説明

紙葉類処理装置

【課題】従来は、スタッカをトレイから取り出す際、トレイを装置から引き出し、さらにスタッカ上部の搬送路ユニットを持ち上げるように回動させることが必要であり、利便性に欠けていた。
【解決手段】紙葉類の受け渡しを行う接客機構部40と、紙葉類の計数を行う計数処理部10と、紙葉類を収納するスタッカ20と、接客機構部40と計数処理部とスタッカ20とに紙葉類を搬送する搬送路10a〜10e,40a,40bとを備えた紙幣処理装置1に、搬送路10a〜10eとスタッカ20との間に設けられて紙葉類の受け渡しを行う接続ガイド51と、この接続ガイド51を搬送路10a〜10eとスタッカ20とに接続されて紙葉類を受け渡し可能な接続状態と接続解除された退避状態とに切り替えるモータ62とカム59とソレノイドSとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば紙葉類を処理するような紙葉類処理装置に関し、特に金融機関の窓口業務に使用されるような紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣の入金取引や出金取引を行うATMやCDなどの現金自動取引装置は、金融機関やコンビニエンスストア等の店舗に設置されている。例えば金融機関などで使用される現金自動取引装置に実装される紙幣処理装置は、利用者に出金紙幣を放出し、もしくは投入された入金紙幣を一枚ずつ繰出すための紙幣入出金口と、入金もしくは出金紙幣を判別する紙幣判別部と、入金した紙幣を一旦収納する一時保留部と、さらに入金紙幣を収納・保管し、出金紙幣等として繰出すためのスタッカと前記各部分を接続する紙幣搬送路を有している。
【0003】
上記の構成を有する紙幣処理装置においては、最近では多金種化・大容量化が進み、複数のスタッカが装置下部のスタッカ収納部に並べて配置され、接客機構部と紙幣の計数、識別する機能を持つ計数処理部分が装置上部に集められて配置するのが一般的になっている。
【0004】
このような形態をとる紙幣処理装置は、保守や紙幣の再装填のため、紙幣を収納したスタッカを装置から着脱する作業が頻繁に行われている。そして、上記構成を有する紙幣処理装置においては、スタッカ収納部のみが装置より引き出され、容易にスタッカを着脱できることが望まれている。
【0005】
ここで、計数処理部とスタッカ間で、紙幣等の紙葉類を座屈滞留することなく受け渡しするには、紙葉類搬送路に搬送ガイドを設ける必要がある。特に紙葉類が搬送路を双方向に行き交う構成の場合、紙葉類の受け渡し部分となる計数処理部側の搬送ガイドとスタッカ側の搬送ガイドを櫛歯形状とし、互いの搬送ガイドが入れ子となる位置に設置する必要がある。
【0006】
このような形態をとる装置では、計数処理部の搬送ガイドとスタッカの搬送ガイドが互いに相手の構成内部に侵入しているため、計数処理部とスタッカの位相をずらすことができない。
【0007】
そこで、スタッカ上部に搬送路部を設置し、計数処理部との紙葉類の受け渡し口をスタッカ上部搬送路部1つに集約し、上部搬送路部と計数処理部との受け渡し部で互いの搬送ガイドを退避する機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかし、このような機構では、トレイを引き出すと同時にスタッカ上部搬送路部も引き出される。このため、スタッカを装置から着脱するには、さらに上部搬送路部をスタッカ上部から退避する操作が必要となり、操作性が悪いなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−259084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述した問題に鑑み、スタッカを容易に着脱できる紙葉類処理装置を提供し、利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、紙葉類の受け渡しを行う接客機構部と、前記紙葉類の計数を行う計数処理部と、前記紙葉類を収納するスタッカと、前記接客機構部と前記計数処理部と前記スタッカとに前記紙葉類を搬送する搬送路とを備え、前記搬送路と前記スタッカとの間に設けられて紙葉類の受け渡しを行う受け渡し接続部と、該受け渡し接続部を前記搬送路と前記スタッカとに接続されて紙葉類を受け渡し可能な接続状態と接続解除された退避状態とに切り替える接続切替手段とを備えた紙葉類処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、スタッカを容易に着脱できる紙葉類処理装置を提供し、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】紙幣処理装置を搭載した現金自動取引装置の外観を示す斜視図。
