説明

紡績機

【課題】パッケージの作成を中断してから該パッケージの作成を再開させるまでの一連の工程において、紡績糸が弛まない紡績機を提供する。
【解決手段】紡績糸Yを巻き取ってパッケージPを作成する紡績ユニット10を複数備えた紡績機100において、パッケージPと接触して該パッケージPを巻取方向に回転させる駆動ローラ61と、駆動ローラ61に対してパッケージPを接触位置と離間位置に移動させるクレードル62と、パッケージPと接触して該パッケージPを巻取方向とは逆方向である解舒方向に回転させる逆転ローラ22と、パッケージPに対して逆転ローラ22を接触位置と離間位置に移動させる駆動部23と、クレードル62によってパッケージPを移動させて該パッケージPが駆動ローラ61に対して接触位置となる直前で、逆転ローラ22をパッケージPに対して離間位置に移動させるように駆動部23を制御する制御部40と、を備える、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、繊維束を牽伸するとともに、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。紡績ユニットには、紡績糸を巻き取ってパッケージを作成する巻取部が設けられている。巻取部は、パッケージを正方向に回転させる駆動ローラと、パッケージを回転自在に支持するクレードルと、で構成される。
【0003】
また、従来より、紡績ユニットを複数備えた紡績機が知られている(例えば特許文献2参照)。紡績機には、一の紡績ユニットで紡績糸の連続状態が分断された場合に、該紡績ユニットまで走行して糸継作業を行なう作業台車が設けられている。作業台車には、パッケージの回転を制動できる制動部と、パッケージを巻取方向とは逆方向である解舒方向に回転させる逆転ローラと、紡績糸を捕捉して案内する案内部と、紡績糸の糸端どうしを継ぎ合わせる糸継部と、が設けられている。
【0004】
紡績ユニットは、紡績糸の連続状態が分断された場合にクレードルを回動させ、パッケージを駆動ローラから離間させる。作業台車は、制動部によってパッケージの回転を停止させた後に、逆転ローラをパッケージに接触させて該パッケージを解舒方向に回転(以下、単に「逆転」と称することがある)させる。そして、作業台車は、案内部によって紡績糸を捕捉して所定の位置まで案内し、糸継部によって紡績糸の糸端どうしを継ぎ合わせる。その後、紡績ユニットは、再びクレードルを可動させて、パッケージを駆動ローラに接触させる。このような一連の工程を経ることで、紡績ユニットは、パッケージの作成を再開できる。
【0005】
しかし、このような一連の工程においては、逆転ローラをパッケージから離間させる時期が重要となる。これは、逆転ローラをパッケージから離間させる際に、逆転ローラの移動に伴ってパッケージが意図せずに逆転する場合があるためである。このため、糸継部によって紡績糸が継ぎ合わされた直後に逆転ローラをパッケージから離間させた場合は、パッケージが意図せずに逆転して紡績糸が弛んでしまうという場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−99192号公報
【特許文献2】特開2011−84854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パッケージの作成を中断してから該パッケージの作成を再開させるまでの一連の工程において、紡績糸が弛まない紡績機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
第1の発明は、紡績糸を巻き取ってパッケージを作成する紡績ユニットを複数備えた紡績機に関する。本発明の実施形態に係る紡績機は、パッケージと接触して該パッケージを巻取方向に回転させる駆動ローラと、駆動ローラに対してパッケージを接触位置と離間位置に移動させるクレードルと、パッケージと接触して該パッケージを巻取方向とは逆方向である解舒方向に回転させる逆転ローラと、パッケージに対して逆転ローラを接触位置と離間位置に移動させる駆動部と、クレードルによってパッケージを移動させてパッケージが駆動ローラに対して接触位置となる直前で、逆転ローラをパッケージに対して離間位置に移動させるように駆動部を制御する制御部と、を備える。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る紡績機に関する。本実施形態の制御部は、接触位置における逆転ローラとパッケージとの接触圧がパッケージの外径とは独立して略一定となるように駆動部を制御する。