説明

紫外線硬化型インクジェット用インク組成物

【課題】低粘度であって密着性に優れ、かつ、収縮性の抑制された紫外線硬化型インク組成物を提供する。
【解決手段】紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、該インク組成物の総質量に対して20〜70質量%の、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物と、該インク組成物の総質量に対して10〜20質量%の、分子内に脂環構造を有する重合性化合物及び分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物のうち少なくともいずれかと、を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の
方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる
画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く
使用でき、ランニングコストが安い。
【0003】
近年、耐水性、耐溶剤性、及び耐擦性などの良好な画像を被記録媒体の表面に形成する
ため、インクジェット方式の記録方法において、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化
型インクジェット用インク組成物が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水又は揮発性有機溶媒を実質的に含まず、69.82部のプ
ロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートと、1.56部の湿潤性樹脂と、3
.6部の顔料と、1.25部の顔料分散剤と、0.12部の安定剤と、10.0部のトリ
エチレングリコールジビニルエーテルと、13.6部の光開始剤と、0.05部の消泡剤
と、を混合してなる印刷用インクが開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、2.2部の顔料と、0.5部の顔料分散剤と、重合性
モノマーとしての、2.5部のペンタエリスリトールテトラアクリレート、32.7部の
ジエチレングリコールモノビニルエーテルアクリレート、22.7部のテトラエチレング
リコールジアクリレート、6部のイソボルニルアクリレート、及び24.6部のN−ビニ
ルピロリドンと、8.7部の光重合開始剤と、を混合してなるインクジェット印刷用活性
エネルギー線硬化型インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−526820号公報
【特許文献2】特開2009−96910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜2に開示された技術は、粘度が高いためインクの吐出不良
を起こしたり、インクの被記録媒体に対する密着性に劣ったり、あるいは、インク硬化後
の記録物における収縮性が際立ったりするという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、低粘度であって密着性に優れ、かつ収縮性の抑制された紫外線硬化
型インク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、分子中にビニル基及び
(メタ)アクリル基を共に有する化合物とその他の特定構造を有する重合性化合物とが、
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)
にそれぞれ所定量含まれることで、低粘度化し、密着性に優れ、かつ、収縮性の抑制され
たインク組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、該インク組成物の総質量に対し
て20〜70質量%の、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であ
り、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物と、該インク組成物の総質量に対して10〜20質量%の、分子内に脂
環構造を有する重合性化合物及び分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物のうち
少なくともいずれかと、を含む、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[2]
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物が、トリシクロデカンジメタノールジアク
リレート、アダマンチルアクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールモノアクリレー
トからなる群より選択される一種以上である、[1]に記載の紫外線硬化型インクジェッ
ト用インク組成物。
[3]
前記分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物が、テトラヒドロフルフリルアク
リレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、ジオキソランアクリレート、及びジオキサ
ングリコールジアクリレートからなる群より選択される一種以上である、[1]又は[2
]に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[4]
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物と、前記分子内に環状エーテル構造を有す
る重合性化合物と、を共に含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の紫外線硬化型インク
ジェット用インク組成物。
[5]
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して5質
量%以上含まれ、かつ、前記分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物は、該イン
ク組成物の総質量に対して5質量%以上含まれる、[4]に記載の紫外線硬化型インクジ
ェット用インク組成物。
[6]
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物及び前記分子内に環状エーテル構造を有す
る重合性化合物のうち少なくともいずれかが、(メタ)アクリレート化合物である、[1
]〜[5]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[7]
20℃における粘度が30mPa・s以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
[8]
前記一般式(I)で表される化合物が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル
である、[1]〜[7]のいずれかに記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物

【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の
実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することがで
きる。
【0012】
本明細書において、「硬化性」とは、光に感応して硬化する性質をいう。「密着性」と
は、塗膜が素地から剥離しにくい性質をいい、特に実施例では、直角の格子パターンが硬
化物に切り込まれ、被記録媒体の素地まで貫通するときの当該性質をいう。「収縮性」と
は、被記録媒体上にインク組成物を付着し硬化させて得られた記録物の端部において、持
ち上がりの程度が大きい性質をいう。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメ
タクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及び
それに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0014】
[紫外線硬化型インクジェット用インク組成物]
本発明の一実施形態に係る紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、下記一般式
(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であ
り、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物(以下、「モノマーA」という。)と、分子内に脂環構造を有する重合
性化合物及び分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物のうち少なくともいずれか
と、をそれぞれ所定の含有量で含む。
【0015】
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は所望により含まれ得る添加剤(成
分)を説明する。
【0016】
〔重合性化合物〕
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、単独で、又は後述する光重合開
始剤の作用により、光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる

【0017】
(モノマーA)
本実施形態において必須の重合性化合物であるモノマーAは、分子中にビニル基及び(
メタ)アクリル基を共に有する化合物であり、上記一般式(I)で示される。このモノマ
ーAは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と換言することができる。
【0018】
インク組成物がモノマーAを含有することにより、インクの硬化性などを良好なものと
することができる。
【0019】
上記の一般式(I)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜2
0の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結
合及びエステル結合の少なくとも一方による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素
数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好
適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブ
チレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン
基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による
酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0020】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基として
は、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素
数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又
はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6
〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0021】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含
む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基であ
る場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、
以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素
原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0022】
上記の一般式(I)で表されるモノマーAの具体例としては、以下に限定されないが、