【図2】紙幣処理装置の構成を側面視して説明する説明図。
【図3】接続状態にある接続ガイド周辺の構成を示す部分拡大側面断面図。
【図4】接続ガイド周辺を搬送面から見た平面図。
【図5】接続状態にある接続ガイドの周辺を示す拡大背面図。
【図6】接続状態にある位置決めローラ周辺の部分拡大側面断面図。
【図7】退避状態にある接続ガイド周辺の部分拡大側面断面図。
【図8】接続状態にある接続ガイドの周辺を示す拡大背面図。
【図9】接続ガイドの駆動を説明する説明図。
【図10】トレイを後方から引き出した状態の現金自動取引装置。
【図11】トレイを前方から引き出した状態の現金自動取引装置。
【図12】ジャム発生時の接続ガイド周辺を示す部分拡大側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1を搭載した現金自動取引装置101の外観を示す斜視図である。この現金自動取引装置101は、カード、紙幣、明細票を媒体とし、利用者の預け入れ、支払い、振り込みなどの処理を行うものである。
【0016】
現金自動取引装置101の上部には、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理機構103を備え、装置正面前方に取引の内容を表示および入力する顧客操作部104を備えている。また、現金自動取引装置101の下部左には、本発明を適用した紙幣を処理する紙幣処理装置1を備えている。現金自動取引装置下部の紙幣処理装置1の右側には、硬貨処理装置105が備えられている。この硬貨処理装置105は、備えられなくても良い。また、現金自動取引装置背面には、扉102が備えられている。
【0017】
この扉102を開くことにより、紙幣処理装置1のトレイ30が、トレイ30と紙幣処理装置1もしくは現金自動取引装置101に備えられた引き出し機構としてのレール110により引き出だすことができる。そして、トレイ30を引き出した状態で、スタッカ20をトレイ30に着脱可能としている。
【0018】
現金自動取引装置101は、その他にも、各構成部分に電力を供給する電源部(図示省略)や、各機構がUSB等の回線によって接続される本体制御部(図示省略)も備えている。
【0019】
図2は、紙幣処理装置1の構成を側面視して説明する説明図である。紙幣処理装置1の上部の計数処理部10は、顧客または操作員に紙幣の受け渡しを行う紙幣入出口部41を備える接客機構部40と、紙幣の計数識別を行う識別部42と、計数識別された後に一時的に蓄えられる一時保留部43とにより構成されている。
【0020】
紙幣処理装置1の下部は、紙幣を金種別に収納し、出金する紙幣を繰出すためのスタッカ20が複数台トレイ30に搭載されて構成されている。
これらの機構部は、それぞれ、紙幣の授受を行う為の搬送路10a〜10g,40a,40bにより接続されている。
【0021】
計数処理部10とトレイ30は、それぞれ独立して現金自動取引装置101(図1参照)にレール110を介して取付けられる。
トレイ30を引き出すレール110は、計数処理部10に取付けられている。トレイ30は、計数処理部10を介して現金自動取引装置101に取付けられている。
【0022】
なお、スタッカ20aから20eのうち、いずれかを出金に供しない紙幣を収納するリジェクト庫に置き換えても良い。
【0023】
入金取引時、入出口部41に投入された紙幣は、接客機構部40で1枚毎に分離繰出しされ、搬送路40aを通り、搬送路10fを通過する際に、識別部42により計数識別される。その後、紙幣は、搬送路10gを通り一時保留部43に収納される。投入された紙幣を全て一時保留部43に収納し取引金額が確定した後、紙幣は、一時保留部43により1枚毎に分離繰出しされる。紙幣は、搬送路10gを経由し、搬送路10fで再度識別部42により計数識別され、搬送路10eに到達する。さらに搬送路10a,10b,10c,10dにより、装置より指示されたスタッカ20(20a〜20e)へ収納され、入金取引が終了する。
