説明

紫外線硬化インキ用洗浄組成物

【課題】 本発明は、紫外線硬化型インキに対する洗浄力に優れ、かつ環境への影響も少ない非ハロゲン系のオフセット印刷用紫外線硬化インキ洗浄剤を提供するものである。
【解決手段】本発明の洗浄組成物は、二塩基酸のエステル化合物およびヒドロキシカルボン酸エステル類とアルコキシアルコール、多価アルコールエーテル類等の化合物との混合物として構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線により硬化するインキ類を除去するための洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の平版オフセット印刷機のインキは、インキ壷から印刷ロール、印刷版、ブランケット、被印刷体へと転移し印刷される。印刷する絵柄が変わる場合、インキの交換時、トラブル時等には、必要に応じ必要箇所の印刷インキを洗浄除去する必要がある。
【0003】
従来におけるこれらの除去はベンゼン、トルエン、キシレンなどのアルキルベンゼン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、などのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、あるいはエキサンや灯油などの炭化水素系溶剤など数多くの有機溶剤あるいはこれらの混合溶剤が用いられてきた。
【0004】
塩素系溶剤を含む洗浄組成物は、難燃性には優れているが、オゾン層の破壊、作業環境の悪化、地下水への混入による環境破壊等の問題があり、使用の削減が求められている。
【0005】
非塩素系の洗浄組成物(例えば、特許文献1、2参照)は洗浄性や乾燥性に問題があり、効率を求められるオフセット印刷における印刷機の洗浄に於いて満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平10−152699号公報
【特許文献2】特開平10−168486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紫外線硬化型インキに対する洗浄力に優れ、かつ環境への影響も少ない非ハロゲン系のインキ洗浄剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄組成物は、二塩基酸エステル化合物、ヒドロキシカルボン酸エステル、脂肪族アルコール系化合物の混合物として構成される。
【発明の効果】
【0008】
近年環境影響への配慮から紫外線硬化方式のオフセット印刷が増加する傾向にあり、本発明の洗浄組成物は、優れた洗浄性を有し、非塩素系であるため、オゾン層を破壊することがなく、地下水への混入による環境破壊の心配もない、紫外線硬化型インキの洗浄組成物として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられる二塩基酸エステルとしては、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、グルタル酸ジメチルなどの内の1種又は2種以上を選択することが出来る。
【0010】
ヒドロキシカルボン酸エステル類としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ヒドロキシ酪酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチルなどのうちの1種又は2種以上を選択する事が出来る。
【0011】
使用時の作業性、臭気を考慮した場合、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ヒドロキシ酪酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチルの内の1種又は2種以上を選択することが好ましい。
【0012】
脂肪族アルコール系化合物は前記一般式で表され、その具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、2−メチル−1ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等を挙げることがことができる。
【0013】
これらの脂肪族アルコール系化合物は単独または二種以上を組み合わせて添加することができるが、乾燥性、作業性を考慮した場合、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテルを用いることが好ましい。
【0014】
二塩基酸エステル類および、ヒドロキシカルボン酸類からなる群と脂肪族アルコール系化合物との割合は0:10〜1:9の範囲ではオフセット用UVインキに対する洗浄性が不充分であり、3:7〜10:0の範囲では乾燥性が不充分であり、更にローラー、ブランケットのゴムに対する影響が大きくなり、不適切である。
以上の理由から二塩基酸エステル類および、ヒドロキシカルボン酸類からなる群と脂肪族アルコール系化合物との割合は1:9〜3:7であることが好ましい。
【0015】
本発明の洗浄剤には必要に応じ、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、界面活性剤、酸化防止剤、アルカリビルダー、消泡剤、及び水を含有する事も可能である。その割合はインキ溶解性能を保つために洗浄組成物全質量に対し30質量%未満でなければならない。
【0016】
芳香族炭化水素としては1,2,4−、1,2,3−および1,3,5−トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼンなどのC9芳香族炭化水素、テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ブチルベンゼンなどのC10芳香族炭化水素、その他C11〜C15の芳香族炭化水素。芳香族炭化水素は単独または2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0017】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両イオン、非イオン活性剤のいずれも使用することができる。
【実施例】
【0018】
本発明を以下の実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の表1(実施例1〜12)及び表2(比較例1〜14)に示すUVインキ洗浄組成物を調製した。なお、表1、表2に示す配合は重量部である。
【0019】
表3には各実施例および比較例の評価結果を示す。洗浄性の試験は以下に示す方法によって行った。
【0020】
評価方法
(UVインキ洗浄性)
UV仕立てのオフセット印刷機用ブランケット(住友ゴム製エアーロイヤルR10)
上にUVインキ(T&K TOKA製ベストキュアUV161紅)を手盛りローラーで塗布し、実施例及び比較例で得られた洗浄組成物滴下した後、不織布で拭き取った。
下記評価基準に基づき評価した。
◎:滴下後、1分でほぼ完全にインキが除去できた。
○:滴下後、1分では一部のインキが残存したが、5分でほぼ完全にインキが除去できた。
△:滴下後、5分で一部のインキが残存した。
×:滴下後、5分でほとんどのインキが残存した。
【0021】
(乾燥性)
UV仕立てのオフセット印刷機用ブランケット(住友ゴム製エアーロイヤルR10)
上に実施例及び比較例で得られた洗浄組成物を100μl滴下し、乾燥するまでの時間を測定した。
実際上の作業性を考慮して、下記評価基準に基づき評価した。
◎:乾燥時間、1〜2分
○:乾燥時間、0.5〜1分および2〜3分
△:乾燥時間、3〜5分
×:乾燥時間、0〜0.5分および5分以上
【0022】
(臭気)
実際のUV印刷(印刷機:ヘイデルベルグ SM−102、インキ:T&K TOKA ベストキュア紅)において実施例及び比較例で得られた洗浄組成物でブランケットの洗浄作業をおこなった。常時、印刷作業に従事しているオペラーター3名から臭気の評価を聞き取った。
臭気評価:非常に良い 5点
やや良い 4点
普通 3点
やや悪い 2点
非常に悪い 1点
3名の評価得点の平均を下記評価基準に基づき評価した。
◎:4.0点以上
○:3.0〜4.0点
△:2.0〜3.0点
×:2.0点以下
【0023】
(ゴムへの影響)
UV用インキローラーを10mm立方に切り取り、実施例及び比較例で得られた洗浄組成物に25℃、24時間浸漬し、浸漬前後の重量変化を測定した。膨順率は3個の試料の平均値で評価した。
膨順率(%)=(浸漬後の重量−浸漬前の重量)÷浸漬前の重量×100
下記評価基準に基づき評価した。
○・・・膨順率、10%未満
△・・・膨順率、10%以上20%未満
×・・・膨順率、20%未満
【0024】
【表1】