(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル
、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニ
ロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メ
チル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(
メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジ
メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)ア
クリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチ
ル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメ
チルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ
)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキ
シエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(
メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニ
ロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)
プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ
)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビ
ニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプ
ロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプ
ロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、
(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アク
リル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(
ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロ
キシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイ
ソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエト
キシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキ
シ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エ
チル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル
、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2
−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペ
ノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシ
エトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコー
ルモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエ
ーテルが挙げられる。
【0023】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル
酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(
メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、
(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシ
ル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル
酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ
)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)ア
クリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0024】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アク
リル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましく、さらに、臭気が低く、皮膚への刺
激を抑えることができ、かつ、反応性及び密着性に優れるため、アクリル酸2−(ビニロ
キシエトキシ)エチルがより好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸
2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエ
トキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、ア
クリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエ
トキシ)エチルが挙げられる。
【0026】
モノマーAは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
モノマーAは、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、20〜70質量%含ま
れ、好ましくは20〜40質量%含まれる。含有量が20質量%以上であると、インクを
低粘度化させることができる。また、含有量が70質量%以下であると、密着性を良好な
ものとすることができる。
【0028】
上記一般式(I)で表されるモノマーAの製造方法としては、以下に限定されないが、
(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、
(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法
(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化す
る方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエ
ステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類と
をエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲ
ン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリ
ル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メ
タ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法
I)が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが
好ましい。
【0030】
(分子内に脂環構造を有する重合性化合物)
本実施形態のインク組成物は、分子内に脂環構造を有する重合性化合物を含み得る。
【0031】
上記の分子内に脂環構造を有する重合性化合物としては、以下に限定されないが、例え
ばトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリ
レート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタ
ノールジ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソ
ボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシ
クロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)ア
クリレートが挙げられる。
【0032】
上記分子内に脂環構造を有する重合性化合物は、硬化速度が増大可能なため、(メタ)
アクリレート化合物であることが好ましい。
【0033】
上記の中でも、剛直性が付与されるため、トリシクロデカンジメタノールジアクリレー
ト、アダマンチルアクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールモノアクリレートから
なる群より選択される一種以上であることが好ましい。
【0034】
上記の分子内に脂環構造を有する重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上
を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記の分子内に脂環構造を有する重合性化合物の含有量については後述する。
【0036】
(分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物)
本実施形態のインク組成物は、分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物を含み
得る。
【0037】
上記の分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物としては、以下に限定されない
が、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)
アクリレート、ジオキソラン(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)ア
クリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマ
ル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、「環状エーテル構造」
には、環状エステル構造も含まれるものとし、環状エーテル構造が有するエーテル部分は
複数であってもよい。
【0038】
上記分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物は、硬化速度が増大可能なため、
(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0039】
上記の中でも、密着性がより良好となるため、テトラヒドロフルフリルアクリレート、
γ−ブチロラクトンアクリレート、及びジオキサングリコールジアクリレートからなる群
より選択される一種以上であることが好ましい。
【0040】
上記の分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、
2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、上記インク組成物は、上記分子内に脂環構造を有する重合性化合物と、上記分子
内に環状エーテル構造を有する重合性化合物と、を含むことが好ましい。この場合、密着
性を一層優れたものとすることができ、かつ、収縮性を一層抑制されたものとすることが
できる。
【0042】
上記の分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物の含有量は、上記の分子内に脂
環構造を有する重合性化合物の含有量によって異なる。すなわち、分子内に脂環構造を有
する重合性化合物及び分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物の合計の含有量が
、インク組成物の総質量(100質量%)に対して10〜20質量%である。上記合計の
含有量が10質量%以上であると、密着性を優れたものとすることができ、かつ、収縮性
を抑制されたものとすることができる。収縮性についてより詳細に言えば、上記合計の含