【0024】
出金取引時、紙幣処理装置1より指示されたスタッカ20から紙幣が1枚毎に分離繰出しされる。この紙幣は、搬送路10eを経由して搬送路10fを通過し識別部42にて識別計数される。そして、この紙幣は、搬送路40bを経由して接客機構部40の入出口部41に到達し、顧客へ提供される。これにより、出金取引が終了する。
【0025】
図3は、計数処理部10とスタッカ20の搬送路を接続する受け渡し接続部としての接続ガイド51(51a,51b)の構成(接続状態)を示す部分拡大側面断面図であり、図4は、搬送面から見た接続ガイド51周辺の平面図であり、図5は、計数処理部10に構成される接続ガイド51aの周辺を示す拡大背面図であり、図6は、接続ガイド51周辺を他の縦断面で見た部分拡大側面断面図である。
【0026】
図3に示すように、計数処理部10には、前後方向にベルト13bが張架されている。このベルト13bは、前後方向(図示左右方向)に複数配置されるスタッカ20a〜20eの上部位置で紙幣を前後方向へ双方向搬送する搬送路10a〜10dを構成する。
【0027】
このベルト13bによる搬送路10a〜10dには、スタッカ20a〜20eの1つ1つに対応して、スタッカ誘導ガイド11および振り分けフラッパ12が設けられている。この振り分けフラッパ12の位置に対応して、ベルト13bに作用するローラ15が設けられている。
【0028】
スタッカ誘導ガイド11は、前後方向から湾曲しつつ斜め下方へ紙幣を振り分け誘導するガイドであり、振り分けフラッパ12は、このスタッカ誘導ガイド11に沿ってスタッカ20へ紙幣を誘導するか、あるいはそのままベルト13bで紙幣を搬送するかを振り分けるフラッパである。この振り分けフラッパ12は、図3に示すスタッカ20側への振り分け位置で、スタッカ誘導ガイド11とともに、斜め下方(紙葉類の受け渡し方向)へ紙幣を誘導し搬送する誘導搬送路L1を構成する。
【0029】
また、スタッカ誘導ガイド11に沿ってベルト13aが設けられており、該ベルト13aの下端位置となる誘導搬送路L1の下端近傍には、ベルト13aに対向してピンチローラ14が設けられている。このピンチローラ14とベルト13aにより、紙幣が誘導搬送路L1の下端近傍で挟持され、スタッカ20への繰出し、およびスタッカ20からの取り込みを実行する。
【0030】
スタッカ誘導ガイド11の下端には、櫛歯状突起11aが設けられ、振り分けフラッパ12の下端には、櫛歯状突起12aが設けられている。この櫛歯状突起11a,12aは、スタッカ20との間で紙幣を受け渡しするためのスタッカ側搬送接続部として機能する。
【0031】
スタッカ20の上部には、上下方向の誘導搬送路L2を構成するスタッカ側受け渡しガイド21およびスタッカ側受け渡しガイド22が設けられている。このスタッカ側受け渡しガイド21およびスタッカ側受け渡しガイド22は、紙幣を挟んで上下方向に搬送するよう対向配置されており、上端にそれぞれ櫛歯状突起21a,22aが設けられている。この櫛歯状突起21a,22aは、計数処理部10との間で紙幣を受け渡しするための搬送路側搬送接続部として機能する。
【0032】
スタッカ側受け渡しガイド21およびスタッカ側受け渡しガイド22の下部は、対向配置されたフィードローラ23とピンチローラ24に繋がっており、搬送紙幣がこのフィードローラ23とピンチローラ24に挟持されてスタッカ20内に集積される。
【0033】
誘導搬送路L1と誘導搬送路L2の接続部となる櫛歯状突起11a,12aおよび櫛歯状突起21a,22aの対向部分には、接続ガイド51が設けられ、該接続ガイド51によって計数処理部10とスタッカ20との間の搬送接続がなされている。
【0034】
接続ガイド51は、対向配置された接続ガイド51aと接続ガイド51bとで構成されている。この接続ガイド51a,51bは、いずれも上下両端に櫛歯状突起が設けられている。
【0035】
接続ガイド51aの上端の櫛歯状突起は、図5に示すように、計数処理部10の内部に侵入して設置され、スタッカ誘導ガイド11の櫛歯状突起11aと入れ子構造になる。
接続ガイド51aの下の櫛歯状突起は、図5に示すように、スタッカ20の内部に侵入して設置され、スタッカ側受け渡しガイド21の櫛歯状突起21aと入れ子構造になる。
