説明

素錠のマーキング方法

【課題】素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも生産性にも優れた素錠のマーキング方法、マークが施された素錠の製造方法、及び該製造方法により得られたマークが施された素錠を提供すること。
【解決手段】(1)薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程、
(2)工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程、
を含む素錠のマーキング方法、マークが施された素錠の製造方法、並びに該製造方法により得られたマークが施された素錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素錠に、文字、図形、記号等の識別性マークを施すことができる素錠のマーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品である錠剤には、調剤時や服用時における取り違え等のミスを防止する観点から、包装のみならず、錠剤自体にも、文字等の識別性マークを施すことが好ましい。従来、錠剤が糖衣錠、フィルムコーティング錠等の被覆錠である場合には、グラビア・オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法によって、容易にマーキングすることができるが、錠剤が素錠である場合には、滲み等のため印刷法は適用できず、刻印によってマーキングされていた。しかし、刻印は、マーキングできる情報量が少ないことに加えて、1品目毎に専用の杵を要する、杵のデザイン決定から納品まで数ヶ月程度の時間がかかる、外観上の不良の発生率が高い等の種々の欠点があり、生産性に劣る。従って、刻印に代わる素錠のマーキング方法が要望されている。
【0003】
印刷法以外の錠剤のマーキング方法として、被覆錠については、被覆層に変色誘起酸化物を含有させておき、UVレーザー光を走査して、錠剤表面に良好にマーキングできる方法(特許文献1及び非特許文献1参照)が公知である。
【0004】
上記公知のマーキング方法を素錠に応用することも試みられてはいるものの、具体的には、変色誘起酸化物を含む錠剤成分をそのまま圧縮成型して得た素錠に、レーザー光を走査してマーキングするものであり(特許文献1特に段落〔0038〕〜〔0040〕等参照)、マークにある程度の視認性は認められるものの、被覆錠へのマーキングに比して、マークの鮮明性において明らかに劣っていた。従って、素錠へのマーキング方法としては、十分に満足のいく方法であるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/126561号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】製剤機械技術研究会誌Vol.18,No.1,P5-14(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも生産性にも優れた素錠のマーキング方法、マークが施された素錠の製造方法、及び該製造方法により得られたマークが施された素錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した。その結果、薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒した後、更に添加剤を混合後、打錠して素錠を得た後、UVレーザー光を走査してマーキングする場合には、素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも生産性にも優れていることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下に示す、素錠のマーキング方法、マークが施された素錠の製造方法、及び該製造方法により得られたマークが施された素錠を提供するものである。
【0010】
1.(1)薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程、
(2)工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程、
を含む素錠のマーキング方法。
【0011】
2.工程(2)で添加する添加剤の添加量が、素錠重量に基づいて、0.1〜20重量%である上記項1に記載のマーキング方法。
【0012】
3.前記変色誘起酸化物が、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記項1又は2に記載のマーキング方法。
【0013】
4.前記変色誘起酸化物の配合量が、素錠重量に基づいて、0.01〜20.0重量%である上記項1乃至3のいずれかに記載のマーキング方法。
【0014】
5.UVレーザー光の波長が、350〜360nmの範囲内であり、UVレーザー光の出力が、0.1〜10Wの範囲内である上記項1乃至4のいずれかに記載のマーキング方法。
【0015】
6.(1)薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程、
(2)工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程、
を含むマークが施された素錠の製造方法。
【0016】
7.上記項6に記載の製造方法によって得られたマークが施された素錠。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程(1)、造粒物に更に添加剤を混合後、打錠する工程(2)、素錠にUVレーザー光を走査してマーキングする工程(3)を含むことによって、以下の如き格別顕著な効果を得ることができる。
【0018】
