説明

紫外線照射装置

【課題】無電極ランプの交換性の向上を図るとともに、効率よく無電極ランプにマイクロ波を放射させて流体改善の向上を図る。
【解決手段】無電極ランプ13とマイクロ波エネルギーを供給するマグネトロン12が一体構造となったランプハウス11と被処理水が収容される収容部17は別空間で構成する。ランプハウス11と収容部17は照射窓112に配置したスクリーン18を介して紫外線を通過可能とし、収容部17に収容した被処理水内に光触媒物質が担持された浄化処理部材19に対し紫外線が照射可能とする。これにより、取り外し可能なランプハウス11は、収容部17から取り外し可能とし、ランプハウス11に収容された無電極ランプ13の交換を容易にすることができる。このため、無電極ランプ13のメンテナンスが容易となり、ランニングコスト削減に寄与することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波給電式による無電極紫外線ランプを用いて、例えば微生物や有機物が懸濁あるいは溶存した状態にある水処理を行う場合に好適な紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線と光触媒の併用により、水質を改善させるための紫外線照射装置用光源としては、長寿命化を図ることから無電極紫外線ランプが用いられている。この紫外線照射装置は、無電極紫外線ランプと光触媒が流体改善区域外に設置されたマグネトロンから、流体改善区域内に配置された無電極紫外線ランプに対してマイクロ波を放射して紫外線を発光させ、その紫外線によってさらに光触媒による化学反応を促進させることで、流体の改善が行われている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特表2005−524524公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、紫外線を放射する無電極ランプが流体改善区域内に設置されていることから、無電極ランプを交換する場合には、流体や光触媒の中から無電極ランプ自体を取り出す必要がある。この場合、流体改善区域内の無電極ランプと流体改善区域外のマグネトロンの間に水が存在するため、マイクロ波が水に吸収されることから、効率よく無電極ランプに対してマイクロ波が放射されない、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、無電極ランプの交換性の向上を図るとともに、効率よく無電極ランプにマイクロ波を放射させて流体改善の向上を図ることのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、前記マイクロ波を発生させるためのマグネトロンと、紫外線を透過させる誘電体からなるとともに、前記マイクロ波による放電で紫外線を発光する物質が封入される管状の無電極ランプと、前記マイクロ波を前記無電極ランプに伝達する導波管と、少なくとも前記マグネトロン、無電極ランプ、導波管を内部に配置したランプハウスと、被処理水が収容され前記無電極ランプから発光する紫外線を光学的に通過させる照射窓が形成された収容部と、前記被処理水内の前記紫外線が照射される位置に配置した光触媒機能を備えた浄化処理部材と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、ランプハウス自体の着脱とランプ交換性が容易となることから、メンテナンが容易となり、ランニングコストの削減につなげることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するための、図1はシステム構成について説明するための斜視図、図2は図1の断面図、図3はこの発明で用いる無電極ランプについて説明するための構成図である。
【0009】
図1、図2において、11は、例えばステンレス製の四方形状のランプハウスであり、このランプハウス11内の上方部には、マグネトロン12を配置する。ランプハウス11は、マグネトロン12から発生されるマイクロ波を遮断する構造となっている。マグネトロン12と対向するランプハウス11の下方部には、電極を備えないいわゆる無電極ランプ13を配置してある。
【0010】
無電極ランプ13は、図3に示す構成を備えている。すなわち、131は紫外光を透過させる石英ガラス製の長さが200mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ131は、長手方向の中央部132をその両端部133,134よりも細くなるようにテ―パをつけたもので、両端部133,134の外径は例えば17mm程度、中央部132の外径は12mm程度である。バルブ131の発光空間135内には、不活性ガスと水銀、それにタリウムとヨウ素を封入する。バルブ131の両端にはバルブ131を支持する支持部136,137を、バルブ131と一体的に形成する。
【0011】
図1、図2において、マグネトロン12と無電極ランプ13との間には、マグネトロン12で発生したマイクロ波を送出させるアンテナ14から、無電極ランプ13に伝達させる導波管15を配置する。また、マグネトロン12と無電極ランプ13との間には、無電極ランプ13から照射される波長200〜400nmの紫外線をランプハウス11の下方側に反射させ、反射させた紫外線を拡散もしくは集光させるための反射鏡16が配置されている。反射鏡16はマイクロ波を通過させる例えば耐熱性の樹脂等で形成される。
【0012】
