説明

紫外線吸収性重合体を含むセルロースエステルフィルム及び紫外線吸収性重合体

【課題】塗布故障が少なく、生産性に優れ、且つ、透明性の高いセルロースエステルフィルムの提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。


(式中、J:−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−POO−、−CO−、−COO−、−NRCO−、−NRCOO−、−NRCONR−、−OCO−、−OCONR−、−CONR−、−NRSO−、−NRSO−等、R〜R11:水素原子、アルキル基、アリール基、Sp:2価の連結基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルフィルム、光学用途に利用される光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置に関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、又、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンの高精細化、薄型軽量化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶用偏光板用の保護フィルムもますます高性能化、薄膜化の要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムには、一般的に透明性、屈折率などの理由から、セルロースエステルフィルムが広く使用されている。しかしながら、セルロースエステルフィルムを単純に薄膜にすると、いろいろ問題が発生する。
【0003】
即ち、従来偏光板用保護フィルムに使用されるセルロースエステルフィルムには、偏光子や液晶を紫外線から守る目的で、紫外線吸収剤が使用されている。このセルロースエステルフィルムを単純に薄膜化してしまうと、十分に紫外線をカットすることができず、薄膜化された分だけ、紫外線吸収剤を増量しなければならない。
【0004】
紫外線吸収剤に関しては、特開平6−130226号、同7−11056号などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらに提案されている紫外線吸収剤を単純に増量すると、セルロースエステルフィルム製膜工程で剥離ロールや搬送ロールに紫外線吸収剤が付着し、故障の原因となり、生産性を大きく低下させてしまうという、新たな問題を引き起こすことが判明した。
【0006】
また、特許文献1には紫外線吸収性ポリマーを含有する偏光板用保護フィルムが提案されている。
【0007】
しかしながら、ここで提案されている紫外線吸収性ポリマーはセルロースエステルとの相溶性が不十分であるため、増量したときにヘイズが高くなり、近年の高精細化された液晶表示装置に使用するには不十分であることがわかった。
【0008】
一方、光学補償フィルムは、近年、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有するフィルムのことである。
【0009】
液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれていた。
【0010】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来よりセルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の紫外線吸収剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまうなどの問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−148430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、塗布故障が少なく、生産性に優れ、且つ、透明性に優れたセルロースエステルフィルム、それを用いて作られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
(1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Jは、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−POO−、−CO−、−COO−、−NRCO−、−NRCOO−、−NRCONR−、−OCO−、−OCONR−、−CONR−、−NRSO−、−NRSO−、−SONR10−、−SONR11−を表し、R〜R11は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Spは2価の連結基を表し、ハロゲン原子、置換基を有してもよい。但し、Spに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
(2)下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、J、Jは、一般式(1)中のJと同義であり、J、Jは互いに同じであっても異なってもよい。Sp、Spは一般式(1)中のSpと同義であり、Sp、Spは互いに同じであっても異なってもよいが、Sp、Spの少くとも一方に、紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、Sp、Spの少なくとも一方において、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
(3)前記(1)に記載の前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体。
【0019】
(4)前記(2)に記載の前記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体。
【0020】
即ち、本発明者等は、従来、低分子の紫外線吸収剤しか使えなかったことによる前記問題点の解決に対し種々検討を重ねた結果、セルロースエステルに対して相溶性の優れた紫外線吸収性重合体を選択することにより、前記ブリードアウトによる性能低下や工程汚染、更には光学補償フィルムの配向乱れや光学性能低下、コストに対し著しい効果を発揮する紫外線吸収性重合体を開発するに至った。
【0021】
又、この重合体はブリードアウトばかりでなく、高温・高湿下に於ける耐湿熱特性に対しても著しい効果を有することが判明し本発明に至った。
【0022】
本発明に係る上記以外の構成を下記に列記する。
【0023】
(a)下記一般式(3)で表される紫外線吸収性基を有する繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R12〜R25は各々、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表す。また、R12〜R25において、隣接するもの同士は、互いに結合して環を形成してもよい。一般式(3)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
(b)下記一般式(4)で表される紫外線吸収性基を有する繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、R26、R27は各々炭素数1〜10のアルキル基を表し、R28、R29、R30は各々アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基を表し、X、Yは各々電子吸引性基を表す。但し、R26〜R30及びX、Yはハロゲン原子、置換基を有してもよく、また、これらは互いに連結して5または6員環を形成していても良い。但し、一般式(4)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
(c)下記一般式(5)で表される紫外線吸収性基を有する繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0028】
【化5】

【0029】
(式中、R66〜R71は各々、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表す。X、Yは一般式(4)中のX、Yと同義である。但し、一般式(5)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
(d)下記一般式(6)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、R31、R32は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、lは0、1、2、3を、mは0、1、2、3、4を表す。lが2又は3のとき、R31同士は互いに同じでも異なっていてもよく、mが2、3又は4のとき、R32同士は互いに同じでも異なっていてもよい。Jは、*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−POO−、*−CO−、*−COO−、*−NRCO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−、*−OCO−、*−OCONR−、*−CONR−、*−NRSO−、*−NRSO−、*−SONR10−、*−SONR11−を表す。但し*印は、*で紫外線吸収性基に連結していることを示す。R〜R11は一般式(1)中のR〜R11と同義である。Spは一般式(1)のSpと同義である。)
(e)下記一般式(7)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R33、R34は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、sは0、1、2、3、4を、oは0、1、2、3を表す。sが2、3又は4のとき、R33同士は互いに同じでも異なっていてもよく、oが2又は3のとき、R34同士は互いに同じでも異なっていてもよい。Jは、*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−POO−、*−CO−、*−COO−、*−NRCO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−、*−OCO−、*−OCONR−、*−CONR−、*−NRSO−、*−NRSO−、*−SONR10−、*−SONR11−を表す。但し*印は、*で紫外線吸収性基に連結していることを示す。R〜R11は一般式(1)中のR〜R11と同義である。Spは一般式(1)のSpと同義である。)
(f)下記一般式(8)及び(9)で表される化合物から誘導される共重合体である紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0034】
【化8】

