説明

紙葉類識別装置及び識別方法

【課題】 偽造紙幣等に対して、その真偽をより的確に判定し得る紙葉等識別装置及び識別方法を提供する。
【解決手段】 挿入紙葉Mの挿入方向の所定照射ラインX上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインXの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉MAの透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉Mの各照射ポイントPの標準値Sを取得する演算処理手段と、前記標準値Sを予め取得した真正紙葉MAの最大標準値Tmaxと比較し前記最大標準値Tmaxより大きい前記標準値Sの数が所定数に達したときに挿入紙葉Mを偽券と判定する判定手段とからなる真偽判定部Cを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉識類別装置及び識別方法に関し、特に、紙幣の状態によって左右されない的確な真偽判定を可能とする紙葉類識別装置及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、挿入紙幣等の挿入紙葉に対する紙葉類識別装置は、一般的に主要部を挿入検知部、搬送部および真偽判定部で構成されており、挿入紙葉の真偽の識別は、真偽判定部で磁気センサ若しくは光センサを用いてその特徴を磁気的、光学的に抽出することにより行われていた。
【0003】
それらのうち、透過型センサによる紙葉の真偽の判別は、発光素子と受光素子とを所定間隔をおいて配置し、その間に紙葉を搬送させて透過光の明暗パターンを抽出し、予め記憶保持させておいた正券の標準明暗パターンと比較することにより行われていた。しかし、紙葉には、発行されたばかりの真新のものから、流通の過程で汚れたり傷んだりして古くなったものまであり、真偽対象となる紙葉は同種のものであっても紙葉識別の因子となる光学的特徴、磁気的特徴等には大きなばらつきがあり、真偽の判定は困難であった。
【0004】
そこでかかる問題を解消するための紙幣識別装置として、紙幣との相対的な移動によって紙幣を走査し、紙幣に光を照射して紙幣からの透過光量パターンを検出する手段と、前記パターン検出手段によって紙幣の透かし模様部分から抽出される透過光量を、透かし模様以外の通常模様部分から検出された透過光量パターンの最大値で評価し、その評価値に基づいて紙幣の透かし模様を判定する手段とを具備することにより、真偽の判定を行う提案がされている。より具体的には、この提案は、紙幣の光学的特徴を利用して、使用による紙幣の全体的な汚れに着目し、紙幣における通常模様部分(透かしのない部分)からスキャンした透過光量のうち最大透過レベルのものを通常模様部分における基準透過レベルとし、この基準透過レベルを用いて透かし部分における最大透過レベルとの相対化を行い、透かし部分の有無を判定して真偽を判定するものである(特許文献1参照)。
【0005】
また、他の紙幣の識別装置に関する提案として、既に印刷されている模様に新たに押印等が付加された変更(新)紙幣に対して新旧の紙幣の変更を識別しうる装置に関するものであって、この提案ではセンサによって紙幣の模様部分等から識別情報を出力波形として取得するという紙幣の光学的特徴を利用している点で前記提案に類似する(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−187291号公報
【特許文献2】特開2003−187294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前者提案によれば、通常模様部分と透かし部分との境界は極めて漠然としているため、通常模様部分の最大透過レベルが通常模様部分に入るのか透かし部分に入るのか明確でない。したがって、基準透過レベルそのものが不安定となる。また仮に基準透過レベルが決定できたとしても、この部位を決定するのに紙幣全体をくまなくセンサを走査させなければならない場合もあり、短時間処理が困難な場合もあり問題である。
【0007】
一方、後者提案では、新たに付加した押印等は人間が紙幣に押すことになっているので、押印等を含む全体模様として新紙幣を見て観察した場合、新紙幣間同士あるいは新旧紙幣間には必然的にバラツキが生じることになり、識別はセンサを用いるまでもなくできる場合もあるから現実に即さないという問題がある。さらにこれらの2提案では着想外のものとして、紙幣の印刷時の諸条件によって正券間にはごくわずかではあっても印刷ズレ等のバラツキが生じることがあり、近年極めて精巧かつ巧妙になっている偽造がこの点につけ込む恐れもある。
