説明

紫外線硬化型缶用塗料組成物及びその利用

【課題】相対湿度の高い環境下及び厚膜での硬化性、塗膜硬度及び密着性に優れた紫外線硬化型缶用塗料組成物を提供すること。
【解決手段】オキセタン基を2個有する化合物(A)、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)、光カチオン重合開始剤(D)、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)、光ラジカル重合開始剤(F)、及び潤滑付与材(G)を含有する紫外線硬化型缶用塗料組成物であって、
化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)中、化合物(A)を10〜70重量%、化合物(B)を10〜70重量%、樹脂(C)を5〜60重量%の割合で含有してなり、かつ、化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)と化合物(E)中、化合物(E)を1〜50重量%の割合で含有してなり、更に
脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を含まないことを特徴とする紫外線硬化型缶用塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線の照射により硬化する缶用塗料組成物に関し、詳細には、金属、プラスチックフィルム被覆金属の被覆剤として好適に用いられ、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に優れた紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶等の外面は、缶基材の腐食を防止し、美的商品価値を高めるべく、塗膜によって被覆されている。この塗膜には、内容物である飲料や食品殺菌処理時の熱処理工程に対する耐性が要求される。
従来これらの塗膜は、エポキシ/アミノ系樹脂、アクリル/アミノ系樹脂、ポリエステル/アミノ系樹脂等の有機溶剤型塗料をロールコートにて塗装し、焼き付け硬化することによって形成されてきた。しかし、これらの塗料は、焼き付け時に、多量の溶剤を揮散するので、大気汚染を防止すべく特別の回収装置が必要である。そこで最近では、大気汚染の原因となりにくく、特別の回収装置のいらない水性塗料が種々提案されている。
【0003】
しかし、この水性塗料においても、200℃以上の高温と長時間の焼き付け時間とを要するため、エネルギーコスト及び生産性、更には設備のスペース等の点で改良が望まれている。そのため、大気を汚染しにくく、省エネルギー、省資源、省スペースの点から、紫外線硬化性組成物の利用が従来検討されている。
【0004】
紫外線の照射により短時間で架橋硬化する組成物としては、ラジカル重合型とカチオン重合型とがある。ラジカル重合型としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、不飽和ポリエステル系化合物、ポリエン−チオール系化合物等の不飽和二重結合を有する化合物からなる組成物が知られている。カチオン重合型としては、エポキシ基を有する化合物、オキセタン基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物からなる組成物等が知られており、それぞれ適当な重合開始剤と共に使用される。
【0005】
紫外線硬化性組成物のうちラジカル重合性組成物の様に不飽和二重結合を有する化合物を含む組成物は、硬化が速く、硬化後の塗膜硬度が高いという長所を有する。特に、厚膜(10μm以上)での硬化性、硬化後の塗膜硬度も良好であるとの特徴を有する。反面、硬化反応により歪みが発生しやすく、これにより基材との密着性が不足しやすいという短所を有する。又、酸素による硬化阻害があるため、表面の硬化性が劣り、特に薄膜(10μm以下)での使用に際しては窒素封入などの設備が必要であるという短所も有する。
【0006】
一方、カチオン重合性組成物は、硬化反応により歪みが発生しにくく、基材との密着性が良好であり、酸素による硬化阻害がないため窒素封入などの設備を必要としないという長所を有するが、ラジカル重合に比べ硬化が遅く、硬化後の塗膜硬度が低いという短所を有する。又、空気中の水分による硬化阻害があるため、相対湿度が60%以上の環境では硬化性が低下しやすいという短所も有する。
【0007】
このような特徴を有するために、基材との密着性を強く要求される紫外線硬化型缶用塗料では、カチオン重合型が多く採用されている。これまでに、エポキシ基を有する化合物として、特許文献1に見られるように、脂環式エポキシ基を有する化合物(以下、「脂環式エポキシ化合物」とも称す)が用いられ、特に脂環式エポキシ基を2個有する化合物、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVR−6105、サイラキュアUVR−6110等〕やビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVR−6128等〕等が好適に用いられている。但し、脂環式エポキシ化合物のみでは硬化速度が遅いため、特許文献2に見られるように、オキセタン基を有する化合物(以下、「オキセタン化合物」とも称す)、例えば3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを適量添加することで硬化速度を向上させる方法が知られている。
【0008】
近年、製缶工程では生産効率向上のために高速塗装化が進んでおり、缶用塗料として用いられる紫外線硬化型塗料には、塗装時及び紫外線照射時の環境に影響されずに塗膜表面近傍の速硬化性に優れると共に塗膜内部の速硬化性に優れることが求められる。即ち、紫外線硬化型塗料組成物を飲料缶等の胴部分や底部分に塗布した後、紫外線が照射され、その直後には次の工程に搬送されることとなるが、この搬送工程で硬化塗膜同士が接触したり、塗膜と搬送設備とが接触したりする。従って、紫外線照射直後、具体的には約10秒後までには、相対湿度が60〜80%という高い環境下であっても、塗膜表面のタックが消失していなくてはならない。塗膜表面にタックが存在している状態とは、塗膜表面が未硬化であることを示しており、万が一、紫外線照射直後に塗膜表面にタックが存在していると、塗膜表面に傷が発生しやすく外観不良を起こしたり、塗膜の剥離が発生し塗膜欠損、搬送不良を発生したりする。
【0009】
ところが、これまでのカチオン重合型塗料は脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を用いているため、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に問題があった。
【特許文献1】特開平8−20627号公報
