説明

紡糸装置

多数の紡糸ノズルを備えた、多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置が記載されている。紡糸ノズルは密に隣接する2つのノズル列で機械長手方向側に沿って平行に配置されている。ノズル列の下位には、紡糸ノズルから押出成形された糸を冷却するための冷却装置が設けられており、この冷却装置は、2つの別個の冷却シャフトと、冷却流源に接続された中心の圧力室とを備えた少なくとも1つのダブル冷却シャフトを有している。多数の糸において全ての糸の一様な冷却を得る一方で、ノズル列のできるだけ密な構成を可能にするためには、両紡糸ノズル列の多数の紡糸ノズルを機械長手方向側に沿って複数の紡糸位置に分割し、これらの紡糸位置にそれぞれ複数のダブル冷却シャフトの内の1つを対応配置し、更に、ダブル冷却シャフトの中心の圧力室を、機械長手方向側に隣接して配置された側方の空気通路を介して冷却流源に接続することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置に関する。
【0002】
このような形式の紡糸装置はヨーロッパ特許第0742851号明細書から公知である。
【0003】
公知の紡糸装置の場合、多数の糸を溶融紡糸するためには複数の紡糸ノズルが平行な2つの列に相並んで配置される。これらの紡糸ノズルは1つ又は複数の溶融物源と接続されているので、各紡糸ノズルからはマルチフィラメントヤーンが押出成形される。紡糸ノズルは1つの加熱された紡糸バー内に配置されている。この紡糸バーの下位にはダブル冷却シャフトを備えた冷却装置が形成されており、これにより、各ノズル列には別個の冷却シャフトが対応配置されている。両冷却シャフトは冷却流源に接続された共通の圧力室と協働する。
【0004】
前記紡糸装置を用いて比較的多数の糸を同時に製作しようとする場合は、空間利用に関してノズル列ができるだけ密に隣接するように配置される。しかしこれにより、冷却空気供給の問題が生じる。それというのも、ノズル列間に形成された圧力室のために供与される空間が相応に小さくなるからである。しかし、空調装置を経済的に利用するためには、供給通路内でできるだけ低い流速を維持する必要がある。更に、押出成形される糸の本数が多い場合は全ての糸の均等な冷却の問題が生じる。
【0005】
従って本発明の課題は、冒頭で述べた形式の紡糸装置を改良して、両ノズル列の紡糸ノズルが密に隣接し合っているにもかかわらず、全ての糸の均一な集中冷却が達成される紡糸装置を提供することである。
【0006】
本発明の別の課題は、糸冷却のためにノズル列のコンパクトな構成と同時に冷却流源の十分な冷却空気量を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明に基づき請求項1の上位概念に記載の紡糸装置によって、両紡糸ノズル列の多数の紡糸ノズルが機械長手方向側に沿って複数の紡糸位置に分割されており、これらの紡糸位置に、それぞれ複数のダブル冷却シャフトの内の1つが対応配置されており、該ダブル冷却シャフトの中心の圧力室が、機械長手方向側に隣接して配置された側方の空気通路を介して冷却流源と接続されていることにより解決される。
【0008】
本発明は特に、複数の紡糸位置が形成されていることにより紡糸ノズルが複数群に分割されており、各紡糸ノズル群にそれぞれ1つのダブル冷却シャフトが対応配置されているという点において優れている。これにより、このダブル冷却シャフト内で同時に冷却される糸の本数が限定され得る。この場合、全てのダブル冷却シャフトの冷却空気供給は機械長手方向側の側方に隣接して配置された1空気通路を介して保証される。これにより、ノズル列の間隔とは無関係であり、専ら量及び供給システムにおける許容可能な圧力低下に基づいて選択することのできる空気通路の供給横断面が選択可能である。このようにして、有利には10m/s未満の低い流速が実現され得る。本発明の別の特別な利点は、ノズル列内の紡糸ノズルが極めて密に且つコンパクトに配置され得るという点にある。
【0009】
複数のダブル冷却シャフトを中央の空気通路に接続するためには、個々の圧力室又は圧力室群が横方向接続管片を介して空気通路に接続されている。この場合、横方向接続管片は、有利には各紡糸位置間に形成されている。
【0010】
ノズル列に対応した糸群が確実に、極めて静かな糸走行を以て共通の集合平面に進入できるようにするためには、ダブル冷却シャフトの冷却シャフトがそれぞれ共通の落下シャフトに開口している。これらの落下シャフトは下方に向かって先細になる形を有しているので、横方向接続管片は有利には各落下シャフト間に配置されている。
