説明

紙葉類取扱装置

【課題】シャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下する場合にも動作不良の発生を抑えることができ、且つ省エネを図ることができる紙葉類取扱装置を提供する。
【解決手段】紙葉類を収納するとともに紙葉類の出し入れを行う紙葉類取扱装置において、温風を生成する温風生成部36と、この温風生成部36で生成した温風を対象部位に供給する温風供給流路部37,38と、装置内の温度を検出する温度検出器49と、この温度検出器49で検出した温度が第1の温度閾値未満T_th1であると判定した場合に、また温度検出器49で検出した温度が第1の温度閾値T_th1以上で第2の温度閾値未満T_th2であって、演算した温度低下率が温度低下率閾値δ_th以上であると判定した場合に、温風生成部36を駆動する制御ユニット17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば現金自動取引装置などの紙葉類取扱装置に係り、特に、屋外設置型の紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関などには、利用者との取引に応じて取引媒体(紙幣、カード、及び通帳など)の出し入れを行う現金自動取引装置(ATM:Automated Teller Machine)が設置されている。この現金自動取引装置は、建物内に設置したものがよく知られているが、それ以外に、例えば建物の外壁に埋め込まれた状態(詳細には、入出金口、カードスロット、及び通帳スロットなどが設けられたフロントパネルのみを屋外に露出した状態)で設置したものも知られている。このような屋外設置型の現金自動取引装置においては、屋外環境の影響を受ける。具体的には、例えば、入出金口を開閉するシャッタに雨滴が付着したり、雪が積もったりする。また、例えば、シャッタは結露したり、凍結したりする。また、例えば利用者との取引に応じてシャッタが開放されれば、装置内部に外気(冷気)が流入する。そのため、装置内の温度が低下し、場合によっては支障をきたし、正常に作動しなくなる恐れがあった。
【0003】
そこで、例えば、装置内(筐体内)の温度を計測する温度検知器と、装置内の温度を上昇させる温風ヒータと、温度検知器の計測温度に基づいて温風ヒータ等をオン−オフ制御する主制御部とを備えたものが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の従来技術では、設定期間(例えば12月1日から2月末)及び設定時間(例えば6時から9時)において、温度検知器の計測温度が例えば−10℃以下となる場合、温風ヒータをオン制御するようになっている。
【0004】
また、取引媒体を搬送する搬送部は、例えば主としてゴム類で形成された搬送ベルトや繰り出しローラを有し、モータによって駆動するように構成されている。そして、搬送部の温度が低下すると、モータのトルクが低下する。また、ゴム類が硬化し、搬送ベルトと取引媒体との間の摩擦力や繰り出しローラと取引媒体との間の摩擦力が低下する。そのため、搬送不良(例えばスリップ、傾斜、ジャム等)が生じやすい。そこで、例えば、搬送部の温度を(又は外気温度を搬送部の温度と擬制して)測定する温度センサと、この測定温度に従って搬送部の動作モードを切り換える制御部とを備えたものが提唱されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の従来技術では、例えばメカリセット処理(搬送部の動作チェック)、入金取引処理、や出金取引処理において、測定温度が5℃以下となる場合、低温モードを選択し、モータを低速回転で回転させるようになっている。これにより、搬送不良の発生を抑えるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−251128号公報
【特許文献2】特開2000−348237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。すなわち、上記特許文献1に記載の従来技術では、計測温度が所定の温度閾値(例えば−10℃)以下であるか否かを判定し、計測温度が所定の温度閾値以下であると判定した場合に、温風ヒータをオン制御するようになっている。この温度閾値は、支障をきたすものとして推定される限界温度に対し、温風ヒータによる温度上昇の応答性(遅れ)等を考慮して大きめに設定する必要がある。また、現金自動取引装置においては、例えばシャッタが閉塞状態であれば、周囲環境による影響が小さく、装置内の温度も比較的緩やかに低下する。一方、例えば利用者との取引に応じてシャッタが開放されれば、外気が装置内部に流入して、装置内の温度が比較的急激に低下する。そのため、前述した温度閾値は、例えばシャッタの開放動作が行われる場合を想定し、その場合の温度低下率を考慮して、より大きめに設定する必要がある。しかし、このように温度閾値を設定すると、利用者との取引が行われないでシャッタが閉塞状態である場合(すなわち、温度低下率が比較的小さい場合)には、温風ヒータを必要以上に駆動することになってしまう。そのため、省エネの点で改善の余地があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の従来技術では、測定温度が所定の温度閾値(例えば5℃)以下であるか否かを判定し、測定温度が所定の温度閾値以下であると判定した場合に、搬送部の動作モードとして低温モードを選択し、モータを低速回転で回転させるようになっている。この温度閾値は、上述と同様、例えばシャッタの開放動作が行われる場合を想定し、その場合の温度低下率の大きさを考慮して、より大きめに設定する必要がある。しかし、このように温度閾値を設定すると、例えば利用者との取引が行われないでシャッタが閉塞状態である場合(すなわち、温度低下率が比較的小さい場合)には、モータの回転速度(言い換えれば、搬送速度)を必要以上に低下させることになってしまう。そのため、取引処理時間の短縮の点で改善の余地があった。
