説明

紙葉類取扱装置

【課題】 紙葉類取扱部が取引口部と壁を隔てて設置される紙葉類取扱装置において、壁貫通穴の開口面積を小さくする。
【解決手段】 取引される紙幣が投入又は放出される入出金口ユニット10と、この入出金口ユニットに搬送路を介して連結され、紙幣の有効性を判別して紙幣の取込み処理及び放出処理を行う紙幣取扱ユニット101とを備えてなる紙幣取扱装置において、入出金口ユニットの搬送路と紙幣取扱ユニットの搬送路とが空間を空けて離して設けられ、入出金口ユニットと紙幣取扱ユニットの搬送路が接続搬送路ユニット60で連結されてなるものとし、紙幣取扱ユニットを壁の内面側に設置して、入出金口ユニットだけを壁の貫通穴に設置することにより、壁の貫通穴の開口面積を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置に係り、例えば、紙幣の金庫を含む紙幣取扱装置の主要部と利用者がアクセスする入出金口部とを壁を隔てて設置される紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類取扱装置には、利用者がアクセスする入出金口と金庫を含む紙幣取扱装置の主要部を一体的に形成して、管理された部屋の中に設置される室内型の他に、壁に設けられた外部に開口する貫通穴部に、利用者がアクセスする入出金口を設け、金庫を含む紙幣取扱装置の主要部を壁の内面側に設置する壁埋め込み型が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された壁埋め込み型の紙幣取扱装置によれば、金庫を壁の内面側に設置し、紙幣取扱装置の主要部及び入出金口を壁に設けた貫通穴内に突き出して配置することにより、厚い壁があっても入出金口を利用者に近付けて操作性の向上を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−110289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、壁埋め込み型の紙幣取扱装置を設置する場合、防犯上の観点から金庫などを硬く厚い壁を隔てて内部に設置することが好ましい。そのため、貫通穴の開口面積が小さい方が防犯上の観点から望ましく、かつ工事等のコストを抑えることができる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された従来技術によれば、壁貫通穴の開口面積を小さくすることについて、十分な配慮がされていない。つまり、特許文献1によれば、取引される紙幣が投入又は放出される取引口を有する入出金口部と、取引される紙幣の有効性を判別して紙幣の取込み処理及び放出処理を行う紙幣取扱部とを一体的に組込んで構成していることから、壁の貫通穴部に位置される入出金口部の装置高さが高くなり、開口面積が大きくなることが余儀なくされる。
【0007】
本発明は、紙葉類取扱部が取引口部と壁を隔てて設置される紙葉類取扱装置において、壁貫通穴の開口面積を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、紙葉類が投入又は放出される取引口ユニットと、該取引口ユニットに紙葉類搬送路を介して連結され、紙葉類の有効性を判別して紙葉類の取込み処理及び放出処理を行う紙葉類取扱ユニットとを備えてなる紙葉類取扱装置において、前記取引口ユニットの紙葉類搬送路と前記紙葉類取扱ユニットの紙葉類搬送路とが空間を空けて離して設けられ、前記取引口ユニットと前記紙葉類取扱ユニットの紙葉類搬送路が接続搬送路ユニットで連結されてなることを特徴とする。
【0009】
すなわち、取引口ユニットと紙葉類取扱ユニットを離して設置し、それらを接続搬送路ユニットで連結しているから、紙葉類取扱ユニットを壁の内面側に設置することができる。そして、取引口ユニットだけを壁の貫通穴に設置することができるから、取引口ユニットを紙葉類取扱ユニットに一体的に組み込んだ場合に比べて、壁の貫通穴の開口面積を小さくすることができる。
【0010】
この場合において、紙葉類取扱ユニットは、建物の壁の内面側に設置され、取引口ユニットは、壁を貫通して設けられた貫通穴内に位置させて設置されることが好ましい。また、接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路の紙葉類取扱ユニットとの連結端は、壁の内面側に位置させて設置されることが好ましい。
【0011】
また、接続搬送路ユニットは、略水平な紙葉類搬送路を有して形成することができ、搬送方向に垂直な面であって、この面内に入出金口ユニットと紙葉類取扱ユニットが存在しない面を有するように形成することができる。