【0011】
両糸群の糸において、有利には既に集合平面内へ進入する前に、ダブル冷却シャフトの冷却シャフトにそれぞれ対応配置された2つの別個の準備装置によって糸の圧縮が得られる。
【0012】
本発明の別の有利な構成は特に、複数の長手方向モジュールの形成に基づいて紡糸位置が複数群に分割されており、各群の紡糸ノズルの配置形式及び温度調整が同一に保持されているという点において優れている。長手方向モジュール間に形成された通路に基づいて、各長手方向モジュールは機械長手方向の両側から操作可能である。これにより、プロセス開始時又はプロセス中断後に特に短い糸継ぎ時間が実現され得る。それというのも、1人のオペレータが長手方向モジュールの両ノズル列の紡糸ノズルに供給可能だからである。
【0013】
長手方向モジュールがそれぞれボックス形のノズル支持体によって形成され、このノズル支持体が熱媒体によって加熱されており且つ通路に面した端部において流入部と流出部とを介して熱媒体が供給される本発明の更に別の有利な構成は、紡糸位置で紡糸ノズルを均一に温度調整するために特に有利である。更に、ボックス形のノズル支持体に機械長手方向側に向けられた僅かな傾斜を設けることによって、長手方向に向けられた熱媒体回路が簡単に実現され得る。更に別の利点は、紡糸装置内に複数の通路によって形成された自由空間が、有利には冷却空気供給用並びに別の供給導管及び供給ユニット用に利用可能であるという点にある。
【0014】
各紡糸位置内で、例えば糸破断等の事象を一方の紡糸ノズル列若しくは紡糸ノズル列の1紡糸ノズルに対応させられるようにするためには、本発明の更に別の有利な構成に基づいて、糸が集合平面内で予め規定された順序にまとめられる。つまり、例えば集合平面内で一方のノズル列の糸群が隣接するノズル列の糸群の隣でガイドされる順序が形成され得る。但し、両ノズル列の糸を集合平面内で交互に相並べてガイドすることも可能である。
【0015】
1紡糸位置内の多数の糸に基づいて、ワインダは紡糸位置毎に有利には2つの巻取りユニットを備えた1つの巻取り機、又は各1つの巻取りユニットを備えた複数の巻取り機によって形成される。これにより、高速の巻取り速度に適したコンパクトな巻取りユニットが形成され得る。
【0016】
更に、1ノズル列の糸群をできるだけ同時にパッケージに巻成するためには、処理後に引き出される糸群を巻取りユニットにおいて分割し、これにより、一方のノズル列の糸と他方のノズル列の糸とを予め規定した対応配置でパッケージに巻成することを提案する。この場合、有利には前記対応配置は一方のノズル列の糸が全て1巻取りユニットのボビンスピンドルに巻き取られるように選択される。
【0017】
即ち、本発明は特に従来の紡糸装置と比較して約40%だけ小さな所要スペースを占める、極めてコンパクトな構成という点において優れている。
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0019】
図1、図2及び図3には、本発明による紡糸装置の1実施例が異なる図面で示されている。図1は機械長手方向側を示しており、図2は図1に示した紡糸装置の部分的な2つの紡糸位置を示しており、図3は1紡糸位置を機械長手方向側に対して横方向で示している。以下の説明は、これらの図面の内の1つに関連付けない限り、全ての図面に当てはまる。
【0020】
紡糸装置は、図1,2及び3では側方の支持体としてしか示されていない多層の機械フレーム1によって保持される。機械フレーム1の上層には複数の長手方向モジュール2.1,2.2,2.3が機械長手方向側に沿って相並んで配置されている。これらの長手方向モジュール2.1,2.2,2.3はそれぞれ多数の紡糸ノズル4を有しており、これらの紡糸ノズル4は2列の平行なノズル列A,Bで配置されている。
【0021】
図1に示したように、機械長手方向側に沿って配置された長手方向モジュール2.1,2.2,2.3はそれぞれ通路Dによって互いに分離されている。この場合、長手方向モジュール2.1,2.2,2.3間のこの通路Dは、機械フレーム1の全ての層にわたって延在している。
【0022】