【0008】
本発明の第1の目的は、シャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下する場合にも動作不良の発生を抑えることができ、且つ省エネを図ることができる紙葉類取扱装置を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、シャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下する場合にも動作不良の発生を抑えることができ、且つ取引処理時間の短縮を図ることができる紙葉類取扱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記第1の目的を達成するために、本発明は、紙葉類を収納するとともに紙葉類の出し入れを行う紙葉類取扱装置において、温風を生成する温風生成手段と、前記温風生成手段で生成した温風を前記紙葉類取扱装置内の対象部位に供給する温風流路手段と、前記紙葉類取扱装置内の温度を検出する温度検出器と、前記温度検出器で検出した温度の低下率を演算する温度低下率演算手段と、予め設定された第1の温度閾値、この第1の温度閾値より大きくなるように予め設定された第2の温度閾値、及び予め設定された温度低下率閾値を記憶する記憶手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であるか否かを判定し、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であると判定した場合に、さらに前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段が判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記温風生成手段を駆動する温風制御手段とを備える。
【0011】
このような本発明においては、装置内の温度が第1の温度閾値以上で第2の温度閾値未満であって、温度低下率が温度低下率閾値以上である場合(すなわち、例えばシャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下するような場合)、温風生成手段を駆動する。これにより、装置内の温度低下を抑えることができ、動作不良の発生を抑えることができる。一方、装置内の温度が第1の温度閾値以上で第2の温度閾値未満であって、温度低下率が温度低下率閾値未満である場合(すなわち、例えばシャッタの開放動作が行われないで内部温度が比較的緩やかに低下するような場合)、温風生成手段を駆動しない。これにより、温風生成手段を必要以上に駆動しないので、省エネを図ることができる。その後、例えば装置内の温度が第1の温度閾値未満となるか、若しくは温度低下率が温度低下率閾値以上となれば、温風生成手段を駆動する。これにより、装置内の温度低下を抑えることができ、動作不良の発生を抑えることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、上記第2の目的を達成するために、好ましくは、モータによって駆動するモータ駆動機構と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段が判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記モータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換えるモータ制御手段とを備える。
【0013】
このような本発明においては、装置内の温度が第1の温度閾値以上で第2の温度閾値未満であって、演算した温度低下率が温度低下率閾値以上である場合(すなわち、例えばシャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下するような場合)、モータ駆動機構(詳細には、例えば紙葉類の搬送機構やシャッタの開閉機構など)の動作モードを低速モード(通常モードに比べてモータの速度を低下させるモード)に切り換える。これにより、温度低下に伴うモータのトルク低下等に対処することができ、動作不良の発生を抑えることができる。一方、装置内の温度が第1の温度閾値以上で第2の温度閾値未満であって、演算した温度低下率が温度低下率閾値未満である場合(すなわち、例えばシャッタの開放動作が行われずに内部温度が比較的緩やかに低下するような場合)、モータ駆動機構の動作モードを通常モードとする。これにより、モータの動作速度を必要以上に低下させないので、取引処理時間の短縮を図ることができる。その後、装置内の温度が第1の温度閾値未満となるか、若しくは温度低下率が温度低下率閾値以上となれば、モータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換える。これにより、動作不良の発生を抑えることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記温風流路手段は、紙葉類出入口の近傍に温風を供給するように構成された第1温風流路部を有する。