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る紡績機に関する。本実施形態の駆動部は、空気アクチュエータである。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に係る紡績機に関する。本発明の実施形態に係る紡績機は、一の紡績ユニットにおいて紡績糸の連続状態が分断された場合に該紡績ユニットまで走行して糸継作業を行なう作業台車を具備する。本実施形態の作業台車は、逆転ローラと、駆動部と、パッケージの回転を制動できる制動部と、分断された紡績糸を捕捉して案内する案内部と、分断された紡績糸の糸端どうしを継ぎ合わせる糸継部と、を備える。
【0013】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に係る紡績機に関する。本実施形態の紡績ユニットは、空気の旋回気流によって繊維束を撚る紡績部を具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第1の発明によれば、逆転ローラがパッケージから離間した直後に該パッケージが駆動ローラと接触するため、パッケージが意図せずに逆転しない。これにより、紡績糸が弛むことを防止できる。
【0016】
第2の発明によれば、パッケージの外径が異なる場合においても、逆転ローラとパッケージの接触圧の差異を小さくできる。これにより、パッケージの変形やパッケージに巻かれた紡績糸の品質悪化を防止できる。
【0017】
第3の発明によれば、逆転ローラがパッケージから離間する時期を高い精度で制御できる。従って、逆転ローラがパッケージから離間した直後に該パッケージが駆動ローラと接触するため、パッケージが意図せずに逆転しない。これにより、紡績糸が弛むことを防止できる。また、パッケージの外径が異なる場合においても、逆転ローラとパッケージの接触圧の差異を小さくできる。これにより、パッケージの変形やパッケージに巻かれた紡績糸の品質悪化を防止できる。
【0018】
第4の発明によれば、作業台車が逆転ローラ、駆動部、制動部、案内部、糸継部を具備するため、各紡績ユニットの構成を簡素化でき、ひいては紡績機の構成を簡素化することが可能となる。
【0019】
第5の発明によれば、紡績ユニットが空気の旋回気流によって繊維束を撚る紡績部を具備するため、各紡績ユニットにおける紡績糸の製造効率を向上でき、ひいては紡績機におけるパッケージの生産効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】紡績機100の全体構成を示す図。
【図2】紡績ユニット10と作業台車20の構成を示す図。
【図3】パッケージPの回転を停止させる工程を示す図。
【図4】パッケージPを逆転させる工程を示す図。
【図5】分断された紡績糸Yを捕捉する工程を示す図。
【図6】分断された紡績糸Yを案内する工程を示す図。
【図7】パッケージPの作成を再開する工程を示す図。
【図8】駆動部23の構造を示す図。
【図9】駆動部23の動作態様を示す図。
【図10】紡績部3の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、紡績機100の全体構成について簡単に説明する。
【0022】
図1は、紡績機100の全体構成を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、作業台車20の走行方向を示している。また、図中に示す白塗りの矢印は、玉揚台車30の走行方向を示している。
【0023】
紡績機100は、主に複数の紡績ユニット10で構成される。また、紡績機100には、作業台車20と、玉揚台車30と、制御部40と、が設けられている。
【0024】
紡績ユニット10は、繊維束Fを牽伸するとともに、牽伸された繊維束Fを撚ることで紡績糸Yを製造できる。また、紡績ユニット10は、紡績糸Yを巻き取ることでパッケージPを作成できる。なお、紡績ユニット10の詳細な構成については後述する。
【0025】
作業台車20は、各紡績ユニット10の並び方向に延設されたレールR1に沿って走行できる。作業台車20は、一の紡績ユニット10で紡績糸Yの連続状態が分断された場合に、該紡績ユニット10まで走行して糸継作業を行なう。なお、作業台車20の詳細な構成については後述する。
【0026】
