説明

紡績機

【課題】セルフスピニングによって糸送り装置へ送られる糸の短繊維の飛び散りを防止する。
【解決手段】ドラフト装置から送られる繊維束を紡績する空気式の紡績装置3と、紡績装置3からの糸Y’を挟持して巻取装置へ送る糸送り装置4とを備え、紡績装置3は、旋回気流を発生させる紡績ノズルと、旋回気流と逆向きの逆旋回気流を発生させる補助ノズルとを備え、糸送り装置4は、上方側のニップローラ41及び下方側のデリベリローラ40を備え、さらに、糸送り装置4は、紡績装置3が紡績開始時の糸Y’を糸送り装置4へ送る際に糸Y’の短繊維の飛び散りを防止するための飛散防止カバー42を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式紡績装置を備えた紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機は、一般に、ドラフト装置から送られる繊維束を空気式の紡績装置で紡績し、この紡績装置からの糸を糸送り装置で挟持して巻取装置へ送る。空気式紡績装置は、旋回気流を発生させる紡績ノズルと、この旋回気流と逆向きの逆旋回気流を発生させる補助ノズルとを備える。そして、この空気式紡績装置は、紡績開始時においては、補助ノズルによる逆旋回気流を用いて、糸を結束繊維状に紡績しつつ下流側に向かうフィード力を与えて(以下、「セルフスピニング」という)、糸を排出し、糸送り装置へ送る(特許文献1の0004欄等)。
【0003】
ところで、従来の糸継ぎでは、上流側の糸を糸継ぎ装置(スプライサー等)へ案内するサクション(吸引管)は、紡績装置と糸送り装置との間(紡績装置の出口)で把持していた(特許文献1の図6及び00035欄等)。すなわち、案内サクションは、セルフスピニングによって紡績装置から送られる糸を把持する。しかし、セルフスピニングによって送られる糸は、未だ糸送り装置による下流側に向かうフィード力が与えられていないので、十分結束されていない弱い糸(以下、「未完成糸」という)である。
【0004】
そのため、案内サクションで把持した未完成糸は糸切れが生じて、糸継ぎが失敗することがあった。また、案内サクションが未完成糸を把持してから、一定時間補助ノズルのエア噴射を続行する必要があり、補助ノズルのエア噴射停止のタイミングを制御する必要があった。そこで、十分結束された紡績糸を把持するために、案内サクションは、糸送り装置の下流側(糸送り装置の出口)で把持するようになった(特許文献2の図9等)。これにより、糸継ぎ成功率は向上した。また、セルフスピニングによって紡出された未完成糸が糸送り装置を通ってから案内サクションに吸引されることにより、直ちに補助ノズルのエア噴射を停止して正常な紡績糸を紡出できる。
【0005】
しかし、糸送り装置は、ニップローラ及びデリベリローラからなるので、各ローラ周りに互いの随伴気流が生じ、吹き上げが発生する。そのため、紡績開始時に、セルフスピニングで送られる未完成糸の糸端が、この随伴気流によって、スムーズに糸送り装置へ挟持されない(もたもたする)問題が生じた。さらに、特に、短繊維含有率の高いカード綿や混紡糸等においては、この随伴気流によって、セルフスピニングによって糸送り装置へ送られる未完成糸の一部の短繊維(風綿)が飛び散り、巻取装置の巻取りパッケージ(巻き玉)に付着・混入する問題が生じた。
【特許文献1】特開2001−73235号公報
【特許文献2】特開2005−231823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、セルフスピニングによって糸送り装置へ送られる糸の短繊維の飛び散りを防止することが可能な紡績機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る紡績機は、ドラフト装置から送られる繊維束を紡績する空気式の紡績装置と、紡績装置からの糸を挟持して巻取装置へ送る糸送り装置とを備える。
紡績装置は、旋回気流を発生させる紡績ノズルと、旋回気流と逆向きの逆旋回気流を発生させる補助ノズルとを備える。
糸送り装置は、上方側のニップローラ及び下方側のデリベリローラを備える。
さらに、糸送り装置は、前記紡績装置が紡績開始時の糸を前記糸送り装置へ送る際に糸の短繊維の飛び散りを防止するための飛散防止カバーを備えている。
【0008】
好ましくは、飛散防止カバーは、ニップローラの上方を覆うように設けられたプレート部材からなる。
【0009】