【0008】
従って、本発明は、かかる問題等を可及的に解消し、特に近年社会問題となっている偽造紙幣等に対して、その真偽をより的確に判定し得る紙葉等識別装置及び識別方法を提供するもので、特に真偽判定部に最大の特徴を有する紙葉等識別装置及び識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る紙葉識別装置は、挿入紙葉の挿入方向の所定照射ライン上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉の透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉の各照射ポイントの標準値を取得する演算処理手段と、前記標準値を予め取得した真正紙葉の最大標準値と比較し前記最大標準値より大きい前記標準値の数が所定数に達したときに挿入紙葉を偽券と判定する判定手段とからなる真偽判定部を有することを特徴とする。したがって、規準化によって挿入紙葉の使用状態(例えば紙幣の場合、使用による汚れや濡れ、印刷部分の経年変化など)に左右されることなく、真正紙葉との真偽判定の信頼性を高めることができる。
【0010】
また、前記挿入紙葉及び前記真正紙葉は、透かし部とその他模様部とが配置された同種の紙幣であることを特徴とする。したがって、例えば透かし部とその他模様部を有する1,000円札、5,000円札、10,000円札といった同種の紙幣では、かかる2つの特徴を最大限真偽判定に利用することができるから、真偽判定の信頼性を一層高めることができる。
【0011】
また、前記真正紙葉が二枚以上であることを特徴とする。真正紙葉相互の物性的バラツキを光学的に検出することによって、適正な標準データを取得するためである。
【0012】
また、前記標準値は、予め取得した真正紙葉の所定照射ライン上の各照射ポイントにおける透過光量の平均値と前記挿入紙葉の前記所定照射ライン上の各照射ポイントに対応する照射ポイントの透過光量の差を前記真正紙葉の各照射ポイントにおける透過光量の標準偏差で除して算出することを特徴とする。これによって挿入紙葉のデータを真正紙葉のデータとレベル統一するための規準化を具現することができる。
【0013】
また、前記最大標準値は、前記真正紙葉の前記所定照射ライン上の各照射ポイントにおける透過光量の平均値と各真正紙葉の各照射ポイントにおける透過光量の差を各照射ポイントにおける透過光量の標準偏差で除して算出したもののうち最大数値とすることを特徴とする。挿入紙葉の各照射ポイントにおける標準値に対する評価基準値として、真偽判定に用いるためである。
【0014】
本発明に係る紙葉類の識別方法は、挿入紙葉の挿入方向の所定照射ライン上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉の透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉の各照射ポイントの標準値を取得する演算処理手段と、前記標準値を予め取得した真正紙葉の最大標準値と比較し前記最大標準値より大きい前記標準値の数が所定数に達したときに挿入紙葉を偽券と判定する判定手段とからなる真偽判定部を有することを特徴とする。
【0015】
したがって、この識別方法によれば、真偽判定部は統計手法に基づくアルゴリズムで構成されるから、信頼性が高く、かつ的確な真偽判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紙葉類識別装置によれば、真偽の判定基準となる真正紙葉のサンプル数を増やすことによって、サンプル間のバラツキを統計処理できるから、真正紙葉の基準となる数値の信頼性を高めることができる。また、透かし部分とその他模様部分の特徴を取り入れているため、真偽識別の判定機能を充実させることができる。さらに規準化を採用しているので、挿入紙葉の使用状態に左右されることなく、的確な真偽判定を行うこともできる。
【0017】
また、本発明の紙葉類の識別方法によれば、簡素化したアルゴリズムを導入しているので、装置自体も複雑化することなく、的確かつ迅速に真偽判定処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の紙葉類識別装置及び識別方法の実施をするための最良の形態について図1〜3を用いて説明する。
【0019】
(紙葉類識別装置1の構成)
