説明

紙葉類処理装置

【課題】適切な時期に搬送ベルトの交換を行うことができ、保守費用の低減が可能な紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣1を搬送する搬送ベルト21、22と、断続的に回転することで搬送ベルト21、22を断続的に駆動させるプーリ11a〜13cとを備える紙葉類処理装置において、プーリ11a〜13cの回転を検知してプーリ11a〜13cの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダ31と、ロータリエンコーダ31から出力されるパルス信号をプーリ11a〜13cの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段51と、積算手段51に保存されたパルス信号の積算値を表示する表示手段52とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類をベルトによって搬送する紙葉類処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣や帳票、鉄道等で利用される切符等の紙葉類を処理する装置として種々の紙葉類処理装置が開発されている。このような紙葉類処理装置は、例えば紙幣であれば入金された紙幣を所定の識別部に搬送して金種を識別し、金種に応じて紙幣を所定の金庫に仕分けて搬送するとともに、出金時には所定の金庫から取り出した紙幣を所定の識別部に搬送して金種を識別して、出金を間違いなく行うこと等が可能になっている。
【0003】
この種の紙葉類搬送機構として、例えば特許文献1に示されるように、本体内に複数の金庫と、入出金口と、紙幣類を判別(識別)する判別器(識別部)と、これらの間で紙葉類の搬送を行う搬送路を備えたものが開示されている。このものにおいては、搬送路を搬送ベルト方式によって形成しており、無端ベルトからなる搬送ベルトを複数のプーリの間によって支持しつつ、当該プーリの一部を駆動できるように構成してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−292083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような紙葉類処理装置において使用する搬送ベルトは、紙葉類の入出処理に伴って頻繁に加減速を行いつつ走行することになるために、機械部品として過酷な使用状況におかれる。そのため、搬送ベルトの伸びや摩耗の問題が生じやすい。
【0006】
また、紙葉類を搬送ベルトによって搬送させるためには、当該搬送ベルトに別の搬送ベルトまたはローラ等を対向させて配置し、これらの間で紙葉類を挟持しながら走行させることになるため、搬送ベルトの表面は他の部材との摺動が不可避といえる。そのため、搬送ベルトの表面も他の部材と摺動することによって摩耗し、表面性状が変化していく。
【0007】
こうした搬送ベルトの伸びや摩耗および表面性状の変化によって、搬送する紙葉類との間でのスリップや搬送速度ムラ等が生じ、正常な紙葉類の搬送や識別が困難となる。それにより紙葉類の投入詰まり、内部での滞留、識別不良などの深刻な不具合が生じ、装置全体の機能が失われることになってしまう。
【0008】
そのため、上述した搬送ベルトの伸び、摩耗および表面性状の変化といった劣化が進んで紙幣処理装置としての機能が損なわれるまでの間に、搬送ベルトの交換を行って機能を維持する保守作業が必要となる。この搬送ベルトの交換時期を判断するために、一般には当該紙幣処理装置の内部に紙葉類を入出した枚数を積算して表示するカウンタを設けておき、保守点検作業者はこのカウンタの表示値が前回の交換時からどれだけ増加しているかを見て交換の要否の判断を行うことが多い。
【0009】
しかしながら、搬送ベルトは紙葉類の入出以外にも、内部処理を行うために走行させることがあるために、上述したカウンタにおいて表示される紙葉類の入出枚数と搬送ベルトの劣化の程度が必ずしも一致するわけではない。そのため、使用状態によっては搬送ベルトが機能を十分に保っており劣化には至っていない場合にも交換を行うことがあり、こうした交換を行うことで保守費用の増大を招いていた。また、逆に紙葉類の入出枚数からいえば基準値に達していないとして搬送ベルトの交換を行っていない場合でも、内部処理によって搬送ベルトの劣化が進むことで機能が失われ、突発的に予期せぬ機器異常が生じて運転ができなくなる恐れもある。
【0010】
本発明は、上記のような課題を有効に解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送ベルトと、断続的に回転することで前記搬送ベルトを断続的に駆動させるプーリとを備えるものにおいて、前記プーリの回転を検知して当該プーリの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダと、当該ロータリエンコーダから出力される前記パルス信号を前記プーリの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段と、当該積算手段に保存された前記パルス信号の積算値を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