好ましくは、飛散防止カバーは、ニップローラへ流れるデリベリローラの随伴気流を阻止するように設けられたプレート部材からなる。
【0010】
なお、「紡績開始時」とは、紡績を開始する時(紡績スタート時)の他に、(1)巻取り中に、糸欠陥検出装置が糸中の欠点を検出して、カッターで切断した後の糸継ぎ時の紡績再開時、(2)巻取りパッケージが満玉になり、新たな空ボビンと交換する作業をした後の紡績再開時、のいずれの場合も含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紡績機は、糸送り装置に飛散防止カバーを設けた。これにより、糸送り装置のニップローラ及びデリベリローラの随伴気流が生じても、飛散防止カバーが、未完成糸の短繊維の飛び散りを防止するので、巻取装置の巻取りパッケージに短繊維が付着・混入することを非常に少なくし、不良糸を著しく減少できる。また、未完成糸をスムーズに糸送り装置に送ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明に係る紡績機について説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る紡績機を示す正面図である。図2は、紡績機を示す側断面図である。図3は、紡績機の糸継ぎ動作を示す側断面図である。
【0014】
図1の通り、紡績機は、原動機ボックス10とダストボックス11との間に、多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)1,1,1・・・を並設する。更に、紡績機は、各紡績ユニット1,1,1・・・に沿うレール12を備える。紡績機は、レール12に沿って左右方向に往復走行可能な糸継ぎ台車6を備える。糸継ぎ台車6は、糸継ぎを要求する紡績ユニット1に走行、停止して、糸継ぎ作業を行う。
【0015】
各紡績ユニット1は、ドラフト装置2、紡績装置3、糸送り装置4及び巻取装置5を備える。ドラフト装置2は、バックローラ20、サードローラ21、ミドルローラ22及びフロントローラ23を有する。バックローラ20及びサードローラ21は、各紡績ユニット1毎に設けられた第一駆動モータ24によって回転駆動する。
【0016】
各第一駆動モータ24は、ドライバ基板26によって制御される。紡績ユニット1のミドルローラ22及びフロントローラ23は、第二駆動モータ25で駆動軸を回転することにより、常時回転駆動する。巻取装置5は、巻取りパッケージ54等を備える。
【0017】
図2の通り、機台13の背部に設けられたスライバケンス(図示略)から引き出されたスライバSが、バックローラ20へ供給され、ドラフト装置2によってドラフト(延伸)される。その後、延伸されたスライバSは、紡績装置3で圧縮空気の旋回気流を作用されることにより紡績されて、紡績糸Yに生成される。
【0018】
糸送り装置4は、デリベリローラ40と、このデリベリローラ40に接触するニップローラ41とを備える。後述するが、糸送り装置4は、さらに、飛散防止カバー42を備える。紡績装置3から排出した糸は、デリベリローラ40とニップローラ41との間に挟まれて、デリベリローラ40の回転駆動によって下方(下流)へ送られ、紡績糸Yとなる。
【0019】
紡績糸Yは、糸の欠点を除去するためのカッター装置70、糸欠点を検出するスラブキャッチャ(糸欠点検出器)71、糸の弛みを取る糸弛み取り装置72を経て、巻取装置5によって次々に巻取りパッケージ54に巻き取られる。スラブキャッチャ71は、糸の太さムラ欠陥を検出する機能や、糸に混入した異物を検出する機能等を有しており、接触式又は非接触式がある。
【0020】
巻取装置5は、ボビン50、クレードルアーム51、クレードルアーム駆動部52及び回転ドラム53を備えている。クレードルアーム51はボビン50を備えており、ボビン50に紡績糸Yを巻き付けることにより、巻取りパッケージ54が形成される。ボビン50又は巻取りパッケージ54が常時回転する回転ドラム53に接触することによって、巻取り回転する。
【0021】
糸継ぎ台車6は、供給側となるドラフト装置2、紡績装置3及び糸送り装置4から連続的に供給される紡績糸(上糸)Y1を吸引捕捉するサンクションパイプ(供給側糸端捕捉手段)60と、巻取り側となる巻取りパッケージ54の紡績糸(下糸)Y2を吸引捕捉するサクションマウス(巻取り側糸端捕捉手段)61とを備える。
【0022】
