図4及び図6を参照して説明する。
【0038】
前記紙幣読取手段20は、上部フレーム2A側に配設され、搬送される紙幣の上側で搬送路幅方向に亘ってスリット状の光を照射可能とした第1発光部23を具備した発光ユニット24と、下部フレーム2B側に配設されたラインセンサ25とを有している。
【0039】
前記下部フレーム2B側に設置されるラインセンサ25は、紙幣を挟むようにして、前記第1発光部23と対向するように配設される受光部26と、受光部26の紙幣搬送方向両側に隣接して配設され、スリット状の光を照射可能とした第2発光部27とを有している。
【0040】
前記ラインセンサ25の受光部26と対向配置された第1発光部23は、透過用の光源として機能する。この第1発光部23は、図2に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子23aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0041】
なお、前記ラインセンサ25の受光部26は、導光体である第1発光部23と平行にライン状に配設されており、紙幣搬送路5に対して交差方向に伸延し、かつ受光部26に設けた図示しない受光センサの感度に影響を与えない程度の幅を有する帯状に形成された薄肉の板状に形成されている。具体的には、受光部26の厚み方向の中央に複数のCCD(Charge Coupled Device)をライン状に設けるとともに、このCCDの上方位置に、透過光及び反射光を集光させるように、ライン状にセルフォックレンズアレイ26aを配置した構成となっている。
【0042】
前記ラインセンサ25の第2発光部27は、反射用の光源として機能する。この第2発光部27は、第1発光部23と同様、図3に示すように、合成樹脂製の矩形棒状体に形成されたいわゆる導光体として構成されており、好ましくは端部に設置されるLED等の発光素子27aからの射出光を入力して、長手方向に沿って導光させながら発光する機能を有する。これにより、簡単な構成で、搬送される紙幣の搬送路幅方向全体の範囲に対して均一にスリット状の光を照射することが可能となる。
【0043】
なお、前記第2発光部27は、45度の仰角で光を紙幣に向けて照射可能としており、紙幣からの反射光を受光部26(受光センサ)で受光するように配設されている。この場合、第2発光部27から照射された光が受光部26へ45度で入射するようにしているが、入射角は45度に限定されるものではなく、反射光を確実に受光可能な範囲であれば適宜設定することができる。このため、第2発光部27、受光部26の配置については、紙幣識別装置の構造に応じて、適宜設計変更が可能である。また、前記第2発光部27については、受光部26を挟んで両サイドに設置して、両側からそれぞれ入射角45度で光を照射するようにしている。これは、紙幣表面に傷や折皺などがある場合、これら傷や折皺部分に生じた凹凸に光が片側からのみ照射された場合、どうしても凹凸の部分においては光が遮られて陰になってしまう箇所が生じることがある。このため、両側から光を照射することにより、凹凸の部分において陰ができることを防止して、片側からの照射よりも精度の高い画像データを得ることを可能としている。もちろん、第2発光部27については、片方のみに設置した構成であっても良い。
【0044】
上記したラインセンサ25は、紙幣搬送路5に露出することから、その表面部分(搬送面3aと略面一になる部分)の紙幣搬送方向の両端には、図2に示すように凹凸部25aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。また、発光ユニット24もラインセンサ25と同様、その表面部分の紙幣搬送方向の両端に、図2に示すように凹凸部24aが形成されており、搬送される紙幣を引っ掛かり難くしている。
【0045】
次に、上述した紙幣読取手段20で読取られた紙幣情報を基に、紙幣の真贋を識別する紙幣識別手段において実行される紙幣の真贋判定方法について具体的に説明する。なお、ここでは、上記したように、反射光を利用した真贋判定処理について説明する。
【0046】
通常、紙幣には、偽造防止の1つの手段として、マイクロプリント(再現が困難となるような極めて微細な文字や模様など)が形成されている。このマイクロプリントは、図7に模式的に示すように、単位幅内に多数の細線200を形成することで構成されており、例えば、彫刻凹版によって形成することが可能である。マイクロプリントの構成については、ここでは詳細に説明しないが、図では分かり易いように、単位幅内に多数の直線状の細線を描画することで構成されている。もちろん、細線は、図に示す直線状以外にも、曲線状としたり、直線と曲線を組み合わせたものであっても良い。また、これらの細線によって、別途、文字や模様を構成しても良い。
【0047】