【特許文献2】特開平9−31186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に優れ、厚膜(10μm以上)での硬化塗膜の硬度が良好な紫外線硬化型缶用塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を用いず、オキセタン基を2個有する化合物と、脂環式エポキシ基を1個のみ有する化合物と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物とを特定量用いることで、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に優れ、厚膜(10μm以上)での硬化塗膜の硬度が良好な紫外線硬化型缶用塗料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、第1の発明は、オキセタン基を2個有する化合物(A)、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)、光カチオン重合開始剤(D)、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)、光ラジカル重合開始剤(F)、及び潤滑付与材(G)を含有する紫外線硬化型缶用塗料組成物であって、
化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)の合計100重量%中、化合物(A)を10〜70重量%、化合物(B)を10〜70重量%、樹脂(C)を5〜60重量%の割合で含有してなり、かつ、
化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)と化合物(E)の合計100重量%中、化合物(E)を1〜50重量%の割合で含有してなり、更に、
脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を含まないことを特徴とする紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0013】
更に第2の発明は、オキセタン基を2個有する化合物(A)が、1、4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、又は3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタンである第1の発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0014】
更に第3の発明は、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)が、リモネンジオキサイド、又はリモネンモノオキサイドである第1又は第2の発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0015】
更に第4の発明は、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である第1〜3いずれかの発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0016】
更に第5の発明は、潤滑付与剤(G)が、融点90〜400℃の粒子状樹脂である第1〜4いずれかの発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0017】
更に第6の発明は、顔料(H)を含有する第1〜5いずれかの発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0018】
更に第7の発明は、金属板、又はプラスチック被覆金属板を成型してなる缶の被覆に用いられることを特徴とする第1〜6いずれかの発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物に関する。
【0019】
更に第8の発明は、第1〜7いずれかの発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物から形成される硬化塗膜で被覆されてなる被覆物に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に優れ、厚膜(10μm以上)での硬化性に優れた紫外線硬化型缶用塗料組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、オキセタン基を2個有する化合物(A)、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)、光カチオン重合開始剤(D)、(メタ)アクリロイル基[以下、アクリロイル基とメタクリロイル基とをあわせて(メタ)アクリロイル基と表記する。]を3個以上有する化合物(E)、光ラジカル重合開始剤(F)及び潤滑付与剤(G)を含有することを特徴とする。特に本発明は、従来用いられてきた脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を用いることなく、オキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)との合計100重量%中、それぞれを10〜70重量%、10〜70重量%、及び5〜60重量%使用することにより、相対湿度の高い環境下での優れた硬化性及び密着性をバランス良く達成することができ、更にオキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)との合計100重量%中、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)を1〜50重量%使用することにより、10μm以上の厚膜での硬度が良好な硬化塗膜を達成できる。
【0022】
本発明での脂環式エポキシ基とは、脂環式オレフィンを過酸などにより酸化させ、エポキシ化したものを指し、例えば、シクロペンテンオキサイド構造あるいはシクロヘキセンオキサイド構造等が挙げられる。
【0023】
又、本発明でのエポキシ基とは、グリシジル基を含むものとする。
【0024】
本発明のオキセタン基を2個有する化合物(A)[以下、化合物(A)と表記する場合がある。]は、オキセタン基を1分子中に2個有する化合物である。具体的には、1,4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−121等〕、3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221等〕、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン等が挙げられる。なかでも1、4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、及び、3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタンは、硬化速度が速く、又、硬化後の塗膜硬度が高いため好適に用いられる。これらのオキセタン基を2個有する化合物(A)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0025】