【0035】
(式中、R35〜R39は、各々、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、Spは一般式(1)のSpと同義である。qは0、1、2、3、4を、rは0、1、2、3を表す。qが2、3又は4のとき、R35同士は互いに同じでも異なっていてもよく、rが2又は3のとき、R36同士は互いに同じでも異なっていてもよい。)
(g)セルロースもしくはセルロース誘導体のヒドロキシル基のいずれかに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合した変性セルロースを含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0036】
(h)ヘイズが0〜0.5であることを特徴とする前記(1)、(2)、(a)〜(g)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0037】
(i)380nmにおける透過率が0〜10%であることを特徴とする前記(1)、(2)、(a)〜(h)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0038】
(j)紫外線吸収性重合体又は紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合した変性セルロースが、エチレン性不飽和モノマーとの共重合体であることを特徴とする前記(1)、(2)、(a)〜(i)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0039】
(k)光学フィルムが前記(1)、(2)、(a)〜(j)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムであることを特徴とする光学フィルム。
【0040】
(l)セルロースエステルがセルロースの低級脂肪酸エステルであることを特徴とする前記(k)に記載の光学フィルム。
【0041】
(m)第1の光学フィルム、偏光子、第2の光学フィルムを有する偏光板において、該第1の光学フィルム又は第2の光学フィルムが前記(k)または(l)に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
【0042】
(n)前記(m)に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。
【0043】
(o)前記(1)、(2)、(a)〜(j)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを支持体として用いることを特徴とする光学補償フィルム。
【0044】
(p)光学異方性層にディスコティック化合物を含有することを特徴とする前記(o)に記載の光学補償フィルム。
【0045】
(q)光学異方性層に2軸性液晶化合物を含有することを特徴とする前記(o)に記載の光学補償フィルム。
【0046】
(r)光学異方性層に棒状液晶化合物を含有することを特徴とする前記(o)に記載の光学補償フィルム。
【発明の効果】
【0047】
本発明によるセルロースエステルフィルム、それを用いて作られる光学フィルム、偏光板、光学補償フィルム及び液晶表示装置は塗布故障が少なく、生産性に優れ、且つ、透明性に優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0049】
本発明の前記(1)〜(4)の発明の紫外線吸収性重合体は、前記一般式(1)、(2)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体であれば如何なるものでもよい。
【0050】
一般式(1)において、Jは−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−POO−、−CO−、−COO−、−NRCO−、−NRCOO−、−NRCONR−、−OCO−、−OCONR−、−CONR−、−NRSO−、−NRSO−、−SONR10−、−SONR11−を表すが、好ましくは−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NRCO−、−CONR−が挙げられる。R〜R11は各々水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)を表す。なお、アルキル基、アリール基は置換されていても、未置換であってもよい。
【0051】
Spは2価の連結基を示し、特に限定はされないが、好ましくはアルキレン基、アリーレン基を含む2価の連結基が挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数4〜10のアリーレン基である。これら2価の連結基はハロゲン原子、置換基を有していてもよい。前記置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(例えばフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、ヒドロキシル基、シアノ基、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、ニトロ基、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)が挙げられるが、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基である。
【0052】
但し、Spに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。
【0053】
ここで言うスペーサーとは、2価の連結基であれば如何なるものでもよいが、好ましくは置換または未置換のアルキレン基、置換または未置換のアリーレン基を含む2価の連結基、または、−O−、−NRO−、−S−、−SO−、−SO−、−POO−、−CO−、−COO−、−NR41CO−、−NR42COO−、−NR43CONR44−、−OCO−、−OCONR45−、−CONR46−の何れかと置換または未置換のアルキレン基、または置換または未置換のアリーレン基の組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
【0054】
ここで、R41〜R46は各々水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基を表す。アルキル基、アリール基は各々複数の置換基を有してもよく、置換基の例としては、一般式(1)中のSpが取り得る置換基の例として挙げたもの等が挙げられる。
【0055】
本発明における紫外線吸収性基は、380nmにおける分光吸収が極めて大きく、更に420nm以上の可視光を殆ど吸収しない基を示し、この様な性質を有する基であれば如何なるものでもよいが、具体的には、下記一般式(10)〜(18)で表される化合物から水素原子を一つ以上取り除いた紫外線吸収性基を挙げることができる。
【0056】
【化9】