有量が10質量%以上であると、上記重合性化合物が環状骨格を持つことに起因して、硬
化時の収縮率を低減させる作用が十分発揮されるため、収縮性の抑制されたものとなる。
また、上記合計の含有量が20質量%以下であると、インクを低粘度化させることができ
る。
【0043】
したがって、分子内に脂環構造を有する重合性化合物を含み、分子内に環状エーテル構
造を有する重合性化合物を含まない場合、当該分子内に脂環構造を有する重合性化合物の
含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して10〜20質量%が好ましく
、12〜17質量%がより好ましい。また、分子内に環状エーテル構造を有する重合性化
合物を含み、分子内に脂環構造を有する重合性化合物を含まない場合、当該分子内に環状
エーテル構造を有する重合性化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)
に対し、10〜20質量%が好ましく、12〜17質量%がより好ましい。
【0044】
また、インク組成物が、上記分子内に脂環構造を有する重合性化合物及び上記分子内に
環状エーテル構造を有する重合性化合物を共に含む場合、上記各重合性化合物の含有量は
、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5質量%以上が好ましく、7〜15質
量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、密着性を一層優れたものとすること
ができ、かつ、収縮性を一層抑制されたものとすることができる。
【0045】
(上記以外の重合性化合物)
上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来
公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマ
ーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸
、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸、並びにそれらの
塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々
の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタン
が挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上
記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタ
ン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メ
タ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいても
よい。そのようなN−ビニル化合物として、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビ
ニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピ
ロリドン、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0047】
その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレ
ートが好ましく、2官能以上である多官能の(メタ)アクリレートがより好ましく、多官
能のアクリレートがさらに好ましい。特に、本実施形態のインク組成物が、重合性化合物
として、上記所定量のモノマーAと分子内に脂環構造を有する重合性化合物及び分子内に
環状エーテル構造を有する重合性化合物のうち少なくともいずれかとに加えて、多官能ア
クリレートをも含むことで、密着性が一層良好なものとなる。
【0048】
上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イ
ソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)ア
クリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリス
チル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル
−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブ
トキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコ
ール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェ
ノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピ
ル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
上記(メタ)アクリレートのうち、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ト
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4
−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリ
レート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(
メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン
酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、並びに、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジト
リメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリ
レート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート
等のペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール
ヘキサ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート
等のジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリ
ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(
メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、及びトリ
ペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のトリペンタエリスリトール骨格を
有する(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート
、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトー
ルヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレー
ト、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトー
ルノナ(メタ)アクリレート、及びテトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレー
ト等のテトラペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、ペンタペンタエ
リスリトールウンデカ(メタ)アクリレート及びペンタペンタエリスリトールドデカ(メ
タ)アクリレート等のペンタペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリレート、
並びにこれらのエチレンオキサイド(EO)付加物及びプロピレンオキサイド(PO)付
加物のうち少なくともいずれか等、3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
これらの中でも、その他の重合性化合物は、上記のとおり、多官能(メタ)アクリレー
トを含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの中でも、上記のペンタエリスリ
トール骨格を有する多官能(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのうち少な
くともいずれかがより好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリ
スリトールテトラアクリレートのうち少なくともいずれかがさらに好ましい。上記の場合
、インクの粘度がより低下し、かつ、インクにおける架橋密度が増大するため密着性も一
層良好なものとなる。
【0051】
上記その他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記その他の重合性化合物は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、50〜
85質量%含まれるとよい。
【0052】
〔重合禁止剤〕
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤として、以下に
限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール
、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフ
ェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフ
ェノール化合物、p−ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノ
ン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル
−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ
−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5
−ジーブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、
及び2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン等のキノン化合物、フェニル−β−ナフチルア
ミン、p−ベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベ
ンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、及びジエチルヒドロキシルア
ミン等のアミン化合物、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、及びピクリン酸などの
ニトロ化合物、キノンジオキシム及びシクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物、フ
ェノチアジン等の硫黄化合物が挙げられる。
【0053】
〔光重合開始剤〕
本実施形態のインク組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。上述の重合性化合
物として光重合性の化合物を用いることにより、光重合開始剤の添加を省略することが可
能である。しかし、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ
、好適である。
【0054】
上記の光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在
するインクを硬化させて画像を形成するために用いられる。光重合開始剤としては、光の
エネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重
合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開