本発明の脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)[以下、化合物(B)と表記する場合がある。]としては、1分子中に脂環式エポキシ基を1個のみ有することが重要であり、脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を含まないことが本発明の特徴である。脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を用いた場合、相対湿度の高い環境下での硬化性及び密着性に問題を生じる。この様に、脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を用いると缶用塗料に必要な物性をすべて満足することは困難であった。本発明の脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)の具体例としては、シクロヘキセンモノオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド2000等〕、ノルボルネンモノオキサイド、α−ピネンオキサイド、リモネンモノオキサイド、リモネンジオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド3000等〕等が好適に用いられる。なかでもリモネンジオキサイド、リモネンモノオキサイドは、硬化塗膜の硬度と柔軟性とを調整しやすく、又、密着性にも優れるため好適に用いられる。
これらの脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0026】
本発明は、上記化合物(A)、化合物(B)と併用して、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)[以下、樹脂(C)と表記する場合がある。]を使用することを特徴とする。本発明においては、樹脂(C)の構造中に脂環式エポキシ基は含まない。樹脂(C)を併用することにより、まず、相対湿度が高い環境下においても、空気中の水分による硬化阻害を抑制することができる。更に加工密着性を向上させることができる。一般的に製缶工程では、紫外線硬化型塗料を塗装した後に紫外線照射が行われ、紫外線硬化型塗料の硬化を行った後、溶剤型塗料や水性塗料を用いて紫外線硬化塗膜上への重ね塗装やその他の部位への塗装を行い、溶剤型塗料や水性塗料の乾燥のために焼き付け(後熱処理)を行う。脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)を使用することで、特に紫外線照射後の後熱処理を行った際に、その後のネック加工工程などで必要な加工密着性を向上させることができる。
【0027】
樹脂(C)は、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有することで、紫外線による硬化反応よりも、後熱処理による硬化反応に関与するものである。本発明の脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)としては、塗料中で溶解するものを好ましく用いることができる。樹脂(C)としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられ、芳香族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、β−メチルエピクロ型エポキシ樹脂、臭素化型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多価フェノールの水酸基にエピクロロヒドリンを反応させたエポキシ化物等が挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂の水素添加体であるグリシジルエーテル型環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型環状脂肪族エポキシ樹脂、ポリグリコールエーテル型脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリコールエーテル型鎖状エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂、エポキシ化脂肪酸エステル化合物等が挙げられる。又、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を導入したフェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、及びポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0028】
なかでもフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、相対湿度が高い環境下においても、空気中の水分による硬化阻害を抑制することができる効果が高い点で望ましい。フェノールノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、旭化成ケミカルズ社製AEREPN−1179,AER EPN−1180、AER EPN−1182、東都化成社製YDPN−638、ダウ・ケミカル社製DEN−431、DEN−438、DEN−439等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、旭化成ケミカルズ社製AER ECN−1273、AER ECN−1280、AER ECN−1299、東都化成社製YDCN−700、YDCN−701、YDCN−702、YDCN−703,YDCN−704、YDCN−500等が挙げられる。これらの樹脂(C)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0029】
本発明では、オキセタン基を2個有する化合物(A)、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)、及び脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)の使用量を、化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)との合計100重量%中、それぞれ10〜70重量%、10〜70重量%、及び5〜60重量%とすることを特徴とする。好ましくは、それぞれ15〜60重量%、20〜65重量%、及び10〜50重量%であり、特に好ましくは、それぞれ15〜40重量%、30〜60重量%、及び20〜40重量%である。化合物(A)が10重量%未満であると、塗膜硬度が低くなるという問題があり、70重量%を超えると密着性が悪化するという問題が発生する。又、化合物(B)が10重量%未満であると、硬化塗膜が脆弱になるという問題があり、70重量%を超えると硬化性が低下するという問題が発生する。又、樹脂(C)が5重量%未満であると、密着性が悪化するという問題があり、60重量%を超えると、紫外線での硬化性が低下するという問題が発生する。
【0030】
