説明

紙製カートン

【課題】細長直方体形状の食品包装フィルム用紙製カートンにおいて、積み重ねの荷崩れを防ぐとともに、使用時に握りやすいカートンを提供する。
【解決手段】本発明では紙製カートン底辺部の両長側縁内側に、側縁端部から3mm〜12mmの範囲のほぼ平行する位置に0.05〜0.25mm高さの凸エンボス及び/又は底面両短辺の折り曲げ罫線部を湾曲形状にすることで、底面部に1〜2.5mm深さのアーチ型の空間を設け、積み重ねる紙製カートン天面の膨らみ形状(凸形状)の変形を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重ね置きに適し、手に持ちやすい紙製カートンに係る。
【背景技術】
【0002】
食品包装フィルムには、カット用の刃がついた紙製カートンが使われている。この紙製カートンは一般に坪量400〜550g程度の板紙を用いている。板紙は切り取り折り曲げなど簡単に加工できることから、またコスト的にも安いことから様々な製品の包装容器にも使用されるが、折り曲げ成形する際に、折り曲げの反発力が外方向(折り曲げの反対方向)に働き、直方体形状の紙製カートンは一般に外側にやや膨らみ形状(凸形状)となりやすい。 特に食品包装フィルムを収納する細長直方体形状のカートンでは、これを重ね置きする際、紙製カートンの天面及び底面がこのように凸形状に変形すると、互いに接する天面と底面の膨らみにより積み重ねが不安定となり荷崩れを起こしやすく、陳列の際には荷崩れ防止用スタンドを設ける、専用の収納ケースを用意する等が必要になる。これを避ける為に折り曲げ罫線強く入れる、曲げ応力を小さくするために板紙の坪量を低くするなどが考えられるが、紙製カートンの強度が低下する問題がある。
【0003】
紙製カートンの重ね置き用には、底面に滑り止め加工したもの、あるいは対面する天面又は底面の側縁部にズレ止めのフラップを形成したものがある。また、持ち易さ(握りやすさ)を工夫した食品包装フィルム用紙製カートンの例として、直方体(稜線)の角をなだらかにしたものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-220088号公報
【特許文献2】特開2006-224967号公報
【特許文献3】特開2001-31105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、文献1の場合は滑り止め効果を有するニスを天面又は底面に印刷または塗布する工程が必要であり、また、文献2の場合は滑り止めフラップ用の切欠きを設けることで、切欠き部の隙間が生じ、また、切欠きフラップを起こす手間がかかる。文献3では、角部に傾斜面を設けるために複雑な折り曲げ罫線と折り曲げ工程が必要になる。
従って本発明は、底面に天面の膨らみ変形を吸収する空間を形成することで、荷崩れせずに重ね置きができ、更に使用時に手に持ちやすい(握りやすい)形状の食品包装フィルム用紙製カートンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では食品包装フィルム紙製カートン底面の両長側縁内側に端部から3mm〜12mmの範囲のほぼ平行する位置に0.05〜0.25mm高さの凸エンボス及び/又は底面両短辺の折り曲げ罫線部を湾曲形状にすることで、底面部に最大2.5mm深さの空間を設け、積み重ね時に天面のカートン膨らみ(凸形状)変形を吸収する。 また、本発明の食品包装フィルム用紙製カートンの使用に際し、カートンを手で握った際に人差指から小指の各指先部(第1間接部)がカートン底面湾曲部に掛かり、グリップしやすくなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、天面、底面が膨らみ変形しやすい食品包装フィルムを収納する細長直方体形状の紙製カートンについて、積み重ね置きが可能となり、また、使用時には握り易く使いやすい紙製カートンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による紙製カートンの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明による紙製カートンの重ね置き一例を示す斜視図である。
【図3】通常の天面がふくらみ変形した紙製カートンの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明による紙製カートン底面部の一例を示す平面図である。
【図5】本発明による紙製カートンの一例を示す短側面の平面図である。
【図6】本発明による紙製カートンの一例の展開図である。
【図7】本発明による紙製カートンの底面エンボス図形例である。
【図8】本発明による紙製カートンをグリップした図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る食品包装フィルム用紙製カートンは、坪量が400g/m2から550g/m2の板紙を素材とする直方体形状であって、天面又は底面の短辺の長さに対する長辺の長さが4倍以上の細長形状である。紙製カートンの原紙である板紙は、その素材特性として、切りやすい、折り曲げやすい、印刷しやすいなどがあるが、一方で、たわみや、変形に弱い欠点もある。折り曲げ加工は、折り曲げる位置に0.5-2mm幅の凹凸の罫線を施し、罫線の凸部を内側にして折り曲げる。板紙は罫線の付与により折り曲がりやすくなるが、折り曲げに対する復元力が働き、直方体形状においては、天面、底面、側面が外側にやや膨らみ変形することがある。
本発明は、細長直方体形状の食品包装フィルム用紙製カートンにおいて、底面に天面の膨らみ変形を吸収する空間を設け、積み重ねることを可能にすること、併せて使用時に握り易くすることに係る。 実施例1は本発明紙製カートンの底面両長側縁に沿って、端縁から3〜12mmの範囲に平行に3〜5mm幅で0.05〜0.25mm高さの直線状のエンボスをもうけた。 本発明ではエンボス形状は実施例1に示すように直線状であっても良いが、円形状のも、その他形状のものを底面両長側縁に沿って端縁から3〜10mm領域に全長に亘ってほぼ均等に分散して設けることでも良い。これにより、紙製カートンの底面に0.05〜0.25mm高さの空間が得られ、使用時に手に握ると中指と薬指の第1間接部がエンボス部に掛かりグリップが良くなる。紙製カートンの原紙に付与されるエンボスの高さ(深さ)は、0.25mmを超えると、エンボスのエッジ部で、原紙が伸び切れずに破断される可能性がある。エンボスが0.05mm未満では高さが不足し、膨らみを吸収する効果及びグリップ時の指先の掛かりが期待できない。
【0010】
本発明では、紙製カートン天面の膨らみ変形をより効果的に吸収するために実施例2に示すように、底面部全体にアーチ型の窪みを設けると良い。底面部のアーチ型窪みは、底面両短辺部に、高さ1〜2.5mmの湾曲する(アーチ型)折り曲げ罫線を設けることで得られる。このアーチ型の窪みは、紙製カートンの使用時に握った際に、人差指から小指までが窪みにしっかりと掛かりグリップしやすさが高まる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長直方体形状の食品包装フィルム用紙製カートンにおいて、底面の両長側縁内側に、側縁端部から3mm〜12mmの範囲のほぼ平行する位置に側縁全長に渡って、幅3〜5mmの連続又は断続する直線形状または非直線形状の0.05〜0.25mm高さの凸エンボスを施すことを特徴とする紙製カートン。
【請求項2】
前記細長直方体形状の食品包装フィルム用紙製カートンにおいて、底面両短辺部に湾曲高さが1〜2.5mmの折り曲げ罫線を付与し、底面アーチ型の窪み空間を設けることを特徴とする紙製カートン。
【請求項3】
前記細長直方体形状の食品包装フィルム用紙製カートンにおいて、底面の両長側縁内側に、側縁端部から3mm〜12mmの範囲のほぼ平行する位置に側縁全長に渡って、幅3〜5mmの連続又は断続する直線形状または非直線形状の0.05〜0.25mm高さの凸エンボスを施す請求項2記載の紙製カートン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28371(P2013−28371A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166161(P2011−166161)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】