【0012】
また、取引口ユニットを、搬送路ユニットの紙葉類搬送路の一端側に連接させて構成することが好ましい。これによれば、壁の貫通穴の開口面積は、入出金口ユニットの高さのみを考慮すればよい。
【0013】
なお、これに代えて、入出金口ユニットを、接続搬送路ユニットの上に少なくとも一部を重ねて配置することができる。これによれば、壁の貫通穴の開口面積が接続搬送路ユニットの高さ寸法分だけ大きくなるが、続搬送路ユニットの高さは通常薄くできることに加え、壁の厚みが薄い場合などに対応することができる。この場合の取引口ユニットの紙葉類搬送路は、接続搬送路ユニットに接続する縦方向の搬送路を有して形成する必要がある。
【0014】
また、接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路は、搬送方向を切換えて双方向に紙葉類を搬送可能な一口搬送路として形成することができる。あるいは、紙葉類取扱ユニットに搬送する第1の搬送路と、入出金口ユニットに搬送する第2の搬送路とを備えた二口搬送路によって形成することができる。
【0015】
さらに、取引口ユニットが、取引口に投入された紙葉類を1枚ずつ分離して取り込む分離手段と、取引口に紙葉類を放出する放出手段とを有してなる場合、分離手段の紙葉類搬送路と放出手段の紙葉類搬送路は、接続搬送路ユニットの一の双方向紙葉類搬送路に合流して連結することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、紙葉類取扱部が取引口部と壁を隔てて設置される紙葉類取扱装置において、壁貫通穴の開口面積を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施形態1)
本発明の紙葉類取扱装置の一実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の紙葉類取扱装置を金融機関などに設置される現金自動取引装置に適用した実施形態の側面から見た断面図、図2は図1の現金自動取引装置の斜視図、図3は制御装置の機能ブロック図、図4は図1の現金自動取引装置の要部詳細を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の現金自動取引装置100は、壁Wを貫通して設置される壁埋め込み(スルー・ザ・ウォール:Through The Wall)型の現金自動取引装置である。壁Wに形成された例えば矩形の貫通穴は、外壁面側から凹ませて形成されたフロントパネル110によって仕切られている。現金自動取引装置100は、利用者USRが紙幣を投入(入金)、又は利用者USRへ紙幣を放出(出金)する入出金口ユニット10と、取引される紙幣の有効性を判別して紙幣の取込み処理及び放出処理を行う紙幣取扱ユニット101、金庫109等を有して構成され、壁Wの内面側に設置されている。
【0019】
フロントパネル110には、図2に示すように、裏面に、利用者のカードを処理し取引明細票を印字して放出するカード・明細票処理装置102と、利用者の通帳に取引内容を記帳する通帳処理装置103が設けられる。また、表面には、図2に示すように、利用者に案内を表示し利用者からの指示を入力する利用者操作部104とが設けられている。また、現金自動取引装置100の内部には、本装置を監視制御する本体制御部105と、各構成部に電力を供給する電源部106が設けられている。
【0020】
フロントパネル110の表面の凹み部に、奥行き側を高くした傾斜面が形成され、この傾斜面に開口が設けられ、この開口に臨ませて取引される紙幣が投入又は放出される取引口を有する入出金口ユニット10が配置されている。入出金口ユニット10と紙幣取扱ユニット101の紙幣搬送路は、接続搬送路ユニット60により連結されている。
【0021】
金庫109は、入金庫41、出金庫42及び還流庫43等を囲う堅牢な鉄板などで構成される。入金庫41は入金時の取引が成立した紙幣を収納する金庫である。出金庫42は出金用の紙幣を収納する金庫である。還流庫43は入出金兼用の金庫である。入金庫41、出金庫42及び還流庫43と紙幣取扱ユニット101との間で紙幣を搬送する搬送路50は、金庫109を貫通して設けられている。つまり、取引中を除いて全ての紙幣は金庫109内のみに存在し、これにより防犯性を高めている。また、金庫109は、通常閉鎖されており、定められた係員のみ開錠できるようになっており、必要に応じて、金庫109を開けて入金庫41、出金庫42、還流庫43を引き出して保守作業を行うようにしている。
【0022】