始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0055】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィン
オキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサント
ン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケ
トオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活
性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げ
られる。
【0056】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルフォスフ
ィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、
アシルフォスフィンオキサイド化合物がより好ましい。
【0057】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケ
タール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェ
ニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アン
トラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロ
ロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェ
ノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベン
ジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチ
ルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ク
ロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリ
ノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォス
フィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキ
サイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル
)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0058】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2
−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1
−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−
ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2
959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{
4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2
−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−
メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 3
69(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノ
ン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフ
ェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DA
ROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオ
キサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−
フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−
シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−
1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オク
タンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、I
RGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾ
イル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRG
ACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシ
エトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチ
ルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、Speedcure TPO(Lambso
n社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本
化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、L
R8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0059】
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい

【0060】
光重合開始剤は、硬化速度が増大可能なため、インク組成物の総質量(100質量%)
に対し、5〜20質量%含まれることが好ましい。
【0061】
〔色材〕
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含むことが好ましい。色材は、顔料及び染
料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0062】
(顔料)
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を良
好なものとすることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することが
できる。
【0063】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャ
ネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化
チタンを使用することができる。なお、酸化チタンの市販品としては、例えば、CR60
−2(石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名)が挙げられる。
【0064】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等
のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キ
ナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタ
ロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キ
レート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニト
ロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0065】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとして、No.23
00、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、
MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Che
mical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven
5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以
上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega
1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Mo
narch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarc
h 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch
1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black F
W1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Colo
r Black FW18、Color Black FW200、Color B1a
ck S150、Color Black S160、Color Black S17
0、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex
140U、Special Black 6、Special Black 5、Sp
ecial Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(De
gussa)社製)が挙げられる。
【0066】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、
21が挙げられる。
【0067】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3
、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、3
7、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98
、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、
129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、
180が挙げられる。
【0068】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、
4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、2
1、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、4
8(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144
、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177
、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245
、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43
、50が挙げられる。
【0069】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、1
5、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、
60、65、66、C.I.バット ブルー 4、60が挙げられる。
【0070】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメ
ントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.
ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,3
8,40,43,63が挙げられる。
【0071】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜25
0nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出
安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成するこ
とができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0073】
(染料)
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定
されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,
142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I
.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94
、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,3
3,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレ
ッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,
15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック
19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレ
ッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35
が挙げられる。
【0074】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
色材の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、2〜20質量%が
好ましい。
【0076】
〔分散剤〕
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため
、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分
散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例と
して、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマ
ー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ
ウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及
びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品
として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、LUBRIZOL社製のソルスパーズ
シリーズ(Solsperse 36000等)、BYK社製のディスパービックシリーズ
、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
【0077】
〔スリップ剤〕
本実施形態のインク組成物は、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリ
ップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエ
ステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル
変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いること
が特に好ましい。具体例としては、BYK−377、BYK−UV3500(以上、BYK
社製)、KF−615A(信越化学社製)を挙げることができる。
【0078】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよ
い。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸
透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添
加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、
キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0079】
[被記録媒体]
被記録媒体とは、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物が、後述す
るインクジェット記録方法を利用して、吐出される対象物のことを言う。この被記録媒体
として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。後述のインクジェット
記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水溶性インク
組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く
適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外
線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0080】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い
電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成さ
れたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン
(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用
紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙
、コート紙、キャスト紙が挙げられる。
【0081】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類の
フィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種
金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳
等の合金のプレートが挙げられる。
【0082】
[インクジェット記録方法]
インクジェット記録方法は、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物
を用いるものである。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記実施形態の
インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外
線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記
録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
【0083】
〔吐出工程〕
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。
インク組成物の吐出の際、インク組成物の20℃における粘度を、好ましくは30mPa
・s以下、より好ましくは10〜20mPa・sとすることが好ましい。インク組成物の
20℃下での粘度が上記範囲内であれば、インク組成物の温度を室温で、あるいはインク
組成物を加熱せずに吐出させたとしても、吐出不良を防止することができる。
【0084】
本実施形態の紫外線硬化型インク組成物は、通常のインクジェット記録用インクで使用
される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい
。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな
影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度は
できるだけ一定に保つことが好ましい。
【0085】
〔硬化工程〕
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(
光)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の