【0036】
同様に、接続ガイド51bの上端の櫛歯状突起は、計数処理部10の内部に侵入して設置され、振り分けフラッパ12の櫛歯状突起12aと入れ子構造になる。
接続ガイド51bの下端の櫛歯状突起は、スタッカ20の内部に侵入して設置され、スタッカ側受け渡しガイド22の櫛歯状突起22aと入れ子構造になる。
【0037】
計数処理部10の接続ガイド51aと対向する接続ガイド51bとスタッカ20のスタッカ側受け渡しガイド21と対向するスタッカ側受け渡しガイド22の櫛歯の接続状態での入れ子の深さSは、9mm以上に設定してある。これは計数処理部の接続ガイド51aと対向する接続ガイド51bは紙幣等の紙葉類が双方向搬送するため、計数処理部の接続ガイド51aとスタッカの接続ガイド51aの櫛葉部分の互いスクイ形状の溝(図3に示すように各櫛歯の直線から湾曲していく部位での重なり位置の溝)を出来る限りなくすようにすることによって、紙幣等の紙葉類が引っ掛らないようにする為である。
【0038】
この接続ガイド51aと接続ガイド51bは、図4に示すように両端のプレート53,54によって一体的に構成されており、1つの接続ガイド51として機能する。そして、この接続ガイド51の前方(図示右側)には、紙幣の搬送幅方向となる水平方向に延びる回転軸としての軸52aが設けられている。この軸52aのさらに前方には、接続ガイド51の上下動を規制するベアリング55が軸52cに設けられている。
【0039】
このベアリング55は、外周がプレート54の上縁に当接している。また、プレート54は、図4に示すバネBにより上方向に引かれている。このため、接続ガイド51は、常に上方へ向かう力で付勢されている。
【0040】
従って、軸52aを中心に軸52aの後方で上方へ付勢されて回転動作する接続ガイド51の回転範囲は、軸52aの前方のベアリング55がプレート54の上縁に当たるまでに規制される。すなわち、ベアリング55が当接しているプレート54の上縁の高さが変われば、その高さの変化量に応じて接続ガイド51が回転動作する。
【0041】
これにより、図3に示したように、接続ガイド51が軸52aに対して略水平位置に位置する接続状態(結合)から、接続ガイド51が軸52aよりも上方に位置する傾斜状態に回動した退避状態(退避)まで、接続ガイド51が駆動する。
【0042】
図4に示すように、プレート54に設けられたベアリング55は、軸52c上に設けられており、このベアリング55にさらにリンクプレート56(第1係合部)が接続されている。リンクプレート56は、図示省略するバネにより前方(図4の右方向)へ引かれている。このリンクプレート56には、ピン57が設けられており、該ピン57にベアリング58が設けられている。
【0043】
ベアリング58は、カム59に接続されており、さらに遮光板64に接続されている。遮光板64は、センサ63内で回転し、センサ63により回転検知される。
【0044】
これらの先端にはギア60が設けられている。このギア60とカム59は、軸52dを中心に同期して回転する。そして、モータ62はギア61に回転駆動を与える。
【0045】
プレート53,54の各外側には、位置決めローラ65が設けられている。この位置決めローラ65は、軸52a,52c,52dと並行の軸で回転する構成であり、スタッカ20と接続ガイド51の前後方向および上下方向の位置を精度よく位置決めするものである。
【0046】
詳述すると、図6に示すように、スタッカ20の筐体上面には、左右両端付近に位置決め凹部29(第2係合部)が設けられている。この位置決め凹部29は、側面視略V字型で底部が平坦に形成された形状であり、前後の斜面に位置決めローラ65の外周が接触して2点で支持される構成となっている。なお、この支持は、位置決め凹部29の前後の斜面と底面に対して位置決めローラ65の外周が接触する3点支持としてもよい。
【0047】
これにより、軸52aを軸に下方へ回転した接続ガイド51は、位置決めローラ65がスタッカ20の位置決め凹部29に接触することで停止する。従って、接続ガイド51とスタッカ20の相対位置が固定される。特に、この位置決め凹部29がスタッカ側受け渡しガイド21,22の櫛歯状突起21a,22aと搬送幅方向に直列に並ぶ位置に設けられているため、受け渡し用に位置精度が最も要求される接続ガイド51の下端の櫛歯状突起と櫛歯状突起21a,22aとの相対位置を精度よく位置決めすることができる。