【0015】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記温風流路手段は、吹出口の位置及び吹出方向が変更可能なように構成された第2温風流路部を有する。
【0016】
(5)上記第2の目的を達成するために、本発明は、紙葉類を収納するとともに紙葉類の出し入れを行う紙葉類取扱装置において、モータによって駆動するモータ駆動機構と、前記紙葉類取扱装置内の温度を検出する温度検出器と、前記温度検出器で検出した温度の低下率を演算する温度低下率演算手段と、予め設定された第1の温度閾値、この第1の温度閾値より大きくなるように予め設定された第2の温度閾値、及び予め設定された温度低下率閾値を記憶する記憶手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であるか否かを判定し、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であると判定した場合に、前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段で判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記モータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換えるモータ制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下する場合にも動作不良の発生を抑えることができ、且つ省エネを図ることができる。また、本発明によれば、シャッタの開放動作が行われて内部温度が比較的急激に低下する場合にも動作不良の発生を抑えることができ、且つ取引処理時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態における現金自動取引装置の全体構造を表す斜視図(但し、便宜上、温風ユニットを図示せず)である。
【0019】
この図1において、現金自動取引装置は、筐体11と、取引媒体(詳細には、キャッシュカード、帳票、通帳、及び紙幣など)を取り扱う各種ユニット(詳細には、カード・帳票取扱ユニット12、通帳取扱ユニット13、及び紙幣取扱ユニット14)と、利用者が取引情報を入力操作可能な操作ユニット15と、装置内の対象部位に温風を供給する温風ユニット16(後述の図5参照)と、これらユニット12〜16を制御する制御ユニット17とを備えている。操作ユニット15は、種々の情報を表示する表示ディスプレイ15aと、この表示ディスプレイ15aに表示された情報に基づいて利用者が入力操作する操作ボタン15bとを有している。
【0020】
カード・帳票取扱ユニット12は、カード・帳票スロット12aを有し、このカード・帳票スロット12aに挿入されたキャッシュカード(磁気カード)の読込処理を行ったり、取引結果を示す帳票をカード・帳票スロット12aから発行したりするようになっている。通帳取扱ユニット13は、通帳スロット13aを有し、この通帳スロット13aに挿入された通帳に貼付された磁気ストライプの情報を読み書きしたり、通帳に印字したりするようになっている。紙幣取扱ユニット14は、入出金口18を有し、この入出金口18を介して紙幣の入金及び出金を行うようになっている(詳細は後述)。
【0021】
制御ユニット17は、詳細を図示しないが、記憶部(例えばROMやRAM)及び演算処理部(例えばCPU)を備えたマイクロコンピュータとして構成されており、予め記憶されたプログラムに基づいてユニット12〜16を制御するようになっている。また、制御ユニット17は、詳細を図示しないが、通信回線を介して外部のホストコンピュータと通信可能にしている。
【0022】
なお、本実施形態の現金自動取引装置は、建物の外壁に埋め込まれた状態(図示せず)で設置された屋外設置型のものであり、フロントパネル11aとともに、上述したカード・帳票スロット12a、通帳スロット13a、表示ディスプレイ15a、操作ボタン15b、及び入出金口18が屋外に露出されている。
【0023】
次に、紙幣取扱ユニット14の詳細構造を説明する。図2は、紙幣取扱ユニット14の全体構造を表す断面図である。図3は、紙幣取扱ユニット14の上部の詳細構造を表す斜視図であり、入出金口18が半閉じの状態を示す。図4は、シャッタ開閉機構の詳細構造を表す斜視図である。
【0024】
紙幣取扱ユニット14は、大別して、上側の紙幣取引部19と、下側の紙幣保管部20とで構成されている。
【0025】
紙幣取引部19は、利用者が紙幣Pを出し入れする入出金口18と、紙幣Pの金種や真偽を判定する鑑別機構21と、紙幣Pを一時的に収納する一時スタッカ22と、これら入出金口18、鑑別機構21、及び一時スタッカ22の間で紙幣Pを搬送する搬送ライン23とを備えている。搬送ライン23(搬送ガイド)は、詳細を図示しないが、平ベルトやタイミングベルト、ローラ、ギアを用いており、これらはステッピングモータなどのモータ24によって駆動されるようになっている。
【0026】