本体制御部105は、図3に示すように、紙幣取扱ユニット101、カード・明細票処理装置102、通帳処理装置103、及び利用者操作部104にバス107aを介して接続されている。また、本体制御部105は、外部にあるホストコンピュータなどと接続を行うインターフェース部107b、保守時などに係員が操作する係員操作部107c、外部記憶装置107dにバス107aを介して接続されている。これにより、本体制御部105は、現金自動取引装置100に必要な制御を実行するとともに、外部との間で必要なデータのやり取りを行うようになっている。
【0023】
ここで、図1に示す壁Wの厚さWthは、設置する建物により異なることから、壁の厚さWthが厚い場合は、壁の内面側に設置される紙幣取扱ユニット101と壁前面に設置されるフロントパネル110との距離が遠くなる。また、金庫109の壁厚さSthも様々であり、金庫109の壁厚さを厚くして重くするほど防犯性が向上するが、金庫の壁厚さを厚くするほど紙幣取扱ユニット101とフロントパネル110との距離が遠くなる。また、フロントパネル110が取り付けられる壁Wの貫通穴を、既設の壁に形成する場合は、工事のコスト低減のためには小さい方が望ましいばかりでなく、防犯性の観点からも小さい方が望ましい。
【0024】
次に、フロントパネル110が取り付けられる壁Wの貫通穴を小さくすることができる本実施形態の特徴部である入出金口ユニット10、紙幣取扱ユニット101及び接続搬送路ユニット60の構成について、図4を用いて、詳細に説明する。紙幣取扱ユニット101は、紙幣の判別を行う紙幣判別部20と、入金した紙幣を取引成立までの間一旦収納する一時保管庫30と、入金リジェクト収納庫70とを有して構成されている。これらの紙幣判別部20と一時保管庫30と入金リジェクト収納庫70は、紙幣を搬送する搬送路50によって接続されている。
【0025】
入出金口ユニット10は、シャッター11を介してフロントパネル110の外部に開口された入出金口が設けられている。入金時や出金時など取引の必要なタイミングにおいて、シャッター11が開き、利用者は紙幣1を入出金口へ投入、あるいは、入出金口から紙幣1を取り出すことができる。投入された紙幣1は、複数のローラからなる分離機構12により、1枚ずつ分離されて接続搬送路ユニット60に送られる。また、紙幣取扱ユニット101から接続搬送路ユニット60により搬送されてきた紙幣は、紙幣を波型に変形させて紙幣を導くガイドと、弾性部材を放射状に配置し紙幣を入出金口の空間へ投げ入れ、集積済み紙幣下端を押さえ格納空間を確保するシートローラからなる集積機構13により集積されて利用者へ放出される。
【0026】
なお、図4の実施例では、入出金口ユニット10の分離機構12により紙幣が分離される紙幣の搬出口(分離口)と、集積機構13の紙幣が搬送されてくる紙幣の搬入口(集積口)が同一の一口搬送路を用いているが、分離口、集積口を別に設けた二口搬送路を採用することもできる、
紙幣判別部20は、接続搬送路ユニット60から搬送路50を介して搬送された紙幣の光学的及び磁気的特徴を測定し、搬送紙幣の金種や真偽などを判別する。また、紙幣判別部20は、紙幣の複数枚の重なり(重送)、紙幣同士の短すぎる間隔(ショートピッチ)、大きな斜行(大スキュー)などを検知して、紙幣が搬送不適合であるか否かを判別する。
【0027】
一時保管庫30は、紙幣を巻き取る誘導テープ31と、誘導テープ31とともに搬送された紙幣を巻き取る回転ドラム32と、誘導テープ31のみを巻き取る巻き取り軸33を有して構成される。一時保管庫30は、回転ドラム32と巻き取り軸33それぞれを動かす独立した駆動モータを有し、紙幣を誘導テープ31とともに回転ドラム32に巻きつけ収納し、あるいは紙幣を誘導テープ31と共に回転ドラム32から放出する。つまり、一時保管庫30は、搬送された紙幣を一時格納する部分であり、例えば、利用客が入金した紙幣を一時保管し、利用客が取引を認めた場合は入金庫41又は還流庫43へ収納し、認めない場合は紙幣を入出金口ユニット10へ搬送して利用客へ現品を返却する。
【0028】
入金リジェクト収納庫70は、入金時に紙幣判別部20で金種判定できなかった紙幣や、重送、ショートピッチおよび大スキューなどで搬送不適合と判断された紙幣が収納される。入金リジェクト収納庫70は、弾性部材を放射状に配置したブラシローラと、ブラシローラと入り組んで設置され搬送された紙幣を摩擦力により止めるガイドからなる集積機構71と、摩擦力によって紙幣を分離する複数のローラからなる分離機構72から構成され、接続搬送路ユニット60よりも壁の内面側に配置される。
【0029】
