説明

紙葉類識別機

【課題】紙幣識別機の小型化、および、その組立て、メンテナンスなどにおける作業性の向上を達成すること。
【解決手段】紙幣識別機1の紙幣搬送用モータ26はブラシレスモータであり、モータドライバIC50、モータ回転パルス出力回路61が内蔵されてユニット化されている。紙幣搬送用モータ26の組み付け作業においては、紙幣搬送用モータ26を紙幣識別機1の本体ユニット2に組み付けた後に、回路基板40Aのコネクタ62に、紙幣搬送用モータ26から引き出されているモータ配線基板63を接続するだけよい。組み付け作業を簡単に行うことができ、モータの交換、メンテナンス時の作業性も改善される。回路基板40Aには、モータドライバIC50、モータ回転位置検出用のホトインタラプタなどの部品の設置スペースを確保しておく必要がないので、回路基板40Aを小型にでき、これが搭載されている紙幣識別機1の小型化に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入された紙幣などの紙葉類を、ベルト・プーリ式の搬送機構によって搬送路内に送り込み、その真偽、種類などを識別する紙葉類識別機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技店における遊技台の間には、遊技台で用いるパチンコ玉などの遊技媒体を貸し出すための遊技台用台間機が配置されている。遊技台用台間機には紙幣識別機が搭載されており、挿入された紙幣を識別して遊技媒体の貸し出しを行うことが出来るようになっている。特許文献1にはベルト・プーリ式の搬送機構を備えた紙幣識別機が開示されている。
【0003】
ベルト・プーリ式の搬送機構では、駆動プーリと従動プーリの間に、紙幣搬送ベルトが張架されており、駆動プーリには駆動軸が連結され、駆動軸の軸端に固着した動力伝達用歯車を介して、紙幣搬送用モータの回転駆動力が駆動プーリに伝達されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−7148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5(a)は、従来の紙幣搬送用モータおよび、その周辺部品を示す説明図である。紙幣搬送用モータとしては一般にブラシ付きモータが用いられている。また、紙幣搬送用モータ100の回転軸101には、そのモータ回転信号を得るための羽付きギヤ102が取り付けられており、紙幣識別機の回路基板103には、紙幣搬送用モータ100のモータドライバIC104、および、羽付きギヤ102の回転を検出するためのホトインタラプタ105が搭載されている。また、紙幣搬送用モータ100から引き出されているモータ配線基板106が回路基板103上のコネクタ107に接続されている。
【0005】
このように、紙幣識別機の回路基板103には、モータドライバIC104およびホトインタラプタ105を搭載するためのスペースが必要であり、回路基板103の小型化の妨げとなっている。また、紙幣搬送用モータ100の組み付けに当たっては、これらの各部品の組み付け作業および結線作業が必要であり、作業効率が悪い。このため、モータ交換時およびメンテナンス時の作業性も良くない。さらには、ブラシ付きモータであるので、寿命およびノイズを考慮した設計を行う必要がある。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、設置スペースが少なくて済み、組み付け・メンテナンス・交換などの作業を効率良く行うことのできる搬送用モータを備えた紙葉類識別機を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、識別対象の紙葉類を搬送路に沿って搬送するための搬送ベルトを駆動するための搬送用モータを備えた紙葉類識別機において、前記搬送用モータは、モータドライバIC、および、モータ回転位置を表すパルス信号を発生するモータ回転パルス出力回路が内蔵されて一体化されているブラシレスモータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙葉類識別機では、搬送用モータとして、モータドライバICおよびモータ回転パルス出力回路が内蔵されたブラシレスモータを用いている。これにより、紙葉類識別機の回路基板を小型にできるので、当該回路基板が搭載されている紙葉類識別機の小型化に有利である。