本発明の光カチオン重合開始剤(D)としては、カチオン光開始剤であるアリールジアゾニウム塩(例えば、旭電化工業社製P−33)、アリールヨードニウム塩(例えば、3M社製FC−509、ローヌ・プーラン社製2074、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGACURE250)、アリールスルホニウム塩(ダウ・ケミカル社製サイラキュアUVI−6974、UVI−6970、UVI−6990、UVI−6992、UVI−6950、旭電化工業社製SP−150、SP−170、三新化学工業社製サンエイドSI−110L、SI−180L、SI−100L、日本曹達社製CI−2855)アレン−イオン錯体(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製CG−24−61)等が挙げられる。これらの光カチオン重合開始剤(D)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0031】
光カチオン重合開始剤(D)は、オキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部用いることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部である。0.01重量部より少ないと硬化性が低下しやすくなり、20重量部より多いと、得られる硬化塗膜が脆弱になる傾向にある。
【0032】
本発明の(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1分子中に3個以上有する化合物である。具体的には、モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)などが挙げられる。オリゴマー又はポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)の具体例としては、東亞合成社製アロニックスM−305、M−309、M−310、M−313、M−315、M−320、M−325、M−350、M−360、M−400、M−402、M−408、M−450、M−7100、M−8030、M−8060、大阪有機化学工業社製ビスコート♯295、♯300、♯360、♯400、GPT、3PA、SARTOMER社製SR351S、SR368、SR415、SR444、SR454、SR492、SR499、CD501、SR502、SR9020、CD9021、SR9035、SR350、SR295、SR355、SR399E、SR494、SR9041、CN929、CN968、CN970A60、CN111、CN112C60、ダイセル・ユーシービー社製DPHA、Ebecryl220、1290K、5129、2220、6602、新中村化学工業社製NKエステルA−TMMT、NKエステルA−9300、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEMA−1020、NKオリゴEA−6310、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−6340、NKオリゴMA−6、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−6HA、NKオリゴU−324A、BASF社製LaromerEA81、サンノプコ社製フォトマー3016、荒川化学工業社製ビームセット371、575、577、700、710、根上工業社製アートレジンUN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HS、UN−9000H、UN−901T、日本合成化学工業社製紫光UV−7600B、UV−7610B、UV−7620EA、UV−7630B、UV−1400B、UV−1700B、UV−6300B、共栄社化学社製ライトアクリレートPE−4A、DPE−6A、UA−306H、UA−306T、UA−306I、日本化薬社製KAYARAD GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、PET−30、T−1420、RP−1040、DPHA、DPEA−12、DPHA−2C、D−310、D−330、DPHA−40H、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075等が挙げられる。これらの(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0034】
本発明では、オキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)との合計100重量%中、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)を1〜50重量%使用することを特徴とする。好ましくは、1〜30重量%、特に好ましくは、50〜20重量%である。(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)が1重量%未満であると、10μm以上の厚膜での塗膜硬度が劣るという問題があり、50重量%を超えると、密着性が低下するという問題がある。
【0035】
本発明の光ラジカル重合開始剤(F)は、紫外線照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出する開始剤であり、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)100重量部に対して1〜15重量部、好ましくは3〜10重量部の範囲で配合される。この範囲で配合することにより、プラスチックフィルムおよび金属に対する密着性、塗膜硬度、加工性の良好な硬化塗膜を得ることができる。光ラジカル重合開始剤(F)は、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系に代表される自己開裂型のものと、ベンゾフェノン系、ベンジル系、チオキサントン系に代表される水素引き抜き型のものに大別される。
【0036】
自己開裂型の開始剤としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE184、日本化薬社製KAYACUREBDMK、メルク社製ダロキュアー1173等が挙げられる。水素引き抜き型の開始剤としては、例えば、日本化薬社製KAYACURE BP−100、KAYACURE DETX−S、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGACURE651等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤(F)は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0037】
本発明の潤滑付与剤(G)は、得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、動物系ワックス、植物系ワックスなどのワックス類を挙げることができる。