糸継ぎ台車6は、サクションパイプ60及びサクションマウス61が捕捉した各紡績糸Y1,Y2を繋ぐための糸継ぎ装置7を備える。サクションパイプ60及びサクションマウス61の端部は、吸引流発生源(図示略)によって吸引空気流が発生しており、これにより各糸Y1,Y2の糸端を吸引して、捕捉する。
【0023】
図3の通り、スラブキャッチャ71がドラフト装置2から送られる紡績糸Yに糸欠点が有ることを検出した時、カッター装置70が紡績糸Yを切断し、上糸Y1と下糸Y2とに分断する。カッター装置70が紡績糸Yを切断すると同時に、ドライバ基板26を介して第一駆動モータ24を制御し、ドラフト装置2のバックローラ20及びサードローラ21の回転が停止する。ミドルローラ22及びフロントローラ23は、回転駆動が持続している。巻取装置5は、ドライバ基板55を介してクレードルアーム駆動部52によってクレードルアーム51が回動し、巻取りパッケージ54を回転ドラム53から離反する。
【0024】
そして、糸継ぎ台車6が、この糸継ぎ対象の紡績ユニット1へ走行して停止する。その後、サクションパイプ60が、端部回転軸60aを中心に上方へ旋回して(二点鎖線参照)、供給部側の紡績糸(上糸)Y1を吸引把持する。その際、サクションパイプ60は、糸送り装置4に近接する下流側(糸送り装置4の出口側)で上糸Y1を把持する。
【0025】
更に、サクションマウス61が、端部回転軸61aを中心に下方へ旋回して(二点鎖線参照)、巻取部側の紡績糸(下糸)Y2を吸引把持する。そして、サクションパイプ60及びサクションマウス61が元の位置へ旋回して戻ることにより、上糸Y1及び下糸Y2を糸継ぎ装置7へ案内し、糸継ぎ装置7が各糸Y1,Y2の糸端を繋ぐ。
【0026】
ここで、ドラフト装置2のバックローラ20及びサードローラ21の回転が停止して、ミドルローラ22及びフロントローラ23の回転が持続することにより、上糸Y1は、サードローラ21とミドルローラ22との間でスライバSが引っ張られて切断される。この切断位置からカッター装置70位置までの糸断片は、ミドルローラ22及びフロントローラ23により下流へ送り出され、吸引装置(図示略)により吸引、除去される。
【0027】
従って、サクションパイプ60が、糸送り装置4の出口で上糸Y1を把持するために、再度、紡績装置3から未完成糸Y’(後述する)が送り出され(紡績再開)、糸送り装置4へ供給される。そのため、後述するが、この紡績再開時において、紡績装置3は、補助ノズル36(図4・図5)による逆旋回気流を用いて(セルフスピニング)、未完成糸Y’を排出し、糸送り装置4へ送る。そして、糸送り装置4から紡績糸Yが送られる。
【0028】
図1及び図2の通り、紡績機は、制御部15を備えている。制御部15は、カッター装置70、スラブキャッチャ71、ドラフト装置2のバックローラ20及びサードローラ21を制御するドライバ基板26、クレードルアーム51を駆動するクレードルアーム駆動部52のドライバ基板55、糸継ぎ台車6を制御する糸継ぎ台車コントローラ62に接続され、これらの動作を司る。制御部15及びコントローラ62は、各構成部材の動作を制御する。
【0029】
図4は、紡績装置を示す断面図である。図5は、図4の一部を示す拡大断面図である。図4及び図5の通り、紡績装置3は、中心部に中空ガイド軸体32を備える。中空ガイド軸体32は、内部の軸心上に糸通路30を備える。紡績装置3は、上流側にニードル35を備える。ニードル35は、糸通路の入口30aの上流近傍に、糸通路30と同軸上に配置される。紡績装置3は、中空ガイド軸体の上流端32a周りに旋回気流を発生させる複数の紡績ノズル34を備える。
【0030】
紡績装置3は、紡績ノズル34の旋回気流によって吸引作用を発生させ、この吸引作用により、フロントローラ23から送り出される繊維束Bを引き込む(図5)。従って、フロントローラ23から送られる繊維束Bは、ニードル35によってバルーンの発生を阻止されながら糸通路30に導かれる。そして、繊維束Bは、紡績ノズル33の旋回気流を受けることによって紡績室31内で撚られ、紡績された糸Y’が中空ガイド軸体32から送り出される。紡績ノズル34は、糸走行方向から見て左回り(反時計回り)方向B1(図5)に旋回気流が生じるように、圧縮空気を噴射する。
【0031】
紡績装置3は、中空ガイド軸体32の内部に、糸通路30に対して接線方向に設けられた複数の補助ノズル36を備える。補助ノズル36は、糸走行方向から見て右回り(時計回り)方向B2(図5)に圧縮空気を噴射する。また、紡績装置3は、中空ガイド軸体32の内部に、補助ノズル36に連通するエア通路37を備える。エア通路37は、圧縮空気供給路38に接続されており、補助ノズル36は、圧縮空気を選択的に噴射する。