照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、光重合性化合物の
重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射
によって、光重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物に
おいて光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励
起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、よ
り高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0086】
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線
硬化型インクジェット用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メ
タルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリ
ー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境
的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レ
ーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線硬化型
インクジェット用光源として好ましい。これらの中でも、UV−LEDが特に好ましい。
【0087】
ここで、発光ピーク波長が、好ましくは360〜420nmの範囲、より好ましくは3
85〜405nmの範囲にある紫外線であることが好ましい。この場合、本実施形態にお
けるインク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。
なお、上記の際、照射エネルギーは、500mJ/cm2以下が好ましく、300〜1
00mJ/cm2がより好ましい。照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出
される。
【0088】
本実施形態によれば、上記インク組成物の組成によって照射時間を短縮することができ
、その場合、印刷速度が増大する。他方、本実施形態におけるインク組成物の組成によっ
て照射強度を減少させることもでき、その場合、装置の小型化やコストの低下が実現する
。その際の紫外線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインク組
成物は、上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤と、上記波長範囲の紫外
線照射により重合を開始する重合性化合物と、のうち少なくともいずれかを含むことによ
り得られる。なお、発光ピーク波長は、上記の波長範囲内に1つあってもよいし複数あっ
てもよい。複数ある場合であっても上記発光ピーク波長を有する紫外線の全体の照射エネ
ルギーを上記の照射エネルギーとする。
【0089】
このように、本実施形態によれば、低粘度であって密着性に優れ、かつ、収縮性の抑制
された紫外線硬化型インク組成物を提供することができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこ
れらの実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
[使用原料]
下記の実施例及び比較例において使用した原料は、以下の通りである。
〔重合性化合物〕
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA〔商品名〕、日本触媒社
(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
・トリプロピレングリコールジアクリレート(APG−200〔商品名〕、新中村化学社
(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製、表1〜4では「TPGDA」と略記した。)
・ジプロピレングリコールジアクリレート(APG−100〔商品名〕、新中村化学社製
、表1〜4では「DPGDA」と略記した。)
・シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(CD406〔商品名〕、SARTOMER社製、
表1〜4では「CHDMDA」と略記した。)
・トリメチルシクロヘキシルアクリレート(CD420〔商品名〕、SARTOMER社製、表1
〜4では「TMCHA」と略記した。)
・テトラヒドロフルフリルメタクリレート(SR230〔商品名〕、SARTOMER社製、表1
〜4では「THFMA」と略記した。)
・イソボルニルアクリレート(IBXA〔商品名〕、大阪有機化学工業社(OSAKA ORGANI
C CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製、表1〜4では「IBXA」と略記した。)
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SR833〔商品名〕、SARTOMER社製
、表1〜4では「TCDDMDA」と略記した。)
・アダマンチルアクリレート(アダマンテートHA〔商品名〕、出光興産社(Idemitsu K
osan Co.,Ltd.)製、表1〜4では「AdA」と略記した。)
・シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA〔商品名〕、日本化成社
製、表1〜4では「CHDMMA」と略記した。)
・テトラヒドロフルフリルアクリレート(V#150〔商品名〕、大阪有機化学工業社製
、表1〜4では「THFA」と略記した。)
・γ−ブチロラクトンアクリレート(GBLA〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、表1
〜4では「GBLA」と略記した。)
・ジオキソランアクリレート(MEDOL−10〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、表
1〜4では「DOLA」と略記した。)
・ジオキサングリコールジアクリレート(SR508〔商品名〕、SARTOMER社製、表1〜
4では「DOGDA」と略記した。)
・オキセタンアクリレート(OXE−10〔商品名〕、大阪有機化学工業社製、表1〜4
では「OXE−10」と略記した。)
・環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(SR531〔商品名〕、SARTOM
ER社製、表1〜4では「CTFA」と略記した。)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイ
ル)−フェニルフォスフィンオキサイド、固形分100%、表1〜4では「819」と略
記した。)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジ
フェニル−フォスフィンオキサイド、固形分100%、表1〜4では「TPO」と略記し
た。)
〔スリップ剤〕
・シリコーン系表面調整剤 BYK−UV3500(ポリエーテル変性アクリル基を有す
るポリジメチルシロキサン、BYK社製商品名、表1〜4では「UV3500」と略記した
。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(関東化学社製商品名、表1〜表4では「MEHQ」と略記し
た。)
〔顔料〕
・CR60−2(酸化チタン、石原産業社(ISHIHARA SANGYO KAISHA, LTD.)製商品名、
以下では「酸化Ti」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「Sol36000
」と略記した。)
【0092】
[実施例1〜27、比較例1〜11]
〔顔料分散物の作製〕
インク組成物の作製に先立ち、顔料分散物を作製した。顔料(酸化Ti)を60質量%
、分散剤(Sol36000)を5質量%、重合性化合物としてのVEEAを35質量%
の割合でそれぞれ混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合液をビーズミルで
分散し、顔料分散物を得た。なお、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを
70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を2〜4時間とした。
【0093】
〔インク組成物の作製〕
下記表1〜4に記載の成分を、表1〜4に記載の組成(単位:質量%)となるように添
加し(表1〜4中、顔料とVEEAの一部とは上記顔料分散物として添加)、これを常温
で1時間混合撹拌して完全に溶解させた。これを、さらに5μmのメンブランフィルター
でろ過して、各紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を得た。