入金庫41は、弾性部材を放射状に配置したブラシローラと、ブラシローラと入り組んで設置され搬送された紙幣を摩擦力により止めるガイドからなる集積機構411と、集積機構411により集積された紙幣を、入金庫内部へ格納する格納機構412から構成される。入金庫41には、還流しない入金だけの紙幣や、重送、ショートピッチおよび大スキューなどで搬送不適合と判断された紙幣を格納する。出金庫42は、摩擦力によって紙幣を分離する複数のローラからなる分離機構421を有し、係員により出金庫42内にセットされた紙幣を、搬送路50へ1枚ずつ分離する。還流庫43は、摩擦力によって紙幣を分離する複数のローラからなる分離機構431と、還流庫へ搬送される紙幣を格納空間へ投げ入れるシートローラで構成される集積機構432で構成される。入金取引時に搬送路50で搬送された紙幣は集積機構432により集積される。また、出金取引時は、分離機構431で還流庫内の紙幣を搬送路50へ放出する。ここで、本実施形態では、入金庫41を1つ、出金庫42を1つ、還流庫43を2つ実装している例であるが、これらの組み合わせは自由であり、実装数も自由に設定できる。例えば、入金庫41を2つ、還流庫43を3つの組み合わせでもよい。
【0030】
搬送路50は、紙幣を挟むように設置されたベルトやローラと、ベルトやローラを駆動する駆動モータで構成される。さらに、搬送路50の分岐点には電磁ソレノイドにより駆動する切り替えゲート51があって、紙幣搬送方向を切り替えることができる。したがって、取引動作ごとに、駆動モータの回転方向と切り替えゲートを切り替えることで、紙幣は紙幣判別部20を双方向に通過し、入金リジェクト収納庫70、一時保管庫30、入金庫41、出金庫42、還流庫43それぞれの間を搬送される。
【0031】
このように構成される入出金口ユニット10、接続搬送路ユニット60、紙幣取扱ユニット101、金庫109、搬送路50などの各ユニットは、各ユニットの駆動モータや電磁ソレノイドなどのアクチュエータやセンサと接続された図示していない制御部によって、取引に応じて制御される。また、本体制御部105からの指令に応じて制御を行い、あるいは、それらの状態を本体制御部105へ報告するようになっている。
【0032】
本実施形態の特徴に係る接続搬送路ユニット60は、紙幣を挟むように設置されたベルトやローラで構成される。このとき、高さ方向の寸法を小さくするために、紙幣が搬送される面は略水平にすることが望ましい。ベルトやローラは搬送路50を駆動する駆動機構にギヤを介して接続して駆動することができる。しかし、これに限らず、搬送路50とは独立した駆動モータを備えて接続搬送路ユニット60を独立して構成できる。また、接続搬送路ユニット60は、図4に示すように、矢印aおよび矢印bの双方向へ駆動可能な1本の搬送路のみで構成することができる。これによれば、高さ方向の寸法が薄い接続搬送路を実現できる。
【0033】
また、接続搬送路ユニット60の両端は、それぞれ入出金口ユニット10と紙幣判別部20の搬送路に接続される。また、接続搬送路ユニット60は、入出金口ユニット10、紙幣判別部20とは独立して取り外すことが可能に形成され、接続搬送路ユニット60を交換できるようになっている。これにより、例えば、接続搬送路ユニット60の搬送路長さを変更することにより、フロントパネル110に接続された入出金口ユニット10や、紙幣取扱ユニット101の構成を変えることなく、様々な厚さの壁や金庫に対応することが可能となる。
【0034】
また、接続搬送路ユニット60は、入出金口ユニット10で分離した1枚ずつの紙幣だけを搬送するため、詰まりの発生を抑えることができる。また、入出金口ユニット10での分離時に詰まった紙幣や異物は、入出金口ユニット10内に留まるから、利用者が紙幣や異物の除去を行うことが可能である。そのため、係員が復旧するまで運用休止となるような事態になりにくい。
【0035】
また、本実施形態の接続搬送路ユニット60は、接続搬送路ユニット60を通過する略垂直な任意の断面を考えたときに、接続搬送路ユニット60以外の、入出金口ユニット10、紙幣判別部20、入金庫41、出金庫42、および還流庫43などの紙幣取扱装置のユニットが存在しない断面A−Aが存在するように構成している。このような構成にすることで、壁の内面側の紙幣取扱ユニット101と、壁前面のフロントパネル110に接続される入出金口ユニット10の間を、紙幣が搬送される接続搬送路ユニット60のみで構成できるから、フロントパネル110への接続部の小型化を図ることができる。
【0036】