【0048】
なお、軸52aは、計数処理部10のフレーム66に設けられた前後方向(図示左右方向)に長い長円穴66aに挿通されている。このため、位置決めローラ65が位置決め凹部29に入り込んで位置決めする際に、必要に応じて軸52aに支持されている接続ガイド51全体が前後動し、位置決めローラ65が位置決め凹部29に精度よく収まって位置決めされる。
【0049】
また、軸52aは、一方の軸端部が計数処理部10に設けられているスタッカ20の位置決め部としての位置決めプレート28(図4参照)に直接、且つ、常に接触した状態に構成されている。これにより、ガイド結合時、接続ガイド51aと対向する接続ガイド51bがスタッカ20のスタッカ側受け渡しガイド21と対向するスタッカ側受け渡しガイド22に対して“ガタ”を作る構造としている。これにより、スタッカ20に対する接続ガイド51の幅方向(図4の上下方向)の位置を精度よく位置決めしている。
【0050】
このように構成された紙幣処理装置1は、次のように動作する。
接客可能な起動状態のとき、図3〜図6を用いて説明したように、接続ガイド51の接続搬送路L3が誘導搬送路L1,L2を接続した接続状態となっている。このため、誘導搬送路L1と誘導搬送路L2の間は、接続ガイド51の接続搬送路L3によってスムーズに紙幣が搬送される状態となっている。
【0051】
入金取引時、図3に示したように、紙幣はスタッカ誘導ガイド11および振り分けフラッパ12に誘導され、ベルト13aとピンチローラ14によってスタッカ20へ搬送される。このとき、スタッカ20への受け渡す紙幣を、接続ガイド51がガイドする。
【0052】
スタッカ20に進入した紙幣は、スタッカ20内のフィードローラ23とピンチローラ24によって搬送され集積収納される。
【0053】
出金時、1枚ごとに分離繰出しされた紙幣は、スタッカ側受け渡しガイド21と対向するスタッカ側受け渡しガイド22によって計数処理部10へ誘導される。このとき、計数処理部10へ受け渡す紙幣を、接続ガイド51がガイドする。そして、紙幣は、計数処理部10のベルト13aとピンチローラ14に達し、計数処理部10内で搬送される。
【0054】
電源が供給されていない、もしくは動作(リセットなど)開始前までは、接続ガイド51が退避状態となる。図7は、この退避状態にある接続ガイド51の構成(退避状態)を示す部分拡大側面断面図であり、図8は、計数処理部10に構成される接続ガイド51aの周辺を示す拡大背面図であり、図9は、退避状態から接続状態までの接続ガイド51の駆動を説明する説明図であり、図10および図11は、紙幣処理装置1からトレイ30を引き出した状態の側面図である。
【0055】
退避状態とき、図7に示すように計数処理部10の接続ガイド51は、上方に位置する退避位置にある。このとき、接続ガイド51の下端の櫛歯状突起は、櫛歯状突起21a,22aから離間し、入れ子構造のない完全に離間した状態となる。この退避状態のときでも、接続ガイド51a,51bの間の接続搬送路の上端は、接続搬送路L1に連通するように構成されている。すなわち、軸52aを中心に回転する接続ガイド51は、真上ではなく、上方かつ少し前方へ移動する。これに対応させて、誘導搬送路L1は、下部より上部が少し前方に位置するよう傾斜配置されている。
【0056】
この退避状態のとき、図8に示すように、計数処理部10の接続ガイド51aおよび接続ガイド51bはスタッカ20の外装ケース25の上面より空間Tは3mm以上ある。これはスタッカ20の外装ケース25の上面からスタッカ20のスタッカ側受け渡しガイド21およびスタッカ側受け渡しガイド22よりも空間をつくる為である。これにより、トレイ30が図10もしくは図11に示す位相に移動すること(引き出されること)が可能になる。図10もしくは図11に示す位相にトレイ30を移動することで、スタッカ20の着脱を容易に行うことができる。
【0057】
この退避状態のとき、図9(A)に示すように、ベアリング55は、リンクプレート56に設けられた退避用凹部底辺56aに接触している。そして、ベアリング58は、カム59の最も半径が短い部位に当接している。また、ソレノイドSのピンSaは、リンクプレート56の接続状態維持用凹部56dに入らず、上縁56eに当接している。
