説明

紫外線制御ランプ用の耐熱無鉛塗料組成物

【課題】 本発明は紫外線制御ランプで用いるに適した無鉛塗料組成物に関する。
【解決手段】 本塗料組成物は800°C以下の高い取り付け温度および使用温度に性能的劣化も可視的劣化も示すことなく耐え得る。この塗料は、紫外線防御用石英製ジャケットを備えるランプと、かかる防御を備えない同様のランプとを区別する目的で用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無鉛塗料組成物に関する。本開示は特に、紫外線制御ランプに関連し、それに関連して説明される。しかし、本開示はまた他の同様な用途にも適用可能であると理解されたい。
【0002】
非紫外線制御ランプは、ランプがあらゆる波長の光を発するという点で通常のランプである。市場に流通する非紫外線制御ランプの電力、即ちワット数は575Wから6KWの範囲である。このワット数のランプは一般により強力な照明が要求される状況、例えばテレビ局および制作スタジオ、またはコンサートおよびライブ演奏などで用いられる。そのようなランプには、通常、当産業で良く知られているように、標準的な石英で構成されている外側ジャケットが備わっている。
【0003】
可視光は、波長が400nmから1000nmの範囲であることで特徴づけられる光である。そのような波長の場合、通常の使用条件下では使用者を保護する必要はない。しかし、150nmから400nmの範囲の波長を示す光である紫外線光、即ちUV光の発光に関しては、その使用者またはそれに曝される人を保護する必要がある。というのも、紫外線光は潜在的に目および皮膚に有害だからである。紫外線制御ランプを用いる場合、そのようなランプを、紫外線光の発光を制御する特殊な外側ジャケットを用いることで製造可能である。そのようなある種の外側ジャケットには、セリウムがドーパントとして添加されている石英製の外側ジャケットが含まれ、それは使用時にランプから出る潜在的に有害な紫外線の約80%までを吸収する。この種類の防御用ジャケットを適切な場所に配置した紫外線制御ランプは、非紫外線制御ランプほどの光生物学的危険性を伴わない。
【0004】
上述のように考察した種類のランプは多種多様な大きさで入手可能であり、それらには例えば575W、800W、1200W、2500W、4000Wおよび6000Wのランプが含まれる。そのようなランプは、上述した種類の防御用コーティングの有無にかかわらず供給されている可能性がある。しかし、その使用者はそのようなコーティングを識別することができない。従って、ドーパントが添加されている外側ジャケットが備わっていないランプと、ドーパントが添加されている外側ジャケットが備わっているランプとを間違える可能性が高い。そのような間違いの結果、前記ランプからの光にさらされた人の目および皮膚が有害な火傷および刺激を受ける可能性がある。
【特許文献1】米国特許第4,433,092号
【特許文献2】米国特許第4,973,613号
【特許文献3】米国特許第7,005,051B2号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ドーパントが添加されている防御用外側ジャケットが備わっているランプと、備わっていないランプとが区別できる様式の開発が求められている。そのような1つの様式は、使用しようとするランプに取り付けられているジャケットの種類を可視的に示すコーティングを前記ランプの基部に取り付ける様式である。しかし、そのようなコーティングが有用であるには少なくとも300°Cの高い使用温度に耐える必要がある。さらに、当産業で確立されたガイドラインおよび環境保護に関する政策によって、そのようなコーティングは無鉛でなければならない。
【0006】
よって、取り付けが容易かつ経済的で、取り付けおよび高温などの使用条件に耐え、確立された環境保護基準に合致し、さらに消費者が非紫外線制御ランプと紫外線制御ランプとの区別ができるよう様式の識別が示す、という必要性に対応する改善が成された新規な紫外線制御ランプの開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
紫外線制御ランプを提供する。このランプは、耐熱コーティング即ち塗料を、ドーパントが添加されているか或は他の防御用石英製ジャケットが用いられていることを示す指標として含む。そのドーパントが添加されているジャケットを、当該ランプの紫外線光の約80%を吸収するよう位置させる。その耐熱塗料またはコーティングを、消費者が容易に確認できるよう、好適には当該ランプの基部に施す。
【0008】
本コーティング、即ち塗料は無鉛組成物である。従って、本コーティングは、米国および外国の市場の両方の環境および使用者の安全性に関する事項を規制する、政府機関および当産業が設定した現存の指示および基準に適合する。
【0009】
前記に加えて本コーティングは、ランプの性能、コーティングの性能、さらに組成物自身の完全性も損なうことなく、300°C以上の使用温度に耐え得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を好適な実施形態を参照しながら説明する。以下の詳細な説明を読み、理解するとことによって、さらなる修正および変更が明らかとなろう。本発明は、かかる修正および変更の全てを包含すると理解されたい。