玉揚台車30は、各紡績ユニット10の並び方向に延設されたレールR2に沿って走行できる。玉揚台車30は、一の紡績ユニット10でパッケージPが満巻状態となった場合に、該紡績ユニット10まで走行してパッケージPを回収できる。また、玉揚台車30は、紡績ユニット10に新たなボビンBを装着できる。なお、玉揚台車30は、満巻状態となったパッケージPを回収する作業だけを行なうように構成されていても良い。また、パッケージPの回収と新たなボビンBの装着とを作業者が手動で行なう場合は、玉揚台車30を省略しても良い。
【0027】
制御部40は、各紡績ユニット10や作業台車20等を制御できる。制御部40は、例えば、一の紡績ユニット10で紡績糸Yの連続状態が分断された場合に、該紡績ユニット10を制御してパッケージPの作成を中断させる。そして、制御部40は、作業台車20を制御して糸継作業を行なわせた後に、紡績ユニット10を制御してパッケージPの作成を再開させる。
【0028】
次に、紡績ユニット10と作業台車20の構成について詳細に説明する。
【0029】
図2は、紡績ユニット10と作業台車20の構成を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。また、図中に示す白塗りの矢印は、パッケージPの回転方向を示している。
【0030】
まず、紡績ユニット10について説明する。紡績ユニット10は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、主にスライバ供給部1と、ドラフトユニット部2と、紡績部3と、欠点検出部4と、張力安定部5と、巻取部6と、を備えている。
【0031】
スライバ供給部1は、繊維束Fをドラフトユニット部2へ供給する。スライバ供給部1は、スライバケース11と、スライバガイド(図示せず)と、を備えている。スライバケース11に貯溜された繊維束Fは、スライバガイドによって案内されてドラフトユニット部2へ導かれる。
【0032】
ドラフトユニット部2は、繊維束Fを牽伸して該繊維束Fの太さを均一化する。ドラフトユニット部2は、繊維束Fの送り方向に沿って、バックローラ対2aと、サードローラ対2bと、ミドルローラ対2cと、フロントローラ対2dと、の四組のドラフトローラ対2a・2b・2c・2dを備えている。ドラフトローラ対2a・2b・2c・2dは、動力機構を介して回転されるボトムローラと、該ボトムローラに接触した状態で従動回転するトップローラと、で構成される。また、ミドルローラ対2cを構成するボトムローラとトップローラには、エプロンバンドが巻回されている。ドラフトローラ対2a・2b・2c・2dは、ボトムローラとトップローラが繊維束Fを把持した状態で回転するため、該繊維束Fを送り出すことができる。このため、ドラフトユニット部2は、互いに隣接するドラフトローラ対2a・2b・2c・2dの送り出し速度の差異によって繊維束Fを牽伸できる。
【0033】
紡績部3は、牽伸された繊維束Fを撚ることで紡績糸Yを製造する。紡績部3は、紡績糸Yの走行方向において、ドラフトユニット部2の下流側に配置されている。このため、紡績部3は、適度に牽伸された繊維束Fから紡績糸Yを製造することができる。なお、紡績部3の構造については後述する。
【0034】
欠点検出部4は、製造された紡績糸Yの欠点部を検出する。具体的に説明すると、欠点検出部4は、発光ダイオード(図示せず)を光源として紡績糸Yを照射し、該紡績糸Yからの反射光量を検出する。欠点検出部4は、アナライザ(図示せず)を介して制御部40に接続されている。このため、制御部40は、欠点検出部4からの検出信号に基づいて欠点部の有無を判断できる。なお、欠点検出部4の近傍には、紡績糸Yを切断できるカッタ41が付設されている。紡績糸Yの欠点部とは、紡績糸Yの一部が太過ぎる(太糸)若しくは細過ぎる(細糸)異常の他、紡績糸Yに異物が介在している場合が含まれる。欠点検出部4は、本実施形態に係る光学式センサ以外にも、静電容量式のセンサ等を採用することが可能である。
【0035】
張力安定部5は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。張力安定部5は、解舒部材51と、ローラ52と、を備えている。解舒部材51は、紡績糸Yに掛かる張力が低い場合にローラ52とともに回転し、該ローラ52に紡績糸Yを巻き付ける。また、解舒部材51は、紡績糸Yに掛かる張力が高い場合にローラ52から独立して回転し、該ローラ52に巻き付けられた紡績糸Yを解舒する。このため、張力安定部5は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させることができる。なお、ローラ52は、図示しないモータによって回転駆動される。