紙幣取扱ユニット14の上部にはシャッタフレーム25が設けられており、このシャッタフレーム25の開口に対応して入出金口18が設けられている。また、シャッタフレーム25の内側には、シャッタ26が前後方向にスライド可能に設けられ、このシャッタ26をスライドさせて入出金口18を開閉するシャッタ開閉機構27が設けられている。シャッタ開閉機構27は、例えば、シャッタ26の下面側に配置され、シャッタ26をスライド可能に支持する一対のベアリング28と、シャッタ26の上面側に配置され、片方のベアリング28との間でシャッタ26を狭持する摩擦ゴムローラ29と、減速用の歯車対30等を介して摩擦ゴムローラ29を回転させるモータ31とで構成されている。そして、例えばモータ31を正方向に回転すると、摩擦ゴムローラ29が回転してシャッタ26を前方向にスライドさせ、入出金口18を閉じ状態とする。一方、例えばモータ31を逆方向に回転すると、摩擦ゴムローラ29が回転してシャッタ26を後方向にスライドさせ、入出金口18を開き状態とするようになっている。
【0027】
紙幣保管部20は、紙幣Pを金種毎に収納する複数の還流庫32と、入金紙幣のうち出金紙幣として取り扱わない金種や鑑別機構21で異常と判定された紙幣Pを収納する入金庫33と、これら複数の還流庫32及び入金庫33と搬送ライン23との間で紙幣Pを搬送する搬送ライン34とを備えている。搬送ライン34(搬送ガイド)は、詳細を図示しないが、平ベルトやタイミングベルト、ローラ、ギアを用いており、これらはステッピングモータなどのモータによって駆動されている。
【0028】
そして、例えば入金の場合、入出金口18に投入された紙幣Pは、入出金口18の下方に一枚ずつ繰り出されて、搬送ライン23へ搬送される。その後、鑑別機構21で紙幣Pの判定が行われ、正常と判定された紙幣Pは一時スタッカ22に収納され、一方、異常と判定された紙幣Pは入出金口18に返却される。その後、鑑別機構21で計数した金額が表示ディスプレイ15a(前述の図1参照)に表示されて利用者に確認されると、一時スタッカ22に収納された紙幣Pは、搬送ライン23へ一枚ずつ放出される。その後、鑑別機構21で再び紙幣Pの判定が行われ、正常と判定された紙幣Pは、搬送ライン34を介して金種ごとに還流庫32へ収納される。一方、異常と判定された紙幣Pは、搬送ライン34を介して入金庫33へ収納されるようになっている。
【0029】
また、例えば出金の場合、利用者が操作ボタン15bで入力した金額に応じて、還流庫32から紙幣が1枚ずつ繰り出され、搬送ライン34を介して搬送ライン23へと搬送される。その後、鑑別機構21で紙幣Pの判定が行われ、正常と判定された紙幣Pは入出金口18に収納される。一方、異常と判定された紙幣Pは一時スタッカ22に収納され、利用者との取引の終了後、搬送ライン34を介して入金庫33へ収納されるようになっている。
【0030】
次に、温風ユニット16の詳細構造を説明する。図5は、温風ユニット16の構造を表す現金自動取扱装置の斜視図(但し、便宜上、フロントパネル11a及びユニット12,13,15を図示せず)である。図6は、温風生成部及び第2温風流路部の詳細構造を表す斜視図であり、図7(a)及び図7(b)は、第1温風流路部の詳細構造を表す斜視図である。
【0031】
これら図5〜図7において、筐体11内には、紙幣取扱ユニット14における紙幣取引部19と紙幣保管部20との間の境界とほぼ同じ高さ位置で、内部空間を上下に区画する仕切り板35が設けられている。この仕切り板35には、上部空間と下部空間とを連通する複数の連通孔35aが形成されている。なお、上述したカード・帳票取扱ユニット12、通帳取扱ユニット13、及び操作ユニット15は、上部空間に配置されており(前述の図1参照)、制御ユニット17は、下部空間に配置されている。
【0032】
温風ユニット16は、筐体11内の上部空間に配置され温風を生成する温風生成部36と、この温風生成部36で生成された温風を紙幣取扱ユニット14の入出金口18の近傍に供給する第1温風流路部37と、温風生成部36で生成した温風を筐体11の内部空間(上部空間及び下部空間のうちの少なくとも一方)に供給する第2温風流路部38とで構成されている。
【0033】
温風生成部36は、仕切り板35に対して上方に離間する位置(詳細には、例えば紙幣取扱ユニット14の鑑別機構21とほぼ同じ上下方向位置及び前後方向位置)に、且つ流れ方向が前後方向となるように配置され、紙幣取扱ユニット14の側面(詳細には、モータ24を収納する収納部39の側面)に固定治具40を介して取り付けられた矩形状のダクト41と、このダクト41内に配置されたヒータ(図示せず)及びファン(図示せず)と、ダクト41の上流側(後側)に接続されたフィルタボックス42と、このフィルタボックス42のスロットに挿入された平板状のフィルタ43と、ダクト41の下流側(前側)に接続された略円管状の分岐ダクト44とを有している。そして、ダクト41内のヒータによって生成した暖気を、ダクト41内のファンによって温風として送風するようになっている。
【0034】
フィルタボックス42内のフィルタ43は、例えば紙やコットン、スポンジ等の材質で構成されており、ダクト41に導出する空気中の紙粉や粉塵を取り除くようになっている。これにより、ダクト41内での紙粉による発火を抑制することが可能となっている。また、受光センサの汚れや、粉塵による摩擦低下などの問題も解決することが可能となっている。なお、フィルタ43は、定期的に交換することが可能である。
【0035】