(1)本発明のマーキング方法によれば、素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができる。その理由としては、次の様に考えられる。即ち、(ア)工程(1)で変色誘起酸化物を含む成分を造粒することにより工程(2)で得られる素錠中に変色誘起酸化物を均一に分散させることができる。(イ)また、工程(2)において、工程(1)で得られた変色誘起酸化物を含む造粒物間の空隙に、工程(2)で添加された添加剤が入り込んだ状態で打錠される。これらの(ア)及び(イ)の2点から、変色誘起酸化物を含む造粒物が素錠の表層部に均一に存在し、必然的に表層部に変色誘起酸化物が均一に存在した状態になるので、工程(3)でUVレーザー光を走査したときに、レーザー光による素錠表層部の変色が容易になり、その結果マーキングが鮮明になるものであると推定される。
【0019】
(2)本発明のマーキング方法及びマークが施された素錠の製造方法によれば、造粒工程(1)、添加剤の混合・打錠工程(2)及びUVレーザー光の走査工程(3)という、簡便で自動化が容易な工程によって、素錠のマーキングができるので、生産性に優れている。
【0020】
(3)また、得られたマークが施された素錠は、UVレーザー光の走査によって、素錠のマーキングができることにより、マーキングできる情報量が多く、又マーキングできるデザインも多様であり、コンピューター等で信号入力されるためデザイン変更も容易である。また、素錠の曲面部分や割線等の溝部分にも好適にマーキングできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実験例1でマーキングした素錠の写真である。
【図2】実験例2でマーキングした素錠の写真である。
【図3】実験例3でマーキングした素錠の写真である。
【図4】実験例4でマーキングした素錠の写真である。
【図5】実験例5でマーキングした素錠の写真である。
【図6】実験例6でマーキングした素錠の写真である。
【図7】実験例7でマーキングした素錠の写真である。
【図8】実験例8でマーキングした素錠の写真である。
【図9】実施例1でマーキングした素錠の写真である。
【図10】比較例1でマーキングした素錠の写真である。
【図11】実施例2でマーキングした素錠の写真である。
【図12】実施例3でマーキングした素錠の写真である。
【図13】実施例4でマーキングした素錠の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
素錠のマーキング方法
本発明の素錠のマーキング方法は、薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程(1)、工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程(2)、次いで工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程(3)を行うことを必須とすることによって、素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも生産性にも優れているものである。
【0023】
工程(1)
工程(1)は、薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を、混合・造粒する工程である。この造粒物を、続く工程(2)において打錠することによって、薬物及び変色誘起酸化物を、得られる素錠中に均一に分散させることができる。造粒方法としては、特に限定されず、例えば、流動層造粒、高速撹拌造粒、転動造粒、押出造粒等の各種造粒方法を採用することができる。得られた造粒物は、通常、乾燥後、必要に応じて、整粒した後、工程(2)に供される。
【0024】
薬物
工程(1)において用いられる薬物としては、特に限定されず、例えば、治療薬、診断薬、医薬部外品、特定健康食品、保健食品などの有効成分を包含する。治療薬は、合成化合物や、タンパク質およびペプチドなどの生物由来化合物等を含む医薬であってよく、診断薬は、X線造影剤等の診断に使用される薬物である。薬物の種類としては、特に限定されないが、例えば、抗腫瘍薬、抗生物質、抗炎症薬、鎮痛薬、骨粗しょう症薬、抗高脂血症薬、抗菌薬、鎮静薬、精神安定薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、消化器系疾患治療薬、アレルギー性疾患治療薬、高血圧治療薬、動脈硬化治療薬、糖尿病治療薬、ホルモン薬、脂溶性ビタミン薬、生薬などが挙げられる。また、医薬部外品などの有効成分は、作用が緩和なものであり、アミノ酸、ビタミン類、ポリフェノールなどが挙げられる。これらの薬物としては、1種類単独で含んでいても、2種以上を混合して含んでいてもよい。その含有量としては、それぞれの薬物の有効量とすればよい。
【0025】
変色誘起酸化物
工程(1)において用いられる変色誘起酸化物は、UVレーザー光によって色調が変化することによって、マーキングするために使用される金属酸化物である。変色誘起酸化物としては、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等から選択される1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、用いることができる。酸化チタンとしては、特に限定されるものではなく、ルチル型、アナターゼ型またはそれらの混合物、あるいはシリカ等を内包する加工又は改質した酸化チタンも含まれる。例えば、日本薬局方収載の製品を使用することができる。黄色三二酸化鉄としては、天然に存在する顔料であり、医薬品添加物規格に収載され、着色剤として使用されている。黄色三二酸化鉄は黄色から帯褐黄色の粉末であり、水にほとんど溶けない。三二酸化鉄は、天然に存在する顔料であり、医薬品添加物規格に収載され、着色剤として使用されている。三二酸化鉄は赤色から赤褐色又は暗赤紫色の粉末であり、水にほとんど溶けない。
【0026】