【0036】
巻取部6は、紡績糸Yを巻き取ってパッケージPを作成する。巻取部6は、駆動ローラ61と、クレードル62と、を備えている。駆動ローラ61は、図示しないモータにより回転駆動され、クレードル62によって回転自在に把持されたボビンBを回転させる。これにより、巻取部6は、図示しない綾振装置によって紡績糸Yを綾振しつつ、紡績糸Yを巻き取ってパッケージPを作成することができる。
【0037】
次に、作業台車20について説明する。作業台車20は、主に制動部21と、逆転ローラ22と、駆動部23と、案内部24と、糸継部25と、を備えている。
【0038】
制動部21は、パッケージPと接触して該パッケージPの回転を制動できる(図3参照)。本実施形態において、制動部21は、パッケージPの外周面に接触するプレート21aと、該プレート21aを支持するアーム21bと、で構成される。但し、制動部21は、パッケージPに接触して該パッケージPの回転を制動できれば良く、形状や構成等について限定するものではない。
【0039】
逆転ローラ22は、パッケージPと接触して該パッケージPを巻取方向とは反対方向である解舒方向に回転(逆転)させる(図4、図5及び図6参照)。詳細に説明すると、逆転ローラ22は、制動部21のプレート21aがパッケージPの外周面から離間した後に、パッケージPと接触して該パッケージPを逆転させる。
【0040】
駆動部23は、逆転ローラ22を回転させる(図5及び図6参照)。本実施形態において、駆動部23は、後述する電動モータ23aを用いて逆転ローラ22を回転させる。また、駆動部23は、パッケージPに対して逆転ローラ22を接触又は離間自在に移動できる(図4及び図7参照)。本実施形態において、駆動部23は、後述する空気アクチュエータ23dを用いて逆転ローラ22を移動させる。なお、駆動部23は、制御部40からの制御信号に基づいて駆動する。つまり、制御部40は、駆動部23を制御できる。
【0041】
案内部24は、分断された紡績糸Yを捕捉して所定の位置まで案内できる(図5及び図6参照)。案内部24は、パッケージP側の紡績糸Yを捕捉して所定の位置まで案内できる第一案内部24aと、紡績部3側から紡出される紡績糸Yを捕捉して所定の位置まで案内できる第二案内部24bと、で構成される。なお、第一案内部24aと第二案内部24bの動作態様については後述する。
【0042】
糸継部25は、分断された紡績糸Yの糸端どうしを継ぎ合わせる(図6参照)。詳細に説明すると、糸継部25は、第一案内部24aによって案内された紡績糸Yの糸端と第二案内部24bによって案内された紡績糸Yの糸端を継ぎ合わせる。ここで、「分断された紡績糸Y」とは、カッタ41によって切断された紡績糸Yや異常な張力が掛かって切れた紡績糸Yを含む概念である。なお、糸継部25は、旋回気流によって紡績糸Yの糸端どうしを継ぎ合わせるエアスプライサ装置の他、機械式スプライサ装置等を採用することが可能である。
【0043】
このように、作業台車20が制動部21、逆転ローラ22、駆動部23、案内部24、及び糸継部25を具備するため、各紡績ユニット10の構成を簡素化でき、ひいては紡績機100の構成を簡素化することが可能となる。
【0044】
次に、紡績ユニット10がパッケージPの作成を中断してから該パッケージPの作成を再開させるまでの一連の工程について説明する。
【0045】
図3は、パッケージPの回転を停止させる工程を示す図である。図4は、パッケージPを逆転させる工程を示す図である。図5は、分断された紡績糸Yを捕捉する工程を示す図である。図6は、分断された紡績糸Yを案内する工程を示す図である。図7は、パッケージPの作成を再開する工程を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、紡績ユニット10及び作業台車20を構成する各部材の動作方向を示している。また、図中に示す白塗りの矢印は、パッケージPの回転方向を示している。
【0046】
紡績ユニット10は、欠点検出部4が紡績糸Yの欠点部を検出した場合、カッタ41を用いて紡績糸Yを切断する。これにより、分断された紡績糸Yの一端(カッタ41よりも下流側の紡績糸Y)は、パッケージPに巻き取られる。また、分断された紡績糸Yの他端(カッタ41よりも上流側の紡績糸Y)は、カッタ41の近傍に設けられた吸引口に吸い込まれて保持される。
【0047】
