説明

紙類処理剤及び紙類

【課題】 グリセリン、脂肪酸エステル類、パラフィン類、第4級アンモニウム塩等の従来の紙類の柔軟処理剤は多量に使用しないと柔軟性を付与できなかったり、紙類の吸水性が低下したり、皮膚刺激性が高い等の問題があった。本発明は、紙類に優れた柔軟性、吸水性を効果的に付与できる紙類処理剤を提供する。
【解決手段】 本発明の紙類処理剤は、二塩基酸とジオールとのエステル化合物を含有することを特徴とする。本発明において二塩基酸とジオールとのエステル化合物は、二塩基酸成分がアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸より選ばれた少なくとも1種である場合が好ましく、またジオール成分は重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール及び/又は重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである場合が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は紙類に柔軟性、吸水性を付与することのできる紙類処理剤及び、その処理剤で処理した紙類に関する。
【0002】
【従来の技術】紙や紙製品、特にトイレットペーパーやティッシュペーパー等の家庭用の紙類には適度な柔軟性、吸水性が要求されている。このような要求に応えるため、処理剤によって紙類を処理することが行われている。この種の処理剤として、従来、グリセリン、脂肪酸エステル類、パラフィン類、第4級アンモニウム塩等が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、グリセリンは多量に使用しないと、紙類に要求される柔軟性を付与することができず、多量のグリセリンを使用して紙類を処理すると、処理コストが高くつくという問題があった。また、脂肪酸エステル類、パラフィン類は、少ない使用量で紙類に適度な柔軟性を付与できる反面、紙類に要求される吸水性を低下させるという問題があった。更に第4級アンモニウム塩は皮膚刺激性が高く、安全性に問題があった。
【0004】本発明は上記従来の問題に鑑みなされたもので、従来の紙類処理剤の欠点を解決し、紙類に柔軟性、吸水性を効果的に付与できる紙類処理剤及び紙類を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち本発明の紙類処理剤は、二塩基酸とジオールとのエステル化合物を含有することを特徴とする。本発明において二塩基酸とジオールとのエステル化合物は、二塩基酸成分がアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸より選ばれた少なくとも1種であるものが好ましく、ジオール成分が重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール及び/又は重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールであるものが好ましい。また本発明の紙類は、この紙類処理剤により、二塩基酸とジオールとのエステル化合物が0.01〜10.0重量%含有されるように処理されていることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の紙類処理剤の主成分である、二塩基酸とジオールとのエステル化合物を構成する二塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和二塩基酸、マレイン酸等の不飽和二塩基酸が挙げられるが、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸が柔軟化効果が高く好ましい。
【0007】またジオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等を重合して得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合体又はブロック共重合体であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、テトラメチレンオキシドを重合することによって得られるポリテトラメチレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールのアルキレンオキシド付加等が挙げられる。ジオールとしては重量平均分子量200〜150000のポリオキシエチレングリコール及び/又は重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましい。ジオールとして重量平均分子量200以上のポリオキシエチレングリコールや重量平均分子量1000以上のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いた場合、繊維に対する柔軟性や吸水性の付与効果がより優れたものとなる。しかしながら、ポリオキシエチレングリコールやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの重量平均分子量が大きくなりすぎると、二塩基酸とのエステル化反応が進行し難くなり、未反応物量が増加する虞れがあるため、ポリオキシエチレングリコールやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは重量平均分子量が15000以下のものが好ましい。
【0008】二塩基酸とジオールとのエステル化合物は、上記二塩基酸の1種又は2種以上と、ジオールの1種又は2種以上とを触媒の存在下で加熱して脱水縮合させる、或いは、上記二塩基酸のメチルエステルなどの二塩基酸エステルとジオールとを触媒の存在下で加熱してエステル交換反応により縮合させる等の方法で得られる。触媒としてはp−トルエンスルホン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコラート等が用いられる。エステル化反応に際し、二塩基酸、ジオールは各々2種以上混合して用いることができる。二塩基酸とジオールとの反応比率は、二塩基酸/ジオール=2モル/1モル〜1モル/2モルが好ましく、更に好ましくは二塩基酸/ジオール=1モル/1モル〜1モル/2モルである。
【0009】本発明において、上記二塩基酸とジオールとのエステル化合物は、二塩基酸成分として、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸の1種又は2種以上を含み、且つジオール成分として、重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコールと、重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの両方を含むエステル化合物が、吸水性と柔軟効果の両方が向上されるため好ましく、さらに、重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコールと、重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの割合が、ポリオキシエチレングリコール:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール=5:95〜50:50となるものが特に好ましい。
【0010】二塩基酸成分がアジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸の1種又は2種以上であり、且つジオール成分として重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコールと重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの両方を含むエステル化合物は、二塩基酸の1種又は2種以上と、重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール、重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとの混合物とを反応させて得たものでも、二塩基酸の1種又は2種以上と、重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール又は重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの一方を反応させた後、他方を反応させて得たものでも良い。また重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール、重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、それぞれ重量平均分子量の異なる2種以上の化合物を用いることができる。
【0011】本発明の紙類処理剤には、上記エステル化合物の他に、更に必要に応じて他の成分、例えば鉱物油、脂肪酸エステル等の平滑剤、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル、ポリ(オキシエチレン)脂肪酸エステル等の乳化剤等を配合することもできる。
【0012】本発明の紙類処理剤は、上記エステル化合物を水に溶解または分散した水溶液或いは乳化液として使用する。本発明の紙類処理剤により紙類の処理を行う場合、通常、上記エステル化合物を1.0〜50.0重量%程度含む水溶液、乳化液として使用する。この水溶液、乳化液中には保湿成分等の他の成分を更に配合することができる。本発明の紙類処理剤により紙類を処理するには、紙類に噴霧器によりスプレーする方法、含浸機により浸漬処理する方法等が挙げられる。本発明の紙類は、上記本発明の処理剤によって処理されたものであって、処理後の紙類中に上記エステル化合物が固形換算量として0.01〜10.0重量%含有されているものである。より好ましくは、処理後の紙類中に上記エステル化合物が固形分換算量として0.1〜5.0重量%含有されていることである。上記エステル化合物の含有率が0.01重量%未満では、紙類に十分な柔軟性が付与されない。また、10.0重量%を超えるとベタ付き感などがによりかえって紙類の風合い等が悪くなる。
【0013】本発明処理剤が処理対象とする紙類とは、ペーパータオル、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、フェイシャルティッシュ、ちり紙、ペーパーナプキン京花紙等が挙げられる。
【0014】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0015】実施例1〜10表1に示す処理剤を用い、その有効成分としての含有率が40.0重量%となるように、処理剤を水に溶解又は分散させて処理液を調整した。尚、実施例1〜10において処理剤として使用したエステル化合物は以下の通りである。
【0016】エステル化合物A:セバシン酸1.0モル当たり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:重量平均分子量10800、エチレンオキシド成分比80%)0.1モル、ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量600)0.9モルを反応させて得たエステル化合物(重量比11:59:30)。
【0017】エステル化合物B:アジピン酸1.0モル当たり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:重量平均分子量10800、エチレンオキシド成分比80%)0.3モル、ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)0.5モル、ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量400)0.2モルを反応させて得たエステル化合物(重量比4:86:8:2)。
【0018】エステル化合物C:セバシン酸1.0モル当たり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:重量平均分子量87500、エチレンオキシド成分比80%)0.2モル、ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量1000)0.8モル、を反応させて得たエステル化合物(重量比7:64:29)。
【0019】エステル化合物D:セバシン酸1.0モル当たり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:重量平均分子量800、エチレンオキシド成分比80%)0.2モル、ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量100)0.8モル、を反応させて得たエステル化合物(重量比46:36:18)。
【0020】エステル化合物E: セバシン酸1.0モル当たり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダム重合体:重量平均分子量10800、エチレンオキシド成分比80%)1.0モル、を反応させて得たエステル化合物(重量比2:98)。
【0021】エステル化合物F:アジピン酸1.0モル当たり、ポリエチレングリコール(重量平均分子量600)1.0モルを反応させて得たエステル化合物(重量比25:75)。
【0022】エステル化合物G:エステル化合物Eとエステル化合物Fの2:1混合物。
【0023】
【表1】