変色誘起酸化物の配合量は、特に限定されず、UVレーザー光による変色が認識できる量であればよい。具体的には、通常、素錠重量に基づいて、0.01〜20.0重量%程度であるのが好ましく、0.1〜10.0重量%程度であるのがより好ましい。
【0027】
添加剤
工程(1)において用いられる添加剤としては、製剤原料として、製薬分野等において通常使用される薬理学的に許容される各種添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、着色剤、滑沢剤、甘味剤、香料等の添加剤を、適宜組み合わせて、用いることができる。添加剤の使用量としては、特に限定されず、通常、薬物及び変色誘起酸化物を除いた残部となる量である。
【0028】
賦形剤としては、例えば、デキストリン、白糖、果糖、乳糖、トウモロコシデンプン、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、軽質無水ケイ酸、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、各種デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
結合剤としては、例えば、ショ糖等の糖類、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、部分α化デンプン、寒天などが挙げられる。これらの結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、リボフラビン等が挙げられる。これらの着色剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの着色剤の内、金属酸化物であるものは、変色誘起酸化物としての性質も備えている。
【0032】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0033】
甘味剤としては、例えば、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシドなどを挙げることができる。
【0034】
香料としては、例えば、ストロベリーフレーバー、レモンフレーバー、レモンライムフレーバー、オレンジフレーバー、抹茶フレーバー、ミルクフレーバー、l−メントール、ハッカ油などが挙げられる。
【0035】
本発明においては、更に、その他の添加剤として、例えば、甘味剤以外の矯味剤、流動化剤、帯電防止剤、界面活性剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、防湿剤、抗酸化剤、保存剤(例えば防腐剤など)、緩衝剤などを用いることもできる。
【0036】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程である。工程(2)で用いられる添加剤としては、工程(1)で用いられる添加剤と同様のものを適宜選択して使用できる。また、工程(2)で添加する添加剤の添加量は、造粒物間の空隙を埋めるために必要十分な量だけ用いるのが好ましい。この添加量としては、通常、素錠重量に基づいて、0.1〜20重量%程度であるのが好ましい。0.1重量%未満では打錠障害が生じたりする場合があり、一方20重量%を超えるとマーキングの鮮明性が低下することがある。即ち、工程(2)で使用される添加剤は、打錠するために不可欠のものであるが、20重量%を超えて添加量が多すぎる場合には、造粒物間の空隙を埋めるのみでなく、造粒物の外表面が覆われてしまい、素錠表層部に変色誘起酸化物の存在する面積が小さくなるため、マーキングの鮮明性が低下することとなる。
【0037】
打錠は、常法により、行うことができる。打錠機としては、医薬品等の製造に使用しうるものであれば特に制限はなく、例えばロータリー式打錠機や単発打錠機などが使用される。打錠することによって、素錠が得られる。
【0038】
工程(3)
工程(3)は、工程(2)において得られた素錠に、UVレーザー光を走査して、マーキングする工程である。工程(3)で用いるレーザーは、特に限定されるものではなく、レーザー媒質(レーザー発振の元)が、固体、液体、気体の各状態でレーザー発振できるものを使用することができるが、好ましくは固体レーザーである。固体レーザーとしては、YLFレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー等が挙げられる。
【0039】
UVレーザー光の波長は、350〜360nm程度であるのが好ましく、355nmであるのがより好ましい。また、UVレーザー光の出力は、平均出力0.1W〜10W程度であるのが好ましい。この程度の出力であれば、素錠表面で食刻が発生することが無く、又変色も十分である。
【0040】
UVレーザーの走査方式としては、特に限定されるものではないが、例えば、電気信号に応じてミラーの回転角を変えることができる偏向器を用いたガルバノミラー型、共振周波数の正弦波で駆動させて用いる共振型の偏向器であるレゾナントスキャン型、複数のミラーを利用するポリゴンミラー型等が挙げられる。周波数、パルスエナジー、スキャナースピード、エキスパンダー等のレーザー照射条件は、適宜決定すればよい。
【0041】
UVレーザー光により、マーキングすることによって、素錠中の変色誘起酸化物が変色してなるマークが、素錠表面に施される。マークとしては、商品名、薬物名、会社名、ロゴ等の文字、図形、記号等の素錠を識別できる各種マークを施すことができる。また、レーザーマーキング法によれば、素錠にマーキングできる情報量が多く、又マーキングできるデザインも多様であり、コンピューター等で信号入力されるためデザイン変更も容易である。また、素錠の曲面部分や割線等の溝部分にも好適にマーキングできる。
【0042】
マークが施された素錠の製造方法