長手方向モジュール2.1,2.2,2.3は、それぞれボックス形のノズル支持体8.1,8.2,8.3によって形成される。これらのボックス形のノズル支持体8.1,8.2,8.3の内部には、長手方向モジュールに対応配置された複数の紡糸ノズル4、これらの紡糸ノズル4に結合された分配ポンプ5及び溶融物分配装置(図示せず)が配置されている。溶融物を案内する構成部材を加熱するために、ノズル支持体8.1,8.2,8.3はそれぞれ熱媒体回路に接続されている。このためには、ノズル支持体8.1,8.2,8.3の端面33にそれぞれ流入部11及び流出部12が配置されている。流出部12はそれぞれノズル支持体8.1,8.2,8.3の下部域に形成されており、この場合、ノズル支持体はやや傾斜された配置形式で保持されているので、復水として生じる熱媒体は簡単に導出され得る。流入部11及び流出部12の供給導管は、有利には通路Dの範囲に形成されている。
【0023】
長手方向モジュール2.1,2.2,2.3の上位に配置された溶融物形成装置若しくは溶融物分配装置は図示されていない。例えば、複数の長手方向モジュールの溶融物を案内する構成部材は押出機を介して溶融物を供給され得る。
【0024】
長手方向モジュール2.1,2.2,2.3は、それぞれ複数の紡糸位置に分割されている。以下にこれらの紡糸位置の構成を図2及び図3に示した長手方向モジュール2.1に基づき詳しく説明する。
【0025】
紡糸位置3.1,3.2,3.3,3.4はそれぞれ合計12の紡糸ノズル4を有しており、これらの紡糸ノズル4は2列のノズル列A,Bに均等に分けられている。ノズル列A,Bの紡糸ノズルは、それぞれ分配ポンプ5に接続されている。各分配ポンプ5は駆動軸6を有しており、この駆動軸6は駆動装置(図示せず)に結合されている。各1つの溶融物接続部7を介して分配ポンプ5にポリマ溶融物が供給される。
【0026】
図2及び図3に示した実施例では、1つの紡糸位置の紡糸ノズルは2つの別個の分配ポンプによって供給される。但し、2列のノズル列に設けられた総数6又は8の紡糸ノズルにおいて、全ての紡糸ノズルが1つの分配ポンプによって供給されるということも可能である。この場合、紡糸位置毎の紡糸ノズル数は一例にすぎないということを指摘しておく。
【0027】
ノズル支持体8.1,8.2,8.3の下位には冷却装置13が配置されている。この冷却装置13は紡糸位置毎に各1つのダブル冷却シャフト14を有している。つまり、第1の長手方向モジュール2.1の紡糸位置3.1〜3.4にはそれぞれダブル冷却シャフト14.1,14.2,14.3,14.4が対応配置されている。
【0028】
図3から判るように、各ダブル冷却シャフト14.1〜14.4は、それぞれノズル列A及びノズル列Bの紡糸ノズル4に対応配置された2つの別個の冷却シャフト15.1,15.2によって形成される。ダブル冷却シャフト14.1〜14.4は冷却シャフト15.1,15.2間に各1つの圧力室16を有している。冷却シャフト15.1,15.2と圧力室16との間には吹付け壁17.1,17.2が形成されているので、横方向に向けられた冷却空気流が冷却シャフト15.1,15.2内に生ぜしめられる。ダブル冷却シャフト14.1〜14.4の圧力室16の下部域は、空気接続部18及び横方向接続管片19を介して中央の空気通路20に接続されている。この中央の空気通路20は機械長手方向側に対して側方で平行に延びており且つ冷却装置13の全てのダブル冷却シャフトに空気を供給する。この場合、空気通路20は一般に空調装置によって形成される冷却流源(図示せず)に接続されている。空気通路20を側方に配置することにより、この空気通路20は比較的大きな供給横断面を備えて形成され得、これにより、多数のダブル冷却シャフトが接続された場合でも、相応に低い流速を有する十分な空気量延いては小さな圧力低下が供与され得る。この場合、空気通路20は2つ又はそれ以上の区分によって形成されていてもよく、これらの区分は全て空調装置と接続されており、それぞれ多数のダブル冷却シャフトに冷却空気を供給する。
【0029】
空気通路20と接続された横方向接続管片19は、冷却装置13の下部域において紡糸位置間に配置されている。このためには、冷却装置13の下部域が各落下シャフトによって形成される。これらの落下シャフトは第1の長手方向モジュール2.1に関して符号34.1,34.2,34.3及び34.4で示されている。この場合、落下シャフト34.1〜34.4は下方に向かって先細になる形状を有しているので、紡糸位置間に生じる自由空間は横方向接続管片19を収容するために利用される。吹付け空気の側方供給は、紡糸ノズル列A,Bをできるだけ狭い相互間隔で配置することができるという特別な利点を有している。ノズル列A,B間に延びる中間平面を通って配置された空気供給部は、小さな供給横断面に基づいて少数のダブル冷却シャフト用にしか適さないか、又はそれどころか1つのダブル冷却シャフト用にしか適さない恐れがある。