また、紙幣取扱ユニット101は、保守作業のために、壁面から後方へ引き出されることがあり、この場合、壁面の貫通穴を接続搬送路ユニット60と入出金口ユニット10が通過することになる。したがって、壁面貫通穴を小さくするには、接続搬送路ユニット60と入出金口ユニット10の高さ方向の寸法を、できるだけ小さくすることが求められる。ところが、入出金口ユニット10の高さは、扱う紙幣の大きさや、利用者の操作性などから、所定の大きさ以下にすることができない。そこで、接続搬送路ユニット60の最大高さThiは、入出金口ユニット10の最大高さChiよりも小さくなければならない。
【0037】
次に、現金自動取引装置100の取引時の動作について、図4を参照して説明する。現金自動取引装置100は、カード、紙幣、明細票、通帳を媒体として、預け入れ、払い戻し、振り込み、通帳記帳、残高照会、両替などの取引を行う。最初に、利用者操作部104に実行可能な取引について案内表示を行う。利用者は利用者操作部104から行いたい取引を指示する。まず、預け入れが選択された場合について説明する。利用者により預け入れが選択されると、カードや通帳をカード・明細票処理装置102や通帳処理装置103へ挿入するよう利用者操作部104に案内する。カードや通帳を受け付けると、入出金口ユニット10のシャッター11を開き、紙幣の投入を待つ。利用者は入出金口ユニット10に紙幣1を投入する。これにより、現金自動取引装置100は入金処理の動作を開始する。
【0038】
入出金口ユニット10に投入された紙幣1は1枚ずつに分離され、接続搬送路ユニット60内を矢印aの方向に搬送されて搬送路50へ送られる。そして、紙幣は搬送路50を矢印cの方向へ通過し、紙幣判別部20に搬送される。紙幣判別部20では、紙幣の金種、真偽や搬送姿勢を判別する。受け入れ可能な紙幣は、矢印eの方向に搬送され一時保管庫30に一旦収納される。紙幣判別部20で金種判別できなかった紙幣や、重送、ショートピッチおよび大スキューなどで搬送不適合と判断された紙幣は、矢印fから矢印hの方向に搬送され入金リジェクト収納庫70に一旦収納される。入金リジェクト収納庫70に紙幣が収納された場合、入出金口ユニット10が全ての紙幣を分離し終わった後、入金リジェクト収納庫は収納された紙幣を分離する。紙幣は、矢印jから矢印bの方向へ搬送され、入出金口ユニット10に集積され、利用者に返却される。利用者は必要に応じて再度入出金口ユニット10へ紙幣を投入することができる。
【0039】
入金リジェクト収納庫70に収納された紙幣も、入出金口ユニット10に再投入される紙幣もなければ、利用者操作部104に計数金額を表示し、利用者に確認を求める。利用者により、計数金額が承認されると、一時保管庫30の紙幣は、矢印g、dの方向を通過して入金庫41、還流庫43のいずれかへ収納され、入金動作は完了する。その後、取引き結果に応じてカード・明細票処理装置102はカード・明細票を処理し、通帳処理装置103は通帳に記帳し、利用者へ放出する。以上で預け入れ取引は終了する。
【0040】
次に、払い戻しが選択された場合について説明する。利用者により払い戻しが選択されると、カードや通帳をカード・明細票処理装置102や通帳処理装置103へ挿入するように利用者操作部104に案内する。カードや通帳を受け付けると、利用者操作部に暗証番号を入力するように案内する。利用者が暗証番号を入力し認証されると、続いて払い戻し金額を入力する様案内する。
【0041】
その後、紙幣取扱ユニット101は、出金庫42、あるいは還流庫43より指定された金額の紙幣を搬送路50へ繰り出す。繰り出された紙幣は矢印kの方向を通過し紙幣判別部20に搬送される。紙幣判別部では、金種および搬送姿勢の確認が行われる。もし、利用者への出金が不適当と判別された紙幣は、矢印eを通過して、一時保管庫30に一旦収納される。出金可能と判別された紙幣は矢印f、矢印i、矢印bを通過して入出金口ユニット10に集積される。指定された金額が入出金口ユニット10に集積されたら、シャッター11を開き、利用者へ放出する。一時保管庫30に紙幣が収納された場合、その紙幣は、矢印g、矢印dの方向を通過し、入金庫41に収納されて、出金動作は完了する。その後、取引き結果に応じてカード・明細票処理装置102はカード・明細票を処理し、通帳処理装置103は通帳に記帳し、利用者へ放出して払い戻し取引は終了する。
【0042】
上述したように、本実施形態によれば、接続搬送路ユニット60の長さ等を変更するだけで、様々な壁の厚さWthおよび金庫109の厚さSthに対応することが可能となる。また、フロントパネル110との接続部の構成を、利用者が投入した紙幣を分離する分離機構と、利用者へ放出する紙幣を集積する集積機構を備えた入出金口ユニット10のみとしているから、壁の貫通穴に入出金口ユニット10のみを設置でき、フロントパネル110との接続部を小型化して、壁面貫通穴を小さくすることができる。この場合において、接続搬送路ユニット60と紙幣取扱ユニと101の連結端を壁内面側に位置すれば、紙幣取扱ユニット101のために壁の穴を広げる必要がなくなり、貫通穴を小さくできる。また、入出金口ユニット10内で紙幣分離を実施するため、紙幣分離時に詰まった紙幣や異物の除去を簡単に行うことができる。