【0009】
また、モータドライバICおよびモータ回転パルス出力回路が内蔵されてユニット化されている搬送用モータの組み付け時には、モータドライバIC、モータ回転位置検出用のホトインタラプタなどの周辺部品の組み付け、結線作業が不要になるので、作業性が向上する。よって、搬送用モータの交換、メンテナンス性も向上する。
【0010】
さらに、ブラシレスモータを用いることにより、高寿命化、ノイズ防止に有利である。
【0011】
これに加えて、従来のモータ回転検出用のホトインタラプタは、発光素子の劣化、受発光面の汚れによる誤動作を考慮する必要があったが、本発明ではモータ内蔵のモータ回転パルス出力回路からの信号を用いているので、このような点を考慮する必要がないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した紙葉類識別機の実施の形態を説明する。
【0013】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る紙幣識別機を示す平面図であり、図2は開閉ユニットを開けた状態での紙幣識別機の斜視図である。
【0014】
紙幣識別機1は、本体ユニット2と、この本体ユニット2の表面に形成された装置前後方向に延びている凹部3に収納されている開閉ユニット4と、本体ユニット2の紙幣挿入口側の前端部に取り付けられている挿入口蓋ユニット5とを有している。開閉ユニット4は、その後端部両側に形成した支軸6a、6bを中心として、凹部3に収納された閉じ位置から所定の角度の範囲で開閉可能である。また、開閉ユニット4の前端部の両側に形成した係合レバー7a、7bが、本体ユニット2に形成された係合溝7c、7dに差し込まれており、これにより開閉ユニット4が閉じ位置にロックされている。左右の係合レバー7a、7bを内方に引き込むことにより、係合レバー7a、7bが係合溝7c、7dから外れて開閉ユニット4を開けることが可能になる。
【0015】
図3は紙幣識別機1の内部構成を示す断面図である。この図も参照して、紙幣識別機1の内部構成を説明する。紙幣識別機1の本体ユニット2の前面には紙幣挿入口8が形成されており、この紙幣挿入口8は、本体ユニット2の前端部と挿入口蓋ユニット5との間に形成されている紙幣挿入路9を介して、本体ユニット2と開閉ユニット4の間に形成されている紙幣搬送路10に通じている。紙幣搬送路10の後端は紙幣排出口10aとなっており、ここから排出された紙幣は不図示の紙幣収納部に収納される。また、本体ユニット2には回路基板40Aが搭載されている。
【0016】
紙幣挿入路9に続く紙幣搬送路10の上流側の部位には、本体ユニット2の側に、紙幣の挿入を検出するために左右一対の入口センサ9a、9bが配置されている。入口センサ9a、9bとしては、ホトカプラ、メカニカルスイッチを備えたものを用いることができる。これらの入口センサ9a、9bの下流側には、ソレノイド式の紙幣引き抜き防止機構20が本体ユニット2の側に組み込まれており、この紙幣引き抜き防止機構20は、紙幣搬送路10に出没して当該紙幣搬送路10を封鎖状態および開放状態に切り換えるシャッタ片20aを備えている。
【0017】
シャッタ片20aの下流側の紙幣搬送路10の部位には、当該紙幣搬送路10を搬送される紙幣の光学的特徴である光透過パターンを検出するための4組の透過型ホトセンサ11〜14が幅方向に配置されている。これらの透過型ホトセンサの発光素子11a〜14aは開閉ユニット4に搭載され、受光素子11b〜14bは本体ユニット2に搭載されている。これらの設置位置よりも下流側の紙幣搬送路10の部分には紙幣の磁気特性を検出するための磁気ヘッド15が配置されている。磁気ヘッド15は本体ユニット2に搭載されており、この磁気ヘッド15の検出面に紙幣を押し付けるための押圧ローラ16が開閉ユニット4に搭載されている。
【0018】
紙幣排出口10aの近傍における本体ユニット2の側には、排出される紙幣を検出するために左右一対の出口センサ17a、17bが配置されている。これら出口センサとしては、ホトカプラ、メカニカルスイッチを備えたものを用いることができる。