図1は、本発明に係る紙葉類識別装置1の断面図である。便宜上、以下の説明においてこの紙葉類識別装置1は、紙幣識別装置とする。この紙幣識別装置1は、内部に図2に示す紙幣Mを収容すると共に、適宜収容した紙幣Mを取り出す図示しない紙幣収納部を有する本体部10と、本体部10の前面上部に突設させ、紙幣Mを挿入する紙幣挿入口11を供え、紙幣挿入口11から挿入された紙幣Mを搬送して紙幣Mの真偽の識別を行い、紙幣Mが真券の場合にはそのまま搬送を続けて紙幣Mを紙幣収納部に収納し、紙幣Mが偽券の場合には搬送方向を逆転させて紙幣挿入口11に返却するように構成されている。
【0020】
挿入検知部Aは挿入検知センサ14と後記する中央処理装置31(以下、CPUという。)とで構成され、挿入検知センサ14は紙幣挿入口11から搬送路12内に紙幣Mが挿入されたことを検知して、検知信号をCPU31に出力する。
【0021】
搬送部Bは、紙幣挿入口11より挿入された紙幣Mを紙幣収納部に導くため、本体部10内の紙幣挿入口11から略半円状の搬送路12を設けて紙幣収納部に案内するようになっている。
【0022】
搬送部Bに付属するものとして、本体部10内の紙幣挿入口11近傍に設けられ、回転軸を中心に回転する一対の従動プーリ15と、挿入検出センサ14によって紙幣Mの挿入が検知されることにより、駆動モータ34によって駆動する一対の駆動プーリ16と、前記一対の従動プーリ15と一対の駆動プーリ16の間にそれぞれ掛け渡され、一対の駆動プーリ16の駆動に伴って回転し、搬送路12内の紙幣Mを搬送する一対の搬送ベルト13と、従動プーリ15の外周上の搬送ベルト13の表面にバネ等によって弾性的に、かつ、回転可能に押し付けられて搬送ベルト13と共働して紙幣Mを挟持する一対の前ローラ17、及び一対の後ローラ18より構成されている。
【0023】
真偽判定部Cは識別センサ19とCPU31で構成されており、識別センサ19は従動プーリ15と駆動プーリ16の間の搬送路12を臨むよう投光部19a、受光部19bを対向させて、搬送路12を搬送された紙幣Mの所定の照射ラインXを一定間隔でスキャンすることによって所定照射ラインXの透過光量パターン(個々のデータ等を含む。)を取得し、電気信号としてCPU31に出力する。
【0024】
ここで識別センサ19は基本的には透過型赤外光学式センサであって、紙幣Mに対して図示しないロータリエンコーダのような回転構造を有し、一定間隔を存して投光部19aからパルス光を発する。このパルス光は紙幣Mの挿入先端M1(M2)から後端M2(M1)に向けて照射ラインX上に投光し、照射ラインX上の投光個所における透過量を受光部19bで検知し(パターン検知手段となる。)、その透過量を電気信号に変換してCPU31に出力する。もとよりパルス光は紙幣Mの挿入先端から後端に向けて極めて小さい一定ピッチで照射ラインX上に投光されるから、照射ラインX上の紙幣の着色された模様部分Y1、Y3のみならず、模様の存在しない透かし部分Y2まで照射するようになっている。したがって、紙幣Mが例えば現在流通している1,000円札の場合には図2に示すように、先端側M1(M2)の着色された模様部分Y1、中央の透かし部分Y2、紙幣の後端M2(M1)に至る着色された模様Y3に順次走査照射を行う。また、照射ラインXは、紙幣Mの先端M1(M2)から後端M2(M1)に向けて複数条(X1〜Xn)予め所定間隔を存してライン形成されるように設定されている。このため、いずれかの照射ラインXが確実に模様部分Y1、Y3のみならず透かし部分Y2も照射されるようになっている。
【0025】
識別センサ19は、挿入紙幣Mの表面側にセンサの投光部19aを、裏面側に対向するように受光部19bを配置するほか、同一面側で投受光する反射型センサでもよい。さらに一定入力角から照射して、反射を介して受光部19bを設けるようにしてもよい。
さらに機動的に真偽判定を行うために複数の識別センサ19を各照射ラインXに対応させるように設置してもよい。
【0026】
本発明に係る紙葉類識別装置1は、図3に示す制御装置30によって制御され、制御装置30はCPU31を備え、CPU31にはROM32とRAM33と挿入検出センサ14と識別センサ19および駆動モータ34とが接続されている。
【0027】
CPU31は、所定のプログラムに従って紙幣Mの搬送処理、真偽判定処理および収納処理その他これに付随する演算(算術演算)処理を行う。ROM32は、処理プログラムを予め収納し、RAM33は挿入検出センサ14と識別センサ19からの出力信号を変換して各種データとして格納する。
【0028】