【0013】
このように構成すると、従来、交換時期の基準として用いていた紙葉類の入出枚数に比して、より搬送ベルトの劣化との相関が高い搬送ベルトの走行距離を表示によって簡単に確認することができるために、保守点検作業者は搬送ベルト交換に適した時期を容易に知ることができる。そのため効率的な時期に搬送ベルトの交換ができるようになり、紙葉類処理装置の保守にかかる費用を低減できるとともに、搬送ベルトの劣化に係る突発的な装置異常を未然に防止することができる。
【0014】
また、本発明の紙葉類処理装置は、紙葉類を搬送する搬送ベルトと、断続的に回転することで前記搬送ベルトを断続的に駆動させるプーリとを備えるものにおいて、前記プーリの回転を検知して当該プーリの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダと、当該ロータリエンコーダから出力される前記パルス信号を前記プーリの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段と、当該積算手段に保存された前記パルス信号の積算値が事前に決定した所定の値以上になった時に外部に報知する報知手段とを設けたことを特徴とする。
【0015】
このように構成すると、搬送ベルトの交換に適した時期を自動的に報知するために、保守点検作業者が見落とすことなく搬送ベルトの交換を確実に実施することができる。また、従来、交換時期の基準として用いていた紙葉類の入出枚数に比して、より搬送ベルトの劣化との相関が高い搬送ベルトの走行距離を基準として用いているために、従来よりも効率的な時期に搬送ベルトの交換ができるようになり、紙葉類処理装置の保守にかかる費用を一層低減できるとともに、搬送ベルトの劣化に係る突発的な装置異常を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、搬送ベルトの劣化との相関が高い搬送ベルトの走行距離が交換基準に至ったことを簡単に確認することができる。そのため、効率的な時期に搬送ベルトの交換を行うことができるようになり、突発的な装置異常を生じさせることなく、保守費用の低減を行うことが可能な紙葉類処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類処理装置の模式的な側面図。
【図2】同紙葉類処理装置の要部を示す模式図。
【図3】同紙葉類処理装置が備えるロータリエンコーダを示す模式図。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る紙葉類処理装置の要部を示す模式図。
【図5】同紙葉類処理装置の報知動作に係る制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての紙葉類処理装置を例に挙げて説明する。
<第一の実施形態>
【0019】
以下、本発明の第一の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態の紙葉類処理装置は、図1に示すように、取り扱う紙葉類が紙幣1であって、紙幣1の入金・出金を処理するために、入金口2aよりより入金された紙幣1を所定の識別位置3に搬送して金種を識別し、識別した金種に基づいて紙幣1を所定の金庫6a、6b、6c、6dに仕分けて搬送することや、出金時に所定の金庫6a、6b、6c、6dから取り出した紙幣1を所定の簡易識別位置4に搬送して金種を識別し、間違えることなく出金口2bより出金を行うことが可能となっている。更に、通常の入金・出金処理とは別に、保守作業の一つとして外部より紙幣1の補給や回収を行うことがあり、こうした際にも装置内部で紙幣1を搬送することできるようになっている。このような紙幣1を対象とする紙葉類処理装置には、紙幣1を各金庫6a、6b、6c、6d、入金口2a、出金口2b、識別部3および簡易識別部4の間で搬送するための搬送路を形成する紙葉類搬送機構5が設けられている。
【0020】
その紙葉類搬送機構5の一部として識別部3の内部に設ける装置の構成とこれらを基にした制御システムを模式的に図2に示す。
【0021】