【0057】
本発明の紫外線吸収性基は各々1または複数のハロゲン原子、置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、一般式(1)中のSpの置換基の例として挙げたもの等が挙げられる。もちろん、一般式(1)、(2)で表される繰り返し単位、一般式(3)〜(5)で表される紫外線吸収性基や一般式(6)、(7)で表される繰り返し単位中の紫外線吸収性基を有しても良い。
【0058】
一般式(10)〜(18)において、R55〜R65は水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、置換基の例としては、一般式(1)におけるSpの置換基の例として挙げたもの等が挙げられるが、好ましくは、一般式(12)において、R55、R56は水素原子、アルキル基、一般式(15)において、R57、R58、R59は水素原子、アルキル基、アリール基、一般式(17)において、R60、R61はアルキル基を挙げることができる。
【0059】
また、一般式(17)及び(18)のR62〜R65は好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基を挙げることができる。一般式(15)において、Xはメチレン、カルコゲン原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
【0060】
一般式(17)、(18)において、EWG〜EWGは電子吸引性基を表し、電子吸引性基の例としては、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えばジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、ニトロ基、シアノ基等の置換基、及び、ハロゲン原子が挙げられ、好ましくはシアノ基、アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が挙げられる。
【0061】
但し、一般式(17)のEWG、EWG及び一般式(18)のEWG、EWGは両者が共に電子吸引性基である必要はなく、どちらか一方が電子吸引性基であれば良い。さらに一般式(17)において、R60〜R64、EWG、EWG、一般式(18)においてEWG、EWG、R65は互いに連結し5または6員環を形成していてもよい。
【0062】
一般式(2)において、J、Jは、一般式(1)におけるJと同義であり、J、Jは互いに同じであっても異なってもよい。Sp、Spは一般式(1)中のSpと同義であり、Sp、Spは互いに同じであっても異なってもよい。Sp、Spの少なくとも一方に紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、Sp、Spの少なくとも一方が紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。Sp、Spの連結基及び置換基の具体例は、一般式(1)のSpに準ずる。
【0063】
紫外線吸収性基は一般式(1)で紫外線吸収性基として挙げたものと同じものを挙げることができ、同様にスペーサーも一般式(1)でスペーサーとして挙げたものをあげることができる。
【0064】
また、本発明の前記(a)、(b)、(c)の発明の紫外線吸収性重合体は、一般式(3)、(4)、(5)で表される紫外線吸収性基を有する繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体であれば如何なるものでもよい。
【0065】
一般式(3)において、R12〜R25は各々、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有し、置換基の例としては、一般式(1)中のSpの置換基の例として挙げたもの等が挙げられる。R12〜R25はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、R12〜R25において、隣接するもの同士は、互いに結合して環を形成してもよい。一般式(3)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。スペーサーは一般式(1)でスペーサーとして挙げたものをあげることができる。
【0066】
一般式(4)において、R26、R27は各々炭素数1〜10のアルキル基を表し、R28、R29、R30は各々アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基を表し、X、Yは各々電子吸引性基を表す。電子吸引性基の例としては一般式(17)、(18)における、EWG〜EWGの例として挙げたもの等が挙げられる。但し、R26〜R30及びX、Yはハロゲン原子、置換基を有してもよく、置換基の例としては、一般式(1)における、Spが取り得る置換基の例として挙げたもの等が挙げられる。なお、R26〜R30は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。また、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基は、それぞれ置換基を有していても、未置換であってもよい。
【0067】
但し、R26〜R30、X、Yは、互いに連結して5または6員環を形成していても良い。但し、一般式(4)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。紫外線吸収性基は一般式(1)で紫外線吸収性基として挙げたものと同じものを挙げることができ、同様にスペーサーも一般式(1)でスペーサーとして挙げたものをあげることができる。
【0068】
一般式(5)において、R66〜R71は各々水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、好ましくは、R66〜R70は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基が挙げられ、R71は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基が挙げられる。但し、R66〜R70は互いに連結して5または6員環を形成していても良い。X、Yは一般式(4)中のX、Yと同義である。なお、R66〜R70においては、隣接するもの同士は、互いに結合して環を形成してもよい。また一般式(5)で表される紫外線吸収性基において、X,Yとは互いに結合して環を形成することはない。但し、一般式(5)で表される紫外線吸収性基はいずれかの部位で重合体主鎖と直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。紫外線吸収性基は一般式(1)で紫外線吸収性基として挙げたものと同じものを挙げることができ、同様にスペーサーも一般式(1)でスペーサーとして挙げたものをあげることができる。
【0069】
また、前記(d)、(e)の発明の紫外線吸収性重合体は、前記一般式(6)、(7)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体であれば如何なるものでもよい。なお、一般式(6)で表される繰り返し単位か、一般式(7)で表される繰り返し単位の何れかを有する紫外線吸収性重合体は、エチレン性不飽和モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0070】
一般式(6)、(7)において、R31〜R34は、ハロゲン原子、置換基を表し、置換基の例としては、一般式(1)中のSpの置換基の例として挙げたもの等が挙げられる。lは0、1、2、3を、mは0、1、2、3、4、sは0、1、2、3、4を、oは0、1、2、3を表す。Jは、*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−POO−、*−CO−、*−COO−、*−NRCO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−、*−OCO−、*−OCONR−、*−CONR−、*−NRSO−、*−NRSO−、*−SONR10−、*−SONR11−を表すが(但し*印は、*で紫外線吸収性基に連結していることを示す)、好ましくは*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−である。Jは、*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−POO−、*−CO−、*−COO−、*−NRCO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−、*−OCO−、*−OCONR−、*−CONR−、*−NRSO−、*−NRSO−、*−SONR10−、*−SONR11−を表すが(但し*印は、*で紫外線吸収性基(Spと逆側)に連結していることを示す)、好ましくは、*−O−、*−NR−、*−S−、*−SO−、*−SO−、*−NRCOO−、*−NRCONR−である。R〜R11は前記一般式(1)のR〜R11と同義である。Sp、Spは2価の連結基を表し、ハロゲン原子、または置換基を有してもよい。連結基や置換基の具体例は一般式(1)のSpに準ずる。lが2または3のとき、R31は互いに同じでも異なってもよい。mが2,3,4の何れかのとき、R32は互いに同じでも異なってもよい。oが2または3のとき、R34は互いに同じでも異なってもよい。sが2,3,4の何れかのとき、R33は互いに同じでも異なってもよい。
【0071】
また、一般式(6)、(7)において、sとoとが、またはlとmとが、共に0とはならないことが好ましい。
【0072】
また、前記(f)の発明の紫外線吸収性重合体は、一般式(8)及び(9)で表される化合物から誘導される共重合体を含有するものであれば如何なるものでもよい。
【0073】
一般式(8)、(9)において、R35、R36は、各々ハロゲン原子、置換基を表す。置換基の例としては、一般式(1)中のSpが取り得る置換基の例として挙げたものが挙げられる。R35、R36は互いに同じでも異なっていてもよい。qは0、1、2、3、4を、rは0、1、2、3を表す。rが2,3のとき、R36同士は互いに同じでも異なってもよい。qが2,3,4の何れかのとき、R35同士は互いに同じでも異なってもよい。R37〜R39は、各々、水素原子、ハロゲン原子、置換基の何れかを表す。Spは2価の連結基を表し、ハロゲン原子、または置換基を有してもよい。Spにおいて、連結基と置換基の具体例は、一般式(1)のSpに準ずる。
【0074】
また、前記(g)の発明の紫外線吸収性重合体は、セルロースもしくはセルロース誘導体のヒドロキシル基のいずれかに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合した変性セルロースであれば如何なるものでもよい。セルロースもしくはセルロース誘導体のヒドロキシル基に紫外線吸収性基がスペーサーを介して結合したとは、セルロースの繰り返し単位が有する3箇所のヒドロキシル基のいずれかに、少なくとも一つの紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合していればよく、紫外線吸収性基は一般式(1)で紫外線吸収性基として挙げたものを挙げることができ、同様にスペーサーも一般式(1)でスペーサーとして挙げたものをあげることができる。この紫外線吸収性重合体は、繰り返し単位がセルロース誘導体であるため、セルロースとの相溶性が非常に良好であり、セルロースフィルムの製造工程中やアルカリ処理液で鹸化する際に問題となっていた、ブリード現象、結晶の析出等が起こらず安定である。
【0075】
本発明の紫外線吸収性重合体は、前記一般式(1)、(2)、(6)、(7)で表される繰り返し単位を含む重合体、前記一般式(3)、(4)、(5)で表される紫外線吸収性基を有する繰り返し単位を含む重合体、前記一般式(8)及び(9)で表される化合物から誘導される共重合体又はセルロースのヒドロキシル基のいずれかに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合した変性セルロースから選ばれる少なくとも一種含有することを特徴としており、本発明の繰り返し単位、もしくは、本発明の化合物から誘導される共重合体を含有していれば、ホモポリマーであっても、複数の他の連続単位との共重合体であっても良い。
【0076】
他の連続単位としては、例えば、アクリルアミド誘導体含有モノマー、アクリル酸エステル誘導体含有モノマー、メタクリル酸エステル誘導体含有モノマー、ビニルエーテル誘導体含有モノマー、エチレンオキシド誘導体含有モノマー、ビニルエステル誘導体含有モノマー、ジカルボン酸誘導体含有モノマー、ジオール誘導体含有モノマー、ジアミン誘導体含有モノマー等から得られる連続単位などがあげられる。
【0077】
本発明の紫外線吸収性重合体、または変性セルロースを共重合体とする場合、エチレン性不飽和モノマーとの共重合体であることが好ましい。より好ましくは、エチレン性不飽和モノマーが、ヒドロキシル基またはエーテル結合を有するメタクリル酸エステルか、ヒドロキシル基を有するアクリル酸エステルである。
【0078】
好ましい例を以下に挙げる。メタクリル酸及びそのエステル誘導体(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等)、或いはアクリル酸及びそのエステル誘導体(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル等)、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等)、アルキルビニルエステル(ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、アクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン等が好ましい例として挙げることができる。
【0079】
これらのエチレン性不飽和モノマーの内、ヒドロキシル基またはエーテル結合を有するアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ジエチレンクリコールエトキシレート、アクリル酸3−メトキシブチル)が好ましい。これらは1種単独でも2種以上混合して、紫外線吸収性モノマーと共重合させることができる。
【0080】
また、紫外線吸収性重合体における、紫外線吸収性モノマーの含有量が1〜70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、20〜70質量%、更には30〜60質量%であることが好ましい。特に紫外線吸収性重合体が、一般式(6)で表される繰り返し単位と、エチレン性不飽和モノマーとの共重合体である場合、紫外線吸収性重合体における、一般式(6)で表される繰り返し単位の含有量が、1〜45質量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜45質量%であり、更に好ましくは20〜40質量%である。また、特に紫外線吸収性重合体が、一般式(7)で表される繰り返し単位の含有量が、1〜55質量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜55質量%であり、更に好ましくは、20〜50質量%である。
【0081】
本発明に用いられる重合体は、セルロースエステルに対し、0.01〜40質量%の割合で混ぜることが好ましく、更に好ましくは、0.01〜30質量%の割合で混ぜることが好ましい。なお、セルロースエステルフィルムの膜厚が65μm以下のときは、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは、1〜5質量%である。また、セルロースエステルの膜厚70μm以上のときは、0.5〜5質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜2.5質量%である。この時の、セルロースエステルフィルムを形成した時のヘイズが0〜0.5であれば特に制限はされないが、好ましくは、ヘイズが0.2以下である。更に好ましくは、セルロースエステルフィルムを形成した時のヘイズが0〜0.2、かつ380nmにおける透過率が0〜10%であることである。
【0082】
また、本発明の紫外線吸収性重合体はセルロースエステルに混合する際に、他の低分子化合物、高分子化合物、もしくは無機化合物などと一緒に用いることもできる。例えば、本発明の紫外線吸収性重合体と他の低分子紫外線吸収剤を同時にセルロースエステルフィルムに混合することも好ましい様態の一種である。
【0083】
本発明の重合体はモノマー以外であれば、特に制限なく用いることができるが、好ましい重合体の重量平均分子量は500〜1000000であり、特に好ましくは1000〜100000である。更に好ましくは、2000〜20000であり、更には7000〜15000である。
【0084】
本発明の重合体の重合方法は特に問わないが、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。ラジカル重合法の開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチル酸ジエステル誘導体、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。
【0085】
重合溶媒は特に問わないが、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、水溶媒等が挙げられる。溶媒の選択により、均一系で重合する溶液重合、生成したポリマーが沈澱する沈澱重合、ミセル状態で重合する乳化重合を行うこともできる。
【0086】
本発明の紫外線吸収性重合体は、従来知られている低分子紫外線吸収剤等と比較してセルロースとの相溶性が良好であり且つ高分子量である為、セルロースフィルムの製造工程中およびアルカリ処理液で鹸化する際に問題となっていた、ブリード現象や結晶析出等が起こらない。更に、ヘイズの発生が極端に少なく、重合体自身、紫外線、熱、湿度に対して充分に安定であり、高温、高湿下に曝されても紫外線吸収特性の低下が殆どなく、耐湿熱特性の優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0087】
本発明の偏光板は、第1の偏光板保護フィルムと、偏光子と、第2の偏光板保護フィルムとを有する。そして、第1の偏光板保護フィルム、もしくは、第2の偏光板保護フィルムの少くとも一方が、本発明のセルロースエステルフィルムである。