本実施形態に係る紙幣の真贋判定手法は、まず、紙幣Mが紙幣搬送機構8によって搬送された状態で、前記ラインセンサ25における第2発光部27から紙幣に照射され、その反射光を受光部26で受光して紙幣の読取を実行する。この読取は、紙幣の搬送処理中、所定の大きさを1単位とする画素毎に実行され、このようにして読取られた多数の画素(複数の画素)によって構成される紙幣の画像データは、RAMなどの記憶手段に記憶される。そして、ここで記憶された複数の画素によって構成される画像データは、画像処理部において、紙幣搬送方向に沿った方向で画素の数を間引くように間引き処理が施される。
【0048】
上記したように、紙幣搬送方向に沿った方向で、画素の数を間引き処理(画素の数を減少させる処理)した紙幣の画像データには、上記したマイクロプリント部分において、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。このモアレデータは、読取時に得られた画素の数を、所定の比率(縮小率)で間引き処理することで、その縮小率特有のものが得られることから、予め格納されている真券のモアレデータと比較することで、真贋判定を行うことが可能となる。
【0049】
図8は、上記した紙幣搬送機構8、紙幣読取手段20、シャッタ機構50、紙幣の真贋判定処理を実行する真贋判定部150等を備えた紙幣識別装置1を制御する制御手段の概略構成を示すブロック図である。
【0050】
制御手段30は、上記した各駆動装置の動作を制御する制御基板100を備えており、この制御基板100上には、各駆動装置の駆動を制御すると共に、紙幣識別手段を構成するCPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)114と、画像処理部116とが実装されている。
【0051】
前記ROM112には、上述した駆動モータ10、ソレノイド54、LED70等、各種駆動装置の作動プログラムや、真贋判定プログラム等の各種プログラム、及び画像処理部116における画素データ間引き処理部116aにて実行される画素データの間引き率に関するプログラム等、恒久的なデータが記憶されている。
【0052】
前記CPU110は、ROM112に記憶されている前記プログラムに従って作動して、I/Oポート120を介して上述した各種駆動装置との信号の入出力を行い、紙幣識別装置の全体的な動作制御を行う。すなわち、CPU110には、I/Oポート120を介して、駆動モータ駆動回路125(駆動モータ10)、ソレノイド54、LED70が接続されており、これらの駆動装置は、ROM112に格納された作動プログラムに従って、CPU110からの制御信号により動作が制御される。また、CPU110には、I/Oポート120を介して、紙幣検知センサ18や通過検知センサ60からの検知信号が入力されるようになっており、これら検知信号に基づいて、駆動モータ10の駆動制御、並びに、LED70の点滅制御、ソレノイド54の駆動制御が行われる。
【0053】
前記RAM114には、CPU110が作動する際に用いるデータやプログラムが一時的に記憶されると共に、判定対象となる紙幣の受光データ(複数の画素によって構成される紙幣の画像データ)を取得して一時的に記憶する機能を有する。
【0054】
また、前記画像処理部116は、前記RAM114に格納された紙幣の画像データに関し、その画素の間引き処理を行う画素データ間引き処理部116aと、紙幣に関する基準のデータを格納している基準データ記憶部116bと、画素データ増減処理部116aにおいて画素の間引き処理が成された画像データと、基準データ記憶部116bに格納されている基準データとを比較し、紙幣の判定処理を行う判定処理部116cを備えている。この場合、本実施形態では、基準データを専用の基準データ記憶部116bに記憶させているが、これを上記したROM112に記憶させておいても良い。すなわち、画像データの間引き率に関連付けして、その真券データを格納しておいても良い。また、真券の基準データについては、基準データ記憶部116bに予め記憶させても良いが、例えば、真券を、紙幣搬送機構8を通して搬送させながら受光データを取得し、これを基準データとして記憶させても良い。
【0055】
さらに、CPU110には、I/Oポート120を介して、上記した発光ユニット24における第1発光部(導光体)23と、ラインセンサ25における受光部26及び第2発光部(導光体)27が接続されており、これらは、CPU110、ROM112、RAM114、画像処理部116と共に、紙幣の真贋判定部150を構成し、紙幣識別装置1における真贋判定に必要な動作制御を行う。なお、本実施形態では、真贋判定部150については、紙幣の駆動系を制御する制御部と共通化されているが、真贋判定処理を行う機能を、それ専用のハード構成としても良い。
【0056】