【0058】
動作(リセットなど)開始が入ると、ガイドの結合を実行する。このとき、まずモータ62(図4参照)の回転駆動が開始する。これに伴いギア61が回転し、ギア61の回転と同期してカム59が回転する。
【0059】
これによりカム59を、図9(A)の矢印に示すように回転させると、カム59の中心からの半径が大きくなるに従ってベアリング58が後方(図示左側)へ押圧されてリンクプレート56が後方へスライド移動していく。
【0060】
その際、ベアリング55は、リンクプレート56に設けられた退避用凹部の斜面56bに乗り上げて上縁56c上にまで持ち上げられる。これにより、接続ガイド51が軸52aを中心に下方(切り替え動作方向)へ円弧運動して図9(B)に示すように接続状態に移行する。
【0061】
そして、ソレノイドSがピンSaを下方へ移動させ、図9(C)に示すように、ピンSaを接続状態維持用凹部56dに入り込ませ、接続状態を維持する。
【0062】
ここからさらにカム59が回転され、中心からの半径が最も大きい部分がベアリング58から離れて、図9(D)に示すように、半径が最も小さい部分がベアリング58に対向する位置まで回転する。この状態のとき、ソレノイドSのピンSaが接続状態維持用凹部56dに入り込んでいるため、リンクプレート56は移動せずに固定されている。
【0063】
この状態で、紙幣処理装置1は、通常の接客、取引処理を実行する状態となっている。すなわち、入金や出金といった取引を適宜実行することができる。
【0064】
操作員により紙葉類処理装置1へトレイ30の引き出し指示がされると、ガイドの退避動作を実行する。この動作は、ソレノイドSによってピンSaを上方へ移動することで一瞬に行われる。
【0065】
すなわち、ソレノイドSによってピンSaが上方へ移動されると、ピンSaと接続状態維持用凹部56dによる位置固定が解除され、図示省略するバネによりリンクプレート56が前方(図示右側)へスライド移動される。リンクプレート56は、図9(E)に示すように、ベアリング58がカム59の最も半径が小さい位置に接触するまでスライド移動して停止する。そして、接続ガイド51はバネB(図4参照)によって上方へ引かれていて円弧状に上方(切り替え動作方向)へ移動するため、ベアリング55が退避用凹部底辺56aに入り込み、接続ガイド51が退避状態(スタッカ20のスタッカ側受け渡しガイド21と対向するスタッカ側受け渡しガイド22とのオーバーラップがなくなる状態)となって動作停止する。
【0066】
このようにして、モータ62、カム59、およびソレノイドSが接続切替手段として機能し、接続ガイド51の誘導搬送路L1,L2の接続と退避が実行される。
【0067】
図12は、紙幣のジャムが発生した状態の接続ガイド51の構成を示す部分拡大側面断面図である。
【0068】
計数処理部10のベルト13aとピンチローラ14のタッチ圧Mとスタッカのフィードローラ23とピンチローラ24のタッチ圧Lは、次の式1に示す関係を満足するように構成されている。
(式1)
L > M
そして、接続ガイド51aと対向する接続ガイド51bは、退避してもスタッカ誘導ガイド11と対向する振り分けフラッパ12の空間(計数処理部の誘導搬送路L1)を完全に塞がない設定およびガイド形状に形成されている。
【0069】
このため、図示するようにジャムや動作異常時の処理においてジャム除去をする場合、計数処理部10とスタッカ20の間の接続搬送路L3に紙葉類Aが存在していても、容易にジャム除去が可能である。
【0070】
すなわち、ベルト13aとピンチローラ14、およびフィードローラ23とピンチローラ24の両方に紙葉類Aの両端が挟まれている場合、トレイ30を引き出すと、上述したタッチ圧Mとタッチ圧Lの差により、常にスタッカ20側に紙葉類Aが保持されることになる。従って、引き出したトレイ30のスタッカ20から、紙葉類Aを破ることなく容易に除去することができる。
【0071】
以上の構成および動作により、接続ガイド51をモータ62とカム59、およびソレノイドSによって接続状態と退避状態とに切り替えることができ、スタッカ20を容易に取り出すことが可能となる。
【0072】