次に、紡績ユニット10は、クレードル62を回動させて駆動ローラ61からパッケージPを離間させる(図3中黒塗りの矢印参照)。これにより、パッケージPは、慣性力によって回転し続けることとなる(図3中白塗りの矢印参照)。なお、作業台車20は、カッタ41が紡績糸Yを切断した直後に当該紡績ユニット10まで走行する。
【0048】
次に、作業台車20は、制動部21を用いてパッケージPの回転を停止させる。具体的に説明すると、作業台車20は、アーム21bを回動させてパッケージPの外周面にプレート21aを接触させる(図3中黒塗りの矢印参照)。このようにして、作業台車20は、パッケージPとプレート21aの摩擦によって、該パッケージPの回転を停止させる。
【0049】
次に、作業台車20は、逆転ローラ22を用いてパッケージPを逆転させる。これは、第一案内部24aがパッケージPに巻き取られた紡績糸Yを捕捉できるようにするためである。まず、作業台車20は、アーム21bを回動させてパッケージPの外周面からプレート21aを離間させる(図4中黒塗りの矢印参照)。その後、作業台車20は、逆転ローラ22をパッケージPに接触させて該パッケージPを逆転させる。具体的に説明すると、作業台車20は、逆転ローラ22をパッケージPから離れた位置である離間位置からパッケージPに接触する位置である接触位置まで移動させる(図4中黒塗りの矢印参照)。そして、作業台車20は、逆転ローラ22を回転させてパッケージPを逆転させる(図4中白塗りの矢印参照)。なお、駆動部23の詳細な説明については後述する。
【0050】
なお、制御部40は、逆転ローラ22とパッケージPとの接触圧がパッケージPの外径とは独立して略一定となるように駆動部23を制御する。こうすることで、パッケージPの外径が異なる場合においても、逆転ローラ22とパッケージPの接触圧の差異が小さくなるからである。これにより、パッケージPの変形やパッケージPに巻かれた紡績糸Yの品質悪化を防止できる。
【0051】
次に、作業台車20は、案内部24を用いて分断された紡績糸Yを捕捉して所定の位置まで案内する。具体的に説明すると、第一案内部24aは、待機位置から下方(糸走行方向の下流側)へ回動して、パッケージPに巻き取られた紡績糸Yを捕捉する(図5中黒塗りの矢印参照)。そして、第一案内部24aは、紡績糸Yを吸入保持した状態で上方へ回動し、紡績糸Yを所定の位置まで案内する(図6中黒塗りの矢印参照)。また、第二案内部24bは、待機位置から上方(糸走行方向の上流側)へ回動して、紡績部3から紡出されている紡績糸Yを捕捉する(図5中黒塗りの矢印参照)。そして、第二案内部24bは、紡績糸Yを吸入保持した状態で下方へ回動し、紡績糸Yを所定の位置まで案内する(図6中黒塗りの矢印参照)。
【0052】
次に、作業台車20は、第一案内部24aによって所定の位置まで案内された紡績糸Yの糸端と第二案内部24bによって所定の位置まで案内された紡績糸Yの糸端を継ぎ合わせる。
【0053】
その後、紡績ユニット10は、パッケージPの作成を再開させる。紡績ユニット10は、クレードル62を回動させて駆動ローラ61に近接する方向にパッケージPを移動させる(図7中黒塗りの矢印参照)。このとき、作業台車20は、逆転ローラ22を接触位置から離間位置に移動させることによって該逆転ローラ22をパッケージPから離間させる(図7中黒塗りの矢印参照)。このため、逆転ローラ22は、パッケージPが駆動ローラ61に接触する直前で、パッケージPから離間する。つまり、制御部40は、クレードル62によってパッケージPが移動されて該パッケージPと駆動ローラ61が接触する直前で、駆動部23を制御して逆転ローラ22をパッケージPから離間させる。
【0054】
このような構成により、本紡績機100は、逆転ローラ22がパッケージPから離間した直後に該パッケージPが駆動ローラ61と接触するため、パッケージPが意図せずに逆転しない。これにより、紡績糸Yが弛むことを防止できる。
【0055】
次に、駆動部23の構造と動作態様について詳細に説明する。
【0056】
図8は、駆動部23の構造を示す図である。図9は、駆動部23の動作態様を示す図である。図中の黒塗りの矢印は、駆動部23を構成する各部材の動作方向を示している。
【0057】
駆動部23は、主に電動モータ23aと、アーム23bと、サブアーム23cと、空気アクチュエータ23dと、レバー23eと、で構成される。
【0058】
電動モータ23aは、アーム23bの一端部に取り付けられている。本実施形態において、電動モータ23aは、サーボモータである。しかし、電動モータ23aは、ステッピングモータ等であっても良く、種類について限定するものではない。
【0059】