上記のプログラムのうち、本発明の特徴的プログラムとなる真偽判定部Cの処理プログラムは、次の3つの手段に基づいてその順でプログラミングされている。すなわち、(1)挿入紙葉Mの挿入方向の所定照射ラインX上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインXの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、(2)前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉MAの透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉Mの各照射ポイントPの標準値Sを取得する演算処理手段と、(3)前記標準値Sを予め取得した真正紙葉MAの最大標準値Tmaxと比較し前記最大標準値Tmaxより大きい前記標準値Sの数が所定数に達したときに挿入紙葉Mを偽券と判定する判定手段である。すなわち、パターン検出手段では入力信号を変換して格納、解析処理を行う。演算処理手段ではパターン検出手段で取得した信号データとすでにROM32又はRAM33に格納されているデータとの比較演算等を行う。判定手段では、比較データ、あらかじめ設定したしきい値に基づいて本発明の最終目的とする真偽判定処理を行うことである。
【0029】
次に、紙幣識別装置1における真偽判定部Cでの処理手順を図4によりステップごとに説明する。ここでも挿入紙葉Mおよび真正紙葉MAを紙幣とする。また、挿入検知部A、搬送部Bの処理手順は、前記提案(特許文献1、特許文献2)等に開示されている技術と同様であるので説明を省略する。
【0030】
(S101:データ取得)
挿入紙幣Mの先端M1(M2)が識別センサ19に至ると、挿入紙幣Mの所定の照射ラインX上を一定ピッチで照射開始し、挿入紙幣Mの後端M2(M1)に至るまでスキャンする。この間に挿入紙幣Mから各ピッチの照射ポイントPにおける透過量をデータとして取得する。データは電気信号としてCPU31に出力する。また、この紙幣識別装置1によって多数の真正紙幣MAの各ピッチの照射ポイントPにおける透過量データを取得する場合も同様である。
【0031】
(S102:赤外最大取得)
このステップ以下、すべてCPU31における処理であって、ステップ101から取得した真正紙幣MAの各照射ラインXごとに各ピッチの照射ポイントPにおける透過量データを比較し、赤外線の最大透過量をデータとして取得する。
【0032】
(S103:演算処理I)
ステップS102で取得した最大透過量から各照射ポイントPにおける透過量を減算処理してその差を取得する。
【0033】
(S104:演算処理II)
真正紙幣MAから取得しておいた各照射ポイントPにおける透過量の平均値と挿入紙幣Mの前記各照射ポイントに対応する照射ポイントPのデータ差を取得する。
【0034】
(S105:演算処理III)
挿入紙幣Mと真正紙幣MA間の任意の照射ポイントPにおけるデータのパターンを規準化するために、ステップS104で取得した平均値と挿入紙幣Mの各照射ポイントPとのデータ差を標準偏差で割り算を行い、標準値Sを取得する。
【0035】
(S106:比較処理)
Sステップ105で取得した標準値Sと真正紙幣MAの標準値のうち最大標準値Tmaxとの比較を行う。
【0036】
(S107:加算指令)
ステップS106で算出された標準値Sが真正紙幣MAの最大標準値Tmaxより大きい場合と判断された場合は、挿入紙幣Mの次の照射ポイントPの標準値Sとさらに比較すべく加算する指令を発する。
【0037】
(S108:判定処理I)
ステップS107で比較された挿入紙幣Mの加算照射ポイントP数が予め規定するポイント数内が否かを判定する。この処理は最小限の照射ポイントP(例えば一条の照射ラインXのデータは最低チェックすること。)による比較を可能にするためのものであり、ポイント数内の場合にはステップ103に戻る。
【0038】
(S109:判定処理)
ステップS108で照射ポイントP数内でない場合、挿入紙幣Mの照射ポイントP数が一定数(しきい値)以内か否かを判定する。
【0039】
(S110:最終判定処理)
ステップS109で挿入紙幣Mの照射ポイントP数が一定数(しきい値)を超える場合は、挿入紙幣Mは偽券であると判定する。
【0040】
印刷技術の進展によって、この真正紙幣MAのバラツキの発生がほぼ完全に解消できる場合や極めて小さいためバラツキに基づく標準偏差も小さくなる場合には、ステップS101において真正紙幣MAのデータ取りは少数枚(極端な例としては一枚)でほぼ十分の場合もある。
【0041】
また、真正紙幣MAのデータ取りを紙幣識別装置1では行わず、別途同様な装置で行う場合には、取得したデータ(1,000円、10,000円に関するデータ)を予めROM32又はRAM33に格納しておいてもよい。
【0042】