【0038】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、金属缶やプラスチックフィルム被覆絞り金属缶に塗装された後、紫外線照射されて硬化塗膜となり、次の内面塗装工程やネック加工工程へ搬送される。又、ベースコートとして使用される場合は、紫外線照射された後、その上にインキ層や、トップコート層が設けられる。その際に、塗膜の潤滑性が不十分であると塗膜に傷を生じたり、缶詰まりを生じたりして、製缶工程における生産性を著しく低下させる。塗膜に潤滑性を与えるためには、通常シリコン化合物やワックス類を塗料等の被覆剤に併用することが一般的であるが、紫外線硬化型缶用塗料組成物をベースコートとして用いる場合、シリコン化合物やワックス類を用いると、その塗膜の上に別の塗膜やインキ層を設ける必要のある場合に、塗膜の潤滑性故に塗料やインキ層がはじかれてしまうという問題がある。
【0039】
その機構は、詳細には解明されてはいないが、シリコン化合物や低融点のいわゆるワックス状の潤滑剤の場合、塗膜表面上に面状もしくはサブミクロンオーダー以下の粒子として存在するために、インキ層や別の塗膜が存在するスペースが無くなり、塗膜表面にはじきを生じると考えられる。
【0040】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物を、特にベースコートとして用いる場合には、潤滑付与剤(G)は、融点が90〜400℃である粒子状樹脂であることが好ましい。前記粒子状樹脂としては、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。又、粒子状樹脂は、前記樹脂の複合樹脂からなる粒子であってもよい。更にそれぞれの樹脂粒子の混合物を用いても良く、ポリエチレンとポリテトラフルオロエチレンとの複合樹脂からなる樹脂粒子、又はポリエチレン樹脂粒子とポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子との混合物を用いることが好ましい。また融点が90℃〜400℃の範囲内であれば、他のカルナバワックスやマイクロクリスタリンワックスとの混合物でもよい。融点が係る範囲にあるために、塗料中では粒子として存在していた潤滑付与剤(G)が、紫外線照射したときに塗膜表面へマイグレートしミクロンオーダー以上の微小な突起を形成して塗膜に潤滑性を与える。塗膜表面において係るミクロンオーダー以上の微少な突起の存在しない場所にインキ層や別の塗料が存在する。
【0041】
このような樹脂粒子としては、Shamrock社製ではS−394、S−395、FS−421、FS−511、S−232MG、FS−731MG、SST−1MG、SST−2、SST−3H、SST−4MG、NEPTUNE5331等が挙げられる。ヘキスト社製ではPE130、PE190、PE520、PED121、PED153、PED521、PED522、PP230等が挙げられる。三洋化成社製ではビスコール131−P、ビスコール151−P、ビスコール161−P、ビスコール165−P、ビスコール171−P等が挙げられる。
【0042】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物をベースコートとして用いる場合、これらの潤滑付与剤(G)である粒子状樹脂は、オキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)との合計100重量部に対して、1〜50重量部使用することが好ましく、5〜35重量部使用することが更に好ましい。1重量部未満では粒子の密度が小さくなり、潤滑性が不十分となる。50重量部を超えると塗膜中の樹脂分が相対的に少なくなり、粒子を支えるための凝集力が低下し、塗膜に傷が付きやすくなる。
【0043】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物をベースコートとして用いる場合、係る潤滑付与剤(G)である粒子状樹脂をそれぞれ単独で用いても良いし2種類以上を併用してもよい。
【0044】
又、本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物をトップコートとして用いる場合、潤滑付与剤(G)は、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、動物系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックスなどのワックス類等を単独もしくは2種類以上のものを併用して用いることができる。
【0045】
植物系ワックスとしては、パーム油、精製パーム油、木蝋、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス等が挙げられる。動物系ワックスとしては、ラノリンワックス、鯨ロウ等が挙げられる。鉱物系ワックスとしては、流動パラフィンから高融点までのパラフィン、イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。フッ素系ワックスとしては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリプロピレン等が挙げられる。
【0046】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物をトップコートとして用いる場合、これらの潤滑付与剤(G)は、オキセタン基を2個有する化合物(A)と、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)と、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)との合計100重量部に対して、1〜30重量部使用することが好ましく、3〜20重量部使用することが更に好ましい。1重量部未満では、潤滑性が不十分となり、30重量部を超えると硬化塗膜が脆弱になる傾向にある。
【0047】
本発明において用いられる顔料(H)について説明する。本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、飲料缶外面用のベースコートとして用いることができる。白色顔料を配合することでホワイトベースコートとして用いられ、アルミニウム顔料を配合することによりシルバーベースコートとして用いられ、又パール顔料を配合することによりパール調ベースコートとして用いられる。
【0048】
白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等が挙げられる。白色顔料の含有率は、塗料組成物中、10〜70重量%であることが好ましく、更に好ましくは30〜50重量%である。10重量%より少ないと隠蔽力が不十分となりやすく、70重量%より多いと硬化性が低下する傾向にある。
【0049】
アルミニウム顔料としてはアルミニウム粉末が挙げられ、これをミネラルスピリットやソルベントナフサ等でペースト状にしたアルミニウムペーストが好適に用いられる。アルミニウム顔料の含有率は、塗料組成物中、1〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは、5〜30重量%である。
【0050】