アーム23bは、回動軸SH1を中心として回動自在に取り付けられている。アーム23bには、第一プーリ23baと第二プーリ23bbが内臓されている。第一プーリ23baは、電動モータ23aによって回転される。第二プーリ23bbは、該第二プーリ23bbと第一プーリ23baに巻き掛けられたベルト23bcによって回転される。
【0060】
サブアーム23cは、回動軸SH2を中心として回動自在に取り付けられている。サブアーム23cには、第三プーリ23caと第四プーリ23cbが内臓されている。第三プーリ23caは、アーム23bに内臓された第二プーリ23bbに取り付けられている。第四プーリ23cbは、該第四プーリ23cbと第三プーリ23caに巻き掛けられたベルト23ccによって回転される。なお、第四プーリ23cbの回転軸には、逆転ローラ22が取り付けられている。
【0061】
空気アクチュエータ23dは、シリンダ23daと、ピストン23dbと、ロッド23dcと、で構成される。空気供給源(図示せず)から送られた空気がシリンダ23daに供給されると、ピストン23dbはパッケージPへ近付く方向へ摺動される(図9B参照)。これにより、ピストン23dbに取り付けられたロッド23dcは、ピストン23dbとともに摺動して、レバー23eをパッケージPから遠ざかる方向へ回動させる(図9B参照)。その結果、逆転ローラ22は、パッケージPから離れた位置である離間位置へ移動する(図9B参照)。また、シリンダ23da内の空気が負圧配管(図示せず)に吸われると、ピストン23dbはパッケージPから遠ざかる方向へ摺動される(図9A参照)。これにより、ピストン23dbに取り付けられたロッド23dcは、ピストン23dbとともに摺動して、レバー23eをパッケージPに近付く方向へ回動させる(図9A参照)。その結果、逆転ローラ22はパッケージPと接触する位置である接触位置へ移動する(図9A参照)。つまり、空気アクチュエータ23dは、復動式の空気アクチュエータである。
【0062】
レバー23eは、空気アクチュエータ23dを構成するロッド23dcのピンP1を中心として回動自在に取り付けられている。また、レバー23eは、サブアーム23cに設けられたピンP2を中心として回動自在に取り付けられている。つまり、レバー23eは、該レバー23eの一端部(第一の端部)がロッド23dcに取り付けられ、該レバー23eの他端部(第二の端部)がサブアーム23cに取り付けられている。
【0063】
以下に駆動部23の動作態様を説明する。図9Aは、逆転ローラ22がパッケージPに接触している状態を示し、図9Bは、逆転ローラ22がパッケージPから離間している状態を示している。
【0064】
まず、図9Aを用いて、逆転ローラ22をパッケージPに接触させる際の動作態様を説明する。
【0065】
制御部40は、図示しない電磁バルブ等に制御信号を送信してシリンダ23da内の空気を吸い出させる。これにより、ピストン23dbは、摺動され、該ピストン23dbに取り付けられたロッド23dcがシリンダ23da内に退避する方向に移動することとなる。従って、空気アクチュエータ23dは、ロッド23dcに取り付けられたレバー23eを回動させる。
【0066】
すると、レバー23eは、回動軸SH2を中心にサブアーム23cを回動させるとともに、回動軸SH1を中心にアーム23bを回動させる。具体的に説明すると、サブアーム23cは、回動軸SH2を中心として回動自在に取り付けられているため、レバー23eの回動に伴って回動することとなる。また、アーム23bは、サブアーム23cとともに回動軸SH1を中心として回動自在に取り付けられているため、レバー23eの回動に伴って回動することとなる。このようにして、駆動部23は、逆転ローラ22を移動させて、該逆転ローラ22をパッケージPに接触させることができる。
【0067】
その後、制御部40は、図示しないリレー等に制御信号を送信して電動モータ23aを通電させる。これにより、逆転ローラ22は、回転が開始され、該逆転ローラ22と接触した状態のパッケージPも、回転が開始される。
【0068】
次に、図9Bを用いて、逆転ローラ22をパッケージPから離間させる際の動作態様を説明する。
【0069】
制御部40は、図示しないリレー等に制御信号を送信して電動モータ23aの電源を遮断させる。これにより、逆転ローラ22は、回転が停止され、該逆転ローラ22と接触した状態で回転していたパッケージPも、回転が停止される。
【0070】