第1温風流路部37は、シャッタフレーム25の内側(言い換えれば、シャッタ26の内側)で入出金口18の外周部に位置するように設けられたダクト45と、このダクト45の入口部と分岐ダクト44との間に接続されたダクト46と、ダクト45の出口部に接続され、筐体11内の上部空間に温風を放出するダクト47とを有している。なお、ダクト47から放出された温風は、紙幣取扱ユニット14の周囲を流れてフィルタボックス42に導入されるようになっている(図5中矢印W参照)。
【0036】
ダクト45は、分岐ダクト44から供給された温風を入出金口18の前方側及び後方側に分流し、それら分流した温風を合流させるような流路構造で形成されており、流路断面は扁平状に形成されている。そして、ダクト43に温風を流すことにより、入出金口18、シャッタフレーム25、シャッタ26、及びシャッタ開閉機構27を温めることが可能となり、特に、例えばシャッタ26が開放された状態では、装置内部に流入する外気を温めることが可能となっている。
【0037】
第2温風流路部38は、分岐ダクト44にそれぞれ接続された例えば2つのフレキシブルパイプ48を有している。フレキシブルパイプ48は、この主のものとして公知のものであり、吹出口の位置及び吹出方向が変更可能なように形成されたものである。そして、例えば、一方のフレキシブルパイプ48の吹出口(先端開口)は、筐体11内の上部空間に配置されるとともに、紙幣取扱ユニット14の紙幣取引部19に向けられて温風を供給し、他方のフレキシブルパイプ48の吹出口は、筐体11内の下部空間に配置されるとともに、紙幣取扱ユニット14の紙幣保管部20に向けられて温風を供給するようになっている。また、詳細を図示しないが、各フレキシブルパイプ48の上流側(詳細には、各フレキシブルパイプ48が接続される分岐ダクト44の分岐管部)には開閉弁が設けられており、各フレキシブルパイプ48の吹出口には、開口率を調整可能なガラリが設けられている。これにより、各フレキシブルパイプ48における流量を調整可能とし、しいてはダクト45における流量を調整可能としている。なお、本実施形態では、ダクト45の流量割合は1/3以上となっている。
【0038】
仕切り板35上には、筐体11内の温度を検出する温度検出器49が設けられており、この温度検出器49の検出信号が制御ユニット14に出力されるようになっている。
【0039】
制御ユニット14は、温度検出器49からの検出信号に基づいて筐体11内の温度の経時変化を取得し、そのデータを記憶するようになっている。また、制御ユニット14は、予め設定された第1の温度閾値T_th1(例えば−10℃)、この第1の温度閾値T_th1より大きくなるように予め設定された第2の温度閾値T_th2(例えば−5℃)、及び温度低下率閾値δ_thを記憶しており、これら閾値と筐体11内の温度及びその温度低下率とを比較判定し(図8参照)、その判定結果に基づいて温風ユニット16のヒータ及びファンをON・OFF制御するとともに、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構(上述した搬送ライン23,34及びシャッタ開閉機構27等)の動作モードを切り換えるようになっている。このような制御手順を図9により説明する。図9は、制御ユニット17における上記制御処理内容を表すフローチャートである。
【0040】
制御ユニット17は、まずステップ100において、時間間隔Δt毎に、温度検出器49からの検出信号に基づいて筐体11内の温度Tiを取得し、これを記憶する。そして、ステップ110に進み、記憶された前回の温度Ti-1と今回の温度Tiとを用いて、温度低下率δi{=(Ti-1−Ti)/Δt}を演算する。その後、ステップ120に進み、温度Tiが第1の温度閾値T_th1未満であるか否かを判定する。例えば温度Tiが第1の温度閾値T_th1未満である場合は、ステップ120の判定が満たされ、ステップ130に移る。ステップ130では、温風ユニット16のヒータ及びファンをONとする。そして、ステップ140に進み、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを低速モード(通常モードに比べてモータの速度を低下させるモード)に切り換える。
【0041】
一方、例えば温度Tiが第1の温度閾値T_th1以上である場合は、ステップ120の判定が満たされず、ステップ150に移る。ステップ150では、温度Tiが第2の温度閾値T_th2未満であるか否かを判定する。例えば温度Tiが第2の温度閾値T_th2未満である場合は、ステップ150の判定が満たされ、ステップ160に移る。ステップ160では、温度低下率δiが温度低下率閾値δ_th以上であるか否かを判定する。例えば温度低下率δiが温度低下率閾値δ_th以上である場合は、ステップ160の判定が満たされ、前述したステップ130及び140に移って同様の手順を行う。
【0042】
ステップ150にて、例えば温度Tiが第2の温度閾値T_th2以上である場合は、その判定が満たされず、ステップ170に移る。ステップ170では、温風ユニット16のヒータ及びファンをOFFとする。そして、ステップ180に進み、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを通常モードに切り換える。また、ステップ160にて、例えば温度低下率δiが温度低下率閾値δ_th未満である場合は、その判定が満たされず、前述したステップ170及び180に移って同様の手順を行う。
【0043】