【0011】
本明細書において「紫外線制御ランプ」は、紫外線の150nmから400nmの範囲を包含するあらゆる波長の光を発しかつ使用者がそのような放射線に曝されないように保護する様式が含まれているランプを指す。575Wから6000Wの間のいずれかのワット数の紫外線制御ランプに、例えば選択的に紫外線光を吸収するよう構築されたドーパント添加石英製ジャケットを取り付けることによって、紫外線から保護してもよい。
【0012】
本明細書において「塗料」および「コーティング」およびその様々な形態は、本発明に従って紫外線制御ランプを識別するために用いる組成物を指す目的で互換的に用いられる。
【0013】
本明細書に開示するコーティング組成物は、様々な種類のランプに適用可能である。本明細書において、これらに限定されないが、575W、800W、1200W、2500W、4000Wおよび6000Wをはじめ、575Wから6KWの間のあらゆるワット数の、あらゆる波長の光を発するランプに関連させて、該組成物を説明する。本コーティング組成物を用い、ドーパントが添加されているジャケットが備わっていることで、消費者または使用者は、光に曝された人がほとんどまたは全く危害を受けることなく長時間使用可能であるランプを容易に識別することができる。勿論、本コーティングは、ランプを同じ種類の異なるランプと区別することが望まれているあらゆるランプ製品に適用可能である。
【0014】
本コーティング組成物を当該ランプの基部に直接取り付ける。これは適切な方法のいずれかで達成可能であり、そのような方法には、ランプ生産工程の一部としての方法、生産後の方法、または手による方法さえ含まれる。本組成物は取り付け時においても使用時においても環境に有害なものは全く含有しない。前記ランプの基部は、当産業で通常用いられるいくつかの中のいずれであってもよく、これらに限定されないが、アルミナ、ジルコン−コージライトおよびステアタイトを含有して成るものを含む。そのようなランプ基部の温度は一般に300°C未満であると見なされ、これは使用限界温度に対応する。本明細書に開示する、無鉛塗料を包含するコーティング組成物は400°C以下およびそれ以上の温度に耐え得る。
【0015】
本コーティング組成物は、とりわけ塗料または粘ちょうなペースト状を示す形態を有してよい。用いる形態は、本コーティングが受け得る使用温度に依存する。取り付けおよび/または使用温度が非常に高い場合にはペースト(またステッカーとも称する)の方が有利である。というのも、その実成分が完全性を維持できる温度は400°C〜800°Cの範囲だからである。
【0016】
本コーティングは、形態がペーストの場合、表Iに示す成分をその示される範囲で含有するよう構築される。本コーティングを構築する時に用いる工程は標準的な産業的工程と同様である。
【0017】
具体的には、本コーティング組成物に含める無機成分を表Iに示す比率に従って混合する。この混合物を温度が1100°Cを超える燃焼室内で溶融させる。前記組成物が溶融した後、それを水の中に直ちに注ぎ込むことでガラス状の薄片材料を得る。次に、この薄片材料をボールミルに加えて粉砕することでミクロンの大きさの粉末を生じさせる。次に、そのようにして調製した粉末を有機溶媒と混合物総重量の少なくとも30重量%の混合比で混合する。そのような溶媒は、例えばメタアクリレート、セルロースまたはこの種類の他の公知の樹脂などの可燃性樹脂から作製され、松根油、テルピネオールまたは他の同様な有機溶媒と組み合わせて調製された標準的な産業用溶媒のいずれであってもよい。そのような樹脂/有機溶媒を、前記コーティング成分を含有するガラス状の薄片材料と組み合わせると、粘ちょう度なペースト状の組成物が得られる。
【0018】
次に、上述した混合/粉砕/混合工程でペースト状にしたものを通常手段のいずれかで当該ランプの基部に付着させる。そのランプ基部を、800°Cを超える温度で少なくとも30分間、熱処理する。かかる温度において、前記有機溶媒が溶解し、その残りの粉末が前記ランプの基部と結合する。別法として、本コーティング組成物をセラミック製ランプ基部に直接付着させた後、800°Cを超える温度で熱処理することによって、前記コーティングを前記ランプ基部に結合させることも可能である。
【0019】
本コーティング組成物にSiO成分を充填材として添加することで酸化物の網状組織を強化しかつ本コーティング組成物の構造的完全性を向上させる。別法として、本コーティングをより堅固にする目的でHfOなどの材料を添加することも可能である。表Iに示す組成物を用いると、暗青色のコーティングが得られるが、充填材成分の一部として酸化インジウムを例えば約2%から約10%添加することによって色の明度を上げてもよい。
【0020】
上述した工程に従って調製した800°C以下の温度に耐えるコーティング組成物を、ペーストまたはステッカーの形態で6KWの紫外線制御ランプに付着した。その塗料は全く劣化することなくランプ基部に結合することが観察された。
【0021】
【表1】