その後、制御部40は、図示しない電磁バルブ等に制御信号を送信してシリンダ23daに空気を供給させる。これにより、ピストン23dbは、摺動され、該ピストン23dbに取り付けられたロッド23dcがシリンダ23da内から進出する方向に移動することとなる。従って、空気アクチュエータ23dは、ロッド23dcに取り付けられたレバー23eを回動させる。
【0071】
すると、レバー23eは、回動軸SH2を中心にサブアーム23cを回動させるとともに、回動軸SH1を中心にアーム23bを回動させる。具体的に説明すると、サブアーム23cは、回動軸SH2を中心として回動自在に取り付けられているため、レバー23eの回動に伴って回動することとなる。また、アーム23bは、サブアーム23cとともに回動軸SH1を中心として回動自在に取り付けられているため、レバー23eの回動に伴って回動することとなる。このようにして、駆動部23は、逆転ローラ22を移動させて、該逆転ローラ22をパッケージPから離間させることができる。
【0072】
このように、本実施形態における駆動部23は、空気アクチュエータ23dを用いて逆転ローラ22を移動させる点に特徴を有する。
【0073】
このような構成により、本紡績機100は、逆転ローラ22がパッケージPから離間する時期を高い精度で制御できる。従って、逆転ローラ22をパッケージPから離間させた直後に該パッケージPを駆動ローラ61と接触させることができるため、パッケージPが意図せずに逆転しない。これにより、紡績糸Yが弛むことを防止できる。
【0074】
更に、空気アクチュエータ23dを用いて逆転ローラ22を移動させる構成は、他の利点も生じる。即ち、パッケージPの外径が異なる場合においても、逆転ローラ22とパッケージPの接触圧の差異を小さくできる。これにより、パッケージPの変形やパッケージPに巻かれた紡績糸Yの品質悪化を防止できる。
【0075】
次に、本実施形態に係る紡績機100の他の特徴点について説明する。
【0076】
本紡績機100において、紡績ユニット10を構成する紡績部3は、旋回気流によって繊維束Fを撚る、いわゆる空気紡績装置である。
【0077】
図10は、紡績部3の構造を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。図中に示す白塗りの矢印は、供給された空気の流れ方向を示している。
【0078】
紡績部3は、ノズルブロック33から噴射される空気流により紡績室SC内に旋回気流を形成し、該旋回気流によって繊維束Fを撚る。紡績室SCは、ファイバーガイド31とスピンドル32の間に構成される空間SC1と、スピンドル32とノズルブロック33の間に構成される空間SC2と、に分けられる。
【0079】
空間SC1において、繊維束Fを構成する繊維は、後端部が旋回気流によって反転される(図10中二点鎖線参照)。空間SC2において、反転した繊維の後端部は、旋回気流によって回転される(図10中二点鎖線参照)。そして、旋回気流によって回転された繊維は、次々と中心部の繊維に巻き付いていく。このようにして、紡績部3は、繊維束Fを撚り、紡績糸Yを紡出することができる。
【0080】
なお、本紡績部3は、ファイバーガイド31にニードル31nを備えている。ニードル31nは、繊維束Fを繊維通路32hに導くとともに、繊維束Fの撚りが上流側に伝わることを防ぐ。しかし、紡績部3は、ファイバーガイド31がニードル31nを備えていない構成であっても良い。
【0081】
このように、紡績ユニット10が空気の旋回気流によって繊維束Fを撚る紡績部3を具備するため、各紡績ユニット10における紡績糸Yの製造効率を向上でき、ひいては紡績機100におけるパッケージPの生産効率を向上することが可能となる。
【0082】
以上、本発明の一実施形態に係る紡績機100について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、上記の構成は、例えば、以下の構成に変更することができる。
【0083】
上記実施形態では、逆転ローラ22によりパッケージPを解舒方向に回転させているが、別の手段によりパッケージPを逆転させる場合は、逆転ローラ22を省略することが可能である。
【0084】
上記実施形態では、制動部21と逆転ローラ22と駆動部23と案内部24と糸継部25は、作業台車20に設けられているが、各紡績ユニット10に設けても良い。また、ドラフトユニット部2の駆動部と巻取部6の駆動部を各紡績ユニット10で独立して設けて、各紡績ユニット10で独立した巻取作業を行なうようにしても良い。
【0085】