【0030】
図1及び図2に示したように、ダブル冷却シャフトはそれぞれ1つの横方向接続管片を介して空気通路に接続される。但し、複数のダブル冷却シャフト又は例えば1つの長手方向モジュールの1ダブル冷却シャフト群を、それぞれ別個の横方向接続管片を介して空気通路に接続することも可能である。
【0031】
図3に示したように、ダブル冷却シャフト14.1の下部域では、各冷却シャフト15.1,15.2にそれぞれ準備装置23.1,23.2が対応配置されている。この場合、準備装置23.1はノズル列Aの紡糸ノズル4に対応配置されているので、押出成形されたノズル列Aのマルチフィラメントヤーン9は冷却終了時に準備装置23.1によって準備コーティングを付与される。これに対応して、ノズル列Bの紡糸ノズルから押出成形される糸10は準備装置23.2によって準備される。この準備の後で、糸9,10は共通の集合平面35内で1糸群22にまとめられる。このためには、落下シャフト34.1の出口側にガイド手段21が配置されている。このガイド手段21によって、糸群22における各糸の予め規定された順序が守られる。次に、糸群22における糸9,10の配分を詳しく説明する。
【0032】
図1、図2及び図3に示したように、冷却装置13の下位には処理装置24が配置されている。この処理装置24は多数の処理モジュール36を有しており、各紡糸位置にこれらの処理モジュール36の内の1つが対応配置されている。第1の長手方向モジュール2.1の例では、紡糸位置3.1〜3.4に処理モジュール36.1〜36.4がそれぞれ対応配置されている。これらの処理モジュールには、形成しようとする糸タイプに応じてゴデット、ゴデットユニット、交絡装置、コーム、加熱装置、準備装置等の装置が装備されている。図示の実施例では、具体的に例えば2つのゴデット25.1,25.2が示されている。
【0033】
糸群22がガイドされる集合平面35は、処理装置内でガイド手段21から第1のゴデット25.1に達する移行部において90°だけ回動される。これにより、糸はゴデット25.1に沿って、機械長手方向に対してほぼ横方向に向けられた平面内でガイドされる。
【0034】
処理装置24の下位には多数の巻取りユニットから成るワインダ26が配置されている。即ち、各紡糸位置には各2つの巻取りユニット27.1,27.2が対応配置されている。この場合、巻取りユニット27.1,27.2は1巻取り機の形又は相並んで設置された2つの巻取り機の形で形成されていてよい。図示の実施例では、巻取りユニット27.1,27.2はそれぞれ同期運転される巻取り機37.1,37.2に形成されている。即ち、ワインダ26は多数の巻取り機37から形成される。各巻取りユニット27.1,27.2において、糸群22の各糸はそれぞれパッケージ32に巻成される。このためには、これらのパッケージ32はボビンスピンドル29.1に緊締されている。このボビンスピンドル29.1は各巻取りユニット27.1,27.2においてそれぞれボビンリボルバ28によって保持される。このボビンリボルバ28は180°だけずらされて配置された第2のボビンスピンドル29.2を支持している。つまり、ボビンリボルバを回動させることによって、糸群22の糸は連続してパッケージに巻成され得る。パッケージ32の周面には圧着ローラ30が接触している。この場合、この圧着ローラに前置された、綾巻きパッケージ形成用の糸を往復ガイドするための綾振り装置は図示されていない。
【0035】
巻取りユニット27.1,27.2に糸群22が進入する手前には、糸群22の糸を分割するために紡糸位置毎に各1つのダブルガイド条片31が設けられている。この場合、紡糸ノズル列A,B若しくはノズル列A,Bの紡糸ノズルに合わされた対応配置がダブルガイド条片31によって保持される。以下、糸群の分割及び選択的な対応配置について詳しく説明する。
【0036】