また、ステップS107の加算指令では、必要数に至るまで加算処理がされるが、この場合単純に照射ポイントPごとに比較する方法と加算した照射ポイントPのデータを加算前のデータに加算して、つまり合算(標準値S1+S2、最大標準値Tmaxを2×Tmaxとするようにそれぞれ合算)して比較する方法がある。後者の方法によれば挿入紙幣Mのある照射ポイントPの透過光量が最大標準値Tmaxを大きく超えていても、すでに判定されたそれ以前の照射ポイントPの透過光量によって打ち消されることもある。ある照射ポイントPの透過光量が最大標準値Tmaxを大きく超える場合としては、例えばその照射ポイントPが極めて汚れが激しいような場合であり、そのような突飛的な照射ポイントが点在する場合に偽券と判断するのは却って判定に誤りが生ずる恐れがあるので有効である。
【0043】
以上、本発明では識別センサ19として透過型赤外光学式センサを使用するが、これを例えば超音波センサに置換することもできる。挿入紙幣Mの表面に皺や荒れがある場合に、光源との距離の変化を測定し、データとして前記手順に乗せることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る紙葉類識別装置の断面図である。
【図2】紙幣と照射ラインの一例を示す図である。
【図3】図1の紙葉類識別装置に備える制御装置を示す構成図である。
【図4】真偽判定部の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1、紙葉類識別装置
10、本体部
11、紙幣挿入口
14、挿入検知センサ
19、識別センサ
30、制御装置
31、CPU
A、挿入検知部
B、搬送部
C、真偽判定部
M、挿入紙幣(挿入紙葉)
MA、真正紙幣(真正紙葉)
X(X1〜Xn) 照射ライン
P(P1〜Pn) 照射ポイント
S、標準値
Tmax最大標準値
Y1、模様部分
Y2、透かし部分
Y3、模様部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入紙葉の挿入方向の所定照射ライン上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉の透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉の各照射ポイントの標準値を取得する演算処理手段と、前記標準値を予め取得した真正紙葉の最大標準値と比較し前記最大標準値より大きい前記標準値の数が所定数に達したときに挿入紙葉を偽券と判定する判定手段とからなる真偽判定部を有することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
前記挿入紙葉及び前記真正紙葉は、透かし部とその他模様部とが配置された同種の紙幣であることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項3】
前記真正紙葉が二枚以上であることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項4】
前記標準値は、予め取得した真正紙葉の所定照射ライン上の各照射ポイントにおける透過光量の平均値と前記挿入紙葉の前記所定照射ライン上の各照射ポイントに対応する照射ポイントの透過光量の差を前記真正紙葉の各照射ポイントにおける透過光量の標準偏差で除して算出することを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項5】
前記最大標準値は、前記真正紙葉の前記所定照射ライン上の各照射ポイントにおける透過光量の平均値と各真正紙葉の各照射ポイントにおける透過光量の差を各照射ポイントにおける透過光量の標準偏差で除して算出したもののうち最大数値とすることを特徴とする請求項1記載の紙葉類識別装置。
【請求項6】
挿入紙葉の挿入方向の所定照射ライン上に赤外光を所定間隔で照射して所定照射ラインの透過光量パターンを検出するパターン検出手段と、前記パターン検出手段によって取得した透過光量パターンを前記パターン検出手段により予め取得した真正紙葉の透過光量パターンと比較して規準化を行い挿入紙葉の各照射ポイントの標準値を取得する演算処理手段と、前記標準値を予め取得した真正紙葉の最大標準値と比較し前記最大標準値より大きい前記標準値の数が所定数に達したときに挿入紙葉を偽券と判定する判定手段とからなる真偽判定部を有することを特徴とする紙葉類の識別方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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