上記実施形態では、制御部40により複数の紡績ユニット10、作業台車20及び玉揚台車30を制御しているが、各紡績ユニット10を個別に制御するユニット制御部を各紡績ユニット10に設けても良い。この場合、制御部40は、複数の紡績ユニット10を統括することになる。
【0086】
上記実施形態では、カッタ41により紡績糸Yを切断しているが、紡績部3への空気の供給を停止することにより、紡績部3による紡績糸Yの製造を中断することにより、紡績糸Yを切断するようにしても良い。
【0087】
上記実施形態では、空気アクチュエータ23dにより逆転ローラ22を移動させるが、電動モータやカム機構により、逆転ローラ22を移動させるようにしても良い。
【0088】
上記実施形態では、空気アクチュエータ23dは復動式の空気アクチュエータとしているが、単動式の空気アクチュエータとバネ等の付勢部材により、逆転ローラ22を移動させるようにしても良い。例えば、単動式の空気アクチュエータを用いて逆転ローラ22を接触位置に移動させ、バネ等の付勢部材を用いて逆転ローラ22を離間位置に移動させる構成である。なお、バネ等の付勢部材は、付勢部材の変位によって付勢力が変化するため、パッケージPの外径によっては逆転ローラ22とパッケージPの接触圧の差異が大きくなる。従って、空気アクチュエータ23dは復動式の空気アクチュエータが好ましい。
【0089】
図1では、紡績機100は、1台の作業台車20と1台の玉揚台車30を備えるように図示されているが、紡績機100が備える紡績ユニット10の数に応じて、複数の作業台車20及び/又は複数の玉揚台車30を紡績機100に設けてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 スライバ供給部
2 ドラフトユニット部
3 紡績部
4 欠点検出部
5 張力安定部
6 巻取部
10 紡績ユニット
20 作業台車
21 制動部
22 逆転ローラ
23 駆動部
23a 電動モータ
23b アーム
23c サブアーム
23d 空気アクチュエータ
23e レバー
24 案内部
24a 第一案内部
24b 第二案内部
25 糸継部
30 玉揚台車
40 制御部
100 紡績機
F 繊維束
P パッケージ
Y 紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績糸を巻き取ってパッケージを作成する紡績ユニットを複数備えた紡績機において、
前記パッケージと接触して該パッケージを巻取方向に回転させる駆動ローラと、
前記駆動ローラに対して前記パッケージを接触位置と離間位置に移動させるクレードルと、
前記パッケージと接触して該パッケージを巻取方向とは逆方向である解舒方向に回転させる逆転ローラと、
前記パッケージに対して前記逆転ローラを接触位置と離間位置に移動させる駆動部と、
前記クレードルによって前記パッケージを移動させて該パッケージが前記駆動ローラに対して接触位置となる直前で、前記逆転ローラを前記パッケージに対して離間位置に移動させるように前記駆動部を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする紡績機。
【請求項2】
前記制御部は、前記接触位置における前記逆転ローラと前記パッケージとの接触圧が前記パッケージの外径とは独立して略一定となるように前記駆動部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記駆動部は、空気アクチュエータである、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紡績機。
【請求項4】
一の前記紡績ユニットにおいて紡績糸の連続状態が分断された場合に該紡績ユニットまで走行して糸継作業を行なう作業台車を具備し、
前記作業台車は、前記逆転ローラと、前記駆動部と、前記パッケージの回転を制動できる制動部と、分断された紡績糸を捕捉して案内する案内部と、分断された紡績糸の糸端どうしを継ぎ合わせる糸継部と、を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紡績機。
【請求項5】
前記紡績ユニットは、空気の旋回気流によって繊維束を撚る紡績部を具備する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67484(P2013−67484A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206628(P2011−206628)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】