【0024】各処理液を、柔軟処理を施していないティッシュペーパーに、付着量が表1に示す量(有効成分換算量)となるようにスプレー噴霧処理した後、24時間風乾させ、その後、更に恒温恒湿室(温度20℃、湿度65%RH)内で12時間以上放置し、含有水分率が平衡になった後、ティッシュペーパーの柔軟性、吸水性を評価した。結果を未処理のティッシュペーパーの場合とあわせて表1に示す。
【0025】処理後のティッシュペーパーの柔軟性、吸水性は以下のようにして評価した。
柔軟性被試験紙を5枚片手で握り、柔軟性の官能性評価を行った。評価基準は以下の5段階とした。
5:非常に柔らかい4:柔らかい3:やや柔らかい2:柔軟剤未使用と同等1:柔らかくない
【0026】吸水性処理後のティッシュペーパーにスポイトから水滴(イオン交換水)を滴下し、吸水状態を未処理のティッシュペーパーと比較して以下の基準で評価した。
○:未処理のものに比べて吸水性が良好となる。
△:未処理のものと同程度の吸水性。
×:未処理のものより吸水性が悪くなり、紙本来の吸水性が阻害される。
【0027】比較例1〜10表2に示す処理剤を用い、その有効成分としての含有率が40.0重量%(乳化剤を併用した場合には乳化剤も含めた合計の含有率が40重量%)となるように、処理剤を水に溶解又は分散させて処理液を調整した。比較例8〜10については、表2に示す量のポリオキシエチレンアルキルエーテルを乳化剤として併用し、温水加水法により乳化して処理液を調整した。尚、乳化剤として、比較例8はポリオキシエチレン(30モル)ラウリルエーテルを、比較例9はポリオキシエチレン(20モル)ステアリルエーテルを、比較例10はポリオキシエチレン(8モル)セチルエーテルを使用した。
【0028】
【表2】


【0029】各処理液を、柔軟処理を施していないティッシュペーパーに表2に示す付着量(有効成分換算量)となるように噴霧処理した後、24時間風乾させ、その後、更に恒温恒湿室(温度20℃、湿度65%RH)内で12時間以上放置して、含有水分率が平衡になった後、ティッシュペーパーの柔軟性、吸水性を実施例と同様に評価した。これらの結果を表2に示す。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明の紙類処理剤は、紙類に優れた柔軟性を付与できる。従来の処理剤のように柔軟性を付与しようとすると紙類の吸水性が低下するという問題がなく、本発明の処理剤で処理した紙類は柔軟性.吸水性に優れる効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 二塩基酸とジオールとのエステル化合物を含有することを特徴とする紙類処理剤。
【請求項2】 二塩基酸とジオールのエステル化合物における二塩基酸成分が、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、スベリン酸より選ばれた少なくとも1種であり、ジオールが重量平均分子量200〜15000のポリオキシエチレングリコール及び/又は重量平均分子量1000〜15000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである請求項1記載の紙類処理剤。
【請求項3】 請求項1または2記載の紙類処理剤により、二塩基酸とジオールとのエステル化合物が0.01〜10.0重量%含有されるように処理された紙類。

【公開番号】特開2003−138498(P2003−138498A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−333979(P2001−333979)
【出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】