【0088】
(偏光板の作製方法)
偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明のセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、このときの水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に浸ける処理のことをいう。
【0089】
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。
【0090】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースエステルが低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0091】
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましい例として挙げられる。
【0092】
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。
【0093】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルローストリアセテートである。
【0094】
更に、ベース強度の観点から、特に重合度250〜400、総置換度2.3〜3.0が好ましく、特に2.6〜2.8が好ましい。あるいは、総置換度が2.3〜2.8、かつアセチル置換度が1.5〜2.5、プロピオニル置換度が0.1〜1.0のセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0095】
セルローストリアセテートは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性がもし問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルローストリアセテートを混合し用いた場合、綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
【0096】
本発明の偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。これらは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に本発明の偏光板用保護フィルムである透明なセルロースエステルフィルムが張り合わされて偏光板を形成する。
【0097】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0098】
本発明において、セルロースエステルが溶解しているドープ液とは、セルロースエステルが溶剤(溶媒)に溶解している状態であり、前記ドープ液には、可塑剤を加え、必要によりこの他の添加剤を加えることも出来る。ドープ液中のセルロースエステルの濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、18〜20質量%である。
【0099】
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が70〜95質量%であり、貧溶剤が30〜5質量%である。
【0100】
本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0101】
本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。
【0102】
セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶剤にも、貧溶剤にもなる溶剤としては、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0103】
本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
【0104】
上記記載のドープ液を調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶剤と混合する方法が好ましく用いられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0105】
加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0106】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の融点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、70〜110℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0107】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供する。このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行うほうが、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
【0108】
キャスト工程における支持体はベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、0〜30℃の支持体上に流延するほうが、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
【0109】
流延(キャスト)される側の支持体の表面温度は、10〜55℃、溶液の温度は、25〜60℃、更に溶液の温度を支持体の温度より0℃以上高くするのが好ましく、5℃以上に設定するのが更に好ましい。
【0110】
溶液温度、支持体温度は、高いほど溶媒の乾燥速度が速くできるので好ましいが、あまり高すぎると発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0111】
支持体の温度の更に好ましい範囲は、20〜40℃、溶液温度の更に好ましい範囲は、35〜45℃である。
【0112】
また、剥離する際の支持体温度を10〜40℃、更に好ましくは、15〜30℃にすることでフィルムと支持体との密着力を低減できるので、好ましい。
【0113】
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜80%が好ましく、更に好ましくは、20〜40%であり、特に好ましくは、20〜30%である。
【0114】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0115】
残留溶媒量=(加熱処理前質量−加熱処理後の質量)/(加熱処理後質量)×100%
尚、残留溶媒量を測定する際の、加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0116】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常196〜245N(20〜25kgf)/mで剥離が行われるが、セルロースエステルの単位質量あたりの紫外線吸収剤の含有量が多く、且つ、従来よりも薄膜化されている本発明のセルロースエステルフィルムは、剥離の際にシワが入りやすいため、剥離できる最低張力から167N(17kgf)/m以内の力で剥離することが好ましく、更に好ましくは、最低張力から137N(14kgf)/m以内の力で剥離することである。
【0117】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましい、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
【0118】
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示部材用としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0119】
本発明のセルロースエステルフィルムには可塑剤が含有されるのが好ましい。用いることのできる可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0120】
これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため特に好ましい。
【0121】
本発明においては前述の紫外線吸収剤とこれらの可塑剤のうち融点20℃以下の可塑剤を併用することが加工性に優れ、前記異物故障や面品質の上で好ましい。融点20℃以下の可塑剤としては、融点が20℃以下であれば特に限定されず、上記可塑剤の中から選ぶことができる。例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等をあげることができる。これらの可塑剤を単独あるいは併用するのも好ましい。
【0122】
本発明中の融点は、共立出版株式会社出版の化学大辞典に記載されている真の融点を融点としている。
【0123】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜15質量%が好ましい。液晶表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15質量%が更に好ましく、特に好ましくは、7〜12質量%である。
【0124】
またセルロースエステルに対して融点が20℃以下の可塑剤の含有量は1質量%〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、3質量%〜7質量%である。
【0125】
加工性とはベースフィルムや液晶表示部材をスリット加工や打ち抜き加工する際の加工のしやすさのことで、加工性が悪いと切断面がノコギリ状になり切り屑が発生し、製品に付着して異物故障となるため好ましくない。
【0126】
本発明のセルロースエステルフィルムは、高い寸法安定性、良好な紫外線カット性能から液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、寸法安定性に対しても厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは更に好ましく用いられる。
【0127】
本発明のセルロースエステルフィルムは、用途にもよるが、厚さが5〜200μmであることが好ましく、更に好ましくは、10〜100μmであり、最も好ましくは、20〜65μmである。
【0128】
本発明の光学フィルムには、他に必要ならマット剤として微粒子を加えてもよい。本発明に使用される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0129】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0130】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0131】
次に、本発明の光学補償フィルムについて説明する。
【0132】
光学補償フィルムとは、主に液晶表示装置に用いることのできる光学異方性を有するフィルムのことであり、一般に支持体フィルム上に光学異方性層を設けることで製造される。
【0133】
本発明の光学補償フィルムは、本発明の前記(1)または(2)に記載のセルロースエステルフィルムを支持体として用い、その上に光学異方性層を有する。光学異方性層に好ましく用いられる化合物としては、ディスコティック化合物、二軸性液晶性化合物、棒状液晶性化合物であり、更に好ましくは、ネマティック相を有するディスコティック液晶化合物、ネマティック相を有する2軸性液晶化合物、ネマティック相を有する棒状液晶性化合物である。
【0134】
ディスコティック化合物は、例えば、ベンゼン誘導体、シクロヘキサン誘導体、アザクラウン系マクロサイクル、フェニルアセチレン系マクロサイクル、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、アントラキノン誘導体、フルバレン誘導体、ビピラニリデン誘導体、β−ジケトン錯体などが挙げられる。更に好ましくは、これらディスコティック化合物を分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換された構造を有するディスコティック液晶性化合物があげられる。但し、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば、上記記載に限定されるものではない。
【0135】
二軸性液晶性化合物とは、液晶状態での光学軸が2つ存在する液晶性化合物のことである。言い換えると、液晶相の3軸方向の屈折率を小さい順にnx、ny、nzとしたとき、nx<ny<nzの関係を満たす液晶性化合物であり、例えば、Handbook of Liquid Crystals Chapter XV Biaxial Nematic Liquid Crystalsに記載されている様な液晶性化合物を挙げることができる。但し、ある方向とそれとは別の方向の屈折率が全て異なり、一定の配向を付与できるものであれば、上記記載に限定されるものではない。
【0136】
棒状液晶性化合物とは、最も一般的な液晶性化合物であり、分子形状が棒状とみなせる化合物の総称である。分子形状が棒状とみなせるとは、分子の長軸をa、分子の短軸をbとした時、a/bが十分大きければ棒状で有るといい、好ましくは、a/b≧2さらに好ましくはa/b≧3である。但し、分子自身が正の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば、上記記載に限定されるものではない。
【0137】
これらの化合物は、化合物単独、または、少なくとも1種の該化合物を含有する組成物からなり、また、これらの化合物は低分子でも高分子でもよいが、その液晶状態における配向形態を損なうことなく固定化するために、これらの化合物をポリマー中に混入させたり、または、液晶相形成温度からその配向状態を維持したまま冷却したり、または、液晶性化合物に重合性基を導入し、重合開始剤を添加した組成物を液晶相形成温度まで加熱した後、重合反応によって配向状態を安定に固定化してもよい。
【0138】
保護膜の素材としては、ポリメチルメタアクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン−ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの高分子物質、およびシランカップリング剤等を挙げることができる。ω−トリコサン酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドおよびステアリン酸メチルなどのラングミュア・ブロジェット(LB法)により形成される累積膜を使用することもできる。
【0139】
重合用の光線としては、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線による光重合開始剤を用いるラジカル重合やカチオン重合は、一般に極めて重合速度が大きく、製造工程における生産性の点で好ましい。ラジカル光源としては、低圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、およびショートアーク放電ランプが好ましく用いられ、高圧放電ランプがより好ましく用いられる。
【0140】
本発明の光学補償フィルムは、液晶表示素子の視野角補償を行うためのフィルムであり、好ましくはダイレクターがフィルムの上面と下面とで異なるフィルムであり、更に好ましくはフィルム厚み方向で徐々に変化したハイブリッド配向を形成しているフィルムである。
【0141】
本発明のハイブリッド配向を得るためには、液晶性材料の上下を異なる界面で挟んだり、電場、磁場などを用いることが望ましく、具体的な態様としては、1枚の基板と空気界面とを利用し、液晶層の下界面を基板に、また上の界面を空気に接するようにする。片方の界面が気相と接した状態で支持体上に塗布することが好ましい。
【0142】
本発明に好ましく用いることのできる配向基板は、光学異方性層の化合物の配向方向を規定する機能を有する。配向基板は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向基板も用いることができる。
【0143】
本発明の光学補償フィルムは、これらの配向基板上に前記液晶性化合物を塗布し、次いで均一配向過程、固定化過程を経て得られる。基板上への塗布は、各種溶媒に該材料を溶解した溶液、または、該材料を溶融した状態のものを用いて行うことができるが、プロセス上、溶媒に液晶性化合物を溶解した溶液を用いて塗布する溶液塗布が好ましい。
【0144】
これらの溶液を、次に上記の配向基板上に塗布する。塗布方法は、蒸着法、スピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどが挙げられる。塗布後、溶媒を除去し、基板上に膜厚の均一な層をまず形成させる。通常、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどを利用して溶媒を除去する。
【0145】
その後配向させるために、熱処理を行うことが好ましく、熱処理は、液晶性化合物の液晶転移点以上で行う。すなわち該液晶性化合物の液晶状態で配向させるか、または、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にした後、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げることにより行う。通常、熱処理の温度は0℃〜200℃の範囲で行われ、特に20℃〜150℃の範囲が好適である。
【0146】
尚、本発明では、上記の熱処理工程において、液晶性化合物を配向させるために磁場や電場を用いても特に構わない。こうして得られた配向状態を次に冷却する、もしくは光や熱等によって重合させることによって該配向状態を損なうことなく固定化し、本発明の光学補償フィルムを得る。
【0147】
このようにして得られた本発明の光学補償フィルムは、液晶ディスプレイに対して該光学補償フィルムが通常1枚または複数枚で使用されることにより、好適な光学補償効果を発現することができる。
【0148】
以下に紫外線吸収性重合体の重合例を述べるが、本発明はこれら(重合例1〜9)に限定されるものではない。
【0149】
〈重合例1〉
重合体Aの合成(一般式(2))
【0150】
【化10】