図1、図2及び図3に示した紡糸装置では、冷却装置13、処理装置24及びワインダ26は各長手方向モジュール2.1,2.2,2.3に関してそれぞれ同一に構成されている。運転中、1つ又は複数の溶融物源によって例えばポリエステルベースのポリマー溶融物が形成される。このポリマー溶融物は、分配システム(詳しくは説明せず)を介して長手方向モジュール2.1,2.2,2.3の分配ポンプ5にガイドされる。これらの分配ポンプによって、ポリマー溶融物は過剰圧力を以て対応配置された紡糸ノズル4へ圧送される。各紡糸ノズル4はその下面に多数のノズル孔を有しており、これらのノズル孔を介して糸毎に1ファインフィラメント束が押出成形される。つまり、紡糸装置の各紡糸ノズルはマルチフィラメントヤーンを形成する。1つの紡糸位置内でノズル列毎に紡糸された糸は、次いで紡糸位置毎に配置されたダブル冷却シャフト内で冷却されて、隣接したノズル列の糸と一緒に冷却後1つの共通の糸群22にまとめられる。まとめられる前に、ノズル列Aの糸9とノズル列Bの糸10とは、それぞれ対応配置された準備装置23.1,23.2によって液体で濡らされ、次いでガイド手段21によって紡糸位置毎に糸群22にまとめられる。この糸群の各糸は、互いに平行に狭い間隔で処理モジュール36を通ってガイドされ、次いで処理後に2つの巻取りユニットを介してパッケージに巻き取られる。
【0037】
このような紡糸装置では、一方では紡糸ノズルの定期的な保守整備を実施し且つ他方ではプロセス中断後又はプロセス開始時にオペレータが新たに紡糸された糸を継ぐ必要がある。複数の紡糸位置を1つの長手方向モジュールにまとめることにより、1人のオペレータの機械長手方向側間での迅速な移動が簡単に可能である。図3に示したように、一人のオペレータが中層階から機械長手方向の両側の長手方向モジュール2.1,2.2,2.3を迅速に操作可能である。このためには、各長手方向モジュール間の通路Dを介した長手方向側のサイドチェンジが可能である。各長手方向側間の短い距離に基づいて、1紡糸位置において糸が破断した後でも極めて短いプロセス中断が達成される。
【0038】
当該紡糸装置では、供給導管及び例えば準備搬送装置等の付加ユニットを、有利には隣接した各長手方向モジュール間の通路Dに組み込むことができる。これにより、極めてコンパクトで省スペース型の紡糸装置が提供され得る。つまり、例えば長手方向モジュールの第2ラインを図1に示した紡糸装置のすぐ隣に配置することができ、この場合、全てのダブル冷却シャフトは中央の空気通路から空気を供給され得る。従って、有利には従来の紡糸装置と比較して30〜40%だけ小さな所要スペースを必要とする、前記のように列状に配置された複数の長手方向モジュールが全体構造に装備され得る。
【0039】
このような紡糸装置を監視する場合は、一般に各糸の糸走行が監視される。糸の破断が検出された場合のために、対応するメッセージを制御装置に送るセンサ手段が設けられている。このような監視法は、紡糸装置全体において高品質の糸を製作できるようにするために特に重要である。但し、糸走行部内で発生する事象の前記のような監視及び分析は、どの紡糸位置若しくはどの紡糸ノズルから糸が形成されたのかということを知る必要がある。この点において、両ノズル列からの糸をまとめる場合は予め規定された順序を保持しなければならない。これにより、ワインダから紡糸ノズルまで糸走行部全体を逆に辿ることができる。
【0040】
これに関して図4及び図5には1紡糸位置内での各糸の分割が概略的に示されている。この分割及び紡糸位置は、例えば図1に符号3.1で示した紡糸位置が成すものであってよい。図4には糸群22が形成されるまでの紡糸位置が概略的に示されており、図5には当該紡糸位置の横断面図が概略的に示されている。前記両図面の内の一方に関連付けない限り、以下の説明は両図面に該当する。
【0041】
部分的に示したノズル支持体8.1では合計12の紡糸ノズルが2つのノズル列A,Bに均等に分割されている。これに対応してノズル列Aの紡糸ノズル4からは6本の糸が形成され、これらの糸は符号9で示されている。ノズル列Bの糸10は相応にノズル列Bの紡糸ノズルを介して押出成形される。冷却シャフト(図示せず)内で糸9,10は準備装置23.1,23.2まで平行にガイドされる。この場合、これらの準備装置23.1,23.2は準備ローラとして描かれている。但し、準備装置はそれぞれ1本の糸を濡らす個別の準備ピンによって形成されていてもよい。
【0042】
糸9,10は濡らされた後、共通の集合平面35へガイドされる。この集合平面内で糸9,10はガイド手段によって、相並んで配置された12本の糸が予め規定された順序を有する1つの糸群22を成すように配置される。図4に示した実施例では、ノズル列Bの糸10とノズル列Aの糸9とがそれぞれ糸群として相並んでガイドされる。落下シャフトの下位に配置されたガイド手段21は、例えば糸ガイド条片によって形成されていてよい。
【0043】
図5に図示したように、集合平面35はノズル列Aとノズル列Bの紡糸ノズル間の中間領域に配置されている。これにより、両ノズル列の糸の均等な変向が得られる。従って、有利には同じ物理特性を備えた糸も製作され得る。