17は、被処理水が収容されるランプハウス11の空間とは別の空間とした箱状の収容部である。また、収容部17は上面171がランプハウス11の底部111とを兼用するもので、底部111に無電極ランプ13で発光した紫外線を照射させるための照射窓112を形成することで、無電極ランプ13と収容部17は光学的に連通された状態の構造となる。
【0013】
収容部17の上面171(底部111)に形成された照射窓112の全面には、スクリーン18が配置される。スクリーン18は、例えば、金属線をメッシュ状に編み込んだり、金属板にパンチング加工したりすることにより形成される。
【0014】
さらに、照射窓112と対向する収容部17内には、複数枚の浄化処理部材19を無電極ランプ13のランプ軸に対して、傾斜された状態で配置する。浄化処理部材19は、例えば金属製の網や金属板に多孔を形成した基材の表面に、光触媒物質を担持させたものである。
【0015】
光触媒物質としては、紫外線の照射を受けることにより活性化されて被処理水に含まれる有機物を分解または変質させ得るものが用いられ、例えば二酸化チタン、特にアナタ―ゼ型の二酸化チタンが好適である。二酸化チタンは、紫外線が照射されることにより励起され、水を分解してOHラジカルを生成させる機能を有するものであり、生成されたOHラジカルにより、水中に含まれる有機物を分解または変質させる。光触媒物資を基材の表面に担持させる手段としては、例えば焼結処理により実現可能である。また、基材となる金属材料としては、光触媒物質を構成する金属元素と同種の元素よりなる金属材料が好ましく、例えば光触媒物質として酸化チタンを用いる場合には、チタンを用いることが好ましい。
【0016】
ここで、図4を参照し、図1の右側面がら見た状態の側面図に図1を駆動させる機能を追加状態について説明する。
【0017】
図4において、反射鏡16の前面に位置するランプハウス11の側面には、無電極ランプ13から発光する紫外線を受光する受光素子41と、受光素子41が受光した光の量を検出する光量検出器42と、予め光の量が設定され、光量検出器42により検出された光の量が、設定された光の量に等しくなるように電源44を制御する電源制御部43を備える。受光素子41は、紫外線照射の妨げにならないように、反射鏡16とスクリーン18を結ぶ直線上を避けて設けられている。
【0018】
このようにして、収容部17に収容された被処理水は、無電極ランプ13で発光する紫外線を被処理水中に配置された浄光触媒物質が担持の浄化処理部材19に照射することにより、被処理水に含まれる有機物を分解または変質させ、被処理水の改善を図ることができる。
【0019】
この実施形態では、無電極ランプ13はマグネトロン12と同じランプハウス11内に配置され、被処理水を収容する収容部17とは別空間に分けてある。このため、ランプハウス11自体の取り外しと無電極ランプ13の交換が容易となり、メンテナンス性の向上に繋がり、ランニングコストの削減に寄与する。
【0020】
図5は、この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するための構成図である。上記した実施形態と同一構成部分には同一の符号を付してここでは異なる部分について説明する。
【0021】
この実施形態は、浄化処理部材192を無電極ランプ13のランプ軸に対して平行に配置したものである。この場合は、スクリーン18を介して照射される紫外線が、傾斜した場合に比べて広い面積となる。このため浄化処理部材192の処理能力の向上に寄与する。
【0022】
この場合も、無電極ランプとマグネトロンが一体のランプハウスに配置し、被処理水が収容する空間とは別の空間であるため、ランプハウス自体の取り外しとランプ交換性の向上を図ることができる。
【0023】
図6は、この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するための構成図である。上記した実施形態と同一構成部分には同一の符号を付してここでは異なる部分について説明する。
【0024】
この実施形態は、浄化処理部材193を無電極ランプ13のランプ軸に対して平行に配置することに加え、浄化処理部材193を波型としたものである。この場合は、スクリーン18を介して照射される紫外線が、平面型の第2の実施形態に比べてさらに広い面積となる。このため浄化処理部材193の処理能力のさらに向上させることができる。
【0025】
この場合も、無電極ランプとマグネトロンが一体のランプハウスに配置し、被処理水が収容する空間とは別の空間であるため、ランプハウス自体の取り外しとランプ交換性の向上を図ることができる。
【0026】
図7、図8は、この発明の紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するためのもので、図7は図2に相当する構成図、図8は図7の要部を拡大して示した斜視図である。上記した各実施形態と同一構成部分には同一の符号を付してここでは異なる部分について説明する。
【0027】
図7、図8において、収容部17(ランプハウス11)の一部を、マイクロ波を送出させるための導波管15と兼用するとともに、導波管15を収容部17の位置に配置するようにした。すなわち、収容部17の上面171に切込みを入れ、ここから収容部17の内部側にほぼ直角に折りこんで切込み部71,72を形成し、取付け孔73をとする。折込み部71,72の端部には、ほぼ円筒状のスクリーン182を取り付ける。スクリーン182は、折込み部71と72の間隔だけスクリーン182の長手方向に切欠部74を形成し、この切欠部74を折込部71,72の端部を接着等の接合手段を用いて取着する。これにより、スクリーン182の内部は、切欠部74と取付け孔73を介して収容部17の外部と連通した状態となる。