パール顔料としては、無機顔料フレークに金属酸化物を被覆した顔料、オキシ塩化ビスマス等が挙げられる。無機顔料フレークとしては、雲母フレーク、酸化アルミニウムフレーク、シリカフレーク、及びフレーク状ガラス等が挙げられ、被覆する金属酸化物としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。パール顔料の含有率は、塗料組成物中、10〜70重量%であることが好ましく、更に好ましくは15〜50重量%である。10重量%より少ないとパール調が不十分となりやすく、70重量%より多いと硬化性が低下する傾向にある。
【0051】
本発明の紫外線硬化型塗料組成物は、必要に応じ、前記白色顔料、アルミニウム顔料、及びパール顔料以外の顔料を含有していても良い。
【0052】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、必要に応じてオキセタン環を1個有する化合物を含有しても良い。オキセタン環を1個有する化合物を使用することで更に硬化性を向上させることができる。オキセタン環を1個有する化合物とは、オキセタン基を1分子中に1個有する化合物であり、具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−101等〕、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−211等〕、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−212等〕、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン等が好適に用いられる。これらのオキセタン環を1個有する化合物は単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用してもよい。
【0053】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、必要に応じて光増感剤を含有しても良い。光増感剤とは、光開始剤の助剤となり硬化性の向上に寄与する物質である。光増感剤としては、例えば、9,10−ジメトキシ−アントラセン、9,10−ジエトキシ−アントラセン、9,10−ジプロポキシ−アントラセン、9,10−ジブトキシ−アントラセン、9,10−ジヘキサノキシ−アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシ−アントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシ−アントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシ−アントラセン、2−エチル−9,10−ジブトキシ−アントラセン、2−メチル−9,10−ジメトキシ−アントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシ−アントラセン、2−メチル−9,10−ジプロポキシ−アントラセン、2−メチル−9,10−ジブトキシ−アントラセン、2−プロピル−9,10−ジメトキシ−アントラセン、2−プロピル−9,10−ジエトキシ−アントラセン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の慣用の成分、例えば、染料、有機溶剤、分散助剤、レベリング剤、クレーター防止剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応性、及び非反応性希釈剤等の塗料用添加剤を含有していても良い。
【0055】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、金属板、プラスチック被覆金属板の被覆に用いられることが好ましいが、紙、木材、ガラス、プラスチック等の基材の被覆にも用いることができる。金属板としては、スチール板、アルミニウム板が好適に用いられ、プラスチック板としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリカーボネート等からなるプラスチック板が用いられる。プラスチックフィルム被覆金属板とは、スチールやアルミニウム等の金属板に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリカーボネート等のプラスチックからなるフィルムを貼り合わせたものである。
【0056】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、飲料缶等の缶の外面被覆に用いられることが特に好ましい。本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物を金属板もしくはプラスチック被覆金属板に塗布し、光の照射により硬化させて硬化塗膜を形成した後、必要に応じて該硬化塗膜面上に印刷を施し、更にトップコート層を設けた後、缶状に成型することにより、被覆された缶を得ることができる。
【0057】
あるいは、金属板もしくはプラスチック被覆金属板を成型してなる缶の外面に、本発明の紫外線硬化型塗料組成物を塗布し、光の照射により硬化させて硬化塗膜を形成した後、必要に応じて該硬化塗膜面上に印刷を施し、更にトップコート層を設けることにより、被覆された缶を得ることができる。このようにして得られる、外面が被覆された缶は、主として清涼飲料水、コーヒー飲料、アルコール飲料、紅茶、ウーロン茶等の飲食料品を収納する容器として用いられる。
【0058】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物の塗装方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアオフセットコート、カーテンフローコート、リバースコート、スクリーン印刷、スプレー塗装、及び浸漬塗装等の従来公知の方法によることができる。
【0059】
本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物を光硬化させるための光源としては、通常、波長が200〜500ナノメートルの範囲の光を含む光源、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することが出来る。又、これらの光源と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱を併用しても良い。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明について実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0061】
[実施例1]
使用した材料は、以下の通りである。
(1)オキセタン基を2個有する化合物
3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221〕 12部
(2)脂環式エポキシ基を1個有する化合物
リモネンジオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド3000〕 18部
(3)脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成社製、商品名;YDCN−704〕 17部