【0151】
ジヒドロキシベンゾトリアゾール(a)11.83g(20mmol)とアジピン酸(b)2.92g(20mmol)に酸化アンチモン0.02gを加え、真空かき混ぜ機をつけた重合管に入れる。重合管には窒素ガス導入管をつなぎ、この重合管を油浴に入れ180℃に加熱しながら、ゆっくりと窒素ガスを通した。かき混ぜながら、徐々に270℃まで昇温し、同時に真空度を102Paまで高めた。このまま3時間加熱した後、放冷し、定量的に重合体Aを得た。重合体Aの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は12500であった。また重合体の構造は1H−NMRにより確認した。
【0152】
〈重合例2〉
重合体Bの合成(一般式(2)及び(3))
【0153】
【化11】

【0154】
ペンタヒドロキシトリアジン(c)10.35g(20mmol)とグルタル酸(d)2.64g(20mmol)に酸化アンチモン0.02gを加え、真空かき混ぜ機をつけた重合管に入れる。重合管には窒素ガス導入管をつなぎ、この重合管を油浴に入れ180℃に加熱しながら、ゆっくりと窒素ガスを通した。かき混ぜながら、徐々に270℃まで昇温し、同時に真空度を102Paまで高めた。このまま3時間加熱した後、放冷し、定量的に重合体Bを得た。重合体Bの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は23000であった。また重合体の構造は1H−NMRにより確認した。
【0155】
〈重合例3〉
重合体Cの合成(一般式(7))
【0156】
【化12】