【0044】
図6には糸群における各糸の分割の別の実施例が示されている。図6に示した実施例は、図4に示した実施例と同じなので、ここでは相違点のみを説明する。ノズル列Aの糸9及びノズル列Bの糸10の分割に際して、ガイド手段21によって、ノズル列Aの糸9とノズル列Bの糸10とを交互に相並べてガイドする糸群22内の順序が規定される。これにより、ノズル列に基づいて所定の順序AB AB ABが得られる。従って、糸群22の処理装置への移行部は、糸の出所が判るように規定されている。
【0045】
合成糸の製作の場合、糸品質はその時々の巻取り過程によって著しく決定される。この点において、均一な糸品質を得るためには、紡糸ノズルと巻取り位置との間の規定された対応配置が有利であってよい。図7には、例えば図1に示した紡糸装置で使用可能な巻取りユニットの実施例に基づいて、糸群の糸が処理後にそれぞれ個別の巻取りユニットに分割される様子が示されている。
【0046】
この場合、巻取りユニット27.1,27.2は1つの巻取り機内に形成されている。この巻取り機は2つのボビンリボルバ28.1,28.2を有している。これらのボビンリボルバは、それぞれ各2つのボビンスピンドル29.1,29.2を支持している。ボビンリボルバ28.1,28.2には各1つの圧着ローラ30.1,30.2が対応配置されている。これらの圧着ローラ30.1,30.2の上位にはダブルガイド条片31が設けられており、このダブルガイド条片31は両長手方向側に関してボビンスピンドルに対して平行に、巻取り位置毎に各1つの糸ガイドを有している。このようなダブル巻取り機は基本的に公知であり、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10045473号明細書に記載されている。この点において巻取り機の詳しい説明については引用した前記刊行物に関する。
【0047】
糸群22は処理後ダブルガイド条片31によって、規定された対応配置に対応して個々の巻取りユニット27.1,27.2に分割される。この場合、ノズル列Aの糸9及びノズル列Bの糸10が糸群22から分離され、それぞれ巻取りユニット27.1,27.2に供給される。これにより、ノズル列Aの糸9は巻取りユニット27.1のボビンスピンドル29.1においてパッケージに巻成され、ノズル列Bの糸10は巻取りユニット27.2のボビンスピンドル29.2においてパッケージに巻成される。つまり、糸群22内の糸は全て、紡糸ノズルとワインダとの間のあらゆる位置で識別可能である。従って、紡糸装置の監視及び制御は簡単な手段で実施可能である。
【0048】
図1に示した紡糸装置の処理装置及びワインダの構成は例に過ぎない。従って、例えば1つの紡糸位置の糸は全て一緒に、単一の巻取りユニットを備えた1つの巻取り機によって収容される可能性がある。処理装置の構成は、主として完全ドラフトされた糸(FDY)、予備配向された糸(POY)、高度に配向された糸(HOY)、又はクリンプ糸(BCF)の製作の如何に関連している。この点において、処理装置には選択的に複数のユニットが装備され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による紡糸装置の1実施例を示す概略図である。
【図2】本発明による紡糸装置の1実施例を示す概略図である。
【図3】本発明による紡糸装置の1実施例を示す概略図である。
【図4】集合平面内での配分用の糸ガイドの1実施例を概略的に示した図である。
【図5】集合平面内での配分用の糸ガイドの1実施例を概略的に示した図である。
【図6】集合平面内での配分用の糸ガイドの別の実施例を概略的に示した図である。
【図7】図1に示した紡糸装置のワインダの1実施例を概略的に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の糸を溶融紡糸するための紡糸装置であって、多数の紡糸ノズル(4)が設けられており、これらの紡糸ノズルが密に隣接する2つのノズル列(A,B)で機械長手方向側に沿って平行に配置されており、これらのノズル列(A,B)の下位に、紡糸ノズル(4)から押出成形された糸を冷却するための冷却装置(13)が配置されており、該冷却装置(13)が、2つの別個の冷却シャフト(15.1,15.2)と、冷却流源に接続された中心の圧力室(16)とを備えた少なくとも1つのダブル冷却シャフト(14.1)を有している形式のものにおいて、