ステップ140又は180が終了すると、ステップ190に進み、時間tが規定時間(制御対象となる時間帯で例えば8時間)に達したか否かを判定する。例えば時間tが規定時間に達していない場合は、ステップ190の判定が満たされず、前述したステップ100に戻って同様の手順を行う。一方、例えば時間tが規定時間に達した場合は、ステップ190の判定が満たされて、終了する。
【0044】
なお、本実施形態においては、前述の図5及び図6で示すように温度検出器49を1箇所に設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば筐体11内の温度が低下しやすい複数の箇所にそれぞれ設けてもよい。そして、制御ユニット17は、例えば複数の温度検出器49のうち最低温度が検出されたものを選択し、この選択した温度検出器49で検出された温度の経時変化に対して上記同様の制御を行ってもよい。
【0045】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。
【0046】
本実施形態においては、装置内の温度が第1の温度閾値T_th1以上で第2の温度閾値T_th2未満であって、温度低下率が温度低下率閾値δ_th以上である場合(すなわち、例えば利用者との取引に応じてシャッタ26の開放動作が行われて装置内に外気が流入し、内部温度が比較的急激に低下する場合)、温風ユニット16のヒータ及びファンをONとする。これにより、装置内の温度低下を抑えることができ、動作不良の発生を抑えることができる。また同時に、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換える。これにより、温度低下に伴うモータのトルク低下(又は、例えば、ゴム類の硬化、ギアの収縮による噛み合いの悪化、若しくは潤滑油の硬化による負荷増大)等に対処することができ、動作不良の発生を抑えることができる。
【0047】
一方、装置内の温度が第1の温度閾値T_th1以上で第2の温度閾値T_th2であって、温度低下率が温度低下率閾値δ_th未満である場合(すなわち、例えばシャッタ26の開放動作が行われないで内部温度が比較的緩やかに低下する場合)、温風ユニット16のヒータ及びファンをOFFとする。これにより、温風ユニット16のヒータ及びファンを必要以上に駆動しないので、省エネを図ることができる。また同時に、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを通常モードとする。これにより、モータの動作速度を必要以上に低下させないので、取引処理時間の短縮を図ることができる。その後、例えば装置内の温度が第1の温度閾値T_th1未満となるか、若しくは温度低下率が温度低下率閾値δ_th以上となれば、温風ユニット16のヒータ及びファンをONとし、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換える。これにより、動作不良の発生を抑えることができる。
【0048】
また、入出金口18の近傍領域は、例えばシャッタ26の開放動作が行われた場合に外気が流入することから、温度が低下しやすい。また、例えばシャッタ26の開放動作が行われない場合でも、シャッタ26に雨滴が付着したり、雪が積もったりするため、温度が低下しやすい。本実施形態においては、温風ユニット16は、入出金口18の近傍領域に温風を流すダクト45を設けることにより、入出金口18の近傍領域を温めることができ、しいては装置の内部空間全体の温度低下を抑えることができる。
【0049】
なお、上記一実施形態においては、温風ユニット16のダクト45は、入出金口18の前方側及び後方側に温風を分流し、それら分流した温風を合流させるような流路構造で形成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば図10に示すように、入出金口18の外周部を一周するような流路構造で形成してもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、上記一実施形態においては、前述の図9で示すように、制御ユニット17は、装置内の温度に応じて、温風ユニット16のヒータ及びファンをON・OFF制御するとともに、紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを切り換える場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、装置内の温度に応じて温風ユニット16のヒータ及びファンをON・OFF制御するだけとしてもよいし、また例えば、装置内の温度に応じて紙幣取扱ユニット14におけるモータ駆動機構の動作モードを切り換えるだけとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態における現金自動取引装置の全体構造を表す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における紙幣取扱ユニットの全体構造を表す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における紙幣取扱ユニットの上部の詳細構造を表す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるシャッタ開閉機構の詳細構造を表す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態における温風ユニットの構造を表す現金自動取引装置の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態における温風ユニットを構成する温風生成部及び第2温風流路部の詳細構造を表す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態における温風ユニットを構成する第1温風流路部の詳細構造を表す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態における制御ユニットの温度判定処理を説明するためのタイムチャートである。