また、CPU110は、I/Oポート120を介して紙幣識別装置1が組み込まれる遊技媒体貸出装置の制御部や外部装置のホストコンピュータ等の上位装置300に接続されており、上位装置に対して、各種信号(紙幣に関する情報、警告信号等)を送信するようにしている。
【0057】
ここで、上記した画素データ間引き処理部116aにおける画像データの画素を増減する一手順例について、図9の概念図を参照して説明する。
【0058】
図9(a)は、最初に読取手段20を介して読取られた紙幣の画像データを画素毎にした元データを模式的に示している(縦方向:横方向=1:1とし、画素の数を少なくして示す)。1つの四角は1画素に対応しており、各四角内に付されている数字は、読取った紙幣のその画素における色の明るさを示している。なお、実際には、各画素では、RGBのフィルタ制御によって各RGBの明るさが制御されているため、画素毎に異なる明るさの色情報を含んだものとなっている(図9(a)では、全ての画素が夫々異なる明るさの色情報で構成されている)。
【0059】
このように紙幣読取手段20によって読取られる紙幣の元データは、記憶手段であるRAM114に格納された後、画像データ間引き処理部116aにおいて画素データの間引き処理が施される。例えば、縦方向はそのままで横方向を0.25倍(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を間引く場合、例えば、図9(b)に示すように、横方向の全画素を平均して1/4づつ分割し、間の画素(空白で示す画素)を間引く方法で縮小処理を行えば良い(図9(c))。これにより、縦方向はそのままで、横方向には1/4に縮小された画像データを生成することが可能となる。
【0060】
図10は、上記したように画素数の間引き処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示している。上記したように、元データに対して、(縦方向:横方向=1:0.25)となるように画素の数を減少させると、図7に示した紙幣Mに形成されているマイクロプリント部分(多数の細線200部分)には、その減少率特有のモアレデータ(モアレ縞)200Aが得られるようになる。すなわち、取込んだ紙幣に関する画像データに関し、一方の方向(紙幣搬送幅方向)よりも他方の方向(紙幣搬送方向)の読取画素数を下げることによって、その紙幣固有のモアレデータを取得することが可能になる。
【0061】
ここで、上記したモアレ縞の発生原理、及び発生条件について、図11〜図13を参照して説明する。
図11に示すように、紙幣Mに形成されている細線(隣接する黒いバーで示す)200の間隔をbとした場合、その間隔bが、上述した紙幣読取手段20を構成するラインセンサ25が1画素を読取る間隔dよりも広ければ(b>d)、紙幣の細線200を正確に読取ることができるため、読取画像データ(a)は、そのまま紙幣の細線を再現した状態となり、モアレ縞が発生することはない。
【0062】
これに対して、図12に示すように、紙幣Mに形成されている細線200の間隔bが、ラインセンサ25が1画素を読取る間隔dと同一か、それ以下になると(b≦d)細線である黒いバーは、図11で示すような画像データ(a)として再現できなくなり、その読取画像データは、全て黒い状態として読取ってしまう。すなわち、b≦dになると、紙幣の細線200を正確に読取ることができなくなって、微細な線が粗くなってしまい、これによりモアレ縞が発生する原因となる。
【0063】
上述したように、画素数の間引き処理を行う場合、例えば、図13に示すように、紙幣本来の細線の間隔bが、画素データを間引いたことによって得られる画素間の間隔d以下となったとき(画素数の減少率がb≦dの条件を満足する)、隣接する細線同士が明確に区別することが困難となり(読取った細線データの線が粗くなってしまう)、粗くなった状態の細線同士によってモアレ縞が発生するようになる。
【0064】
この結果、判定処理部116cにおいて、基準データ記憶部116bに予め格納されている基準データ(拡縮倍率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋判定処理を行うことが可能となる。具体的には、例えば、モアレ縞が生じている部分の各画素について、明るさ(濃度)に関する画素データを検出し、それを基準データと比較して、その違いが所定の値以下である場合、その画素部分については等しいとみなし、これをモアレ縞が生じている部分の全ての画素について実行することで、真贋判定を行うことが可能である。このように、モアレデータは、紙幣の読取精度を下げたことで得られるものであることから、そのデータ量が少なくなり、かつこれと比較される比較データのデータ量も少なくすることができ、真贋判定処理の処理速度を向上することが可能になる。
【0065】