両ノズル列(A,B)の多数の紡糸ノズル(4)が、機械長手方向側に沿って複数の紡糸位置に分割されており、これらの紡糸位置(3.1,3.2)に、それぞれ複数のダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の内の1つが対応配置されており、ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の中心の圧力室(16)が、それぞれ機械長手方向側に隣接して配置された側方の空気通路(20)を介して冷却流源に接続されていることを特徴とする、紡糸装置。
【請求項2】
ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の圧力室(16)が個別に又は群で、紡糸位置間に配置された横方向接続管片(19)を介して空気通路(20)に接続されている、請求項1記載の紡糸装置。
【請求項3】
各ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)がそれぞれ落下シャフト(34.1,34.2)に開口しており、両ノズル列(A,B)の紡糸ノズル(9,10)の糸が、それぞれ落下シャフト(34.1,34.2)の下位で共通の集合平面(35)へ、平行に延びる糸の糸群(22)が形成されるようにガイドされる、請求項1又は2記載の紡糸装置。
【請求項4】
横方向接続管片(19)が、2つの隣接した落下シャフト(34.1,34.2)間に配置されている、請求項2又は3記載の紡糸装置。
【請求項5】
ダブル冷却シャフト(14.1,14.2)の両冷却シャフト(15.1,15.2)に各2つの別個の準備装置(23.1,23.2)が対応配置されており、これらの準備装置が、それぞれノズル列(A,B)の各糸(9,10)に別個に準備コーティングを付与する、請求項1から4までのいずれか1項記載の紡糸装置。
【請求項6】
複数の隣接する紡糸位置(3.1,3.2)が1長手方向モジュール(2.1)にまとめられており、隣接した複数の長手方向モジュール(2.1,2.2)が、それぞれ機械長手方向側に沿って各1つの通路(D)により互いに分離されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の紡糸装置。
【請求項7】
長手方向モジュール(2.1,2.2)が、それぞれボックス形のノズル支持体(8.1,8.2)によって形成されており、これらのノズル支持体(8.1,8.2)が、熱媒体によって加熱可能であり且つ通路(D)に面した少なくとも1つの端部に熱媒体のための流入部(11)及び/又は流出部(12)を有している、請求項6記載の紡糸装置。
【請求項8】
集合平面(35)内で一方のノズル列(A)の糸(9)が他方のノズル列(B)の糸(10)と一緒にガイド手段(21)によって、糸群(22)において予め規定された順序が得られるように互いにガイドされる、請求項1から7までのいずれか1項記載の紡糸装置。
【請求項9】
糸(9,10)をパッケージ(32)に巻成するためのワインダ(26)が設けられており、該ワインダが紡糸位置(3.1)毎に2つの巻取りユニット(27.1,27.2)を備えた1つの巻取り機(37)又は各1つの巻取りユニット(27.1,27.2)を備えた各2つの巻取り機(37.1,37.2)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の紡糸装置。
【請求項10】
処理後に引き出される糸群(22)が各巻取りユニット(27.1,27.2)へ分割され、これにより、ノズル列(A)の糸(9)及びノズル列(B)の糸(10)が規定された対応配置でパッケージ(32)に巻成される、請求項9記載の紡糸装置。
【請求項11】
一方のノズル列(A,B)の糸(9)が全て、一方の巻取りユニット(27.1)のボビンスピンドル(29.1)に巻き取られるように前記対応配置が選択されている、請求項9記載の紡糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−512445(P2007−512445A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540341(P2006−540341)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013169
【国際公開番号】WO2005/052224
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】