(4)(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬社製、商品名;KAYARAD DPHA〕 7.5部
(5)顔料
酸化チタン〔石原産業社製、商品名;タイペークCR−58〕 30部
(6)潤滑付与剤
ポリエチレン〔Shamrock社製、S−394〕 9部
(7)光カチオン重合開始剤
[ジフェニル〔(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)との混合物のプロピレンカーボネート溶液(有効成分44%)]〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVI−6992〕 5部
(8)光ラジカル重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名;IRGACURE184〕 0.5部
(9)光増感剤
9,10−ジブトキシ−アントラセン 1部
上記の(1)、(2)、(3)、(4)を溶解混合して十分撹拌し、(5)を加え、更にサンドミルにて分散を行う。その後、(6)、(7)、(8)、(9)を加え再度十分撹拌し、紫外線硬化型缶用塗料組成物(ホワイトベースコート)を得た。
【0062】
[実施例2〜9]及び[比較例1〜11]
表1、表4に示す組成にもとづき、実施例1と同様の操作で紫外線硬化型塗料組成物(ホワイトベースコート)を得た。
【0063】
[実施例10]
使用した材料は、以下の通りである。
(1)オキセタン基を2個有する化合物
3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221〕 22部
(2)脂環式エポキシ基を1個有する化合物
リモネンジオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド3000〕 36部
(3)脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成社製、商品名;YDCN−704〕 16.7部
(4)(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬社製、商品名;KAYARAD DPHA〕 5部
(5)顔料
ミネラルスピリットにて湿潤されているリーフィングアルミニウムペースト〔東洋アルミニウム社製、商品名;0620MS(有効成分=69%)〕 5部
(6)潤滑付与剤
ポリエチレン〔Shamrock社製、S−394〕 10部
(7)カチオン光重合開始剤
[ジフェニル〔(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)との混合物のプロピレンカーボネート溶液(有効成分44%)]〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVI−6992〕 5部
(8)光ラジカル重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名;IRGACURE184〕 0.3部
上記の(1)、(2)、(3)、(4)を溶解混合して、(5)を加え十分撹拌する。その後(6)を加え再度撹拌し、(7)、(8)を加え再度十分撹拌し紫外線硬化型缶用塗料組成物(シルバーベースコート)を得た。
【0064】
[実施例11〜14]及び[比較例12〜15]
表2、表5に示す組成にもとづき、実施例10と同様の操作で紫外線硬化型塗料組成物(シルバーベースコート)を得た。
【0065】
[実施例15]
使用した材料は、以下の通りである。
(1)オキセタン基を2個有する化合物
3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221〕 20部
(2)脂環式エポキシ基を1個有する化合物
リモネンジオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド3000〕 32部
(3)脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成社製、商品名;YDCN−704〕 12.7部
(4)(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬社製、商品名;KAYARAD DPHA〕 5部
(5)顔料
パール顔料(酸化チタンにて被覆されてた雲母フレーク)〔メルク社製、商品名;イリオジン119〕 15部
(6)潤滑付与剤
ポリエチレン〔Shamrock社製、S−394〕 9部
(7)カチオン光重合開始剤
[ジフェニル〔(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)との混合物のプロピレンカーボネート溶液(有効成分44%)]〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVI−6992〕 5部
(8)光ラジカル重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名;IRGACURE184〕 0.3部
(9)光増感剤
9,10−ジブトキシ−アントラセン 1部
上記の(1)、(2)、(3)、(4)を溶解混合して、(5)を加え十分撹拌する。その後、(6)、(7)、(8)、(9)を加え再度十分撹拌し、紫外線硬化型缶用塗料組成物(パール調ベースコート)を得た。
【0066】
[実施例16〜19]及び[比較例16〜18]
表2、表5に示す組成にもとづき、実施例15と同様の操作で紫外線硬化型塗料組成物(パール調ベースコート)を得た。
【0067】
[実施例20]
使用した材料は、以下の通りである。
(1)オキセタン基を2個有する化合物
3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン〔東亞合成社製、商品名;アロンオキセタンOXT−221〕 20.5部
(2)脂環式エポキシ基を1個有する化合物
リモネンジオキサイド〔ダイセル化学社製、商品名;セロキサイド3000〕 37部
(3)脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔東都化成社製、商品名;YDCN−704〕 27部
(4)(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬社製、商品名;KAYARAD DPHA〕 8部
(5)潤滑付与剤
精製パーム油 2部
(6)カチオン光重合開始剤
[ジフェニル〔(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムヘキサフルオロホスフェートとビス〔4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)との混合物のプロピレンカーボネート溶液(有効成分44%)]〔ダウ・ケミカル社製、商品名;サイラキュアUVI−6992〕 5部
(7)光ラジカル重合開始剤
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名;IRGACURE184〕 0.5部