図14は、上記した紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る紙幣識別装置の処理動作について説明する。
【0066】
最初、紙幣識別装置1のCPU110は、紙幣を検出したか否かを判定する(ステップS01)。これは、紙幣検知センサ18が紙幣の挿入を検知して検知信号を発したか否かで判定され、紙幣検知センサ18が紙幣を検出すると、駆動モータ10が駆動されて、紙幣搬送機構8を介して紙幣の搬送処理が行われる(ステップS02)。なお、このとき、LED70が点灯処理され、利用者に対して紙幣処理中であることを知らせて追加の紙幣挿入が防止される。
【0067】
この紙幣の搬送処理と同期して、紙幣読取手段20において紙幣の読取処理を実行する(ステップS03)。この紙幣の読取処理は、CPU110が、第1,第2発光部23,27に照射信号を出力し、各発光部23,27から紙幣に向けて照射光を照射し、受光部26において、その反射光を受光することで成される。なお、紙幣の識別処理に用いられるモアレデータは、上述したように、発光部27から照射した光の反射光に基づいて取得される。
【0068】
紙幣の装置内への搬送により、前記紙幣読取手段20がその情報を読取り、上記した制御手段30において、真贋判定処理が実行される。上記した紙幣の読取は、ラインセンサ25の受光部26において、第2発光部27から照射され、搬送状態にある紙幣からの反射光を受光することで成される。この読取時においては、上述したように、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙幣の画像情報が取得される。また、第1発光部23から照射されて、紙幣を透過する透過光については、別の真贋判定処理(濃淡データ等による真贋判定処理など)に用いることが可能である。
【0069】
なお、この真贋判定処理が実行されている際に、紙幣検知センサ18が搬送状態にある紙幣の後端を検知すると(紙幣検知センサ18がOFF)ソレノイド54が通電され、これにより、回動片52が回動駆動されて紙幣挿入口6を閉塞し、紙幣の追加投入を防止する。
【0070】
上記したように、画素毎に読取られた紙幣情報は、複数の画素によって紙幣全体の画像データを構成することとなり、この画像データは、記憶手段であるRAM114に格納される(ステップS04)。そして、引き続いて、RAM114に記憶された画像データは、画像処理部116において、画素の数を間引く画像処理が施される(ステップS05)。この画像処理における間引き率は、ROM112に格納されているプログラムに基づいて実行され、この処理によって得られる紙幣の画像データには、上述したように、間引き率に応じて、マイクロプリント部分において特有のモアレデータが得られる。
【0071】
そして、引き続き、ステップS06で紙幣の真贋判定処理を行う。上述したように、ROMに格納されている変換テーブルによる増減率によって、特有のモアレデータ(モアレ縞)が得られることから、これを、判定処理部116cにおいて、基準データ記憶部116bに予め格納されている基準データ(間引き率に応じて格納されているモアレ縞データ)と比較することで、その紙幣の真贋が判定される。
【0072】
上記した真贋判定処理において、搬送された紙幣が真券であると判定された場合(ステップS07のYes)、紙幣判定OK処理を実行する(ステップS08)。この処理は、例えば、紙幣をそのまま下流側にあるスタッカに向けて搬送する処理、下流側に向けて搬送される紙幣の後端が紙幣通過検知センサ60によって検知された段階で駆動モータ10の駆動を停止する処理、及び、これに伴い、ソレノイド54の駆動をOFF(通電を解除)して回動片52を紙幣搬送路5から引き込ませて、紙幣挿入口6を開放状態にすると共にLED70を消灯する処理等が該当する。
【0073】
一方、上記したステップS07の処理において、搬送された紙幣が偽札であると判定された場合(紙幣が著しく汚損しているような場合も含む)、紙幣判定NG処理が実行される(ステップS09)。この処理は、例えば、挿入された紙幣を返却すべく、駆動モータ10の逆転処理、或いは上位装置300に対して警報信号を出力する処理等が該当する。
【0074】
以上のように構成される紙幣識別装置1によれば、取込んだ紙幣に関する画像データの画素の数を間引くことにより、その紙幣固有の縞状パターン(モアレ縞)が表れたモアレデータを取得することが可能となる。これにより、取得されるデータ量、及び比較対象となる基準データのデータ量を少なくすることができ、真贋判定に伴う処理速度を向上することが可能になる。また、例えば、識別精度向上を図るため、紙幣読取手段20を構成するセンサを、解像度の高いものに変更する場合であっても、モアレ縞を発生させるためのフィルタ等、新たに製造する必要が無くなって、コストの上昇を抑制することが可能になる。