本発明のマークが施された素錠の製造方法は、薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程(1)、工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程(2)、次いで工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程(3)を行うことを必須とすることによって、素錠に鮮明性に優れたマークが施された素錠を、優れた生産性で、製造できるものである。
【0043】
本発明のマークが施された素錠の製造方法における工程(1)、工程(2)及び工程(3)は、それぞれ、素錠のマーキング方法における工程(1)、工程(2)及び工程(3)と同様である。当該製造方法により、本発明のマークが施された素錠を得ることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実験例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの各例によって何ら制限されるものではない。
【0045】
各例において、レーザー光の走査は、レーザー照射装置(クオリカプス社製、機種「UVレーザーマーキング装置LIS―250」)を用い、レーザー波長355nm、平均出力1W〜6W、周波数20kHz、パルスエナジー65%、スキャナースピード2000mm/sec、エキスパンダー9mmの照射条件にて、行った。
【0046】
実験例1
プラセボ実験(酸化チタン0.1重量%を工程(1)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部、酸化チタン0.5重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物にステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0047】
実験例1で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図1に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0048】
実験例2
プラセボ実験(酸化チタン0.1重量%を工程(2)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物に酸化チタン0.5重量部、ステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0049】
実験例2で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図2に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0050】
実験例3
プラセボ実験(酸化チタン0.3重量%を工程(1)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部、酸化チタン1.5重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物にステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0051】
実験例3で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図3に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0052】
実験例4
プラセボ実験(酸化チタン0.3重量%を工程(2)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物に酸化チタン1.5重量部、ステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0053】
実験例4で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図4に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0054】
実験例5
プラセボ実験(酸化チタン0.5重量%を工程(1)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部、酸化チタン2.5重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物にステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0055】
実験例5で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図5に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0056】
実験例6
プラセボ実験(酸化チタン0.5重量%を工程(2)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物に酸化チタン2.5重量部、ステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0057】
実験例6で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図6に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0058】
実験例7
プラセボ実験(酸化チタン0.5重量%を工程(1)で添加;高速撹拌造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部、酸化チタン2.5重量部を高速撹拌造粒機中で混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物にステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0059】