識別部3の内部には、紙幣1を挟持することができるように対向させて搬送ベルト21、22を設けている。これらの搬送ベルト21、22としては無端ベルトを用いている。図中の上側に位置する搬送ベルト21は3つのプーリ11a、11b、11cによって支持している。また、図中の下側に位置する搬送ベルト22はプーリ12a、12b、12cと、その他の図示しないプーリによって支持している。そして、一部のプーリ12b、12cには各々小径のプーリ13b、13cを同軸に連結している。さらに、これらの小径プーリ13b、13cと、別に設けたプーリ13aとの外周に伝達ベルト16を掛けることで、当該伝達ベルト16を介して連動して回転を行うようにしている。また、プーリ13aには同軸上にギア15aを連結しており、当該ギア15aと噛み合う大径ギア15bによって駆動力が入力される。大径ギア15bには同軸上に駆動用のプーリ14aを連結し、当該駆動用プーリ14aはモータ18と連結された駆動用プーリ14bとの間で伝達ベルト17を掛けることでモータ18の回転によって駆動される。上記のように、プーリ13a〜13c、駆動用プーリ14a、14b、伝達ベルト16、17を構成することによって、モータ18からの駆動力がプーリ12b、12cに伝達され、搬送ベルト22が走行することになる。なお、本実施形態において搬送ベルト22と対向する搬送ベルト21には駆動手段を設けず、搬送ベルト22と当接することによって従動して走行するようにしてあるが、モータ18からの駆動力をギア等によって配分することや、モータ18とは別の駆動源を設けることによって搬送ベルト21積極的に走行させることも可能である。
【0022】
さらに、本実施形態の紙葉類処理装置では、プーリ13aの回転を検知するためのロータリエンコーダ31を設けている。当該ロータリエンコーダ31の具体的な構成を図3(a)、(b)に示す。このロータリエンコーダ31はいわゆる光電式のものであり、プーリ13a(図2参照)に同軸上に連結した軸部34に設置した回転板32と検知部33とから構成される。回転板32には同一円上に均等に開口部35を設け、検知部33には、上記開口部35を挟んで対向する位置に投光部33aと受光部33bとを設けている。そして、投光部33aからは常に受光部33bに向けて同一光量を発しつつ、回転板32の回転によって開口部35を通じて受光部33bに到達する光量を増減させる。このようにしてロータリエンコーダ31は、受光部33bに入力された光量の増減から回転を検知して、パルス信号として出力を行うことができるように構成している。
【0023】
このロータリエンコーダ31からのパルス信号を取り込むことによって、図2におけるプーリ13aの回転を正確に検知することが可能となり、ある時点からその後のある時点までの間のパルス数を数えることによって、その時間内のプーリ13aの総回転数を把握することができる。当該プーリ13aは搬送ベルト22の走行と同期しているものであるため、モータ18の脱調や伝達ベルト17の滑りの影響があったとしても、上記ロータリエンコーダ31のパルス信号を検知することによって正確に搬送ベルト22の走行を検知することができ、上記の時間内の総走行距離を把握することができる。
【0024】
さらに、本実施形態の紙葉類処理装置には、搬送中の紙幣1の前後端を検知できるセンサ41を設けている。そのため、本紙葉類処理装置においては、当該センサ41に紙幣1の前端が到達した時点から後端が到達した時点までの間に前記ロータリエンコーダ31からのパルス信号を数え、その間の搬送距離を算出することによって、紙幣1の長さを測定することが可能に構成されている。このようにして測定した紙幣1の長さは、紙幣1の識別を行うための要素の一つとして用いられる。
【0025】
また、本実施形態の紙葉類処理装置は、下記のような制御システム部60を備えている。当該制御システム部60は、前記ロータリエンコーダ31から出力されるパルス信号の数を積算し、それによって得られる積算値を保存する積算手段51を備えている。当該積算手段51は紙葉類処理装置の本体電源をオフにしても内部に積算値を保存できるようにしてある。そのため、積算値のリセットを行わない限り、搬送ベルト22が断続的に走行してもこれに伴って発せられるパルス信号を積算し続ける。また、搬送ベルト22が正逆いずれの方向に走行する場合であっても、常に正の値としてパルスを積算し続けるように構成している。
【0026】
さらに、前記積算手段51よりその内部で保存している積算値を入力されて、当該積算値を外部に表示する表示手段52を備えている。この際、当該積算値をそのまま表示させることも、当該積算値より搬送ベルト22の走行距離に換算してから表示させることも可能としている。
【0027】
また、積算手段51にリセット信号を発することによって、積算値をリセットさせてゼロに戻す初期化手段55を備えている。初期化手段55は、人による信号の入力を受けることで積算手段51に向けてリセット信号を発するように構成されている。
【0028】
上記のように構成した紙葉類処理装置において、搬送ベルト21、22の交換は次のようにして行うことになる。
【0029】
まず、保守点検作業者は、定期的に行う保守点検作業の際に、表示手段52によって表示されているロータリエンコーダ31からのパルス信号の積算値を確認する。そして、前回の搬送ベルト交換時より、当該積算値がどの程度増加したかを把握する。そして、この増加量が所定の数値以上となっている場合には、搬送ベルト21、22の交換を行う。なお、この搬送ベルトの交換を行うか否かを判定するための数値は、事前に紙葉類処理装置としての機能を損なうことのない限界の搬送ベルト21、22の走行距離を把握しておき、当該限界走行距離をもとにして保守点検頻度等の種々の要素を加えて事前に設定するものである。