【0075】
上記した構成では、紙幣読取手段20において読取られる紙幣の読取精度を下げる手段として、一旦取得した紙幣の画像データ(複数の画素データ)を、画像処理部116において間引く処理を行ったが、それ以外にも、例えば、読取手段20におけるラインセンサの読取時に、画像取込周期を変更することで読取精度を下げるように構成しても良い。
【0076】
図15は、画像データの画素の数を減少するように変更する変更手段(画像取込周期を変更する画像取込周期変更回路)の構成を示すブロック図である。
【0077】
画像取込周期変更回路250は、前記ラインセンサ25の受光部26の画像を取込む周期を変更できるように構成されており、所定のタイミングでクロック信号を発生するカウンタ251と、任意の周期を設定する設定部252と、カウンタ251からの計数時間と設定部252の設定時間(画像取込周期;画像の取込みタイミング)が一致することで読取トリガ信号を発するコンパレータ253を備えている。また、画像取込周期変更回路250は、受光部26から得られる紙幣の画像信号をA/D変換するA/D変換器260、ラインバッファ261、フレームメモリ262、及びコンパレータ253からのトリガ信号に基づいてフレームメモリ262に格納されているライン毎の画素情報を、設定した周期でCPU110側に送信制御する制御部265を備えている。
【0078】
上記した構成の画像取込周期変更回路250では、受光部26より出力される画像データはA/D変換器260によってデジタルデータに変換され、ラインバッファ261に、紙幣搬送幅方向における画素の1ライン毎に蓄積される。ラインバッファ261に蓄積された1ライン毎の紙幣に関する画像データ(1ライン画素データ)は、フレームメモリ262に送信され、ライン毎の画像データとして蓄積、保持される。そして、フレームメモリ262に蓄積、保持されている1ライン毎の画像データは、コンパレータ253から送信されるトリガ信号によって、所定の周期毎に抽出され、この抽出された画像データはCPU110側に送信される。
【0079】
このような画像取込周期変更回路250によれば、設定部252で設定された画像取得タイミングを変更設定(遅く設定)することで、紙幣の搬送方向における紙幣の読取精度を下げる(画素を間引く)ことができ、上記した構成と同様、特有のモアレデータを取得することが可能となる。そして、読取精度を下げたことによって得られるモアレデータを、その低下率に応じて予め記憶されている基準データと比較することによって、紙幣の真贋を判定することが可能となる。
【0080】
このような構成においても、モアレデータは、ラインセンサによる読取精度を下げたことで得られるものであることから、データ量を少なくすることができ、真贋判定処理に伴う処理速度を向上することが可能になる。
【0081】
なお、上記したラインセンサ25による読取精度を下げる手段としては、画像取込周期変更回路250を設置する以外にも、上記したCPU110及び駆動モータ駆動回路125を介して駆動モータ10の駆動速度を制御して、紙幣の搬送速度を変更することで実施することが可能である。すなわち、ラインセンサによる1ライン毎の画像取得タイミングを一定とした状態で、駆動モータ10の駆動速度を高速に変更して紙幣の搬送速度を高速に設定することで、上記した構成と同様、紙幣の搬送方向における読取精度を下げる(画素を間引く)ことが可能となり、同様なモアレデータを取得することが可能になる。
【0082】
このような構成においても、モアレデータは、ラインセンサによる読取精度を下げたことで得られるものであることから、データ量を少なくすることができ、真贋判定処理に伴う処理速度を向上することが可能になる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、搬送される紙幣を読取るに際して、読取られる画像データの読取画素数(読取精度)を下げることでモアレデータを取得し、そのモアレデータを有する紙幣の画像データに基づいて紙幣の真贋を識別する構成であれば良く、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、紙幣の読取を行う読取手段(センサ)の構成や配置態様については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の紙幣識別装置は、遊技媒体貸出装置に限られず、紙幣が挿入されたことで、商品やサービスを提供する各種の装置に組み込むことが可能である。また、本発明の紙葉識別装置として、上記した実施形態では、紙幣を処理するものであることを例示して説明したが、紙幣以外にも、金券やその他有価証券などの真贋判定を行う装置として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る紙幣識別装置の一実施形態の全体構成を示す斜視図。