実験例7で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図7に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0060】
実験例8
プラセボ実験(三二酸化鉄0.5重量%を工程(1)で添加;流動層造粒法)
乳糖水和物350重量部、トウモロコシデンプン150重量部を流動層造粒機中で混合した後、それらを、三二酸化鉄2.5重量部を分散したヒドロキシプロピルセルロース5重量%水溶液(固形分として15重量部)で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物にステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:VELA5 株式会社菊水製作所)にて打錠し、直径8.0mm、1錠重量160mgの錠剤を得た。
【0061】
実験例8で得た素錠に、レーザー光を走査して、社名ロゴ(sawai)の表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図8に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0062】
実験例1〜8の実薬剤を用いないプラセボ実験により、次の点が判る。実験例1〜6で得られたマーキングされた素錠を示す図1〜6を比較すると、変色誘起酸化物である酸化チタンを工程(1)の造粒時に添加する場合(実験例1、3及び5)の方が、酸化チタンを工程(2)で添加する場合(実験例2、4及び6)に比してマーキングの鮮明性が高いこと、工程(1)で酸化チタンを添加する実験例1、3及び5で得られた素錠を示す図1、3及び5から、酸化チタンの添加量が多くなるにつれてマーキングが鮮明となることが明らかである。実験例5及び7で得られた素錠を示す図5と7を比較すると、工程(1)で酸化チタンを添加する場合、造粒法は流動層造粒であっても高速撹拌造粒であってもマーキングの鮮明性に実質的に差がないことが明らかである。また、実験例8で得られた素錠を示す図8によって、工程(1)で変色誘起酸化物である三二酸化鉄を添加する場合にも、十分にマーキングできることが明らかである。
【0063】
実施例1
実薬剤入り実験(酸化チタン0.5重量%を工程(1)で添加;高速撹拌造粒法)
シロスタゾール(日本薬局方、抗血小板剤)200重量部、D−マンニトール230重量部、アスパルテーム5重量部、クロスポビドン25重量部、ヒドロキシプロピルセルロース5重量部、酸化チタン2.5重量部を高速撹拌造粒機中で混合した後、それらを精製水で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物に結晶セルロース25重量部、軽質無水ケイ酸2.5重量部、ステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0064】
実施例1で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図9に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0065】
比較例1
実薬剤入り実験(酸化チタン0.5重量%を工程(2)で添加;高速撹拌造粒法)
シロスタゾール(日本薬局方、抗血小板剤)200重量部、D−マンニトール230重量部、アスパルテーム5重量部、クロスポビドン25重量部、ヒドロキシプロピルセルロース5重量部を高速撹拌造粒機中で混合した後、それらを精製水で造粒し、乾燥後、整粒した。整粒物に結晶セルロース25重量部、酸化チタン2.5重量部、軽質無水ケイ酸2.5重量部、ステアリン酸マグネシウム5重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、直径9.0mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0066】
比較例1で得た素錠に、レーザー光を走査して、英字社名(Sawai)、製品名(シロスタゾール)及びOD(口腔内崩壊錠の表示)と薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図10に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0067】
実施例2
工程(2)で添加する添加剤の添加物量3重量%
シロスタゾール(日本薬局方、抗血小板剤)100重量部、乳糖水和物56.94重量部、D−マンニトール55重量部、結晶セルロース8重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8重量部、クロスポビドン8重量部、アスパルテーム3.75重量部、酸化チタン1.25重量部、ヒドロキシプロピルセルロース1重量部を混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロースの5重量%水溶液で混練し(固形分として1.5重量部)、乾燥、整粒した。整粒物に軽質無水ケイ酸2.5重量部、香料0.31重量部、ステアリン酸マグネシウム3.75重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、長径12.0mm、短径5.8mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0068】
実施例2で得た素錠に、レーザー光を走査して、社名ロゴ(sawai)、製品名(シロスタゾールOD)及び薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図11に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0069】
実施例3
工程(2)で添加する添加剤の添加物量13重量%
