説明

紫外線硬化型樹脂組成物

【課題】高性能で、安価なカチオン重合型の紫外線硬化型樹脂組成物を得る。
【解決手段】本発明は、プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)とカチオン系開始剤(B)とを備える紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。この組成物は、紫外線硬化型の特徴である高生産性と被膜面の高光沢及び耐摩耗性、耐溶剤性、ラジカル重合型の特徴である樹脂の多様性と低価格、カチオン重合型の特徴である硬化時の低収縮による基材への高い密着性と硬化後の低臭気を全て兼ね備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷及びコーティング分野の加飾において、表示・艶出し及び着色するために利用される紫外線硬化型樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、波長域200〜450nmの紫外線を利用して、印刷又はコーティングされた液状の樹脂を硬化させ、短時間に省エネルギーで印刷物及びコーティング皮膜を提供するために利用される紫外線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物に、耐摩擦性、耐水性等の機能を付加するためや、光沢を上げて見栄えをよくし、高級なイメージを与えるために、印刷物の表面を後加工することが行われている。冷凍食品、化粧品、菓子等の外包装に使用される紙器や絵葉書、書籍のカバー等に使用される印刷物ではほとんどがこの後加工を施している。
【0003】
後加工の一つに、オフセット印刷機の印刷ユニットを利用し、油性コーティングワニスを塗布する方法があるが、この方法では、光沢、耐摩擦性の付与が十分でなく、また油性コーティングワニス自体の乾燥性が不十分なことから、印刷後に裏付き防止スプレーパウダーが必要で、光沢低下と共に作業環境の悪化となる。また、印刷機の後にロールコーター等のコーティング装置を設置して、水性コーティングワニスを塗布する方法がある。しかし、この水性コーティングワニスを使用すると、耐摩擦性は付与されるものの、十分な光沢が付与できず、改めて熱プレス加工を施す必要がある。
【0004】
一方、紫外線の照射により架橋硬化する紫外線硬化型コーティングワニスが用いられている。紫外線硬化型組成物には、ラジカル系光重合開始剤を使用するタイプと、カチオン系光重合開始剤を使用するタイプが種々提案されており、被膜面は高光沢となる。
ラジカル重合型アクリルモノマー類は、光重合開始剤の存在下で、紫外線により重合・硬化することは既知であり、樹脂として種類が豊富なこと、価格が安いこと等から、紫外線硬化型のインキやコーティング剤等として広く利用されているが、重合時に硬化収縮が大きく基材への密着性が阻害され易いこと、硬化後の臭気が強いこと等の欠点を有している。
【0005】
他方、カチオン重合性不飽和化合物(エポキシ樹脂等)はカチオン重合時の硬化収縮が少ないので基材に対する密着性が良好なこと、硬化後の臭気が少ないこと等から、塗料として利用されるようになって来た。しかし、樹脂の種類が少ないこと、硬化性の湿度依存性が大きく夏場、冬場で硬化性が大きく変化すること、樹脂、カチオン系光重合開始剤等、組成物の価格が高くなること、暗反応があり、紫外線照射直後の硬化が遅いこと等の欠点を有している。
【0006】
2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマー(A)、2個以上の脂環式エポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物(B)、及び光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、少なくとも1個の脂環式エポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A)、2個以上のオキセタン環構造を有するオキセタン化合物(B)、及び光カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする紫外線硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007-119732号公報
【特許文献2】特開2006-299148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のカチオン重合性組成物としては、成分が特殊であったり、非常に価格が高いため、ラジカル重合を凌駕するまでには至っていない。
本発明は、紫外線硬化型の特徴である高生産性と被膜面の高光沢及び耐摩耗性、耐溶剤性、ラジカル重合型の特徴である樹脂の多様性と低価格、カチオン重合型の特徴である硬化時の低収縮による基材への高い密着性と硬化後の低臭気を全て兼ね備える紫外線硬化型樹脂組成物を得ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究開発を行い、以下の発明を得るに至った。
すなわち、本発明は、プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)とカチオン系光重合開始剤(B)とを備え、紫外線により重合することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物に係るものである。
【0009】
好適例において、上記組成物は、上記化合物(A)と上記カチオン系光重合開始剤(B)と、更にラジカル系光重合開始剤(C)とを備え、紫外線により重合する、紫外線硬化型樹脂組成物である。また、更に、上記組成物は、単量体を所定の量で備えることができる。
【0010】
さらに好ましくは、上記組成物は、上記化合物(A)が、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、カチオン系光重合開始剤(B)が少なくともオニウム塩化合物である、紫外線硬化型樹脂組成物からなる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、ラジカル重合型とカチオン重合型の利点や特徴をかね備えた従来にない特徴の紫外線硬化型樹脂組成物が得られ、硬化皮膜は両者の長所を有している。以上の発明について更に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(A)のエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有するプレポリマーは、特に制限はなく、例えば、ポリエステルアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂等があり、以上を単独あるいは二種類以上を混合して用いても良い。