DBE:デュポン株式会社製コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルの混合物
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)および(B)成分を含有するオフセット印刷用紫外線硬化インキ洗浄組成物。
(A)は下記の一般式(1)で表される群、および下記一般式(2)で表される群から選ばれた少なくとも一種。
R100C(CH2)nCOOR2・・・(1)
(式中、R1はアルキル基またはフェニル基、R2はアルキル基またはフェニル基、nは0〜5の整数である)
R3−CR4(OH)−(CR5R6)m−COOR7・・・(2)
(式中、R3,R4,R5およびR6は水素またはアルキル基、R7はアルキル基またはフェニル基、mは0〜3の整数である)
(B)は下記一般式(3)で表される脂肪族アルコール系化合物の少なくとも一種。
R8(CkH2kO)iH・・・(3)
(式中、R8は炭素数1〜8のアルキル基またはアルコキシアルキル基、kは2〜3の整数、iは1〜3の整数である)
【請求項2】
(A)はアジピン酸、コハク酸、またはグルタル酸のジアルキルエステル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ヒドロキシ酪酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチルからなる群より選ばれた少なくとも一種。
(B)は3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも一種。
であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用紫外線硬化インキ洗浄組成物。
【請求項3】
(A):(B)が1:9〜3:7の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷用紫外線硬化インキ洗浄組成物。

【公開番号】特開2006−342313(P2006−342313A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199371(P2005−199371)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(391003381)光陽化学工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】