【0043】
すなわち、一般の紙幣取扱装置の場合は、入出金口に投入された複数枚の紙幣を、一括搬送路により紙幣取扱ユニット内に送ってから分離することが考えられる。この場合は、一括搬送路を紙幣束を挟持できるベルトやローラなど比較的簡単な構造で実現できるため小型化の点では有効である。しかし、紙幣取扱ユニット内の分離時に詰まってしまった紙幣や、利用者が誤って投入してしまった紙幣内に混在していた異物などにより、取引が中断された場合にはその紙幣や異物を利用者へ返却する必要がある。しかし、分離部で詰まっている紙幣は大きく変形していることが多く、ガイドやローラなどの接触による搬送抵抗力が大きく、引き出すことが困難なことが多く、また引き出したとしても途中で再度詰まる恐れがある。また、分離部には分離するためのガイド形状やセンサやローラなどの構造物が実装されているが、硬貨やクリップなどの小さい異物がどこに存在しても確実に返却する搬送路を構築することは、これらの構造物との位置関係で困難であり、返却不能となったり、十分な挟持ができず、返却搬送途中で搬送路から落下し、再度搬送されるときの障害となる恐れもある。これらはいずれも、係員による復旧が必要な装置休止に陥る可能性が大きい。したがって、一括搬送は実施せず、本実施形態のように、紙幣分離はなるべく利用者に近い入出金口ユニット10で行う方が望ましい。
【0044】
(実施形態2)
図5に、本発明の他の実施形態の要部断面図を示す。本実施形態が図4の実施形態と異なる点は、入出金口ユニット10を接続搬送路ユニット60の上部に重ねて配置したことにある。その他の点は、図4の実施形態と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図示のように、本実施形態の入出金口ユニット10の最前部を、接続搬送路ユニット60の最前部と同位置に設置している。この場合、フロントパネル110の貫通穴に位置されるのは入出金口ユニット10と接続搬送路ユニット60である。したがって、入出金口ユニット10を含む部位の最大高さChiは、図5に示すように、入出金口ユニット10と接続搬送路ユニット60の高さの合計となる。
【0046】
したがって、本実施形態によれば、壁貫通穴の小型化の効果は低いが、接続搬送路ユニット60はベルトやローラで構成される簡単な構造であるから、接続搬送路ユニット60の高さを小さくすることは容易である。なお、本実施形態では、接続搬送路ユニット60と入出金口ユニット10の最前部を一致させて配置する例を示したが、接続搬送路ユニット60と入出金口ユニット10が前後方向に一部重ねて配置することもできる。
【0047】
(実施形態3)
図6に、本発明の他の実施形態の要部断面図を示す。本実施形態が図4、図5の実施形態と異なる点は、投入又は放出する紙幣の姿勢を略水平状態で入出金口ユニット10Aに投入又は放出するようにし、これに合わせて紙幣の分離手段と集積手段を構成したことにある。つまり、図4、図5の実施形態では、入出金口ユニット10における分離及び集積時の紙幣姿勢は略立位状態であるから、入出金口ユニット10の高さ寸法は少なくとも取り扱う紙幣の短手寸法の最大値以上のとなる。また、接続搬送路ユニット60の搬送路を略水平に形成していたから、入出金口ユニット10の分離手段及び集積手段の立位状態へ屈曲させる必要がある。
【0048】
この点、図6の実施形態の入出金口ユニット10Aは、略水平な紙幣姿勢で分離および集積を行うので、紙幣の短手寸法によらず、投入され得る最大紙幣枚数に応じた高さにすればよいから、高さ寸法Chiを小さくできる。また、接続搬送路ユニット60と搬送方向を変化させることなく接続できるから小型化に有利である。
【0049】
(実施形態4)
図7に、本発明の他の実施形態の要部断面図を示す。本実施形態が図4、図5の実施形態と異なる点は、入出金口ユニット10Bと接続搬送路ユニット60Bの構成が相違すること、及び入金リジェクト収納庫70を省略したことにある。
【0050】
つまり、本実施形態の入出金口ユニット10Bは、分離機構12と集積機構13の搬送路が独立しており、分離機構12により紙幣が分離される紙幣の搬出口(分離口)と、集積機構13の紙幣が搬送されてくる紙幣の搬入口(集積口)とが異なる二口搬送口の構成となっている。また、入出金口ユニット10Bは、分離中に集積することが可能であり、分離紙幣と集積紙幣を分ける仕切板14を有して構成されている。