【0030】
作業者は、搬送ベルト交換を終えた場合には、次の搬送ベルト交換時期を把握できるようにするために、表示手段52に表示される積算値を記録するか、初期化手段55によって積算値をリセットしておく。
【0031】
以上のように、本実施態様に係る紙葉類処理装置は、紙幣(紙葉類)1を搬送する搬送ベルト21、22と、断続的に回転することで前記搬送ベルト21、22を断続的に駆動させるプーリ11a〜13cとを備えるものにおいて、前記プーリ11a〜13cの回転を検知して当該プーリ11a〜13cの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダ31と、当該ロータリエンコーダ31から出力される前記パルス信号を前記プーリ11a〜13cの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段51と、当該積算手段51に保存された前記パルス信号の積算値を表示する表示手段52とを設けるように構成したものである。
【0032】
このように構成しているため、従来、交換時期の基準として用いていた紙幣(紙葉類)1の入出枚数に比して、より搬送ベルト21、22の劣化との相関が高い搬送ベルト21、22の走行距離またはそれに相当するプーリ13aの回転数に比例するパルス信号の積算値を表示手段52によって簡単に確認することができるために、保守点検作業者は搬送ベルト21、22の交換に適した時期を容易に知ることができる。そのため効率的な時期に搬送ベルト21、22の交換ができるようになり、紙葉類処理装置の保守にかかる費用を低減できるとともに、搬送ベルト21、22に係る不具合を未然に防止することができる。
<第二の実施形態>
【0033】
以下、本発明の第二の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態は、上述の第一の実施形態の構成を基に部分的に追加を行ったものであるため、同一の部分には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0034】
第二の実施形態では、図4に示すように、制御システム部60が、閾値設定手段53と報知手段54とを備えている。閾値設定手段53は、パルス信号の積算値に関する閾値を設定するものであり、ここで設定した閾値は報知手段54に対して発せられる。なお、ここで設定する閾値の入力はパルス信号の数として行うことも、搬送ベルト21、22の走行距離として入力して内部でパルス信号の数に換算して報知手段54に発信することもできる。
【0035】
そして、報知手段54では、当該閾値と積算手段51より入力された積算値とを比較して、積算値が閾値を越えた場合には、警告ランプの点灯等の手段によって外部への報知を行う。なお、当該報知手段54は本紙葉類処理装置内に設けることはもちろん、電気信号を通じて本装置等を集中的に管理している遠方の場所に設けることも可能である。さらに、本実施形態では、報知手段54だけでなく表示手段52も設けているために、保守点検者の目視によって搬送ベルト21、22の走行距離を確認して交換時期の判断を行うこともできるようにしてある。
【0036】
また、本実施形態では、図5に示すフローチャートのように、人による入出金操作が途切れた間にのみ積算値と閾値との比較を行わせることで、このタイミングでのみ報知がなされるようにしてある。
【0037】
この制御においては、まず、人による入出金操作(A1)が行われるとその操作に対応して、入金された紙幣または金庫に保管されている紙幣の識別判定(A2)を行う。ここで、上記の入出金操作とは客による紙幣の投入や払い出しおよび保守作業者による装置内部への紙幣の補充や取出し等をいうものである。そして、一連の搬送動作を終えて入出金操作完了の判断(A3)ができないかぎり、繰り返し識別判定(A2)の段階に戻る。入出金操作完了の判断(A3)ができた後には、パルス信号の積算値と閾値とを比較(A4)して積算値が閾値以上かを判定(A5)する。積算値が閾値以上になっていなければ初期の入出金操作(A1)の段階に戻り、積算値が閾値以上になっていれば報知手段54(図4参照)による報知(A6)が行われる。
【0038】
上記のように構成した紙葉類処理装置において、搬送ベルト21、22の交換は次のようにして行うことになる。
【0039】
まず、事前に、搬送ベルト21、22の限界走行距離を把握し、これを基に警告を認知してから搬送ベルト交換までに要する時間等の種々の要素を加えて、警告を行う時期に適した所定の閾値を決定する。そして、当該閾値を閾値設定手段53によって事前に入力しておく。そして、積算手段51では搬送ベルト21、22の断続的な走行によってパルス信号を積算し続け、その積算値を報知手段54に向けて出力する。報知手段54では、上述した入出金操作完了のタイミングで積算値と閾値との比較を行い、積算値が閾値を越えた場合には外部に警告としての報知が行われる。