シロスタゾール(日本薬局方、抗血小板剤)100重量部、乳糖水和物56.94重量部、D−マンニトール30重量部、結晶セルロース8重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8重量部、クロスポビドン8重量部、アスパルテーム3.75重量部、酸化チタン1.25重量部、ヒドロキシプロピルセルロース1重量部を混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロースの5重量%水溶液で混練し(固形分として1.5重量部)、乾燥、整粒した。整粒物にD−マンニトール25重量部、軽質無水ケイ酸2.5重量部、香料0.31重量部、ステアリン酸マグネシウム3.75重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、長径12.0mm、短径5.8mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0070】
実施例3で得た素錠に、レーザー光を走査して、社名ロゴ(sawai)、製品名(シロスタゾールOD)及び薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図12に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0071】
実施例4
工程(2)で添加する添加剤の添加物量25重量%
シロスタゾール(日本薬局方、抗血小板剤)100重量部、乳糖水和物56.94重量部、結晶セルロース8重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース8重量部、クロスポビドン8重量部、アスパルテーム3.75重量部、酸化チタン1.25重量部、ヒドロキシプロピルセルロース1重量部を混合した後、それらをヒドロキシプロピルセルロースの5重量%水溶液で混練し(固形分として1.5重量部)、乾燥、整粒した。整粒物にD−マンニトール55重量部、軽質無水ケイ酸2.5重量部、香料0.31重量部、ステアリン酸マグネシウム3.75重量部を加えて混合し、打錠用の粉末を得た。この打錠用粉末をロータリー式打錠機(型式:PICCOLA TSM−6 RIVA)にて打錠し、長径12.0mm、短径5.8mm、1錠重量250mgの素錠を得た。
【0072】
実施例4で得た素錠に、レーザー光を走査して、社名ロゴ(sawai)、製品名(シロスタゾールOD)及び薬剤含有量(100)の三段表示をマーキングした。マーキングによって得られたマークの色は灰色であった。図13に、マーキングされた素錠の拡大モノクロ写真を示す。
【0073】
実施例1、比較例1及び実施例2〜4の実薬剤を用いた実験及び素錠のマーキング例により、次の点が判る。実施例1及び比較例1で得られたマーキングされた素錠を示す図9及び10を比較すると、実薬剤及び酸化チタンを工程(1)の造粒時に添加する場合(実施例1)の方が、実薬剤を工程(1)の造粒時に添加し、酸化チタンを工程(2)で添加する場合(比較例1)に比してマーキングの鮮明性が高いことが明らかである。実施例2〜4で得られたマーキングされた素錠を示す図11〜13を比較すると、工程(1)の造粒時に酸化チタンを素錠重量に基づいて0.5重量%添加する場合において、工程(2)で添加剤を素錠重量に基づいて3重量%添加する場合(実施例2)が最もマークの鮮明性が高く、工程(2)で添加剤を素錠重量に基づいて13重量%添加する場合(実施例3)が次にマークの鮮明性が高く、工程(2)で添加剤を素錠重量に基づいて25重量%添加する場合(実施例4)はマークの鮮明性がやや低いことが明らかである。これらの結果からすると、マーキングの鮮明性の観点からは、工程(2)で添加する添加物の添加量は少ない方が好ましいことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の素錠のマーキング方法によれば、素錠に鮮明性に優れたマークを施すことができ、しかも生産性にも優れており、本発明は製薬業分野、食品業分野等において有効に利用される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程、
(2)工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程、
を含む素錠のマーキング方法。
【請求項2】
工程(2)で添加する添加剤の添加量が、素錠重量に基づいて、0.1〜20重量%である請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項3】
前記変色誘起酸化物が、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のマーキング方法。
【請求項4】
前記変色誘起酸化物の配合量が、素錠重量に基づいて、0.01〜20.0重量%である請求項1乃至3のいずれかに記載のマーキング方法。
【請求項5】
UVレーザー光の波長が、350〜360nmの範囲内であり、UVレーザー光の出力が、0.1〜10Wの範囲内である請求項1乃至4のいずれかに記載のマーキング方法。
【請求項6】
(1)薬物、変色誘起酸化物及び添加剤を造粒する工程、
(2)工程(1)で得られた造粒物に、添加剤を混合後、打錠する工程、並びに
(3)工程(2)で得られた素錠にUVレーザー光を走査して、マーキングする工程、
を含むマークが施された素錠の製造方法。
【請求項7】
請求項6の製造方法によって得られたマークが施された素錠。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−40165(P2013−40165A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157259(P2012−157259)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】