ワット数が575W、800W、1200W、2500Wおよび4000Wの紫外線制御ランプの場合には、以下の表IIに示す塗料組成物を用いた。このコーティング、即ち塗料が500°C以下の温度に耐えるか否か試験した。このコーティング組成物は、上の表Iの組成物に関して示した工程に従い調製された。ただし、この組成物は、コーティングがより公知の塗料に近い形態となる数種の溶媒をさらに含む。この塗料組成物で用いた溶媒は、表Iに示したペーストが受けるよりも高温において解離するかまたは蒸発する可能性があるが、この塗料は、より低い温度パラメーター、即ち500°Cでは安定なままであり、この温度は、この種類のランプの使用に設定されている産業基準に照らせば高温である。
【0022】
【表2】

本コーティング組成物への着色は、使用者に識別可能であれば如何なる色でもよいが、上述したコーティングでは青色の組成物を得るよう構築した。この色はコバルト化合物を含有させたことに起因する。当技術分野の技術者に公知の他の化合物を添加することで他の色を得ることも可能であるが、本コーティングが示す温度特性に影響を与えないような化合物を注意深く選択すべきである。
【0023】
非常に高温での取り付けおよびその後の使用条件を通じて、コーティングが元々の色を維持することによって耐熱性を立証する評価を、本コーティングについて実施した。この評価のデータを以下の表IIIに示す。
【0024】
【表3】

本コーティングが使用中に示す完全性を立証する追加的試験を実施した。ここでは熱ショック試験を適用し、試験中は、ランプに本発明による上の表に明記したコーティングを施し、それぞれ800°Cで20時間使用した。この時間が終了した時点で前記ランプを熱い状態のまま、水温27°Cの水中に落下させ、それらに極端な熱ショックを受けさせた。全てのケースの評価において、前記コーティングは劣化の兆候を全く示さなかった。
【0025】
本開示を紫外線制御ランプに関して記述してきたが、本開示を、ともすれば同じに見えるランプを区別する必要がある、または区別するのが望ましい如何なる場合にも適用可能であることが理解されるであろう。このことは特に高温機能特性が求められる場合に当てはまる。
【0026】
本発明を好適な実施形態を参照しながら説明した。以上の詳細な説明を読み、理解するとことによって、さらなる修正および変更が明らかとなろう。本発明は、かかる修正および変更の全てを包含すると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線制御ランプ用コーティングであって、コーティングの完全性が400℃以上の温度で維持される高温機能特性を示す酸化物を含有する無鉛コーティング組成物を含有して成る、コーティング。
【請求項2】
前記無鉛コーティング組成物がステッカーの形態である、請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
前記無鉛コーティング組成物が塗料である、請求項1記載のコーティング。
【請求項4】
前記酸化物がホウ素、アルミニウム、亜鉛、コバルト、チタンおよびクロムの酸化物から成る群より選択される、請求項1記載のコーティング。
【請求項5】
前記コーティングがB、Al、ZnO、CoOおよびCrを含有して成りかつステッカーの形態である、請求項4記載のコーティング。
【請求項6】
前記コーティングがTiO、CoO、Crおよび少なくとも1種の溶媒を含有して成る塗料である、請求項4記載のコーティング。
【請求項7】
前記コーティングが紫外線制御ランプの基部に施される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項8】
前記コーティングが前記ランプの前記基部に800°C以下の温度で施される、請求項7記載のコーティング。
【請求項9】
前記コーティングが青色である、請求項1記載のコーティング。
【請求項10】
紫外線を包含する150nmから400nmの範囲のあらゆる波長の光を発する、ワット数が500Wから6000Wの範囲のランプを含む紫外線制御ランプであって、前記ランプが発する紫外線の80%までを吸収する防御用石英製ジャケットを備えるとともに、前記ランプが前記紫外線防御用ジャケットを備えることを示す標識として高温機能コーティングを含む、紫外線制御ランプ。
【請求項11】
前記高温機能コーティングが前記ランプの基部に施される、請求項10又は11記載の紫外線制御ランプ。
【請求項12】
前記高温機能コーティングが、コーティングの完全性が400℃以上の温度で維持される高温機能特性を示す酸化物を含有する無鉛コーティング組成物である、請求項10記載の紫外線制御ランプ。
【請求項13】
前記無鉛コーティング組成物がステッカーの形態である、請求項12記載の紫外線制御ランプ。
【請求項14】
前記無鉛コーティング組成物が塗料である、請求項12記載の紫外線制御ランプ。
【請求項15】
前記酸化物がホウ素、アルミニウム、亜鉛、コバルト、チタンおよびクロムの酸化物から成る群より選択される、請求項12記載の紫外線制御ランプ。
【請求項16】
前記コーティングが、B、Al、ZnO、CoOおよびCrを含有して成るとともに、ステッカーの形態である、請求項15記載の紫外線制御ランプ。
【請求項17】
前記コーティングが、TiO、CoO、Crおよび少なくとも1種の溶媒を含有して成る塗料である、請求項15記載の紫外線制御ランプ。
【請求項18】
前記コーティングが前記ランプの前記基部に800°C以下の温度で施される、請求項11乃至17のいずれか1項に記載の紫外線制御ランプ。
【請求項19】
前記コーティングが青色である請求項10乃至18のいずれか1項に記載の紫外線制御ランプ。

【公表番号】特表2009−537666(P2009−537666A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511155(P2009−511155)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/068369
【国際公開番号】WO2007/134004
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】