【0032】
ここで、紡績開始時における紡績装置3の動作を説明する(図5)。紡績装置3は、紡績ノズル34及び補助ノズル36を作動させて圧縮空気を噴射する。ドラフト装置2からの繊維束Bは、案内孔39を通じて紡績装置3へ挿入される。紡績ノズル34からの圧縮空気は、旋回しながら繊維束Bの送り方向へ流れる。これにより、繊維束Bは、旋回気流で緩い撚り状態にされながら中空ガイド軸体の入口30aへ送られる。
【0033】
また、補助ノズル36から噴射される圧縮空気は、糸通路30の内周面に沿って流れ、逆旋回気流を形成する。これにより、補助ノズル36からの圧縮空気は、糸通路の出口30bへ向かって流れ、糸通路の入口30a付近は負圧となる。このため、糸通路の入口30aに吸引力が発生し、これにより最初の繊維束Bないし短繊維(ファイバー)を捕捉して、糸通路30へ導入することができる。そして、導入後は、繊維束Bを連続的に引き込むことができる。このとき繊維束Bは、それぞれの旋回気流によって、糸通路の出口30bに向かうフィード力が与えられる(「セルフスピニング」という)。
【0034】
このセルフスピニングによって送られる糸は、未だ糸送り装置4による下流側に向かうフィード力が与えられていないので、十分結束されていない弱い糸Y’(「未完成糸」という)である。セルフスピニングによって未完成糸Y’が糸送り装置4へ送られた所定時間経過後に、補助ノズル36を停止する。これにより、補助ノズル36のフィード力がなくなり、未完成糸Y’は糸送り装置4によるフィード力が与えられる。こうして、紡績ノズル34と補助ノズル36との旋回気流によるセルフスピニングから、紡績ノズル34と糸送り装置4との協同作用による通常の紡績へと移行される。
【0035】
図6は、第一実施形態の糸送り装置を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の矢視Iから見た平面図である。図6の通り、糸送り装置4は、上方側に設けられたニップローラ41と下方側に設けられたデリベリローラ40とを備える。ニップローラ41及びデリベリローラ40は、支持部材43を介して回転可能に支持されている。ニップローラ41とデリベリローラ40は互いに接触、当接して、デリベリローラ40の回転駆動に追従して、ニップローラ41が回転する。
【0036】
そのため、デリベリローラ40の径寸法d0は、ニップローラ41の径寸法d1より大径である。さらに、デリベリローラ40の長さ寸法(軸方向寸法)e0は、ニップローラ41の長さ寸法e1より大きい。紡績装置3からの未完成糸Y’は、ニップローラ41とデリベリローラ40の間に挟持されて、互いの回転によって下方(下流)へ送られる。これにより、糸送り装置4から紡績糸Yが送られる。
【0037】
糸送り装置4は、飛散防止カバー42を備える。飛散防止カバー42は、支持部材43で支持されている。飛散防止カバー42は、ニップローラ41の上方を覆うように設けられている。ニップローラ41及びデリベリローラ40の周面付近には、回転駆動による随伴気流40a,41aが生じる。各ローラ40,41の間の上流側(図6右側)においては、それぞれの随伴気流40a,41aが衝突する。ここで、デリベリローラ40の方がニップローラ41よりも大径なので、デリベリローラ40の随伴気流40aの影響が大きくなり、各ローラ40,41の上流側(図右側)の気流は、乱流になると共に上方へと向かう(吹き上がり)。
【0038】
上記の通り、セルフスピニングによって紡績装置3から送られる未完成糸Y’は、結束力が弱い。そのため、特に、短繊維含有率の高いカード綿や混紡糸等においては、各ローラ40,41の上流側(図6右側)の衝突上方気流(吹き上がり)によって、未完成糸Y’の一部である短繊維(風綿)が飛び散る。しかし、飛散防止カバー42が、ニップローラ41の上方を覆うことによって、未完成糸Y’の短繊維が、巻取装置5の巻取りパッケージ54へ移動することを大部分阻止する。これにより、巻取りパッケージ54に短繊維が付着・混入することを防止でき、不良糸を著しく減少できる。
【0039】
第一実施形態では、飛散防止カバー42は、L字状に形成されている。飛散防止カバー42は、上方プレート部42aと前方プレート部42bとからなる。各プレート部42a,42bは、略直角に結合されている。各プレート部42a,42bの幅寸法Wは、ニップローラ41の長さ寸法(軸方向寸法)e1よりも大きく、デリベリローラ40の長さ寸法e0程度である。上方プレート部42aの長さ寸法Lは、ニップローラ41の径寸法d1より大きい。