【0040】
そして、保守点検作業者は搬送ベルト21、22の交換時期に達していることを当該報知によって簡単に認識でき、これに基づいて搬送ベルト21、22の交換を行う。その後、作業者は初期化手段55によって積算値をリセットしてゼロに戻す。これによって、報知手段54による報知は停止して通常の状態に復旧できる。
【0041】
以上のように、本実施態様に係る紙葉類処理装置は、紙幣(紙葉類)1を搬送する搬送ベルト21、22と、断続的に回転することで前記搬送ベルト21、22を断続的に駆動させるプーリ11a〜13cとを備えるものにおいて、前記プーリ11a〜13cの回転を検知して当該プーリ11a〜13cの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダ31と、当該ロータリエンコーダ31から出力される前記パルス信号を前記プーリ11a〜13cの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段51と、当該積算手段51に保存された前記パルス信号の積算値が事前に決定した所定の値以上になった時に外部に報知する報知手段54とを設けるように構成したものである。
【0042】
このように構成しているため、搬送ベルト21、22の交換に適した時期が自動的に報知され、保守点検作業者が見落とすことなく搬送ベルト21、22の交換を確実に実施することができる。また、従来、交換時期の基準として用いていた紙幣(紙葉類)1の入出枚数に比して、より搬送ベルト21、22の劣化との相関が高い搬送ベルト21、22の走行距離を基準として用いているために、従来よりも効率的な時期に搬送ベルト21、22の交換ができるようになり、紙葉類処理装置の保守にかかる費用を一層低減できるとともに、搬送ベルト21、22に係る不具合を未然に防止することができる。
【0043】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0044】
例えば、上述の第一および第二の実施形態では紙葉類を紙幣として扱ったが、紙幣に限らずチケットやカードなどを発券する発券機にも本実施形態は適用可能である。
【0045】
また、上述の第二の実施形態においては、入出金操作が途切れた間にのみ積算値と閾値との比較を行わせるように構成してあるが、これ以外のタイミングで積算値と閾値との比較を行わせるように構成することも可能であるし、常時比較を行って報知を行うことができるように構成することも可能である。
【0046】
また、上述の第二の実施形態では、表示手段52も設けることで保守点検者が目視によっても搬送ベルト21、22の走行距離を確認し交換時期の判断を行うことができるようにしてあるが、これを設けないで報知手段54のみによって搬送ベルト21、22の交換時期の判断を行うようにすることも可能である。
【0047】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…紙幣
3…識別部
5…搬送経路
6a〜6d…金庫
11a〜11c、12a〜12c、13a〜13c…プーリ
14a、14b…駆動用プーリ
15a,15b…ギア
16、17…伝達ベルト
18…モータ
21、22…搬送ベルト
31…ロータリエンコーダ
32…回転板
33…検知部
41…センサ
51…積算手段
52…表示手段
53…閾値設定手段
54…報知手段
55…初期化手段
60…制御システム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送ベルトと、断続的に回転することで前記搬送ベルトを断続的に駆動させるプーリとを備える紙葉類処理装置において、前記プーリの回転を検知して当該プーリの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダと、当該ロータリエンコーダから出力される前記パルス信号を前記プーリの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段と、当該積算手段に保存された前記パルス信号の積算値を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
紙葉類を搬送する搬送ベルトと、断続的に回転することで前記搬送ベルトを断続的に駆動させるプーリとを備える紙葉類処理装置において、前記プーリの回転を検知して当該プーリの回転に応じたパルス信号を発するロータリエンコーダと、当該ロータリエンコーダから出力される前記パルス信号を前記プーリの回転の断続に関わらず積算し続けて保存する積算手段と、当該積算手段に保存された前記パルス信号の積算値が事前に決定した所定の値以上になった時に外部に報知する報知手段とを設けたことを特徴とする紙葉類処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate