説明

紫外線水処理装置

【課題】
複数の異なる水質レベルを得られる紫外線水処理装置を提供する。
【解決手段】
流入流路5と流出流路7を有し、流入流路5から流入した被処理水が流通する紫外線照射槽1と、被処理水に紫外線を照射する紫外線源2と、被処理水と紫外線源2の直接的な接触を妨げ且つ紫外線を透過する保護材3と、流入流路5と流出流路7との間に設けられた紫外線照射槽1から処理水を抽出する一つ以上の分岐流路とを備え、分岐流路と流出流路7の間の紫外線照射槽内の被処理水に異なる時間の紫外線照射を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる水質レベルを得られる紫外線水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、波長が100〜400nmの範囲にある電磁波の一種である。大量の水を処理する必要がある上下水処理では、低コストの紫外線源として水銀ランプが用いられる。水銀ランプの紫外線を透過する石英ガラス管内には、水銀蒸気が封入されており、ランプ点灯時の石英ガラス管内の蒸気圧によって、生成波長が異なる。蒸気圧が100Pa以下のランプは、低圧水銀ランプと呼ばれ、波長が254nmの単色紫外線を生成する。蒸気圧が50〜300kPaのランプは中圧水銀ランプと呼ばれ、365nmを主波長として波長が200nm以下の紫外線から可視光線まで幅広く生成する。
【0003】
上下水処理では、紫外線は、主に微生物の不活化および有機物の酸化分解に用いられる。微生物の不活化とは、微生物が増殖能力や感染能力などの活性を失った状態を言う。微生物のDNAは、波長260nm付近に吸収のピークを示し、この付近の波長の紫外線を吸収すると、DNA鎖中で隣接するチミンが二量体化し、DNAの複製が不可能になり、微生物は不活化する。
【0004】
有機物の酸化分解では、有機物に紫外線だけを照射して分解する場合もあるが、主には紫外線と光触媒による光触媒反応や、紫外線とオゾンや過酸化水素水による促進酸化反応や、紫外線と光触媒とオゾンや過酸化水素水などの光触媒反応と促進酸化反応を組み合わせた反応を利用して分解する。
【0005】
光触媒反応では、被処理水中に浸漬した酸化チタン等の光触媒に、波長が400nm以下の紫外線或いは400nm以上の可視光線を照射すると、水を分解してヒドロキシラジカルを生成する。ラジカルは強い酸化力を持ち、周囲の有機物を酸化,分解する。吸収できる最長波長は光触媒の種類に依存する。
【0006】
促進酸化反応に用いるオゾンや過酸化水素はそれ自身が酸化力を持つため、被処理水中の有機物は酸化分解される。促進酸化反応では、添加したオゾンや過酸化水素を、紫外線により直接的或いは間接的に分解する。直接的に分解する場合、被処理水に波長300nm以下の紫外線を照射する。この帯域の紫外線は、オゾンや過酸化水素を分解し、ヒドロキシラジカルを生成する。間接的に分解する場合には、被処理水に光触媒を混入する。光触媒は波長300nm以下の紫外線のみならず、波長300nm以上の紫外線と可視光線を吸収してヒドロキシラジカルを生成する。これはオゾンや過酸化水素を分解し、さらなるヒドロキシラジカルを生成する。ヒドロキシラジカルはオゾンや過酸化水素より強い酸化力を有するので、オゾンや過酸化水素を単独で用いる場合と比較して、有機物の酸化,分解が促進される。
【0007】
微生物の不活化や有機物の酸化分解に低圧水銀ランプを用いる場合、生成する紫外線は、DNAやオゾンや過酸化酸素によく吸収される。そのため、不活化や促進酸化反応を高効率で行うことができ、水処理に必要な電力を低減できる。一方、中圧水銀ランプを用いる場合、不活化や促進酸化反応の効率では劣るが、単位ランプ体積あたりの紫外線出力量が大きく、水処理に必要なランプ本数を減らせるため、装置を小型化できる利点がある。
【0008】
このような水処理装置として、[非特許文献1],[特許文献1],[特許文献2]に記載のものがある。
【0009】
[非特許文献1]に記載の水処理装置は、微生物を不活化する装置で、円筒形状の槽に紫外線ランプを浸漬した構造である。[特許文献1]に記載の水処理装置は、有機物を酸化分解する装置で、円筒形状の槽に紫外線ランプを浸漬し、同槽内にオゾン気泡を注入している。[特許文献2]に記載の水処理装置は、内部に紫外線ランプが配設された処理タンク内に所要量の被処理液体を収納し、処理タンク内の底部側からオゾンと空気との混合気体を順次曝気させて供給して被処理液体を攪拌させながら接触させ、不純物を酸化還元、殺菌している。
【0010】
いずれの装置も処理水の流出口は一つであり、紫外線源の照射強度や処理流量などを変化させて、処理水質を制御する。すなわち、一つの装置からは、一種類の水質の処理水のみを得ることができる。
【0011】
【特許文献1】特開2003−266088号公報
【特許文献2】特開2004−329988号公報
【非特許文献1】財団法人水道技術研究センター、「環境影響低減化浄水技術開発研究(e-Water)ガイドライン集」、p.285(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、例えば下水処理場では下水放流水と再生水のように、要求水質が異なる処理が求められることがある。
【0013】
再生水に対しては、微生物の不活化だけで良い場合と、それに加えて臭気物質や色度成分などの有機物の低減までも求められる場合がある。微生物の不活化だけで良い場合でも、再生水の基準は、下水放流水よりも基準が厳しい。例えば再生水は、大腸菌不検出/100mLであり、下水放流水は、大腸菌群3000個/mLである。
【0014】
従って、再生水の基準で処理した水を下水に放流すると、放流先の水質は良好となる反面、下水放流水としては過剰処理であり、処理場の運転コストの増大となる問題がある。従来の技術を用いて水処理をより効率的にするためには、下水放流水用と再生水用の異なる複数の装置が必要となり、設置面積が大きくなり、コストも増大する問題があった。
【0015】
また、有機物の低減まで求められる再生水に関しては、下水放流水との水質の差異がさらに大きい。これは、一般に、有機物を低減するためには、微生物を不活化するより多量の紫外線照射量が必要となるためである。有機物が低減するまで紫外線を照射した再生水では、微生物の不活化の基準を充分に達成できる。このように、有機物が低減する処理を施した再生水を下水に放流すると、放流先の水質はさらに良好となるが、下水放流水としては過剰処理であり、処理場の運転コストの増大する問題がある。この場合も、従来の技術を用いて水処理をより効率的にするためには、下水放流水用と再生水用の異なる複数の装置が必要となり、設置面積が大きくなり、コストも増大する問題があった。
【0016】
本発明の目的は、複数の異なる水質レベルを得られる紫外線水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の紫外線水処理装置は、流入流路と流出流路を有し、該流入流路から流入した被処理水が流通する紫外線照射槽と、前記被処理水に紫外線を照射する紫外線源と、前記被処理水と紫外線源の直接的な接触を妨げ且つ紫外線を透過する保護材と、前記流入流路と流出流路との間に設けられた紫外線照射槽から処理水を抽出する一つ以上の分岐流路とを備え、前記分岐流路と流出流路の間の紫外線照射槽内の被処理水に異なる時間の紫外線照射を行うものである。
【0018】
又、前記分岐流路に連通する酸化分解流路を、前記紫外線照射槽の内部に備えたものである。又、オゾンあるいは過酸化水素を生成する酸化剤生成部と、前記酸化分解流路に接続される前記オゾンあるいは該過酸化水素を注入する酸化剤注入流路を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、紫外線照射槽に分岐流路を設置することで、一つの装置で複数の異なる水質レベルの処理水を得ることができる。したがって、複数の異なる水質レベルの処理水を得るために複数の装置を用いる場合と比較して、装置の設置面積を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の各実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1を図1から図4を用いて説明する。図1は、本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図、図2は、図1の矢視A−A断面図である。又、図3は、本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図、図4は、図3の矢視B−B断面図である。
【0022】
図1,図2に示すように、円筒形状の紫外線照射槽1は、両端に平板が固定された密封構造となっており、平板の中央部間に石英で形成された円筒状の保護材である保護管3が取付けられている。保護管3内の軸方向には、紫外線源である紫外線ランプ2が設置され、紫外線ランプ2は配線により紫外線源制御装置であるランプ制御装置4と接続されている。
【0023】
紫外線照射槽1には、流入流路5と、流出流路7と、分岐流路である流出流路6が設けられ、流出流路6は2個以上設けられている。流入流路5は、紫外線照射槽1の一端側に、流出流路6は、紫外線照射槽1の中央部に、流出流路7は、紫外線照射槽1の他方の端部に設けられている。流出流路7には、開閉弁10が設けられている。流出流路6の各々には開閉弁9が設けられ、流出流路6は、流出流路8に合流している。開閉弁9,開閉弁10は、弁制御装置11と配線により接続され、弁制御装置11により開閉制御される。
【0024】
図1中の矢印は被処理水の流れ方向を示し、流入流路5からは被処理水12が流入し、流入した被処理水12は、紫外線照射槽1を通過する間に紫外線ランプ2により紫外線を照射されて処理水13,処理水14となり、流出流路8と流出流路7から処理水13と処理水14が紫外線照射槽1外へ流出する。処理水13と処理水14に照射された紫外線エネルギー量、すなわち紫外線照射量を比較すると、紫外線ランプ2の全長に沿って流れる処理水14への紫外線照射量が、紫外線ランプ2の途中で流出流路6から流出する処理水13への紫外線照射量より大きく、処理水14でより多くの微生物が不活化されている。ここで、紫外線照射量は、紫外線照射量=紫外線照射強度×照射時間である。
【0025】
下水処理場において、下水放流水と再生水では要求される不活化レベルが異なるが、本実施例の紫外線水処理装置を適用することで、下水放流水である処理水13と再生水である処理水14の二つの処理水を、一つの装置でより効率的に生成できる。
【0026】
処理水13と処理水14のそれぞれの流量と不活化レベルを制御するためには、ランプ制御装置4により紫外線ランプ2の照射強度を制御し、弁制御装置11により、開閉弁9のそれぞれの弁開度と、開閉弁10の弁開度を制御する。
【0027】
本実施例では一本の紫外線ランプ2による紫外線水処理装置について説明したが、図3,図4に示すように複数本の紫外線ランプ15を用いてもよい。図3,図4に示す赤外線水処理装置では、円筒形状の紫外線照射槽1は、両端に平板が固定された密封構造となっており、円筒形状の紫外線照射槽1内には、複数の円筒形状の保護管3が、その中心軸が紫外線照射槽1の中心軸と直交するように取付けられている。保護管3の各々には、紫外線ランプ15が設置され、紫外線ランプ15の各々は配線によりランプ制御装置4と接続されている。ランプ制御装置4は、各々の紫外線ランプを個別に制御できるようになっている。
【0028】
この場合に処理水13及び処理水14の不活化レベルを制御するために、ランプ制御装置4により紫外線ランプ15のそれぞれの照射強度を制御する、或いは紫外線ランプ15のそれぞれの消灯,点灯時間を制御している。
【0029】
図1から図4に示す紫外線水処理装置は、内照式の紫外線水処理装置を示したが、外照式の紫外線水処理装置としてもよい。
【実施例2】
【0030】
本発明の実施例2を、図5により説明する。図5は紫外線水処理装置の縦断面図である。
【0031】
本実施例は、図1に示す紫外線水処理装置と同様に構成されているが、本実施例の円筒形状の紫外線照射槽1は、両端に平板が固定された密封構造となっており、平板の中央部間に石英で形成された円筒状の保護材である保護管3が取付けられている。保護管3内には、紫外線ランプ2が設置され、紫外線ランプ2は配線によりランプ制御装置4と接続されている。本実施例の紫外線照射槽1は、中央部の外径の大きい外筒部32と、外径の小さい内筒部31で形成され、二重管構造となっており、外筒部32と内筒部31は紫外線を透過する紫外線透過壁33によって区切られている。紫外線透過壁33より外筒部32側には酸化分解流路である空間37が形成され、外筒流入口34を介して外筒部32と内筒部31とは連通している。
【0032】
内筒部31の一方の端側には、流入流路5が設けられ、他方の端側には、開閉弁10が取付けられた流出流路7が設けられている。外筒部32の外筒流入口34から遠い側には、開閉弁9が取付けられた複数の流出流路6が設けられ、外筒部32の外筒流入口34に近い側には、酸化剤注入流路35が設けられ、酸化剤注入流路35は、酸化剤注入装置36に接続されている。
【0033】
図5中の矢印は被処理水の流れ方向を示し、流入流路5からは被処理水12が流入し、流入した被処理水12は、紫外線照射槽1を通過する間に紫外線ランプ2により紫外線を照射されて微生物が不活化された処理水14となり、一部が流出流路7から処理水14として紫外線照射槽1外へ流出する。
【0034】
一方、外筒流入口34から外筒部32に流入した被処理水は、中間処理水37として処理され流出流路8から処理水13として紫外線照射槽1外へ流出する。中間処理水37には、オゾンや過酸化水素などの酸化剤が酸化剤注入装置36により注入される。紫外線ランプ2より照射された紫外線は、被処理水12と紫外線透過壁33を透過して、酸化剤が混入した中間処理水37を照射する。中間処理水37中の酸化剤は、紫外線を吸収してハイドロキシラジカルを生成し、中間処理水37中の有機物を酸化分解する。
【0035】
このような処理により、微生物が不活化され、有機物が酸化分解された処理水13と、微生物が不活化された処理水14が得られる。下水処理場において、再生水は、下水放流水より高い不活化レベルが求められ、脱臭,脱色などの有機物の低減が求められる場合がある。本実施例の紫外線水処理装置を適用することで、下水放流水である処理水14と再生水である処理水13の二種類の処理水を一つの装置で生成でき、装置設置面積を低減できる。
【0036】
処理水13の流量と酸化分解レベル、処理水14の流量と不活化レベルを制御するには、ランプ制御装置4により紫外線ランプ2の照射強度を制御する方法や、弁制御装置11により、開閉弁9のそれぞれの弁開度と、開閉弁10の弁開度を制御する方法がある。また、酸化剤注入装置36により、中間処理水に注入する酸化剤の量を制御する。本実施例では一本の紫外線ランプ2による紫外線水処理装置について説明したが、実施例1の図3で示したように複数本の紫外線ランプを用いてもよい。その場合では、紫外線ランプ群のそれぞれの消灯,点灯により紫外線照射量を制御する方法がある。なお、本実施例は外照式の紫外線水処理装置にも適用できる。
【実施例3】
【0037】
本発明の実施例3を、図6により説明する。図6は、本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図である。
【0038】
本実施例は、実施例2と同様に構成されているが、本実施例の紫外線水処理装置では、外筒部32に光触媒38を封入し、酸化剤注入流路35と酸化剤注入装置36を除去した構成となっている。
【0039】
紫外線ランプ2により紫外線を照射された被処理水12の一部は流出流路7へ流入し、残りは外筒流入口34から外筒部32へ中間処理水37として流入する。流入した中間処理水37は、光触媒38と接触しながら流出流路8へ流入する。この際、紫外線が照射された光触媒38は、ハイドロキシラジカルを生成し、中間処理水37中の有機物を酸化分解する。
【0040】
本実施例では、中圧水銀ランプを有効利用できる利点がある。中圧水銀ランプは、低圧水銀ランプと異なり、波長300nm以下の紫外線に加えて、波長300nm以上の紫外線と可視光線も生成する。波長300nm以上の紫外線と可視光線は、微生物の不活化と酸化剤の分解に寄与しないため、実施例1及び実施例2では、中圧水銀ランプを用いても、300nm以上の紫外線と可視光線を利用できない。しかし、光触媒は、波長300nm以下の紫外線の他、波長300nm以上の紫外線および可視光線を吸収してハイドロキシラジカルを生成するため、光触媒を用いることにより300nm以上の紫外線と可視光線を有効利用できる。
【0041】
又、中圧水銀ランプを用いることにより、波長300nm以下の紫外線で微生物の不活化を行い、有機物の酸化分解には波長300nm以上の紫外線と可視光線を利用して、波長領域を分担させて、波長特性を有効活用できる紫外線水処理装置を提供することができる。
【0042】
図7は、紫外線と可視光線の下水二次処理水中における吸収率を表している。吸収率は、紫外線あるいは可視光線が試料水1cmを直進する際に試料水に吸収される百分率で表される。図7から分るように、下水の二次処理水中では、波長300nm以上の紫外線と可視光線は、波長300nm以下の紫外線と比較して吸収率が小さく、吸収されにくい。
【0043】
したがって、二次処理水中に中圧水銀ランプからの紫外線と可視光線を照射すると、中圧水銀ランプから離れた遠方に波長300nm以上の紫外線と可視光線が照射される領域ができる。光触媒38封入した外筒部32をこの領域に設置することで、波長300nm以下の紫外線を、内筒部31の被処理水12中の微生物の不活化に利用し、波長300nm以上の紫外線と可視光線を外筒部32の中間処理水37中の有機物の酸化分解に利用することができる。
【0044】
なお、排水,浄水,河川水などの下水二次処理水以外の被処理水でも、図7に示す傾向と同じ傾向となるので、同様の装置構造にできる。
【0045】
処理水13の流量と酸化分解レベル、および処理水14の流量と不活化レベルを制御するには、ランプ制御装置4により紫外線ランプ2の照射強度を制御する。また、弁制御装置11により、開閉弁9のそれぞれの弁開度と、開閉弁10の弁開度を制御する。本実施例では一本の紫外線ランプ2による紫外線水処理装置について説明したが、実施例1で示したように複数本の紫外線ランプを用いてもよい。その場合は、紫外線ランプ群のそれぞれの消灯,点灯により紫外線照射量を制御する。
【0046】
図6は内照式の紫外線水処理装置を示しているが、本実施例は外照式の紫外線水処理装置にも適用可能である。
【実施例4】
【0047】
本発明の実施例4を、図8により説明する。図8は、本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図である。
【0048】
本実施例は、実施例2と同様に構成されているが、本実施例の紫外線水処理装置では、外筒部32に、光触媒38を封入した構成となっている。
【0049】
実施例2では、外筒部32の中間処理水37中に混入させた酸化剤に紫外線ランプ2により紫外線を照射して、酸化剤を分解し、ハイドロキシラジカルを生成させる際に、波長300nm以下の紫外線が必要であるが、図7で示されるように、波長300nm以下の紫外線は被処理水12への吸収率が大きい。そのため、内筒部31の直径を大きくできず、処理水14の処理流量を大きく設定はできない。
【0050】
実施例3では、外筒部32に光触媒38を封入しており、被処理水12への吸収率が小さい波長300nm以上の紫外線と可視光線も利用できるため、内筒部31の直径を大きくできる。しかし、[非特許文献1]に記載のように、光触媒反応による有機物の酸化分解量は、促進酸化反応による酸化分解量より一般的に小さい。そのため、一定の酸化分解レベルを確保するためには、中間処理水37の流速を小さくして、紫外線照射時間を長くする必要があり、処理水13の流量を大きくは設定できない。
【0051】
本実施例では、処理水13と処理水14の流量を大きく取るため、外筒部32に封入した光触媒38により生成するハイドロキシラジカルにより、酸化剤を分解し、さらにハイドロキシラジカルを生成させる。これにより、中圧水銀ランプにより生成する波長300nm以上の紫外線と可視光線を酸化剤の分解に利用できる。したがって、内筒部31の直径を大きくでき、処理水14の処理流量を大きく設定できる。また、酸化剤の注入量を増やすことで、ハイドロキシラジカルの生成を促進できるため、処理水13の処理流量を大きく設定できる。
【0052】
処理水13の流量と酸化分解レベル、及び処理水14の流量と不活化レベルを制御するため、ランプ制御装置4により紫外線ランプ2の照射強度を制御する。また、弁制御装置11により、開閉弁9のそれぞれの弁の開度と、開閉弁10の開度を制御する。また、酸化剤注入装置36により、中間処理水に注入する酸化剤の量を制御する。本実施例では、一本の紫外線ランプ2を設置した紫外線水処理装置について説明したが、実施例1で示したように、複数本の紫外線ランプを用いてもよい。その場合は、紫外線ランプ群のそれぞれの消灯,点灯により紫外線照射量を制御する。また、図8は、内照式の紫外線水処理装置を示したが、本実施例は外照式の紫外線水処理装置にも適用できる。
【実施例5】
【0053】
本発明の実施例5を、図9,図10を用いて説明する。図9は、本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図、図10は、図9の矢視C−C断面図である。
【0054】
図9,図10に示すように、円筒形状の紫外線照射槽1は、両端に平板が固定された密封構造となっており、平板の中央部間に石英で形成された円筒状の保護材である保護管3が取付けられている。保護管3内には、紫外線ランプ2が設置され、紫外線ランプ2は配線によりランプ制御装置4と接続されている。
【0055】
紫外線照射槽1には、流入流路5と、流出流路7が設けられている。流入流路5は、紫外線照射槽1の一端側に、流出流路7は、紫外線照射槽1の他方の端部に設けられている。流出流路7には、開閉弁10が設けられている。紫外線照射槽1の中央部には、少なくとも1つの酸化分解流路41が設けられ、酸化分解流路41は、流入口42により紫外線照射槽1と連通している。酸化分解流路41には、酸化剤を注入するための流路35により酸化剤注入装置36が接続され、開閉弁43を有する流出流路8が接続されている。開閉弁9,開閉弁10,開閉弁43は、弁制御装置11と配線により接続され、弁制御装置11により開閉制御される。なお、酸化分解流路41と開閉弁43は、複数固設けてもよい。
【0056】
本実施例の紫外線処理装置は、円筒形状の紫外線照射槽1に、酸化分解流路41,流入口42,流出流路8,開閉弁43,流路35,酸化剤注入装置36を追加することにより、貫通孔を空ける簡易な追加工事により実現できる。
【0057】
図9中の矢印は流れ方向を示し、流入流路5からは被処理水12が紫外線照射槽1内に流入し、流出流路7から処理水14として流出する。一方、流入口42から酸化分解流路41に流入した中間処理水37は、流出流路8から処理水13として流出する。
【0058】
酸化分解流路41を紫外線透過材で製作する場合は、酸化分解流路41内の中間処理水37に紫外線を照射でき、実施例1と同様に、下水放流水である処理水13と再生水である処理水14の二つの処理水を、一つの装置でより効率的に生成できる。
【0059】
金網等の空隙を持つ部材に光触媒を焼結した光触媒保持体を酸化分解流路41とすると、被処理水12は焼結した光触媒の隙間から酸化分解流路内部に流入できる。酸化分解流路41内部に光触媒38を封入する場合は、酸化分解流路41を紫外線透過材を用いなくとも、実施例3と同様に、中間処理水37は、光触媒38と接触しながら流出流路8へ流入する際、紫外線が照射された光触媒38は、ハイドロキシラジカルを生成し、中間処理水37中の有機物を酸化分解する。
【0060】
酸化分解流路41を紫外線透過材で製作し、酸化分解流路41内部に光触媒38を封入し、酸化剤を注入する場合は、実施例4と同様に、中間処理水37中に混入させた酸化剤に紫外線ランプ2により紫外線を照射して、酸化剤を分解し、ハイドロキシラジカルを生成させ、酸化分解流路41内部に封入した光触媒38により生成するハイドロキシラジカルにより、酸化剤を分解し、さらにハイドロキシラジカルを生成させることができる。
【0061】
紫外線ランプ群のそれぞれの消灯,点灯により紫外線照射量を制御する。また、図9は、内照式の紫外線水処理装置を示したが、本実施例は外照式の紫外線水処理装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1である紫外線水処理装置の縦断面図。
【図2】図1の矢視A−A断面図。
【図3】本実施例の紫外線水処理装置の縦断面図。
【図4】図3の矢視B−B断面図。
【図5】本発明の実施例2である紫外線水処理装置の縦断面図。
【図6】本発明の実施例3である紫外線水処理装置の縦断面図。
【図7】下水二次処理水に対する紫外線と可視光線の吸収率を示す図。
【図8】本発明の実施例4である紫外線水処理装置の縦断面図。
【図9】本発明の実施例5である紫外線水処理装置の縦断面図。
【図10】図9の矢視C−C断面図。
【符号の説明】
【0063】
1 紫外線照射槽
2 紫外線ランプ
3 保護管
4 ランプ制御装置
5 流入流路
6,7,8 流出流路
9,10,43 開閉弁
11 弁制御装置
15 紫外線ランプ
31 内筒部
32 外筒部
33 紫外線透過壁
34 流入口
35 流路
36 酸化剤注入装置
38 光触媒
41 酸化分解流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線槽内に配置された紫外線を透過する保護材と、該保護材内に設置された紫外線を照射する紫外線源と、該紫外線源に接続された紫外線源制御装置と、前記紫外線槽の軸方向の一端側に設けられた被処理水の流入流路と、前記紫外線槽の軸方向の他端側に設けられた第1の開閉弁を有する処理水の第1の流出流路と、前記紫外線槽の軸方向の中央部に設けられた第2の開閉弁を有する処理水の第2の流出流路と、前記第1の開閉弁及び第2の開閉弁の開度を制御する弁制御装置を備えた紫外線水処理装置。
【請求項2】
流入流路と流出流路を有し、該流入流路から流入した被処理水が流通する紫外線照射槽と、前記被処理水に紫外線を照射する紫外線源と、前記被処理水と紫外線源の直接的な接触を妨げ且つ紫外線を透過する保護材と、前記流入流路と流出流路との間に設けられた紫外線照射槽から処理水を抽出する一つ以上の分岐流路とを備え、前記分岐流路と流出流路の間の紫外線照射槽内の被処理水に異なる時間の紫外線照射を行う紫外線水処理装置。
【請求項3】
紫外線槽内に配置された紫外線を透過する保護材と、該保護材内に設置された紫外線を照射する紫外線源と、該紫外線源に接続された紫外線源制御装置と、前記紫外線槽の軸方向の一端側に設けられた被処理水の流入流路と、前記紫外線槽の軸方向の他端側に設けられた第1の開閉弁を有する処理水の第1の流出流路と、前記紫外線槽の軸方向の中央部に設けられ前記紫外線槽内と連通する流入口を具備する酸化分解流路と、該酸化分解流路に接続された第2の開閉弁を有する処理水の第2の流出流路と、前記第1の開閉弁及び第2の開閉弁の開度を制御する弁制御装置を備えた紫外線水処理装置。
【請求項4】
前記紫外線槽の軸方向の中央部に酸化分解流路を設けた、もしくは前記分岐流路に連通する酸化分解流路を設けた請求項1あるいは2のいずれかに記載の紫外線水処理装置。
【請求項5】
前記酸化分解流路が紫外線透過材である請求項3あるいは4記載の紫外線水処理装置。
【請求項6】
オゾンあるいは過酸化水素を生成する酸化剤生成部と、前記酸化分解流路に接続された前記オゾンあるいは過酸化水素を注入する酸化剤注入流路とを設けた請求項3又は4に記載の紫外線水処理装置。
【請求項7】
前記酸化分解流路内に光触媒を封入した請求項4から6のいずれかに記載の紫外線水処理装置。
【請求項8】
前記酸化分解流路が光触媒を保持した光触媒保持体で形成した請求項7に記載の紫外線水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−148657(P2009−148657A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326659(P2007−326659)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】