【0028】
スクリーン182の内部には、無電極ランプ13を配置して取り付ける。無電極ランプ13の取付けは、無電極ランプ13の支持部136,137を、図示しない収容部17の取付け部に取り付けるか、取付け孔73から無電極ランプ13が取付けられた図示しない着脱式のランプ取付具を収納するかにより実現できる。また、スクリーン182の内部は防水構造とし、収容部17内の被処理水が入り込まないようにしてある。
【0029】
これにより、無電極ランプ13は、円筒形状に形成された浄化処理部材194内に配置する状態に配置される。浄化処理部材194は、径の異なるものを用意し、スクリーン182の周囲を取り囲む格好としている。この例では、浄化処理部材194を2重に配置してある。
【0030】
この場合、マイクロ波を送出する導波管15を、収容部17内に配置された無電極ランプ13の発光部まで設置したことで、あたかも収容部17内からの発光であるかのような紫外線照射が可能となり、浄化処理部材19に対する紫外線の照射効率を向上させることができる。
【0031】
また、直径の異なる複数の円筒形状の浄化処理部材19は、無電極ランプ13に対して取り囲む構造をしていることから、反射鏡なしに確実に効率よく無電極ランプ13から照射される紫外線を受けることが可能となる。
【0032】
この実施形態では、無電極ランプをランプハウス側から交換可能としながら、無電極ランプを囲む格好で浄化処理部材を配置できることから、浄化処理部材に確実に紫外線を照射させることができる。
【0033】
この発明は、上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、被処理水は収容部17内で被処理水に含まれる有機物を分解または変質させるようにしたが、被処理水はダクトを用いて連続的に処理することも考えられる。
【0034】
また、収容部17の重なるランプハウス11の部分は、収容部17で兼用したが、それぞれ形成して結合しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するための概念的な斜視図。
【図2】図1の断面図。
【図3】図1を駆動させる構成を追加して示した構成図。
【図4】この発明で用いる無電極ランプについて説明するための構成図。
【図5】この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するための概念的な斜視図。
【図6】この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するための概念的な斜視図。
【図7】この発明の紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するための概念的な斜視図。
【図8】図7の要部の斜視図。
【符号の説明】
【0036】
11 ランプハウス
111 底部
12 マグネトロン
13 無電極ランプ
14 アンテナ
15 導波管
16 反射鏡
17 収容部
171 上面
18,182 スクリーン
19,192,193,194 浄化処理部材
71,72 切込み部
73 取付け孔
74 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記マイクロ波を発生させるためのマグネトロンと、
紫外線を透過させる誘電体からなるとともに、前記マイクロ波による放電で紫外線を発光する物質が封入される管状の無電極ランプと
前記マイクロ波を前記無電極ランプに伝達する導波管と、
少なくとも前記マグネトロン、無電極ランプ、導波管を内部に配置したランプハウスと、
被処理水が収容され前記無電極ランプから発光する紫外線を光学的に通過させる照射窓が形成された収容部と、
前記被処理水内の前記紫外線が照射される位置に配置した光触媒機能を備えた浄化処理部材と、を具備したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記照射窓には、前記紫外線を光学的に通過させる金属製のスクリーンを配置したことを特徴する請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記ランプハウス内には、前記照射窓を介して前記無電極ランプで発光させた紫外線を、前記浄化処理部材に照射させるための反射鏡を設置したことを特徴とする請求項1または2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記浄化処理部材は、光触媒物質を金属製の網あるいは多孔が形成された金属板に担持させたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記浄化処理部材は、前記無電極ランプのランプ軸に対して平行にあるいは傾斜させて支持したことを特徴とする請求項4記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記収容部の被処理水の位置に防水状態で、前記ランプハウス側から前記無電極ランプを交換可能に取りけるとともに、前記収容部に位置する前記無電極ランプに対し、前記導波管を介して前記マイクロ波を伝達するようにしたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−202120(P2009−202120A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48310(P2008−48310)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】