【0051】
また、接続搬送路ユニット60Bは、入出金口ユニット10Bの分離機構12に接続している矢印a方向の一方向の搬送路と、入出金口ユニット10Bの集積機構13に接続している矢印b方向の一方向の搬送路の2つを独立に有している。これにより、入出金口ユニット10Bが紙幣を分離中であっても、放出紙幣を集積することがである。
【0052】
本実施形態の入金及び出金の取引動作について、図4、図5の実施形態と異なる点についてのみ説明する。まず、入出金口ユニット10Bに投入された紙幣1は、分離機構12により1枚ずつに分離され、接続搬送路ユニット60B内の矢印aの搬送路を通過して搬送路50へ搬送される。搬送路50を矢印cの方向へ搬送された紙幣は紙幣判別部20に達して紙幣の金種、真偽、搬送姿勢が判別される。、紙幣判別部20の判定により受け入れ可能な紙幣は、矢印eの方向に搬送されて、一時保管庫30に一旦収納される。一方、紙幣判別部20で金種判別できなかった紙幣や、重送、ショートピッチおよび大スキューなどで搬送不適合と判断された紙幣は、矢印fから矢印iの方向に搬送され、接続搬送路ユニット60B内の矢印bの搬送路を通過し、入出金口ユニット10Bへ送られて集積される。この集積動作は、入出金口ユニット10Bが分離中であっても実施可能である。入出金口ユニット10Bが全ての紙幣を分離し終わった後、入出金口ユニット10Bの取引口に紙幣が集積されている場合は、シャッター11を開けて利用者に返却する。利用者は必要に応じて再度入出金口10Bへ紙幣を投入することができる。
【0053】
ここで、入出金口ユニット10Bに再投入される紙幣がなければ、利用者操作部104に計数金額を表示し、利用者に確認を要求する。利用者により、計数金額が承認されると、一時保管庫30の紙幣は、矢印g、dの方向を通過して入金庫41、還流庫43のいずれかへ収納され、入金動作が完了する。
【0054】
一方、出金の指示があると、出金庫42あるいは還流庫43より指定された金額の紙幣を搬送路50へ繰り出す。繰り出された紙幣は、矢印kの方向を通過し紙幣判別部20に搬送され、金種および搬送姿勢の確認が行われる。利用者への出金が不適当と判別された紙幣は、矢印eを通過して、一時保管庫30に一旦収納される。出金可能と判別された紙幣は矢印i、矢印bを通過して入出金口ユニット10Bに集積される。指定された金額が入出金口ユニット10Bに集積されたら、シャッター11を開いて利用者へ放出する。一時保管庫30に紙幣が収納された場合、その紙幣は、矢印g、矢印dの方向を通過し、入金庫41に収納される。以上で、出金動作が完了する。
【0055】
本実施形態によれば、入金時に紙幣判別部20で金種判別できなかった紙幣や、重送、ショートピッチおよび大スキューなどで搬送不適合と判断された紙幣があった場合、他の実施の形態のように入金リジェクト収納庫70に一旦収納することなく、直接、入出金口ユニット10Bに返却できる。そのため、入金リジェクト収納庫70から入出金口ユニット10へ再分離及び再集積を行う必要がなく、入出金口ユニット10Bの分離動作が終わると、速やかに入金リジェクト紙幣が入出金口ユニット10Bに集積されるので取引時間を短くできる。
【0056】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、様々な壁の厚さWth及び金庫109の厚さSthに対応することが可能で、紙幣取扱ユニット101のフロントパネル110に接続する接続部分を小型化することができ、壁面貫通穴の開口面積を小さくすることができる。また、紙幣分離時に詰まった紙幣や異物の除去を簡単に行える。
【0057】
なお、上記の各実施形態において、本発明を紙幣取扱装置に適用した例を説明したが、本発明は紙幣に限られるものではなく、複数枚のカードを同時に扱うカード取扱装置に本発明を適用することができる。例えば、複数枚のカードを扱うカード・明細票処理装置の場合、カードの投入放出の取引口ユニットに分離機構が必要になるから、本発明を適用できる。その他、壁埋め込み型のKIOSK端末のような、装置本体と利用者の間に壁などの障害物があり、それを通過して複数枚の紙葉類を取り扱う場合に、取引口をなるべく小さくし、分離時に詰まった紙葉類や異物を利用者へ返却するのを容易にすることができ、信頼性向上に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態の紙幣取扱装置の据付けた状態における側面から見た断面図である。
【図2】図1の実施形態の紙幣取扱装置の斜視図である。
【図3】図1の実施形態の紙幣取扱装置の制御ブロック図である。
