説明

紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法

【目的】 パンチングによる深さのばらつきが少なく、略一定深さの原液導入孔を得る。
【構成】 薄板の口金板に多数の原液導入孔をパンチングによるイボをイボ受台の溝で拘束しながら穿設するに際し、イボが形成される口金板の表面の粗さを大きくしてイボ受台の溝でのイボの拘束力を強化して原液導入孔をパンチングにより穿設することを特徴とする紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紡糸口金の製造方法に係り、特に原液導入孔の穿設方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紡糸口金を製造するには、図1に示すように口金板1にパンチ工具2により多数の円錐状の原液導入孔3を穿設し、次に原液導入孔3の底の裏側に形成されたイボ4を、図2に示すように研削除去し、次いで各原液導入孔3の底に図3に示すようにリーマ工具5にてストレートの原液吐出孔6を貫通穿設し、然る後原液吐出孔6の開口周縁に形成されたばり7を図4に示すように研摩除去して紡糸孔8を得る。
【0003】ところで、この紡糸口金の製造方法に於いて、口金板1に原液導入孔3を穿設する際には、図5に示すように口金板1をNC機の回転テーブル9上のイボ受台10に載せてホルダー12にて締付け固定し、パンチ工具2により原液導入孔3を穿設し、パンチ工具2によって原液導入孔3の裏側に押出されるイボ4をイボ受台10の溝11で拘束し、多数の原液導入孔3を順次穿設していくが、口金板1の材料が延びようとする力は拘束しているイボ4を図6に示すように溝11から浮き上がらせるように働く。その結果、口金板1の一部又は全面において原液導入孔3の穿設途中でイボ4が溝11より外れ、口金板1がイボ受台10より浮き上がって、原液導入孔3の穿設深さにむらが生じ、最終的には不良の紡糸孔8となる。このような不良の紡糸孔8を有する紡糸口金で化学繊維を紡糸すると、糸切れ、デニールむら等が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、原液導入孔の穿設時、原液導入孔の底の裏側に形成されるイボが、イボ受台の溝から浮き上がるのを防止し、深さにばらつきが少なく、略一定深さの原液導入孔を穿設することのできる方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法は、薄板の口金板に多数の原液導入孔をパンチングによるイボをイボ受台の溝で拘束しながら穿設するに際し、イボが形成される口金板の表面の粗さを大きくしてイボ受台の溝でのイボの拘束力を強化して原液導入孔をパンチングにより穿設することを特徴とするものである。
【0006】
【作用】上記にように本発明の紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法は、口金板に原液導入孔を穿設する際、イボが形成される口金板の表面の粗さを大きくするので、原液導入孔の穿設により形成されたイボとイボ受台の溝の内側面との摩擦が大きくなり、口金板の材料が延びて浮き上がろうとする力が軽減されて、イボ受台の上面と口金板の表面が密着する。従って、パンチングによる原液導入孔の深さのばらつきが少なく、略一定深さの原液導入孔が得られる。
【0007】
【実施例】本発明の紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法の一実施例について説明すると、図5に示すように厚さ 0.5mm、内径 100mm、深さ10mm、フランジ外径 130mmのSUS316よりなる皿形の口金板1をNC機の回転テーブル9上のイボ受台10に載せてホルダー12にて締付け固定し、パンチ工具2により口金板1に20,000個の原液導入孔3を穿設するに際し、パンチングによりイボ4が形成される口金板1の表面の粗さを 1.0S〜 1.5Sと大きくして、原液導入孔3をパンチ工具2より穿設した。その結果、原液導入孔3の穿設により形成されたイボ4とイボ受台10の溝11の内側面との摩擦が大きくなり、口金板1の材料が延びて浮き上がろうとする力が軽減されて、イボ受台10の上面と口金板1の表面が密着する。従って、パンチングによる原液導入孔3の深さのばらつきが少なくなり、略一定深さの原液導入孔3が得られる。
【0008】一方、従来例では、パンチ工具2により上記実施例と同様に口金板1に20,000個の原液導入孔3を穿設する際のパンチングによりイボ4が形成される口金板1の表面の粗さは 0.5S〜 0.8Sと小さいものであった。この為原液導入孔3の穿設により形成されたイボ4をイボ受台10の溝11の内側面との摩擦が小さく、口金板1の材料が延びて浮き上がろうとする力が大きく、イボ受台10の溝11よりイボ4が浮き上がる。その結果口金板1の一部において、原液導入孔3の穿設途中でイボ4が溝11より外れ、口金板1がイボ受台10より浮き上がって原液導入孔3の穿設深さが不均一となった。
【0009】
【発明の効果】以上の通り本発明の紡糸口金の原液導入孔の穿設方法によれば、パンチングによる原液導入孔の深さのばらつきが少なくなり、略一定深さの原液導入孔が得られる。従って、最終的には寸法精度の良好な紡糸孔が得られ、化学繊維を紡糸した際、糸切れ、デニールむら等が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】紡糸口金の製造方法の工程を示す概略図である。
【図2】紡糸口金の製造方法の工程を示す概略図である。
【図3】紡糸口金の製造方法の工程を示す概略図である。
【図4】紡糸口金の製造方法の工程を示す概略図である。
【図5】口金板に原液導入孔を穿設する時の状態を示す詳細図である。
【図6】図5の原液導入孔の穿設において口金板がイボ受台より部分的に浮き上がった状態を示す図である。
【符号の説明】
1 口金板
2 パンチ工具
3 原液導入孔
4 イボ
10 イボ受台
11 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄板の口金板に多数の原液導入孔をパンチングによるイボをイボ受台の溝で拘束しながら穿設するに際し、イボが形成される口金板の表面の粗さを大きくしてイボ受台の溝でのイボの拘束力を強化して原液導入孔をパンチングにより穿設することを特徴とする紡糸口金に於ける原液導入孔の穿設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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