【0094】
なお、表1〜4中、顔料分散物における分散剤は、固形分である顔料及びVEEAの含
有量に基づきその組成を算出できるため、記載していない。また、表1〜4中の「VEE
A」欄は、顔料分散物の作製時に添加したVEEAとインク組成物の作製時に添加したv
EEAとの合算値である。また、表1〜4中、「その他モノマー」はその他の重合性化合
物を意味し、「脂環モノマー」は分子内に脂環構造を有する重合性化合物を意味し、「エ
ーテル環状モノマー」は分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物を意味する。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
[評価項目]
各実施例及び比較例で調製した紫外線硬化型インクジェット用インク組成物について、
以下の方法により粘度、密着性、及び収縮性を評価した。下記のベタ印刷は、インクジェ
ットプリンター(セイコーエプソン社製)を改造したものを使用して、記録解像度720
dpi×720dpi、塗布厚(硬化後の最終膜厚)10μmで塗布を行った。
【0100】
〔粘度〕
各インク組成物の粘度を、E型粘度計(東機産業社(TOKI SANGYO CO.,LTD.)製)を用
いて、温度20℃、回転数10rpmの条件下で測定した。○が実用上許容できる評価基
準である。評価結果を表5に示す。
○:20mPa・s以下、
×:20mPa・s超。
【0101】
〔密着性〕
JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の
機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、被記録媒体であるPET5
0A(リンテック社(Lintec Corporation)製PETフィルム)とベタ印刷により形成さ
れた画像との密着性の評価を行った。ここで、上記クロスカット法について説明する。
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切
り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込
みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直
行するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗
膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分
指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒
で確実に引き離した。
評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準である。評価結
果を表5に示す。
◎:どの格子の目にも剥がれが殆ど見られない(JIS K−5600−5−6における
ランク0又はランク1)。
○:格子の一部(50%未満)に剥がれが認められる(JIS K−5600−5−6に
おけるランク2又はランク3)。
×:格子の50%以上に剥がれが認められる(JIS K−5600−5−6におけるラ
ンク4又はランク5)。
【0102】
〔収縮性〕
収縮性評価(カール試験)を行った。被記録媒体としてのルミラー(登録商標)E20
#125(東レ社(TORAY INDUSTRIES, INC.)製商品名、二軸延伸ポリエステル(PET
)フィルム、白色グレード、厚み125μm)から、幅7mm及び縦44mmのサイズの
試験片を作製した。この試験片の中心部に、幅5mm及び縦40mmの範囲でベタ印刷を
行った。その後、以下の条件で紫外線を照射させることでインクを硬化させた。紫外線の
照射条件は、波長395nm、照射強度1,000mW/cm2、最大積算照射量500
mJ/cm2であった。
硬化後の試験片の端部における持ち上がり(カール)の程度を測定することで、収縮性
を評価した。評価基準は以下のとおりである。◎及び○が実用上許容できる評価基準であ
る。評価結果を表5に示す。
◎:5mm未満、
○:5mm以上10mm未満、
×:10mm以上。
【0103】
【表5】

【0104】
上記表5より、まず、モノマーAの含有量が20〜70質量%である場合は、含有量が
20質量%未満の場合と比べて低粘度化し、含有量が70質量%超の場合と比べて密着性
に優れることが分かった。
【0105】
また、分子内に脂環構造を有する重合性化合物(脂環モノマー)の含有量が10〜20
質量%である場合は、含有量が10質量%未満の場合と比べて収縮性が抑制され、含有量
が20質量%超の場合と比べて低粘度化することが分かった。
【0106】
また、分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物(エーテル環状モノマー)の含
有量が10〜20質量%である場合は、含有量が10質量%未満の場合と比べて密着性に
優れ、含有量が20質量%超の場合と比べて低粘度化することが分かった。
【0107】
さらに、インク組成物が脂環モノマー及びエーテル環状モノマーを共に含む場合、各々
の含有量が5質量%以上であり、かつ、合計の含有量が10〜20質量%である実施例は
、各々の含有量が5質量%未満である場合と比べて密着性に優れるとともに収縮性が抑制
され、各々の含有量は5質量%以上であるものの合計の含有量が20質量%超である場合
と比べて低粘度化することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、
該インク組成物の総質量に対して20〜70質量%の、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であ
り、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される化合物と、
該インク組成物の総質量に対して10〜20質量%の、分子内に脂環構造を有する重合
性化合物及び分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物のうち少なくともいずれか
と、
を含む、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物が、トリシクロデカンジメタノールジアク
リレート、アダマンチルアクリレート、及びシクロヘキサンジメタノールモノアクリレー
トからなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェ
ット用インク組成物。
【請求項3】
前記分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物が、テトラヒドロフルフリルアク
リレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、ジオキソランアクリレート、及びジオキサ
ングリコールジアクリレートからなる群より選択される一種以上である、請求項1又は2
に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物と、前記分子内に環状エーテル構造を有す
る重合性化合物と、を共に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型イン
クジェット用インク組成物。
【請求項5】
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対して5質
量%以上含まれ、かつ、
前記分子内に環状エーテル構造を有する重合性化合物は、該インク組成物の総質量に対
して5質量%以上含まれる、請求項4に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成
物。
【請求項6】
前記分子内に脂環構造を有する重合性化合物及び前記分子内に環状エーテル構造を有す
る重合性化合物のうち少なくともいずれかが、(メタ)アクリレート化合物である、請求
項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項7】
20℃における粘度が30mPa・s以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載
の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)で表される化合物が、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル
である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成
物。

【公開番号】特開2012−193260(P2012−193260A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57667(P2011−57667)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】