【0157】
アクリルモノマー(e)7.18g(20mmol)とアクリルモノマー(f)10.75g(125mmol)を100ml三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を三回行なった。窒素下脱水テトラヒドロフラン60mlに溶解し、加熱還流した。この溶液にAIBN、1.16g(7.25mmol)のテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱還流した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、少量のテトラヒドロフランに溶解し、アセトンで再沈した。析出物を濾取し、重合体Cを得た。重合体Cの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は16800であった。また重合体の構造は1H−NMRにより、アクリルモノマー(e)とアクリルモノマー(f)のユニット比はそれぞれ40質量%、及び60質量%であることを確認した。
【0158】
〈重合例4〉
重合体Dの合成(一般式(8)及び(9))
【0159】
【化13】

【0160】
メタクリルモノマー(g)6.46g(20mmol)と酢酸ビニルモノマー(h)4.31g(50mmol)を100ml三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を三回行なった。窒素下脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、加熱還流した。この溶液にAIBN、0.57mg(3.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱還流した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、少量のテトラヒドロフランに溶解し、アセトンで再沈した。析出物を濾取し、重合体Dを得た。重合体Dの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は19500であった。また重合体の構造は1H−NMRにより、メタクリルモノマー(g)と酢酸ビニルモノマー(h)のユニット比はそれぞれ50質量%及び50質量%であることを確認した。
【0161】
〈重合例5〉
重合体Eの合成
【0162】
【化14】

【0163】
ジアセチルセルロース10.0gを100ml三頭コルベンに入れ、テトラヒドロフラン20ml、炭酸カリウム11.0g(80mmol)、アルキルハライドモノマー(i)16.0g(50mmol)を加え3時間加熱還流した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、少量のDMFに溶解し、ヘキサンで再沈した。析出物を濾取し、重合体Eを得た。重合体Eの構造は1H−NMRにより確認した。
【0164】
〈重合例6〉
重合体Fの合成(一般式(6))
【0165】
【化15】

【0166】
ビニルモノマー(j)4.09g(10mmol)、ビニルモノマー(k)2.53g(9mmol)、ビニルモノマー(l)9.50g(95mmol)を100ml三頭コルベンに入れ、真空ポンプにより、減圧にした後窒素置換を三回行なった。窒素下脱水テトラヒドロフラン60mlに溶解し、加熱還流した。この溶液にAIBN、0.93g(5.7mmol)のテトラヒドロフラン溶液を添加し、3時間加熱還流した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、最少のテトラヒドロフランに溶解し、アセトンで再沈した。析出物を濾取し、重合体Fを得た。重合体Fの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は21000であった。また重合体の構造は1H−NMRにより、ビニルモノマー(j)とビニルモノマー(k)とビニルモノマー(l)のユニット比はそれぞれ25質量%、15質量%及び60質量%であることを確認した。
【0167】
〈重合例7〉
重合体Gの合成(一般式(4))
【0168】
【化16】