上記の(1)、(2)、(3)、(4)を溶解混合して十分撹拌し、その後(5)を加え再度撹拌し、(6)、(7)を加え再度十分撹拌し紫外線硬化型缶用塗料組成物(トップコート)を得た。
【0068】
[実施例21〜27]及び[比較例19〜31]
表3、表6に示す組成にもとづき、実施例1と同様の操作で紫外線硬化型塗料組成物(トップコート)を得た。
【0069】
実施例1〜19、比較例1〜18の各紫外線硬化型塗料組成物については、ティンフリースチール板にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートした基材上に、実施例20〜27、比較例19〜31の各紫外線硬化型塗料組成物については、アルミニウム板基材上に、それぞれ膜厚が5μm(薄膜)、あるいは15μm(厚膜)になるように塗装し、気温25℃、相対湿度40%、60%、80%の環境下でそれぞれ紫外線照射を行い、試験用試料板を得た。
【0070】
尚、紫外線の光源としては、実施例1〜19、比較例1〜18の顔料を含む紫外線硬化型塗料組成物(ホワイトベースコート、シルバーベースコート、パール調ベースコート)は、ガリウム灯(240W/cm)、実施例20〜27、比較例19〜31の顔料を含まない紫外線硬化型塗料組成物(トップコート)はメタルハライド灯(240W/cm)をそれぞれ用い、コンベアタイプの紫外線照射装置(ランプ高さ=8cm、コンベア速度40m/min)で塗装板を1回通過させて紫外線照射を行った。又、紫外線照射後の試験用試料板を、ガスオーブンを用いて200℃で120秒の焼き付けを行い、後熱処理後の試験用試料板とした。
【0071】
[評価方法]
各試料板について次の試験を行い評価した。
1.硬化性
紫外線照射後の薄膜、厚膜塗装板を手指で触れ、紫外線を照射してからタックが消失するまでの時間を計測した。
◎;5秒以内にタックが消失
○;10秒以内にタックが消失
△;30秒以内にタックが消失
×;タックが消失するまでの時間が30秒を超える
【0072】
2.鉛筆硬度
JIS K5400に準拠し、常温で三菱鉛筆「ユニ」(登録商標)により塗膜が剥離しない最高硬度を表示。紫外線照射後10秒後、30秒後の鉛筆硬度を測定した。
◎;F以上
○;HB
△;B
×;2B以下
【0073】
3.密着性
JIS K5400に準拠し、碁盤目カット後セロハンテープ剥離試験により、塗膜の剥離状態を観察した。紫外線照射後60秒後に測定し、剥離面積比を10%刻みで評価した。
◎;塗膜の剥離無し
○;面積比5〜10%の塗膜の剥離有り
△;面積比20〜50%の塗膜の剥離有り
×;面積比60〜100%の塗膜の剥離有り
【0074】
4.加工密着性
後熱処理後の試験用試料板に対して、塗装面が凸状の外側になるように直径25mm、高さ15mmのキャップ加工を施した後、加工部について、セロハンテープ剥離試験により塗膜の剥離状態を観察した。剥離状態については、剥離面積比を10%刻みで評価した。
◎;塗膜の剥離が面積比5%以下
○;面積比10%程度の塗膜の剥離有り
△;面積比20〜50%の塗膜の剥離有り
×;面積比60〜100%の塗膜の剥離有り
それぞれの評価結果を表1〜6に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
表1〜3に示すように、本発明の紫外線硬化型缶用塗料組成物である実施例1〜9のホワイトベースコート、実施例10〜14のシルバーベースコート、実施例15〜19のパール調ベースコート、及び実施例20〜27のトップコートは、相対湿度の高い環境下での硬化性、密着性に優れ、更に厚膜硬化塗膜の硬度が良好であった。これに対して、比較例1〜31の紫外線硬化型缶用塗料組成物は、相対湿度の高い環境下での硬化性に劣り、塗膜の物性も不良となった。特に2個以上の脂環式エポキシ基を有する化合物を使用した塗料は、相対湿度の高い環境下での硬化性の悪化が顕著であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン基を2個有する化合物(A)、脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)、脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)、光カチオン重合開始剤(D)、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(E)、光ラジカル重合開始剤(F)、及び潤滑付与材(G)を含有する紫外線硬化型缶用塗料組成物であって、
化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)の合計100重量%中、化合物(A)を10〜70重量%、化合物(B)を10〜70重量%、樹脂(C)を5〜60重量%の割合で含有してなり、かつ、
化合物(A)と化合物(B)と樹脂(C)と化合物(E)の合計100重量%中、化合物(E)を1〜50重量%の割合で含有してなり、更に
脂環式エポキシ基を2個以上有する化合物を含まないことを特徴とする紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項2】
オキセタン基を2個有する化合物(A)が、1、4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、又は3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタンである請求項1記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項3】
脂環式エポキシ基を1個有する化合物(B)が、リモネンジオキサイド、又はリモネンモノオキサイドである請求項1又は2記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項4】
脂環式エポキシ基を除くエポキシ基を有する樹脂(C)が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1〜3いずれか記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項5】
潤滑付与剤(G)が、融点90〜400℃の粒子状樹脂である請求項1〜4いずれか記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項6】
顔料(H)を含有する請求項1〜5いずれか記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項7】
金属板、又はプラスチック被覆金属板を成型してなる缶の被覆に用いられることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか記載の紫外線硬化型缶用塗料組成物から形成される硬化塗膜で被覆されてなる被覆物。


【公開番号】特開2010−100736(P2010−100736A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273680(P2008−273680)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】