【0040】
そして、各ローラ40,41の上流側の衝突上方気流(吹き上げ)を阻止するために、上方プレート部42aは、ニップローラ41の上流側と未完成糸Y’の糸道との間の空間Xをできるだけ覆うことが好ましい。前方プレート部42bは、飛散防止の補助や取り付け容易のために設けられている。また、飛散防止カバー42は円弧状プレート部材などで形成して、覆ってもよい。また、飛散防止カバー42は、飛散する短繊維をキャッチできる網目部材などでもよい。
【0041】
図7は、第二実施形態の糸送り装置を示し、(a)は側面図、(b)は(a)における矢視I’から見た平面図である。図7の通り、第二実施形態では、飛散防止カバー42’は、一枚のプレート部材からなる。飛散防止カバー42’は、支持部材43で支持されている。飛散防止カバー42’は、未完成糸Y’の糸道の下方に近接して設けられる。これにより、飛散防止カバー42’は、デリベリローラ40の随伴気流40aがニップローラ41の随伴気流41aに流れて衝突することを防止して、吹き上がりを阻止する。
【0042】
好ましくは、飛散防止カバー42’は、未完成糸Y’の糸道に略平行して配置される。また、飛散防止カバー42’の幅寸法W’は、デリベリローラ40の長さ寸法(軸方向寸法)e0と略同じである。
【0043】
そして、各ローラ40,41の間の上流側において、デリベリローラ40の随伴気流40aの影響が非常に小さくなり、吹き上がりが殆どなくなり、未完成糸Y’の一部である短繊維の飛び散りを阻止できる。これにより、巻取りパッケージ54に短繊維が付着・混入することを防止できる。
【0044】
なお、上記した糸継ぎ時の紡績再開時以外にも、紡績を開始する時(紡績スタート時)や、巻取りパッケージ54が満玉になって、新たな空ボビンと交換する作業をした後の紡績再開の時においても、紡績装置3は、セルフスピニングによって未完成糸Y’を糸送り装置4へ送るので、これらのいずれの時においても、飛散防止カバー42が、短繊維の飛散を防止する効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る紡績機を示す正面図である。
【図2】紡績機を示す側断面図である。
【図3】紡績機の糸継ぎ動作を示す側断面図である。
【図4】紡績装置を示す断面図である。
【図5】図4の一部を示す拡大断面図である。
【図6】第一実施形態の糸送り装置を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の矢視Iから見た平面図である。
【図7】第二実施形態の糸送り装置を示し、(a)は側面図、(b)は(a)における矢視I’から見た平面図である。
【符号の説明】
【0046】
2 ドラフト装置
3 紡績装置
34 紡績ノズル
36 補助ノズル
4 糸送り装置
40 デリベリローラ
40a デリベリローラの随伴気流
41 ニップローラ
41a ニップローラの随伴気流
42,42’ 飛散防止カバー
42a 上方プレート部
42b 前方プレート部
5 巻取装置
54 巻取りパッケージ
S スライバ
B 紡績束
Y 紡績糸
Y’ 未完成糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフト装置から送られる繊維束を紡績する空気式の紡績装置と、前記紡績装置からの糸を挟持して巻取装置へ送る糸送り装置とを備えた紡績機において、前記紡績装置は、旋回気流を発生させる紡績ノズルと、前記旋回気流と逆向きの逆旋回気流を発生させる補助ノズルとを備え、前記糸送り装置は、上方側のニップローラ及び下方側のデリベリローラを備え、
さらに、前記糸送り装置は、前記紡績装置が紡績開始時の糸を前記糸送り装置へ送る際に糸の短繊維の飛び散りを防止するための飛散防止カバーを備えていることを特徴とする紡績機。
【請求項2】
前記飛散防止カバーは、前記ニップローラの上方を覆うように設けられたプレート部材からなることを特徴とする請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記飛散防止カバーは、前記ニップローラへ流れる前記デリベリローラの随伴気流を阻止するように設けられたプレート部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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