【0169】
100mlの三頭コルベンに、カルボン酸モノマー(m)1.94g(10mmol)、塩化メチレン10mlを加えたところへ、塩化オキザリル1.50g(12mmol)とジメチルホルムアミド数滴を加え約一時間撹拌した後、溶媒を減圧除去し、カルボン酸モノマー(m)の酸クロライド体を得た。次に、ポリビニルアルコール(n≒2000)1.32gをカルボン酸モノマー(m)の酸クロライド体の入った100ml三頭コルベンに入れ、テトラヒドロフラン30mlとピリジン0.95g(12mmol)に溶解し、3時間撹拌した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、少量のテトラヒドロフランに溶解し、酢酸エチルで再沈した。析出物を濾取し、重合体Gを得た。重合体Gの構造は1H−NMR及びIRにより、置換度が27%のポリビニルアルコールであることを確認した。
【0170】
〈重合例8〉
重合体Hの合成(一般式(5))
【0171】
【化17】

【0172】
100mlの三頭コルベンに、カルボン酸モノマー(n)2.17g(10mmol)、塩化メチレン10mlを加えたところへ、塩化オキザリル1.50g(12mmol)とジメチルホルムアミド数滴を加え約一時間撹拌した後、溶媒を減圧除去し、カルボン酸モノマー(n)の酸クロライド体を得た。次に、ポリビニルアルコール(n≒2000)1.32gをカルボン酸モノマー(n)の酸クロライド体の入った100ml三頭コルベンに入れ、テトラヒドロフラン30mlとピリジン0.95g(12mmol)に溶解し、3時間撹拌した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、少量のテトラヒドロフランに溶解し、酢酸エチルで再沈した。析出物を濾取し、重合体Hを得た。重合体Hの構造は1H−NMR及びIRにより、置換度が25%のポリビニルアルコールであることを確認した。
【0173】
〈重合例9〉
重合体Iの合成(一般式(1))
【0174】
【化18】

【0175】
100ml三頭コルベンを真空ポンプにより減圧にした後窒素置換を三回行なった。窒素下脱水ジエチルエーテル60mlとエチレンオキシドモノマー(o)13.34g(40mmol)を三頭コルベンに入れ、この溶液にBF・OEt0.06g(0.4mmol)を添加し、0℃で3時間撹拌した。反応溶液の溶媒を減圧留去した後、最少のテトラヒドロフランに溶解し、アセトンで再沈した。析出物を濾取し、重合体Iを得た。重合体Iの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は6200であった。また重合体の構造は1H−NMRにより確認した。
【0176】
〈重合例10〉(比較)
重合体Jの合成
【0177】
【化19】

【0178】
アクリルモノマー(p)50gとアクリルモノマー(q)10gを300ml三頭コルベン中、ジオキサン150mlに溶解し、窒素気流下に70℃で加熱撹拌しながらジオキサン5mlに溶かした2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)270mgを加えた後、4時間反応させた。室温まで冷却し、反応液を氷水2リットルに注ぎ析出した固体を濾取し、重合体Jを得た。重合体Jの分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量35000であった。この重合体の構造は1H−NMRによりアクリルモノマー(p)を58モル%含有する重合体であることを確認した。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0180】
実施例1
〈試料1〜12〉
(酸化珪素分散液)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)
(一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル)
10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は93ppmであった。
【0181】
(添加液Aの作製)
前記重合体A 10質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
【0182】
これに酸化珪素分散液10質量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Aを調製した。
【0183】
(ドープ液Aの調製)
リンター綿から合成されたトリアセチルセルロース 85質量部
木材パルプから合成されたトリアセチルセルロース 15質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2.5質量部
トリフェニルホスフェート 9質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過し、ドープ液Aを調製した。
【0184】
ドープ液100質量部に対して添加液を表1に示す質量部を加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過した。次いで、ベルト流延装置を用い、温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127N(13kgf)/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムを1300mm幅にスリットし、その後、ピンテンターで幅手方向に1.03倍延伸しながら乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1100mm幅にスリットし、セルローストリアセテートフィルム試料1を得た。このときのセルローストリアセテートフィルムの膜厚は40μmであった。
【0185】
試料1の添加液Aにかえて、表1に示すような下記の添加液と添加量にかえた以外は同様にして試料2〜12を作製した。
【0186】
(添加液B)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体B、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Bを作製した。
【0187】
(添加液C)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体C、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Cを作製した。
【0188】
(添加液D)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体D、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Dを作製した。
【0189】
(添加液E)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体E、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Eを作製した。
【0190】
(添加液F)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体F、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Fを作製した。
【0191】
(添加液G)
添加液Aの前記重合体Aを下記紫外線吸収剤にかえた以外は同様にして添加液Gを作製した。
【0192】
TINUVIN 109
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製) 8質量部
前記重合体G 2質量部
(添加液H)
添加液Aの前記重合体Aを下記紫外線吸収剤にかえた以外は同様にして添加液Hを作製した。
【0193】
TINUVIN 109
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製) 5質量部
前記重合体H 5質量部
(添加液I)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体I、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Iを作製した。
【0194】
(添加液J)
添加液Aの前記重合体Aを下記紫外線吸収剤にかえた以外は同様にして添加液Jを作製した。
【0195】
TINUVIN 326
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製) 5質量部
TINUVIN 328
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製) 5質量部
(添加液K)
添加液Aの前記重合体Aを前記重合体J、10質量部にかえた以外は同様にして添加液Kを作製した。
【0196】
(添加液L)
添加液Aの前記重合体Aを除いた以外は同様にして添加液Lを作製した。
【0197】
《測定方法》
(ロール汚れ)
10000mのセルロースエステルフィルムを作製した後、ステンレスバンド支持体から剥離したフィルムが接する一本目のロールの汚れ具合を目視で観察し、以下のランクに分けて評価した。
【0198】
A:ロールが汚れているのが全くわからない
B:ロールが部分的に汚れているのがかすかにわかる
C:ロールが全面的に汚れているのがかすかにわかる
D:ロールが全面的に汚れているのがはっきりわかる
A〜Cは生産が続けられるレベル。Dは生産を中断してロールを清掃するレベル。
【0199】
(透過率)
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用い、フィルムの分光吸収スペクトルを測定し、500nmと380nmにおける透過率を求め、以下のようにランク分けを行った。500nmの透過率は高い程優れており、380nmの透過率は低い程優れている。
【0200】
(500nm透過率)
A:透過率92%以上
B:透過率90%以上92%未満
C:透過率85%以上90%未満
D:透過率85%未満
(380nm透過率)
A:透過率6%未満
B:透過率6%以上10%未満
C:透過率10%以上25%未満
D:透過率25%以上
(ヘイズ)
フィルム試料1枚をASTM−D1003−52に従って、東京電色工業(株)社製T−2600DAを使用して測定し、以下のようにランクわけを行った。
【0201】
A:ヘイズ0.2%未満
B:ヘイズ0.2%以上1%未満
C:ヘイズ1%以上5%未満
D:ヘイズ5%以上
(引き裂き強度)
JIS−K7128−2に規定されるプラスチック−フィルム及びシートの引裂強さ試験方法−エルメンドルフ引裂法に従って測定した。
【0202】
(押され故障)
10000mセルロースエステルフィルムを作製した所で、フィルムをサンプリングし、得られたフィルム1m上に存在する30μm以上の押され故障の数を数えて求めた。
【0203】
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面にアルカリケン化処理を行ったセルロースエステルフィルム試料を完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板を作製した。
【0204】
(液晶パネルの作製)
15型TFT型カラー液晶ディスプレイLA−1529HM(NEC製)の偏光板を剥がし、液晶セルを挟むようにして、前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、15型TFT型カラー液晶ディスプレイを作製した。
【0205】
試料12のセルロースアセテートフィルムから作製された偏光板を張り付けた液晶ディスプレイと他のセロースアセテートフィルムから作製された液晶ディスプレイを2台並べて置き、この液晶ディスプレイ上にJIS−X−9201高精細カラーデジタル標準画像に基づいて作製されたSCID画像(CD−ROM日本規格協会製)の自転車画像を表示し、解像度、鮮鋭度を以下の通り評価した。
【0206】
(画像)
A:試料12に比して、解像度、鮮鋭度の差がかわらない
B:試料12に比して、解像度、鮮鋭度がやや劣化しているのが分かる
C:試料12に比して、解像度、鮮鋭度が明らかに劣化しているのが分かる
【0207】
【表1】