【図9】本発明の一実施形態における制御ユニットの温風制御及びモータ制御の処理内容を表すフローチャートである。
【図10】本発明の一変形例による第1温風流路部の詳細構造を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
14 紙幣取扱ユニット
16 温風ユニット
17 制御ユニット(温度低下率演算手段、記憶手段、第1判定手段、第2判定手段、温風制御手段、モータ制御手段)
18 入出金口
23 搬送ライン(モータ駆動機構)
24 モータ
27 シャッタ開閉機構(モータ駆動機構)
34 搬送ライン(モータ駆動機構)
36 温風生成部(温風生成手段)
37 第1温風流路部(温風流路手段)
38 第2温風流路部(温風流路手段)
49 温度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を収納するとともに紙葉類の出し入れを行う紙葉類取扱装置において、
温風を生成する温風生成手段と、
前記温風生成手段で生成した温風を前記紙葉類取扱装置内の対象部位に供給する温風流路手段と、
前記紙葉類取扱装置内の温度を検出する温度検出器と、
前記温度検出器で検出した温度の低下率を演算する温度低下率演算手段と、
予め設定された第1の温度閾値、この第1の温度閾値より大きくなるように予め設定された第2の温度閾値、及び予め設定された温度低下率閾値を記憶する記憶手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であるか否かを判定し、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であると判定した場合に、さらに前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段が判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記温風生成手段を駆動する温風制御手段とを備えたことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙葉類取扱装置において、モータによって駆動するモータ駆動機構と、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段が判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記モータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換えるモータ制御手段とを備えたことを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の紙葉類取扱装置において、前記温風流路手段は、紙葉類出入口の近傍に温風を供給するように構成された第1温風流路部を有することを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の紙葉類取扱装置において、前記温風流路手段は、吹出口の位置及び吹出方向が変更可能なように構成された第2温風流路部を有することを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項5】
紙葉類を収納するとともに紙葉類の出し入れを行う紙葉類取扱装置において、
モータによって駆動するモータ駆動機構と、
前記紙葉類取扱装置内の温度を検出する温度検出器と、
前記温度検出器で検出した温度の低下率を演算する温度低下率演算手段と、
予め設定された第1の温度閾値、この第1の温度閾値より大きくなるように予め設定された第2の温度閾値、及び予め設定された温度低下率閾値を記憶する記憶手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であるか否かを判定し、前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であると判定した場合に、前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値未満であると前記第1判定手段で判定した場合に、また前記温度検出器で検出した温度が前記第1の温度閾値以上で前記第2の温度閾値未満であって前記温度低下率演算手段で演算した温度低下率が前記温度低下率閾値以上であると前記第2判定手段が判定した場合に、前記モータ駆動機構の動作モードを低速モードに切り換えるモータ制御手段とを備えたことを特徴とする紙葉類取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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