【図2】上部フレームを下部フレームに対して開いた状態を示す斜視図。
【図3】下部フレームの紙幣搬送路部分を示した平面図。
【図4】下部フレームの裏面図。
【図5】紙幣検知センサの構成を示す斜視図。
【図6】紙幣識別装置の構成を模式的に示した図。
【図7】紙幣の概略構成を示す図。
【図8】紙幣識別装置の制御系を示すブロック図。
【図9】(a)〜(c)を含み、画素データ間引き処理部における画像データの画素を間引く一手順例を説明する図。
【図10】画素数の間引き処理を行った後に得られる紙幣の画像データを示す図。
【図11】モアレ縞の発生原理を示す模式図であり、モアレ縞が発生しない条件を説明する図。
【図12】モアレ縞の発生原理を示す模式図であり、モアレ縞が発生する条件を説明する図。
【図13】紙幣を読取る場合において、画素数を間引く処理をした際にモアレ縞が発生する条件を模式的に示す図。
【図14】紙幣識別装置における動作処理、及び上記したモアレデータを利用した真贋判定処理の手順例を示したフローチャート。
【図15】画像データの画素の数を減少するように変更する変更手段(画像取込周期を変更する画像取込周期変更回路)の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0086】
1 紙幣識別装置
2 フレーム
2A 上部フレーム
2B 下部フレーム
6 紙幣挿入口
8 紙幣搬送機構
10 駆動モータ
18 紙幣検知センサ
20 紙幣読取手段
23 第1発光部
25 ラインセンサ
27 第2発光部
30 制御手段
100 制御基板
250 画像取込周期変更回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、
前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、
前記読取手段で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、前記画像データの画素の数を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、
を有することを特徴とする紙葉識別装置。
【請求項2】
前記紙葉を搬送する紙葉搬送機構を備えており、
前記読取手段は、前記紙葉搬送機構によって搬送される紙葉を、紙葉の搬送幅方向に亘って読取るラインセンサを備えており、前記他方の方向は、紙葉の搬送方向であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項3】
前記紙葉搬送機構による搬送速度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の紙葉識別装置。
【請求項1】
明るさを有する色情報を含み、所定の大きさを1単位とする画素毎に紙葉の読取を行う読取手段と、
前記読取手段により読取られた複数の画素によって構成される画像データを記憶する記憶手段と、
前記読取手段で紙葉を読取る際、一方の方向よりも他方の方向の読取画素数を下げて、前記画像データの画素の数を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更された前記画像データに基づいて、その紙葉の真贋を識別する紙葉識別手段と、
を有することを特徴とする紙葉識別装置。
【請求項2】
前記紙葉を搬送する紙葉搬送機構を備えており、
前記読取手段は、前記紙葉搬送機構によって搬送される紙葉を、紙葉の搬送幅方向に亘って読取るラインセンサを備えており、前記他方の方向は、紙葉の搬送方向であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉識別装置。
【請求項3】
前記紙葉搬送機構による搬送速度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の紙葉識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−84278(P2008−84278A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266780(P2006−266780)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【出願人】(391065769)株式会社セタ (89)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【出願人】(391065769)株式会社セタ (89)
【Fターム(参考)】
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