【0013】
以上のプレポリマーのうち少なくともエポキシ(メタ)アクリレートプレポリマーを1種以上含有することが更に好ましい。
【0014】
プレポリマーは、単量体がある程度の種類、数で繰り返し重合した重合体であり、ポリマーの他、オリゴマーが含まれる。
ここで、オリゴマーは、2〜数個、数個〜数十、〜100等の整数の単量体数が重合した重合体である。オリゴマーとしては、ポリエステルアクリレートとして、東亜合成(株)のアロニックスM-6250、ダイセルサイテック(株)のEB OTA480、大阪有機(株)のビスコート3700等が挙げられ、エポキシアクリレートとして、昭和高分子(株)のSHPリポキシSP-1506、新中村化学(株)のNKエステルEPM-800、ダイセルサイテック(株)のEB 150、日本化薬(株)のカヤラッドR-167等が挙げられ、ウレタンアクリレートとして、根上工業(株)のアートレジンUN-9000PEP、東亜合成(株)のアロニックスM-1200、新中村化学(株)のNKエステルU-108-A、日本合成(株)のXP-4200B等が挙げられる。
ポリマーは、便宜上、オリゴマー以外のプレポリマーであり、100以上、〜数百、〜数千等の整数の単量体数が重合した重合体であり、2つ以上の反応性基により更なる重合に関与し得る高分子である。
【0015】
(A)のエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有するプレポリマーの添加量は、紫外線硬化型樹脂組成物中、好ましくは10重量%〜80重量%、更に好ましくは20重量%〜60重量%である。10重量%より少ない場合には硬化性が悪くなり易く表面タックが残って使用し難い場合がある。逆に80重量%より多い場合には塗料の粘度が高くなり易く印刷やコーティングが難しくなる場合がある。
【0016】
また、紫外線硬化型樹脂組成物には、単量体として、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する単官能又は多官能モノマー類を添加することが出来る。単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、その他のビニルモノマー類、例えばスチレン、シクロヘキセン、ジビニルベンゼン、α-メチルベンゼン、アクリロニトリル、Nビニルピロリドン、アクロイルモルフォリン、酢酸ビニル、ブタジエン類、その他ジエン系ポリマー類、ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、等でよく、これら単独あるいは二種類以上を混合して用いても良い。
【0017】
さらに2-エチルヘキシルビニルエーテル、tert(第三)-アミルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル等が挙げられ、多官能ビニルエーテルとしてはジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテルや2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、tert-アミルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、エチレングリコールブチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルのカチオン重合型単量体も併用することが出来る。
【0018】
これら単量体の添加量は、紫外線硬化型樹脂組成物中、好ましくは5.0重量%〜80重量%、更に好ましくは20重量%〜60重量%である。5.0重量%より少ない場合には塗料の粘度が高くなり易く印刷やコーティングが難しくなる場合がある。逆に80重量%より多い場合には硬化性が悪くなり易く表面タックが残って使用し難くなる場合がある。
【0019】
(B)のカチオン系開始剤としては、紫外線によりカチオン重合機構で硬化反応を開始させるものであり、代表的にカチオン系光重合開始剤であり、米国特許第4,231,951号明細書に記載のようなトリアリールスルホニウム錯塩、米国特許第4,256,828号明細書に記載のようなハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム塩又は芳香族ヨードニウム塩、米国特許第4,058,401号及び第4,138,255号明細書に記載のような第VIa族元素の芳香族オニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書に記載のような第Va族元素の芳香族オニウム塩を単独もしくは併用して用いることが出来るが、少なくともオニウム塩を含有することが好ましい。
【0020】
カチオン系開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂組成物中、好ましくは0.1重量%〜10重量%、更に好ましくは0.5重量%〜5.0重量%である。0.1重量%より少ない場合にはカチオン系開始剤を添加した効果が生じ難く、表面にタックが残ったり、密着性が低下したりする傾向にある。逆に10重量%より多い場合にはカチオン系開始剤が高価なため、コーティング剤の価格が非常に高くなり、用途が限られて現実的でなくなる。
【0021】
(C)のラジカル系開始剤としては、代表的にラジカル系光重合開始剤であり、紫外線によりラジカル重合機構で硬化反応を開始させるものであり、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルアルキルケタノール等のベンゾイルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン系、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、4-4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-アルキルチオキサントン等のチオキサントン系、その他として2-アルキルアントラキノン等がある。ラジカル系開始剤は、これらの例に限定されることなく、200〜450nmの光によりラジカル種を発生するものであれば良く、これらの光重合開始剤を単独あるいは二種類以上を混合して用いることが出来る。
【0022】