【0208】
上記表1から明らかな様に、本発明の紫外線吸収性重合体は、セルロースエステルとの相溶性に優れる為、ヘイズの発生が極端に低く、引き裂き強度や透過率にも優れ、また、これまで問題になっていたブリード現象による、ロール汚れや、押され故障も著しく改善されていることが分かる。
【0209】
実施例2
上記実施例1で作製したセルロースエステルフィルム(試料1〜試料10)を支持体として光学補償フィルムを作製した。
【0210】
(光学補償フィルム(試料2−1)の作製)
セルロースエステルフィルム(試料1)の一方の側に配向膜としてメチルエチルケトンに溶解させた2%ポリビニルシンナメートを塗布し、この膜に偏光紫外線を照射した。その上にディスコティック液晶性化合物(α)の10質量%メチルエチルケトン溶液に光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュアー907)、増感剤(日本化薬製カヤキュアーDETX)を極小量溶解した塗布液をスピンコーターにより1000rpmで塗布し、液晶性化合物の塗布層を形成した。表面温度95℃に加熱した金属ローラに支持体側から40秒間接触させ、液晶を配向させた後、95℃のまま120W/cmの高圧水銀灯を用いて、照度600mW/cmで2秒間塗布面上にUV照射した後室温にもどして、液晶性化合物含有層を塗設した光学補償フィルムを作製した。
【0211】
【化20】

【0212】
(試料2−2)
試料2−1の前記セルロースエステルフィルムを試料2に変えた以外は、同様にして試料2−2を作製した。
【0213】
(試料2−3)
試料2−1の前記セルロースエステルフィルムを試料3に変えた以外は、同様にして試料2−3を作製した。
【0214】
(試料2−4)
試料2−1の前記セルロースエステルフィルムを試料4に変え、ディスコティック液晶性化合物(α)を二軸性液晶性化合物(β)に変えた以外は、同様にして試料2−4を作製した。
【0215】
(試料2−5)
試料2−4の前記セルロースエステルフィルムを試料5に変えた以外は、同様にして試料2−5を作製した。
【0216】
(試料2−6)
試料2−4の前記セルロースエステルフィルムを試料6に変えた以外は、同様にして試料2−6を作製した。
【0217】
(試料2−7)
試料2−1の前記セルロースエステルフィルムを試料7に変え、ディスコティック液晶性化合物(α)を棒状液晶性化合物(γ)に変えた以外は、同様にして試料2−7を作製した。
【0218】
(試料2−8)
試料2−7の前記セルロースエステルフィルムを試料8に変えた以外は、同様にして試料2−8を作製した。
【0219】
(試料2−9)
試料2−7の前記セルロースエステルフィルムを試料9に変えた以外は、同様にして試料2−9を作製した。
【0220】
(試料2−10)
試料2−1の前記セルロースエステルフィルムを試料10に変えた以外は、同様にして試料2−10を作製した。
【0221】
(試料2−11)
試料2−4の前記セルロースエステルフィルムを試料11に変えた以外は、同様にして試料2−11を作製した。
【0222】
これらのフィルムについて、偏光板を用いてクロスニコル下で、液晶化合物の配向乱れを目視で観察し、以下のランクに分けて評価した。
【0223】
A:液晶性化合物の配向乱れは観察されない
B:液晶性化合物の配向乱れがかすかにわかる
C:液晶性化合物の配向乱れがはっきりわかる
D:液晶性化合物が全く配向していない
【0224】
【表2】

【0225】
表2の結果より、本発明のセルロースエステルフィルムを用いた光学補償フィルムは、従来問題となっていた、配向乱れが全く生じず、液晶性化合物をディスコティック液晶性化合物、二軸性液晶性化合物、棒状液晶性化合物に変えた時でも、変わりなく液晶性化合物の配向が保たれることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【化1】

(式中、Jは、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−POO−、−CO−、−COO−、−NRCO−、−NRCOO−、−NRCONR−、−OCO−、−OCONR−、−CONR−、−NRSO−、−NRSO−、−SONR10−、−SONR11−を表し、R〜R11は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。Spは2価の連結基を表し、ハロゲン原子、置換基を有してもよい。但し、Spに紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【化2】

(式中、J、Jは、一般式(1)中のJと同義であり、J、Jは互いに同じであっても異なってもよい。Sp、Spは一般式(1)中のSpと同義であり、Sp、Spは互いに同じであっても異なってもよいが、Sp、Spの少くとも一方に、紫外線吸収性基が直接、またはスペーサーを介して結合するか、もしくは、Sp、Spの少なくとも一方において、紫外線吸収性基の一部または全部が重合体主鎖の一部を形成している。)
【請求項3】
請求項1に記載の前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体。
【請求項4】
請求項2に記載の前記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む紫外線吸収性重合体。

【公開番号】特開2011−122170(P2011−122170A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26837(P2011−26837)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2001−122573(P2001−122573)の分割
【原出願日】平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】