【0019】
紙幣を紙幣搬送路10に沿って搬送するための搬送機構はベルト・プーリ式のものであり、左右一対の駆動側プーリ21a、21bと、左右三対の従動側プーリ22a、22b、23a、23b、24a、24bと、これら駆動側プーリ21aおよび従動側プーリ22a〜24aの間、および駆動側プーリ21bおよび従動側プーリ22b〜24bの間にそれぞれ張架した左右一対の搬送ベルト25a、25bとを備えている。これらの各部は、本体ユニット2の側に搭載されており、駆動側プーリ21a、21bは紙幣搬送路10の下流端側に配置され、従動側プーリ22a、22b、23a、23bは、駆動側プーリ21a、21bと磁気ヘッド15の間に配置されており、従動側プーリ24a、24bは、発光素子11a〜14aよりも紙幣挿入口8の側に配置されている。
【0020】
また、搬送機構は、開閉ユニット4の側に搭載されている4組の左右一対の押圧ローラ31a、31b、32a、32b、33a、33bおよび34a、34bを備えている。これらは、上下方向にスライド可能、かつ、回転自在の状態で開閉ユニット4に搭載されており、それぞれ、搬送ベルト25a、25bの上から、駆動側プーリ21a、21b、従動側プーリ22a、22b、23a、23bおよび24a、24bにばね力によって押圧されている。
【0021】
さらに、搬送機構は、図1に示すように、本体ユニット2における凹部3の側方の部位に内蔵されている紙幣搬送用モータ26を備えている。この紙幣搬送用モータ26の回転力が、不図示の減速歯車列および駆動軸28を介して、駆動側プーリ21a、21bに伝達されるようになっている。
【0022】
(制御系)
図4は紙幣識別機1の制御系を示す概略ブロック図である。制御系は、本体ユニット2の回路基板40Aに搭載されており、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロコンピュータを中心に構成された制御部40を備えている。制御部40は、挿入された紙幣の搬送制御を行う搬送制御部41、透過型ホトセンサ11〜14の発光制御を行う発光制御部42、および、透過型ホトセンサ11〜14、磁気ヘッド15からの検出信号に基づき挿入された紙幣Pの真偽、種類を識別する識別部43を備えている。
【0023】
搬送制御部41は、入口センサ9a、9bによって紙幣Pが挿入されたことを検出すると、紙幣引き抜き防止機構20のソレノイド20bを励磁してシャッタ片20aを開かせる。同時に、モータドライバIC50を介して紙幣搬送用モータ26を駆動し、挿入された紙幣Pの搬送を開始させる。発光制御部42は、紙幣の搬送が開始されると、透過型ホトセンサ11〜14の発光素子11a〜14aをドライバ51〜54を介して駆動して発光させる。各透過型ホトセンサ11〜14の受光素子11b〜14bの検出信号および磁気ヘッド15の検出信号は、それぞれ、信号処理回路55〜59を介して、識別部43に入力される。
【0024】
識別部43は、メモリ44に記憶保持されている光透過パターン、磁気パターンに基づき、挿入された紙幣の識別を行う。搬送制御部41は、紙幣の送り込み動作を継続させ、予め定められている送り込み位置(エスクロ位置)まで送り込む。送り込み位置は、送り込まれた紙幣の後端が磁気ヘッド15の検出位置を通過し終えた位置である。搬送制御部41は、紙幣搬送用モータ26の回転に伴ってモータ回転パルス出力回路61から出力されるパルス信号に基づき、紙幣搬送用モータ26の回転量を検出し、これに基づき、紙幣の搬送量を制御している。
【0025】
搬送制御部41は、紙幣が送り込み位置に送り込まれると、当該紙幣を送り込み位置に一時保留し、シャッタ片20aを閉じる。この後に、識別部43は、各透過型ホトセンサ11〜14、および磁気ヘッド15の検出信号と、メモリ44の内容とに基づき、紙幣の真偽、種類を識別する。真札であり、受け入れ可能な金種の紙幣である場合には、搬送制御部41は、モータドライバIC50を介して、搬送用モータ26を駆動して、送り込み位置に保留されている紙幣を紙幣排出口10aから不図示の紙幣収納部に送り込み、そこに収納させる。偽札、あるいは受け入れ不可の金種の紙幣である場合には、搬送制御部41は、モータドライバIC50を介して、搬送用モータ26を逆回転させて、送り込み位置に保留されている紙幣を紙幣挿入口8に向けて送り出し、当該紙幣挿入口8から排出して、紙幣挿入者に返却する。