ラジカル系開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂組成物中、好ましくは0.01重量%〜10.0重量%、更に好ましくは0.5重量%〜6.0重量%である。ラジカル系開始剤を併用することにより、カチオン系開始剤単独では硬化性が不足の場合にはこれを促進することが出来る。また併用することにより高価なカチオン系開始剤の添加量を減量することが出来、塗料価格を抑えることが出来る。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、着色が必要な場合には有機顔料又は無機顔料、塗膜の平滑性が必要な場合にはシリコーンや界面活性剤等のレベリング剤や柚子肌防止剤、保存安定性を向上するための熱重合禁止剤、濡れ性や粘度を調整するために有機溶剤等を状況に合わせて加えても差し支えない。
【0024】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の各添加量に関しては、光重合するのに適した量であれば特に限定するものではない。
【0025】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を印刷する場合には、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、シルク印刷等の印刷方法を選択することが出来る。また、コーティングする場合は、リバースコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、ダイコーティング等、用途により選択できる。
【0026】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を硬化する場合、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等一般の紫外線ランプを用いることが出来、好ましい紫外線光量は50mJ/cm2〜1000mJ/cm2である。50mJ/cm2未満では光量が不足して硬化しない場合があり、1000mJ/cm2超えると逆に光量が高過ぎて塗膜の変色や熱による基材の変形の恐れがある。さらに好ましくは、紫外線光量100mJ/cm2〜500mJ/cm2の場合、紫外線硬化型システム本来の高生産性と省エネルギーの両立が得られ、基材への影響も最小限に抑えることが出来る。
【実施例】
【0027】
以下、本発明に関して実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600(ダイセルサイテック製)68g(68重量%)、アクリルモノマーACMO(興人製)30g(30重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591(ダイセルサイテック製、カチオン系開始剤、オニウム塩化合物)2g(2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、紫外線硬化型樹脂組成物の好適な範囲に含まれる実施例1のコーティング剤を得た。
【0028】
(実施例2)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の69.5g(約69.8重量%)、アクリルモノマー・ライトアクリレート3EG-A(共栄社化学製)30g(約30.1重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の0.1g(約0.1重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、実施例2のコーティング剤を得た。これはカチオン系光重合開始剤含有量が一定の好適な範囲に含まれるものの最小量である。
【0029】
(実施例3)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の63g(63重量%)、アクリルモノマー・ライトアクリレート3EG-Aの27g(27重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の10g(10重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、実施例3のコーティング剤を得た。これはカチオン系光重合開始剤含有量が一定の好適な範囲に含まれるものの最大量である。
【0030】
(実施例4)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の66g(約67.0重量%)、アクリルモノマー・ライトアクリレート3EG-Aの30g(約30.5重量%)、ラジカル光重合開始剤イルガキュア184(チバガイギー製、ラジカル系開始剤)2g(約2.0重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の0.5g(約0.5重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、好適な範囲に含まれる実施例4のコーティング剤を得た。
【0031】
(実施例5)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の66g(66重量%)、アクリルモノマーACMOの30g(30重量%)、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2g(2重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の2g(2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、好適な範囲に含まれる実施例5のコーティング剤を得た。
【0032】
(実施例6)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の10g(約10重量%)、アクリルモノマーACMOの88g(約86重量%)、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2g(約2重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の2g(約2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、実施例6のコーティング剤を得た。これはプレポリマー含有量が一定の好適範囲に含まれるものの最小量である。
【0033】