【図4】図1の実施形態の紙幣取扱装置の詳細な断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態の紙幣取扱装置の要部断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態の紙幣取扱装置の要部断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の紙幣取扱装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 紙幣
10、10A、10B 入出金口ユニット
12 分離機構
13 集積機構
20 紙幣判別部
30 一時保管庫
41 入金庫
42 出金庫
43 還流庫
50 搬送路
51 切り替えゲート
60、60B 接続搬送路ユニット
70 入金リジェクト収納庫
71 集積機構
72 分離機構
100 現金自動取引装置
101 紙幣取扱ユニット
109 金庫
110 フロントパネル
W 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類が投入又は放出される取引口ユニットと、該取引口ユニットに紙葉類搬送路を介して連結され、紙葉類の有効性を判別して紙葉類の取込み処理及び放出処理を行う紙葉類取扱ユニットとを備えてなる紙葉類取扱装置において、
前記取引口ユニットの紙葉類搬送路と前記紙葉類取扱ユニットの紙葉類搬送路とが空間を空けて離して設けられ、前記取引口ユニットと前記紙葉類取扱ユニットの紙葉類搬送路が接続搬送路ユニットで連結されてなることを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
前記紙葉類取扱ユニットは、建物の壁の内面側に設置され、前記取引口ユニットは、前記壁を貫通して設けられた貫通穴内に位置させて設置されることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項3】
前記接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路の前記紙葉類取扱ユニットとの連結端は、前記壁の内面側に位置させて設置されることを特徴とする請求項2に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項4】
前記接続搬送路ユニットは、略水平な紙葉類搬送路を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項5】
前記接続搬送路ユニットは、搬送方向に垂直な面であって、該面内に前記取引口ユニットと前記紙葉類取扱ユニットが存在しない面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項6】
前記取引口ユニットは、前記搬送路ユニットの紙葉類搬送路の一端側に連結されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項7】
前記取引口ユニットは、前記接続搬送路ユニットの上に少なくとも一部が重ねて配置され、
前記取引口ユニットの紙葉類搬送路は、前記接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路の一端側に連結された縦方向の紙葉類搬送路を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項8】
前記接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路は、搬送方向を切換えて双方向に紙葉類を搬送可能に形成されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項9】
前記接続搬送路ユニットの紙葉類搬送路は、前記紙葉類取扱ユニットに向かう第1の搬送路と、前記取引口ユニットに向かう第2の搬送路とを備えて形成されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。
【請求項10】
前記取引口ユニットは、前記取引口に投入された紙葉類を1枚ずつ分離して取り込む分離手段と、前記取引口に紙葉類を放出する放出手段とを有し、前記分離手段の紙葉類搬送路と前記放出手段の紙葉類搬送路は、前記接続搬送路ユニットの1つの双方向紙葉類搬送路に合流して連結されてなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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