【0026】
(紙幣搬送用モータ)
ここで、本例の紙幣搬送用モータ26はブラシレスモータであり、モータドライバIC50およびモータ回転パルス出力回路61がモータケースに内蔵されてユニット化された構造となっている。ブラシレスモータには磁極位置を検出するためのホール素子、MR素子などの磁気センサが内蔵されており、ここからの出力に基づき、モータ回転パルス出力回路61はモータ回転量を表すパルス信号を出力する。
【0027】
紙幣搬送用モータ26の組み付け作業においては、図5(b)に示すように、紙幣搬送用モータ26を紙幣識別機1の本体ユニット2に組み付けた後に、回路基板40Aに搭載されているコネクタ62に、当該紙幣搬送用モータ26から引き出されているモータ配線基板63を接続するだけよい。よって、組み付け作業を簡単に行うことができ、モータの交換、メンテナンス時の作業性も改善される。
【0028】
また、回路基板40Aには、モータドライバIC50の設置スペース、モータ回転位置検出用のホトインタラプタなどの検出部品の設置スペースを確保しておく必要がない。よって、回路基板40Aを小型にでき、これが搭載されている紙幣識別機1の小型化に有利である。
【0029】
さらには、ホトインタラプタを用いる場合のような発光素子の劣化、受発光面の汚れに起因する検出精度の低下などの弊害も発生しない。
【0030】
これに加えて、紙幣搬送用モータ26はブラシレスモータであるので、ブラシ付きモータに比べて寿命が長く、ブラシとモータ軸の摺動に起因して発生するノイズ対策も不要になるという利点がある。
【0031】
(その他の実施の形態)
上記の例は本発明を紙幣識別機に適用したものであるが、本発明は、チケット、クーポン券などの紙幣以外の紙葉類を識別するための紙葉類識別機についても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した紙幣識別機の平面図である。
【図2】開閉ユニットを開いた状態の紙幣識別機の斜視図である。
【図3】紙幣識別機の内部構成図である。
【図4】紙幣識別機の制御系の主要部分を示す概略ブロック図である。
【図5】従来の紙幣搬送用モータと本発明の場合を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 紙幣識別機
2 本体ユニット
3 凹部
4 開閉ユニット
5 挿入口蓋ユニット
6a、6b 支軸
7a、7b 係合レバー
7c、7d 係合溝
8 紙幣挿入口
9 紙幣挿入路
9a、9b 入口センサ
10 紙幣搬送路
10a 紙幣排出口
11〜14 透過型ホトセンサ
11a〜14a 発光素子
11b〜14b 受光素子
15 磁気ヘッド
16 押圧ローラ
17a、17b 出口センサ
20 紙幣引き抜き防止機構
20a シャッタ片
20b ソレノイド
21a、21b 駆動側プーリ
22a〜24a、22b〜24b 従動側プーリ
25a、25b 搬送ベルト
26 搬送用モータ
28 駆動軸
31a〜34a、31b〜34b 押圧ローラ
40 制御部
40A 回路基板
41 搬送制御部
42 発光制御部
43 識別部
44 メモリ
50 モータドライバIC
51〜54 ドライバ
55〜59 信号処理回路
61 モータ回転パルス出力回路
62 コネクタ
63 モータ配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象の紙葉類を搬送路に沿って搬送するための搬送ベルトを駆動するための搬送用モータを備えた紙葉類識別機において、
前記搬送用モータは、モータドライバIC、および、モータ回転位置を表すパルス信号を発生するモータ回転パルス出力回路が内蔵されて一体化されているブラシレスモータであることを特徴とする紙葉類識別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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