特に、計数処理部10に設けられた搬送路10a〜10dを紙幣処理装置1の本体側に残した状態で、この搬送路10a〜10dと分離してスタッカ20をトレイ30と共に引き出せるため、トレイ30を引き出せばすぐに任意のスタッカ20を取り出すことができる。従って、従来のようにトレイ30を引き出してから上部搬送路をさらに開動作させるといった操作が不要であり、スタッカ20に対するアクセスを容易かつ短時間化することができる。
【0073】
接続ガイド51の接続状態と退避状態との移動は、誘導搬送路L1に沿う方向に行うため、紙葉類のジャムが発生していても、問題なく接続ガイド51を退避状態に移行することができる。すなわち、接続ガイド51を接続状態から退避状態に移行する際に、仮に接続搬送路L3と接続搬送路L1とで搬送路が連通している状態が無くなるとすると、これによってジャムしている紙葉類に接続ガイド51が接触し、退避できない状態となりえる。これに対し、搬送路が連通している状態を維持したままで、接続ガイド51を退避させるため、ジャムしている紙幣の影響を受けずに退避状態への移行を完了させることができる。
【0074】
これにより、接続ガイド51を退避状態に移行させる処理を行ってトレイ30を引き出した際に、実はジャムした紙葉類によって接続ガイド51の退避が不完全となっていて櫛歯状突起21a,22a等が破損するといったことを防止することができる。
【0075】
また、接続ガイド51に設けた位置決めローラ65を、スタッカ20に設けた位置決め凹部29に当接させて両者の位置決めを行う構成としたことにより、計数処理部10とスタッカ20との受け渡し部位での相対的な位置関係を精度よく定めることができる。特に、トレイ30の引き出し/収納の際に接続ガイド51の接続状態と退避状態が切り替えられる構成において、何度切り替えを実行しても、受け渡しのために最も精度が必要な部位の相対位置を毎回精度よく定めることができる。
【0076】
また、接続ガイド51の回転動作の軸52aの端部をスタッカ20の位置決めプレート28に当接させる構成としたため、接続ガイド51とスタッカ20との搬送幅方向の位置精度を向上させることができる。特に、軸52aの端部を当接させる構成であるため、当接対象である位置決めプレート28に対する可動負荷を抑制することができる。すなわち、軸52aのその場での回転動作は、スライド動作等に比較して、動作時の摩擦力で位置決めプレート28等を磨耗させることを抑制することができる。
【0077】
また、接続搬送路L3が紙葉類を双方向に搬送許容する構成であるため、双方向搬送が求められる紙幣処理装置1に採用することができる。
また、接続ガイド51は、計数処理部10側に取り付けられているため、空いたスペースをスタッカ20の大容量化に使用することや、紙葉類処理装置1の小型化を実現することができる。
【0078】
また、リンクプレート56によって複数の接続ガイド51が同時に駆動して全接続ガイド51の接続状態と退避状態が切り替わるため、簡潔な構成で一括駆動を安定して実行することができる。
【0079】
また、接続状態での接続ガイド51の櫛歯状突起と櫛歯状突起21a,22aとの入れ子部分の深さを9mm以上に構成したため、接続搬送路L3と誘導搬送路L2との間での紙葉類の受け渡しをスムーズに実行でき、ジャムが発生することを防止することができる。
【0080】
また、退避状態のとき、接続ガイド51の櫛歯状突起と櫛歯状突起21a,22aとが完全に離間する構成であるため、トレイ30の引き出し動作や収納動作の際に、接続ガイド51の櫛歯状突起と櫛歯状突起21a,22aとが干渉することがない。従って、接続ガイド51の櫛歯状突起と櫛歯状突起21a,22aとが衝突して破損するといったことを防止することができる。
【0081】
なお、以上の実施例では、双方向の搬送路として説明したが、紙葉類を一方向に搬送する一方向の搬送路としてもよい。この場合でも、同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
また、リンクプレート56は、図示しないレバーを備え、リンクプレート56を動かすことができるようにしてもよい。この場合、モータ62へ電力が供給されない場合でも手動で接続ガイド51aと接続ガイド51bを退避状態から接続状態に移行できる。
【0083】
また、接続ガイド51の結合・退避(接続状態・退避状態)の位置は、カム59と連動して回転する遮光板64を用いてセンサ63で検知制御する構成としてもよい。この場合も同様の作用効果を得ることができる。