(実施例7)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の80g(80重量%)、アクリルモノマーACMOの16g(16重量%)、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2g(2重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の2g(2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、実施例7のコーティング剤を得た。これはプレポリマー含有量が一定の好適範囲に含まれるものの最大量である。
【0034】
(実施例8)
ウレタンアクリレートオリゴマーEB-1290の66g(66重量%)、アクリルモノマーACMOの30g(66重量%)、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2g(2重量%)、カチオン重合触媒Uvacure1591の2g(2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、一定の好適な範囲に含まれるものの実施例8のコーティング剤を得た。
【0035】
(実施例9)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の66g(66重量%)、アクリルモノマーACMOの30g(30重量%)、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2g(2重量%)、カチオン重合触媒イルガキュア250(チバガイギー製、カチオン系開始剤)の2g(2重量%)を、ビーカーに入れ、よく攪拌して、一定の好適な範囲に含まれるものの実施例9のコーティング剤を得た。
【0036】
(比較例1)
エポキシアクリレートオリゴマーEB-600の68g、アクリルモノマー・ライトアクリレート3EG-Aの30g、ラジカル重合開始剤イルガキュア184の2gを、ビーカーに入れ、よく攪拌して、典型的なラジカル重合系のコーティング剤(比較例1)を得た。
(比較例2)
脂環式エポキシオリゴマー・セロキサイド2021P(ダイセル化学製)68g、ジビニルエーテルDVE-3(ISP製)30g、カチオン重合触媒Uvacure1591の2gを、ビーカーに入れ、よく攪拌して、典型的なカチオン重合系のコーティング剤(比較例2)を得た。
【0037】
(評価)
実施例、比較例の配合物を、次に述べる方法で、塗布、硬化させ、各評価方法に従って評価を行った。
(塗布) フレーム処理を施し表面濡れ指数40dyn/cmとなった低圧ポリエチレンフィルムに、各試料をバーコーターNO.5を用いて塗布する。Wet(湿潤)状態での膜厚は約4μmであった。
(硬化) 前述の方法で塗布した試料を、高圧水銀灯にて硬化させる。120W/cmの水銀灯×1、距離130mm、コンベアスピード6m/分にて、積算光量は約200mJ/cm2であった。
(硬化性、表面タック) 前述の方法にて硬化させた試料の塗布表面の状態を指触により観察する。
(臭気) 前述の方法にて硬化させた試料の表面の臭気を嗅ぐ。
【0038】
結果を表1、2に示す。実施例の組成物、得られる塗膜は、価格面等、若干の更なる改良が望ましい点を考慮しても、総合的に判断して、従来の比較例の組成物等に比べて著しく優れる。なお、比較例1の配合物を除いて、臭気はほとんどなかった。
【0039】
【表1】

【表2】

(評価基準)
◎:非常に良好、○ :良好、△ :やや劣る、×:劣る
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、ラジカル重合のみ、あるいはカチオン重合のみの樹脂組成物とは異なり、双方の長所を兼ね備えた樹脂組成物であり、即硬化性、高光沢、耐摩耗性、高密着性、耐溶剤性、低臭気等の優れた特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)及びカチオン系開始剤(B)を備え、紫外線により重合することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)、カチオン系開始剤(B)及びラジカル系光重合開始剤(C)を備え、紫外線により重合することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
さらに単量体を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)がエポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
カチオン系光重合開始剤(B)としてオニウム塩化合物が包含されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
プレポリマーとしてエチレン性不飽和二重結合を分子中に1個以上有する化合物(A)がエポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートプレポリマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートプレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、紫外線硬化型樹脂組成物中、前記化合物(A)の含有量が10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
カチオン系光重合開始剤(B)としてオニウム塩化合物が包含され、紫外線硬化型樹脂組成物中、前記オニウム塩化合物の含有量が0.1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
単量体が、紫外線硬化型樹脂組成物中、5.0重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項3〜7の何れか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−138049(P2009−138049A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313417(P2007−313417)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(591000506)早川ゴム株式会社 (110)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】