【0084】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明は、紙幣、カード、紙(印刷された紙)など、様々な紙葉類を取り扱う装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…紙幣処理装置、10…計数処理部、10a〜10d…搬送路、11a,12a…櫛歯状突起、20,20a〜20e…スタッカ、21a,22a…櫛歯状突起、28…位置決めプレート、29…位置決め凹部、30…トレイ、40…接客機構部、51,51a,51b…接続ガイド、52a…軸、59…カム、62…モータ、65…位置決めローラ、110…レール、S…ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の受け渡しを行う接客機構部と、
前記紙葉類の計数を行う計数処理部と、
前記紙葉類を収納するスタッカと、
前記接客機構部と前記計数処理部と前記スタッカとに前記紙葉類を搬送する搬送路とを備え、
前記搬送路と前記スタッカとの間に設けられて紙葉類の受け渡しを行う受け渡し接続部と、
該受け渡し接続部を前記搬送路と前記スタッカとに接続されて紙葉類を受け渡し可能な接続状態と接続解除された退避状態とに切り替える接続切替手段とを備えた
紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記接続切替手段による前記受け渡し接続部の前記切り替え動作方向を、前記搬送路と前記スタッカとの間での紙葉類の受け渡し方向に沿う方向に構成した
請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記スタッカの前記搬送路側に第1係合部を備え、
前記搬送路の前記スタッカ側に前記第1係合部に係合する第2係合部を備えて、
該第1係合部と第2係合部の係合によって前記搬送路と前記スタッカとの相対位置を位置決めする構成とし、
前記第1係合部と第2係合部のいずれか一方を、前記受け渡し接続部の切り替え動作に連動する構成とした
請求項1または2記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記受け渡し接続部は、前記切り替え動作として回動するよう前記搬送路側に設けられた回動軸に軸支され、
該回動軸を、少なくとも接続状態の場合に前記搬送路側に設けられた前記スタッカの位置決め部に常時当接する構成とした
請求項1、2、または3記載の紙葉類処理装置。
【請求項5】
前記受け渡し接続部は、前記紙葉類を双方向に搬送許容する構成である
請求項1から4のいずれか1つに記載の紙葉類処理装置。
【請求項6】
前記受け渡し接続部は、前記計数処理部側に取り付けられている
請求項1から5のいずれか1つに記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
前記搬送路の前記スタッカ側に搬送路側搬送接続部を備え、
前記スタッカの前記搬送路側にスタッカ側搬送接続部を備え、
前記搬送路側搬送接続部と受け渡し接続部とスタッカ側搬送接続部とを互いに櫛歯形状として入れ子構造に接続する構成とし、
該入れ子部分の深さが9mm以上に構成された
請求項1から6のいずれか1つに記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
前記受け渡し接続部は、退避状態のときに前記スタッカ側搬送接続部の先端から離間する構成である
請求項7記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
前記スタッカを収納するトレイを備え、
該トレイを筐体から引き出す引き出し機構を備えた
請求項1から8のいずれか1つに記載の紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−233084(P2011−233084A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105273(P2010−105273)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】